【第一章完】この厳島甘美にかかればどうということはありませんわ!   作:阿弥陀乃トンマージ

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第1話(3)夢世界へ

「失礼……」

 

 甘美が空き教室の後方にやってきた派手目のファッションの女子に声をかける。

 

「は、はい……」

 

「鈴木秋子さん?」

 

「そ、そうですが?」

 

「わたくしのことをご存知かしら?」

 

「もちろんです、厳島甘美先輩……お会い出来て光栄です」

 

「ああ、それはどうもありがとうございます」

 

 甘美はうやうやしく頭を下げる。

 

「あ、あの……」

 

「はい?」

 

「どうして私の連絡先を先輩が知っているんですか?」

 

 頭を上げた甘美に鈴木が怪訝そうに問う。

 

「そうですね……是非一度貴女とお話をしてみたくなってね」

 

「え……」

 

「それで方々当たってみたら、貴女の連絡先を知ることが出来たの」

 

「そ、そうだったんですか?」

 

「立ち話もなんですから、どうぞ座って下さいませ」

 

「は、はい……やった♪」

 

 鈴木は小声で呟きながら甘美から一つ空いた隣の席に座る。甘美が問う。

 

「今……」

 

「はい」

 

「やった♪っておっしゃった?」

 

「ええ……」

 

「それはまたどうして?」

 

「だって、厳島甘美先輩といえば、学内でも屈指のVIPですよ? そんな方からお声がけ頂けるなんて……いや~友達は大事ね~」

 

「お友達って、佐藤春子さん?」

 

「え? 春子? あの子は一応友達というか……」

 

「ランクが低いのかしら?」

 

「! ま、まあ、そんなようなものです……」

 

「わたくしとこうしてお話出来るのは、ランクが上のお友達のお陰ということかしら?」

 

「そうですね……Aランクの子たち? やっぱりSランクの子たちかしら?」

 

 鈴木がぶつぶつと呟く。それを聞き逃さなかった甘美が両手を広げる。

 

「!」

 

 いつの間にか、背後に迫った現が鈴木を眠らせる。

 

「自身の箔付けの為に、友人関係をランク分け……良くない傾向だな」

 

「夢世界へ?」

 

「ああ」

 

 甘美の問いに現が頷く。現と甘美が秋子を挟むように座る。

 

「気は進みませんわね……」

 

「何事もなければそれで良い……行くぞ」

 

 現が鈴をしゃんしゃんと鳴らす。甘美と現も夢世界へ向かう。

 

「極々普通の夢世界ですわ……」

 

 レンガに囲まれた薄暗い道を甘美は進む。その斜め後ろを歩く現が呟く。

 

「油断大敵……」

 

「はいはい……」

 

「注意一秒、怪我一生……」

 

「分かっておりますわ」

 

「いや、分かっていない……」

 

「ええ?」

 

 甘美は立ち止まって現の顔を見る。

 

「この夢世界での傷も現実世界に持ち込んでしまう可能性がある……」

 

「初耳ですわ」

 

「何度も言った」

 

「そうでしたっけ?」

 

「そうだ」

 

「ふ~ん……そう言われると聞いたことあるような、ないような……」

 

 甘美が首を傾げながら呟く。現がため息をつく。

 

「はあ……随分とお気楽なものだな」

 

「それはあくまで可能性の話でしょう?」

 

「まあな」

 

「それほど恐れることはありません」

 

「だが……」

 

「要は!」

 

 甘美が人差し指を一本ビシっと立てる。

 

「む……」

 

「傷つくようなヘマをしなければよろしいのです」

 

 甘美は再び歩き出す。

 

「過剰な自信は油断や隙を生じさせるぞ」

 

「確かな自信は心の余裕に繋がります」

 

「……まったく、ああ言えばこう言うな」

 

「そういう性分なのですよ……!」

 

 甘美たちの前に人の形をした影のようなものが数体現れる。

 

「ん? 誰よ君ら? パーティー出んの?」

 

「俺らと秋子ちゃんの邪魔しないでくれる~?」

 

「……なんだかチャラいですわね……」

 

「交友関係が変わっていく過程で、派手な男性との付き合いも増えてきたと……」

 

「確かにあまり良くない傾向ですわね……」

 

 甘美がゆっくりと前に進み出る。

 

「う~ん?」

 

「何お姉さん? 俺らと遊びたいの~」

 

「ってか、君結構かわうぃ~ね!」

 

「結構じゃなくて、超可愛いですわ……」

 

「引っかかるのそこか……」

 

 現が思わず苦笑する。

 

「冗談ですわよ」

 

「援護する……」

 

「必要ありません……」

 

 甘美が懐からマイクを取り出す。

 

「うん?」

 

「あんだ?」

 

「マイクテスト、マイクテスト……あ! あ! あ~!」

 

「うわっ⁉」

 

「ぐわっ⁉」

 

「ぶわっ⁉」

 

 甘美の発した声の音圧に圧されて、チャラ男数体があっけなく霧消する。

 

「ふん、こんなものですか……発声練習にもなりませんわ……」

 

「なめんなよ!」

 

 残っていたチャラ男が甘美の後ろに回り込む。

 

「~~♪」

 

「な、なんだ、この音は……ね、眠くなる……」

 

 チャラ男が横になり、そのまま霧消する。現のキーボード演奏によるものだ。

 

「言っているそばから、後ろが隙だらけ……」

 

「前に言ったことをもうお忘れかしら? 後ろは貴女に任せておりますので……ボーカルはバックの演奏を信頼し、ただ前を向くのみですわ」

 

「! 本当にああ言えばこう言う……」

 

 甘美たちは先を進む。

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