「これだよ…。融合次元本部への入り口…」
シェルターの中にあるドアが開き、その中に隠されていた大型の球体型装置に遊矢たちは息をのむ。
3メートル以上の大きさのその装置を秘密裏にここに用意していたのだろう。
「起動は任せて」
グロリアは装置とデュエルディスクを接続し、操作を開始する。
その中で、アレンは暗い表情を浮かべながらその装置を見つめていた。
「アレン…」
「…なんでだろうな。もっと早く気づくことができたら…」
あくまで仮定の話で、そんなことをしても今は意味がない。
それに、もし気づくことができたとしても、アレンは話すことができなかった可能性が高い。
カイトは家族や仲間たちの無念を晴らすためにあのやり方に賭けていて、それが心の支えとなっていた。
きっと、それが無意味だと分かってしまったら、彼はよりどころを失っていた。
「…カイトはカイトで、この次元を守るために戦っていた。…それでいいんじゃないか?」
「遊矢…」
「カイトの思いを、俺たちで引き継ごう。俺たちなりのやり方で」
そのやり方は、もしかしたらカイトたちにとっては望まれたものではないかもしれない。
それを彼らが望むかどうかは、もう聞くことはできない。
押しつけの善意、言い訳かもしれないが、それでも遊矢は受け継ぎたかった。
カイトの思いを無駄にしたくなかった。
それはきっと、自分の中のユートも同じだ。
「準備、できたわ。これでここから中へ入ることができる」
球体の中央部分にあるパーツが回転をはじめ、そこから青いエネルギーの光が漏れる。
「これから遊矢、柚子、権現坂、あなたたちを本部へ転送するわ。けど、もしかしたらその本部の中で離れ離れになってしまう可能性が高いわ。到着したら、まずは固まることを考えて」
「待て!俺も…」
「黒咲、負傷したあなたは治療を受けないと…!歩くだけでもやっとなのに!!」
「しかし…」
「黒咲。アカデミアとの戦いがこれで終わるわけではない。エクシーズ次元の戦いが終われば、次は…」
シンクロ次元、エクシーズ次元の戦いの次は、おそらくは融合次元での戦い。
アカデミアとの直接対決の時が来る。
「きっと、アカデミアでの戦いが瑠璃を救出する唯一のチャンスだ。彼女を助けるためにも、今は大事を取ってくれ」
「遊矢…」
「本部に入った後で、やってほしいことは逐一通信で伝えるわ。うまくいけば、外で戦っているレジスタンスやランサーズを一気に本部に送り込んで、戦局を打開できるかもしれない」
本部の中には、デュエル戦士たちを転送・転入するための装置がある。
それを奪うことができれば、グロリアの言っていることが現実のものとなる。
今ある装置では少人数の転送・転入しか行えず、一度操作すると長いインターバルが発生する。
ステルス性は評価できるが、大人数の移動には不向きだ。
だから、ここへランサーズやレジスタンスを呼んで送るといったことは行えない。
「待ってくれ、通信を送るって、グロリアは本部に入らないってことか?それで、どうやって俺たちや中の状況をつかむんだ?」
「これを使うわ。本部から調達したものよ」
車輪のついた2本足で、ビデオカメラのような形の胴体に3連ターレット状のメインカメラが正面についた頭部パーツの小型機械を遊矢に手渡す。
「この機械は…?」
「融合次元で試作中のナビゲーター機よ。名前はついてないけど、私はナビって呼んでる」
「それって…大丈夫なの?」
試作品ということは、信頼性はまだまだ確立されていない。
そして、アカデミアで調達したものだとしたら、アカデミア側に逆にこちら側のうごきが筒抜けになってしまう可能性だってある。
「心配ないわ。そういった仕掛けは全部取り外してる。これは登録したデュエルディスクを装備しているデュエリストに追従するようにプログラムされてる。それに、通信についても一定の条件があるけど、別次元とつなげることができる。まずは、それを遊矢のデュエルディスクに登録して。電源をつけて、あなたのデュエルディスクを見せるだけでいい」
「ええっと、電源は…」
電源の位置はスクリーンの左横にあり、そこにあるスイッチを押すとナビが起動する。
グロリアの言う通りに、遊矢は自身のデュエルディスクをナビのカメラに近づける。
「デュエリストID:53624SY…認証完了」
「ナビは認証したデュエルディスクから操作することも可能よ。それで偵察することもできる。ナビが手に入れた映像を私のデュエルディスクが拾って、それを元に指示を出す。残念だけど、入手できたナビは1機だけだけど…」
「充分だよ、ありがとうグロリア」
「別に…礼を言われるほどのことじゃないわ…」
ずっと、デュエル戦士としての生き方をし続けてきたグロリアは誰かに感謝されることがなかった。
そのため、遊矢から面と向かって感謝されるとは思いもよらず、少し顔を赤く染めてそっぽを向いた。
起動したばかりのナビを抱えた遊矢は柚子、権現坂と一か所に固まった状態で転送を待つ。
気休め程度だが、少しでもバラバラに転送されてしまうのを避けるためだ。
「サヤカ、アレン。黒咲を頼む」
「私たちが彼をスペード校まで連れて帰るわ。安心して行って来て」
「…」
「アレン…」
罪悪感からか、アレンは転送されようとする遊矢達にかける言葉を見つけることができない。
そもそも、自分にその資格があるかという疑問を抱いてしまう。
「アレン。黒咲のこと、頼むな」
「遊矢…」
「あいつ、一人にすると勝手に突っ走っちゃうからさ」
そう言い残し、遊矢達は本部へ転送されていく。
さすがの黒咲もその遊矢のいいようが我慢ならず、文句を言おうとしたが、消えてしまったことで傷が響いたこともあり、言いそびれてしまった。
「遊矢…」
どうして、自分を信用してくれたのか?
一度はカイトと共に仲間のレジスタンスをカードに変えていったのに。
その疑問に答えたのは、サヤカだった。
「エクシーズ次元を救いたいって気持ち、仲間を守りたいって気持ちが同じだってわかったから…じゃない?」
「サヤカ…」
(それにしても、あの機械…なぜ彼は私にそれを遊矢に渡せと…?)
「どけよ!」
《魔装騎士ペイルライダー》と《魔装騎士ブラックライダー》の同時攻撃で2人のデュエル戦士が吹き飛ばされる。
ハートランドに入ってから、デュエル戦士たちの抵抗が激しくなっていく。
同時に、翔太の左手の痣にも変化が生じている。
「うずくかぁ…そりゃあそうだろうな。もうすぐ、目的地に差し掛かるんだからなぁ」
「…うるせえ」
「おっと、俺様にその言い方はねえんじゃないかぁ?この力をくれてやったのによぉ」
脳裏に響く声を無視し、翔太はハートランドのジェットコースター付近に差し掛かる。
痣からは光が漏れており、痛みで左手がプルプル震えている。
ここに何かがあることを察した翔太は左手の痣をかざすと、痣の光が上空へと向かい、上空には緑色の裂け目が現れる。
その裂け目はハートランドを横断できるほどの大きさだった。
「ぐ…ううう、あああ!!!」
「そうだ…そうだ!!もっと力を使え!!そうすれば…そうすれば…!」
おそらく、この力をこれ以上解放するとろくでもないことが起こる。
きっと、それはこの声の主が望んでいることだろう。
だが、エクシーズ次元を解放し、伊織を救い出すには、これしか手段が見つからない。
「あああああ!!!!」
痣が左手にとどまらず、腕へ、胴体へ、そして翔太の顔の左半分へと侵食していく。
その時、彼の左目は痣と同じ光を発していた。
「…!?なんだ、この感覚は!?」
突然、何かに貫かれるような頭痛を感じた凌牙は空を見上げる。
レジスタンスもデュエル戦士たちも、空に発生した異変に驚き、手を休めて空を仰ぐ。
「この力…俺と同じものを!?」
凌牙の中にあるバリアンの力がその発生源がハートランドのジェットコースター付近にあることを突き止める。
そして、その力は明らかに自分や侑斗にとって、忌むべき存在のものだということも感じていた。
「…悪い!!これ以上、あいつを野放しにはできない!」
凌牙はジェットコースターへ向けて走っていく。
上空の裂け目にはもう1つのハートランドシティの光景が浮かび上がっていた。
「ここが…エクシーズ次元のアカデミアの基地…」
転送され、目を開いた遊矢の視界に広がるのは舞網チャンピオンシップで黒咲と素良がデュエルしたアクションフィールド、《未来都市ハートランド》そのものの光景だった。
真昼間のような太陽の光に照らされていて、平和な街そのものに見えるが、そこには住民の姿は見当たらない。
いるのはデュエル戦士たちだけだった。
「権現坂と柚子は…?」
「遊矢!!」
2人を探そうと周囲を見渡そうとしたとき、背後から柚子の声と彼女が走ってくる音が聞こえてくる。
振り返ると、やはり柚子の姿があった。
「柚子!権現坂は…?」
「わからない…でも、遊矢とあたしが近くにいたなら、きっと権現坂も近くにいるはずよ!」
「だな…うわっ!?」
急に強い緑色の光が空から降り注ぎ、反射的に2人は目を腕で隠す。
ゆっくりと腕をどかし、空を見上げると、上空には緑色の裂け目が生まれていて、その裂け目には本来のハートランドの光景が広がっていた。
「何…!?もしかして、この裂け目って…」
「…える?聞こえる!?遊矢!!」
「グロリア!」
ナビからグロリアの声が聞こえ、急いで遊矢と柚子は路地裏に隠れる。
ナビの液晶画面部分にはグロリアの姿が映っていた。
「良かった…。そっちはどう?」
「ああ、柚子と合流した。これから権現坂と合流するつもりだけど…空に変な裂け目ができたんだ。何か知らないか?」
「裂け目…実は、こちらの空にも緑色の光の裂け目ができたわ…?もしかして、そっちも同じ?」
「あ、ああ!どうして、そんなものが…??」
「それに、裂け目には本部の景色が見えるわ…まさかとは思うけど、そちらから見えるのはハートランド?」
「そうだ…。でも、どうしたらこんなのが…!?」
「分からない…。でも、もしかしたら本部ではこの光景ができたことで動きに乱れができたかもしれない。その隙に乗じて、まずは権現坂と合流して」
「分かった。グロリア、気を付けてくれ」
通信を切ると、デュエルディスクで本部のどこかにいると思われる権現坂と通信を繋げる。
「こちら、権現坂だ。遊矢か?」
「ああ…。どこにいる?これから柚子と合流…」
「いや、来るな!!今、俺のところへは…うわあああ!!」
「権現坂!?おい、どうした!?権現坂!?」
「く…貴様は…」
「やぁ、榊遊勝の息子、榊遊矢」
急に別の日との声が聞こえてくるが、別のデュエルディスクからの割り込みはない。
権現坂のデュエルディスクとつながったままで、別の誰かが彼のデュエルディスクで此方に連絡を取っている。
「君の仲間は僕が預かる。これから指定する座標へ1時間以内に来い」
遊矢のデュエルディスクに新しく本部の地図のデータがダウンロードされ、その中で、学校の体育館が強調される。
今いる場所はハートランドの内部で、そこから徒歩で行くのは厳しい。
「彼に手出しされたくなければ、早く来い。お前を倒して、榊遊勝をおびき出す」
「おい、なんで父さんのことを知っている!?お前は何者だ!?」
「…エド・フェニックス。エクシーズ次元方面軍総司令だ」
その言葉を最後に通信が切れ、遊矢は右拳を壁にたたきつける。
「権現坂が…どうするの?遊矢」
丁寧に場所を指定されている以上、罠を仕掛けられている可能性が高い。
今、ここで動けるのは遊矢と柚子の2人だけ。
何の手立てもなしに向かったら2人とも捕まってしまう。
「…行くしかない。権現坂を助けるためにも、それに…父さんのことを知っているかもしれないから…」
「遊矢…」
遊矢はマシンレッドクラウンを出し、ヘルメットを装着する。
柚子に予備のヘルメットをわたし、急いで乗って義手と神経接続を行う。
ブルッと左手から脳に何かが入ってくる感覚がし、画面に接続完了と表示される。
サイドカーがないため、やむなく柚子は遊矢の後ろに乗り、離れないように後ろから抱き着く。
「指定された場所まで飛ばすぞ!」
「遊矢…無茶をしないで!!」
一気にアクセルを踏み込み、猛スピードでハートランドを駆け抜けていく。
走る中で、遊矢はまた別の嫌な予感をしていた。
(あの裂け目…どうして生まれたんだ?何か、恐ろしいことが起こるんじゃ…)
凌牙はハートランドのジェットコースターに到着し、そこで背中を向けている翔太を見つける。
「翔太!!」
今の翔太は普通の人間とは思えない姿に変わっていた。
紫色の水晶が足を除く左半身全体に生えてきていて、その水晶はあまりにも見慣れたものだ。
「こいつは…バリアライト!」
「…フフフフ。まだまだ力が完全に戻ったわけじゃあねえが、この体をコントロールするには十分だ」
「てめえは…」
明らかにそれは翔太の声ではない。
振り返る彼の左目は赤く光っていて、ゆがんだ笑いを浮かべていて、翔太が見せるようなものではない。
「くそ…こんな予想、外れたほうが良かったぜ…ベクター!!」
「久しぶりだな、神代凌牙…いや、ナッシュ!!」
「…キュイーーーー!!!キュキュ!!キュキューーー!!」
「何!?どうしたの、ビャッコちゃん!」
急にプルプル震えあがったと思ったら、飛び跳ね始めたビャッコに伊織は困惑する。
デュエルディスクとデッキを取り戻し、ようやく外に出たと思ったら、空にはわけのわからない裂け目が見え、そこにはエクシーズ次元のハートランドシティの姿が見える。
その裂け目を見た瞬間、ビャッコの動きがおかしくなった。
「ビャッコさん…あの裂け目が気になっているのでしょうか?」
「キュキュ!!キュキュイ!キュイーーー!!」
「ね、ねえビャッコちゃん!どこへ行くの!?待ちなさい!!」
急にビャッコが走り出し、伊織とセラフィムは急いで彼を追いかける。
ビャッコのらしくない動きに伊織は大きな不安を感じていた。
(一体、何が起ころうとしているの…?翔太君…)
「ハハハ…ようやく、こいつの体を、俺の手で使うことができる!!あとは力を取り戻すだけだ!」
左掌を開けたり閉じたりし、入っているデッキを確認する。
中身を見た後で、翔太、いやベクターは凌牙に目を向ける。
「ベクター!まさか、体をドン・サウザンドに砕かれたのに、生きていたとはな…」
「ああ…。完全に砕ける寸前に、魂と体から引き離したのさ。おかげで、力をすべて失っちまったがな…」
「魂だけを…なら、この肉体はどうした!?」
「ああ…こいつはドン・サウザンドが残したスペアだ」
「スペアだと…?」
「ああ。ドン・サウザンドはヌメロン・コードに飽き足らず、より力を得ることをもくろんでいたのさ。だが、得た力に体が耐えられなくなる可能性だってある。だから、その時のために肉体を用意して、封印していたのさ」
遺跡での戦いで遊馬に敗れ、傷ついたベクターはバリアン世界でドン・サウザンドと一体化となることで生き延びた。
その際に、その肉体について知っていた。
魂だけになったベクターは遊馬と凌牙、そしてドン・サウザンドに復讐するために、この肉体を手に入れた。
「なら…なぜ、お前はスタンダード次元にいた!?そもそも…秋山翔太は何者だ!?」
「おっと、質問タイムはここまでだ…。まだまだ力は戻ってねーが、てめえに復讐する分は十分だ。ナッシュ!!」
右手をかざすとともに、ベクターと凌牙の周囲を紫色のカードで構築された空間で包まれていく。
「バリアンズスフィア…」
「今の俺の力なら、この程度のフィールドを作るのはわけねえぜ…さあ、俺様の新しい誕生祝いをしてくれよ、ナッシュぅ!!」
「ちっ…遊矢たちには、あとで詫びを入れるしかねえか」
まだ力が完全になっていないとはいえ、今のベクターはドン・サウザンドのスペアの肉体を手に入れているうえ、何をしてくるか分からない。
今止めなければ、収拾がつかなくなる可能性が高いのを考えると、ここでベクターを倒すしかない。
アカデミアとレジスタンス・ランサーズ連合軍の戦局は気になるが、今はそれに気を取られている場合ではない。
「やるしかねえ…うおおおおお!!!」
凌牙の体が紫の光に包まれていく。
その姿はもう2度となることはないと思っていたバリアン七皇にして、バリアン最後の1人、ナッシュのもの。
ベクターを滅ぼすため、再びその姿に戻った。
「「デュエル!!」」
ベクター
手札5
ライフ4000
凌牙
手札5
ライフ4000
「先攻は俺がもらうぜ…。俺様は《魔装獣ユニコーン》を召喚!」
魔装獣ユニコーン レベル4 攻撃1600
「魔装デッキ…翔太のものを!?」
「まだ俺のデッキは完成してねーからな…てめえ相手なら、この依代のデッキで十分だ!更に俺は、手札からスケール5の《魔装獣スフィンクス》をセッティング!」
伝承の通り、ライオンの体と人の顔をした怪物、スフィンクスが額に五芒星を刻まれた状態で浮かび上がり、光の柱を生み出す。
「《スフィンクス》の効果発動!1ターンに1度、デッキの上から3枚までカードを墓地へ送ることで、このカードのペンデュラムスケールをその数だけ変動させることができる!俺が墓地へ落とすカードは3枚!よって、こいつのペンデュラムスケールは2まで落ちる!」
魔装獣スフィンクス(青) ペンデュラムスケール5→2
デッキから墓地へ送られたカード
・魔装鬼ヨシヒロ
・蘇生融合
・魔装鳥ガルーダ
「そして、《魔装獣ユニコーン》を墓地へ送り、手札から魔法カード《リリース・リース》を発動。俺のフィールドのモンスターが1体のみの時、そのモンスター1体をリリースし、デッキからリリースしたモンスターのレベル以下のモンスター1体を手札に加える。俺はデッキから《魔装剣士ムネシゲ》を手札に加える。そして、手札に加えた《ムネシゲ》をペンデュラムゾーンにセッティング!」
「1ターン目からペンデュラム召喚の準備を整えたか…!」
「さっそくだ…俺様初のペンデュラム召喚を見せてやるぜ!!現れろ!!《魔装騎士ペイルライダー》!!」
魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2500
「《ペイルライダー》…翔太のエースカード…!」
「翔太の…?馬鹿言ってんじゃあねえよ!これはお・れ・さ・ま・の四騎士の1人だよぉ!イレギュラーのくせに、勝手に使いやがって…」
「四騎士…?まさか、奴が残したのはスペアの肉体だけじゃあねえってことか?」
ドン・サウザンドはベクターを利用して、ほかの七皇の力を奪い、ヌメロン・コードをも手に入れて人間世界をバリアン世界と一体化させようとしていた。
気になったのは、ドン・サウザンドが仮に自分たちを打倒し、人間世界を飲み込んだ後の動向だ。
彼が人間世界だけに飽き足らず、ほかの世界をも飲み込もうとしていた可能性もある。
それを彼自ら行うのは考えにくい。
また、仮に自分以外の七皇の記憶がよみがえり、力が不完全な状態で反旗を翻された場合も彼が考えていたとしてもおかしくない。
「ご名答!今じゃあ魔装騎士、なんて名前に変わっちまったが、こいつらは裏切り者になる可能性のある俺らをつぶすために用意していた駒だ!!だが、今はそんなことは関係ねえ。正真正銘、俺様のものになる予定だからなぁ!俺は手札から魔法カード《魔装の杯-ナルタモンガ》を発動!俺のフィールドの魔装モンスター1体のレベルかランクの数値以下のレベルの魔装モンスター1体をデッキから守備表示で特殊召喚する。俺はデッキから《魔装剛毅アトレウス》を特殊召喚!」
水色の瞳で、白い肌をした十代前半くらいの少年が、五芒星が刻まれた木製の弓と狼の毛皮でできた服を装備して現れる。
魔装剛毅アトレウス レベル3 攻撃1000(チューナー)
「《アトレウス》の効果!このカードの召喚・特殊召喚に成功したとき、俺様のペンデュラムゾーンに魔装カード2枚が存在するとき、デッキからカードを1枚ドローする。そして、ドローしたカードがペンデュラムモンスターの場合、そのカードを相手に公開し、さらにデッキからカードを1枚ドローする。ドロー!俺様がドローしたカードは《魔装郷士リョウマ》!よって、さらにもう1枚ドローだ!そして、カードを1枚伏せて、ターンエンド!《スフィンクス》の効果は消える!」
ベクター
手札5→1(《魔装郷士リョウマ》)
ライフ4000
場 魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2500
魔装剛毅アトレウス レベル3 攻撃1000(チューナー)
伏せカード1
魔装獣スフィンクス(青) ペンデュラムスケール2→5
魔装剣士ムネシゲ(赤) ペンデュラムスケール9
凌牙
手札5
ライフ4000
場 なし
「ベクター!何度来ようと同じだ!俺のターン、ドロー!」
凌牙
手札5→6
「俺がドローしたカードは《RUM-七皇の剣》!このカードは自分のドローフェイズ時に通常のドローをしたこのカードを相手に公開し続けることで、そのターンのメインフェイズ1開始時に発動できる!」
「げぇ!?バリアンズカオスドローもなしに引き当てたのかよ…!?」
「もうこの効果は知っているな!?エクストラデッキからオーバーハンドレッドナンバーズを特殊召喚し、カオス化する!俺は《S・H・Ark Knight》を特殊召喚!」
上空にバリアンの紋章が出現し、それがオーバーレイネットワークへと変化する。
そして、凌牙の目の前に地割れが発生し、その中から《No.101S・H・Ark Knight》が浮上する。
No.101S・H・Ark Knight ランク4 攻撃2100
「そして、《Ark Knight》をカオス化する!現れろ、CNo.101!満たされぬ魂の守護者よ!暗黒の騎士となって導け!《S・H・Dark Knight》!」
上空のオーバーレイネットワークへ飛び込んだ《No.101S・H・Ark Knight》が砕け散り、その中から《CNo.101S・H・Dark Knight》が現れ、オーバーレイネットワークから凌牙のフィールドへ帰還する。
CNo.101S・H・Dark Knight ランク5 攻撃2800
「《Dark Knight》の効果!1ターンに1度、相手フィールドの特殊召喚されたモンスター1体をこのカードのオーバーレイユニットにする!俺は《魔装騎士ペイルライダー》を選択する!ダークソウル・ローバー!!」
《CNo.101S・H・Dark Knight》が槍から紫のエネルギー波を発射し、それを受けた《魔装騎士ペイルライダー》がカオスオーバーレイユニットへと変化し、そのモンスターの前に移動する。
「ちぃ…!」
「まだだ!!俺は手札から魔法カード《おろかな埋葬》を発動。デッキから《フィッシュボーグ-アーチャー》を墓地へ送る。そして、《フィッシュボーグ-アーチャー》は手札の水属性モンスター1体を墓地へ送ることで、墓地から特殊召喚できる!」
カワウソが入った水槽とアシカが入った水槽の2つが上下にくっついていて、ケンタウロスのような四本脚と2つの小型ハープーンガンを両腕に装着した機械が現れる。
フィッシュボーグ-アーチャー レベル3 攻撃300(チューナー)
手札から墓地へ送られたカード
・潜水するビッグ・ジョーズ
「チューナーモンスター…剣崎侑斗と同じように、シンクロ召喚も使えるようになったってか?」
「そうだ。いつまでも昔の俺と同じだと思うな!」
ヌメロン・コードをめぐる戦いを終えた凌牙はほかの生き残ったバリアンの住民がアストラル世界の住民となり、アストラルと同じ体へと変化し、七皇たちが人間として生き返る中、凌牙はただ1人のバリアンとなった。
生き残ってはいたものの、ヌメロン・コードの影響を受ける前にベクターに力を奪われた璃緒と異なり、凌牙は七皇の力を持っていて、おまけにリーダー格だったことが大きかったのかもしれない。
だが、人間だろうとバリアンだろうと、自分の生き方は変わらない。
高等部卒業後は世界各地へ武者修行し、デュエリストとしての技量を磨き続けた。
シンクロ召喚を習得し、デッキ改造とテストプレイも数えきれないくらい行ってきた。
「そして、俺は手札から《ハーミッド・サーディン》を召喚!」
鰯を模したモンスターが現れるが、背後に出現した自分よりも大きな黒い霧が出現すると、急いでその中へ隠れてしまった。
ハーミッド・サーディン レベル2 攻撃400
「そして、墓地の《潜水するビッグ・ジョーズ》の効果。こいつは俺が通常魔法カードを発動したターンのメインフェイズ1に墓地から特殊召喚できる!」
《ビッグ・ジョーズ》と比較すると、若干体に傷跡があり、肌の色が浅黒くなった鮫がフィールドに現れる。
潜水するビッグ・ジョーズ レベル3 攻撃1800
「いくぞ!レベル2の《ハーミッド・サーディン》とレベル3の《潜水するビッグ・ジョーズ》にレベル3の《フィッシュボーグ-アーチャー》をチューニング!深淵に眠る大いなる勇魚。生と死を廻る大海原に目覚めろ!シンクロ召喚!現れろ!!《白闘気白鯨》!!!」
白闘気白鯨 レベル8 攻撃2800
「そして、墓地へ送られた《ハーミッド・サーディン》の効果発動!このカードがフィールドから墓地へ送られたとき、デッキから《ハーミッド・サーディン》1枚を手札に加えることができる。そして、シンクロ素材またはオーバーレイユニットとして墓地へ送られた《潜水するビッグ・ジョーズ》は墓地へ送られるとき、代わりにゲームから除外する」
潜水するビッグ・ジョーズ
レベル3 攻撃1800 守備300 効果 水属性 魚族
このカードは通常召喚できない。
このカードの(1)の方法による特殊召喚は1ターンに1度しか行えない。
(1):自分は通常魔法カードを発動したターンのメインフェイズ1にこのカードが墓地に存在する場合に発動できる。このカードを墓地から特殊召喚する。この効果で特殊召喚したターン、自分は水属性以外のモンスターの特殊召喚を行えない。
(2):このカードはX素材として墓地へ送られたとき、またはS召喚またはリンク召喚の素材として墓地へ送られた場合、ゲームから除外される。
ハーミッド・サーディン
レベル2 攻撃400 守備1500 効果 水属性 魚族
このカード名の(1)(2)の効果は1ターンに1度、いずれか1つしか使用できない。
(1):このカードがフィールドから墓地へ送られた場合に発動できる。デッキから「ハーミッド・サーディン」1枚を手札に加える。
(2):このカードがX素材として墓地へ送られた場合に発動できる。デッキから「ハーミッド・サーディン」1枚を手札に加える。
「そして、シンクロ召喚した《白闘気白鯨》の効果発動!このカードのシンクロ召喚に成功したとき、相手フィールドに存在する攻撃表示モンスターをすべて破壊できる!」
《白闘気白鯨》が咆哮するとともに、白い水の大波が発生し、それに《魔装剛毅アトレウス》が飲み込まれようとする。
「ちっ…《ムネシゲ》のペンデュラム効果!1ターンに1度、俺様のフィールドのペンデュラムモンスターを破壊から守る!」
《魔装剛毅アトレウス》が透明なバリアに包まれ、大波から脱出する。
だが、立て続けに召喚された凌牙のエースモンスター2体を前に、攻撃力1000の《魔装剛毅アトレウス》に持ちこたえるだけの力はない。
「ぐぬぬぬ…ナッシュ、てめえ!!」
「このまま2体でとどめをさしてえところだが、貴様のことだ。罠を張っていて当然だよな」
何度かベクターとデュエルをしてきた凌牙はベクターの手口を理解している。
一言でいえば、持ち上げて落とすを地で行っていて、前のデュエルではダイレクトアタックで大きな先制攻撃に成功したと思ったら、そこから一気にほかの七皇から奪ったオーバーハンドレッドナンバーズ展開につなげ、一時は窮地に陥った。
だから、その伏せてあるカードを見逃すつもりはなかった。
「俺は手札から魔法カード《サイクロン》を発動!お前の伏せカードを破壊する!」
発動した《サイクロン》がベクターの唯一の伏せカードを吹き飛ばし、消滅させる。
「これで、てめえを守るカードは《アトレウス》以外にはねえ。残った手札は《魔装郷士リョウマ》ってことは分かってる。覚悟は…できてるよなぁ?」
もう命乞いしたとしても、聞く気はない。
彼を生かしたところで、得をする人はだれ一人いない。
それは彼自身が招いた結果だ。
1ターンキル成立の状況に追い込まれたベクターは顔を下に向けており、凌牙にはそれを見ることができない。
「バトルだ!俺は…」
「…くく、プーッククク!!甘い、甘えんだよぉ!!チャンスをくれて、ありがとさーーん!!」
急に大笑いし始めたベクターに凌牙は自分の失策を悟った。
「てめえが破壊してくれた伏せカード《波紋同調》の効果発動!こいつがカード効果で破壊されたとき、俺のフィールドのペンデュラムチューナー1体とペンデュラムゾーンのペンデュラムモンスター1体を素材にシンクロ召喚を行うことができる!俺はペンデュラムゾーンのレベル5の《魔装獣スフィンクス》にレベル3の《魔装剛毅アトレウス》をチューニング!」
「やはり…シンクロ召喚を…!」
「てめえが進化したように、俺様も進化したんだよぉ!現れな!《魔装雷竜リンドヴルム》!」
魔装雷竜リンドヴルム レベル8 攻撃3000
魔装獣スフィンクス
レベル5 攻撃2300 守備1900 地属性 獣族
【Pスケール:青5/赤5】
このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードはもう片方の自分のPゾーンに置かれているPモンスターが「魔装」モンスター以外の場合、墓地へ送られる。
(2):自分のデッキの上から3枚までカードを墓地へ送り、以下の効果から1つを選択して発動できる。
●ターン終了時まで、このカードのPスケールをその効果で墓地へ送ったカードの数だけ減らす。
●ターン終了時まで、このカードのPスケールをその効果で墓地へ送ったカードの数だけ増やす。
【モンスター効果】
このカード名のカードのモンスター効果は1ターンに1度しか発動できない。
(1):「魔装」モンスターをリリースして、このカードのアドバンス召喚に成功したとき、自分の墓地・EXデッキに表側表示で存在する「魔装」モンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターを自分フィールドに特殊召喚する。
魔装剛毅アトレウス
レベル3 攻撃1000 守備1200 水属性 戦士族
【Pスケール:青2/赤2】
(1):このカードはもう片方の自分のPゾーンに置かれているPモンスターが「魔装」モンスター以外の場合、墓地へ送られる。
(2):1ターンに1度、自分フィールドに存在する「魔装」モンスターが戦闘を行うときに発動できる。そのモンスターの攻撃力はターン終了時まで800アップする。
【チューナー:モンスター効果】
このカード名のモンスター効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードの召喚・特殊召喚に成功したとき、自分Pゾーンに「魔装」カードが2枚存在する場合にのみ発動できる。自分はデッキからカードを1枚ドローし、そのカードを公開する。そのカードがPモンスターの場合、更にデッキからカードを1枚ドローする。この効果を発動したターン、自分はP召喚以外の方法でモンスターを特殊召喚できない。
波紋同調
通常罠カード
このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):自分フィールドにモンスターが存在せず、相手フィールドにモンスターが存在するときに発動できる。自分のEXデッキに表側表示で存在するPモンスターであり、チューナーであるモンスター1体とチューナー以外のPモンスター1体を特殊召喚する。その後、その効果で特殊召喚したモンスター2体を素材にS召喚を行う。この効果を発動したターン、自分はEXデッキからモンスターを特殊召喚できない。
(2):魔法&罠ゾーンにセットされているこのカードが効果によって破壊され墓地へ送られたターンのバトルフェイズ開始時に発動できる。自分モンスターゾーンに存在するPモンスターであり、チューナーであるモンスター1体と自分Pゾーンに存在するチューナー以外のPモンスターを素材にS召喚を行う。
「バトルフェイズ開始時にシンクロ召喚…それに、攻撃力3000だと…!」
「《白闘気白鯨》も《S・H・Dark Knight》も攻撃力は2800。これじゃあ、《リンドヴルム》を倒すことはできねえなぁ。はい、残念ーー!」
《魔装剛毅アトレウス》はペンデュラムチューナーで、ペンデュラム召喚の準備が整えば、《魔装獣スフィンクス》共々ペンデュラム召喚をすることができる。
今の凌牙にはそのモンスターを倒す力はない。
「俺は…カードを1枚伏せ、ターンエンド!」
ベクター
手札1(《魔装郷士リョウマ》)
ライフ4000
場 魔装雷竜リンドヴルム レベル8 攻撃3000
魔装剣士ムネシゲ(赤) ペンデュラムスケール9
凌牙
手札6→2(うち1枚《ハーミッド・サーディン》)
ライフ4000
場 CNo.101S・H・Dark Knight(ORU2) ランク5 攻撃2800
白闘気白鯨 レベル8 攻撃2800
伏せカード1
「俺様のターン、ドロー!」
ベクター
手札1→2
「そして、墓地の《魔装の杯-ナルダモンガ》の効果。こいつを発動したとき、墓地に魔装モンスターが3種類以上存在した場合、ここで俺はもう1枚デッキからカードをドローする。そして、手札からスケール1の《魔装魔戦士ペルセウス》をセッティング!これで俺はレベル2から8までのモンスターを同時に召喚可能!ペンデュラム召喚!エクストラデッキから《魔装剛毅アトレウス》、《魔装獣スフィンクス》、そして手札から《魔装郷士リョウマ》《魔装鍛冶クルダレゴン》!!」
魔装剛毅アトレウス レベル3 攻撃1000(チューナー)
魔装獣スフィンクス レベル5 攻撃2300
魔装郷士リョウマ レベル4 攻撃1900
魔装鍛冶クルダレゴン レベル2 守備500
「そして、《魔装郷士リョウマ》の効果発動!こいつを手札からペンデュラム召喚に成功したとき、墓地から魔装モンスター1体を手札に加える。俺は墓地から《魔装鬼ヨシヒロ》を手札に加える。ちなみに、《アトレウス》の効果は使わないぜ」
一気に4体ものモンスターがペンデュラム召喚され、ベクターのフィールドが魔装モンスターで埋め尽くされる。
攻撃力はいずれも凌牙の2体のモンスターには及ばないが、問題はチューナーである《魔装剛毅アトレウス》、そして《魔装鍛冶クルダレゴン》の効果の使い方だ。
「《クルダレゴン》の効果。こいつの召喚・特殊召喚に成功したとき、俺の手札・フィールドの魔装モンスター1体のレベルを2つまで上げることができる。俺は《クルダレゴン》のレベルを2つ上げる」
魔装鍛冶クルダレゴン レベル2→4 守備500
「いくぜ!俺はレベル4の《リョウマ》と《クルダレゴン》でオーバーレイ!エクシーズ召喚!現れな、《魔装獣ケルベロス》!」
魔装獣ケルベロス ランク4 攻撃2300
「更に、俺は手札から《RUM-魔装の刻印》を発動!こいつは俺のフィールドの魔装エクシーズモンスター1体をランクが1つ高い魔装エクシーズモンスターにランクアップさせる!俺は《ケルベロス》でオーバーレイネットワークを再構築!」
ベクターが自らの力で生み出したRUMなのか、上空に出現するオーバーレイネットワークには薄い紫の霧が発生していた。
その中に、《魔装獣ケルベロス》が飛び込んでいき、その姿を黒い騎士へと変えていく。
「ランクアップエクシーズチェンジ!現れな、《魔装騎士ブラックライダー》!」
魔装騎士ブラックライダー ランク5 攻撃2800
「そして、発動した《魔装の刻印》の効果。相手フィールドに存在するモンスター1体の効果を無効にし、ターン終了時までその効果をエクシーズチェンジした俺のエクシーズモンスターのものにする!俺はてめえのエース、《S・H・Dark Knight》の効果をいただく!!」
「何!?」
《CNo.101S・H・Dark Knight》の胸部に五芒星が刻まれ、そこから放出される紫のエネルギーが《魔装騎士ブラックライダー》へと吸収されていく。
RUM-魔装の刻印
通常魔法カード
このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):自分フィールドに存在する「魔装」Xモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターよりもランクの1つ高い「魔装」Xモンスター1体をそのモンスターの上に重ねてX召喚扱いでEXデッキから特殊召喚する。その後、相手フィールドに存在するモンスター1体の効果をターン終了時まで無効にする。また、その効果で無効にしたモンスターに記された効果をこのターン、そのモンスターの効果として1度だけ発動できる。
「さあてっと…どうすっかなぁ…」
ベクターは嬉しそうに笑いながら、凌牙の2体のモンスターを品定めする。
《CNo.101S・H・Dark Knight》を吸収するか、それとも《白闘気白鯨》を吸収するか。
「待て、ベクター!」
「あん…?」
「忠告しといてやる。貴様が奪った《Dark Knight》の効果…使うのは止めねえ。だが、選択を間違えたら、ベクター!貴様が負けることになるぜ!」
「はっ!はったりかますんじゃあねえよ!」
「はったりかどうかは…貴様次第だ」
相変わらず自分をイラつかせる凌牙の言動にベクターの表情がゆがむ。
《CNo.101S・H・Dark Knight》はオーバーレイユニットを持っている状態で破壊されたとき、復活する上に自身の元々の攻撃力分ライフ回復を行う。
《白闘気白鯨》は相手によって破壊されたとき、墓地の水属性モンスター1体を除外することで復活できるうえにチューナーになることができる。
問題は1ターンのうちに発動できる回数で、前者が1度だけに対し、後者は墓地に水属性モンスターが存在する限りは何度でも使える。
「分かったぜ…!《ブラックライダー》の効果発動!てめえの《白闘気白鯨》をオーバーレイユニットにする!ダークソウル・ローバー!」
《魔装騎士ブラックライダー》の天秤から発生する黒い瘴気が《白闘気白鯨》を飲み込み、オーバーレイユニットに作り替えていく。
オーバーレイユニットと化した白鯨はそのまま黒騎士の周囲を旋回し始めた。
「更に、俺は手札から《魔装鬼ヨシヒロ》を召喚!」
魔装鬼ヨシヒロ レベル3 攻撃800
「こいつは俺の魔装モンスター1体の装備カードとして装備させることができる。そして、こいつを装備したモンスターの攻撃力は800アップ!」
《魔装鬼ヨシヒロ》が変形した槌を《魔装騎士ブラックライダー》が手にし、それを《CNo.101S・H・Dark Knight》に向ける。
魔装騎士ブラックライダー ランク5 攻撃2800→3600
「更に、《魔装騎士ブラックライダー》の効果発動!オーバーレイユニットを2つ取り除くことで、こいつは相手フィールドに存在するすべてのモンスターに1回ずつ攻撃できる!これで、たとえてめえがモンスターをこの瞬間に増やしても余計傷口が広がるだけだ!
奪ったばかりの物を除く2つのオーバーレイユニットを天秤に吸収した《魔装騎士ブラックライダー》が槌を地面にたたきつけると、上空の裂け目から緑色の光る隕石が落ちてき始めた。
取り除かれたORU
・魔装鍛冶クルダレゴン
・魔装郷士リョウマ
「バトル!《魔装騎士ブラックライダー》で《S・H・Dark Knight》を攻撃!ブラック・リブラ・メテオ!」
落ちてきた隕石に押しつぶされた《CNo.101S・H・Dark Knight》が消滅し、その場にクレーターが出来上がる。
そして、落下によって発生した衝撃波に凌牙は両腕を構えて必死に耐える。
「《ブラックライダー》に装備された《ヨシヒロ》の効果!装備モンスターが相手モンスターとの戦闘で発生する相手への戦闘ダメージは倍になる!」
凌牙
ライフ4000→2400
「ぐう…だが、《Dark Knight》の効果!こいつはオーバーレイユニットを持った状態で破壊された場合、墓地から蘇る!リターン・フロム・リンボ!」
鎧と槍にひびが入った状態の《CNo.101S・H・Dark Knight》が再びフィールドに舞い戻り、傷ついた凌牙の縦になるかのように前に立つ。
「そして、こいつの元々の攻撃力分、俺のライフは回復する」
CNo.101S・H・Dark Knight ランク5 攻撃2800
凌牙
ライフ2400→5200
「関係ねえ!もう1度《ブラックライダー》で攻撃するだけだ!!」
再び上空から降ってくる隕石が復活したばかりの《CNo.101S・H・Dark Knight》を押しつぶし、衝撃波で凌牙を吹き飛ばす。
「ぐあ、あああ!!!」
吹き飛ばされた凌牙は背後に崩れかけた壁に背中を激突させ、前のめりに倒れてしまった。
凌牙
ライフ5200→3600
「更に、《リンドヴルム》でダイレクトアタック!」
《魔装雷竜リンドヴルム》の口から発射される電撃が倒れている凌牙に死体蹴りをするかのように襲い掛かる。
「永続罠《アビス・シールド》を発動!ダイレクトアタックで発生する俺への戦闘ダメージを半分にする!」
水でできた円楯が電撃を受け止めるものの、すぐに突破されて凌牙の体を電撃が襲う。
「うわああああ!!」
凌牙
ライフ3600→2100
「く…そして、俺がダイレクトアタックを受けるたびに、アビスカウンターを1つ乗せる」
アビス・シールド(永続罠) アビスカウンター0→1
「ちっ…これで、とどめをさせなくなったか…!」
「さあ、どうする?俺にもっとダメージを与えるか…?念のために教えておいてやるぜ。《アビス・シールド》は発動した次の俺のターンのスタンバイフェイズ時に墓地へ送られる。そして、乗っていたアビスカウンターと同じ数のレベルの水属性・魚族モンスター2体をデッキから攻撃力・守備力を0にして特殊召喚できる。あと2体攻撃できるモンスターがいて、そいつらがダイレクトアタックで俺にダメージを与えたら…どうなるか分かっているよな?」
「ちっ…」
そうなると、凌牙のライフは550になるが、アビスカウンターが3つになる。
その結果、レベル3のモンスター2体を特殊召喚するチャンスを与えることになる。
そして、その2体でエクシーズ召喚できるモンスターは《No.47ナイトメア・シャーク》。
そのモンスターを直接カオス化することで、今度は《CNo.47ナイトメア・シャーク・ノワール》が出現する。
ライフが1000以下の時、そのモンスターはオーバーレイユニットを1つ取り除くたびに仲間のモンスター1体に直接攻撃をする力を与えていく。
攻撃力2000以上のモンスターを何らかの手段で召喚された瞬間、ベクターの敗北が確定する。
「くそ…!バトルフェイズはこれで終了だ!俺はこれで、ターンエンド!」
ベクター
手札3→0
ライフ4000
場 魔装雷竜リンドヴルム レベル8 攻撃3000
魔装騎士ブラックライダー(ORU2 《魔装鬼ヨシヒロ》装備) ランク5 攻撃3600
魔装剛毅アトレウス レベル3 攻撃1000(チューナー)
魔装獣スフィンクス レベル5 攻撃2300
魔装魔戦士ペルセウス(青) ペンデュラムスケール1
魔装剣士ムネシゲ(赤) ペンデュラムスケール9
凌牙
手札2(うち1枚《ハーミッド・サーディン》)
ライフ2100
場 アビス・シールド(永続罠 アビスカウンター1)
(へっ…だが、奴の手札の1枚が《ハーミッド・サーディン》なのは分かっている!《アビス・シールド》の効果で特殊召喚されるのはレベル1の雑魚モンスター2体。それで俺様をどうにかできるとでも…?)
「キュキュ!キュイーーー!!」
走り続けたビャッコはジェットコースターの前で足を止める。
「ここまで走ってどうし…ああ!?」
「伊織さん、あれって…!」
そこはちょうど、翔太が裂け目を開いた場所だからか、ここからは裂け目に映る向こう側の世界の光景がよく見えた。
それには眼の色や表情、そして左半身がおかしくなった翔太が味方であるはずの凌牙とデュエルを繰り広げていた。
「翔太君!?んもう、いったい何してるの!?」
アカデミアとの戦いの中で、どうしてまた味方同士で戦うのか理解できない伊織だったが、今の翔太が瘴気じゃないということだけは分かった。
どうにかして止めたいが、今は別世界にいる伊織にはどうすることもできない。
だが、急にビャッコの体が淡い緑色の光を発し始める。
「ビャッコさん、この光…裂け目と同じ…?」
「キュキュキュキュキューーーー!!」
「え…きゃ!?」
その光は伊織達を包み込んでいき、球体へと変化していくと、そのまま裂け目に向かって飛んでいった。
「俺のターン…ドロー!」
凌牙
手札2→3
「《アビス・シールド》の効果発動。こいつを墓地へ送り、デッキから《ドワーフ・ゴビー》2体を特殊召喚する」
世界最小の魚と言われるゴマハゼを模した2体の小さな魚がフィールドに現れる。
ドワーフ・ゴビー×2 レベル1 守備0(チューナー)
アビス・シールド
永続罠カード
このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードが表側表示で存在する限り、自分が相手の直接攻撃によって受ける戦闘ダメージが半分になる。そして、相手の直接攻撃によって戦闘ダメージを受けるたびにこのカードの上にアビスカウンターを1つ置く。
(2):このカードを発動した次の自分スタンバイフェイズ時にこのカードを墓地へ送ることで発動する。乗っていたアビスカウンターと同じ数のレベルを持つ水属性・魚族モンスター2体をデッキから特殊召喚する。その効果で特殊召喚されたモンスターの攻撃力・守備力は0となる。
「そして、俺は手札から魔法カード《エクシーズ・リミットリバース》を発動。俺の墓地のエクシーズモンスター1体をターン終了時まで効果を無効にして特殊召喚し、このカードをそのモンスターのオーバーレイユニットにする。俺が特殊召喚するのは《S・H・Dark Knight》だ」
CNo.101S・H・Dark Knight ランク5 攻撃2800
エクシーズ・リミットリバース
通常魔法カード
(1):自分の墓地に存在するXモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターを自分フィールドに特殊召喚し、このカードをそのモンスターの下に重ねてX素材とする。この効果で特殊召喚されたモンスターの効果はターン終了時まで無効化される。
「効果無効…?それじゃあ、俺のモンスターをオーバーレイユニットにすることはできねえなぁ…」
「ああ、そうだ。てめえの言う通りだ。まだ、《ブラックライダー》には2つのオーバーレイユニットがある。このままじゃあ俺が負けるのは当然だ…」
「ああん…?だから、最後まで抵抗してかっこいい姿を見せようってのか!?ちっ、ギザな奴だぜ!!」
「だが、まだ俺にはこの手がある!俺はランク5の《Dark Knight》にレベル1の《ドワーフ・ゴビー》2体をダブルチューニング!」
「何!?エクシーズモンスターを素材にシンクロ召喚だと!?
レベルを持たないエクシーズモンスターをシンクロ素材にすることはルール上できない行いだ。
だが、2体の《ドワーフ・ゴビー》は2つの水の輪へと変化し、その中へ飛び込んだ《CNo.101S・H・Dark Knight》の鎧が徐々に水色へと色を変えていく。
「このカードはチューナー2体にランク5の水属性エクシーズモンスターを素材とすることでシンクロ召喚できる!!激瀧の力宿りし守護者よ!今こそ、混沌を浄化し、魂に安らぎをもたらせ!!シンクロ召喚!!現れろ、《SNo.101S・H・Abyss Knight》!」
《No.73激瀧神アビス・スプラッシュ》を彷彿させる鎧とマント、そして三又の槍を手にした水色の守護者が凌牙の新たな力として目覚める。
SNo.101S・H・Abyss Knight レベル7 攻撃3000
「《Abyss Knight》の効果発動!墓地に存在する水属性エクシーズモンスター、またはシンクロモンスター1体をデッキに戻し、そのどちらかによって効果が決まる!俺は墓地の《Dark Knight》をデッキに戻す!」
《CNo.101S・H・Dark Knight》の幻影が《SNo.101S・H・Abyss Knight》に宿り、槍の穂先が紫色に染まる。
「エクシーズモンスターをデッキに戻した場合、このカードは相手フィールドのすべてのモンスターに1回ずつ攻撃できる!」
「な…何ぃ!?だ、だがそれでも!!攻撃力3000じゃあ、たとえ《スフィンクス》と《アトレウス》を攻撃して、《リンドヴルム》と相討ちがせいぜ…」
「そして、このカードは相手モンスターを攻撃したダメージステップ終了時、そのモンスターを装備カード扱いとしてこのカードに装備し、その効果で装備したカード1枚につき、攻撃力を400アップさせる!」
「な…にぃ!?」
「再び冥界へ落ちろ、ベクター!!《Abyss Knight》で攻撃!アビス・ソウル・ブレイカー!!」
《SNo.101S・H・Abyss Knight》が槍を天にかざすと、背後に大量の同じ形の槍が生まれ、それが一気にベクターのフィールドに降り注ぐ。
容赦なく降る槍の雨を受けた《魔装剛毅アトレウス》、《魔装獣スフィンクス》、《魔装雷竜リンドヴルム》の順番に消滅していく。
「ナッシュ!!てんめええええええ!!!」
SNo.101S・H・Abyss Knight レベル7 攻撃3000→3400→3800
ベクター
ライフ4000→2000→900→0
SNo(シンクロナンバーズ).101S・H・Abyss Knight(サイレント・オナーズ・アビス・ナイト)
レベル7 攻撃3000 守備2800 シンクロ 水属性 水族
チューナー2体+水属性Xモンスター1体
このカードは上記の組み合わせでのみ、S召喚できる。
このカードのS召喚を行うとき、S素材となるXモンスターはそのモンスターのランクと同じ数値のレベルのモンスターとして扱う。
このカードはS召喚以外の方法で特殊召喚できない。
(1):このカードが相手モンスターを攻撃したダメージステップ終了時に発動できる。その相手モンスターを装備カード扱いとして、このカードに装備する。このカードの攻撃力はその効果で装備したカードの数×400アップする。
(2):1ターンに1度、自分の墓地に存在する水属性Sモンスター、Xモンスターのいずれか1体をデッキに戻して発動できる。次の自分のスタンバイフェイズ時まで、その効果でデッキに戻したカードの種類によって以下の効果を得る。
●Sモンスター:このカードは戦闘・効果では破壊されず、このカードの戦闘で発生する自分へのダメージは0となる。
●Xモンスター:このターンのバトルフェイズ時、このカードは相手フィールドに存在するすべてのモンスターに1回ずつ攻撃できる。その時、自分フィールドのほかのモンスターは攻撃できない。
(3):このカードが相手によって破壊され墓地へ送られたとき、自分のEXデッキに存在するそのカードの装備カードの数と同じ数値のレベルまたはランクの水属性モンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターを自分フィールドに特殊召喚する。
リリース・リース(アニメオリカ・調整)
通常魔法カード
このカード名の(1)(2)の効果は1ターンに1度、いずれか1つしか使用できない。
(1):自分フィールドに存在するモンスターが1体のみの時、そのモンスターをリリースすることで発動できる。デッキからそのモンスターのレベル以下のレベルのモンスター1体を手札に加える。
(2):自分フィールドにモンスターが存在せず、相手フィールドにモンスターが存在するとき、墓地に存在するこのカード1枚を除外することで発動できる。墓地からレベル4以下のモンスター1体を手札に加える。
ドワーフ・ゴビー
レベル1 攻撃0 守備0 チューナー 水属性 魚族
このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか行えない。
(1):このカードの召喚に成功したとき、自分の墓地に存在する水属性モンスター1体を対象に発動できる。ターン終了時まで、このカードのレベルはそのモンスターと同じになる。この効果を発動したターン、自分は水属性以外のモンスターをEXデッキから特殊召喚できない。
今回、登場したナビの元ネタはメタルギアシリーズのメタルギアMk-Ⅱです。