第1話 始まりの少年
「あ…あ…」
暗くて冷たい空間の中で息苦しい。
何も見えず、何も聞こえない。
ただ、冷たい感覚だけが伝わってくる。
「なんで…俺はここにいるんだ?そもそも…俺は誰なんだ…?」
答える者はいない。
少年は次第に意識を失っていった。
「ふあああ…今日の授業は大変だったなー」
浜辺付近の道を制服姿の少女が歩いている。
制服は白を基調としたノースリーブと青いミニスカート。
パッチリとした二重の双眸、すっと通った鼻梁で白い肌で、髪は後ろに括っている。
少女は決まって帰りは浜辺付近を歩いて帰る。
「あーー!!今日は私が晩御飯を作る番だった!!急が…ん?」
走ろうとしたが、浜辺に存在する変な光景に目を丸くする。
地中から左腕だけが伸びていて、デッキがすでにセットされたデュエルディスクが装備されている。
「こ…これはどーいう状況なんだろう?うーーーん?」
少女は周囲を見渡すが、誰もいない。
このまま放っておくわけにもいかず、少女は穴を掘って誰が埋まっているのかを確かめた。
そして、数十分後…。
「きゃあ!!」
顔を真っ赤にしながら、少女は顔を砂だらけの手で隠す。
埋まっていたのは黒い長髪で白い肌の少年で、何も着用していなかった。
「な…なんでこうなってるのこの人!!そ…それよりも何とかしないと!!」
少年はまだ息をしていて、脈もある。
携帯で病院に連絡すると、数分後に救急車が到着した。
「う…ん…?」
少年はゆっくりと目を覚ます。
白い天井と明るいLEDが最初に目に入る。
少年の髪はポニーテールになっていて、服装は青い病衣だ。
「ここは…?」
「気が付いた?」
「うわっ!!」
少女の笑顔がいきなり視界に入り、少年は動揺する。
「いやー、びっくりしたよ。だって左腕以外全部埋まってたし、しかも服も着てなかったから…」
「…?な…何を言っているんだ…君は…?」
「え?あなた、何も覚えてないの??」
「覚えているって…何を…??」
「もーーー!!じゃあ名前から聞くよ!!私は永瀬伊織!あなたは誰?」
「…。知らない」
「へ?」
「俺の名前は…何だ?」
少年の衝撃的な言葉に伊織はポカンとする。
「じゃ…じゃあ、何で埋まっていたの?」
「覚えてない」
「好きな食べ物は?」
「知らない」
「好きなカードは?」
「分からない」
その後も十数個の質問をするが、いずれも分からない、知らないという答えしか返ってこなかった。
「じゃあ、最後の質問!!これはあなたのものでしょ??」
彼の腕に装備されていたデュエルディスクとデッキを見せる。
「これ…俺の??」
受け取ったデッキをじっと見る。
「それにしても、珍しいカードを使うんだね。エクシーズモンスターに融合モンスター、シンクロモンスターも…しかもこのカード、見たことが…」
「な…なあ、伊織さん…」
「伊織でいいよ。どうしたの?」
「じゃあ…伊織。これ…どうやって遊ぶんだ?」
「えーーー!?もしかして、遊び方も覚えてないの??うーん…」
デュエルのルールすら覚えていない少年に伊織は頭を抱える。
教えたいのはやまやまだが、これ以上少年と一緒にいると職員長に怒られてしまう。
「明日は学校が休みだし…明日デュエルのこと教えてあげる!!だから、今日はしっかり寝ること!!また明日!!」
「あ…ああ」
荷物を手に取り、大急ぎで病室から出て行った。
床には若干砂が散っている。
(これが…俺のカード?)
40枚の束と15枚の束をすべて眼に通す。
(上がオレンジで下が緑色のカード…一体何のカードなんだ?)
よく見ると、そのカードは彼のデッキの中には複数枚存在する。
(ペンデュラムモンスター…?まあ、明日伊織に聞いてみるか…)
少年はカードをそばにあるテーブルに置くと、ゆっくり目を閉じた。
「ということは…罠カードは伏せた次のターンまで発動できないということか?」
「そうそう!!飲み込みが早いじゃん!やっぱり、教える私の素質がいいからかな?」
「そうとも言えるな」
「おっとっと!!こーゆーときは何か否定しないと、ちょっと調子狂うなー」
わざとらしくずっこけそうな状態になる伊織。
1,2時間かけた説明でどうにかルールがわかってくれた様子で内心ほっとしていた。
「だけど、これの使い方は伊織も分からないのか?」
「うーん、施設のみんなとよくデュエルするけど、こーゆーカードは見たことないなぁ」
「施設…?」
「あ、私小さいころから親がいないの。だから、施設で生活してるんだー」
「そ…そうなのか…ごめん…」
聞いちゃいけなかったのかと思い、少年はシュンとする。
「いいっていいって別に!…うーん、やっぱりなんて呼べばいいかわからないと変な感じになるなー」
「名前か…」
少年は伊織が来るまで何度も自分のことについて思い出そうとした。
しかし、何も思い出すことができなかった。
自分についても、最近のことについても…。
「そうだ!!名前は翔太にしよう!!」
「翔太…?」
「うん。この前終わった朝ドラで出てた男の子の名前だよ!!これで決まり!」
「ま…まあ、伊織がそう呼びたいならそれでいいけど…」
「あーーー!!そういえば、今ストロング石島のエキシビションマッチやってるんだった!!テレビつけてもいい?翔太君!!」
「あ…ああ。構わないけど…」
伊織は大急ぎでテレビをつける。
(ストロング石島…誰なんだ?)
テレビにはジャングルのような空間で棍棒を持った巨大な悪魔のような戦士である《バーバリアン・キング》の掌に乗っている紫の3つのドリルのような頭で、筋肉質の男が少年を追い詰めていた。
少年はトマトのような髪の色をしていて、白服をマントのようにしている。
また、彼のゴーグルの右側には青色の五芒星がついている。
「伊織、この人たちは…?」
「ええっと、紫色の髪の人がいるでしょ?その人が今のデュエルチャンピオン、ストロング石島。それと、今追いつめられてるのが榊遊矢。榊遊勝の息子だって」
「榊…遊勝??」
「えーーー!!?その人のことも知らないの?その人は…」
「俺はスケール1の《星読みの魔術師》とスケール8の《時読みの魔術師》でペンデュラムスケールをセッティング!!」
「何!?ペンデュラムスケール…!?」
遊矢の言葉を聞き、驚いた翔太はテレビにかじりつく。
「ちょっとちょっと!!見えないよ翔太君!!」
(ペンデュラムスケール…俺が持っているカードに関係するのか??)
「揺れろ!魂のペンデュラム!天空に描け光のアーク!ペンデュラム召喚!! 現れろ、我が下僕のモンスターたち!!」
遊矢から見て右側に白いローブを着た青い瞳の魔術師が、左側に黒いローブと金色のデュエルディスクのようなものを装備しているオレンジ色の髪の魔術師が浮遊する。
浮遊する2人の魔術師は1本ずつ光の柱を生み出し、《星読みの魔術師》のには1が《時読みの魔術師》のには8が表示される。
そして、上空に振り子が動くエフェクトが発生すると、彼の場に3体のモンスターが同時に現れた。
1体はリーゼントがついた青筋がたっている剣のような形をした青魚。
もう1体は派手な蝶ネクタイと黒いシルクハット、両頬に異なる色の五芒星がある紫色のコブラ。
そして、最後の1体は4つの緑色の玉石が付いた半月のような形の白い翼のようなものを背中につけ、オッドアイの赤い二足歩行の竜だ。
「これが…ペンデュラムモンスターの力…」
翔太はただただ一度にレベル2とレベル4、そしてレベル7のモンスターを特殊召喚したペンデュラム召喚に驚いていた。
まあ、短いですが最初はこんな感じになりました。
では、ここでキャラについて少し
翔太
今回の主人公です。
文字通りの意味での記憶喪失者で、本当に何も覚えていません。
永瀬伊織
今回のヒロイン。容姿はココロコネクトの彼女そのままで、性格に関しては違和感なく明るいです。
設定としては孤児に変更してあります。
次回はデュエルさせようかな…?