「くそ…が、ナッシュぅ…!」
凌牙の一撃で大きなダメージを負い、敗北してもなお立ち上がるベクターだが、足はがくがく震えていて、傷だらけだ。
立っているだけでもやっとなのは火を見るよりも明らかだ。
「ベクター、お前がそれを自分の力だと思っていたようだが、違ったようだな」
「何…?」
人間の姿に戻った凌牙は睨むようにベクターを見た後で、彼のデュエルディスクに入っている翔太のデッキを見る。
「確かにこのデッキの大本を生み出したのは貴様かもしれない。だがな、翔太は自分の記憶を取り戻すため、デッキを強くしていった。あいつ自身がな。それはもはや、てめえの力じゃねえって何よりの証拠だろう」
確かにこのデッキを使うベクターは強かった。
おそらく、バリアン世界で戦った時よりもだ。
だが、結局のところどちらも借り物の力でしかなかった。
借り物の力だからと否定するつもりはないが、その中にはベクターの血を感じることができなかった。
「ざけんじゃねえ…!まだだ、まだ俺は…」
なおも凌牙に復讐しようとあがくベクターだが、裂け目から緑色の光の球体が振ってくるのが見えた。
凌牙たちの前に落ちてきたその光は消滅し、なぜか伊織とビャッコ、セラフィムが現れた。
「お前…なんでこんなところに!?」
「ここってエクシーズ次元の…翔太君!?」
まさか次元転移できるとは思わなかった伊織は驚く中、裂け目に見えた通りの姿になっている翔太に目を向ける。
その姿は生身の人間とは思えなかった。
「こうなったら、あの女を人質にして…!」
「キュイーーーー!!」
「な…てめえは!!」
ビャッコの姿を見た瞬間、ベクターは恐れるように後ずさりする。
そして、ビャッコはベクターにとびかかると同時に、両者が光りに包まれていった。
「ビャッコさん!!」
「翔太君!!」
「何が…起こるというんだ…?」
「キュイーーー!キュイーーーー!!」
「…る、せえよ…今、起きてるだろう…??」
ビャッコの鳴き声をうっとうしく思いながら、真っ暗な空間の中で翔太が目を覚ます。
なぜか激しい倦怠感と眠気が全身を襲っていて、このまま永遠に眠り続けたい願望が彼に宿っている。
頭を振ってその願望を必死に排除しながら、翔太はなぜここにいるのかに思考を傾ける。
「そうだ…俺はアカデミアの基地を暴くために力を…そうしたら、あの野郎が…」
「間一髪だったね…。あと少し遅かったら、完全に君は消滅していた」
「ああ…?」
後ろから声が聞こえ、振り返るとそこには真っ白な光でできた人間の形をした幻影が立っていた。
その声になぜか聞き覚えのある翔太だが、誰の者だったのか、やはり思い出せない。
「ベクターからもらった力を活性化させたことで、主導権を奪われていたんだ」
「ちっ…やはりそうかよ…」
痣の力を使った時、嫌な予感を感じていたものの、それを使わなければ道を切り開くことができなかった。
「記憶のカードを君は既に7枚解放している。それも、力の強化につながっているんだ…」
「記憶のカード…その記憶っていうのは、俺のものじゃねえんだろう?」
これまで解放を続ける中、薄々感じていた。
それらから見た記憶は自分のものではないということを。
そして、おそらく記憶は2人分存在する。
「そうだ…記憶は僕と…ベクターのものなんだ」
「で、てめえは誰だよ」
「…名前だけは思い出したよ。僕は…石倉純次」
「石倉…順次だと?」
翔太の脳裏に石倉純也と聖子の姿が浮かぶ。
同じ苗字である彼があの2人の関係者である可能性が高い。
「で、俺はこれからどうなる?このまま消滅するのか?」
「ううん。もうすぐ君は再び体の主導権を取り戻す。けれど、ベクターはまた君の体を奪おうとする。それがいつになるのかは僕にもわからない」
「てめえはどうだんだ?お前も俺の体を奪えるんじゃないのか?」
純次もベクターと同じ、記憶のカードに記憶が存在していた。
つまりはやろうと思えば、彼もまたベクターと同じく翔太の体を奪い取ることができると翔太は予想していた。
「君の懸念は分かってる。僕も…ある意味ではベクターと同じで、自分の体を失っているからね。信じてもらえないかもしれないけど…僕はこの体は君の者であるべきだと思うんだ。だから…君が完全にこの体に定着するためにも、残り3枚の記憶のカードと戦う必要があると思うんだ」
「はぁ…?それじゃあ奴に力を与えるのと同じだろう!?」
「確かに、ベクターの記憶のカードとすべて戦ってしまったからね。けれど、まだ僕の記憶のカードが残ってる。その力で拮抗させるんだ。その状態なら、ベクターと対峙できる。そして、彼を倒すチャンスができる。そのチャンスができるまで、僕がベクターを抑え込むよ」
純次が上に手を伸ばすと、上空から無数のカードが振ってきて、それが合体して行って巨大な門へと変化していく。
そして、純次の姿がだんだん消えていく。
「1つ、質問いいか?」
「何かな?」
「なぜ俺に肩入れする?」
翔太自身に選択肢はなく、気に入らないが、今は純也の言葉に従うしかない。
ベクターのような下心がないとは思えず、そのような質問をしてしまった。
「君に…生きていてほしいからだよ」
答えを聞くと同時に扉が開く。
答えになっていない答えに思えた翔太だが、今はここにいるわけにはいかず、ビャッコと共に扉をくぐった。
「う、ぐう…!」
体中から感じる痛みが権現坂を眠りから覚ます。
両手首には手錠がかけられ、それが天井から垂れているロープとつなげられている。
「目が覚めたようだな、ランサーズ、権現坂昇」
「貴様…!」
目の前にはエドが立っていて、不敵な笑みで彼を見下すように見つめている。
いつもの権現坂なら、この状態でもロープを引きちぎることができるが、実体化したデュエルダメージを負っているせいで、今はどうすることもできない。
「安心しろ。お前をまだ殺したりはしないさ。お前と、それから奴と一緒にいる柊柚子には特等席で観戦してもらうことになる。榊遊勝のエンタメデュエルがアカデミアのデュエルに敗れる光景を」
「遊勝殿…?」
エドは権現坂のデュエルディスクを奪って通信していたときも、遊勝の名前を出していた。
行方不明の遊勝について、彼は何か知っているのかもしれない。
「エド・フェニックス…なぜ、貴様は遊勝殿のことを知っている!?あの御仁はいったいどこにいる!?」
「奴を特等席へ案内しろ。抵抗するなら、多少痛めつけても構わん」
「ハッ!」
「おい、質問に答えろ!遊勝殿は…ぐおおおお!!」
しつこく司令官に質問する権現坂にデュエル戦士はスタンガンを使用する。
高圧電流で筋肉が硬直し、激痛が襲う。
放心状態になった権現坂をデュエル戦士は3人がかりで背負い、連れていく。
彼らと入れ替わるように、野呂が体育館に入ってくる。
「司令…なぜ榊遊矢をここへ連れてくる必要があるのです?そんなもの、デュエル戦士を差し向ければ済むだけの話でしょう?それに…何ですか?榊遊矢たちに一切手を出すなと??」
数分前に通信で送られたエドの命令が野呂には全く理解できなかった。
遊矢は確かに、シンクロ次元でセルゲイとジャックを倒し、この次元でもタイラー姉妹を倒したデュエリスト。
だが、バトルロイヤルモードを強制された状態で、デュエル戦士が集団で襲う方が、わざわざ総司令であるエドが直接闘うよりも明らかにリスクが少ない。
にもかかわらず、遊矢を自分の手で倒すことにこだわっている。
その疑問に答えるように、エドは懐から半分だけになったカードを出す。
自分に良からぬ影響を与えた忌むべきカード、《スマイル・ワールド》。
「僕は…アカデミアの教えの正しさを証明しなければならない。そのためにも、榊遊矢と…彼の父親、遊勝を僕の手で始末する!」
彼ら親子を始末するため、必死に訓練をし、武功を重ねて鍛え上げたデッキと手に入れたエクシーズ次元派遣軍総司令のポスト。
今のエドにとって重要なのは、エクシーズ次元征服よりも榊遊矢の始末だった。
「やれやれ…考えを曲げられるつもりはないのですね?」
「当然だ」
「分かりました。では、私は戦況確認をしなければなりませんので、これで…」
恭しく頭を下げた野呂は体育館を後にする。
扉を閉め、その向こうで遊矢を待つエドを横目に見た彼はうっすらと笑みを浮かべる。
(そうです…それでいいのです。エド・フェニックス。そして、証明してください。あなたが真のアカデミアのデュエル戦士であることを…あなたの命が惜しければ)
「遊…矢…」
放心状態で体の動きが取れないまま、権現坂は真っ暗な部屋の中で椅子に座らせられ、両腕と両足を拘束具で固定される。
ここが例の特等席なのか、それともまた別の場所へ向かうための中間地点なのか、今の権現坂にはわからない。
今、彼の頭にあるのは自分を助けるためにここへ来るであろう遊矢のことだった。
(気を付けろ…遊矢。奴は…)
「《ビッグベン-K》で《古代の機械巨人》を攻撃!」
《超重武者ビッグベン-K》の拳が《古代の機械巨人》の胸部装甲を貫き、爆散させる。
爆風で吹き飛んだデュエル戦士は背後の壁に激突し、力尽きる。
そんな彼を気にせず、権現坂はデュエルディスクで遊矢と柚子の居場所を確認する。
「反応なし。まだ転移できていないというのか…?」
若干のタイムラグと場所のズレは覚悟していたとはいえ、それでも早く合流しなければいずれデュエル戦士の集団にリンチされることになる。
声を出して探すこともできないため、自分の足で走って探すしかない。
そう思い、進もうとした瞬間、どこからか拍手する音が聞こえてくる。
ゆっくりとした、賞賛とは程遠い不気味な拍手のせいか、権現坂の背筋を冷たい空気が撫でる。
「見事だよ。裏切者の協力を得たとはいえ、まさか我らの本拠地への侵入ルートを手に入れ、実際に侵入してくるとは…正直君たちのことを舐めていた」
物陰から拍手をしながら近づいてくる男に権現坂は身構える。
近くに倒れているデュエル戦士が何人もいるのに、平然としていて、倒した本人である権現坂を前にしても同様一つ見せない。
「権現坂昇。君はランサーズの中でもとびきりユニークなデッキを使うようだね。そのデッキの力、僕に見せてもらえると嬉しいんだが…」
拍手を辞め、不敵な笑みを見せる男、エドはデュエルディスクを展開する。
「何者だ?貴様」
「おっと、あいさつもなしに失礼。僕はエド・フェニックス。君たちに分かりやすく答えるなら、エクシーズ次元を攻撃するアカデミアの総司令だ」
「何…!?」
目の前の、高校生くらいの少年が総司令を名乗ったことに権現坂は驚いた。
普通、総司令のような立場なら討ち取られるリスクを抑えるために司令室などにいるはずで、彼がどうして戦闘中にもかかわらずこうして自分の目の前にいるのかわからなかった。
未成年にその役目を任命しなければならないくらい、人材不足だからという安易な想像はあり得ない。
おそらく、総司令を名乗るくらいの実力を彼は持っている。
まだ居場所のつかめない2人と合流するために逃げることも考える。
だが、エドはそんな権現坂の考えが分かっているのか、少し考えるそぶりを見せる。
「確かに、僕みたいな男が総司令を名乗ったとしても、信じてもらえないだろう。そうだな…」
何かを思いついたエドはデュエルディスクで通信を始める。
すると、権現坂の進路を阻むようにデュエル戦士が集まってきた。
「これで、少しは信じてもらえたかな?ここを突破するには…僕をデュエルで倒すしかない」
「くっ…」
「だが、デュエルはフェアーにやるのが筋だ。そうだな…もし君が僕に勝ったなら、その時点で軍を融合次元へ撤収し、エクシーズ次元は解放しよう」
「何…!?」
それはあまりにも権現坂にとっては大きなアンティだ。
もしそうなれば、スタンダード・シンクロ・エクシーズによる三次元同盟でアカデミアに総攻撃する大きな一歩となる。
だが、そんな条件を提示するとなると、権現坂にも大きなアンティを差し出さなければならなくなるだろう。
甘い取引などこの世には存在せず、それに乗ると破滅することはよくある話だ。
とはいうものの、周囲に集まるデュエル戦士は10人以上。
彼らと戦いながら逃げ回るのは難しく、仮にその状態で遊矢と柚子を巻き込んでしまうとそのまま全滅することもあり得る。
「いいだろう!この男、権現坂!貴様のデュエルを受ける!」
権現坂はデュエルディスクを展開すると、エドのデュエルディスクからデュエルアンカーが発射され、自分のそれに固定される。
「これで、僕の部下の邪魔は入らない。そして、仮に僕が敗れたとしても、彼らは僕の命令がない限りは君を襲わない」
その言葉に、権現坂は彼が相当な自信をもってデュエルに望んでいることを感じた。
だが、応じた以上はもう後戻りできない。
「アクションフィールドを発動しても構わない。だが、僕はアクションデュエルが嫌いでね。アクションカードはすべて君にくれてやる」
「生憎、俺もアクションカードを使わん。アクションフィールドはなしだ!」
「そうか…。君がそれでいいのなら」
互いに5枚のカードをドローする。
アクションフィールドは発動されず、静寂に包まれる中で互いに対戦相手をにらむように見た。
「「デュエル!!」」
エド
手札5
ライフ4000
権現坂
手札5
ライフ4000
「僕の先攻だ。僕は手札から魔法カード《聖天使の施し》を発動。僕のフィールドにカードがない時、デッキからカードを2枚ドローし、手札1枚をセメタリーへ捨てる」
手札から墓地へ送られたカード
・D-HEROディアボリックガイ
「そして、手札から魔法カード《オーバー・デステニー》を発動。セメタリーのD-HEROのレベル以下のD-HERO1体をデッキから特殊召喚できる。《ディアボリックガイ》のレベルは6。よって、レベル4の《ダイヤモンドガイ》を特殊召喚する!」
「D-HERO!?伊織殿のHEROと違うのか…!?」
権現坂の知っているHEROは伊織が持っているカードだけで、D-HEROは見たことも聞いたこともないカードだ。
「あれはただのプロトタイプだ。僕のD-HEROこそが真のHERO。アークエリアプロフェクトを成功に導く英雄だ」
全身からダイヤモンドを生やした、暗い緑のマントと黒い紳士服姿をした褐色の男が現れる。
D-HEROダイヤモンドガイ レベル4 攻撃1400
「《ダイヤモンドガイ》のエフェクト!1ターンに1度、デッキの一番上をめくり、通常魔法カードならセメタリーへ送り、次の僕のターンのメインフェイズ時にそのエフェクトを発動する」
《D-HEROダイヤモンドガイ》のダイヤにその効果でドローされたカードイラストが映し出される。
彼がドローしたのは《デステニー・ドロー》、通常魔法だ。
笑みを浮かべたエドはそのカードを墓地へ捨てる。
「これで、次のターン、僕は《デステニー・ドロー》のエフェクトでデッキからカードを2枚ドローすることができる。更に、僕は手札から《D-HEROディシジョンガイ》を召喚」
ヒレが左右についた紫色の頭で、紫と黒がかった青がベースのライダースーツのような強化服姿をしたHEROがフィールドに現れる。
D-HEROディシジョンガイ レベル4 攻撃1600
「《ディシジョンガイ》のエフェクト発動!ターン終了時、僕はセメタリーのD-HERO1体を手札に戻すことができる。そして、セメタリーの《ディアボリックガイ》のエフェクト発動。このカードをセメタリーから除外することで、デッキから《ディアボリックガイ》1体を特殊召喚できる。カモン、アナザーワン!」
背中に悪魔の羽を生やし、3本角の悪魔をモチーフとした仮面をつけた筋肉質の男が地中から現れる。
D-HEROディアボリックガイ レベル6 攻撃800
「そして、《ダイヤモンドガイ》、《ディシジョンガイ》、《ディアボリックガイ》をリリース!」
「何!?3体ものモンスターをリリースするだと!?」
権現坂の予測では、ここから展開した3体を利用して融合召喚を行うものとばかり考えていた。
しかも、通常召喚を使っている以上アドバンス召喚もできない。
「このカードにそれは関係ないよ。このカードは僕のフィールドのモンスター3体をリリースすることで、手札から特殊召喚できる。崇高なる青き血を宿すHERO!《D-HERO Bloo-D》!」
リリースされた3体のモンスターが青い血に変わっていき、それが1つの塊へと変化していく。
やがて、その塊が砕け、その中から右手が魔獣の牙となり、ドラゴンの3本爪を模した飾りを背中に就けた、赤黒い鎧の戦士が現れる。
D-HERO Bloo-D レベル8 攻撃1900
「《Bloo-D》!これが、エド・フェニックスのエースカード!?」
「更に僕は手札からフィールド魔法《ダーク・シティ2-バッド・ナイト》を発動」
発動と同時に夜空となり、周囲に建物が真っ暗なアメリカの都市のような光景へと変化していく。
周囲にある壁にはアメリカの若者が書いたものと思われる落書きがそこかしこに描かれていた。
「《バット・ナイト》のエフェクト発動。1ターンに1度、デッキからD-HERO1枚をセメタリーへ送る。僕はデッキから《D-HEROダッシュガイ》をセメタリーへ送る。更に、カードを1枚伏せてターンエンド。そして、《ディシジョンガイ》のエフェクトにより、セメタリーから《D-HEROダイヤモンドガイ》を手札に戻す」
エド
手札5→1(《D-HEROダイヤモンドガイ》)
ライフ4000
場 D-HERO Bloo-D レベル8 攻撃1900
伏せカード1
ダーク・シティ2-バッド・ナイト(フィールド魔法)
権現坂
手札5
ライフ4000
場 なし
(レベル8にも関わらず、攻撃力1900とはどういうことだ…?)
エースモンスターであることは確かに思えるが、この低い攻撃力が違和感になる。
先ほどエドが発動した《ダーク・シティ2-バッド・ナイト》の効果にはD-HEROの攻撃力をアップさせるものがある。
それを使って守ろうという魂胆なのだろうか。
(いや…何を怖気づいている!?この男、権現坂、相手が誰であろうと己のデュエルを貫くのみ!)
頭を振り、雑念を払った権現坂はデッキトップに指をかける。
「俺のターン、ドロー!」
権現坂
手札5→6
「俺は手札から《超重武者タマ-C》を召喚!」
超重武者タマ-C レベル2 攻撃100(チューナー)
いきなり手札に来てくれたこのカードは権現坂にとって僥倖に思えた。
このカードなら、あのモンスターを容易に除去できる。
「《タマ-C》は俺のフィールドに超重武者以外に存在せず、俺の墓地に魔法・罠カードがない時、相手フィールドのモンスター1体とこのカードを素材に超重武者をシンクロ召喚できる!俺は貴様の《Bloo-D》を選択する!」
「フルモンスターか…確かに面白い。だけど、当てが外れたね」
「何!?」
不敵な笑みを見せるエドが右手を伸ばし、《超重武者タマ-C》を握りつぶすかのように拳を固める。
権現坂のフィールドに青い血の池が出現し、その血が《超重武者タマ-C》を縛り付ける。
「なんと…!?」
「《Bloo-D》の効果の1つ…。それは相手フィールドのモンスター効果を無効にすることだ。残念だが、君の作戦は失敗に終わったということだ」
相手フィールドのモンスターの効果を封じる、それはフルモンデッキの権現坂にとって、超重武者の力の大部分を奪われることを意味する。
守備表示で守備力を使って攻撃することができなくなり、その大きな特徴が死ぬことにつながる。
「く…ならば俺は手札の《超重武者装留チュウサイ》の効果発動!このカードを自分フィールドの超重武者の装備カードとすることができる!」
4つのマニピュレータを持つ義手が《超重武者タマ-C》の腕に装着される。
6本腕となった小さな武者はよろけながらもふんばってその場に立ち続ける。
「そして、《チュウサイ》のの効果。このカードを装備したモンスターをリリースし、デッキから超重武者1体を特殊召喚する!」
《超重武者タマ-C》がオレンジの光の柱を生み出しながら消滅し、その中から《超重武者ビッグベン-K》が姿を現す。
「現れろ、《超重武者ビッグベン-K》!」
超重武者ビッグベン-K レベル8 守備3500
「装備カードとなっているなら、《Bloo-D》の効果の対象外か…。だけど、せっかく守備表示で召喚した《ビッグベン-K》もこの状態では攻撃できないな」
青い血がペンキのように権現坂のエースモンスターの装甲と関節を青く濡らしていく。
関節からはビキビキと嫌な音が響き渡り、それだけでこの状態で攻撃することがどれだけ危険かが分かってしまう。
「(《Bloo-D》の呪縛から解放されない限り、俺に勝機はない…)俺はこれで、ターンエンド!」
エド
手札1(《D-HEROダイヤモンドガイ》)
ライフ4000
場 D-HERO Bloo-D レベル8 攻撃1900
伏せカード1
ダーク・シティ2-バッド・ナイト(フィールド魔法)
権現坂
手札6→4
ライフ4000
場 超重武者ビッグベン-K レベル8 守備3500
「僕のターン、ドロー!」
エド
手札1→2
「更に、《ダイヤモンドガイ》の効果で墓地へ送った《デステニー・ドロー》のエフェクト発動」
エド
手札2→4
召喚のために消耗した手札が一気に4枚まで回復する。
そして、《ダーク・シティ2-バッド・ナイト》の効果で、墓地に再びD-HEROが落とされる。
「《バッド・ナイト》のエフェクト、デッキから《ディバインガイ》をセメタリーへ送る。そして、《Bloo-D》のエフェクト発動!1ターンに1度、相手フィールドのモンスター1体をこのカードの装備カードとする!」
「何!?」
「《チュウサイ》のエフェクトもまた、無駄になったというわけさ」
《D-HERO Bloo-D》の両翼から青い血が雨のように《超重武者ビッグベン-K》を襲う。
多くの血を浴びたことでどんどん装甲と関節がさびていき、やがて機体そのものが青い血へと変わっていく。
「《ビッグベン-K》…」
なすすべもなく血へと変えられる相棒を見た権現坂は血が凍ったかのように立ち尽くす。
そして、血となったその機械は《D-HERO Bloo-D》の肉体に一部となった。
「《Bloo-D》の攻撃力は装備カードとしたモンスターの攻撃力の半分アップする」
D-HERO Bloo-D レベル8 攻撃1900→2400
「そして、手札から《D-HEROドリルガイ》を召喚」
右腕の巨大なドリルを中心に、体にいたるところにドリルを装着した、オレンジ色の肌の戦士が現れる。
D-HEROドリルガイ レベル4 攻撃1600
「《ドリルガイ》のエフェクト発動。このカードの召喚・特殊召喚に成功したとき、このカードの攻撃力以下のD-HEROを手札から特殊召喚できる。カモン、《ダイヤモンドガイ》!」
D-HEROダイヤモンドガイ レベル4 攻撃1400
「君のデッキは面白いと聞いたが…残念だよ。君には榊遊矢の餌になってもらおうか」
「何…?遊矢の?」
「バトル!《Bloo-D》でダイレクトアタック!ブラッディー・フィアーズ!!」
《D-HERO Bloo-D》の羽から青い血の雨が権現坂に向けて発射される。
血が鋭利な刃物のように突き刺さり、権現坂の全身を傷つけていく。
「ぐうううう!うう!!」
権現坂
ライフ4000→1600
「へえ、《Bloo-D》のダイレクトアタックを受けて、立っていられるなんてな」
「ぐ…俺は手札の《超重武者ココロガマ-A》の効果発動!俺の墓地に魔法・罠カードがない状態で戦闘ダメージを受けたとき、このカードを手札から特殊召喚できる!」
超重武者ココロガマ-A レベル3 守備2100
「守備力2100…。当然、効果は無効になっているが、《ドリルガイ》の攻撃では倒せないか」
《超重武者ココロガマ-A》のおかげで権現坂にとってのピンチは去った。
だが、攻撃力2400の《D-HERO Bloo-D》の攻撃でたやすく突破されてしまうのは確かだ。
「僕は《ダイヤモンドガイ》のエフェクト発動。デッキトップのカードは《同胞の絆》。次のターンのエフェクトは確定する。僕はこれで、ターンエンドだ」
エド
手札4→2
ライフ4000
場 D-HERO Bloo-D(《超重武者ビッグベン-K》装備) レベル8 攻撃2400
D-HEROドリルガイ レベル4 攻撃1600
D-HEROダイヤモンドガイ レベル4 攻撃1400
伏せカード1
ダーク・シティ2-バッド・ナイト(フィールド魔法)
権現坂
手札4→3
ライフ1600
場 超重武者ココロガマ-A レベル3 守備2100
「《ビッグベン-K》…済まぬ!」
青い血に取り込まれた相棒に目を向けたあと、権現坂は自分のデッキを見る。
この状況を突破できるカードは今の権現坂の手札にはない。
あるとしたら、このデッキの中だけだ。
「(不動の兵たちよ、我が不動のデュエルの勝利の道を作れ!)俺のターン、ドロー!」
権現坂
手札3→4
「俺の墓地に魔法・罠カードが存在しないとき、《超重武者ヒキャ-Q》は手札から特殊召喚できる」
超重武者ヒキャ-Q レベル5 守備1800
「そして、《ヒキャ-Q》の効果発動!このカードをリリースすることで、手札のモンスター2体を守備表示で相手フィールドに特殊召喚し、俺はデッキからカードを2枚ドローする。俺は《グロウ-V》と《ツヅ-3》を特殊召喚し、カードを2枚ドロー!」
超重武者グロウ-V レベル3 守備1000
超重武者ツヅ-3 レベル1 守備300(チューナー)
「そして、俺は手札から《超重武者装留グレート・ウォール》を召喚!」
超重武者装留グレート・ウォール レベル3 攻撃1200
「バトルだ!《グレート・ウォール》で《グロウ-V》を攻撃!」
《超重武者装留グレート・ウォール》に真上から押しつぶされる形で《超重武者グロウ-V》が破壊される。
「《グロウ-V》の効果!俺の墓地に魔法・罠カードがない状態でこのカードが墓地へ送られたとき、デッキの上から5枚を好きな順番に並べ替える!そして、俺の墓地に魔法・罠カードが存在しないとき、《ホラガ-E》は手札から特殊召喚できる!」
超重武者ホラガ-E レベル2 攻撃300(チューナー)
「レベル3の《グレート・ウォール》にレベル2の《ホラガ-E》をチューニング!長き刃を手に燕を切り裂く剣豪よ、暗夜の街に現れよ!シンクロ召喚!レベル5、《超重剣聖コゴ-6》!」
同じレベル5の超重武者シンクロモンスター、《超重剣聖ムサ-C》とは対照的に、青と黒をベースとした暗い色彩の鎧と自身の倍の長さの刀身を持つ刀を背負った超重武者が現れる。
超重剣聖コゴ-6 レベル5 守備2300
「せっかくシンクロ召喚したようだが、やはりそのモンスターも《Bloo-D》の効果を…」
「いいや!《コゴ-6》はシンクロ召喚に成功したとき、俺の墓地に魔法・罠カードが存在しない場合、このカードをリリースすることで発動できる!デッキの上からカードを2枚まで墓地へ送ることができる」
権現坂は操作したばかりのデッキのカード2枚を墓地へ送った。
「そして、この効果で墓地へ送った超重武者の数だけ、相手フィールドのカードを破壊する!俺は《Bloo-D》と《ツヅ-3》を破壊する!」
《超重剣聖コゴ-6》が抜いた刀に2つの光が宿る。
そして、相手フィールドに向けて振り下ろした後で、更に上へ切り上げた。
その瞬間、対象となった2体のモンスターが真っ二つとなり、消滅する。
デッキから墓地へ送られたカード
・超重武者装留バスター・ガントレット
・超重武者装留ビッグバン
「《Bloo-D》を破壊するなんて…!」
「これで、貴様のエースカードは倒し、《ビッグベン-K》を取り戻せる!破壊された《ツヅ-3》の効果発動!フィールド上のこのカードが破壊され墓地へ送られたとき、墓地の超重武者1体を特殊召喚できる。俺は《ビッグベン-K》を特殊召喚する!」
錆がなくなり、完全な状態に戻った《超重武者ビッグベン-K》がフィールドに舞い戻る。
超重武者ビッグベン-K レベル8 守備3500
「俺はこれでターンエンド!そして、《コゴ-6》の効果発動!自らの効果でリリースされたカードが墓地に存在し、俺の墓地に魔法・罠カードが存在しないとき、墓地から特殊召喚でき…」
「罠発動、《D-フュージョン》!」
「何!?このタイミングでだと!?」
ターン終わりのところで発動されたそのカードから渦が発生し、《D-HEROドリルガイ》と《D-HEROダイヤモンドガイ》が飛び込んでいく。
「君のデッキの底力を見せてくれてうれしかったよ…ありがとう。これで、僕のエースを召喚できる」
「何!?《Bloo-D》がエースではなかったのか!?」
「そうさ。これが僕の本当の切り札さ。このカードはD-HERO専用の融合カードだ!僕は《ドリルガイ》と《ダイヤモンドガイ》を融合する!運命の岩盤を穿つ英雄よ、純潔の宝石を纏いし英雄よ、今一つとなりて暗黒の未来に君臨せよ!!融合召喚!!カモン!《D-HEROディストピアガイ》!」
黄色い丸みを帯びた肩パットがついた紫色のライダースーツを着用し、額部分にDと描かれた仮面で顔を隠した英雄が渦の中から飛び出す。
D-HEROディストピアガイ レベル8 攻撃2800
「《ディストピアガイ》のエフェクト発動。このカードの特殊召喚に成功したとき、自分の墓地のレベル4以下のD-HERO1体の攻撃力分のダメージをお前に与える…」
「何!?」
《D-HEROドリルガイ》の幻影が現れ、それが紫色のエネルギー弾となって《D-HEROディストピアガイ》の右手人差し指に宿る。
そして、右手を銃に見立て、指先を権現坂に向ける。
「まさか…ずっと、俺のことを躍らせていたというのか…!?」
やろうと思えば、前のターンで決着をつけることができたはずだ。
にもかかわらず、それをしなかったのは権現坂の底力を見せてもらうため、そして勝利できるかもという幻想を見せるため。
だが、《D-HERO Bloo-D》を倒したことで見えた幻想が実は暗黒郷への道標でしかなかった。
「消えろ、雑魚が」
権現坂を愚弄する言葉と共にエネルギー弾が発射され、それが彼を襲う。
悲鳴を上げることすら忘れ、立ち尽くす権現坂はそれをまともに受けると、せめてものエドへの抗議のためなのか、前のめりとなって倒れた
権現坂
ライフ1600→0
超重剣聖コゴ-6(コゴロー)
レベル5 攻撃300 守備2300 シンクロ 地属性 機械族
チューナー+チューナー以外の「超重武者」モンスター1体以上
このカード名の(2)の方法による特殊召喚は1ターンに1度しか行えない。
このカードはルール上、「超重武者」カードとしても扱う。
(1):このカードのS召喚に成功したとき、自分の墓地に魔法・罠カードが存在しない場合、このカードをリリースすることで発動できる。自分はデッキの上からカードを2枚まで墓地へ送る。その時、墓地へ送った「超重武者」モンスターの数だけ、相手フィールドのカードを破壊する。
(2):(1)の効果を発動したターン終了時にこのカードが墓地に存在する場合に発動できる。このカード1枚を墓地から守備表示で特殊召喚する。
「…坂!権現坂!聞こえるか!?」
倒れた権現坂の耳元に遊矢の声が聞こえてくる。
デュエルディスクから聞こえており、あまりのダメージで一瞬なぜ自分がこうして倒れているのか忘れたは通信に応える。
「こちら、権現坂だ…遊矢か…?」
「ああ…。どこにいる?これから柚子と合流…」
通信を聞く中で、権現坂は先ほどのデュエルのことを思い出す、
エドの前に1ポイントもライフを削ることができず、挙句の果てにピエロのように踊らされて倒された。
そんな恐ろしい相手と会わせるわけにはいかない。
「いや、来るな!!今、俺のところへは…うわあああ!!」
傷ついた権現坂の体をエドが無慈悲にも踏みつける。
そして、デュエルアンカーを外した後で彼からデュエルディスクを取り上げる。
「く…貴様は…!」
「やぁ、榊遊勝の息子、榊遊矢」
ダメージのせいで、だんだん意識が遠のいていく。
デュエルディスクを持ったエドが離れていき、周りで待機していたデュエル戦士たちが権現坂に集まる中、彼は意識を失った。