【第一章完】この厳島甘美にかかればどうということはありませんわ!   作:阿弥陀乃トンマージ

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来たる夏に向けて

                    ∞

 

「かんぱ~い♪」

 

 甘美たち五人がオシャレな雰囲気のバルで、ビールジョッキで乾杯する。

 

「しかし、大成功だったな、今日の講堂ライブは! 手応えも十分だったぜ!」

 

 陽炎が興奮気味に熱っぽく語る。

 

「SNSでもライブ終了後から今の今まで、すごい勢いでバズっているよ!」

 

 刹那もスマホの画面をみんなに指し示しながら、珍しく興奮している。

 

「初めて披露した新しいあの曲も大好評だったわね……」

 

 幻が思い出しながら嬉しそうに呟く。

 

「そりゃあそうだろうよ、なんてたってリハーサルがバッチリだったからな!」

 

「ふふっ、リハーサルね……確かにそうだったわね……あ、おかわりお願いします」

 

 陽炎の言葉に対し、幻が微笑を浮かべながら、一杯目のビールを早々に飲み干した。

 

「……そういえばあの例の三人組は今日のライブに来ていたのかな?」

 

「もし来ているとすれば、後方で壁に寄りかかって彼氏面していると思ったのだが……お陰様で満員御礼だったからな。後ろの方はあまりよく見えなかったな……」

 

 刹那の問いかけに対し、現が笑みを浮かべながら冗談交じりに答える。

 

「あのお嬢さまと執事さんは来ていたわね……それこそ後ろの方だったけれど」

 

「へえ、気づかなかったぜ……よく分かったな、マボロシッチ……」

 

「いい男はよく見えるものなの♪」

 

 感心する陽炎に対し、幻が悪戯っぽくウインクする。

 

「……………………………………………………」

 

「さ、さっきからずっと黙っているけれど……どうかしたの?」

 

 刹那が、自らのスマホをじっと見つめている甘美に問う。現がうんうんと頷きながら呟く。

 

「まあ、トロイメライのことは確かに気がかりではあるな。いつまたあのようにちょっかいをかけてくるか分かったものじゃないからな……」

 

「……それはこの際、別にどうでもよろしいのですが……」

 

「ど、どうでもよろしい⁉ それじゃあ、一体何を考え込んでいたんだ?」

 

「……うん、決めましたわ……わたくしたち、ミュズィックデレーヴはこの夏……初の全国ツアーに出かけることにいたしましょう!」

 

「ぜ、全国ツアーだと⁉」

 

「ええ! このSNSのバズりっぷり……これを利用しない手はありません!」

 

「大学はどうする⁉ 移動手段は⁉」

 

「その為の長い夏休みでしょう? お車はまたわたくしが運転するといたしますわ」

 

「ちょ、ちょっと待て! 少し落ち着け! だ、大体、ライブや諸々の手配は⁉」

 

「この厳島甘美にかかればどうということはありませんわ!」

 

                  ~第一章完~




(23年12月23日現在)

これで第一章が終了になります。次章以降の構想もあるので、再開の際はまたよろしくお願いします。
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