VIPRPG×ざくざくアクターズ×ハルスベリヤ叙事詩2 もしもクロスオーバーだったら   作:泉 とも

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漢たちの祈り

 ポテチ王国ヌーディストビーチ。

 

 昼の太陽輝く浜辺には、全ての衣を脱ぎ捨てた者たちが、解放の二文字を求めてこの場にやって来る。

 

 それは8402プロの女優たちも例外ではない。むしろ厳しい役作り、体作り、時には自己を発狂寸前にまで追い込む撮影環境は、役者に十二単の如く様々な制約を纏わせる。

 

 芸能人が酒に溺れて全裸になるなど、場所を問わなければ全く珍しいことではないのだ。

 

 だからこそ、このヌーディストビーチにある種の憧れを抱いて訪れる者は、決して少なくない。他人の性的な何かを求める利用者は、むしろ少数派。

 

 心の断末魔に近い渇望により、全てを脱ぎ捨てたくて、裸になるものが大半なのだ。破滅することなくそれができる、この場は現代社会において、ある種の救済施設でもあった。

 

「なあクロ」

「なんだいジャッキー」

 

「これはどういうことだよ」

「どうって言われても」

 

 ビーチの隅で話すのは、8402プロの子役、ジャッキとクロパトキナだった。どちらも金髪の美少女で、当然ながら二人ともマッパだった。

 

 彼女たちは所謂、同性愛者であり、レズカップルである。どちらも少女のあどけない肢体を晒していたが、顔と対照的な形をしている。

 

 ジャッキが冷たく鋭い、据わった目をしているのに対し、躰は艶めかしく、ほんのりとふくらみを主張しており、毛は薄い。

 

 クロパトキナは幼い顔つきに反し、鍛え抜かれた筋肉質な肉体をしており、グロテスクとさえ思えるバランスをしている。下の毛も濃い。

 

 役のために鍛えたとはいえ、本人も自分の体にコンプレックスを抱いていたが、ジャッキはむしろそれを好んだ。これよりエロい体は見たことがないと言い、撮影外で何度も迫り、そしてモノにした。

 

 インピオは、いいぞ。

 

 ともあれそんな二人だから、この旅行で裸になれる場所があると知り、遊び半分でやって来たのだが。

 

「私はさあ、うちの事務所の人たちもいるかもって聞いてさあ、期待してたんだよ」

 

「はあ」

 

「先輩方にコナをかけたりかけられたり、持ち帰ったり持ち帰られたりしたかった訳」

 

「えっと、それってどうゆう」

「クロ2号とか3号を見繕う予定だったんだよ」

「えっ、それじゃ私は」

「クロはクロ1号でしょ」

「アッハイ」

 

 クロパトキナはそこで黙った。自分が1号、つまり正妻とか本命なのか、あくまでも自分が基準として、その最初なだけなのか。

 

 掘り下げるのが怖かったので、聞かないことにした。

 

 ジャッキはクールビューティーのように見えて、意外とはっちゃけるタイプであり、がっつり肉食系であり、欲しいものはガンガン求めるタイプである。

 

 なので彼女が言ったように、ここには他人を物色しに来たのだが。

 

「見ろ。うちの女性陣も結構いるだろ」

「そっすね。めっちゃ体綺麗ですね」

 

「やっぱ一流の女優だからさ、自分の体を晒しても、相手の体が見たいってのは有る訳よ。お互いに魅了し合ってるんだ」

 

「分かります。モズーダさんとか凄かったですもんね」

「設定が無理有り過ぎたよな、あれがお婆ちゃんキャラって」

 

「やましい気持ちとかなくさ、純粋な性欲が呼び起こされるんだよ。そういう人たちが今日は来てるんだよ。なのにアレ何」

 

 ジャッキが指差す先には、砂浜を占拠する大量の男たち。

 

 勿論全裸である。

 

「何って、うちの男性陣でしょ。ここ女性専用車両じゃないし」

 

「別に男がいたっていいんだよ。私は男もイケるから」

 

 クロパトキナはジャッキより腕が立つが、それでもこの恋人を時折恐ろしいと思うときがある。

 

「普通にしてれば気にならないよ。けど何だよ。この人数は」

 

 浜にいるのはハルスベリヤ叙事詩2のジバ・ラダドゥーム編に登場する男優たちだった。

 

 当シナリオは全体的に真面目でシリアスだが、一本調子を避けるために、オペラを下地にしたインド的なダンスを織り交ぜることで、ユーモアを取り入れて成功した。

 

その際の主要なメンバー、バックダンサー、演奏、そういった男たちが、整列していた。

 

 そして。

 

「エーマスティーヤ・ムラッカウィーア・アヌンナマーア・ウェーイィア!」

『エーマスティーヤ・ムラッカウィーア・アヌンナマーア・ウェーイィア!』

 

 ※歌詞は適当です。

 

 男たちは歌を歌い、演奏を背に受け、突如として踊り始めた。

 

 収録の打ち合わせはしていない。彼らは自分の心のままに、演じていた。

 

「何か、男の人たちは、前から決めてたそうよ。旅行先で皆で何かしたいって、それでアレを決めたみたい」

 

 そういうのは同じく8402プロのモブ女性だった。一般兵にも女性が何人も登用されているので、そういう中から、来ている者もいた。

 

「薬でもキメてんのか」

 

 一流の俳優たちが全裸で、一心不乱に豪華な演奏を背に踊る光景は、価値で言えば金を幾ら積んでも、買えないものになるだろう。

 

「キレッキレですね」

 

「冗談じゃないよ。こんなこと真面目にやってどうすんだ。私の煩悩返せよ」

 

 細マッチョからゴリマッチョまで、固太りから亜人まで、色とりどりの裸体が、夏の太陽の陽射しを浴びて、汗の鏡に映して応える。

 

 全てを曝け出した漢たちの情熱と情念は、やがて一つのうねりとなって、母なる海に捧げられていく。

 

 美しくも勇ましいインド系楽器と、高くも力強い歌声が、父なる天へと駆け上がって行く。

 

 それは儀式の光景。原始の頃に人々がしていたであろう、人類が子どもの頃の姿。

 

「見ろよステビアさんのあの顔、本編と同じ目をしてるぞ。気の毒に」

 

「役柄がほぼ狂人でしたからね。羽目を外したかったんだろうなあ」

 

 そこには死んだ目をした女が一人いたが、二人はあえて見ないようにした。

 

「どうするジャッキー」

「ビーチは広いんだ。他に行くか、日を改めよう」

「え、また裸になんの」

「私はクロが一緒ならなんぼでも脱げるよ」

「アッハイ」

 

 そうは言ったものの、誰も、その場を動かなかった。男たちの踊りから、誰もが目を離せなくなっていた。

 

「こういうとき出来が良いと困るよな」

「クソ映画なら途中で席立てるんだけどね」

 

 

 一方その頃。ポテチ王国天界。

 

 

エターナル「全くあなたという方はガミガミクドクド」

カオス「うへー」

 

 落とした世界樹の種の代わりを貰おうと、正直に話したことで、カオスは説教を受けることになった。この世界における三大神の第一位、それが主神エターナルである。

 

 海と世界を背負い一体化した、異形の女神であり、その背負った世界『エターナルの海』からは、無限に揺蕩うもしもの世界が収められている。

 

 という設定。

 

エターナル「次は気を付けるよ……う……んはああああああ!!」

カオス「どうしたいきない、ゴメスに掘られたみたいな声ぉおおおおお!?」

 

 二柱の神はその場に届いた念により、大きく仰け反った。

 

エターナル「こっこれは、こんな、おおきい、祈り、んん、初めてぇ!」

カオス「すっごいオスの臭い、くっさいのに、この念を嗅いでるとクラクラしちゃんほおおおおお!」

 

 今まさにポテチ王国では、全てのものに感謝を捧げる漢たちの祈りが、最高潮を迎えようとしていた。

 

カオス「しゅごい、こんなおっきな信仰心初めてえっ!!」

 

エターナル「こんな真っ直ぐな気持ちでガンガン来られたらあ、あっもうイクイクイクイク、イッグウウウうううううううううー――――――!!!!」

 

 この瞬間、ポテチ王国から幾柱からの神々が昇天した。神は死ぬとどこへ行くのか、それは誰にも分からないが、今一つの浜辺で、一つの祈りが終わった。

 

 

 そして。

 

 

エロリア「すごいものを見たわね」

 

「見たけど、何か違うじゃん。こドラが見たかったのは、こういうんじゃないよ。もっとこう、もっとくだらなくて、やらしくて、恥かいた元が取れるような」

 

 周りと同じく裸になりながら、異性の裸も見たが、性的な興奮や好奇心は、完全に吹き飛ばされ、こドラの脳内は次亜塩素酸ナトリウムで消毒したかのように、漂白されていた。

 

エロリア「元は取れたと思うけど、まあ気分は台無しよね」

 

 こドラは確かに男性の愚息を見た。それはもう見た。何十人分も。

 

 しかし最初のような、羞恥と興味と性欲があるときに、何人分かを見て、緊張と共に異性の秘密を獲得したかったのだ。

 

 それが普通の感性であり、ある種の順番であった。

 

 ただ知識や経験として見てしまったことに、彼女の初体験は汚れた。いや、汚れられなかったというほうが正しい。

 

エロリア「ねえ、せっかくだし、気分直ししない?」

「気分直しって?」

 

エロリア「決まってるじゃない! 私とエッチなお店に行って、エッチなことするの!」

 

「ええ!?だっいや、こ、こドラはただ、男の人のが、見たかっただけ、だし」

 

エロリア「いいじゃない。減る者じゃないし、女同士で行きずり後腐れ無し。それに」

 

エロリアは勝ち誇ったように言うと、こドラをそっと抱き寄せて、耳打ちする。

 

エロリア「どうせそっちも興味あるんでしょ?」

 

 こドラの脳に、急速に羞恥心と煩悩が蘇る。行き場を失ったはずの情熱が、今一度首をもたげる。

 

エロリア「女の子同士だから、何も心配ないわ。恥ずかしい思い出も、ここに置いて行ってくれればいいの」

 

 こドラとエロリアは脱衣所に戻ると、服を着て外に出る。

 

「あ、そういう服装だったんだ」

エロリア「そうよー。なーに、ずっと裸だと思ってたの?」

「そ、そんなこと」

 

エロリア「ウソウソ冗談。私ね、今晩ここにいるから、良かったら来て。でもそのときは、帰してあげないから」

 

 一枚のメモを手渡すと、エロリアは去って行った。後に残されたこドラは、そのメモを開いて真剣に考えこむ。

 

 これまでの人生でもこれほど悩んだのは、仲間と共に死線を潜ったときくらいだった。

 

(こんな、こんなとんとん拍子に進んじゃって、いいのかな。アクシデントもあったけど)

 

 こドラは悩んだ。悩むあまり、ジュリアと柚葉がいないことに気が付かないほどだった。

 

「すごいものを、見てしまったな」

「恐るべし、ポテチ王国、恐るべし……!」

 

 当人たちもまた、すっぽんぽんのまま、完全に意識をやられていたのであった。

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