「間違いないわ…この人、この人が…」
カメラが捉えた、白髪の優男を見たサヤカが震えるのを耐えながら、じっと見つめる。
いつの間にかカイトの隣に立ち、彼を惑わしているその男の薄ら笑いは今でも目に焼き付いている。
「グレースちゃん…間違いないの?」
アカデミアに所属していたグレースにウィンダが確認するように尋ねる。
サヤカと凌牙を除くと、レナードについて知っていると思われる人物は彼女だけだ。
グレースは肯定するかのように、首を縦に振る。
「ええ…レナード・テスタロッサ。ジェルマンのリーダー…」
「余裕な態度だな。俺らの策に敢えて乗って出てきたってのか?」
対峙するレナードに身構えながら、凌牙は単刀直入に問う。
(こいつが…レナード…)
デュエルが中断し、頭痛がゆっくりと和らいできた翔太も顔を上げ、レナードを見る。
そして、凌牙が放つ紫色のオーラに目を大きく開いた。
「カオスの…力…」
「へえ、カオスの力か…。そのことをなぜ君が知っているんだろうな…?」
「質問に答えろ、レナード!」
凌牙を無視し、翔太の言葉に興味を示すレナードに怒りを見せる凌牙のオーラが強まっていく。
(カオス…一体何を言っているんだ!?)
よくわからない言葉に疑問を浮かべる遊矢の眼がオッドアイに変わり、画面越しの3人を見る。
すると、凌牙と翔太からは同じ力が感じられ、翔太をうっすらと包むカオスのオーラが見えてしまう。
そして、レナードの中にあるドス黒い何かも…。
それらを見た遊矢の額を冷たい汗が流れた。
「ええっと、よくわからないけど…翔太君と凌牙さんって、何か関係が…あるんですか??」
2人のデュエルを見ていた伊織は状況を整理しきれず、頭を抱えながら侑斗に尋ねるが、返事が返ってくることはなかった。
そんな、何も答えない侑斗を黒咲はじっと見る。
(剣崎さんとウィンダさん、凌牙さん…。一体、3人は俺たちに何を隠しているというんだ?)
「ああ…すまない。君の質問に答えるのが先だった。そうだ、君が何を知りたいのか、教えてあげようと思ったのさ」
教えてやる、という上から目線な言い方が癪に障るものの、ゆっくりと呼吸して落ち着きを取り戻していき、凌牙はレナードをにらむ。
しかし、その程度のにらみは彼にとっては痛くもかゆくもないようで、薄ら笑いはそのままだ。
「まぁ…そうだな。目的はレジスタンスで無駄な抵抗を続けるデュエリストを救済するためさ」
「救済…だと!?」
「そうさ。いい加減諦めればいいものを性懲りもなく戦い続けている君たちのようなデュエリストを救いたいのさ。こんな歪んでしまった世界のために命を懸ける…フッ、ばかげた話だ」
(歪んだ…世界…?)
「てめえ…!!!」
仲間や愛する人達、そして故郷である自分たちの世界を守るために戦うレジスタンスやランサーズを侮辱するようなレナードの言動に、凌牙は抑えようとしていた怒りに火が付くのを感じた。
そして、人々をカードに変えることを救済ととらえている彼に歪みを感じた。
「だが、すべての人間を救済しようとするとかなりの労力がかかる。だから、彼に協力してもらったのさ。そして、彼が手に入れた力をアカデミアのために使わせてもらう」
「アカデミアのため…?やっぱり、カイトに力を与える気も、アカデミアを倒す気もサラサラねえってことだな!?」
「勘違いしてもらっては困る。俺は力の手に入れ方を教えただけだ。そして、選択したのはカイト本人。ただ、それだけの話だ」
「ふざけんな!よくもアイツを…!」
怒りを我慢できなくなった凌牙は飛び出し、レナードに殴りかかろうとする。
しかし、殴る直前に腹部にレナードの膝がめり込み、凌牙は腹を抱えてその場で倒れてしまう。
同時に、彼を包んでいたカオスのオーラも消えてしまった。
「心配しなくていい。カードになった仲間たちは新世界の贄として救済される。むしろ誇るべきことだろう…?」
「黙…れ…!」
凌牙はクローバー校のレジスタンスの潜入していたときの彼らを思い出す。
彼らは確かに頑なだが、自分たちだけの力で故郷と仲間を守りたいという思いの強さを肌で感じることができた。
そんな彼らの思いを踏みにじったレナードを許すことができなかった。
「さて…俺は最後の準備があるから、これで失礼することに…」
「待てよ、勘違いナルシスト」
凌牙たちに背を向け、立ち去ろうとするレナードに翔太はデュエルディスクを構える。
しかし、レナードは背中を向けたままで、決して翔太を見ようとしない。
「悪いが、俺は忙しい…。相手なら、彼が代わってしてくれる。それで我慢するといいさ」
「待て!!」
デュエルディスクに何かを入力し始めたレナードを取り押さえようと、翔太は走り出すが、すぐに彼は青い粒子となって姿を消してしまった。
「ちっ…あの野郎!」
「ほーんっとに、人使いが荒いんだよねぇーあの小僧はよぉー。分かってくれた?おじさまたちの苦労」
背後から聞き覚えのある声が聞こえ、振り返るとそこにはセレナをさらったゲイツの姿があった。
そして、振り返ると同時に彼のデュエルディスクからアンカーが発射され、翔太のデュエルディスクを捉える。
強制的に翔太のデュエルディスクがデュエルモードに移行し、翔太の操作を受け付けなくなっていた。
「そこのイカ頭坊ちゃんはのびてるみたいだしー、オジサンを楽しませてくれるかねー?僕ぅー?」
「キモいおっさんだな。もみあげも含めて」
「ほぉー、私のもみあげの素晴らしさがわからんとは…悲しいねえ。人生のほとんどをこれで損してる。よかろう!私がデュエルでその素晴らしさを教えてやろう!!」
「ノーサンキューだ!お前には借りがあるからな…ぶちのめす」
カードを引き、互いにデュエルの準備が整う。
そして、デュエル開始の宣言をすることなく、ゲイツが先に動いた。
ゲイツ
手札5
ライフ4000
翔太
手札5
ライフ4000
「私はモンスターを裏守備表示で召喚!カードを3枚伏せて、ターンエンド!」
ゲイツ
手札5→1
ライフ4000
場 裏守備モンスター1
伏せカード3
翔太
手札5
ライフ4000
場 なし
(ちっ…狂っているくせに油断できねえ…)
先攻のゲイツの動きを見て、ある程度彼のデッキを把握しようとした翔太だが、裏守備モンスターを含めて3枚もの伏せカードを用意されたことでわからない部分が多くなったうえに攻撃しづらくなった。
「俺のターン!」
翔太
手札5→6
「俺はスケール3の《魔装船ヴィマーナ》とスケール6の《魔装剣士ローラン》でペンデュラムスケールをセッティング!さらに、セッティングした《ローラン》のペンデュラム効果を発動。1ターンに1度、ペンデュラムゾーンに存在するカード1枚のスケールを2つ変動させることができる。俺は《ローラン》のスケールを2つ増やす」
現れたばかりの《魔装剣士ローラン》がロングソードを天に掲げ、頭上に浮かんでいる数字を6から8へと変えた。
魔装剣士ローラン(赤) ペンデュラムスケール6→8
「これで俺はレベル4から7までのモンスターを同時に召喚可能!来たれ、時の果てに眠りし英雄の魂。漆黒の魂と契約し、封印から解き放たん!ペンデュラム召喚!来い、《魔装鳥キンシ》、《魔装竜ファーブニル》!」
魔装鳥キンシ レベル7 攻撃2400
魔装竜ファーブニル レベル4 攻撃1900
「《ヴィマーナ》のペンデュラム効果。俺か相手がペンデュラム召喚に成功したとき、デッキからカードを1枚ドローする。さらに俺は手札から魔法カード《魔装一閃》を発動。俺が魔装モンスターのペンデュラム召喚に成功したターンにのみ発動でき、ペンデュラム召喚した魔装モンスターの数だけ魔法・罠カードを破壊できる。そして、このカードの発動に対して、対象となったカードは発動できない」
《魔装鳥キンシ》と《魔装竜ファーブニル》が口から炎を放ち、ゲイツの伏せてあった2枚のカードを焼き尽くす。
「うおおお!?熱、熱いって!!どーすんの!?私のモミアゲが燃えちゃったらどうすんの!?」
「モミアゲ、モミアゲうるせえな。そんなに大事なら、墓場まで持っていけ!」
リアルソリッドビジョンにより、温度はある程度再現されるものの、物を燃やしたり凍らせたりするほどの再現はリミッターをかけることで抑えられている。
長いもみあげに息を吹きかけ、ホッと一息つくゲイツに翔太はいら立ちをあらわにしていた。
破壊された伏せカード
・パワー・ウォール
・リビングデッドの呼び声
魔装一閃
通常魔法カード
このカード名のカードは1ターンに1度しか使用できない。
(1):自分が「魔装」モンスターのP召喚に成功したターンのメインフェイズにのみ、P召喚された「魔装」モンスターの数だけフィールドの魔法・罠カードを対象に発動できる。そのカードを破壊する。このカードの発動に対して、対象となったカードは発動できない。
「さらに俺は手札から《魔装学者ゲンナイ》を召喚」
魔装学者ゲンナイ レベル1 攻撃0
「このカードの召喚に成功したとき、俺の手札・フィールドのモンスター1体をデッキに戻し、そのモンスターのレベルを合計が下回るように、デッキから魔装モンスター2体を効果を無効にして特殊召喚できる。俺は《魔装鳥キンシ》をデッキに戻し、《魔装壁ゴルゴー》と《魔装妖ビャッコ》を特殊召喚!」
魔装壁ゴルゴー レベル2 守備1000(チューナー)
魔装妖ビャッコ レベル3 攻撃400
「キュイー!!」
《魔装壁ゴルゴー》の前で丸くなるビャッコをゲイツはじーっと見る。
目が笑っているものの、なぜか嫌な予感を感じたビャッコは急いで壁の後ろに隠れた。
「ええっ!?なんで隠れちゃうわけ!?オジサン、傷ついちゃう…」
「そうされる理由、自分の心に聞いてみろ」
「ええーーー!?私はかわいいものは大好きだよ?だって、血祭りにあげて、生皮を…」
「レベル3の《ビャッコ》とレベル4の《ファーブニル》、レベル1の《ゲンナイ》にレベル2の《ゴルゴー》をチューニング!」
「ああ、ビャッコちゃん!!そんなー行かないでくれよー!そんなことしたら、生皮剥ぎ取れないじゃないかーーー!!」
「勝利と支配をもたらす第2の騎士よ、終戦を告げるその矢で敗者を鎮めよ!シンクロ召喚!《魔装騎士ホワイトライダー》!!」
ゲイツの言葉をこれ以上聞きたくないのか、翔太はいつも以上に大きな声で叫ぶ。
そして、勝利と支配をもたらす第2の騎士が下劣な戦士を裁くためにフィールドに舞い降りた。
魔装騎士ホワイトライダー レベル9 攻撃3100
「さらに、《ビャッコ》の効果。このカードをシンクロ、エクシーズ素材としたとき、デッキからカードを1枚ドローする。バトル!《ホワイトライダー》で裏守備モンスターを攻撃!アロー・オブ・ルール!!」
《魔装騎士ホワイトライダー》が光の矢を放ち、撃ち抜かれたモンスターが白い粒子となって消滅する。
裏守備モンスター
魔導雑貨商人 レベル1 守備700
「おおーーーっと!!ここで《魔導雑貨商人》のリバース効果発動ぉー!魔法・罠カードが出てくるまでデッキの上からカードをめくる。さぁー、どれだけ墓地肥やしでっきるっかなぁー?」
ニヤリと笑いつつ、ゲイツはデッキを確認し、カードを次々と墓地へ送っていく。
そして、13枚目のカードが魔法・罠カードのようで、そのカードを手札に加えた。
デッキから墓地へ送られたカード
・魔界発冥界行きバス
・シャドール・ビースト
・インフェルノイド・デカメロン
・ヴォルカニック・クイーン
・インフェルノイド・アシュメダイ
・インフェルノイド・アドラメレク
・インフェルノイド・ネヘモス
・インフェルノイド・シャイターン×2
・インフェルノイド・ルキフグス
・インフェルノイド・アスタロス×2
手札に加えたカード
・色欲の壺
「おお、ラッキー!《シャドール・ビースト》は効果で墓地へ送られたとき、デッキからカードを1枚ドローできる。あっりがっとさん」
一期に墓地を肥やされた挙句、手札を2枚増やしてしまう結果となり、自分のうかつさを感じながら翔太はゲイツの墓地に送られた12枚のカードを確認する。
《シャドール・ビースト》については徳松のデッキにも入っていたことを記憶しているが、問題は9枚ものインフェルノイドだ。
そのカードは今まで見たことがない。
「さらに、《魔装鳥キンシ》でダイレクトアタック!」
「罠発動、《ガード・ブロック》!!私が受ける戦闘ダメージを0にし、デッキからカードを1枚ドローする」
《魔装鳥キンシ》の放つ炎が透明なバリアによって防がれてしまう。
「ちっ…この攻撃もダメか!?」
「アヴェマリ~ア~…」
挑発のためなのか、ゲイツはバリアに守られている間、腰を振りながらアヴェマリアを熱唱し始める。
まるで対戦相手である自分を馬鹿にするような振る舞いに腹を立てながら、翔太はカードを手に取る。
「俺はカードを1枚伏せ、ターンエンド!!」
ゲイツ
手札1→4(うち1枚《色欲の壺》)
ライフ4000
場 なし
翔太
手札6→1
ライフ4000
場 魔装騎士ホワイトライダー レベル9 攻撃3100
魔装鳥キンシ レベル7 攻撃2400
伏せカード1
魔装船ヴィマーナ(青) ペンデュラムスケール3
魔装剣士ローラン(赤) ペンデュラムスケール8
「私のターン、ドローだぁ!!」
ゲイツ
手札4→5
「私は手札から永続魔法《煉獄の虚無》を発動!そして、このカードをフィールドから墓地へ送ることで、私の手札・フィールドのモンスターを素材にインフェルノイド融合モンスター1体を融合召喚できる!!」
「手札のインフェルノイドってモンスター2体を素材にするつもりか?」
「いんやぁー、相手フィールドにのみ、エクストラデッキから特殊召喚されたモンスターが存在する場合、私のデッキのモンスターを6体まで融合素材にできる!!」
「何!?」
「さぁー、煉獄の悪魔の登場だぁー!ケツの穴をキチンと守らないとねぇー!!《インフェルノイド・ティエラ》ぁ!」
ゲイツのデッキから放出された5枚のインフェルノイドモンスターのカードが黒い炎となって《煉獄の虚無》に吸収される。
そして、そこから黒い火柱が発生し、そこから下半身が蛇でそれ以外が人型で黒い体の悪魔が現れる。
そのモンスターはシンクロ次元でクロウにとどめを刺したモンスターでもある。
インフェルノイド・ティエラ レベル11 攻撃3400
融合素材となったモンスター
・インフェルノイド・デカメロン
・インフェルノイド・ベルゼブル
・インフェルノイド・ベルフェゴル
・インフェルノイド・ヴァエル
・インフェルノイド・リリス
「攻撃力3400!?」
「攻撃力だけで驚くなんて、青臭いガキだなぁ。こいつは融合素材となったインフェルノイドの数によって効果が発動できる。まずは…融合素材が3種類以上の時、それぞれエクストラデッキから3枚カードを墓地へ送る!さあ、墓地へ送るカードを選べぇ!!」
ゲイツはさっそくエクストラデッキに残った2枚の《インフェルノイド・ティエラ》を墓地へ送る。
彼のエクストラデッキに入っているカードは《インフェルノイド・ティエラ》3枚だけのようで、相手のエクストラデッキの中身は0になっている。
翔太は舌打ちしつつ、エクストラデッキのカードを墓地へ送った。
エクストラデッキから墓地へ送られたカード
・魔装鳥獣グリフィン
・魔装騎士HADES
・魔装妖キュウビ
「そしてぇ、5種類以上の時、俺たちはデッキの上から3枚のカードを墓地へ送る!!さあ、さっさと墓地へ送れぇ!」
「今度はデッキか!せめていい落ち方だといいけどな…」
デッキから墓地へ送られたカード
ゲイツ
・遡洸する煉獄
・E-HEROヘル・ゲイナー
・ジャンク・コレクター
翔太
・騎士の逆鱗
・魔装鬼ヨシヒロ
・魔装旋風
「更に、手札からもう1枚《煉獄の虚無》を発動!!これで、私のインフェルノイド達のレベルは1になり、相手に与える戦闘ダメージは半分になる?」
インフェルノイド・ティエラ レベル11→1 攻撃3400
「自分のモンスターのレベルを下げた…?」
「インフェルノイドは私のフィールドの効果モンスターのレベルの合計が8以下でないと特殊召喚できない。私のモミアゲも長すぎちゃあいけないってことさぁ。そしてぇ!!このカードは私のフィールドの効果モンスターのレベルの合計が8以下の時、手札・墓地のインフェルノイド1体を除外することで、手札から特殊召喚できる!墓地の《インフェルノイド・デカメロン》を除外し、《インフェルノイド・シャイターン》を特殊召喚!」
紫色のいびつな構造な装甲で身を包み、右の肩甲骨から紫色の翼を生やした悪魔が《インフェルノイド・デカメロン》のカードを食らい、フィールドに現れる。
インフェルノイド・シャイターン レベル1 守備0
「《シャイターン》の効果発動ぉ!1ターンに1度、相手フィールドにセットされている魔法・罠カードを1枚デッキに戻す!そして、この効果に対して対象となったカードは効果を発動できない…消え去れぇ!!」
《インフェルノイド・シャイターン》の眼から紫色のビームが発射され、それを受けた伏せカードが消滅し、デッキに戻っていく。
「ちっ…!」
「更に、このカードは手札・墓地のインフェルノイド2体を除外することで、手札・墓地から特殊召喚できる。墓地の《インフェルノイド・デカメロン》と《インフェルノイド・ベルゼブル》を除外し、《インフェルノイド・アシュメダイ》を特殊召喚!!」
左手に銅でできた杖を持つ、ハエのような羽根と鎧を着た悪魔がフィールドに現れる。
インフェルノイド・アシュメダイ レベル5→1 攻撃2200
3体のインフェルノイドがフィールドに現れ、翔太を守るように前に立つ《魔装騎士ホワイトライダー》をにらむ。
「フフフフ…レナードが使っていたデッキっていうのはシャクに障るが、中々面白いデッキじゃあないかぁ」
ゲイツはフィールドにいるモンスターを見ながら、彼からデッキを渡されたときのことを思い出す。
どういう意図で、ジェルマン結成時から使い続けていたそのデッキを自分に渡したのかはわからない。
だが、墓地を肥やすことで一気に戦局を変えることができる爆発力を持つそのデッキをすぐにものにすることができた。
「まだまだぁ!このカードも手札・墓地のインフェルノイド2体を除外することで、手札・墓地から特殊召喚できる!《インフェルノイド・アスタロス》2体を除外し、墓地から《インフェルノイド・ヴァエル》を特殊召喚!!」
槍を持った、羽根付の龍人のような黒い鎧を纏った、青い炎がフィールドに現れる。
ペンデュラム召喚を使わず、一気に4体ものモンスターを召喚したインフェルノイドデッキの展開力に翔太は舌を巻く。
インフェルノイド・ヴァエル レベル7→1 攻撃2600
「そして、私は手札から魔法カード《色欲の壺》を発動!ゲームから除外されているモンスター5体をデッキに戻し、デッキからカードを2枚ドローする!」
「除外版の《貪欲な壺》かよ…!?」
除外したばかりの5体のインフェルノイドがデッキに戻り、ゲイツはカードを引く。
「バトルぅ!《インフェルノイド・ティエラ》で《ホワイトライダー》を攻撃!消えろぉぉぉ!!!!」
《インフェルノイド・ティエラ》の口に青い炎が集結していき、弾丸のように発射される。
《魔装騎士ホワイトライダー》が光の矢を発射するが、炎の勢いが上回っているのか、ぶつかると同時に矢は消滅し、炎が騎士を焼き尽くした。
「ぐうう…!」
翔太
ライフ4000→3850
色欲の壺
通常魔法カード
このカード名のカードは1ターンに1度しか使用できない。
(1):ゲームから除外されている自分のモンスター5体をデッキに戻すことで発動できる。自分はデッキからカードを2枚ドローする。
「《インフェルノイド・ヴァエル》で《魔装鳥キンシ》を攻撃ぃーーー!!」
《インフェルノイド・ヴァエル》が槍を数回振り回すと、刀身に黒い炎を宿した状態で投擲する。
《魔装鳥キンシ》は回避するために上空を飛び回るが、その槍には追尾機能があるのか、どこまでも追いかけていく。
最終的には港の上空で槍に貫かれ、その体は海に沈んでいき、消滅した。
「ぐうう…《キンシ》はペンデュラムモンスター…。よって、エクストラデッキに行く」
翔太
ライフ3850→3750
「そしてぇ、《インフェルノド・アシュメダイ》でダイレクトアターーーック!!」
《インフェルノイド・アシュメダイ》が獲物にしている杖を投擲し、翔太の目前の地面に刺さる。
刺さった個所から炎と衝撃波が発生し、炎で体を焼かれた翔太は吹き飛ばされ、壁に衝突する。
「ガアア…グウウ…」
《煉獄の虚無》の効果によって、発生する戦闘ダメージは半分になっているものの、襲ってくるダメージはたいして変化しておらず、服についた火を右手で叩いて消す。
幸い、カードは燃えていないようで、立ち上がった翔太はじっと攻撃してきた3体のインフェルノイドを見る。
翔太
ライフ3750→2650
「翔太君!!」
大きなダメージを受けた翔太をテレビで見た伊織が叫ぶ。
同時に扉が開く音が聞こえ、黒咲と侑斗は身構える。
「何者だ!?」
「目標を発見。柊柚子、及びランサーズとその協力者」
「「彼(あいつ)は…!」」
姿を見せた男に侑斗と黒咲は驚きを見せる。
彼は遊矢と柚子、翔太、月影、零羅が言っていた男、ブーンだった。
セルゲイと共に柚子をさらいに現れたことから、ロジェの部下だと思われたが、シンクロ次元の事件が収束してからは彼の行方が全く分からなくなっていた。
しかし、襟についているバッジから、彼が何者かは分かった。
「ジェルマン…!」
「ご名答だ。アカデミアの敵」
「私はさらに、《インフェルノイド・ティエラ》の効果発動!!こいつが相手モンスターを攻撃したバトルフェイズ終了時、フィールド上のカード1枚を除外できる!!」
「何!?」
「ご自慢のペンデュラム召喚はこれで退場だぁーーー!!」
港から飛んで戻ってくる槍が《魔装剣士ローラン》の胴体を背後から貫く。
剣士は自分がいつ致命傷を負ったのかを気付く暇もなく黒い炎に包まれ、消滅した。
「カードを1枚伏せて、ターンエンド…。おいおい、早く抵抗しないと負けちまうぞー…?」
ゲイツ
手札5→2
ライフ4000
場 インフェルノイド・ティエラ レベル1 攻撃3400
インフェルノイド・シャイターン レベル1 守備0
インフェルノイド・アシュメダイ レベル1 攻撃2200
インフェルノイド・ヴァエル レベル1 攻撃2600
煉獄の虚無(永続魔法)
伏せカード1
翔太
手札1
ライフ2650
場 魔装船ヴィマーナ(青) ペンデュラムスケール3
「くそ…!まさか1ターンで《ホワイトライダー》を抜かれるなんてな…」
《魔装騎士ホワイトライダー》は魔装装備カード以外のカード効果を受けない上に、高い攻撃力を誇っていることから、少なくとも1ターンは持ってくれると思っていた。
しかし、それ以上の純粋な攻撃力を持つ《インフェルノイド・ティエラ》の登場で一変してしまった。
おまけにペンデュラムゾーンの片割れが消滅してしまい、ペンデュラム召喚すらできなくなってしまった。
「俺のターン!」
翔太
手札1→2
「俺は手札から魔法カード《逆境の宝札》を発動。相手フィールドに特殊召喚されたモンスターが存在し、俺のフィールドにモンスターが存在しないとき、デッキからカードを2枚ドローする」
せめてもの望みと、翔太はデッキトップを見る。
《煉獄の虚無》の効果で、こちらが受ける戦闘ダメージが半分になっているとはいえ、その攻撃をいつまで設けるわけにはいかない。
《インフェルノイド・アシュメダイ》の効果が不透明であるとはいえ、少なくとも《インフェルノイド・ヴァエル》は除去しなければ、勝利が難しくなる。
翔太は一気に2枚のカードを引き、それらのカードを確認する。
「よし…!俺はスケール3の《魔装画伯シャラク》をセッティング」
「おいおい…同じスケールのペンデュラムカードをセッティングするってブァッカかぁー??ペンデュラム召喚できないじゃあないのーーー!!」
「《シャラク》のペンデュラム効果発動。このカードを発動したターンのメインフェイズ時、もう片方のペンデュラムゾーンに魔装ペンデュラムモンスターが存在するとき、デッキから魔装ペンデュラムモンスター1体を手札に加える。俺は《魔装槍士ロンギヌス》を手札に加える。そして、手札から魔法カード《魔装の炎剣-レーヴァテイン》を発動。俺のペンデュラムゾーンに存在するカードがどちらも魔装モンスターの場合、デッキからレベル7以下の魔装ペンデュラムモンスター1体を特殊召喚する。ただし、この効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効となり、ターン終了時に破壊される。俺は《魔装騎士ペイルライダー》を特殊召喚!」
魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2500
「さらに、このカードが墓地へ送られたとき、自分フィールドに魔装騎士が存在する場合、デッキからカードを1枚ドローする」
魔装の炎剣-デュランダル
通常魔法カード
このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
(1):自分Pゾーンに存在する2枚のカードがいずれも「魔装」カードの場合、自分のデッキに存在するレベル7以下の「魔装」Pモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターを自分フィールドに特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効化され、ターン終了時に破壊される。
(2):このカードが墓地へ送られたとき、自分フィールドに「魔装騎士」モンスターが存在する場合に発動する。デッキからカードを1枚ドローする。
「更に、このカードは俺のフィールドに魔装騎士が存在するとき、手札から特殊召喚できる。《魔装槍士ロンギヌス》を特殊召喚」
魔装槍士ロンギヌス レベル3 守備0
「そして…俺はレベル7の《魔装騎士ペイルライダー》とスケール3の《魔装船ヴィマーナ》、《魔装画伯シャラク》でオーバーレイ!」
「な…なにぃ!?ペンデュラムゾーンのモンスターを素材にエクシーズ召喚だとぉ!?生意気なぁーー!!」
「秩序の黒を纏いし炎の死神よ、さまよえる魂を焼き、眠りへ導け。ペンデュラムエクシーズチェンジ!現れろ、《魔装騎炎ブリュンヒルデ》!!」
魔装騎炎ブリュンヒルデ ランク7 攻撃2800
「《ブリュンヒルデ》の効果発動!オーバーレイユニットを1つ取り除き、墓地に存在するカードを5枚まで除外する!スピリット・パニッシュ!!」
《魔装騎炎ブリュンヒルデ》の前にゲイツの墓地から出てきた5枚のカードが飛んでいき、黒い炎へと変わる。
その5枚の哀れな羊を美しき死神がオーバーレイユニットの宿った釜で切り裂いた。
除外されたカード
・インフェルノイド・ベルフェゴル
・インフェルノイド・ルキフグス
・インフェルノイド・ネヘモス
・インフェルノイド・リリス
・インフェルノイド・アドラメレク
取り除かれたオーバーレイユニット
・魔装騎士ペイルライダー
「なーーー!?ナナナ、なんとぉ!私の、私のインフェルノイドちゃんたちがぁーーー!?」
《魂の解放》に近い効果によって、墓地に存在することで有用性のあるものを中心にインフェルノイド達が除外され、ゲイツは慌て始める。
墓地に残ったインフェルノイドは《インフェルノイド・シャイターン》と《インフェルノウド・ティエラ》2枚ずつになってしまった。
しかし、女死神の効果はそれだけでは終わらない。
「更に、除外したカード1枚につき、攻撃力が400アップし、相手フィールド上に存在するモンスターの攻撃力を300ダウンさせる!」
魔装騎炎ブリュンヒルデ ランク7 攻撃2800→4800
インフェルノイド・ティエラ レベル1 攻撃3400→1900
インフェルノイド・アシュメダイ レベル1 攻撃2200→700
インフェルノイド・ヴァエル レベル1 攻撃2600→1100
「バトル!《魔装騎炎ブリュンヒルデ》で《インフェルノイド・シャイターン》を攻撃!」
《魔装騎炎ブリュンヒルデ》が魂を刈り取ったばかりの鎌を守備表示の《インフェルノイド・シャイターン》に向けて投げつける。
(《魔装槍士ロンギヌス》は魔装騎士に貫通効果を与える…。《ブリュンヒルデ》はルール上、魔装騎士モンスターとして扱われる以上、その効果を受ける…!)
自身の効果で攻撃力が4800に跳ね上がった《魔装騎炎ブリュンヒルデ》の一撃で、ゲイツのライフを一気に0にすることができる。
「うおおお!?そんなそんな!!タイムタァーイム!!」
「誰が待ったを認めるかよ、この一撃で負けろ!」
「いやいや、こんな廃墟じゃあ私のモミアゲが元気をなくしてしまうのさぁ。だから…《インフェルノイド・シャイターン》《アシュメダイ》、《ヴァエル》の効果発動!!」
攻撃対象となったはずの《インフェルノイド・シャイターン》が2体の仲間共々自分たちの姿を黒い炎そのものに姿を変え、翔太のデュエルディスクに入り込む。
左腕からじかに熱した棒をつけられたかのような熱さに翔太は左腕を抑える。
「お前…何を!?」
「ふぅ…これでモミアゲの手入れができる。こいつらは1ターンに1度、自分フィールドのモンスター1体をリリースすることで、相手の墓地のカード1枚を除外できる!インフェルノイドを墓地に肥やせるうえ、貴様の使えるカードを処分できるってえわけだぁ!!」
「ちっ…くるってる癖にキツい手を…!」
熱が収まるとともに、墓地から3枚のカードが自動的に排出され、それらのカードを翔太はデッキケースにしまう。
墓地から除外されたカード
・魔装騎士ホワイトライダー
・魔装騎士ペイルライダー
・魔装鬼ヨシヒロ
「《魔装鬼ヨシヒロ》は貴様のフィールドの魔装カードが戦闘・効果で私のモンスターを破壊した時、墓地から攻撃表示で特殊召喚できる便利なユニオンモンスター。そんなカードに出番は与えんよぉ!」
「なら、《ブリュンヒルデ》で《インフェルノイド・ティエラ》を攻撃!」
獲物を刈り取れず、宙を舞うままの鎌を《魔装騎炎ブリュンヒルデ》が指を動かしてその軌道を制御し始める。
鎌はグルリとゲイツと翔太の周囲を一回転した後で《インフェルノイド・ティエラ》を背後から横に真っ二つに切り裂いた。
その時に発生した衝撃波がゲイツを襲い、彼の左側のモミアゲが数本切れる。
「ぬおおおお!!」
ゲイツ
ライフ4000→1100
「よし…やっときつい一発をおみまいできたぜ…」
「まったく…よくも私のライフとモミアゲを傷つけてくれたなぁ…?生意気なガキのくせによぉー!!」
ライフ以上に、こだわりのあるモミアゲを傷つけられたことに腹を立て、ゲイツの額に青筋ができる。
「罠発動!《ショック・ドロー》!私が受けた戦闘ダメージ1000につき1枚、デッキからカードをドローする!私が受けたダメージは2900!よって、2枚カードをドローする!」
「俺はこれで、ターンエンド!」
ゲイツ
手札2→4
ライフ1100
場 煉獄の虚無(永続魔法)
翔太
手札2→1
ライフ2650
場 魔装騎炎ブリュンヒルデ(ORU2) ランク7 攻撃4800
魔装槍士ロンギヌス レベル3 守備0
「私のぉ…ターーーーーン!!!」
ゲイツ
手札4→5
「私は手札から速攻魔法《異次元からの埋葬》を発動!ゲームから除外されているモンスターを3体まで墓地に戻すことができる。私は《インフェルノイド・ネヘモス》、《アドラメレク》、《リリス》を墓地へ戻す。そして、このカードは手札・墓地のインフェルノイド3体を除外することで、手札・墓地から特殊召喚できる。《インフェルノイド・シャイターン》3体し、墓地から《インフェルノイド・ネヘモス》を特殊召喚!!」
3体の《インフェルノイド・シャイターン》が墓地から炎となって出て来て、その炎が集結するとともに赤い蛇へと変化していく。
そして、その体に蝙蝠のような紫色の羽がつき、そこを中心に人間の骸骨も鎧のように浮かび上がった。
インフェルノイド・ネヘモス レベル10→1 攻撃3000
「ちっ…!」
「《ネヘモス》の効果発動ぉーー!!このカードの特殊召喚に成功したとき、このカード以外のフィールドのモンスターをすべて破壊する!!」
装着している骸骨の口から黒いビームがショットガンのように拡散しながら発射され、それに貫かれた《魔装騎炎ブリュンヒルデ》と《魔装槍士ロンギヌス》が消滅する。
「《ブリュンヒルデ》の効果発動!このカードが破壊されたとき、俺のペンデュラムゾーンのカードをすべて破壊し、このカードをペンデュラムゾーンに置くことができる!」
消滅したはずの女死神が翔太の隣に出現し、笑みを浮かべると同時に上空を舞い、青い光の柱に包まれる。
魔装騎炎ブリュンヒルデ(青) ペンデュラムスケール3
「そしてぇ、このカードは手札・墓地のインフェルノイド2体を除外することで、手札・墓地から特殊召喚できる。《インフェルノイド・アドラメレク》と《リリス》を除外し、《インフェルノイド・ヴァエル》を復活!!」
インフェルノイド・ヴァエル レベル7→1 攻撃2800
「そしてぇ、このカードは手札・墓地のインフェルノイド1体を除外することで、手札から特殊召喚できる!《インフェルノイド・アスタロス》を特殊召喚!!」
《インフェルノイド・ティエラ》が消滅し、右手の甲の短剣の刃をつけている黒いドラゴンの骸骨のような鎧姿の悪魔が現れる。
インフェルノイド・アスタロス レベル4→1 攻撃1800
駄目押しと言わんばかりに再びフィールドに展開されたインフェルノイドに翔太は舌打ちする。
これらのモンスターの一斉攻撃を凌がなければならないうえ、彼らにはこちらの墓地のカードを除外する効果も持っている。
墓地を利用したくても、しづらい状態だ。
「さぁ…私のモミアゲを汚した報いを受けてもらおうかぁーーーー!!《インフェルノイド・アスタロス》の効果発動!1ターンに1度、このカードの攻撃を放棄する代わりに、フィールドの魔法・罠カード1枚を破壊する!今度こそ消えてもらうぞーー、かわいい死神ちゅぁーーん!」
《魔装騎炎ブリュンヒルデ》にゲイツが投げキッスをすると同時に《インフェルノイド・アスタロス》は腕についている刃を発射する。
その刃に額を貫かれた女死神は消滅する。
「《ブリュンヒルデ》が破壊され、エクストラデッキへ行くとき、裏向きになる」
《魔装騎炎ブリュンヒルデ》は自らを破壊することで、手札・エクストラデッキの魔装騎士1体を特殊召喚できる効果がある。
この効果で現在、特殊召喚できるのは《魔装騎士ブラックライダー》1体のみだ。
しかし、彼女のペンデュラムスケールが3であるため、次に来るカード次第ではペンデュラム召喚で上級モンスターを召喚できる可能性があった。
破壊されたことで、それができなくなったが…。
「さぁー、邪魔者はなくなったぁ!バトル!《インフェルノイド・ネヘモス》でダイレクトアタックぅ!!」
《インフェルノイド・ネヘモス》のどくろの口から黒いビームが発射され、今度は拡散することなく、一直線に飛んでいき、翔太を貫く。
「ぐうううう…!」
翔太
ライフ2650→1150
「グアッハハハハ!!また直撃だぁ!!」
「俺は…手札から罠カード《ペンデュラム・アラート》を発動…。俺が戦闘ダメージを受けたとき、デッキからレベル4以下のペンデュラムモンスター1体を守備表示で特殊召喚できる。その効果で特殊召喚されたモンスターはこのターン、戦闘では破壊されず、ターン終了時に表側表示でエクストラデッキに行く…。俺は《魔装剛毅ヒデヒサ》を特殊召喚」
首に五芒星が描かれた鈴で作られた数珠をかけ、左肩部分に黒墨で『無』と大きく書いた金色の陣羽織姿の男がフィールドに現れる。
格闘家のような筋肉質な肉体で、数多くの傷跡が見えている。
魔装剛毅ヒデヒサ レベル4 守備1500
ペンデュラム・アラート
通常罠カード
このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):自分が戦闘ダメージを受けたダメージステップ終了時に発動できる。デッキからレベル4以下のPモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターを自分フィールドに表側守備表示で特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターはこのターン、戦闘では破壊されず、ターン終了時に表側表示でEXデッキに行く。
(2):このカードは自分フィールドにモンスターが存在しない場合、手札から発動できる。
「そして、《ヒデヒサ》の効果発動!このカードの召喚・特殊召喚に成功したとき、俺のフィールドにほかのカードがない場合、デッキ・墓地から魔装モンスター1体を手札に加えることができる。俺はデッキから《魔装弓士ロビン・フッド》を手札に加える」
「なぁるほどぉ。これで私はとどめを刺せなくなったという訳か…。なら、私は手札から永続魔法《煉獄の消華》を発動。手札1枚を捨て、デッキから煉獄と名の付く魔法・罠カード1枚を手札に加える。私はデッキから《煉獄の死徒》を手札に加える。そして、カードを1枚伏せて、ターンエンド」
ゲイツのターン終了宣言と同時に、《魔装剛毅ヒデヒサ》がフィールドから消えていった。
ゲイツ
手札5→1(伏せカード、手札のいずれか1枚《煉獄の死徒》)
ライフ1100
場 インフェルノイド・ネヘモス レベル1 攻撃3000
インフェルノイド・ヴァエル レベル1 攻撃2800
インフェルノイド・アスタロス レベル1 攻撃1800
煉獄の虚無(永続魔法)
煉獄の消華(永続魔法)
伏せカード1
翔太
手札1(《魔装弓士ロビン・フッド》)
ライフ1150
場 なし
(さぁ…絶体絶命だ…)
手札に加わった《魔装弓士ロビン・フッド》を翔太はじっと見る。
墓地のカードを当てにできなくなった翔太に残されたのは手札のこのカード、そして次のドローするカードの2枚。
そのカードにかけることになる。
「俺の…ターン!!」
翔太
手札1→2
「俺は手札の《魔装弓士ロビン・フッド》の効果を発動。相手フィールドにのみモンスターが存在するとき、手札のこのカードを表側表示でエクストラデッキに置くことで、墓地・エクストラデッキの魔装ペンデュラムモンスター1体を手札に加えることができる。俺はエクストラデッキから《魔装剛毅ヒデヒサ》を手札に加え、そのままペンデュラムゾーンにセッティングする」
「ムハハハハ!!そうだよなぁ!?インフェルノイド達がいる限り、墓地のカードを利用できないよなぁ!?」
「そして、俺はスケール8の《魔装鬼ストリゴイ》をペンデュラムゾーンにセッティング。この瞬間、《魔装剛毅ヒデヒサ》のペンデュラム効果発動。このカードがペンデュラムゾーンに存在し、もう片方のペンデュラムゾーンに魔装ペンデュラムカードが存在するとき、このカードを破壊し、デッキからカードを1枚ドローする!」
「わざわざペンデュラム召喚できる状況を捨てて、これからドローするカードにすべてをかけるつもりかぁ?」
「そういうことだ!」
翔太はカードをドローし、そのカードを見る。
デッキは彼の思いに答えつつあった。
「俺は手札から魔法カード《ペンデュラム・ホルト》を発動!俺のエクストラデッキに表側表示で存在するペンデュラムモンスターが3枚以上の時、デッキからカードを2枚ドローする。そして、このカードの発動後、俺はターン終了時までデッキからカードを手札に加えることができない」
魔装剛毅ヒデヒサ
レベル4 攻撃1800 守備1500 地属性 戦士族
【Pスケール:青2/赤2】
このカード名の(2)のP効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードはもう片方の自分のPゾーンに置かれているPモンスターが「魔装」モンスター以外の場合、墓地へ送られる。
(2):自分メインフェイズにもう片方の自分のPゾーンに「魔装剛毅ヒデヒサ」以外の「魔装」カードが存在する場合に発動できる。このカードを破壊し、自分はデッキから1枚ドローする。
【モンスター効果】
(1):このカードの召喚・特殊召喚に成功したとき、自分フィールドにこのカード以外のカードが存在しない場合、デッキ・墓地に存在する「魔装」モンスター1体を対象に発動できる。そのカードを手札に加える。
「更に俺は手札の《魔装騎士ケントゥリア》をセッティング。同時に《ケントゥリア》のペンデュラム効果発動。このカードを発動したとき、このカードを破壊することで、エクストラデッキに表側表示で存在するペンデュラムモンスター1体をペンデュラムゾーンに置くことができる。俺はスケール1の《魔装鳥キンシ》をセッティング。これで俺はレベル2から7までのモンスターを同時に召喚可能!ペンデュラム召喚!現れろ、《魔装騎士ケントゥリア》、《魔装弓士ロビン・フッド》、《魔装剛毅ヒデヒサ》、《魔装槍士ロンギヌス》!」
魔装騎士ケントゥリア レベル2 攻撃300(チューナー)
魔装剛毅ヒデヒサ レベル4 攻撃1800
魔装弓士ロビン・フッド レベル3 攻撃1000
魔装槍士ロンギヌス レベル3 攻撃800
「そして、俺は手札から魔法カード《異界共鳴-シンクロ・フュージョン》を発動!」
「何!?そのカードは…??」
「お前らの裏切り者が作ったカードのコピーだ。こいつは同じ素材でシンクロ召喚と融合召喚を同時に行うことができる。俺はレベル3の《ロビン・フッド》、《ロンギヌス》にレベル2の《ケントゥリア》をチューニングと同時に融合!現れろ、《魔装騎士レッドライダー》、《魔装雷竜リンドヴルム》!」
魔装騎士レッドライダー レベル8 攻撃3000
魔装雷竜リンドヴルム レベル8 攻撃3000
「《レッドライダー》の効果。俺がモンスターの特殊召喚に成功したターンのバトルフェイズ時、このカードの攻撃力はバトルフェイズ終了時まで1000アップする」
魔装騎士レッドライダー レベル8 攻撃3000→4000
「ちいい…!」
「バトル!《レッドライダー》で《インフェルノイド・ネヘモス》を攻撃!同時に、《魔装鬼ストリゴイ》のペンデュラム効果発動!俺の魔装騎士が攻撃するとき、相手フィールド上のモンスターの攻撃力・守備力をターン終了時まで600ダウンさせる!」
「むうう…私は速攻魔法《煉獄の死徒》を発動!これで、《ネヘモス》はこのターン、相手の効果を受けない!」
《魔装鬼ストリゴイ》の五芒星と眼がギラリと光り、同時に《インフェルノイド・ネヘモス》を除くゲイツのモンスターたちが赤い光に包まれ、攻撃力をダウンさせる。
インフェルノイド・ヴァエル レベル1 攻撃2800→2200
インフェルノイド・アスタロス レベル1 攻撃1800→1200
「私は《煉獄の消華》の効果発動!私のインフェルノイドが相手モンスターと戦闘を行ったダメージ計算後に、フィールドのこのカードを墓地へ送ることで、戦闘を行った互いのモンスターを除外する!」
《煉獄の消華》が黒い炎と化し、巨大な口のような形に変化する。
そして、戦闘を行う2体のモンスターを丸ごと飲み込んでいった。
「だが、戦闘ダメージは受けてもらうぞ!」
ゲイツ
ライフ1100→100
「そして、《魔装雷竜リンドヴルム》で《インフェルノイド・ヴァエル》を攻撃!」
《魔装雷竜リンドヴルム》の口に電気が集まっていき、それが《インフェルノイド・ヴァエル》に向けて発射される。
たとえインフェルノイドの効果を使ったとしても、この攻撃を防ぐ手段がなく、ゲイツは傷ついたモミアゲを撫でる。
「フッ…あんな小僧にモミアゲを傷つけられたのが運の尽き…か。さらば、わが愛しき人生。もみあげよ、せめて風に乗って新しい世界へ飛んでいけ…」
潔く自分の敗北を受け入れ始めたゲイツはデュエルディスクにパスワードを入力する。
雷が《インフェルノイド・ヴァエル》に直撃すると同時に、ゲイツのデュエルディスクが爆発、彼はその光に包まれていった。
ゲイツ
ライフ100→0
「自爆…しただと…?」
ソリッドビジョンが消え、ゲイツがいた場所には何一つ、彼がいた証となるものが残されていなかった。
ブーンは何らかの目的で敗北後はすぐに姿を消したのに、この違いはいったい何なのか。
(いや、それ以上に…)
今の翔太は敵よりも、あの頭痛と同時に見えた記憶のことが気になっていた。
あの光景が正しければ、自分の正体は…。
翔太は頭を乱暴に振り回しその考えを消すと、凌牙の元へ向かう。
「おい、生きてるか?」
「…ああ。さっきの爆発音は…何だ?」
「あいつがやった。負けたと同時にな…」
「ちっ、そうか…。自分の口を封じやがったか…」
翔太の手を借り起き上がる凌牙はゲイツがいた場所をにらむ。
火薬のにおいがするため、彼が自爆して果てたという翔太の言葉が真実だと理解できる。
「…!こうしちゃいられねえ!急いで地下室へ戻るぞ?」
「はぁ?いきなりどうした?」
「急げ!あのレナードがあの野郎1人だけをよこすとは思えねえ!!」
焦りに満ちた表情を浮かべ、凌牙は痛みに耐えながら地下室へ向かう。
(ったく、いったい何が何なんだよ…?)
状況を飲み込めない翔太は凌牙の後を追う。
心の中にできた大きな暗い影を振り払おうと、いつもよりも足に力が入り、動きも速くなっていた。