「それで…その石倉純也って男の家が舞網市郊外に?」
(そうだ、まさかそこに彼の自宅があるとは思わなかった。けど、そこならもしかしたら…)
「俺の記憶の手掛かりがある…だろ?」
(ああ…。詳しい地図は後でメールで送る。明日、行って来い!)
「言われなくてもな」
電話を切ると、すぐにデュエルディスクに修造から送られた地図が表示される。
「石倉純也…か…」
翔太が石倉純也について調べている間、様々なことが起こった。
遊矢はジュニアユース選手権出場のために残り4戦の公式戦に勝利しなければならない。
しかし、ストロング石島に勝利してしまった影響は想像以上に大きく、彼が通学している舞網第二中学校では公式戦の相手になってくれるデュエリストは一人もいなかった。
そんな中、遊勝塾にストロング石島のマネージャーであった男、ニコ・スマイリーが現れた。
先程、彼のプロフィールを過去形で書いたのには理由がある。
実をいうと、ストロング石島は遊矢に敗北した後、一から修行をやり直すと言い残してチャンピオンの座を返上し、旅に出てしまったのだ。
そこで、マネージャーを解雇されたニコは特別推薦でジュニアユース選手権に出場できるという話を手土産に遊矢のマネージャーになろうとした。
しかし、特別推薦での出場は何かズルのように感じると言って遊矢はそれによる出場を拒否した。
そのかわりに、彼に残り4戦の相手になってくれるデュエリストを探してもらうことにした。
「ジュニアユース選手権出場のための条件は60戦以上の公式戦で、6割以上の勝率。または公式戦で6連勝する…か…」
遊矢の今までの成績は56戦32勝。
残り4戦にすべて勝てばちょうど勝率6割となる。
一方、公式戦6連勝は高い実力を持っていながら公式戦の機会があまりないデュエリストのために特例で認められたシステムで、素良はそのシステムを利用してジュニアユース選手権出場を目指しているようだ。
(あいつらは前へ進もうとしている…。だが、記憶のない今の俺はマイナスだ。記憶を取り戻すことで、ようやく俺はゼロになり、前へ進むことができる)
デュエルディスクをしまうと、ベッドへ向かう。
しかし、なぜか伊織がそこでぐっすりと眠っている。
「まったく…なんでこいつはここまで奔放になれるんだ?」
そして、翌日の施設前にあるバス停。
「おーい、翔太君早くー!!」
「ふああ…。朝っぱらからでかい声を出すなよ。つばが顔に当たる」
元気いっぱいの伊織と眠気が抜けない翔太。
結局翔太は椅子に座った状態で眠り、熟睡できなかった。
その原因が目の前の少女にあるために、機嫌が悪くなる。
「…それにしても、他に服がなかったのか?」
「えー?私の服って変なの?」
「当たり前だろ?こんな…」
青いジャケットに腹部が露出した紫のタンクトップ、更に下に青いスパッツをはいているとはいえ、白いミニスカートという無防備すぎる服装。
「うーん…でも、動きやすいよ?」
「そういう問題じゃないだろ?」
「そういう翔太君も、この格好はちょっと変だと思うよ?」
黒い長ランに赤シャツ、更に黒いベルト。
これらは翔太にと権現坂が道場から調達したもので、自身も何かと気に入っている。
だがどこか昭和風な部分があり、更にいうと冬用の学ランであるため暑苦しい。
「どうでもいいだろ?俺の服装は…。バスに乗るぞ」
「え…!?待ってよ、翔太君!!」
数十秒前にバスが来ていることにようやく気付いた伊織は置いて行かれないように急いで乗車した。
「…。ここが石倉純也の家か」
「うん。その人が行方不明になってからは誰も来てないけど…」
バスを乗り継いで1時間、2人は石倉純也の家につく。
白い木造2階建て住宅で、庭は数年手入れされていないためか荒れている。
「けど、どうやって中に入るの?」
「簡単だ」
ドアの前で背をかがめ、ゴム手袋をつけるとポケットからピッキングツールを取り出す。
そして、数秒で開錠した。
「よし、これで入れるな」
「翔太君…犯罪だよ?」
「別にいいだろ?お前は外で待ってろ」
「えーー!?なんで??」
「邪魔になるからだ」
「プーー!!」
頬を膨らませ、不満げな伊織に目を向けず、翔太は家の中へ入って行った。
「…」
家の中をくまなく見る。
アルバム、料理本、鍵箱、財布、雑誌、小説、トイレ…。
何を見ても、何も頭に浮かばない。
懐かしい感覚が一切わかない。
分かったこととすれば、石倉純也の残った肉親が妹のみということだけだ。
「あとは…ここだな」
2階にある純也の自室に足を踏み入れる。
蜘蛛の巣や蠅、そしてゴキブリが彼を出迎える。
「ちっ…気持ち悪い」
新聞紙を丸め、蠅などをたたきながら純也の机を見る。
机の上にはデュエルに関する数年前の雑誌、そして彼の手帳サイズの日記が置かれていた。
雑誌の表表紙には色黒で黒い短髪、青いジャケット姿の男が載っていて、石倉純也の名前が大きく書かれている。
「こいつを見れば、何かわかるか?」
埃を払い、虫がいない居間で日記を読む。
7月19日 ようやく休みが取れる アメリカからようやく戻ることができた 聖子が掃除をしてくれたおかげで家は快適 今度、お礼に何かを奢ろう
「聖子…それが妹の名前なのか?」
7月22日 今日はひどい夢を見た なぜか真夜中の戦場にいて、たくさんの血でできた人間が追いかけてくる 一体どういうことだ?
7月29日 この1週間ずっと寝ると悪夢を見る 聖子が快眠まくらをネット通販で購入し、送ってくれた しかし、あの夢を見るくらいならずっと起きたままの方がいい
8月2日 耐えられず、結局今日1日眠ってしまった またあの悪夢 血でできた人間が誰かの名前を言っていた気がするが、どうしても思い出せない いったい俺はどうしてしまったんだ? 休暇が終わるまであと一週間 それまでに何とかしないと
8月5日 聖子が気分転換に海水浴をしようと誘ってきた あの悪夢を見てから、買い物以外で外に出ることがなくなっていた もしかしたら、こうして気分転換すればあの悪夢を見なくなるかもしれない
「日記はここで終わっているな…」
後のページをいくらめくっても白紙。
一文字も書かれていない。
「だが…悪夢だと?」
悪夢という言葉がどうしてもひっかかる。
そして、8月5日以降の記述がない。
おそらく、その日に行方不明になったのだろう。
「そろそろ、外に出るか。伊織がうるさくなる」
日記をポケットに入れると、玄関へ向かう。
「…。伊織…?」
外に出ると、そこには誰もいない。
本来なら、伊織がその場で待っているはずだ。
「あいつ…へそまげて帰ったか?」
財布は伊織に預けていて、今の翔太には金がない。
つまり、帰りのバスに乗れないということだ。
だが、翔太にとって半分幸運で、半分不幸な事態がすでに起こっていたのだ。
「こいつは…」
足元に落ちているのは伊織がはいていたブーツ、それも片方だけだ。
「これを落として帰るなんてな、あいつ、そろそろボケたか…?」
「キュイ!!」
急に聞き覚えのある鳴き声が聞こえ、耳を引っ張られる感覚が襲う。
「痛っ!!なんだよお前!?」
「キュイーー!キュイキュイ!!」
犯人はなんと翔太のモンスター、《魔装妖ビャッコ》だった。
「なんだこいつ…?なんで俺の肩の上に…」
「キュキュイ!!」
肩から飛び降りたビャッコは純也の家の郵便受けの前に立つ。
数年家主が不在であるにもかかわらず、そこだけきれいに片付いている。
「この中に、何かあるのか?」
翔太の言葉にビャッコがうなずく。
仕方なく、中を見ると封筒だけ入っていた。
中身は手紙と地図が1枚ずつだ。
「お前の妹は預かった。返してほしければ、指定する場所へ来い…?こいつ、石倉純也が行方不明だってこと知らないのか?」
誘拐犯の間抜けさにあきれながら、翔太は同封された地図を見る。
地図にはここから東へ30分程度歩いたところにマークされている。
「ふう…あいつがいないと帰れないからな」
ため息をつきながら、翔太は指定された場所を目指した。
「さあーーーー来いーーー!!石倉純也!!」
廃ビル1階で、坊主頭で緑色の分厚いジャンバーを着た男が頭を抱えている。
彼の目の前には白を基調とし、赤と黒のラインがあるオートバイがあり、それに装着されているサイドカーには伊織が眠っている。
彼は翔太が家に入った10分後、伊織を気絶させて拉致したのだ。
「6年前の恨み、晴らしてやるぞーーー!来なかったら、妹がどうなるか…。じゃあ、まずは…」
「おいおい、こいつは俺の妹じゃねえぞ」
「な…!?」
廃ビルに入ってきた翔太を見て、男はかなりびっくりしている。
男はすでに伊織のジャケットに手をかけていた。
「気持ち悪い奴だな…」
「石倉純也…じゃねえ…少し似てるが…違う…」
「石倉純也を知ってるのか?なら、教えてくれよ。ついでに、あいつも返してもらうぜ。あいつがいないと、帰れないからな」
「そ…そんなわけにはいかねえよ!!絶対お前かこいつが警察に通報するからよぉ…」
「当然だろ?誘拐犯。それとも、変態か?」
「黙れ!!俺には佐藤浩一っていう立派な名前があるんだぞ!!」
憤慨する佐藤をみるが、翔太は全く怖がっていない。
ただ…ただかわいそうな人間を見るような目になっているだけだ。
「サイドカーの中にデュエルディスクがあるみたいだな。なら、俺とデュエルをするのはどうだ?」
「な…!?デュエル…?」
「ああ、あんたが勝ったらこのまま引き下がる。警察には何も言わねえ。だが、俺が勝ったら石倉純也について、いろいろ聞かせてもらうぜ」
「おいおい、一応俺はプロ試験までいってるんだぜ?勝てると思ってんのか?しかも、こんな女のために俺と…」
「俺ほど女に優しいデュエリストはいないと思うぜ?変態デュエリストさん」
「てめえ…ああいいぜ、やってやろうじゃねえか!!!」
互いにデュエルディスクを装着した瞬間、佐藤は拘束装置を互いのそれに取り付ける。
「こいつは…?」
「こいつはちょっと変わった装置でよ…負けた方のデュエルディスクが破壊されるって代物だ!!」
「まあ、どうでもいいな。俺が勝つから」
「ほざいてろ!!今のお前は石倉よりも許せねえ!!覚悟しろ!!」
「「デュエル!!」」
佐藤
手札5
ライフ4000
翔太
手札5
ライフ4000
「俺の先攻!ドロ…」
「ちょっと待て。先攻は最初のターン、ドローできないぞ。そんなことも知らないのか?」
「う…うるせえ!!5年近く牢屋にいて、つい最近シャバに出たばかりなんだよ!!俺はモンスターを裏守備表示でセット!カードを2枚伏せてターンエンド!」
佐藤
手札5→2
ライフ4000
場 裏守備モンスター1
伏せカード2
翔太
手札5
ライフ4000
場 なし
「俺のターン!」
翔太
手札5→6
「(裏守備モンスター…。どんなモンスターが伏せられたかわからないが、やることは1つだ!)俺は手札から《魔装獣ユニコーン》を召喚!」
魔装獣ユニコーン レベル4 攻撃1600
「更に、このカードは俺のフィールドに存在する魔装モンスターをリリースすることで、手札から特殊召喚できる。俺は《ユニコーン》をリリースし、《魔装鳥フェニックス》を特殊召喚!」
《魔装獣ユニコーン》が嘶くと、上空に炎の渦が生まれ、そこから炎でできた若い孔雀が姿を見せる。
魔装鳥フェニックス レベル7 攻撃2300
「バトルだ!俺は《フェニックス》で裏守備モンスターを攻撃!」
《魔装鳥フェニックス》は羽を広げると、大量の丸い模様に1つずつ火球が生まれる。
そして、その火球は一斉に裏守備モンスターに襲い掛かった。
「へっ…」
佐藤が笑みを浮かべると同時に、裏守備モンスターは銀色の鎧を着た白い犬となり、火球を受けながらも強い光を発しながら《魔装鳥フェニックス》にかみついた。
そして、2体は相打ちという形で消滅する。
「《ライトロード・ハンターライコウ》のリバース効果はフィールド上のカード1枚を破壊できるだ」
「その効果で、俺の《フェニックス》が破壊されたってことか…」
翔太は《ライトロード・ハンターライコウ》の効果よりも、彼のデッキがライトロードデッキであることに苦い表情を浮かべる。
「更に俺のデッキトップから3枚のカードを墓地へ送るぜ」
この効果のように、ライトロードカードはデッキから次々とカードを墓地へ送る効果を持っている。
それゆえ、デッキ切れによる敗北というリスクがあるものの凄まじいスピードで墓地肥やしができ、場合によっては一瞬で相手を粉砕することができるのだ。
デッキから墓地へ送られたカード
・ライトロード・パラディンジェイン
・ネクロ・ガードナー
・終末の騎士
「だが、俺の《フェニックス》のも効果はある。このカードがカード効果で破壊された時、そのターンのエンドフェイズ時に墓地から蘇る。俺はカードを1枚伏せてターンエンド。そして蘇れ、《魔装鳥フェニックス》」
突然、翔太のフィールドに火柱が上がり、そこから《魔装鳥フェニックス》が舞い戻る。
魔装鳥フェニックス レベル7 攻撃2300
「なら、俺は罠カード《針虫の巣窟》を発動。その効果でデッキトップから5枚のカードを墓地へ送る」
デッキから墓地へ送られたカード
・ライトロード・サモナールミナス
・死者転生
・ソウル・チャージ
・ライトロード・ドラゴングラゴニス
・強欲な瓶
魔装鳥フェニックス
レベル7 攻撃2300 守備1700 効果 炎属性 鳥獣族
このカードは通常召喚できない。
このカードは以下の方法、および(1)の効果でのみ特殊召喚できる。
「魔装鳥フェニックス」の(1)の効果は1ターンに1度しか発動できない。
●このカードは自分フィールド上に表側表示で存在する「魔装」モンスター1体をリリースすることで手札から特殊召喚できる。
(1):このカードが効果によって破壊され墓地へ送られた場合、そのターンの終了時に発動できる。墓地に存在するこのカード1枚を自分フィールド上に特殊召喚する。
佐藤
手札2
ライフ4000
場 伏せカード1
翔太
手札5→2
ライフ4000
場 魔装鳥フェニックス レベル7 攻撃2300
伏せカード1
先程の《ライトロード・ハンターライコウ》、そして《針虫の巣窟》の効果で合計3枚のライトロードモンスターが墓地へ送られた。
更に、《ネクロ・ガードナー》が墓地へ送られたために翔太への攻撃妨害策が1つできた。
「俺のターン、ドロー」
佐藤
手札2→3
「俺は手札から魔法カード《ソーラー・エクスチェンジ》を発動。手札のライトロードモンスター1体を墓地へ送り、デッキからカードを2枚ドロー。その後、デッキからカードを2枚墓地へ送る」
手札から墓地へ送られたカード
・ライトロード・エンジェルケルビム
デッキから墓地へ送られたカード
・ゾンビキャリア
・エクリプス・ワイバーン
「また墓地肥やしか…」
「この効果で墓地へ送られた《エクリプス・ワイバーン》の効果発動。デッキからレベル7以上の光属性か闇属性のドラゴン族モンスター1体を除外する。俺はデッキから《レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン》を除外!さあって…これで準備は整った。そろそろ俺の本気を見せてやろうか…」
佐藤はニヤニヤしながら自分の手札を見る。
「さぁて、このデュエルが終わったら、どうするかなあ。まずはあの娘を…」
「さっさとやれよ、気持ち悪い考えはするな」
「くそっ!人がいい気分になっているときに…。俺の墓地にライトロードモンスターが4種類以上存在するとき、このカードは手札から特殊召喚できる。俺は《裁きの龍》を特殊召喚!」
純白で巨大な翼竜が強烈な光を発しながらフィールドに現れる。
裁きの龍 レベル8 攻撃3000
「更に俺の墓地に闇属性モンスターが3体存在するとき、《ダーク・アームド・ドラゴン》は手札から特殊召喚できる」
棘付きの尾と鎧、そして体の至る部分に刃がついている漆黒のティラノサウルスみたいな竜が現れる。
ダーク・アームド・ドラゴン レベル7 攻撃2800
「そして、このカードは墓地の光属性モンスターと闇属性モンスターを1体ずつ墓地へ送ることで手札から特殊召喚できる。《終末の騎士》と《エクリプス・ワイバーン》を除外し、《ライトパルサー・ドラゴン》を特殊召喚!」
ライトパルサー・ドラゴン レベル6 攻撃2500
「そして、《エクリプス・ワイバーン》の効果により除外されていた《レッドアイズ》が手札に加わる」
たった1ターンで3体の上級モンスターが現れた。
ライトロードカードをここまで使いこなしているところから、実力は前に戦ったLDSの生徒以上であることがうかがえる。
「ハハハ!俺のことを舐めた罰だぜ、兄ちゃん。お仕置きだ!!俺は《ダーク・アームド・ドラゴン》の効果発動!墓地の闇属性モンスター1体を除外することで、フィールド上のカード1枚を破壊できる。俺はお前の頼みの綱である最後の伏せカードを破壊する!」
《ゾンビキャリア》を闇の破壊エネルギーに変換し、《ダーク・アームド・ドラゴン》の右手に宿る。
そして、その手で拳を作り翔太の伏せカードに振り下ろされる。
「罠発動!《威嚇する咆哮》!」
伏せカードが砕けた瞬間、どこからともなくすさまじい咆哮が起こり、佐藤のモンスター達がひるむ。
「フリーチェーンの罠カードか…。まあ、1ターン生き延びただけだ!俺はこれでターンエンド!」
それと同時に、《裁きの龍》の効果で佐藤のデッキが墓地へ送られる。
デッキから墓地へ送られたカード
・ジャスティス・ワールド
・ライトロード・バリア
・貪欲な壺
・ライトロード・ウォリアーガロス
佐藤
手札3→1(《レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン》)
ライフ4000
場 ライトパルサー・ドラゴン レベル6 攻撃2500
裁きの龍 レベル8 攻撃3000
ダーク・アームド・ドラゴン レベル7 攻撃2800
伏せカード1
翔太
手札2
ライフ4000
場 魔装鳥フェニックス レベル7 攻撃2300
(ちっ…プロテストまで行ったデュエリストとだけあるな…一切のミスがない)
先程、佐藤は2回《ダーク・アームド・ドラゴン》の効果を使うことができた。
そして、フリーチェーンのカードを想定して先に伏せカードの破壊を選択した。
《魔装鳥フェニックス》の復活効果はすでに知っているため、そして墓地の《ネクロ・ガードナー》という隠し球を温存するために。
「俺のターン!」
翔太
手札2→3
「(…!よし!!)俺は手札から魔法カード《不死鳥の獄炎》を発動!俺のフィールドにレベル7以上、もしくはランク7以上の魔装モンスターが存在するとき、俺たちのフィールド上のモンスターをすべて破壊し、デッキからカードを1枚ドローする!」
「何!?」
「《フェニックス》、その炎で敵を浄化しろ!!」
《魔装鳥フェニックス》が上空を舞い、地中から巨大な火球を呼び出す。
そして、佐藤の3体のモンスターが《魔装鳥フェニックス》と共に火球に飲み込まれていった。
「だが…このカードを発動したターン、俺のモンスターは攻撃できない。…何!?」
火球が消えると、佐藤のフィールドは灰色のバリアに包まれていた。
「バカな!?なぜ奴のモンスターが破壊されていない?」
「俺は罠カード《混沌の障壁》を発動した。光属性モンスターと闇属性モンスターを1体ずつ除外することで、このターンの間俺のモンスターは破壊されない。これで、お前の逆転の一手は不発だ。ハハハハ!!!」
除外されたカード
・ライトロード・パラディンジェイン
・ネクロ・ガードナー
腹を抱えて笑い始める佐藤。
そして、苦い表情の翔太。
これが今の2人の状況、2人の差だ。
「俺は…カードを1枚伏せ、ターンエンド」
ターン終了と共に、《不死鳥の獄炎》で破壊された《魔装鳥フェニックス》が舞い戻る。
佐藤
手札1(《レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン》)
ライフ4000
場 ライトパルサー・ドラゴン レベル6 攻撃2500
裁きの龍 レベル8 攻撃3000
ダーク・アームド・ドラゴン レベル7 攻撃2800
翔太
手札3→2
ライフ4000
場 魔装鳥フェニックス レベル7 守備1700
伏せカード1
不死鳥の獄炎
通常魔法カード
「不死鳥の獄炎」は1ターンに1度しか発動できず、発動したターン自分のモンスターは攻撃できない。
(1):自分フィールド上にレベル・ランクが7以上の「魔装」モンスターが表側表示で存在する場合にのみ発動できる。フィールド上のモンスターをすべて破壊する。その後、デッキからカードを1枚ドローする。
混沌の障壁
通常罠カード
(1):自分の墓地に存在する光属性と闇属性モンスターを1体ずつ除外することで発動できる。このターン、自分フィールド上のモンスターは戦闘および効果では破壊されない。
「おいおいおい、さっきまでの生意気な態度はどうしたんだよ?兄ちゃん?」
「く…」
翔太のフィールドには《魔装鳥フェニックス》と伏せカード1枚のみ。
対する佐藤のフィールドには3体の竜、手札には《レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン》。
ライフは4000あるとはいえ、この状況では風前の灯。
「分かってるよな?敗北したほうのデュエルディスクが破壊される。カードはどうなるんだろうなぁ…」
「カードも…ただでは済まないってことか?」
「そういうことだ!!それから、サレンダーもないからな!!(へっ…俺の方のは破壊されないように設計されてるんだぜ?審判と手を組んだチームって一番怖いよなぁ、バカな兄ちゃんよぉ)」
もはや勝った気になっている佐藤は再び気を失ったままの伊織に目を向ける。
(へへっ…あいつはデュエルの後で痛めつけるとして、この娘は…)
再びいかがわしい考えを頭に浮かべる佐藤。
(思えば、あいつのせいで俺は刑務所行きになったんだったなぁ。その時できなかったことをこいつに…)
「何を考えている!?早くターンを進めろ!!」
「ちっ…生意気な。俺のターン、ドロー!!」
佐藤
手札1→2
「俺は《裁きの龍》の効果を発動!ライフを1000支払うことで、このカード以外のフィールド上のカードをすべて破壊する!」
佐藤から生命エネルギーが放出され、それが光となる。
そして《裁きの龍》はその光を増幅させ、強力な破壊光線にしてフィールドを薙ぎ払う。
破壊光線を受けたカードはすべて灰となった。
佐藤
ライフ4000→3000
破壊された伏せカード
・ペンデュラム・ミラージュバリア
「くそっ…!このままでは…」
「更に、俺は手札から《ライトロード・マジシャンライラ》を召喚」
黒い長髪で、白いローブをまとった女性が現れる。
ライトロード・マジシャンライラ レベル4 攻撃1700
これで、2体のモンスターの攻撃力の合計は4700。
攻撃を受ければ、翔太の敗北が決定する。
「これでおしまいだ!!《裁きの龍》でダイレクトアタック!!!」
《裁きの龍》が口から白いブレスを放つ。
ブレスはそのまま翔太を無慈悲に焼き尽くした。
翔太
ライフ4000→1000
「ハハハハ!!派手に受けたな!さあ、《ライラ》!こいつにとどめを刺せ!!」
「翔太…く…ん…」
気を失っていた伊織がゆっくりを目を覚ます。
最初に視界に入ったのは、ライラの杖から放たれた光の球が翔太に襲い掛かる光景だ。
「翔太君!!」
しかし、突然翔太の前に現れた《魔装剣士ムネシゲ》が盾で受け止める。
「何…!?」
「俺は墓地へ送られた《ペンデュラム・ミラージュバリア》の効果を発動した…。ダイレクトアタックを受けたとき、デッキからペンデュラムモンスター1体を手札に加え、バトルフェイズを終了させる…」
翔太の手に《魔装剣士ムネシゲ》が加わる。
皮肉にも、先ほど翔太のライフを大きく削った《裁きの龍》に救われることになった。
ペンデュラム・ミラージュバリア
通常罠カード
(1):自分フィールド上のPモンスターが攻撃対象となったときに発動できる。その攻撃を無効にする。
(2):相手の直接攻撃を受けたときに自分の墓地に存在するこのカードを含む「ペンデュラム・ミラージュバリア」をすべて除外することで発動できる。自分のデッキからPモンスター1体を選択して手札に加え、バトルフェイズを終了させる。
「くそっ…!運のいい奴め!!俺はこれでターンエンド!」
それと同時に、佐藤はデッキからカードを合計7枚墓地へ送る。
そして、翔太のフィールドに《魔装鳥フェニックス》が舞い戻る。
デッキから墓地へ送られたカード
・ライトロード・モンクエイリン
・ライトロード・レイピア×2
・光の援軍
・ボルト・ヘッジホッグ
・貪欲な壺
・聖なるバリア―ミラーフォース―
「その瞬間、デッキから墓地へ送られた《ライトロード・レイピア》2枚の効果発動!こいつはデッキから墓地へ送られるとき、俺のライトロードモンスターに装備できる!」
佐藤
手札2→1(《レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン》)
ライフ3000
場 裁きの龍 レベル8 攻撃3000
ライトロード・マジシャンライラ(《ライトロード・レイピア》×2装備) レベル4 攻撃1700→3100
翔太
手札2→3(うち1枚《魔装剣士ムネシゲ》)
ライフ1000
場 魔装鳥フェニックス レベル7 守備1700
「…」
翔太はこれまでにないくらい追いつめられている。
今の佐藤には2回《裁きの龍》の効果を使うことができる。
たとえこのターン生き延びたとしても、次のターンは全滅し、ライフをすべて失う。
実質、これがラストターンだ。
「勝てないのか…俺は…」
「翔太君…?」
初めて、翔太が弱音を吐く。
あれほどまで自信たっぷりだった彼の言葉とは思えない。
「俺には…記憶を取り戻す力も…人一人助ける力もないのか…!!?」
「ハハハ!!当たり前だろ?お前は餓鬼だ!!なら、敗北の前に更にお前の無力さを教えてやるよ!!」
佐藤がサイドカーから出ていた伊織を押し倒す。
「キャ!!な…何を…!?」
「それは…お前が一番よくわかってるだろ?」
「い…いや…」
ゆっくりと近づく佐藤に恐怖を覚え、伊織の足の震えが止まらない。
涙を浮かべる伊織に愉快そうで邪悪な笑みを浮かべる。
「や…めろ…」
(おい、力がほしいか!?)
「…!?」
急に視界が暗くなり、周囲が光景が廃ビルではなく廃墟と化した王座の間となる。
「…。誰だ、お前…」
(誰だはないだろ?まあ…今の俺はお前にとっては神様みたいなものだぜ?)
目の前にはどこまでも続く玉座への階段で、玉座には誰かが座っているが暗くて見えない。
「神…だと?」
(ああ、そうさ。これから自分の非力を呪い哀れなヒーローさんに力をやるよ。お前の手に握ってあるものを見な」
「…?」
翔太の右手には見たことのないエクシーズモンスターカードがある。
(こいつは俺の持つ力の一部だ。お前にやるよ。そいつでお前の大切な娘を助けてやりな)
「…。何が望みだ?」
(あぁん?)
「ただで力を貸すはずがないだろ?」
(まあ…そうだな。じゃあ、これからも今まで通りお前の記憶を探し続けろ。それを俺は見学させてもらうぜ。おっと…もう時間みたいだな)
急に周囲の壁や床が崩れていく。
「待て!?お前は何者だ!!?」
(さっきも言っただろう?お前にとっては神様みたいなものだって…)
その言葉を最後に翔太の意識が一気に現実へ押し戻されていく。
「いや…いや!!」
「ハハハ!そういう言葉はもっと言ってほしいなあ!!」
嫌がる伊織のジャケットをついにつかむ佐藤。
しかし、その腕を翔太が握りしめる。
「な…!?」
「伊織に…手を出すな。まだデュエルは…終わっていない!!」
(こ…こいつ!?)
急に恐怖を感じ、伊織から離れる。
先程までの翔太と別人のように思えてしまうほどの恐ろしい何かを感じた。
「翔太…君…?」
「伊織…お前を助ける。俺のターン、ドロー!」
翔太
手札3→4
「俺はスケール2の《魔装槍士タダカツ》とスケール9の《魔装剣士ムネシゲ》でペンデュラムスケールをセッティング!!」
左右に2体の翔太のペンデュラムモンスターが光の柱とともに現れる。
「これで俺はレベル3から8までのモンスターを同時に召喚できる!来たれ、時の果てに眠りし英雄の魂。希望の道を照らし、勝鬨を上げろ!ペンデュラム召喚!!現れろ、死を司る青き騎士、《魔装騎士ペイルライダー》!!」
廃ビルの天井が砕け、そこから《魔装騎士ペイルライダー》が現れる。
もちろん、ソリッドビジョンでの演出であるため本当に砕けたわけではない。
魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2500
「へっ…!今更そんなモンスターで何ができるんだ!?」
「見せてやる…」
「何?」
「俺が手に入れた力を…」
急に翔太が紫色のオーラに包まれる。
「しょ…翔太君!?」
「な…なんだよお前、ソリッドビジョンにさ…細工したのか?」
オーラはエクストラデッキに溶け込んでいき、新たなカードが創造されていく。
「俺はレベル7の《魔装騎士ペイルライダー》とペンデュラムゾーンの《魔装槍士タダカツ》、《魔装剣士ムネシゲ》でオーバーレイ!」
「な…何ぃ!?」
3体のモンスターによって、フィールドにオーバーレイネットワークが構築させる。
「ペンデュラムエクシーズチェンジ!!現れろ、ペンデュラムエクシーズ!次元を超え、新たな力を宿せ!《魔装騎士フェラーレ・カヴァリエーレ》!!」
純白に染まった鎧姿となり、そして右手に漆黒の玉石を持った《魔装騎士ペイルライダー》がオーバーレイネットワークから出てくる。
玉石と鎧にはルネッサンス風の細かい装飾が施されている。
PX魔装騎士フェラーレ・カヴァリエーレ ランク7 攻撃2500
「そして…俺は《カヴァリエーレ》の効果を発動。1ターンに1度、ペンデュラムオーバーレイユニットを1つ取り除くことで相手モンスター1体の攻撃力を0にし、ターン終了時まで選択した相手モンスターの元々の攻撃力を得る。デス・ドレイン!」
「あ…あああ…」
《PX魔装騎士フェラーレ・カヴァリエーレ》の玉石にペンデュラムオーバーレイユニットが宿る。
すると、それに《裁きの龍》の力が根こそぎ吸収されていく。
力を失った《裁きの龍》は力なく崩れ落ちた。
裁きの龍 レベル8 攻撃3000→0
PX魔装騎士フェラーレ・カヴァリエーレ ランク7 攻撃2500→5500
PX(ペンデュラムエクシーズ)魔装騎士フェラーレ・カヴァリエーレ
ランク7 攻撃2500 守備2000 エクシーズ 闇属性 戦士族
「PX魔装騎士フェラーレ・カヴァリエーレ」の(1)の効果は1ターンに1度しか発動できず、発動に成功したターンこのカード以外のモンスターは攻撃できない。
このカードは下記の方法でのみ特殊召喚することができる。
●このカードはこのターンP召喚された「魔装騎士ペイルライダー」1体とPゾーンに表側表示で存在する「魔装」Pモンスター2体の上に重ねることでX召喚できる。
(1):自分のライフが1000以下の時、このカードのX素材となっているPモンスターを1つ取り除き、相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して発動できる。選択したモンスターの攻撃力は0となり、ターン終了時まで選択したモンスターの元々の攻撃力をこのカードに加える。
「そ…そんなバカな…!?こんなカード、見たことねえ!!」
「バトルだ!《カヴァリエーレ》で《裁きの龍》を攻撃!ブラックスフィア・スラッシュ!」
《PX魔装騎士フェラーレ・カヴァリエーレ》の2本の光剣に黒い玉石に納められた《裁きの龍》の力が注ぎ込まれる。
そして、その力を受けて白銀に染まった光が《裁きの龍》をいともたやすく切り裂くと、その竜は苦しむことなく消滅した。
「うわああああ!!」
佐藤
ライフ3000→0
「はあ…はあ…はあ…」
デュエルが終わり、疲れ果てた翔太は《PX魔装騎士フェラーレ・カヴァリエーレ》を見る。
「ペンデュラムエクシーズ…か…」
「翔太君!!」
伊織は思いっきり翔太に抱きつく。
「い…伊織…!?」
「翔太君!怖かったよぉ!!」
よっぽど恐ろしかったのか、翔太の胸に顔をうずめ、泣き続ける。
「…。ふう…泣き止むまで胸を貸してやる」
「翔太くーん…」
「そ…そんな…この俺が…」
負けたショックが大きかったのか、佐藤がその場に座り込む。
数分で伊織が泣き止むと、翔太は佐藤に詰め寄る。
「話せ…。石倉純也のことを」
「あ…ああ…。6年前のことだ…」
佐藤は窃盗や暴行などの犯罪を繰り返していた。
6年前は列車でいかがわしい行為をしようとしたが、石倉純也によって取り押さえられ、御用となった。
その結果彼は懲役刑となり、先日保釈されるまで純也へ復讐することを至上目的とした。
「それで、石倉純也の妹をさらおうとして…」
「私を間違えてさらった…ってこと?」
「ああ!そうだ!!くそっ!まさか、5年前に行方不明になっているとは…」
更にいうと、純也の妹、聖子の容姿を佐藤は知らずにこのような犯行に及んだ。
逆恨みを晴らすためにしては、何ともお粗末。
「ってことは、俺たちには何も恨みがないってことだな?」
「そ…そうだ。だから、警察には何も言うなよ?な、な!!?」
「…。伊織、ちょっと後ろ向いていてくれ」
「う…うん」
後ろを、バイクがある方向に顔を向けたのを確認すると、翔太は砂糖をじっと見る。
「な…何だよ!?」
「お前は伊織をさらい、挙句の果てに…。駄目だな」
翔太の拳が思いっきり佐藤の頬にめり込む。
「ギャワン!!」
変な悲鳴を上げながら佐藤は吹き飛び、気絶してしまった。
「これが鍵か…。伊織、帰るぞ」
「え…?でも、ここからバス停は…」
「大丈夫だ。こいつで帰る」
「え…えーーー!?」
ヘルメットをつけ、なんでもないようにバイクに乗る翔太を見て目を丸くする。
「しょ…翔太君。でも、免許は…?」
「奴のを使う。戻ったら改造すればいい」
「…いいの…かな?」
無免許運転、先ほどのピッキングツール所持、そして有印公文書偽造罪。
もはや、翔太も立派な罪人じゃないかと目を丸くしながら思い始めた。
「ああ、そうだ。バイク代だけは払っておくか」
一旦バイクから降りた翔太はピッキングツールが入ったケースに思いっきり佐藤の汗と指紋を付着され、彼の懐に入れる。
「じゃあ、帰るぞ」
「う…うん…」
サイドカーで苦笑いする伊織を見ずに、翔太はバイクを発進させた。
(それにしても…あいつは一体誰だったんだ…?)
自分の力を与えた男、そして行方不明になった石倉純也が見た悪夢。
翔太の中に浮かぶ疑問は増える一方だ。
翔太が手にしたペンデュラムの新しい可能性、ペンデュラムエクシーズ!!
多分、アニメでこれから出てくるかも…(汗)。
あと、翔太たちが住んでいる施設の名前を募集します。
思いついたら、オリカ同様メッセージをお願いしますね。