VIPRPG×ざくざくアクターズ×ハルスベリヤ叙事詩2 もしもクロスオーバーだったら   作:泉 とも

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主体性の無さ=引っ込みのつかなさ

 三日目の朝。

 

 ――今朝のポテチニュースの時間です。今朝未明、廃棄食糧処分場にて、男性職員二人が、意識不明の状態で発見されました。職員は病院へ搬送され、当初はポテトチップスの食べ過ぎによる窒息かと思われましたが、病院側は『窒息後数時間が経過したにも関わらず仮死状態であり、また直ぐに蘇生したこと、脳に後遺症が残っていないことから、病気や物理的な要因ではなく、呪術的な方法による昏倒した患者に、無理やりポテチを詰め込んだ可能性が高い』との見解を示しました。

 

「ヒエッえ、呪い?今呪いって言ったの?医者が?頭おかしいんじゃないの?」

 

 部屋の中でテレビを見ていたミシェルは、猟奇的な報道に陰鬱な気持ちになった。彼女はこの国の混沌に馴染めないでいた。

 

 ――次のニュースです。現在国道及び王都から各方面への道が、食べ過ぎによって太った観光客たちにより封鎖され、現在通行止めとなっています。この渋滞は昼頃まで続く見込みとなっています。

 

 画面には太って「もどき」のようになった人々が、地面に寝そべり動けなくなっている光景が中継されていた。

 

「あ、シュフランだ」

 

 丸々と太った客に交じって、同じ事務所の先輩の姿が見えた。ヌイ―に仕事辞めたら体形が崩れると言われていたが、それは現実のものとなった。

 

「あの人撮影終わると激ヤセしたり激太りすんだよね。それでも収録までにはきっちり戻して来るんだけど」

 

 言いながらミシェルはテレビのスイッチを切った。

 

 一週間の休暇旅行も早三日目、明日で折り返しである。にも関わらず、有意義な過ごし方を出来ていない。

 

「私って観光旅行とかあんまり興味ないんだよねえ。どうしようか」

 

 食べ歩きはせず、ほとんどカロリーゼロのフルーツバイキングで過ごすばかり。それはそれで美味だったが、他はこの国のB級またはクソ映画を見るなどして、時間を潰すだけだった。

 

 ベッドの上で寝返りを打ち、パンフレットをペラペラと捲る。

 

 観光地の項目を順番に見るものの、どれもピンと来ない。

 

「魔王城、ポテチ城、アンデットナイ城、結構お城多いんだ。機動幼塞ホワイトハウス、秘密結社ブライアンパンマン工場」

 

 五大組織と言われる各軍団の拠点は、それぞれが観光名所として、このシーズンは公開されている。

 

 そのためどこも人でごった返しており、今朝のニュースのような事態を引き起こしてもいた。

 

「バリヤーズの森、緑化委員会、砂漠化委員会、大陸魔術師協会にカナエール教の教会」

 

 中堅所やマイナー所もそこそこ人がいる。

 ミシェルの興味は引く物は特には……。

 

「ん、勇者の家?」

 

 あった。

 

(勇者って確か、あの、ガチホモにお尻をずぼずぼされてた芸人さん、だよね)

 

 パンフレットには『もしかしたら勇者に会えるかも!?』と無責任なことが書かれている。つまり行っても会えるとは限らない。

 

 しかし世の中不思議なもので、損するかも、とか時間を無駄にするかも、とか、ロスが言い訳のように働くことを期待して、出掛ける気になる人種がいる。

 

(もしも会ったら、話を聞いてみようかな)

 

 間違いなく尊敬できないが、紛れもなくこの国のトップ芸人。

 

 アイドルでも役者でもないが、それらを押し退けて、まるで番組の司会を得た芸人のように、確固たる地位を得ている男。

 

 勇者とまで呼ばれるのは、国民の感覚を麻痺させるほど、日夜繰り返す体を掘った、いや張った芸の賜物。

 

 虚仮の一年巌も徹す。生半可なことではないはず。

 

「行くか」

 

 ミシェルはベッドから身を起こすと、如何にも旅行中の芸能人ですみたいな、なんちゃって地味ファッションに着替え、一人ホテルを出た。

 

 誰かに付いて来て欲しかったが、こんなことで誘ったら自分の経歴に傷が付きそうだったので、断念した。

 

 そして。

 

 勇者アレックス宅。

 

「あの、勇者アレックスさん、ですよね」

アレックス「アッハイ。勇者アレックスです」

 

 そこには今日の魔王把握を済ませて、ロングソードを杖代わりにした、この国の勇者がいた。

 

 不自然にズボンが膨らんでおり、オムツをしていることが、傍目にも分かった。

 

「あの私、観光でこの国に来てて」

アレックス「ああ分かります分かります。中どうぞ」

 

(うわやだ、本当にいた)

 

 ミシェルは本当にいたことにショックを受けながら、逃げ出すことも出来ずに、自宅が観光資源扱いを受ける男の家に上がった。

 

アレックス(え、何?やばくね?芸能人かってくらいかわいいんだけど。いや観光客が家に来るのは分かるよ。バカップルが写真撮りに来たとかあったよ。でもやばくね?こんなに顔面偏差値高い娘始めてだよ?魔王とする前の嫁様くらいかわいいんじゃね?)

 

 この数秒の間にテンパることさえできない勇者は、来訪者をリビングに普通に案内した。

 

「あ、お邪魔します。案外普通のおうちなんですね」

 

「いやあ王様の悪ふざけも困り物ですよ。プライバシーとか関係なくて」

 

 などど当たり障りのない話をするのもこれまで。テーブルを挟んで座ると、それで会話が途切れる。

 

アレックス(……あれ、何か、言ってこないな。何も。オレに会いに来たんじゃないのか)

 

アレックス「ハッ」

 

 彼の脳内にスパークするのは、数日前の王様との会話。

 

アレックス(待って待って待って待って!あり得るのか!だとしても流石にこんな美少女にそんなこと言われる心の準備がくぁwせdrftgyふじこlp)

 

「あのっ!」

 

アレックス「はっはい!」

 

 破裂しそうなほど高鳴る二人に心臓。

 共鳴しているかのように赤面する男女。

 

「あの、ガチホモにお尻の穴、ずぼずぼされてた方、ですよね」

 

 ニンニンが登場するときのエフェクトの全てがアレックスを襲う!

 

 様々な顔グラの苦痛な部分が一周してRTPに戻る!感情のやり場を失い、もうどうしようもなくなったとき! アレックスはこの顔に逃げ、待つのである!

 

 嵐が過ぎ去る瞬間<トキ>をっ!!

 

 だがその一方で。

 

 ――お尻の穴、ずぼずぼされてた方、ですよね。

 

 ――ずぼずぼされてた方ですよね――

         <ずぼずぼされてた方ですよね>

               ずぼずぼされてた方ですよね。      

 

 リフレインしていた。可愛い声で、自分の恥部を、囁き穿る、美少女の声を!

 

アレックス「はい。私がそのアレックスです」

 

「あ、やっぱり、そうなんですね……」

 

 アレックスこの恥辱に新境地を開拓する気分であった。

 

「お尻、大丈夫ですか」

 

アレックス「ええ、でも今日は観光客の患者がいっぱいで、治療は後回しになってしまって」

 

 アレックスはちらりと己が下半身を見た。もっこりと膨らんだオムツを履いたであろう下半身を。

 

アレックス「おかげでこの様ですよ。ははは」

 

 それはつまり、彼のケツはゴメスに掘られて未だズタボロ、HP1で蘇生したような心細い状態であることを、意味していた。

 

「じゃあ、まだお尻は怪我したままなんですね」

 

アレックス「ええまあ」

 

「…………」

 

 重い沈黙。ともすれば彼女の芸能人生の履歴に傷が付きそうなワンシーン。しかし今は誰もいない。

 

 ケツが掘られた勇者の家などブライアンくらいしか来ない。

 

 そのブライアンだって橋の上かアレブラ平原にしかいない。

 

 夕方に家族が帰るまで、この家には基本的に彼しかいないのだ。

 

「あの、ちょっとお願いがあるんですけど」

 

アレックス「何でしょう。あ、サインとか?」

「いえ、それは別に。あの、ですね」

アレックス「はい」

 

 アレックスはRTP顔の裏に、つのだじろうタッチの顔グラを隠して、待った。

 

 一言一言がASMR的な美少女の言葉を。

 

「アレックスさんのお尻、見せてもらうことって、できますか……?」

 

 あまりにも大胆。

 あまりにも失礼。

 あまりにも直球。

 

「あっ、勿論嫌ならいいんです。お仕事でやってるだけですもんね」

 

 違います。

 魔王把握のオチまでは彼の職務に含まれません。

 

 Q、じゃあなんで毎日いいように掘られてるんだ?

 A、相手がゴメスだからです。

 

 年頃の青年の家に上がり込み、尻を見せろと要求する女優。

 

 性的な欲求、或いは要求と、思う者も要るかも知れない。

 

 少なくとも、アレックスはそれを感じていた。自分自身に。この展開に。

 

 一抹の恐怖を覚えながら。

 

アレックス「……カーテン閉めて。オレの部屋、行こうか」

 

「えっいいんですか。本当に」

 

アレックス「オレも伊達にこの仕事長くないからね。でも、後悔だけは、しないで欲しいな」

 

「分かりました。よろしくお願いします」

 

アレックス「なんなら、友だちも呼んでいいから」

 

「本当ですか!」

 

 策士策に溺れる。または自家中毒とでも言おうか。

 

 ミシェルは断られることで、話を打ち切ろうと思っていた。しかしアレックスはその広がり切ったケツ穴の如く、OK&GOサインの数々で、全てを受け入れる、

 

 彼女の思惑は外れ、自分でも最早何がなんだか分からない状況へハッテンし、暗い優越へと繋がろうとしていた。

 

 勇者による何一つ危険も悪意もない、暗黒のサービス。

 

 開けてはいけない扉が今、開かれようとしていた。

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