VIPRPG×ざくざくアクターズ×ハルスベリヤ叙事詩2 もしもクロスオーバーだったら   作:泉 とも

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一つの旅の終わり

 七日目の朝。

 

「世話になった。私は一足先に帰るよ」

 

 肌着の上にいつものローブを羽織り、ギー・ド・カダンは言った。

 

 ここは先日の別荘である。

 

やみっち「もう?あと一日あるでしょ」

「事務所のほうに合流しておかないといかん」

 

やみっち「ああ、そういうこと」

「本当はお前の新しい相棒に会って見たかったが」

 

やみっち「らいちのこと?」

 

「ああ、お前の所には、君以外の少女の荷物が幾つもあった。言うこともないと思ったがね」

 

 微妙にサイズの違う靴や衣類だけに留まらず、食器類まであった。しかしギーはそれに嫉妬や不安ではなく、安心を覚えた。

 

「君の隣には、今はもう、他の誰かがいるのだな……」

やみっち「よしてよ。そんな言い方」

 

「そうだな。ダークネスは、ダークネスだからな」

 

 少ない私物をまとめて、ギーは玄関に向かう。朝食は済ませた後だった。

 

やみっち「あんたも、あんたには誰か、いないの?」

 

「ふふっ心配してくれるのか」

やみっち「ギー」

 

「……これを送ろう。少しくらいは店先に飾って欲しいな」

 

 彼女はサイン色紙を取り足すと、そこにさらさらと名前を書いた。

 

『やみっちさんへ。ギー・ド・カダン』

 

 やみっちは大女優のサイン色紙※を手に入れた。

 

 大女優のサイン色紙

 やみっち専用:精神系状態異常無効:水風耐性

 売値:バアルの店で買い物ができるくらい。

 

やみっち「こんなことしたって、売っちまうわよ」

「いいさ、また書けばいい」

 

 玄関のドアを境に、二人の少女が向かい合う。

 

「また会おう。そして、また同じ話をしよう。今度は、お前の友だちも交えて」

 

 そう言ってギーが去ると、冷たく涼やかな風と潮の香りが、代わりに訪れるようになった。

 

やみっち「随分と、カッコつけるようになっちゃて」

 

やみっち「またね。ギー」

 

 

 一方その頃。ちゃんとしてるホテル。

 

 

「今回も大変な旅になったな」

「今度こそダメだと思ったよね」

「それこそいつものことだ」

 

 ジュリアたち一行は、すっかり寛いでいた。

 

「しかしご褒美にタダでもう数日泊まれるとは、役得というか何というか」

 

 街が壊されたり観光客が一斉に押し寄せたせいで、空港のスケジュールが混乱、強制的に滞在続行となった者たちには、国から諸費用を補償されることになった。

 

「そういえば柚葉ちゃん、他の皆はどうしたの」

「イリスなら今日には帰るそうだ」

「えー、皆でゆっくりすればいいのに」

 

 悪魔王女イリスは、この戦いでぽてと君との経験を更に積んだ。今やあの都市伝説研究の第一人者になりつつある。

 

 今回の一件をまとめて、更に研究を進める計画を立てていた。

 

「『ゆくゆくはあのバケモノを根絶してやるデース』と言っていた」

 

 柚葉の微妙に上手いけどムカつくモノマネを聞いて、二人はふんふんと頷く。

 

「ハピコは世界樹の花を売りに行くと言ってたが、ジャガイモの混ざった花ということで価値が大きく下がってしまったそうだ」

 

「まあそりゃそうだよね」

 

 ちなみに緑化委員会と玉露軍から買い手が付いた。

受取人はどちらもグリーンサイである。

 

「ウズシオーネはしばらく残るそうだ。特に期限が無いから、異国の料理や文化を学んで持ち帰りたいんだと」

 

「ドナウブルーが芋料理ばっかりにならないと良いけど」

 

 三者三様の過ごし方を聞いて、三人揃って予定が未定の者たちはまた頷く。特に意味は無い。

 

「隊長、私たちはこれからどうする?」

「元々休みで来ていたが、あんなことがあったし」

「休みのやり直しでもするか」

 

 思えばポテチと下ネタに釣られてやって来たこの旅行。見るべきものは見て、食べるべき物も食べた。

 

 長居をする理由はもうない。

 

「そうだな、一日だけ延長して、明日にはチェックアウトして帰ろう。あまり伸ばしても夏休みの二の舞になってしまう」

 

「我々は何年あのビーチにいたんだろうな」

「柚葉ちゃん、しっ!」

 

 などと言いながら、三人は今日の計画を立てることにした。

 

 

 またその一方で、カナエール教の教会。

 

 

「今回はご協力頂きありがとうございました」

デイジー「ああ、これはご丁寧にどうも」

 

 黒公アンカレットは先日パーティを組んでもらったお礼にと、菓子折りを持って挨拶に来ていた。

 

キャロル「何よ。これ全部うちの国で売ってる奴じゃない」

 

「すいません。私もどうかと思ったのですが、他にお店が無かったもので」

 

キャロル「この辺が観光シーズンの泣き所よね」

 

 桃色の髪の魔法使いは、自国の旅行土産の芋サブレを溜息と共に齧った。

 

デイジー「そういえば、帰りの便は大丈夫でしたか?」

 

「いえ、やはり一日延期ということになりそうです。のんびり観光でもという空気ではなくなってしまいましたし」

 

デイジー「あらあら」

キャロル「あんたらも災難よね」

 

「ええ、こういう出会いもありましたが、予定は台無しですね」

 

キャロル「何か用事でもあったの」

 

「ヌーディストビーチを使うことですね」

 

キャロル「ブッ!」デイジー「まあ」

 

 急な言葉に噎せるキャロルと背中を擦るデイジー。二人は信じられないといった表情でアンカレットを見た。

 

キャロル「あんた、露出狂か何かだったの」

 

「私は女優ですよ。誤解が無いように言うと、皆さんの体を見て、自分の裸を再確認したかったのです」

 

デイジー「と、言いますと?」

 

「私たちは売り物として役と体を作ります。だから、他の人はどうなのかとか、自分の体はまだ大丈夫だろうかと、時折不安になるのです」

 

 まだ役者として売り物になるか。それはこの妙齢の美女にさえ、むしろ秀でた美貌だからこそつき纏う悩みだった。

 

キャロル「お風呂でよくないそれ?」

 

「一緒に入ってくれる人がいないし、こんなことで誘うのもアレですし、何より一度に大勢確認できますからね」

 

デイジー「アンカレットさんはご参加なさらなかったのですか?」

 

「男性陣が踊り狂っていると聞いて、見合わせたんです」

 

キャロル「職業病というか、奇妙な悩みもあったもんね。うちの国だと好きで脱いで躍る奴らがいるってのに」

 

「そうなのですか?」

 

 ポテチ王国では無暗にハッスルしている人間がおり、またその多くは下心を持たない異常者である。

 

キャロル「そうよ。……そうだ、確か今夜じゃなかったかしら」

 

デイジー「ああ、恍惚さんの奴ならそうですね」

 

「恍惚?どなたですか」

 

キャロル「挫折して頭がおかしくなった元秀才よ」

デイジー「魔王軍の参謀の男性でダンサーです」

 

「まあ、随分と変わった組み合わせですね」

 

 元2003勇者パーティの一人であり、魔王軍の金庫番を務める凄腕の魔法剣士。

 

 本名よりも異名のほうが定着した男。

 その名も『恍惚なる闇』

 

キャロル「普段は会員制らしいんだけど、今回の件で一般開放するから、暇なら今夜魔王城に行くといいわ。そこでまあ、踊りが見られるから」

 

「その恍惚さんという方の踊りは、お金を取れるほどなのですか?」

 

デイジー「一通りのダンスと舞は躍れるそうです。今回はそれとは違いますが、一見の価値はあると思います。ただ刺激が強いというか、性的であるというか」

 

「?」

 

 アンカレットは二人の流暢な言葉の中に混ざる、歯切れの悪さに子どもの悪戯っぽさを感じ取った。

 

 それを追究するのは野暮だと思ったので、敢えて聞かないことにした。

 

 結論から言うとそれは誤りであった。

 

「何やら面白そうですね。事務所の人たちも誘ってみます」

 

デイジー・キャロル『えっ!?』

 

「何か不都合でも?」

 

キャロル「いや、できれば自己責任で行ったほうが、いいと思うなあ~」

 

デイジー「一人のほうが、気軽っていうか……」

 

 二人の反応にやはり、と黒公女は内心で笑う。

 

「大丈夫ですよ。ちょっとやそっとじゃ動じませんから」

 

キャロル「そ、そう……」

デイジー「ならいんですけど」

 

 アンカレットは年下の二人組が勧めた、恐らくだらない悪戯に興味があった。

 

 焦る様が何とも可愛らしくて、事務所にスカウトしたいくらいだったが、その悪戯に大勢を巻き込むことを優先して、彼女は教会を後にしたのだった。

 

 

 そして。

 七日目夜、魔王城。

 

 ――恍惚なる闇のカッポレフェスティバル!

 ――ポロリはこの国では死刑を意味する!

 ――なるか特出し!無敗記録は敗れるか!?

 ――かつての秀才は何故道を踏み外したのか!

 

 そんな下品な見出しが躍るチラシを、来場者の全員が握り締めていた。

 

ジュリア・こドラ・柚葉『………………………………』

 

 ほんの悪ふざけのつもりだったが、言い出したことを誰も否定も拒否もしなかった。

 

 そしてここまで来てしまった。お互い口も利かず、目も合わせない。

 

アンカレット・ミシェル・チェッチカ『………………………………』

 

 事務所の先輩女優の突然のお誘い、しかもこんなことへの。

 

 芸能界の縦社会の厳しさが無関係な後輩を巻き込んで発揮されたのだ。なおメディオラにはまだ早いとして誘われなかった。

 

VIPRPGの見慣れた面々『………………………………』

 

 これもある種の年中行事であり、普通に期待していた。

 

 魔王城の広大な庭に用意された特設ステージ。

 それを移す魔法やドローン。

 

 闇の中にただ一人ライトアップされて、一人佇む紳士の姿。

 

恍惚なる闇「それでは皆さん、今夜は存分に、楽しんでいってください。フウウウウゥゥゥゥ――――!!」

 

 衣服を脱ぎ捨て一糸纏わぬ姿、の背面を晒して高らかに吠える。

 

 ――うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお。

 

 時は今、ヘヴン状態!

 

「えっ!?ウソっ今絶対出たよ!」

「見え、見え……!」

「何が起きているんだ……何が起きているんだ!?」

 

 常軌を逸した魔性の裸踊りが見る者全てを魅了する。

そのキレ、そのアジ、その粘り!

 

全員「すっげえええええええええええええええええええええええええええええ!!!!」

 

 世は正に、フィーバータイムへと突入していた!

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