「タイラー姉妹が敗れた…だと!?」
「それに、何なんだあの状況は!?遊んでいるのか…!?」
「よそ見をするな!バトル!!《RR-ライズ・ファルコン》!!奴らのモンスターを引き裂け!!ブレイブクロー・レボリューション!!」
《古代の機械猟犬》5体を《RR-ライズ・ファルコン》が容赦なく切り裂いていき、爆風が3人のデュエル戦士を吹き飛ばした。
ライフが0になり、彼らはデュエルディスクの機能によって強制送還される。
アカデミアでは、タッグデュエルにおいて最強と名高いタイラー姉妹が敗れたのは大きな衝撃だった。
しかも、そのうちの1人であるグレースは遊矢のエンタメに魅了されてしまったのか、相手であるはずの柚子を巻き込んで踊ってしまっている。
「ちぃ…榊遊矢、あの忌まわしい男の息子め!!」
「よそ見してんじゃねえよ、俺たちのお楽しみはこれから…だろ?」
このような状態を生み出した遊矢を憎々しげに見るエドに翔太が皮肉交じりに言う。
エドのフィールドには赤いDが刻まれた黄色い仮面をつけた、ダーブブルーのスーツ姿の男がおり、翔太のフィールドには《魔装騎士ペイルライダー》が存在する。
「《D-HEROディストピアガイ》…おいおい、アカデミアは理想郷を作るんだろう?そのための兵士が絶望郷が名前についたエースカードを使うなんてな…」
「黙れ!貴様、さっきから相手を舐めた言葉ばかり…!!デュエリストとしての誇りはないのか!?」
「バカ言ってんじゃねえ。テロリストのくせに誇りなんて言葉を使うなんて、どれだけ面の皮が厚いんだ?」
翔太の言葉にエドは拳を握りしめ、黙り込む。
彼の脳裏には3年前、エクシーズ次元に始めて来た時の光景が浮かぶ。
そこでデュエルをした男は「デュエルで笑顔を」などという生ぬるい考えを持った男で、そんな男が気に食わず、デュエルをした。
しかし、そんな彼のデュエルは自分の想定をはるかに超えたもので、結果としてそのデュエルではその男に敗れた。
「とうとう反論もできなくなったか?じゃあ、せめてデュエルで俺を否定してみろよ?絶望郷の総司令殿!」
「…いいだろう!貴様の減らず口をここで終わらせてやる!《ディストピアガイ》の効果発ど…」
「総司令!!」
割り込むように、野呂がエドの前に飛び出してくる。
「邪魔をするな!」
「も、申し訳ありません!それが…ジェルマンのレナード隊長より通信が…」
「通信…?」
「準備が整った…とのことです。それ以外は何も…」
「そうか…。総員、ただちに撤退!次に備えろ!」
急に撤退命令に野呂達アカデミアの面々は困惑する。
タイラー姉妹が敗れ、こちらの士気に大きな影響があるとはいえ、それだけで撤退するのは明らかに早計だ。
野呂には先ほどの通信がその撤退の理由だということは理解できたが、通信にある準備の意味がいまだに分からず、頭を混乱させている。
しかし、総司令の命令には逆らえないため、デュエル戦士たちはデュエルディスクを操作し、青い粒子を放ちながら転移していく。
「き…貴様らも早く撤退しろ!柊柚子も連れてだ!!」
混乱する野呂は周囲の急な動きの変化に動揺する彼女たちに命令すると、自分も転移していった。
エドも転移の準備をはじめ、彼のフィールドの《D-HEROディストピアガイ》も姿を消す。
「おい、逃げる気か?」
「お前たちとはいずれ、しかるべき場所で決着をつける。だが…僕が倒すべき相手は君じゃない…」
「何…?」
「榊遊矢に伝えろ。アカデミアエクシーズ次元侵攻軍総司令エド・フェニックスが貴様を倒し、榊遊勝を否定する…とな」
「榊遊勝…だと!?おい…!!」
呼び止めようとする翔太だが、その時にはすでにエドは転移しており、その場から消えてしまっていた。
グロリアとグレースだけその場に残されたが、2人は動く気配を見せず、デュエルディスクを操作しようともしない。
ソリッドビジョンが消え、音楽もダンサーもなくなったことで、グレースも踊りを辞めているが、いまだに柚子の近くにいる。
野呂の命令に従い、柚子をさらって転移することも不可能ではないはずだ。
「君たちは…撤退しないのかい?」
2人の前へ歩いてきた侑斗が2人の顔を見る。
どちらも悩んでいるような表情で、生真面目にアカデミアのデュエル戦士の誇りを持っていた少女と先ほどまで敵である柚子を巻き込んでダンスを楽しんだ少女の姿はそこにはなかった。
2人とも、侑斗の質問に答えずことができず、沈黙している。
「もしかして、遊矢君と柚子ちゃんに負けたショックとか?」
「そういうのとは違う…かな?分からなくなった…ということ?」
「私…は…」
最初にグロリアが口を開くが、どういえばいいのかわからず、再び口を閉ざしてしまう。
先ほどまで、アカデミアに忠誠を誓い、すべての次元を1つにして理想郷を築くために戦うデュエル戦士であることに誇りを持っていた。
デュエルはそのための神聖な戦いの手段であると、自分に言い聞かせてきた。
しかし、遊矢と柚子のデュエルはそれと対極の位置にある。
そのデュエルを知ってしまったグロリアには何が正しいのかわからなくなった。
「グロリア姉さん…私は…」
グレースも、遊矢のエンタメデュエルにはまってしまったが、自分にそんなデュエルをする資格があるのか疑問を抱いていた。
グロリアと同じで、自分もアカデミアの兵士として手を汚してしまっているからだ。
「すぐに答えを出す必要はないさ」
悩む2人に遊矢は笑みを浮かべながら声をかける。
「榊遊矢…」
「ゆっくり考えてから、それから答えを出せばいいと思う。アカデミアとか次元戦争とか、そういうのは全部抜きにしてさ」
遊矢の意外な言葉に2人は驚きながらも、何か心のつっかえが取れたような感じがした。
そして、仮に自分たちは融合次元ではなく、スタンダード次元で生まれたなら、もしかしたら遊矢みたいにデュエルを楽しめたのではないかと考える。
だが、遊矢の言葉が正しければ、デュエルを楽しむのに生まれた次元は関係ないということになる。
そんな、生まれや所属に縛られないとしたら、どのような選択をするか。
「…姉さん。私は…」
「これ以上は言わなくていい、グレース。あなたは残ればいい」
顔を上げたグロリアは遊矢達に背を向け、歩き始める。
「グロリア姉さん!?」
「私はもう少し、考えてみる。1人にして…」
そう言い残し、グロリアは《アマゾネスペット虎》をリアルソリッドビジョンで実体化し、その背中に乗って立ち去って行った。
「姉さん、待って!!」
「行かせてあげよう…。彼女はきっと、まじめな女の子なんだ。遊矢の言う通り、時間が必要なんだよ」
彼女の後姿を見ながら、侑斗は静かに言う。
そんな彼を見たウィンダはなぜか面白くなさそうにジト眼で彼を見る。
「ウ…ウィンダ?なんでそんな目を…」
「だって、私がいるのにユウってば、他の女の子を見てるんだもん」
「うう…ごめん…」
「敵は退いた。急ぐぞ」
黒咲はガレキを上り、今いる大通りの先にある大きな建物を見る。
ハートランドでは最大の大きさの病院の廃墟がそこにはそびえたっていた。
「ふうう…」
懐中電灯の明かりだけを頼りに、真っ暗な部屋の中で紫色のコートを着た少年は缶詰を開き、その中にある豆を口に中に放り込む。
病院の中で見つけた非常食で、味も栄養も良好だ。
また、大きな建物であり、避難所としての使用が想定されていたこともあり、大量に備蓄されていた。
「ったく、あとどれだけここにいりゃあいいんだ…」
少年は座っているパイプ椅子のそばに置いてあるリュックサックから『欠片』を出し、目の前の折り畳みテーブルの上に置く。
この『欠片』を見ていると、数年前の戦いを思い出してしまう。
2つの世界のデュエリストが互いの世界の命運をかけてデュエルを繰り広げ、世界を書き換える力を手に入れようとしていたときのことを。
「まったく、『コイツ』とは妙な縁で結ばれているよな…」
扉が開く音が聞こえ、彼は机の上の懐中電灯の明かりを消す。
ジャリ、ジャリと足音が近づくとともに、別の明かりがこちらに近づいてくる。
入られてもすぐに見つからないように棚やガラクタでバリケードを作っているが、ここまで来るのは時間の問題だ。
もしもの時のため、少年はデュエルディスクを展開する。
紫をベースとした、槍のような形のもので、これはこの次元に来る際に調達したものだ。
入ってきた人物が見えた瞬間、とあるエクシーズモンスターのカードを置く。
すると彼の手には紫色の槍が現れ、短めに持ったうえでその人物に穂先を向ける。
「この槍…《S・H・Dark Knight》のものだね、凌牙君」
「ったく、遅えーぞ。侑斗」
声を聞くも、確認のために凌牙はそばにある発電機にスイッチを入れる。
十数秒すると、天井にあるLED電球が光り、白い光が部屋中を照らし始める。
槍を向けた相手が本当に侑斗だとわかると、ようやく凌牙は槍を消した。
「んもー、凌牙君ってば物騒だよ!ユウに槍なんて向けてー!ちょっとでも手元が狂ったら…」
「悪かったな…」
侑斗の後ろから出てきたウィンダに詫びを入れ、パイプ椅子に座る。
侑斗の後に続くように、翔太達も部屋に入ってきた。
「凌牙さん!!」
部屋に入ったサヤカは凌牙の元へ走ってくる。
最後に会った時と比較すると、コートに汚れがある上に髪も若干乱れている。
しかし、無事な様子を見て安心していた。
「そうか…お前が一緒に来たということは、俺の伝言を伝えてくれたみたいだな」
「剣崎、このイカみたいな変な髪のコイツがお前の仲間か?」
髪形のことを指摘された凌牙はムッとした表情を浮かべる。
自分の知っているライバルの中にはエビのような髪形をした男がいる。
そんな彼と比較すると、自分の髪形はマシだと自負している。
「うん。彼が神代凌牙。僕の仲間の1人だ。凌牙君、彼が例の…」
「あいつが…」
『例の』という言葉で理解した凌牙はじっと翔太を見る。
なぜ自分をそんな目で見るのかわからない翔太は不快な様子を見せる。
「おい、例のってのは…」
「凌牙君。これが…エクシーズ次元の『欠片』だね」
翔太の言葉を遮り、侑斗は『欠片』を手に取る。
柚子のブレスレッドはそれに反応するかのように光っていた。
「確かに…本物だ。凌牙君、よく見つけたね」
「見つけたのは俺じゃない。この男だ」
凌牙は懐から写真を出す。
それには襟にジェルマンのバッジをつけたレナードの姿が映っていた。
「ジェルマン…」
「それって、翔太と伊織が言っていた、アカデミアの特務部隊じゃ…!」
「やはりか…。身元の分からない男で、『欠片』まで持っていたから、もしかしたらと思ったが、やはりアカデミアの人間だったか…」
ジェルマンはシンクロ次元に潜入するまでその存在が知られていなかった。
そのため、凌牙にはレナードの正体を知るすべもない。
「この人が…」
サヤカはこの写真の男と1度だけ、クローバー校の中ですれ違ったことを思い出す。
一見するとおだやかな優男だが、なぜか彼の眼から冷たさが感じられた。
そして、カイトに反論し、カードにされそうになった時、彼はカイトのそばにいた。
「凌牙さん…やっぱりこの人が…」
「ああ、カイトをたぶらかし、自分の手で仲間をカードに変えるように仕向けたクソ野郎だ!」
写真を足元に投げ捨てた凌牙の拳にぶるぶると震えるほど力がこもる。
そして、かつて神になろうとした男の自分や仲間たちに向けて起こした数々の非道な所業を思い出してしまう。
話を聞いていたグレースも本当にそれがアカデミアの所業なのかと信じられずにいた。
このような作戦はエドが発案したものとは到底思えない。
「これが…アカデミアの、ジェルマンのやり方…」
「ま、ショックを受けても仕方ないと思うぜ。そういう教育を受けてきたみてーだからな」
「凌牙君、そのレナードって人は『欠片』をどこで見つけたか教えてくれたの?」
「いいや。だが、これではっきりわかった。アカデミアはレジスタンスの分断を図ろうとしている。あわよくば、レジスタンス同士を戦わせて、自滅させるために…」
エクシーズ次元では、今ではレジスタンスが唯一アカデミアに抵抗している。
黒咲やユートのようなデュエリストがほかにいる可能性があり、力押しで勝利できるとしても、アカデミアに損害が出るのは確かだ。
アカデミアの兵力温存を考えると、分断と内乱へもっていくのは都合がいい。
それに、分断については既に達成しており、あとは内乱へもっていけばいいだけだ。
「そうなると最悪だ。カイトには…スペード校に攻撃する理由ができてしまっている…」
凌牙とサヤカはカイトが起こした凶行を思い出す。
仲間をもカードに変えて自らの力に変えている彼がその矛先をそちらへ向けたとしても不思議ではない。
「じゃあ、急いでスペード校に知らせて、防衛の準備をしないと!!」
「やめろ!」
デュエルディスクで通信しようとした伊織の腕を凌牙がつかみ、通信機能をOFFに変更する。
どうしてかと言いたげにじっとこちらを見る伊織に凌牙は答える。
「クローバー校のレジスタンスが攻撃してくるかもしれないから防衛の準備をしろと言って、彼らが信じると思っているのか?いや、仮に信じたとしても、それがレジスタンスに与える影響は大きいぞ」
分断されたとはいえ、両レジスタンスはアカデミアに攻撃するとしても、分かれた相手と戦うことはなかった。
道は違えたとしても、アカデミアを倒し、エクシーズ次元を取り戻すという根幹については一致していると信じているからだ。
だが、このことは綱渡りのような不可侵関係を壊してしまう一大事だ。
そして、レジスタンス同士の、エクシーズ次元の同胞同士の内乱はメンバーの士気を地に落とす。
それで喜ぶのはアカデミアだ。
どちらが勝ったとしても、ボロボロになったレジスタンスをあとは横やりを入れる用に撃破すればいいだけになる。
そんな事態になる前に、カイトを止めなければならない。
「カイト君を止めるには、レナードが吹き込んだカード化した人達の命の力を使い、力を得ることが真実なのか、それとも嘘なのかを確かめないといけない」
カード化したデュエリストがどうなるのか、そしてそのカードをどうするのか、LDSが総力を挙げて調査しているが、今でも全く分かっていない。
唯一わかることは、翔太の左手の痣の力で解放することができるということだけだ。
素良から聴取しているが、彼もなぜそうする必要があるのか分からないらしい。
侑斗と凌牙は『欠片』に目を向ける。
もしかしたら、これに触れることで、それについて何かを知ることができるのかもしれない。
「考えていることは一緒か…。だが、俺とお前じゃあ駄目だ。『欠片』に拒絶されてしまっているからな」
「拒絶…どういうことだよ?」
「ええっと、『欠片』の力が使えないってこと!原因はよくわからないけど…ユウと凌牙君は『欠片』に触っても、それの力が使えないの」
ウィンダに説明されたが、いまいち納得がいかない。
なぜ彼らは『欠片』に拒絶されているのか、その説明が全くないからだ。
『欠片』に頼ることの危険性は既に使っている零児から聞かされている。
ほかに手段があるとしたら…。
「お前、秋山翔太っていうみたいだな。俺と来い」
「はぁ?なんでお前と…」
「俺とお前で餌になる。デュエルでな…」
病院の入り口前の広場に立った2人はデュエルディスクを展開し、対峙する。
病院の入り口の設置されている監視カメラは2人を捉えており、他のメンバーは地下室にあるノートパソコンから観戦している。
「おい、目的は移動中に聞いたが、分からねえな。なんで俺がお前とやらなきゃいけないんだ?」
目的を達成するためなら、他のランサーズのデュエリストとデュエルをしても達成する。
だが、凌牙は誰の意見も聞く間もなく翔太を選んだ。
「一番近くにお前がいた。理由はそれだけで十分だ」
「それはあの剣崎って野郎が…」
「悪いが、俺はアクションデュエルに慣れていねえ。スタンディングでやらせてもらうぜ」
「ちっ…無視かよ。ああいいぜ。その代り、先攻は俺だ」
翔太の交換条件に凌牙は静かに首を縦に振った。
「「デュエル!!」」
翔太
手札5
ライフ4000
凌牙
手札5
ライフ4000
「俺のターン。俺はモンスターを裏守備表示で召喚。ターンエンド」
翔太
手札5→4
ライフ4000
場 裏守備モンスター1
凌牙
手札5
ライフ4000
場 なし
「挑発的な口調の割には、かなり消極的なプレーじゃねえか。俺のターン、ドロー!」
凌牙
手札5→6
「このカードは手札の水属性モンスター1体を墓地へ送ることで、手札から特殊召喚できる。《白棘鱏》を特殊召喚!」
凌牙のフィールドに水しぶきが上がり、純白のエイのようなモンスターが空中に現れる。
白棘鱏 レベル4 攻撃1400
手札から墓地へ送られたカード
・竜宮の白タウナギ
「さらに、俺は手札から《ダブルフィン・シャーク》を召喚!」
ダブルフィン・シャーク レベル4 攻撃1000
「このカードの召喚に成功したとき、墓地からレベル3または4の魚族・水属性モンスター1体を守備表示で特殊召喚できる。俺は墓地から《竜宮の白タウナギ》を特殊召喚」
竜宮の白タウナギ レベル4 守備1200(チューナー)
「俺はレベル4の《白棘鱏》と《ダブルフィン・シャーク》でオーバーレイ!吠えろ未知なる轟き!深淵の闇より姿を現わせ!!エクシーズ召喚!!《バハムート・シャーク》!!」
再び噴き出る水しぶきとともに、鮫とドラゴンの特徴を併せ持つ凌牙のエースモンスターがフィールドに現れる。
バハムート・シャーク ランク4 攻撃2600
「更に、このカードは俺のフィールドに存在するエクシーズモンスターのオーバーレイユニットを2つ取り除くことで、手札から特殊召喚できる」
エクシーズ・リモーラ レベル4 攻撃800
取り除かれたORU
・白棘鱏
・ダブルフィン・シャーク
「更に、《エクシーズ・リモーラ》の効果発動!この方法で特殊召喚に成功したとき、墓地から魚族・レベル4モンスター2体を守備表示で特殊召喚できる。俺は《白棘鱏》と《ダブルフィン・シャーク》を特殊召喚!」
白棘鱏 レベル4 守備1200
ダブルフィン・シャーク レベル4 守備1000
「これでまたランク4のモンスターのエクシーズ召喚でもする気か!?」
「今の俺のデュエルはそんな単調なものじゃねえ。俺はレベル4の《エクシーズ・リモーラ》にレベル4の《竜宮の白タウナギ》をチューニング!深淵に眠る大いなる勇魚。生と死を廻る大海原に目覚めろ!シンクロ召喚!現れろ!!《白闘気白鯨》!!!」
チューニングリングとその中に飛び込んだ《エクシーズ・リモーラ》が白い光を放つとともに水があふれだす。
その水とともに、巨大な白いクジラが出現する。
これが彼の新たな切り札の1枚で、新しい戦略の可能性だ。
白闘気白鯨 レベル8 攻撃2800
「さらに《ダブルフィン・シャーク》と《白棘鱏》でオーバーレイ!」
(な、何だ…?この胸糞が悪くなるような感覚は…!)
凌牙のフィールドに2回目に出現したオーバーレイネットワークを見た翔太は右手でぎゅっと服の胸部当たりを握りしめる。
どうしてそのような感覚になるのかはわからないが、これからエクシーズ召喚されるモンスターが翔太の記憶と関連するモンスターであるのは確かのようだ。
「現れろ!No.101!満たされぬ魂を乗せた方舟よ。光届かぬ深淵より浮上せよ!《S・H・Ark Knight》!」
オーバーレイネットワークの中から機械の箱舟が現れる。
翔太は胸の苦しみに耐えながら、そのモンスターをじっと睨みつけた。
No.101S・H・Ark Knight ランク4 攻撃2100
「すごい…1ターンでランク4のエクシーズモンスター2体のレベル8のシンクロモンスターを…」
前までの凌牙は魚族エクシーズモンスターに特化した戦術だった。
しかし、今の彼はエクシーズ召喚だけでなく、シンクロ召喚をも組み込むことに成功している。
さらに手ごわくなった自分の旧知の仲間に侑斗とウィンダは喜んでいた。
「バトルだ!《白闘気白鯨》で裏守備モンスターを攻撃!」
《白闘気白鯨》が大きな口を開き、白い水のブレスを放つ。
ブレスは裏守備モンスターを飲み込み、翔太をも襲う。
「《白闘気白鯨》は守備モンスターを攻撃したとき、貫通ダメージを与える!」
「ぐううう…!」
裏守備モンスター
魔装霊レブナント レベル2 守備500(チューナー)
翔太
ライフ4000→1700
「翔太君のライフが一気に減っちゃった!!」
「それだけじゃない。《白闘気白鯨》は1ターンに2度攻撃することができる。当然、その攻撃でも貫通ダメージは発生する」
「ええーーー!?」
シンクロ素材が水属性モンスターに限定されているだけあって、すさまじい効果を持つ巨大なクジラに伊織は戦慄する。
このままその2度目の攻撃を許せば、翔太の敗北が決まってしまう。
「俺は《レブナント》のリバース効果を発動!デッキから魔装モンスター1体を手札に加える。俺は《魔装魔戦士ペルセウス》を手札に加える。そして、《レブナント》はリバースしたターン、戦闘では破壊されない」
「こいつで終わりだ!《白闘気白鯨》で《レブナント》を攻撃!」
ブレスを吐き終えたは今度はその巨大で翔太を押しつぶさんと、上空から落下してくる。
しかし、五芒星と蛇の首が描かれたローブ姿の戦士が現れ、両手で生み出した五芒星の結界で翔太を守る。
「手札の《ペルセウス》の効果!俺のフィールドに存在する魔装モンスターが攻撃対象となったとき、このカードを手札から特殊召喚することで、相手のバトルフェイズを終了させる!」
魔装魔戦士ペルセウス レベル5 攻撃2300
「なら、そのモンスターは封じてやる!《S・H・Ark Knight》の効果発動!オーバーレイユニットを2つ取り除くことで、相手フィールド上に存在する特殊召喚された攻撃表示モンスター1体をオーバーレイユニットにする。エターナル・ソウル・アサイラム!」
《No.101S・H・Ark Knight》のオーバーレイユニットが取り込まれ、そのモンスターから発射された錨で貫かれた《魔装魔戦士ペルセウス》がオーバーレイユニットとなり、コンテナに収納される。
取り除かれたORU
・ダブルフィン・シャーク
・白棘鱏
「俺はカードを1枚伏せ、ターンエンド」
翔太
手札4
ライフ1700
場 魔装霊レブナント レベル2 守備500(チューナー)
凌牙
手札6→1
ライフ4000
場 白闘気白鯨 レベル8 攻撃2800
バハムート・シャーク ランク4 攻撃2600
No.101S・H・Ark Knight(ORU1) ランク4 攻撃2100
「俺のターン!」
翔太
手札4→5
「俺はスケール2の《魔装槍士タダカツ》とスケール9の《魔装剣士ムネシゲ》でペンデュラムスケールをセッティング!」
「来るか…ペンデュラム召喚!」
2体のモンスターが生み出す青い光の柱を見て、凌牙はつぶやく。
そして、侑斗が語っていたもう1つのペンデュラム召喚の謎を思い出す。
(ペンデュラムモンスターのオリジナルを持っているのは遊矢1人だけのはずだ。だが、奴の持っているペンデュラムモンスターの間違いなくオリジナルに近い。だとしたら、どうやって…?)
「来たれ、時の果てに眠りし英雄の魂。漆黒の魂と契約し、封印から解き放たん!ペンデュラム召喚!現れろ、《魔装騎士ペイルライダー》、《魔装獣ユニコーン》!」
魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2500
魔装獣ユニコーン レベル4 攻撃1600
「こいつは…」
《魔装騎士ペイルライダー》を見た凌牙はその背後にうっすらと見えた幻影に警戒心をあらわにする。
蝙蝠の羽がついた、白と黄色をベースとしたスーツ姿の魔導士。
かつての宿敵が使っていたエースモンスター。
(まさか…本当にあいつの中で生きているのか?あの野郎が…!)
「さらに、俺は手札から装備魔法《魔装の聖盾-アイギス》を《ペイルライダー》に装備」
死の騎士には不釣り合いな、ヤギの皮が張られてひし形の聖なる盾が左腕に装着される。
さらに、その騎士は光剣を抜き、そばにいる老いた一角獣の背に乗る。
「そして、《魔装獣ユニコーン》は魔装騎士の装備カードとなり、装備モンスターの攻撃力を800アップさせる」
魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2500→3300
「バトル。《魔装騎士ペイルライダー》で《白闘気白鯨》を攻撃!クアトロ・デスブレイク!」
《魔装獣ユニコーン》が嘶くと、病院の壁を蹴って上空の《白闘気白鯨》に向けて飛んでいく。
そして、背に乗る《魔装騎士ペイルライダー》がすれ違いざまに光剣で横に真っ二つに切り裂いた。
「ぐうう…!俺は罠カード《ダメージ・ダイエット》を発動!俺がこのターン受けるダメージを半分にする!」
凌牙
ライフ4000→3750
「更に、《魔装獣ユニコーン》を装備したモンスターが戦闘で相手モンスターを破壊したとき、そのモンスターの攻撃力分のダメージを与える!」
真っ二つとなった白クジラが地上に落ち、発生する衝撃波が凌牙を襲う。
凌牙
ライフ3750→2350
「だが、この程度で俺は倒せねえ。《白闘気白鯨》の効果発動!このカードが相手によって破壊され墓地へ送られたとき、墓地の水属性モンスター1体を除外することでチューナー扱いで特殊召喚できる。俺は《竜宮の白タウナギ》を除外する!」
真っ二つになったはずの《白闘気白鯨》の体が元に戻り、再び浮上する。
白闘気白鯨 レベル8 攻撃2800(チューナー)
「そうかよ。なら、もう1度斬るだけだ。《魔装槍士タダカツ》のペンデュラム効果発動!1ターンに1度、俺のペンデュラムモンスターが戦闘で相手モンスターを破壊したとき、そのモンスターは続けてもう1度だけ攻撃できる」
《魔装槍士タダカツ》が持っている槍を正面に立てて祈りを捧げ、《魔装騎士ペイルライダー》の光剣が槍に変化する。
「クアトロ・デスブレイク・セカンド!」
再び浮上した《白闘気白鯨》を倒そうと、《魔装騎士ペイルライダー》は手にした槍を上空に向けて投げつける。
それに貫かれた《白闘気白鯨》は爆発し、爆風が凌牙を襲う。
凌牙
ライフ2350→2100→700
「やったー!一気に逆転だー!!」
魔装カードのコンボで一気に凌牙のライフを700まで減らすことに成功した翔太のことを我が事のように喜ぶ。
再び自身の効果で蘇生される可能性があるものの、それでも攻撃力3300の《魔装騎士ペイルライダー》を上回ることができない。
それがわかっているのか、凌牙は《白闘気白鯨》の効果を使おうとしない。
「バトルフェイズ終了時、《魔装の聖盾-アイギス》の効果を発動。装備モンスターが戦闘で相手モンスターを破壊した場合、デッキからカードを1枚ドローする。そして、カードを1枚伏せ、ターンエンド」
翔太
手札5→0
ライフ1700
場 魔装霊レブナント レベル2 守備500(チューナー)
魔装騎士ペイルライダー(《魔装獣ユニコーン》《魔装の聖盾-アイギス》装備) レベル7 攻撃3300
伏せカード1
魔装槍士タダカツ(青) ペンデュラムスケール2
魔装剣士ムネシゲ(赤) ペンデュラムスケール9
凌牙
手札1
ライフ700
場 バハムート・シャーク ランク4 攻撃2600
No.101S・H・Ark Knight(ORU1) ランク4 攻撃2100
「俺のターン、ドロー!」
凌牙
手札1→2
「俺は手札から装備魔法《エクシーズの王冠》を《バハムート・シャーク》に装備!装備モンスターのランクはレベルに変化し、2体分のエクシーズ素材になる。俺はレベル4となった《バハムート・シャーク》でオーバーレイ!」
《バハムート・シャーク》が2体に分身し、上空のオーバーレイネットワークに飛び込んでいく。
そして、その中から蜘蛛のような腕と足をした白い海竜が現れる。
右腕には「37」という番号が刻まれており、右腕の爪を《魔装騎士ペイルライダー》に向ける。
「眠りし大地と海の力が紡がれしとき新たな命の光が噴出する!エクシーズ召喚!目覚めよ、《No.37希望織竜スパイダー・シャーク》!」
No.37希望織竜スパイダー・シャーク ランク4 攻撃2600
「更に、俺は手札から速攻魔法《サイクロン》を発動。装備カード《アイギス》を破壊する!」
凌牙のフィールドに出現した《サイクロン》のソリッドビジョンから発生する竜巻に装着していた盾が吹き飛ばされ、消滅する。
「《アイギス》を装備した《ペイルライダー》は相手モンスターの効果を受けない。穴をあけてきたか…!」
翔太はフィールドに残っている《No.101S・H・Ark Knight》の効果に警戒していた。
このモンスターは何らかの手段でオーバーレイユニットを手にしたとき、再び相手モンスターをオーバーレイユニットに変える効果が使えるようになる。
だが、今気にしなければならないのは《No.37希望織竜スパイダー・シャーク》だ。
「(にしても、ナンバーズだって?あの《S・H・Ark Knight》といい、どうしてこんなにあのカードを見ると腹が立つんだ…?)俺は《魔装の聖盾-アイギス》の効果を発動。このカードが相手によって破壊され墓地へ送られたとき、お互いにデッキからカードを1枚ドローする」
魔装の聖盾-アイギス
装備魔法カード
このカード名のカードは自分フィールド上に1枚しか存在することができない。
「魔装」モンスターのみ装備可能。
(1):装備モンスターが相手モンスターを戦闘で破壊した自分バトルフェイズ終了時に発動する。自分はデッキからカードを1枚ドローする。
(2):装備モンスターが「魔装騎士」モンスターの場合、そのモンスターは相手モンスターの効果を受けない。
(3):このカードが墓地へ送られたときに発動する。お互いにデッキからカードを1枚ドローする。
「バトルだ!《スパイダー・シャーク》で《ペイルライダー》を攻撃!スパイダー・トルネード!!」
《No.37希望織竜スパイダー・シャーク》の口から蜘蛛の糸が発射され、《魔装騎士ペイルライダー》と《魔装獣ユニコーン》がからめとられる。
「《スパイダー・シャーク》の効果!自分か相手モンスターの攻撃宣言時、オーバーレイユニットを1つ取り除くことで、ターン終了時まで相手フィールドに存在するモンスターの攻撃力を1000ダウンさせる」
魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃3300→2300
「攻撃力を落としたみたいだが、《ペイルライダー》はその程度じゃ倒せないぞ。《魔装剣士ムネシゲ》のペンデュラム効果発動!1ターンに1度、俺のモンスターゾーンに存在するペンデュラムモンスター1体を破壊から守る!」
円盤状のバリアが《魔装騎士ペイルライダー》の前に展開され、《No.37希望織竜スパイダー・シャーク》の口から次に発射された水流を受け止める。
翔太
ライフ1700→1400
「そして、《ペイルライダー》の効果だ。戦った相手モンスターをダメージステップ終了後、破壊する!」
右腕を使って糸を振りほどいた《魔装騎士ペイルライダー》が右腕についているビームガンを連射する。
発射された赤いビームが次々と《No.37希望織竜スパイダー・シャーク》に着弾し、そのモンスターは爆発・消滅する。
「《スパイダー・シャーク》の効果発動!このカードが戦闘・効果によって破壊されたとき、このカード以外の俺の墓地のモンスター1体を特殊召喚することができる。俺は墓地から《白闘気白鯨》を特殊召喚!」
爆発の後で残った《No.37希望織竜スパイダー・シャーク》の残骸が集結し、海とつながるワームホールが出現する。
その中から《白闘気白鯨》が姿を現す。
白闘気白鯨 レベル8 攻撃2800
「ちっ…またそのモンスターかよ!?」
破壊しても厄介な効果を発揮する《No.37希望織竜スパイダー・シャーク》に怒りを見せる。
2度も攻撃できるうえに貫通効果を持つそのモンスターの攻撃の前では、翔太の残ったライフは一瞬で消し飛んでしまう。
「こいつで《ペイルライダー》には退場してもらう!!《白闘気白鯨》で《ペイルライダー》を攻撃!」
上空の《白闘気白鯨》の口がゆっくりと開き、水のブレスを発射しようとする。
もう《魔装剣士ムネシゲ》の効果はこのターン、使うことができない。
「俺は罠カード《ペンデュラム・ハンド》を発動!俺のフィールドに存在するモンスターがペンデュラムモンスター1体のみで、そのモンスターが攻撃対象となったとき、相手フィールドの攻撃モンスター以外のモンスター1体のコントロールを奪い、そのモンスターの装備カードとなる。そして、攻撃対象をそのモンスターに変更させる!俺がコントロールを奪うのは、《S・H・Ark Knight》!」
2本の光の柱の間から透明で巨大な手が出現し、《No.101S・H・Ark Knight》をつかんで《魔装騎士ペイルライダー》の前へ移動させる。
《白闘気白鯨》のブレスは味方のはずの《No.101S・H・Ark Knight》に直撃する。
「へえ…こいつはいい効果だな。自分が破壊されるとき、オーバーレイユニットを身代わりにできるなんてな。なら、《魔装魔戦士ペルセウス》は返してもらうぜ」
「くっ…だが、それでもお前は700の戦闘ダメージを受けるぞ!」
翔太
ライフ1700→1000
「そして、《白闘気白鯨》は2回攻撃することができる。もう1度《S・H・Ark Knight》を攻撃する!!」
再び口を開いた《白闘気白鯨》が今度こそ仲間を取り戻そうとブレスを放とうとする。
その宣言を聞いた瞬間、翔太はにやりと笑う。
「俺は装備カードとなっている《ペンデュラム・ハンド》のもう1つの効果を発動!装備モンスターが攻撃対象となったとき、このカードを墓地へ送ることで、攻撃モンスターと装備モンスターのコントロールを入れ替える!」
「何!?」
《No.101S・H・Ark Knight》をつかんでいた透明な手が爆発し、水蒸気が発生する。
水蒸気が消えると、なぜか凌牙のフィールドに《No.101S・H・Ark Knight》がおり、翔太のフィールドに《白闘気白鯨》がいて、水のブレスを放とうとしていた。
「そして、入れ替わったモンスター同士でバトルを行う!」
「すっごーい!これで凌牙さんの自滅で勝利…ってあれ、《ペンデュラム・ハンド》の効果を1回目の攻撃に時に使えばよかったんじゃ…」
「《ペンデュラム・ハンド》のその効果は装備カードになった直後には発動できないんだ」
翔太と同じく、ペンデュラムモンスターを主体で使い、こうしたペンデュラムモンスターをサポートするカードをよく見ている遊矢が解説する。
「仮に《ペイルライダー》を攻撃対象とした場合は《ペンデュラム・ハンド》のその効果を発動できなかった」
それを可能にしたのは《No.101S・H・Ark Knight》が凌牙にとって大切なカードだからだ。
そのモンスターのコントロールを奪い、その効果を使うことでうまく挑発した。
それがうまくはまり、凌牙を自滅へ追いやろうとしている。
ペンデュラム・ハンド
このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):自分フィールドに存在するモンスターがPモンスター1体のみで、相手フィールドに表側表示モンスターが2体以上存在する場合、相手モンスターの攻撃宣言時に攻撃モンスター以外の相手フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。その表側表示モンスターのコントロールを得て、このカードをそのモンスターの装備カードにし、攻撃対象をそのモンスターに移し替えてダメージ計算を行う。
(2):この効果で装備カードとなったこのカードを装備したモンスターが攻撃対象となったとき、このカードを墓地へ送ることで発動する。攻撃モンスターと装備モンスターのコントロールを入れ替える。その後、コントロールの入れ替わったモンスター同士でダメージ計算を行う。この効果は(1)の効果を発動したダメージ計算時に発動することができない。
(3):このカードがフィールドに表側表示で存在する限り、自分はP召喚以外の方法でEXデッキからモンスターを特殊召喚できない。
「さあ…これで終わりだ!」
「まだ終わってねえ!俺は手札から速攻魔法《RUM-クイック・カオス》発動!」
「何…!?」
「お前の装備魔法の効果でドローしたカードだ!!俺のフィールドに存在するカオスエクシーズ以外のナンバーズをカオス化する!俺は《S・H・Ark Knight》でオーバーレイ!」
発動したRUMを見た翔太は《RUM-バリアンズ・フォース》を見た時と同じような不快感に襲われる。
上空の紫色のオーバーレイネットワークの中に《No.101S・H・Ark Knight》が消え、《白闘気白鯨》のブレスを回避する。
「現れろ、CNo.101!満たされぬ魂の守護者よ!暗黒の騎士となって導け!《S・H・Dark Knight》!!」
オーバーレイネットワークの中から、何度破壊されたとしてもオーバーレイユニットがある限り、いくらでもよみがえる槍士が下りてくる。
そのモンスターを見た翔太の右拳に力が入る。
「この…モンスターは…!!」
CNo.101S・H・Dark Knight ランク5 攻撃2800
「バトルだ!《S・H・Dark Knight》で《白闘気白鯨》を攻撃!」
槍を手元で数回回転させた後で、《CNo.101S・H・Dark Knight》は槍を仲間である《白闘気白鯨》に投げつけて攻撃をする。
「どうして!?《ペンデュラム・ハンド》の効果がなくなったから、相討ちを狙わなくても…」
「いや、これでいい」
「え…?」
侑斗とウィンダ、凌牙の切り札のそのカードのことを知っている彼らにとって、凌牙の今の判断は的確に思えた。
《白闘気白鯨》が放つブレスと槍が交差し、互いに直撃すると同時に彼らは消滅した。
「リターン・フロム・リンボ…」
「何?」
「オーバーレイユニットを持つそいつが破壊され墓地へ送れたとき、墓地に《S・H・Ark Knight》がいるとき、復活する…。そして、そいつの攻撃力分ライフが回復する…」
知るはずもないカードの効果を翔太が持ち主である凌牙に変わって説明したうえに、効果の名前までもを言ってしまう。
その時、翔太は頭を右手で抑えており、左手の痣が紫色に光っていた。
彼の言う通り、ブレスを受けてボロボロになった鎧を着た《CNo.101S・H・Dark Knight》がフィールドに舞い戻った。
CNo.101S・H・Dark Knight ランク5 攻撃2800
凌牙
ライフ700→3500
「…リターン・フロム・リンボの効果で復活した《Dark Knight》はこのターン、攻撃できない。ターンエンドだ」
翔太
手札0→1
ライフ1000
場 魔装霊レブナント レベル2 守備500(チューナー)
魔装槍士タダカツ(青) ペンデュラムスケール2
魔装剣士ムネシゲ(赤) ペンデュラムスケール9
凌牙
手札2→0
ライフ3500
場 No.101S・H・Dark Knight ランク5 攻撃2800
「お前…なんでこいつの効果を知っている?」
凌牙はギロリとにらみながら尋ねる。
侑斗に協力を頼まれたとき、凌牙はほかの誰でもなく、自分に最初に求めたのかを尋ねる。
その理由の一つが『彼』と強い因縁の有る人物であること。
そして、ある世界の力を持った最後の1人であること。
「…知らねーよ…。なぜか、頭の中からささやかれた。そいつの効果を…」
たっぷりと息を吸い、袖で汗で拭いた翔太はデッキトップのカードを引く。
翔太
手札1→2
「俺は手札から魔法カード…《魔装天啓》を発動…。エクストラデッキ・墓地の魔装ペンデュラムモンスター2体を手札に加える…。俺は墓地の《魔装魔戦士ペルセウス》、エクストラデッキの《魔装騎士ペイルライダー》を手札に加える…。そして、レベル3から8までのモンスターのペンデュラム召喚を行う…。来たれ、時の果てに眠りし英雄の魂。漆黒の魂と契約し、封印から解き放たん!ペンデュラム召喚…!現れろ、《魔装魔戦士ペルセウス》、《魔装騎士ペイルライダー》、《魔装僧正テンカイ》」
魔戦士と騎士と共に、背中に五芒星が刻まれた赤い袈裟を纏い、口元を黒いガスマスクで隠した白いロングヘアーの僧侶が現れる。
魔装魔戦士ペルセウス レベル5 攻撃2300
魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2500
魔装僧正テンカイ レベル3 攻撃1300(チューナー)
「《テンカイ》の効果発動。このカードのペンデュラム召喚に成功したとき、俺のペンデュラムゾーンに存在するカードがどちらも魔装カードの場合、デッキから魔装と名の付く魔法・罠カード1枚を手札に加える。俺はデッキから《魔装伝心》を手札に加える」
《魔装僧正テンカイ》が数珠を握りしめ、祈りをささげると、デッキから《魔装伝心》が自動排出され、翔太の手札に加わる。
魔装僧正テンカイ
レベル3 攻撃1300 守備0 闇属性 魔法使い族
【Pスケール:青10/赤10】
(1):このカードはもう片方の自分のPゾーンに置かれているPモンスターが「魔装」モンスター以外の場合、墓地へ送られる。
(2):自分は「魔装」モンスター以外の特殊召喚を行えない。この効果は無効化できない。
(3):1ターンに1度、EXデッキから特殊召喚された「魔装騎士」モンスター1体を対象に発動できる。ターン終了時まで、そのモンスターの攻撃力を800アップさせる。この効果は相手ターンでも発動できる。
【チューナー】
このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードのP召喚に成功したとき、自分Pゾーンに存在するカードが「魔装」カードのみの場合に発動できる。デッキから「魔装」魔法・罠カード1枚を手札に加える。
魔装魔戦士ペルセウス
レベル5 攻撃2300 守備1600 光属性 戦士族
【Pスケール:青1/赤1】
このカード名の(3)のP効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードはもう片方の自分のPゾーンに置かれているPモンスターが「魔装」モンスター以外の場合、墓地へ送られる。
(2):自分は「魔装」モンスター以外の特殊召喚を行えない。この効果は無効化できない。
(3):相手の直接攻撃宣言時に発動できる。Pゾーンに存在するこのカードを特殊召喚し、バトルフェイズを終了させる。
【モンスター効果】
このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):自分フィールドに存在する「魔装」モンスターが攻撃対象となったときに発動できる。このカードを手札から特殊召喚し、バトルフェイズを終了させる。
「く…っ!!」
「バトルだ!《魔装騎士ペイルライダー》で《S・H・Dark Knight》を攻撃。クアトロ・デスブレイク!」
《魔装騎士ペイルライダー》が《魔装剣士ムネシゲ》の構築したバリアに包まれた状態で突撃し、光剣と槍がぶつかり合う。
「《ムネシゲ》の効果で、《ペイルライダー》は1ターンに1度、破壊から守られる!そして、《ペイルライダー》の効果で戦った相手モンスターは破壊され…!?」
効果の説明を終える直前に激しい頭痛が翔太を襲い、同時に《魔装騎士ペイルライダー》の動きが止まる。
「う、うう…ああああああ!!!」
斧で脳を真っ二つにされたかのような激痛に襲われ、その場で膝をつき、両手で頭を抑える。
これまでの頭痛と比較すると、今回のそれの痛みは段違いにひどいものだった。
凌牙はあわてて翔太に駆け寄ろうとするが、背後から何者かの気配を感じ、振り返った。
デュエルディスクを展開し、黒いコート姿をした彼はうっすらと笑みを浮かべながら、凌牙を見つめていた。
「どうやら、君主催のパーティーに間に合うことができたようだな…。まだ料理はなくなってないんだろう?」
「レナード…テスタロッサ…」
じっとレナードをにらむ凌牙の体が紫色のオーラに包まれる。
一瞬驚きを見せたレナードだが、すぐに元の表情に戻し、彼をじっと見た。
「なるほど…これが異次元の力。4つの次元にはない力…。興味深いな…」