VIPRPG×ざくざくアクターズ×ハルスベリヤ叙事詩2 もしもクロスオーバーだったら   作:泉 とも

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温度差

 一方その頃チェッチカたちは。

 

「う、うめえ!たかがカレーがなんて美味さだ!」

「はむっ!はふはふっ!はっふ!」

 

 カレーに舌鼓を打っていた。ここは緑化委員会、バリヤーズカレー出張店。

 

 二人はそれぞれ気になるカレーを注文し、仲良く半分こしていたのである。

 

(この土鍋カレー、ただのカレーじゃねえ。煮込まれたカレールウと具は全くの別!普通カレーは煮込み料理だから、具材も一緒に煮込む物と思いがちだ。しかしこいつあ違う!)

 

 ※このモノローグは文字数に反して現実の時間は数秒も経っていません。

 

(薄く切ったパプリカと玉ねぎは丁寧に網で焼いてある。それ故に焼かれた野菜の触感が損なわれない。それどころか炭の匂いがアクセントになって、カレーに層としての厚みを持たせてる!)

 

 まるで料理漫画の解説役のような心理状況になりながら、チェッチカは土鍋カレーの感想に余念が無かった。

 

(まろやかでスッと入るスープ状のルウ、存在感を主張する野菜。取り分け曲者なのは肉のポジションに納まるこの茄子!でかくてボリュームのあるこの茄子、単純に焼くだけでも米をモリモリ食える、こいつがジャガイモめいて転がっている。こいつを食ったら米に手が伸びる!)

 

「ここのカレーすごくおいしいですね、チェッチカさん」

「ええ、こいつは流石にびっくりですよ」

 

 汗をかきながらほくほく顔で食べるメディオラは、ダブルチキンカレーと名付けられたものを、一生懸命食べている。

 

(こっちのチキンカレーもすげえ、柔らかくほろほろに煮込んだ鶏肉と、焼肉として調理したジューシーな鶏肉。シンプルな塩コショウだけの味付け。煮込んだの焼いたの、だからダブルチキン、シンプルだがそれだけに美味い!)

 

 皿のカレールウの中にはバラケタ柔らかな鶏肉と、ゴロっと転がるボリューミーな鶏肉。

 

(一見焼いたほうがカレーの味を損ないそうだが、さっぱりして油っけのないルウに、こいつの野趣な味付けは、問答無用で人をカレーライスへと突き飛ばして来る!特にこのライスだ。高い米じゃねえ、だけど普通の炊き方でもねえ。私も長いこと食道楽してきたが、これほどカレーライスのためのお米ってのは、食ったことがねえ)

 

 ※このチェッチカは旅先では取り敢えず飯屋を梯子する習性があります。

 

「ポテチばっかりと思いきや、どっこい侮れねえですね、ポテチ王国……!」

 

きばり「この国は腕っこきの料理人が多いからね、大手じゃなくても十分美味しいよ」

 

 そう言って他のお客にテイクアウトのカレーを渡すのは、この店の従業員らしき少女だった。聞けば魔法が意思を持って現れた『魔法具現化』と呼ばれる、精霊のようなものらしく、目の前の少女もそうらしかった。

 

 とはいえ長いことカレー屋で働いており、最近は自分が何の魔法だったか忘れつつあるらしい。

 

 そのため二人は座敷童とかブラウニーといったものを想像した。

 

きばり「もしよかったら、他のお店の地図とかいる?」

 

「おっいいですねえ。地元の飯屋を巡るってのも悪くないです。メディオオラちゃんはどうします?」

 

「あんまり食べると太っちゃうけど、でも美味しかったし……」

「食ったら痩せりゃいんですよ。私撮影時は走る回ってたから、未だに体重戻らないし」

 

「それもそうですね」

きばり「おっけ、じゃあ決まりね。さらさらーっと」

 

 きばりは二人に周辺の飲食店へのアクセスを書いたメモを渡した。

 

「おま、これ闇市って書いてあるけど」

きばり「観光客なら逆に安全だよ。他所の人が盗品を買って持って行ってくれるのが一番いいんだから。外国のことは知らないけどさ、ここの闇市の中でスリや盗みを働くのは、モグリか自殺志願者くらいだよ」

 

 また一つ知りたくないポテチ王国の闇を知って、チェッチカはやる気が下がった。

 

「さ、さいですか」

「盗品ってその、どこから」

 

きばり「まあ街中で盗んだものに、だいたい1,000ゴールドくらいつけて売るんだよ。闇市のタグが付けられて、それでこの国の人からはもう、盗まれなくなるの」

 

「遠回りな盗難防止サービスっすね」

「そうかな、他の人が買っちゃったりするんでしょう?」

 

きばり「そうだね、アイドルの下着ドロなんかは稼ぎ頭でね、それ目当ての観光客もいるくらいだよ、私も女だけどさ、女の情念は怖いね」

 

 男性アイドルの下着を欲しがる女ドルオタがひしめく闇市。

 

 メディオラはそのおかしさに笑い、チェッチカはその生臭さに閉口した。

 

きばり「そこのやみっち商店はさ、客に詐欺商品を売りつけるんだけど、基本的に尖った性能の装備品なことが多いよ」

 

「詐欺じゃないのでは?」

 

きばり「いや、その顧客が要らないものを狙って売りつけるから、詐欺ではあるんだ」

 

 視点を変えれば有用でも、今その人には要らないピーキーなアイテムを売りつける。

 

きばり「場所も闇市の入り口で、かなり良心的なほうだね。レジに偽装したスキミングも無し、現金のみの取引で、お金がないならそれまで」

 

 二人はきばりの言葉の端々から、今の言葉から外れた個所は、危険のチェックポイントであることを理解した。

 

「なるほど、ご親切にどうも」

「ありがとうございました!」

「あーいまたどうぞー!」

 

 異国で思わぬ冒険めいた展開になり、二人の意気揚々と店を出た。目指すは闇市。安全な所から、ちょっと危険な場所を除く。正に観光気分であった。

 

 

 一方その頃。ヌーディストビーチ脱衣所。

 

 

 ――あっああ、ああああああ~~~~~~!

 

 

 中から聞こえたこドラの悲鳴に、二人はまだ30分も経っていなかったが、脱衣所に駆け込んだ。

 

 鍛え抜かれた聞き耳は、喧噪の中で仲間の声だけを拾い続けていたので、おおよその成り行きは分かっていた。

 

 だからジュリアと柚葉は顔を真っ赤にしていた。特に後者がそういう顔色になることは、それだけ事態が深刻であることを意味していた。

 

 二人が発見したとき、こドラは壁に手を付いて、尻尾を持ち上げ、見知らぬ女に優しく毛剃りされていた。ケツを。

 

エロリア「はいこれでオッケー。ほらほらもう泣かないで、綺麗になったから。これでもう大丈夫よ。私と同じ、ね?」

 

「うっぐす、ひっぐ、うええ、ほ、ほんとに。ほんとにこれでいいの……?」

 

エロリア「いいの。私を見なさい。この通りツルツルだけど、堂々としてるでしょ。逆に恥ずかしくないし、なんだったら私に隠れてればいいから、ほら行きましょ」

 

「あ、はっはい」

 

 裸で去って行く友人を見ながら、ジュリアと柚葉は石のように黙りながら、その実心臓は早鐘のように打ち続けていた。

 

「……隊長」

「言うな」

 

「私はな、薄いほうなんだ」

「言うなよ」

 

「でも流石に、自分のお尻をまじまじと見たことは、ないのだ」

 

 袴の中に手を入れて、自分の尻をまさぐる女侍。人ならば産毛くらいは生えている。

 

 当然、それが当然。しかしそれが産毛なのか、アマゾンなのかは判断ができない。まるで口の中では弁慶並に存在感を放つ虫歯のように、縮尺を捉え切れない。

 

「隊長も、もしかしたら」

「だから言うなって!」

 

 思わず声を荒げてしまうジュリア。おっさんくらいズボラな私生活、その死角から挿し込まれた、恐るべきちくちく言葉。

 

「私たちも一緒に行けば、あの人にしてもらえたかもしれない」

 

 柚葉の言葉は即ち、この後の行為を、この場の二人で試みずに済んだ、という意味を含んでいる。

 

 こんなこと身内に頼む方が辛い。

 

「私はやらないぞ! 自分のもだ、他人に指摘されたっていい! 自分の尻がちくちく言葉よりちくちくしてたっていい!」

 

「そうか、そうだよな。それも潔いかもしれない……」

 

『……………………』

 

 気まずい沈黙。

 

 二人は何も言わないまま、ずっと自分のケツをごそごそし続けた。

 

 言えない。もしも確かめるなどと言えば、いやこの場を離れでもしたら、それはもうトトイレか風呂で『来た、見た、刈った』となることは必定。

 

 しかし、一人では処理しきることは至難の部位、特にジュリアはデカ尻であった。サイキックむちむちポークさんを笑えないくらい。

 

「隊長」

「だめだ」

 

 全ての人は基本的に、生まれてから死ぬまで、一度も剃らずに死んでいく。つまり生えているのが摂理。それを他人に見せる。

 

 ここに来て、大真面目に恥でしかないことに直面し、二人の内心は悶え、千々に乱れた。

 

 だがいつまでもそうしてはいられない。彼女たちは答えを出し、動かねばならなかった。

 

「恥を承知で頼む。私とけ、ケツ毛の処理を」

「柚葉、それが何を意味するか分かってるのか……!」

 

 既に二人しか残っていない脱衣所で、女侍は土下座を繰り出した。

 謝罪を装った最終的精神攻撃である。

 

 耳まで真っ赤にした柚葉は、全身を震わせながら頼んだ。正に二人だけの秘密を、今から共有して欲しいと。

 

「生憎だが、私はカミソリもジェルも持っていないぞ。指で一本一本抜けとでも言うのか」

 

「あ、それなら大丈夫、こんなこともあろうかと、私もカミソリとジェルは持って来てるんだ。スネとか脇に使う予定だったけど」

 

「おまっ、おまっお前……!!」

 

「頼む隊長、こんなこと、もうあなたにしか頼れない。私の初ヨゴレ、どうか受けて欲しい」

 

 どうしてこドラといいこいつといい、後退のネジを外して来るのか。ジュリアは目眩がしたが、彼女もまた逃げる気は無かった。

 

 最早何から逃げればいいのかさえ、分からなかったからだ。

 

「今日のことは、誰にも言わないでくれよ……」

「隊長、ありがとう。柚子は今日のことを、帰ったらすぐ忘れることにしよう」

「是非そうしてくれ」

 

 かくて二人もこドラの後を追うべく、どちらからともなく服を脱ぎ、壁に手を付いたのであった。

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