犬を飼いたい支配くんと飼われたい悟ちゃん   作:やるまる

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悟わんわんとの交流の回
読み返せば返すほどつまらないのはなぜなのか。南米は何も答えてはくれない。

※キャラ崩壊注意



過激化する要求とダメ飼い主

 

パンッと激しい破裂音。

襖が鳴らす大きな音と共に、輝かしい笑顔の子どもがまたも訪れた。

 

「ご主人っ」

 

好意と期待で満ち溢れた青い瞳、機嫌が良さそうに口角の上がった桜色の唇。

短く切りそろえられた白髪と、短い前髪から覗くかわいらしいおでこ。

自信満々で堂々とした立ち居振る舞いに不相応な、細く頼りない体躯。

────五条悟その人である。

 

「…こんにちは」

 

僕の諦観の籠った挨拶も、これで3回目である。

相変わらず、僕の顔は薄笑いのままで動かない。

 

「遊ぼうっ!」

 

悟イヌは遊ぶのが大好きなようで、ほとんど毎回これである。

四つん這いから将来の特級術師による全力突進が来るので、↓↘でしゃがみガードを合わせる。打点が低くてうっかりすると脛が全壊するから正面から受ける他ない(0敗)。

 

「これが終わったらね」

 

軽く()なして眼下にある旋毛を撫で、座卓に向き直った。

 

 

────僕は犬ライフを満喫していた。

最悪なことに、五条悟は‟僕を主人と思い込んでしまった犬”という催眠が未だに解けず、命令で忘れさせても僕を見ると犬の人格になってしまうようだった。

こんなことになったのは初めてで、おそらく六眼によって過剰に催眠が効き過ぎ、その効果が「忘れろ」という言葉で一時的に解ける、というパターンがこの数回で作られてしまったのだろう。たぶん悟以外には起こり得ないサンプルケースで、似たことは今後無いと思う。

 

……仮に、「忘れる」命令をせずに僕が逃げたら、悟はそのまま犬として生きるのだろうか。そんなことには絶対にならないが、忘れさせたままでも僕に会うだけで犬になるのは全てが問題だ。遠目からでもこの子は僕を認識できるし、近くまで来たら肉眼で見てしまいアウト。

僕は転生の恩恵なのか呪力量が多いからすぐに脅威と見做されるだろう。その場合は悟の生活圏や今後の行動範囲である日本、稀にある海外出張を含めると主要都市や信仰伝承の残る土地はアウトになってしまう。最悪を想定するなら辺境まで逃げるしかないが、その前に僕自身の封印作業をしなければ長くその土地に住むこともできない。クアラルンプールはまだまだ遠い。ハードルが、ハードってね。ははは。ここはカットで。

 

「ねえねえねえ遊ぼ〜〜〜!」

 

作業の息抜きに悟用の教材(ドリル)を解いている僕の背中にぐりぐり頭を擦り付けるサトル=イヌ=ドリル。

回答を書いて教材から手を離し、「終わったよ」とぐちゃぐちゃ頭の悟に声をかける。

学業は自信がある教科以外は点でダメだから、合間に取り組んでみている。祖父にまた頭を下げるのは御免だし、なんらかの閃きが落ちてくるかもしれない。しかし悟は算数を飛び越え、数学だけ飛び級ガンガンしててそろそろ高卒理解度では追いつかなくなってきたため、飽きたというのもあり別の教科に手を出そうか悩む。

 

「なんで俺のやつ解いてるの?」

 

今日の初ナデにご満悦の悟は、座卓の上にある教材に疑問符を浮かべる。

 

「教材無いから借りてるの。ごめんね」

 

「いいよお〜」

 

「代わりに何かしたいことがあったらするよ」

 

殺人でも誘拐でも。口には出さなかったが、贖罪意識でどうしても悟には甘くなってしまう。この状態の悟が予想を飛び越えてくることは無いだろうから、虚しい会話だと思う。セロトニン自家栽培しても鬱にならない方法を教えてほしい。

 

「ん?したいこと……ン〜〜〜?」

 

「僕にしてほしいこととか、欲しいものでもいいよ」

 

尋ねた理由としては、悟自身の関心が何なのか興味があったから。

原作を見るに、娯楽は桃鉄かデジモン等のゲーム類だが、たぶんそれは高専入学後だと思う。現在の悟に「何かが欲しい」という感情があるなら、それを叶えてあげたかった。仮に商品だった場合、譲ってもらう(盗んでくる)ことになるだろうけど。

 

「撫でて!」

 

ドリルで跳ね散らかし絡まった髪を解かれ、撫で整えられている悟のたいへん元気な要求。

 

「今してるね。他には?」

 

「ええ〜〜?一緒寝る?」

 

「寝ないね」

 

寝るわけがない。睡眠は意識の切れ目だから、これ以上悟の精神に何か不都合があってはいけない。これは無理。

「んんう」と唸って不満そうな悟。しかし譲れない。

 

「欲しいものは?」

 

「ほしい…?」

 

悟はジッと僕の顔を見つめながら、徐に顔を寄せてくる。

唐突に接近した悟から立ち上る、上品な石鹸の香り。おそらく悟自身の汗も混じった仄かに甘い香りに、一瞬思考が停止する。

 

「……んっ!?」

 

悟はそのまま僕の首筋に顔を埋めると、スウスウと、まるで匂いを嗅がれているような冷たい空気の感覚に、思わず驚いて声が出てしまう。

 

「これ、ほしい」

 

「く、臭かっ、た?かな」

 

突飛な行動に動揺しつつも、風呂でしっかり丁寧に洗っていたか?という疑問が脳内を駆け巡る。10歳に加齢臭など無いが、嗅がれる程臭いというのは看過できない。自覚はないが体臭に問題が出るような食べ物が何かあっただろうか。

……いや、慣れてしまって気付かなかったがここは拷問部屋の隣じゃないか!やっぱり消臭剤を…!

 

「これ〜」

 

ぐいぐいと服を引っ張られ、ハッとする。グルグルと思案していて、悟の話を聞けていなかった。

 

「ごめ、なんて?これっ、て」

 

悟は、僕が身につけているお仕着せの作務衣の結び目をシュルシュル解き、そのまま前をはだけさせ脱がそうとしていた。

 

「えっ!?悟、これ一張羅で、え」

 

「くれる?」

 

「……………」

 

服を?なんで?

 

「ね〜え〜」

 

「………………………………………」

 

犬が気に入った毛布やぬいぐるみを肌身離さないアレ(ライナスの毛布)とも取れるし、それが僕の衣服なのは僕への好意からくる行動ならまあ全部自業自得だし叶えてあげたいのは山々だが、仮にあげたとして五条家にギリなんとか存在した子ども用作業着の一張羅が無くなって僕はちょっとだけ困るがそんなことよりも。悟が自室に持っていったら、人間状態の悟に現在の僕のおおまかな身体情報を与えてしまうということで、それは困るんじゃないか?同年代と知れば「舐めた真似を」と激昂したり外様の使用人の1人と知れば1人1人呼び出され僕の番で大惨事になる可能性がある。それでなくとも、ネズミで聞き耳を立てている限り常に僕に怒っている悟を知っているだけに、刺激を与えるような情報は非常にまずい。

 

「あ、こっちのが匂い強い」

 

100点リーダーくらい黙りこくった僕に焦れて、悟はさらに下の肌着を奪おうとしてくる。

いやっ!やめてっ!大人の人呼んでっ!いややっぱり呼ばないで!

 

「悟待って待って!僕の匂いがついたのが欲しい、ってこと?」

 

「うーん?うん。お部屋にご主人来ないし、寂しい」

 

焦って早口になった僕の疑問に、要領を得ない悟の言葉。寂しいという悟の表情は耳ペタした犬を幻視するような哀れさで、何でも言うことを聞いてあげたくなる。

しかし「そもそもお部屋にいるときは人間なんだし、別に寂しくもなんともないんじゃないかな!?」と言いたいのをぐっと我慢して、「ハンカチとかじゃだめかな?」と尋ねる。

 

「ハンカチって匂いついてる?」

 

「これから付けるから、それじゃダメかな」

 

「ん、ぅ〜ん……」

 

悟はうんうん悩み始める。

…ハンカチに匂いつけるってどうすればいいんだろ。一日脇に挟むとか?…気持ち悪ぅ。ポケットでいいかな。

 

悟の妥協を根気強く待っていると、「……やっぱりお部屋で一緒に寝たい。ご主人、俺の部屋で寝ようよぉ」などと言ってぐずり出してしまう。

 

「そっちに帰ってきたかあ〜!」

 

僕は頭を抱えた。

悟ははだけた僕の体にしがみつき、ぼそぼそと喋り出す。

 

「なでなでしながらぎゅーってして、お布団ご主人の匂いにして、そのまま寝たい。朝も、ご主人のことぎゅってしたい。稽古の時も、じいやよりご主人に褒められていっぱいなでなでしてほしい。もっと強くなって、なでなでいっぱいされて……うぇ、そしたら、1番強くなったら…俺以外のやつ飼わない?俺、1番じゃないから、ひぐっ。俺の部屋来てくんないの?綺麗だよ、ばあやたち掃除ちゃんとしてるしっ、お布団こっちよりフカフカだし…ぅぐっ、勉強もっ、俺が見てあげるし、ぃ……ご主人の言うこと、ちゃんと聞くしっ!それに、それにっ」

 

「………えっと、」

 

所々、しゃくり上げながら捲し立てる悟は、言葉を続けようとして遂にはポロリと涙をこぼした。

悟がいっぱい喋ろうとしてるから聞かなきゃな、と黙っていた僕は、悟が僕に会っていない間のことを全て覚えたまま(・・・・・・・)でいることに今気がついた。

そうなると、会わない間の記憶が合算され、その間の寂しさを思い出した瞬間に投入された、ということになる。嘘やん。

 

「………えーっ、と」

 

たった今判明した事実に驚愕と問題解決を同時に迫られ、汗がだらだらと流れるのを感じる。

……まず、罪悪感がすごい。そもそも全部僕のせいなのは自明の理。マッチポンプの寂しさを埋めるより先に僕を埋めた方がいいんじゃないかな?

でも、本当にどうしたらいい?人間の時の悟はそもそも僕を警戒して月一くらいの頻度でしか会いに来ないし、たまに術式対策っぽいの装備してるし、おそらく人間悟の感情は殺意なんだよな、現状。お手紙でも出す?いや、個人の証拠を残すのは出ていく時に問題になるな。

あーでも悟泣いてるし、頻繁に会いにくるようにってどうすればいいんだ?もういっそ、会いに来ないようにするのも(孤独死するから)難しいしなあ〜!

 

「ご、しゅじっ…おれ、のごどっ。好きじゃ、ない?きらい?」

 

自己嫌悪と難問の渦中に嵌り何も言葉を発さない僕に不安になったのか、本質的な質問を投げかけてくる悟(ガチ泣きの姿)。

────いや、そんなのさあっ!決まってんじゃん!

 

「好き好き好き!!!大好き大好きこんなかわいい子嫌いなやつ天地ひっくり返っても存在しないって!!!」

 

言うわけないだろ!こんなかわいい子に嫌いとか!!

まともな人間間交流もしてきてない僕みたいなやつが、なつき度100%のこんなかわいい子嫌いになる土壌は心に1坪もない。適当に種植えとけば生える土にめちゃくちゃ高嶺の花咲かせちゃって本当に申し訳ない。汚れているのは土なんです!花の方が悪い訳がない!

 

「え、あ゛〜っ、ぅあっ、ひぐっ」

 

ハグしながら頭も背中も手当たり次第に撫でると、悟は我慢できずに大泣きしている。

もうとにかく泣かないでほしくて、慰めになりそうな言葉を捲し立てる。

 

「最高最高悟最高!!!かわいいかわいい大好きちゅっちゅ、もうチューしちゃう!あっ、いや……」

 

途中から自分で言ってて気持ちが悪くて正気に戻ってしまった。

ハァ?ちゅーって言い方がもう嫌…。自己嫌悪天元突破した。何言ってんだ僕。死にたい。

 

「……ちゅー、しないっ、の?」

 

ひっくひっく、としゃくり上げながら再び瞳に涙を浮かべ始めた悟が、いまだかつてないレベルの希死念慮で完全に動けなくなった僕の顔を覗き込む。

 

「あのね、悟。チュー、キスは大事な人とね、大事な時にね」

 

「…だいじなひとじゃ、ないの」

 

もうこれ以上とどめを刺さないでほしい。そんな気持ちを込めてなんとか口を開く僕に、悟はズボンにアイスを食べられた子どものような顔でぽつりと零す。

だよね文脈がそうだよね?そうなるよね?!違う違う!!

 

「さとっ、悟きいて、あっ泣かないで悟違うから!大事な人っていうのは交尾とかする相手…じゃないっ!!ちがう違うから。永遠に愛を誓い合った2人がね、結婚式でね、」

 

いや待て、五条家の場合神前式とか仏教式なんじゃないのか?と一瞬言葉を詰まらせてしまったのが本当にまずかった。いや、その前の言葉でこれ以上深い墓穴は掘れないくらいに掘りすぎた。

 

「こうび…セックスのこと?」

 

はいダメ〜!焦って語彙力低下した時点で負け!次までになんで負けたか考えてきてください!!僕はパーを出したぞ!!劇場に失せろ!!

 

「そうそうセックスはね、お互いがしたいって思わないとやっちゃダメだからね、ちゅーもそうでお互いしたくないとダメなんだよって話をんゴガッ」

 

アナウンサーになれるくらい早口で今考えた話題の方向修正を言い切る間もなく、ガチンッとすごい勢いでなにか固いものが顔にぶつかってきて、反射的に目を瞑ってしまう。

 

「ン、むう〜、んく、ふ」

 

「もが、」

 

血の味と、なにか熱くてぬるついたものが唇をグニグニ押してくる。何が起きたか全部予想がついたが、そんなふざけた結果(現実)をひっくり返したくて恐る恐る目を開けると、青い青い大きな瞳が目の前にあった。

 

────あ、これ死んだわ。

 

迂闊な発言で失敗し、正気に戻った五条悟に殺される未来がまたも確定してしまった。

キス初心者がぶつかるのは鼻じゃダメなんですか?いや、なんでそもそも口に来た?口に来なければこちらの負傷で終わったのにどうして口?

…あーもう終わりっ。人生終わった、今すぐ逃げたい。来世はちいかわの世界で鎧さんに転生したい。CVは杉田さんでお願いします。

自他の命が儚すぎて現実逃避をしながら、もうほとんど口を舐めている悟をぐいと引き離す。

 

「んえ、やだっ!俺まだちゅーする…!」

 

「唇、怪我してない?」

 

「んっ?」

 

なんか恐ろしいこと言ってる悟の顔をむに、と触る。よだれでてらりとした赤い唇は、艶めかしいが薄く傷が付いている。

ひぃい前歯折っておけばよかった。

 

「ごめんね、僕が避けなかったから怪我しちゃったね」

 

「避けんな!!」

 

「あっ、はい。えー、っと…ゆっくりキスすれば怪我しないんだよ」

 

「っあ、……!」

 

キスで怪我をした=失敗と捉えたのか、顔を赤く染めてバツが悪そうに顔を顰めた悟は、僕の顔に手を伸ばした。

 

「け、けが」

 

「うん、痛かったね。深くないし傷も残らないだろうけど、混乱する言い方して本当にごめ、っ」

 

伸ばされた手が患部の近くに触れて、思わず言葉が途切れる。

悟は僕の傷に触れないように唇をなぞって、さっき散々泣いたのに、また違う顔で泣きそうになっている。

 

「どうしたの?」

 

顔にある悟の手に触れる。

 

「……けがさせて、ごめんなさい…」

 

しゅん、と項垂れながらしっかり謝罪の言葉を発音する、五条悟さん10歳。

────この謝罪がすごい!今年来る謝れてえらいオブザイヤー大賞受賞。

普段の傍若無人な態度をネズミ越しで知ってるととんでもない精神的成長だ…!育てた覚えもないのに感動してしまう。精神が素直な犬の状態とはいえ、記憶はそのままだし生まれて初めて謝ったのではないだろうか?歴史的瞬間だ。すごいいっぱいえらいぞ悟。褒めるしかないこのビッグウェーブに。

 

「ングっ、え、悟、えらっ…」

 

衝撃と感動で涙ぐみながら頭を撫でようとした時、

 

「ゆっくりするからもう一回してもいい?」

 

という悟のとんでもない言葉に目をひん剥く僕。

────なんでそうなる!?!?

手を引っ込めて顔だけで驚愕する僕を見て、慌てて言い募る悟。

 

「おれ、おれっ。ご主人が大好きだよ!ちゅーも交尾もできるよ、ご主人がしたいことだけするよ!だから、だから…ぅ……もっと、会いたい……」

 

段々と言葉が細くなりながらもしっかり要望を伝える悟。

────そんなのさあ…。

 

「会う会う!超会う!!抱っこもナデナデもいっぱいしようね!!」

 

尻尾が垂れ下がって落ち込むゴールデンレトリバーが如き悲壮さに、犬に弱い僕はこの後来る面倒ごとを無視して悟を喜ばせることだけ言うマシーンになった。

 

「、ほんとに?」

 

「本当本当!!最高悟最高!!!僕も悟に常に会いたくて会いたくて、寂しすぎてずっと泣いてるよ!!!悟最高大好き!!!」

 

「へ、そんな…会いに、来てよぉ〜!泣くくらい?へへ、俺のこと……大好き?んへへ」

 

「はぁ〜かわいっ!撫でよっ」

 

犬とナデと笑顔、それだけあれば良い。

僕は語彙力を無くし悟を撫で、悟は笑ってそれを受け入れる。

頭の裏側で正気に戻った時のぶり返しの予感がして恐ろしいけど、たまの癒しタイムくらい好きにさせてほしい。

本当の正気に返ったら人間全員首吊って死ぬんだし、真実は知らないに越したことはない。今は悟かわいいの沼に浸かっていたい。僕が生きるには狂気()が足りない。

 

狂気に狂気を重ね掛けした癒し空間で僕は幸せを満喫していたが、悟の言葉で胃がひっくり返る。

 

「んぇ、へへへ〜……ちゅーもして!」

 

忘れていてほしかった、誤魔化されてほしかったヒト型生物番ペアにおける一般的なコミュニケーション方法は、悟の記憶から消えてはいなかったようだ。

 

「はえ、ほ、ちゅ…?ほっぺでいいでしょうか……」

 

語彙力を消し飛ばした影響で、僕の理解と口が追いつかない。期待を込めて、消極的な希望の言葉で接吻対象箇所を指定する。

 

「ぜんぶ!!!」

 

が、あえなく却下されてしまった。

罪悪感がキャラメルシロップの如く追加されていく。本当に申し訳ない本体(人間)の方。

 

「ひゃい……」

 

まだセーフまだセーフと心の中で自分に言い訳をしながら、瞳を閉じ頬を赤らめた悟の顔中に、ゲリラ豪雨くらい激しいキスをしました。口にしなかったら激しく抗議されたので、しました、口に、ちゅーを。

 

 

……頼むから、頼むからベロチューだけは誰も教えないでください!!!僕は無理です!!!お願いします!!!あと交尾って単語だけこの世から消してくださいお願いしますチェンソーマン、交尾の概念食べてください!!!!

 

 

 

悟が満足してからいつものように忘れさせて自室に返すと、案の定記憶が戻った後で口の怪我に気づいたらしく、ガチギレした人間五条悟が部屋に週一で襲撃してくるようになったので、犬悟的には結果オーライになった。僕の胃は死んだ。

 

 

 

+++

 

 

 

ピリ、と口に痒い痛みが走って鏡を覗くと、少しだけ傷付いた唇が視界に映った。

 

────やられた。

 

なぜ唇の怪我なのかは疑問が残るが、俺の無下限が例の場所では切られていることは確かだった。

他にも怪我がないか探るが、髪の毛が微妙に跳ねているだけで何もない。

 

────脅威にもならない?俺が?

 

ほとんど無傷なのは前回までと変わらないが、無下限をわざわざ解かせたならば何かしら目的があるはずだ。なのに状況は殺害監禁脅迫、そのどれにも当てはまらない。部屋で数十分から数時間、何もせずに放置するとは一体どういうことなのか?

疑問は沢山あるが、────自分は()にナメられている。その事実がゆっくりと怒りを湧き立たせた。

 

今現在可能な術式、蒼の完全詠唱。部屋にいると思われる早朝深夜に決行する(ブッ放す)

五条悟は決断した。

部屋の外からの攻撃であれば()の影響からも外れるだろう。そう踏んで、明日の決戦に備えるべく風呂場へと向かった。

決意に漲った五条悟の髪は、不恰好にやや跳ねていた。

 

 




シーンの区切りを少し変えてみました。
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