VIPRPG×ざくざくアクターズ×ハルスベリヤ叙事詩2 もしもクロスオーバーだったら   作:泉 とも

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動き出す者たち

 朝のニュースが観光客を震わせる中、ポテチ王国は何事も無く日常を過ごしていた。

 

王様「ちょっと魔王倒してこいや。」

アレックス「何でよ。」

王様「魔王がワシのポテチ食ったんだ!!」

アレックス「そいつは許せないな。」

アレックス「よっしゃ、ちょっくら魔王素手で倒してくる。」

 

 そして始まる魔王把握。

 

ブライアン「ようアレックス、オレも仲間に入れてくれよ!」

アレックス「邪魔」

 

 最初はいなかったけど、今は定着したブライアン。

 

メカゴーレム「おーーーーーーーーーーっと」

 

 一撃で吹っ飛ぶ魔物たち。雲霞の如く押し寄せて、パチンコ玉の如く飛んでいく。

 

 忍者が分身し、四天王がだべり、魔王が吹っ飛び、ファンファーレが鳴る。

 

アレックス「帰るか」

ゴメス「」

アレックス「」

 

 耳を塞ぎたくなる刺突攻撃SEめいたピストン運動。

 ツクール2000の最高速でお届けするループアニメ。

 

アレックス「ンアアアアアアアア↑アアアアアッ↓アアアアアア――――!!」

 

ぬくりあさん「めでてぇwwwwwwwwwwww」

 

 本当に爆発。

 

 これがポテチ王国と、勇者アレックスの日常であり、国民はもう慣れっこだが、観光客はこの光景に激しく脳を焼かれた。

 

 これが毎日のように行われている。する必要も意味も無い。

 

 ただ一人の青年が、朝が来る度怪鳥に食い殺されるプロメテスめいて、ゲイレイパーに掘られ続ける。その地獄のような光景に、国民の心は凪の如く静かだった。

 

 

 そして魔王把握後に、ここ『ひるみ病院』に受診することも、アレックスの日課となっていた。

 

ヒールⅢ「傷口は消毒してヒールかけたから、もう帰っていいぞ」

アレックス「はい、ありがとうございました」

 

ヒールⅢ「しかしなあ、人生色々と言ってもだ。私もこういう日々が自分に待っているとは思わなかったよ」

 

アレックス「なんかすいません……」

 

ヒールⅢ「王様がよりにもよってアレを観光の目玉に据えたせいで、肛門科の患者が激増したよ。魔王把握体験サービスで本当にゴメスにケツを掘られて、老若男女問わず、尻の穴をズタズタにされてやって来る」

 

アレックス「…………」

 

ヒールⅢ「なまじ君のリアクションが良いせいか、皆ギャグだと思ってまんまと真似をする者が後を絶たない。おかげでこの病院の肛門の外科手術の腕前と医療研究は世界一になってしまった」

 

アレックス「ほんとすんません」

 

ヒールⅢ「体を労われとは医者の定型句だがね、それでも本音じゃないとは言えない。君の挑戦的な働き方も否定できない。しかしこれだけは言わせてくれ」

 

アレックス「なにでしょうか」

 

ヒールⅢ「君のおかげで私の中から異性への性的関心はだいぶ減退したよ」

 

アレックス「すんません、今度うちに来て妹をファックしていいんで」

 

ヒールⅢ「生憎と寝取りは趣味じゃないんだ」

 

 

 その頃のちゃんとしてるホテル。

 

 

「イカレてんだろこの国」

 

 黒服を身に纏い、帽子を被った灰色の髪の女性が呟いた。

 

 彼女の名はチェッチカ。中肉中背よりやや少なめの体で、8402プロ所属の女性である。

 

 世にも珍しいピン芸人上がりの彼女は、その異色の経歴と奇抜な愛嬌により、見事に役を獲得し、事務所を移籍した人物である※。

 

 ※という設定。

 

「子供も見てんだぞ。教育倫理無さ過ぎんだろ」

 

 チェッチカは部屋に備え付けのテレビから、今日の魔王把握の中継を見た。

 

 モザイク一切無し。それどころかズームで迫る有様。

 

 この国が極めて極端な評価に晒されながら、国際社会が触ろうとしないのも頷ける。

 

「まあ、私がとやかく言うこっちゃねえですが」

 

 内心の第三者的な視点は、芸人としての視座に占領されており、それ故に強く否定できない。

 

 手に握ったガイドブックには、街中に女性用個室ビデオ屋があり、基本的にモザイク修正一切無しという注意書きに、誰が付けたか赤ペンで丸く囲ってあった。

 

「児童労働が許されないなんてのは、先進国の建前に過ぎないし」

 

 また精霊や妖精といった合法ショタやロリによる、風俗街のアクセスも、やはり赤ペンで印が付けてあった。誰がやったのか。

 

「前に来たことあるって連中が、断固として辞退したのと、嬉々として参加したのがいたけど、こりゃあ納得だわ」

 

 チェッチカはルームサービスで頼んでおいた朝食を済ませると、普段着のまま外に出た。

 

 撮影時の衣装が商品として売りに出された際、本人の分として貰ったもので、彼女はこれをジャージやスウェットの如く着倒していた。

 

「初日はすっかり寝ちまったし、どっかブラつくか」

 

 彼女は部屋を出ると、無目的にうろつくことにした。目的地を定めずに歩くことは、期待を裏切られないということでもある。

 

「あらチェッチカさん」

「おやメディオラちゃんパイセンじゃないっすか」

 

 現れたのは金色の長髪をした美しい美少女、子役の一人メディオラ・カプコネであった。

 

 年齢はチェッチカより下だが、芸能界では彼女のほうが先輩である。

 

「一人みたいだけど、お付きか保護者は」

 

「私一人だけです。行動するときは誰かを呼ぶようにとは、言われてるんですけど」

 

(現実でもこういう扱いなのか。この子って恵まれてるようで、なんか不憫だよなあ)

 

 撮影時でもメディオラの役は、担がれる神輿であり、孤立無援であった。

 

 役者たちが目をかけてはいたが、専属のスタッフやマネージャーを見かけたことがない。

 

(結構な大役だったのに)

 

「私も街に行こうと思ったんですけど、今その相手を探してる所で」

 

「なるほど、じゃあ私なんかどうですマドモアゼル」

「えっいいんですかチェッチカさん!」

 

「私も予定がなくて悩んでたんです。だったらここであんたのマネージャーやって、恩とか貸しを作ったほうが有意義ですよ」

 

「……クスっ、ありがとう、チェッチカさん」

 

 敢えて汚い言い方をしたが、メディオラは気にせずに、礼を言った。

 

 自分の照れ隠しを見破られたことは分ったが、チェッチカもあえてそれを表に出すことは無かった。

 

「オーケープリンセス。それじゃ下界へ繰り出しましょう。どんなことがあるか分からないので、私の傍を離れないで」

 

「分かりました! 騎士(ナイト)チェッチカ」

 

 かくて二日目の朝、新たなコンビが誕生した。

 

 

 そして別の階にて。

 

 

「もう部屋中がポテチでいっぱいだ」

「流石に壮観だなあ」

「これで皆へのお土産は心配ないじゃん」

 

 柚葉、ジュリア、こドラの三人は、足の踏み場もないほどのポテチを購入し、その中に埋没していた。

 

「部屋に入らない分は、既に郵送でハグレ王国に送ったからな、帰ったあとの皆の顔が楽しむだ」

 

 ジュリアはポテチの山の泳ぐように移動すると、何かと廊下に出た。その後に二人が続き、部屋の中で雪崩のような音がする。

 

 ドアが開かなくなった。

 

「……あとでホテルの係員さんに相談して、我々も観光に出掛けようと思う」

 

「賛成だ。この国は食事の美味しい店が多いと聞く。天下のハグレ王国民たるもの、味わわずにはいられぬ」

 

 二人はガイドブックを片手にそう言うが、こドラは神妙な面持ちで俯いている。

 

「どうしたこドラ、元気がないようだが」

「もしや食べ過ぎか。それならどこかで安んでいても」

「……二人には、折り入ってお願いがあるじゃん」

 

 ジュリアと柚葉は仲間の言葉に冷や汗をかいた。この先に待ち受ける言葉に予想が付いた。

 

 しかし止められなかった。何故か。それは自分たちの心の中にも、こびりついていたことだから。

 

「こドラ、取り敢えず、部屋に戻ってから」

「そうだ、ここで発言するのは流石に」

「ヌーディストビーチに付き合ってください!」

 

 渾身の土下座。本気で放たれた竜の叫び。

 

「最初はこドラ一人で行きます! でも三十分経って帰って来なかったら、助けに来て欲しいんです、お願いします!」

 

 それはまるで思春期の中学生男子の如き必死さ。

 

 人の裸が気になる。そしてこの国では、自分が晒せば人が晒してるのを見ても良い。

 

 勇気さえあれば望みのものに手が届く、恐るべき国なのだ。

 

「ば、ばか、こんな所でそんな大声で言うな!」

 

 周りに人はいなかったが、声は響いているため、他の階に聞かれた可能性はある。

 

「お願いです隊長! 一生に一度のお願い!」

「分かった。引き受けよう」

 

「柚葉!?君は何言ってるか分かってるのか!?自分も裸になるんだぞ!!」

「安心せよ隊長殿、ガイドラインのここを見るのだ」

 

「どれどれ、自衛のための武器や防具(胴体に身に着けないものに限り)の持ち込み可能。なんじゃこりゃあ!」

 

「つまり私は刀を、あなたは盾を持ち込めば、体を隠せるのだ。幸い皆して髪も長い。それだけでも前は何とかなる」

 

「そっそうか!って違う!恥ずかしいだろ!」

「うむ。だが三人で恥を共有すれば、幾らかダメージは減らせる」

 

「隊長、私は手持ちのBL本だけじゃなく、リアルもちょっと見てみたいじゃん!私隊長みたいに経験豊富な大人じゃないから、ここを逃がしたらチャンスはないと思うんだ!」

 

「うぐう!!」

 

 ジュリアはおっさんみたいなところがあって、尻の肉が最近だぶついているが、別に経験豊富ではない。

 

「侍の選択科目には衆道という同性愛の科目がある。これくらいの付き合いなら優しいものだ」

 

「お、お前たち、そんなにまでして、その、見たい、のか」

 

「『みたい』じゃん」

 

 まるで夏休みのかなづち大明神のように、鼻息を荒くする二人に、ジュリアは圧倒された。気持ちは分からないでもなかった。

 

「こドラ水着イラスト増えたり、コギャルドラゴン化したり、勢いが来てると思う!というか今しかない!秘密結社調べで魅力10だけあるなって思う!でも今を逃したら、次は9になってるかもしれない!そして王国の男子はみんな相手がいる!このロスタイムで決めるしかないと思うの!」

 

「私も便乗しようかなって」

 

「この過剰防衛コンビめが~!くううううう」

 

「隊長! お願いだよ隊長!」

「隊長!」

 

「…………こっ今回だけだぞ!」

 

 かくして三人はヌーディストビーチ行きを決めた。

 

 その先にセクシーもアダルティーもない、地獄が待ち受けているとも知らずに。

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