遊戯王ARC-V 戦士の鼓動   作:ナタタク

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第105話 EM VS D-HERO

「ふう、ふう、ふう…」

「翔太君!!」

「キュイー!!」

だんだんと感覚が戻っていき、視界が意識を失う直前のハートランドに戻っていくのが分かった。

たっぷりと呼吸をした翔太は自分に声をかける伊織とビャッコに目を向ける。

「伊織…お前、どうしてここに…?」

「ビャッコちゃんの助けを借りて、ここまで逃げてきたの!まさか、次元を飛び越えることもできるなんて、びっくりしたぁ!それに、翔太君もおかしくなって…」

「俺が…ああ、そうだな…」

おかしくなった、というのはベクターに乗っ取られたことを言っているのだろうと解釈し、疲労のためかその場に座り込む。

そして、にらみつける視線に気づいた翔太はそれを放っている凌牙に目を向ける。

「ベクター…いや、今は秋山翔太か…」

「ベクター…ああ、俺を乗っ取った奴の名前か…?」

「のっとった…は語弊があるがな。…まぁいい。お前についてはこの戦闘が終わった後だ!」

今はエクシーズ次元での戦いに集中すべきで、翔太のことは後回しにすべきだとル洋画は自分の中で結論付ける。

表面化したベクターを撃破したこと、そして何より凌牙の中に翔太を始末することへの迷いがあったことで、そういう結論となった。

「そうしてくれ…。俺も、俺自身について知っておいてほしいことがあるからな…」

「分かった。これで、ここの安全は確保できたな…」

凌牙はデュエルディスクで侑斗と通信を繋げる。

イレギュラーは発生したものの、作戦通りエクシーズ次元における融合次元の本拠地を見つけることができた。

ここからが第2フェイズとなる。

「凌牙君」

「侑斗、道は開けたぞ」

「うん、こっちも見えてる。これから、《ディメンジョン・ムーバー》を送信して、突入を行うよ。スタンダード次元にも、合図を送る」

違う次元同士の通信は非常に困難で、融合次元のデュエル戦士たちはデュエルディスクに内蔵されているとある装置のおかげでその通信が可能となっているうえに、いざとなれば融合次元へ帰還することができる。

素良がランサーズに寝返ったことで、彼のデュエルディスクを解析し、その装置を搭載したデュエルディスクを開発しようという動きがあるが、シンクロ次元の技術者の協力を得ても、そのデュエルディスクの再現が現在もできない状態だ。

唯一可能なのは大昔にはやったポケベルレベルのメール通信だ。

スタンダード次元で侑斗がシンクロ次元に潜伏していたヒイロと通信を行った手段がそれだ。

ただし、ポケベルレベルというだけあって長い文章を送ることができず、可能なのはシンプルで短い文章だけだ。

だが、座標さえ分かればそれを入力するだけでいい。

既に送った座標に向けて送る準備をするように、出発前に零児と段取りをしている。

「了解だ。それから、翔太のことだが…」

「翔太君が…どうしたの」

「やはり、奴はベクターの魂を宿していた。それが一時的に表面化したが、今は翔太が主導権を取り戻している」

「そうか…。そうなる可能性はあると考えてはいたけど…」

凌牙はそのベクターとデュエルをしたことを明言することを避けた。

もし言ってしまったら、侑斗に要らぬ心配をかけてしまうため、それよりはアカデミアとの戦いの指揮に集中してもらいたかった。

指揮官が少しでも動揺や迷いを見せたら兵士たちへの士気に影響を与えるという前世の教訓が生きていた。

問題は翔太をどうするかだ。

「俺はいくぞ…《ディメンジョン・ムーバー》を使うか、こいつを使うかだ…」

「キュイ?」

「お前だろ?伊織をここへ飛ばしたのはよぉ…」

ビャッコを抱えた翔太はじろりと彼を見る。

(それにしても、本当にビャッコちゃんって不思議だな…。翔太君の暴走を止めちゃったし…)

ビャッコが放った光によって、翔太の体から生えていたクリスタルが消滅し、彼の暴走も止まった。

おまけに、どうやったのかは知らないが伊織をここまで転移させたことも精霊としては規格外の力と言って過言ではない。

翔太も伊織と同じように、ビャッコが普通の精霊とは思えず、眠っている中で出会った純次との接点を考えずにはいられなかった。

(確かに、こいつが俺に何かしたおかげで、俺は正気に戻ったうえに俺の中にいるもう1人の魂、石倉純次をはっきり意識することができた。何者なんだ…こいつは?)

だが、《ディメンジョン・ムーバー》を使うよりはビャッコの力を使って飛んだ方が確実だと思えた。

ビャッコの負担を考えると、何人も連続で転移させるのは難しいうえに、ビャッコも一緒に転移する必要がある。

「ビャッコ、俺ら3人を転移させろ。そこの座標を送れば、確実だろう?」

「お前…本気でこのまま進むつもりか?」

「当然だ。道を開いてはい終わりだと?冗談じゃねえよ」

「翔太君…どうしたの?」

「ああ…別にどうもしてねえだろ?」

「焦ってる…?」

「はぁ!?」

思わず大声を出してしまったが、伊織は心配そうに翔太を見つめるままだ。

そんな声を出してしまった時点ですでに図星だ。

否定したい翔太だが、伊織たちの視線にもうごまかし切れないことを悟る。

「…ああ、ああそうだよ!今の俺は俺の中にいるベクターってクソ野郎を抑えるのに必死だ!仮に奪われて暴走するなら、敵陣の中でなった方がましだろう!?」

純次とベクター、2人の魂を感じたことで、翔太は本来存在しない存在だということを知ってしまった。

おまけにベクターは自分にとってはヘドが出るくらいの屑な男だ。

もしかしたらそうかもしれないと、薄々と感じていたが、それを受け止める覚悟ができていなかった。

しかも、ベクターにまたいつ体を乗っ取られるか分からない状態だ。

その事実が重くのしかかり、喚き散らしたくもなる。

「さあ、ビャッコ!連れていけ!奴らの基地に…」

「ふざけんな!!」

翔太の顎に凌牙の拳が叩き込まれ、その一発でめまいを覚えた翔太はうつぶせに倒れてしまう。

「嘘…」

「キュイー…」

「翔太さんが、一発でダウンしちゃいましたね…」

「俺の仲間の一人がプロボクサーをやってるのさ。そいつからジャブを軽く教わっただけだ。お前は翔太とそのキツネを連れて戻ってろ」

「え…?でも、転移するにはビャッコちゃんがいないと…」

「俺には…問題ねえよ」

そうつぶやくと、凌牙の体をカオスの光が包み込んでいく。

そして、伊織の目の前でバリアンの姿へと変化した。

「変身…!?もしかして、精霊…?」

「精霊じゃねえ、バリアンだ。俺のことは今度説明してやる。いいか?スペード校に戻したら、独房に入れておけ。こいつは頭を冷やす必要がある」

そう言い残した凌牙は宙に浮かび、紫色の光の球体に包まれていく。

そして、上空の裂け目めがけて飛んでいってしまった。

「精霊じゃないって言われても…精霊みたいに思えちゃう…」

「伊織さん、急いで翔太さんを連れて戻りましょう。伊織さんの回復のためにも…」

「仕方…ないよね?ビャッコちゃん、お願い!」

「キュキュ!」

ビャッコはその場で車に変身し、伊織は翔太を後部座席に乗せた後で助手席側に乗る。

ビャッコが変身した車は自動的に発進し、スペード校を目指した。

 

(秋山翔太…奴もまた、あの戦いで生まれてしまった存在…)

次元のはざまを飛びながら、凌牙は翔太のことを考える。

自分の中にベクターのような最悪な存在がいて、そんな存在に体を奪われる可能性をはらんでいるとしたら、きっと凌牙も正気ではいられないかもしれない。

過去に、自分の正体が当時は人類の敵であるバリアンかもしれないと思った時はとても苦悩したのを今でも覚えている。

そして、妹のために、前世で自分のせいで犠牲となり、バリアン世界で転生してしまった人々を守るために、仲間である侑斗たちに一度は背を向けてしまった。

(あの選択が間違いだったとは思っちゃいねえ…。だが、俺一人で抱え込んでしまったせいで、多くを犠牲にしてしまったのは事実だ。あんな後悔を…あいつにさせるわけにはいかねえ…)

自嘲するように、凌牙の口角が軽く上がる。

憎きベクターから生まれた翔太はベクターではないというのは頭では分かっているが、やはり心の中では割り切れないものがある。

おまけに、翔太の体は元々自分たちの運命をゆがめたドン・サウザンドが生み出したスペアの肉体。

それだけで憎む要素があるというのに、憎み切れない自分がいる。

だから、侑斗に自分とベクターがデュエルをしたと伝えることができなかったのだろう。

次第に、凌牙の目の前にアカデミアの基地が見えてくる。

(考えるのはあとだ。今は…それよりも、アカデミアを叩く!奴への対処はその後だ)

 

「権現坂!!」

バンと体育館のドアが吹き飛び、遊矢と柚子を乗せたマシンレッドクラウンが飛び込む。

体育館中央にあるデュエルリングには既にエドがいつでもデュエルができるように準備を整えていた。

だが、エドと数人のデュエル戦士がいるだけで、捕まっているはずの権現坂の姿が見えない。

「やぁ、父親があの男だから逃げ出したのかと思ったが、本当に来てくれるとは思わなかったよ。榊遊矢」

「エド・フェニックス…!」

「さあ、お前を倒し、捕えれば…榊遊勝は僕の前に姿を見せるだろう。そして…」

エドのデュエルディスクから発射されたデュエルアンカーが遊矢のデュエルディスクを固定し、互いに一定距離以上離れることができなくする。

「そして奴を倒すことで、僕は真のデュエル戦士であることを証明できる…!3年前の僕を完全に殺すことができる」

「3年前…それに、遊勝さんって…」

「エド!?父さんを知っているのか!?父さんはどこにいる!?権現坂は!!」

「うるさいな…質問は1つずつが普通だろう。君の父さんはこのエクシーズ次元にいた。今は融合次元のどこかにいるかもしれないな…。そして、君の仲間はあそこにいる」

エドが天井に指をさし、遊矢と柚子の視線がそちらに向かう。

天井には両手足を拘束された状態で椅子に座らされている権現坂の姿が見えた。

「権現坂!!お前…!!」

「大丈夫だ。今のところは生きている。けれど…これからのデュエルの状況によっては…彼の命は保証しかねる」

「そんな…どうして!?融合次元はどうしてそんなひどいことができるの!?」

「ひどい…?君たちのようなたかが遊びでデュエルをする君たちにはわからないだろうな。すべての次元を1つにするという崇高な目的のために行う僕たちのデュエルを…」

「崇高な目的…」

遊矢は舞網チャンピオンシップで素良と戦っていたときに、素良が言っていた言葉を思い出す。

彼は融合召喚のことを言っていたが、その内容は先ほどエドが言っていたのとニュアンスが一致している。

端的に言えば、その目的のためならばどんな犠牲も許されるという意味には遊矢に聞こえる。

「あの男は忌むべき男だよ…。3年前に、ハートランドに来て間もない僕にエンタメデュエルなんてものを見せて…おまけにデュエルは人を笑顔にするためにやるものだ、なんてきれいごとを言った」

「父さんが…」

3年前のストロング石島のデュエル直前に失踪し、逃げたチャンピオンの息子として遊矢は周囲の人々から馬鹿にされ続けてきた。

遊矢は必死に父親は逃げたわけでもないし臆病者でもないと自分に言い聞かせ続けてきた。

だが、エドの言葉を聞いて、どうして別次元に来てしまったのかはわからないが、自らの信条に従うようにアカデミアにもそのデュエルを伝えようとしていたことが分かった。

「おまけに僕を倒して、アカデミアの正義を一瞬でも疑問に思わせた。そして、俺にこのカードを渡してきた!」

投げつけるようにエドが遊矢に見せたのは破れた《スマイル・ワールド》のカードだ。

おそらく、これはエドが自分自身の手で破ったのだろう。

「そんな男を僕は許せない!今度こそ奴を倒し、アカデミアの正義を…」

「良かった…」

「何!?」

「遊矢…」

「父さんは…臆病者なんかじゃなかった…。俺の知らないところで、アカデミアを止めるために戦ってくれていたんだ…」

結果として、つらい3年間を送ることになったうえに、結局アカデミアがスタンダード次元を攻撃し、ランサーズ結成に至っている。

そして、遊矢自身も戦いに巻き込まれることになった。

だが、臆病者ではないと信じた自分は間違っていなかった、自分が信じていた父親は本物だったと確信できたことがうれしかった。

「エド・フェニックス!なら、今度は俺が、俺自身のエンタメデュエルでお前に伝える!デュエルは戦争の道具じゃないってことを!」

「何をふざけたことを…この状況が分かっているのか!?」

権現坂が人質に取られ、周囲にはデュエル戦士たちがいる。

やろうと思えば、デュエル戦士たちと共に集団戦に持ち込み、数の暴力で打ち負かしたうえで柚子を捕獲することだってできる。

だが、遊矢の視線はしっかりとエド1人に向けられている。

「その眼が気に入らないんだ…!お前たちは手を出すな!この男は…この男だけは僕1人で倒す!このデュエルが終わるまで、奴にも柊柚子にも手を出すことは総司令である僕が許さない!」

デュエルの準備をしようとしていたデュエル戦士たちはエドの命令により動きを止め、その場で静観の態度をとる。

「アクションフィールドは好きにしろ。僕は榊遊勝もアクションデュエルも認めない。フィールドのアクションカードもすべてくれてやる」

「分かった…。でも、使いたくなったら好きにしてくれ。アクションカードを手にするときはどんなカードが出るかわからない。そして、求めているカードを手にしたらうれしくなる。きっと、面白いぞ!」

目をキラキラさせ、アクションデュエルの楽しさを口にする遊矢にエドは聞く耳を持たない。

遊矢はランダムでアクションフィールドを選択する。

「フィールド魔法発動!《マジカル・ブロードウェイ》!」

皮肉なことに、遊勝が得意としていたフィールドが出現し、体育館内が夜のハリウッドのような華やかな街並みに包まれる。

その光景に3年前のことを思い出したのか、エドは苦い表情を浮かべる。

(あの男が得意としているフィールド…僕の…アカデミアの正義を一度は打ち負かした…)

(父さん…俺、やるよ。彼のためにも、権現坂や柚子のためにも…そして、俺自身のためにも…)

シンクロ次元での戦いで、守るべきもののためには、時には非常な選択をしなければならない現実を知り、その中でデュエルチェイサー227を、シンジを倒し、地下送りにしてしまった。

すべては柚子たちを守るため、そしてジャックを倒してシンクロ次元の狂った競争社会を否定するためだ。

だが、その狂った競争社会で勝者となり、そのうえでその社会を否定してデュエルの楽しさを示すというのは大きな矛盾がある。

だが、大きすぎる悪ほど歪んだ常識として肯定され、その常識の範囲内で正当な手段で覆すことができないのも事実だ。

覚悟を決めて、戦い続け、ジャックやセルゲイを倒し、狂った競争社会も変化を生じ始めた。

しかし、デュエルの楽しさを示すことができず、戦争の手段として使うことしかできなかった。

遊矢はデュエルが人を笑顔にする力を持っていることを自分に証明したかった。

「行くぞ!戦いの殿堂に集いしデュエリスト達が、モンスターと共に地を蹴り、宙を舞い、フィールド内を駆け巡る!見よ、これぞデュエルの最終進化形、アクショーーン、デュエル!!」

「その遊びのような陽気な物言い、うっとうしいことこの上ないな!!」

 

遊矢

手札5

ライフ4000

 

エド

手札5

ライフ4000

 

「く、うう…」

一度は沈んだ権現坂の意識が徐々に戻っていき、視界が開けていく。

ぼやけた視界が徐々に戻っていくのを感じる。

「ここは…つりさげられているというのか…?」

両手足は動かすことができず、仮に拘束を外して椅子から立ったとしても、ここは天井からつりさげられている状態であるため、むしろそれをやった方が危険と言える。

下を見ると、そこにはデュエルアンカーで繋がっている遊矢とエドの姿が見えた。

「遊矢、柚子…」

分かっていたとはいえ、やはり彼は来ていた。

仲間である自分を救うために。

 

「俺の先攻。俺はスケール3の《EMパートナーガ》とスケール6の《EMリザードロー》でペンデュラムスケールをセッティング!」

さっそく2つの光の柱が生まれ、遊矢のペンデュラム召喚のチャンスを与える。

「そして、《リザードロー》の効果。《リザードロー》以外のEMがもう片方のペンデュラムゾーンの置かれている場合、このカードを破壊することで、デッキからカードを1枚ドローできる。そして、空いているペンデュラムゾーンにスケール6の《EMオッドアイズ・シンクロン》をセッティング。これで俺はレベル4または5のモンスターを同時に召喚可能!揺れろ、魂のペンデュラム!天空に描け、光のアーク!ペンデュラム召喚!手札から《EMペンデュラム・マジシャン》、《EMセカンドンキー》!」

 

EMペンデュラム・マジシャン レベル4 攻撃1500

EMセカンドンキー レベル4 守備2000

 

「《ペンデュラム・マジシャン》と《セカンドンキー》の効果!まずは《セカンドンキー》の効果。このカードの召喚・特殊召喚に成功したとき、そして俺のペンデュラムゾーンにカードが2枚存在する場合、デッキから《セカンドンキー》以外のEM1枚を手札に加える。俺は《ドクロバット・ジョーカー》を手札に加える。そして、《ペンデュラム・マジシャン》の効果。このカードの特殊召喚に成功したとき、俺のフィールドのカードを2枚まで破壊し、破壊したカードの数だけデッキから《ペンデュラム・マジシャン》以外のEMを手札に加える。俺は《オッドアイズ・シンクロン》と《パートナーガ》を破壊し、デッキから《スライハント・マジシャン》と《スマイル・マジシャン》を手札に加える」

「《スマイル・マジシャン》だと…!?」

そのカードを見たエドは遊勝とのデュエルを思い出す。

《スマイル・ワールド》と共に使ってきたカードで、このカードもまたエドにとっては忌むべきカードだ。

「そして、スケール1の《スマイル・マジシャン》とスケール8の《ドクロバット・ジョーカー》でセッティング。俺はカードを1枚伏せ、ターンエンド」

 

遊矢

手札5→2(うち1枚《EMスライハント・マジシャン》)

ライフ4000

場 EMペンデュラム・マジシャン レベル4 攻撃1500

  EMセカンドンキー レベル4 守備2000

  伏せカード1

  EMスマイル・マジシャン(青) ペンデュラムスケール1

  EMドクロバット・ジョーカー(赤) ペンデュラムスケール8

 

エド

手札5

ライフ4000

場 なし

 

「僕のターン、ドロー!」

 

エド

手札5→6

 

「僕はフィールド魔法《ダーク・シティ2-バッド・ナイト》永続魔法扱いで発動する!」

アクションデュエルを否定するエドだが、将来そのルールで戦わなければならなくなる可能性を踏まえ、ルールだけは熟知していた。

発動と共に、《マジカル・ブロードウェイ》の一部の建物が崩れ、ペンキの落書きが書かれた廃ビルが地中から姿を現す。

「《バッド・ナイト》のエフェクト。1ターンに1度、デッキのD-HERO1体をセメタリーへ送る。僕は《ドリームガイ》をセメタリーへ送る。そして、手札から《D-HEROディバインガイ》を召喚」

背中に円盤状の刃を背負っている、黒と茶色のスニーキングスーツ姿の戦士が現れる。

 

D-HEROディバインガイ レベル4 攻撃1600

 

「バトル!《ディバインガイ》で《ペンデュラム・マジシャン》を攻撃!そして、《ディバインガイ》のエフェクト発動!このカードの攻撃宣言時、相手フィールドに存在する魔法カード1枚を破壊し、相手に500ダメージを与える!」

《D-HEROディバインガイ》が背中の刃を遊矢のフィールドに投げつける。

刃は《EMスマイル・マジシャン》を真っ二つに切り裂き、遊矢を斬りつける。

アクションカードを探しに行きたいところだったが、飛んでくる刃への守りを考えるとそうしている場合ではない。

「くっ…!」

左腕で守ったおかげで、衝撃を感じるだけで済んだものの、もし生身の腕で守っていたら斬られて出血していたかもしれない。

 

遊矢

ライフ4000→3500

 

「遊矢…!な、ぐああああああ!!」

遊矢がダメージを受けると同時に、権現坂の体に電気が流れる。

権現坂の悲鳴が聞こえた遊矢と柚子は思わず上を見上げる。

「権現坂!」

「君がダメージを受けるたびに、彼の体に電撃が流れるようになっている。一度に受けるダメージが大きければ大きいほど、その威力は増す。2000以上のダメージを一度に受けたら、死ぬだろうね」

「く…エド…!!」

「《パートナーガ》のエフェクトは自分フィールドのモンスター1体の攻撃力を自分フィールドのEMの数×300アップさせる効果がある。そして、《スマイル・マジシャン》のペンデュラムエフェクトは元々の攻撃力よりも高い攻撃力を持つ自分のモンスターが破壊されたとき、ペンデュラムゾーンから特殊召喚できる効果を持つ。ペンデュラム召喚と《スマイル・マジシャン》のペンデュラム効果は封じさせてもらう」

遊矢の怒りをよそに、エドは淡々と《D-HEROディバインガイ》がこの攻撃で見せた有用性を説明する。

レベル8の《EMスマイル・マジシャン》をペンデュラム召喚するには、スケール9以上のペンデュラムモンスターが必要となる。

そのカードが遊矢のデッキになく、ペンデュラムスケールを操作するカードも少ないため、エクストラデッキから特殊召喚しづらい状態だ。

《D-HEROディバインガイ》で2つの展開手段を破壊した。

そして、右手の拳で《EMペンデュラム・マジシャン》を貫き、破壊する。

 

遊矢

ライフ3500→3400

 

「そして、ダメージを受けたことで…」

「うおおお!!」

また、権現坂の体を電気ショックが遅い、弱った権現坂の体を痛めつける。

「権現坂ぁ!!」

「そして、僕は手札の《D-HEROフュージョンガイ》のエフェクト発動!僕のバトルフェイズ中、僕のフィールドに存在するモンスターがD-HERO1体のみの場合、手札のこのカードとそのモンスターを素材にHERO融合モンスターを融合召喚する!」

《融合》の渦が描かれたスーツ姿で、顔にDとFが重ねて大きく書かれた白い仮面をつけた男と《D-HEROディバインガイ》が上空に出現した《融合》の渦の中へ消えていく。

「渦の中に溶け込む英雄よ、切り裂く刃を背負いし英雄よ、今一つとなりて死神の刃となれ!融合召喚!カモン!《D-HEROデッドリーガイ》!」

ダークブルーのマントで全身を隠し、両肩や仮面に鋭い悪魔の角の飾りをつけた闇のHEROが現れる。

 

D-HEROデッドリーガイ レベル6 攻撃2000

 

「《デッドリーガイ》のエフェクト。手札1枚をセメタリーへ捨て、手札・デッキからD-HERO1体をセメタリーへ送ることで、ターン終了時まで僕のフィールドのD-HEROの攻撃力をセメタリーのD-HEROの数×200アップさせる」

《D-HEROデッドリーガイ》の体が浅黒いオーラに包まれていて、それが彼の右拳に収束されていく。

 

手札から墓地へ送られたカード

・D-HEROディスクガイ

 

デッキから墓地へ送られたカード

・D-HEROディアボリックガイ

 

D-HEROデッドリーガイ レベル6 攻撃2000→3000

 

「《デッドリーガイ》で《セカンドンキー》を攻撃!デッドエンド・ナックル!」

《D-HEROデッドリーガイ》がその拳で《EMセカンドンキー》の胴体を貫き、消滅させる。

これで遊矢のフィールドからモンスターがいなくなってしまった。

「僕かカードを1枚伏せ、ターンエンド。《デッドリーガイ》のエフェクトは消える」

 

遊矢

手札2(うち1枚《EMスライハント・マジシャン》)

ライフ3400

場 伏せカード1

  EMドクロバット・ジョーカー(赤) ペンデュラムスケール8

 

エド

手札6→1

ライフ4000

場 D-HEROデッドリーガイ レベル6 攻撃3000→2000

  伏せカード1

  ダーク・シティ2-バッドナイト(永続魔法扱い)

 

「くっ…」

「そうだ、その顔だよ。この怒りに満ちた顔で、どうやって見せるというんだ?デュエルで人を笑顔にするというのを…」

現に、それを口にした遊矢自身の顔から笑顔が消え、怒りを見せている。

「そもそも、親父にできなかったことを…その親父に劣るお前ができるわけがないだろう…?」

「…俺の、ターン!!」

エドの言葉を振り払うように、遊矢はカードをドローする。

「遊矢…」

自分のデュエルを否定されつつある中、それでも権現坂を救うためには戦わなければならない。

遊矢の苦悩を感じた柚子は何も言葉をかけることができない。

 

遊矢

手札2→3

 

「俺は…スケール2の《ドラミング・コング》をセッティング…。これで俺はレベル3から7までのモンスターを同時に召喚可能!」

幸いというべきか、ドローした《EMドラミング・コング》のスケールは2で、再びペンデュラム召喚が可能な状態となる。

「揺れろ、魂のペンデュラム!天空に描け、光のアーク!ペンデュラム召喚!現れろ、俺のモンスターたち!《EMペンデュラム・マジシャン》、《EMリザードロー》、《EMパートナーガ》、《EMスライハント・マジシャン》!」

赤と黒の道化師の服と帽子、そして目元がT字の穴が開いている白マスクを身に着けたモンスターが青い水晶が飾られた杖を天にかざす。

すると、一気に3体のEMが上空に出現した青いゲートから飛び出してきた。

 

EMスライハント・マジシャン レベル7 攻撃2500

EMペンデュラム・マジシャン レベル4 攻撃1500

EMリザードロー レベル3 攻撃1200

EMパートナーガ レベル5 守備2100

 

「《ペンデュラム・マジシャン》と《パートナーガ》の効果発動!まずは《パートナーガ》の効果。《スライハント・マジシャン》の攻撃力を俺のフィールドのEMの数×300アップさせる!」

《EMパートナーガ》が体を伸ばしていき、その体を3体のEM達がつかんでいく。

そして、4体分の力が《EMスライハント・マジシャン》に集約していく。

 

EMスライハント・マジシャン レベル7 攻撃2500→3700

 

「そして、《ペンデュラム・マジシャン》の効果。《リザードロー》と《パートナーガ》を破壊し、デッキから《EMオッドアイズ・ディゾルヴァー》と《オッドアイズ・ユニコーン》を手札に加える。そして、手札から魔法カード《ペンデュラム・ホルト》を発動。俺のエクストラデッキに表側表示で存在するペンデュラムモンスターが3体以上存在するとき、デッキからカードを2枚ドローする」

手札に2枚のペンデュラムモンスターをサーチしたうえに、手札補充まで行うことでいまだに遊矢の手札は4枚。

手札を確認した後で、遊矢はエドの《ダーク・シティ2-バッド・ナイト》を見る。

(《スライハント・マジシャン》は1ターンに1度、手札1枚を捨てることで、フィールド上に表側表示で存在するカード1枚を破壊できる効果がある。その効果で《バッド・ナイト》を破壊すれば、これ以上D-HEROを墓地に落とさないで済む…けど…)

遊矢を迷わせるのはエドの伏せカードだ。

仮に《天罰》などのカウンター罠で、《EMスライハント・マジシャン》が破壊されてしまった場合、フィールドには《ペンデュラム・マジシャン》だけになってしまう。

遊矢にとって、このタイミングでそのカードを発動されたら致命的だ。

「バトルだ!《スライハント・マジシャン》で《デッドリーガイ》を攻撃!」

「《バッド・ナイト》のエフェクト。僕のD-HEROが自分よりも攻撃力の上回るモンスターと戦闘を行うとき、ダメージステップ終了時まで攻撃力を1000アップする。

 

D-HEROデッドリーガイ レベル6 攻撃2000→3000

 

「でも、攻撃力は《スライハント・マジシャン》の方が上だ!更に、《ドラミング・コング》のペンデュラム効果発動!1ターンに1度、モンスター同士で戦闘が行われるとき、その自分のモンスターの攻撃力をターン終了時まで600アップさせる!エンタメ・マジック!」

《EMスライハント・マジシャン》の杖から放たれる黒い魔力の弾丸を受けた《D-HEROデッドリーガイ》が爆発・消滅する。

「ちっ…!」

 

EMスライハント・マジシャン レベル7 攻撃3700→4300

 

エド

ライフ4000→2700

 

「そして、《ペンデュラム・マジシャン》でダイレクトアタック!」

続けて《EMペンデュラム・マジシャン》が持っている振り子で振動を起こし、エドにダメージを与えようとする。

「僕は《ダーク・シティ2-バッド・ナイト》のエフェクト発動!僕のフィールドにモンスターが存在せず、セメタリーにD-HEROが5体以上存在する状態で直接攻撃を受けるとき、このカードをセメタリーへ送ることで、その攻撃を無効にする!」

「何!?《バッド・ナイト》にはそんな効果が…!」

エドの周囲を落書きのある壁が覆い、《EMペンデュラム・マジシャン》の攻撃を受け止める。

受け止めた後、壁が砕け、エドの背後に黒い大きな人影が現れる。

「あ、ああ…!」

「そして、手札・デッキ・セメタリーからあるモンスターを《幽獄の時計塔》の効果による特殊召喚扱いで特殊召喚できる…。カモン、時計塔に囚われし狂戦士、《D-HEROドレッドガイ》!」

ずしり、ずしりと足音を響かせ、エドの目の前に背後の男が移動する。

《マジカル・ブロードウェイ》の人工的な光がその姿を暴き出す。

鉄仮面で顔を隠し、ちぎれた拘束具を両手足につけた褐色の巨漢が遊矢の前で叫び声を上げる。

 

D-HEROドレッドガイ レベル8 攻撃?

 

ダーク・シティ2-バッド・ナイト

フィールド魔法カード

このカード名の(2)(3)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか発動できない。

(1):1ターンに1度、自分のデッキに存在する「D-HERO」モンスター1体を対象に発動できる。そのカードを墓地へ送る。

(2):自分フィールドの「D-HERO」が戦闘を行うとき、戦闘を行う相手モンスターの攻撃力が戦闘を行う自分のモンスターよりも上回っている場合に発動できる。戦闘を行う自分のモンスターの攻撃力がダメージステップ終了時まで1000アップする。

(3):自分フィールドにモンスターが存在せず、自分の墓地に「D-HERO」が5体以上存在する状態で、相手の直接攻撃宣言時に発動できる。このカードを墓地へ送ることで、その攻撃を無効にする。その後、自分の手札・デッキ・墓地から「D-HEROドレッドガイ」1体を「幽獄の時計塔」の効果による特殊召喚扱いで自分フィールドに特殊召喚する。

 

「《ドレッドガイ》のエフェクト…。《幽獄の時計塔》のエフェクトで特殊召喚された場合、僕のフィールドのD-HERO以外のモンスターをすべて破壊し、セメタリーからD-HERO2体を特殊召喚する。僕は《デッドリーガイ》と《ディバインガイ》を特殊召喚する」

 

D-HEROデッドリーガイ レベル6 攻撃2000

D-HEROディバインガイ レベル4 攻撃1600

 

「そして、《ドレッドガイ》の攻撃力と守備力は僕のフィールドのD-HEROの攻撃力の合計となる」

 

D-HEROドレッドガイ レベル8 攻撃0→3600

 

「更に、《ドレッドガイ》が特殊召喚されたターン、D-HEROは破壊されず、僕が受ける戦闘ダメージも0となる…」

「くっ…!」

《D-HEROデッドリーガイ》が再び現れたうえに、それ以上の力を誇る《D-HEROドレッドガイ》が現れてしまった。

(《ドレッドガイ》も《デッドリーガイ》も、俺とのデュエルでは召喚されなかったモンスター…。エド・フェニックス、D-HERO、底が全く見えん…!)

「俺はカードを1枚伏せ、ターンエンド!」

 

遊矢

手札3(うち2枚《EMオッドアイズ・ディゾルヴァー》、《EMオッドアイズ・ユニコーン》)

ライフ3400

場 EMスライハント・マジシャン レベル7 攻撃4300→2500

  EMペンデュラム・マジシャン レベル4 攻撃1500

  伏せカード2

  EMドラミング・コング(青) ペンデュラムスケール2

  EMドクロバット・ジョーカー(赤) ペンデュラムスケール8

 

エド

手札1

ライフ2700

場 D-HEROデッドリーガイ レベル6 攻撃2000

  D-HEROドレッドガイ レベル8 攻撃3600

  D-HEROディバインガイ レベル4 攻撃1600

  伏せカード1

 

ライフは上回っているが、状況はほぼ互角。

《D-HEROドレッドガイ》の無敵のバリアが消えた今なら、遊矢はD-HERO達を破壊することができる。

だが、あくまでそれは今は、だ。

「僕のターン、ドロー」

 

エド

手札1→2

 

「僕は手札から魔法カード《死者蘇生》を発動。セメタリーから《ディスクガイ》を特殊召喚する」

腕や背中にディスクを装着している灰色の戦士が現れる。

 

D-HEROディスクガイ レベル1 守備300

D-HEROドレッドガイ レベル8 攻撃3600→3900

 

「《ディスクガイ》のエフェクト!このカードがセメタリーから特殊召喚に成功したとき、1度だけデッキからカードを2枚ドローできる。そして、手札から魔法カード《融合》を発動」

「フィールドには4体のD-HERO…遊矢、気を付けろ!これから召喚されるモンスターは…危険だぁ!!」

権現坂は傷ついた体に鞭を打ち、警告するために叫ぶ。

「権現坂…遊矢!!気を付けて!!」

「何…!?」

「僕が融合素材とするのは《ディスクガイ》と《ディバインガイ》。円盤を備えし英雄よ、切り裂く刃を背負いし英雄よ、今一つとなりて暗黒の未来に君臨せよ!融合召喚!カモン!《D-HEROディストピアガイ》!」

権現坂を倒した失楽園の英雄が今度はランサーズの道化師を葬るために《マジカル・ブロードウェイ》に降臨する。

 

D-HEROディストピアガイ レベル8 攻撃2800

D-HEROドレッドガイ レベル8 攻撃3900→4800

 

「《ディストピアガイ》…これが…」

「《ディストピアガイ》、《デッドリーガイ》、《ドレッドガイ》…。貴様は彼らによって無様に敗れ去る!《ディストピアガイ》のエフェクト発動!このカードの特殊召喚に成功したとき、セメタリーに存在するレベル4以下のD-HERO1体の攻撃力分のダメージを相手に与える!僕は《ディバインガイ》を対象にする。スクイズ・パーム!!」

《D-HEROディストピアガイ》の手から発射される黒いビームが遊矢を撃ち抜く。

「うわあああ…ぐっ!!」

吹き飛ばされた遊矢はビルに背中をぶつけた後で、前のめりに倒れる。

 

遊矢

ライフ3400→1800

 

「そして、そのダメージが君の仲間にも及ぶ」

「ぐあああああ!!!」

先ほどまでとは比べ物にならないほどの激しい電撃が権現坂を襲い、権現坂の嗅覚を焦げた匂いが刺激する。

倒れた遊矢の視線はそんな権現坂に向いていた。

「くそ…権現坂ぁ…!」

「彼を気にしている場合か?僕は《デッドリーガイ》のエフェクト発動!手札1枚と、デッキのD-HERO1枚を墓地へ送る。そして、墓地のD-HEROの数×200、僕のフィールドのD-HERO達の攻撃力をアップさせる」

 

手札から墓地へ送られたカード

・D-HEROダイヤモンドガイ

 

デッキから墓地へ送られたカード

・D-HEROダイハードガイ

 

D-HEROディストピアガイ レベル8 攻撃2800→4200

D-HEROドレッドガイ レベル8 攻撃4800→6200

D-HEROデッドリーガイ レベル6 攻撃2000→3400

 

「そんな…攻撃力6200と4200、3400…」

《D-HEROデッドリーガイ》の効果によって、遊矢のモンスターの攻撃力をはるかに上回るモンスターが3体も生まれてしまった。

当然、今の遊矢のライフでは、《ドレッドガイ》による《EMスライハント・マジシャン》の攻撃を受け止めきることができない。

それに、その攻撃で遊矢が受けるダメージは3700。

その分の電撃を受けてしまったら、権現坂の命にかかわる。

「《ディストピアガイ》のエフェクト発動。1ターンに1度、このカードの攻撃力が元々の攻撃力と異なるとき、フィールドのカード1枚を破壊し、攻撃力を元に戻す!」

「何!?」

「ノーブルジャスティス!」

Dのポーズを取った後で、《D-HEROディストピアガイ》の胸部からビームが発射され、遊矢の伏せカードの1枚を撃ち抜き、消滅させる。

 

D-HEROディストピアガイ レベル8 攻撃4200→2800

 

破壊された伏せカード

・EMピンチ・ヘルパー

 

現状では唯一の迎撃手段だったと思われる伏せカードを失った遊矢はアクションカードを手にするために走り出す。

デュエルアンカーで拘束されていて、探索できる範囲は制限されているものの、それでも何枚かは見つけることができるはずだ。

「バトル!《ドレッドガイ》で《スライハント・マジシャン》をプレデター・オブ・ドレッドノート!!」

《D-HEROドレッドガイ》が四つん這いになり、激しい雄たけびを上げる。

叫び声を受けた《EMスライハント・マジシャン》が消し飛び、更にはその衝撃波が遊矢を襲う。

「このダメージを受けたら、遊矢が…権現坂が…!!」

「これで終わりだ、榊遊矢!!」

「いいや、まだだ!!これは…アクションデュエルなんだ!!」

遊矢は道路に貼り付けるように置かれていたアクションカードを手にする。

「アクション魔法、《オフ》を発動!俺が受ける戦闘ダメージまたは効果ダメージを1度だけ0にする!」

衝撃波が遊矢の目の前でかき消され、遊矢へのダメージが0となる。

 

オフ

アクション魔法カード

(1);自分が受ける戦闘ダメージ、または効果ダメージを0にする。

 

「このタイミングで、そんなカードを…!」

「デュエルを始める前にも言っただろう?これがアクションデュエルの醍醐味だって…!」

遊矢もこのカードを手にするまで、敗北を覚悟しなければならなかった。

モンスターが破壊されてしまい、その状態では《奇跡》も《回避》も発動できない状態だ。

だから、確実にダメージを0にできるアクション魔法カードが必要だったが、どんぴしゃりとはまった。

だが、まだ《D-HEROディストピアガイ》と《D-HEROデッドリーガイ》の攻撃が残っていて、遊矢のフィールドに残っているモンスターは《EMペンデュラム・マジシャン》1体のみ。

《EMドラミング・コング》のペンデュラム効果は使っていないため、その効果を使ってダメージを軽減させることはできる。

「《デッドリーガイ》で《ペンデュラム・マジシャン》を攻撃!デッドエンド・ナックル!」

《D-HEROデッドリーガイ》の拳が《EMペンデュラム・マジシャン》に迫る。

「《ドラミング・コング》、《ペンデュラム・マジシャン》に力を!!」

《EMドラミング・コング》が体についているドラムを叩き、それに鼓舞された《EMペンデュラム・マジシャン》はバリアを張る。

しかし、それでも力を増した《D-HEROデッドリーガイ》の攻撃を防ぐことができず、バリア共々体を貫かれて消滅した。

「うわあああ!!」

「ぐおおおお!あああああ!!」

ダメージを受けた遊矢が路上を転げまわり、同時に権現坂も強い電撃に襲われる。

 

EMペンデュラム・マジシャン レベル4 攻撃1500→2100

 

遊矢

ライフ1800→500

 

「遊矢のライフがあと…500…」

次は《D-HEROディストピアガイ》が攻撃しようと遊矢に指をさす。

指には闇の破壊エネルギーが凝縮されていく。

「終わりだ…榊遊矢。お前も、お前の仲間も、柊柚子も…!?」

「《ペンデュラム・マジシャン》は破壊されていない!!」

立ち上がった遊矢の宣言と共に、ビルの屋上で破壊されたはずの《EMペンデュラム・マジシャン》が無事な姿を見せていた。

そして、その背後には《EMオッドアイズ・ディゾルヴァー》の姿があった。

「俺は手札の《EMオッドアイズ・ディゾルヴァー》の効果を発動したんだ!俺のペンデュラムモンスターが相手モンスターと戦闘を行うダメージステップ開始時に手札から特殊召喚し、そのモンスターを戦闘による破壊から守るんだ」

 

EMオッドアイズ・ディゾルヴァー レベル8 守備2600

 

「それがどうした!?《ディストピアガイ》の攻撃力は2800!《ペンデュラム・マジシャン》への攻撃が通れば、お前の負けだ!」

確かに、たとえ《EMオッドアイズ・ディゾルヴァー》の効果で《EMペンデュラム・マジシャン》を守ったとしても、これでは意味がない。

遊矢は再びアクションカードを手にするために動き出す。

デュエルアンカーで拘束しているエドだが、引っ張ったりして妨害しようとはしない。

彼が見ているのは再び攻撃対象となる《EMペンデュラム・マジシャン》だけだ。

「《ディストピアガイ》で《ペンデュラム・マジシャン》を攻撃!ディストピアブロー!!」

《D-HEROディストピアガイ》が拳を握りしめ、《EMペンデュラム・マジシャン》に向けて振るう。

拳と《EMペンデュラム・マジシャン》の振り子の波紋がぶつかり合うと同時に再び爆発が起こり、煙が遊矢と遊矢のモンスターを包み込む。

「これで、お前へのダメージは700。このデュエルは僕の…!?」

攻撃が通ったはずなのに、デュエル終了と共に外れるはずのデュエルアンカーが外れていない。

まだ何かしらの理由で彼とのデュエルが続いていることを意味していた。

煙が消えると、そこには《EMオッドアイズ・ディゾルヴァー》と遊矢の姿があった。

「アクション魔法…《奇跡》!フィールド上のモンスター1体はこの戦闘では破壊されず、俺への戦闘ダメージが半分になる!」

「何!?だが、お前のフィールドに《ペンデュラム・マジシャン》はいないぞ!」

「《ペンデュラム・マジシャン》じゃない。《ディストピアガイ》にかけたのさ!」

「ちぃ…!」

 

遊矢

ライフ500→150

 

遊矢のライフが残ったうえに、再び《EMペンデュラム・マジシャン》がエクストラデッキに戻った。

これで、遊矢は再びペンデュラム召喚で《EMペンデュラム・マジシャン》の効果を使うことができる。

「だが…これでまた、君の仲間が苦しむ…!」

権現坂を再び電撃が襲う。

先ほどと比べたら大したことはないが、弱っている権現坂には辛いことには変わりない。

しかし、権現坂は黙して耐えた。

(遊矢…!お前の、友のデュエルを信じる…このくらいはどうということもないわ…!)

「…僕のフィールドに、もう攻撃できるモンスターはいない。僕はこれでターンエンド…!」

 

遊矢

手札3→2(うち1枚《EMオッドアイズ・ユニコーン》)

ライフ150

場 EMオッドアイズ・ディゾルヴァー レベル8 守備2500

  伏せカード1

  EMドラミング・コング(青) ペンデュラムスケール2

  EMドクロバット・ジョーカー(赤) ペンデュラムスケール8

 

エド

手札2→0

ライフ2700

場 D-HEROデッドリーガイ レベル6 攻撃3400→2000

  D-HEROドレッドガイ レベル8 攻撃6200→4800

  D-HEROディストピアガイ レベル8 攻撃2800

  伏せカード1

 

(くそ…!まさかたった2枚のアクションカードが僕の勝利を遠ざけるとは…!)

遊勝とのデュエルもそうだった。

あと少しで勝利するところを、アクションカードの引きによって遠ざけられた。

その時の悔しさを思い出してしまう。

(悔しい…まさか、僕は悔しいと思ったのか??)

アカデミアでの昇格のためのデュエルでも、ここでの戦いの時も、そのような気持ちをあの時以来感じたことはなかった。

その感情すら、デュエル戦士となるために遠ざけていた。

「俺のターン、ドロー!!」

 

遊矢

手札2→3

 

「俺は手札から永続魔法《魂のペンデュラム》を発動!」

発動と同時に、遊矢の頭上にペンデュラムのソリッドビジョンが現れ、静かに揺れ動く。

「《魂のペンデュラム》は1ターンに1度、自分のペンデュラムゾーンのカード2枚のペンデュラムスケールを1つ変動させることができる。俺は《ドクロバット・ジョーカー》のペンデュラムスケールを1つ増やし、《ドラミング・コング》のスケールを1つ減らす!」

 

EMドラミング・コング(青) ペンデュラムスケール2→1

EMドクロバット・ジョーカー(赤) ペンデュラムスケール8→9

 

「これで俺はレベル2から8までのモンスターを同時に召喚可能!再び揺れろ、魂のペンデュラム!天空に描け、光のアーク!ペンデュラム召喚!《EMペンデュラム・マジシャン》、《EMリザードロー》、《EMパートナーガ》、そして、人々を笑顔にする奇術師、《EMスマイル・マジシャン》!」

 

EMペンデュラム・マジシャン レベル4 攻撃1500

EMリザードロー レベル3 攻撃1200

EMパートナーガ レベル5 攻撃500

EMスマイル・マジシャン レベル8 攻撃2500

 

「ちっ…忌々しい《スマイル・マジシャン》を再び…!」

「《魂のペンデュラム》は俺がペンデュラムモンスターをペンデュラム召喚するたびに、カウンターを1つ乗せる。そして、フィールド上のペンデュラムモンスターの攻撃力はそのカウンターの数×300アップする」

ペンデュラムの中央に1の数字が点灯し、遊矢のペンデュラムモンスターたちが青いオーラに包まれる。

 

魂のペンデュラム カウンター0→1

EMペンデュラム・マジシャン レベル4 攻撃1500→1800

EMリザードロー レベル3 攻撃1200→1500

EMパートナーガ レベル5 攻撃500→800

EMスマイル・マジシャン レベル8 攻撃2500→2800

EMオッドアイズ・ディゾルヴァー レベル8 攻撃2000→2300

 

「更に、《スマイル・マジシャン》の効果!このカードの召喚・特殊召喚に成功したとき、デッキからスマイルと名の付く魔法・罠カード1枚を手札に加えることができる。俺は《スマイル・ワールド》を手札に加える!」

「《スマイル・ワールド》だと…!やはり貴様もそれを…!」

榊遊勝がエンタメデュエルの象徴として持っていた《スマイル・ワールド》。

あのデュエルの後、デュエルの楽しさを教えたいと言ってこのカードを渡してきたのを覚えている。

だが、そのカードを手にするとアカデミアの正義を裏切ることになりかねず、彼はそれを半分に破った。

「エド…お前は本当は分かってるだろう?デュエルの楽しさを!」

「黙れ!アカデミアの…すべての次元を一つにし、理想郷とする崇高な理想!そのための…」

「違う!だったら、どうしてお前はその《スマイル・ワールド》のカードを捨てなかった!本当に否定したいなら、捨ててしまえばよかっただろう!」

「それは…」

実際、エドは何度もこの敗れた《スマイル・ワールド》を捨てようと思っていた。

だが、なぜか捨てることができず、今もこうして自分の手の中にある。

「それは父さんとのデュエルが楽しかったからだろう!あのデュエルをもっとやりたいからだろう!」

「黙れ!!黙れ黙れ黙れ!!お前も…お前までも僕を…アカデミアを否定するなぁ!」

「だったら、もう1度思い出させてやる!《パートナーガ》の効果発動!《スマイル・マジシャン》の攻撃力を1500アップさせる!」

 

EMスマイル・マジシャン レベル8 攻撃2800→4300

 

「更に、《ペンデュラム・マジシャン》の効果発動!《ドクロバット・ジョーカー》と《ドラミング・コング》を破壊し、デッキから《EMゴムゴムートン》と《EMユーゴーレム》を手札に加える!そして…俺は《スマイル・マジシャン》の効果発動!俺のフィールドに存在するモンスターがEM、魔術師ペンデュラムモンスター、オッドアイズのみで、このカードの攻撃力が元々の攻撃力よりも高い時、俺のフィールドの元々の攻撃力よりも高い攻撃力を持つモンスターの数だけデッキからカードをドローする!」

「何…!?」

今の遊矢のフィールドはEMで満たされており、おまけに全員ペンデュラムモンスターであることから《魂のペンデュラム》の効果で攻撃力が300アップしている。

「つまり…遊矢がドローするカードは…5枚!!」

「そうだ!この効果で俺はカードを5枚ドローする!」

遊矢は一気に5枚のカードをドローし、手札が10枚にまで増強される。

だが、これほどのドロー効果に対しては必ず制約が課せられる。

「ただし、この効果を発動したターン、俺はモンスターを特殊召喚できない。けれど、俺にはまだ通常召喚が残っている!俺は《パートナーガ》と《リザードロー》をリリースし、《スマイル・マジシャン》が手札に加えさせてくれたこのカードを召喚する!!運命の狭間で止まったペンデュラムが新次元で新たな時を刻む!アドバンス召喚!現れろ、二色の眼を持つ幻影の竜!《オッドアイズ・ファンタズマ・ドラゴン》!」

2体のモンスターがまるで幻だったかのように姿を消し、遊矢の真上のペンデュラムが大きく揺れ動く。

そして、そのペンデュラムが一瞬2つの分身すると、その間から虹色の光でできた翼を両腕に宿した白がかった体の《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》が現れる。

 

オッドアイズ・ファンタズマ・ドラゴン レベル8 攻撃3000→3300

 

「ペンデュラムモンスターをアドバンス召喚しただと!!」

これで、遊矢のフィールドに《D-HEROディストピアガイ》と《D-HEROデッドリーガイ》を倒すことのできるモンスターが出現した。

《D-HEROドレッドガイ》の攻撃力と守備力が自分フィールドのD-HEROの攻撃力の合計となる以上、そのモンスターがフィールドからいなくなった場合は攻撃力が0の只のモンスターになってしまう。

「そして、俺は《オッドアイズ・ディゾルヴァー》を攻撃表示に変更!」

 

EMオッドアイズ・ディゾルヴァー レベル8 守備2500→攻撃2300

 

「バトルだ!《スマイル・マジシャン》で《ディストピアガイ》を攻撃!スマイル・マジック!!」

《EMスマイル・マジシャン》が手から笑顔を模したエフェクトを《D-HEROディストピアガイ》に向けて発射する。

笑顔のエフェクトを受けた《D-HEROディストピアガイ》の仮面が砕け、その中に隠れた顔が一瞬笑むと、そのモンスターが消滅する。

「《ディストピアガイ》!うわああ!!」

 

エド

ライフ2700→1200

 

「僕が押されている!?罠発動!《奇跡の残照》!このターン、戦闘で破壊された僕のモンスター1体を特殊召喚する!僕は《ディストピアガイ》をセメタリーから再び呼び戻す!」

 

D-HEROディストピアガイ レベル8 守備2400

 

 

「そして、《ディストピアガイ》のエフェクト発動!墓地のレベル4以下のD-HERO1体の攻撃力分のダメージを与える!これで終わりだ!!」

《D-HEROディバインガイ》の力を得た《D-HEROディストピアガイ》が黒い弾丸を遊矢に向けて発射する。

ライフ150の遊矢にそれを凌ぐ力は残っていない。

「俺は手札の《EMレインゴート》の効果を発動!このカードを手札から墓地へ送り、俺がこの効果で受けるダメージを0にする!!」

「何!?まさかそのカード…!」

「《スマイル・マジシャン》の効果でドローしていたのさ!!」

水色のレインコートが弾丸から遊矢の身を守り、消滅する。

エドの起死回生のカウンター攻撃は《EMスマイル・マジシャン》によって封じられた。

「《オッドアイズ・ファンタズマ・ドラゴン》で《デッドリーガイ》を攻撃!!《オッドアイズ・ファンタズマ・ドラゴン》の効果発動!このカードが相手モンスターを攻撃するとき、ダメージ計算時のみそのモンスターの攻撃力を俺のエクストラデッキに表側表示で存在するペンデュラムモンスターの数×1000ダウンさせる!」

「今の遊矢のエクストラデッキにあるペンデュラムモンスターは4枚!ということは、《デッドリーガイ》の攻撃力は…」

 

D-HEROデッドリーガイ レベル6 攻撃2000→0

 

「攻撃力0!?」

「この攻撃が通れば、俺の勝ちだ!!ファンタスティック・フォース!!」

《オッドアイズ・ファンタズマ・ドラゴン》の口から放たれた灰色のブレスが《D-HEROデッドリーガイ》を焼き尽くそうとする。

「僕は…セメタリーの《ドリームガイ》のエフェクト発動!僕がD-HEROが戦闘を行うとき、このカードをセメタリーから特殊召喚できる!」

黒いとんがり帽子と魔術師の服を身に着け、星や月をモチーフとした飾りをいくつも付けている魔導士が現れると同時に、《D-HEROデッドリーガイ》が透明なバリアに包まれる。

 

D-HEROドリームガイ レベル1 守備0

 

「そして、そのモンスターは戦闘では破壊されず、僕が受けるダメージも0になる!」

ブレスとバリアがぶつかり合い、相殺されるものの、その中にいた《D-HEROデッドリーガイ》は無傷な姿を見せつける。

「《オッドアイズ・ディゾルヴァー》で《デッドリーガイ》を攻撃!」

《EMオッドアイズ・ディゾルヴァー》が杖から青い電撃を放ち、それを受けた《D-HEROデッドリーガイ》が消滅する。

「くっ…!!」

 

エド

ライフ1200→900

 

D-HEROドレッドガイ レベル8 攻撃4800→2800

 

「そして、メインフェイズ2に俺はスケール1の《EMゴムゴムートン》とスケール8の《EMオッドアイズ・ユニコーン》をセッティング。カードを2枚伏せて、ターンエンド!」

 

遊矢

手札3→6(うち2枚《EMユーゴーレム》、《スマイル・ワールド》)

ライフ150

場 EMオッドアイズ・ディゾルヴァー レベル8 攻撃2300

  EMスマイル・マジシャン レベル8 攻撃4300

  オッドアイズ・ファンタズマ・ドラゴン レベル8 攻撃3300

  EMペンデュラム・マジシャン レベル4 攻撃1800

  魂のペンデュラム(永続魔法)(カウンター1)

  伏せカード3

  EMゴムゴムートン(青) ペンデュラムスケール1

  EMオッドアイズ・ユニコーン(赤) ペンデュラムスケール8

 

エド

手札0

ライフ900

場 D-HEROドレッドガイ レベル8 攻撃2800

  D-HEROディストピアガイ レベル8 守備2400

  D-HEROドリームガイ レベル1 守備0

 

「これで、一気に勝負が分からなくなったな、エド!」

「黙れ!お前のライフは残り150。《オッドアイズ・ディゾルヴァー》か《ペンデュラム・マジシャン》を《ディストピアガイ》か《ドレッドガイ》で攻撃すれば、その程度のライフは…」

だが、遊矢の手札はまだ6枚あり、そのうちの4枚の正体は分からない。

それに、新たに伏せられた2枚のカードの存在も、エドの勝利を阻む可能性をはらんでいる。

それに、《EMスマイル・マジシャン》と《魂のペンデュラム》を放置していたら、遊矢は次のターン再び5枚カードをドローする可能性もある。

このような状況は遊勝とのデュエルの時以来、遭遇したこともない。

「エド、お前のターンだ。このドローがもしかしたら、デュエルを大きく動かすかもしれない。そう思うと、わくわくしてこないか?」

デュエルのダメージですっかりボロボロになっているはずの遊矢がエドに笑顔を見せる。

あれほど嫌っている笑顔にもかかわらず、エドはそれへの嫌悪感が薄まっているように感じられた。

(なんだ…?この胸をうならせるものは…僕は、わくわくしているのか…?)

あの時からずっと封印し続けてきた感情。

アカデミアの正義を信じ、封印し続けてきたそれが必死にエドの中から飛び出そうとしている。

「そうだ、立場とか生まれとか、それ以上にエド…お前が本当にやりたいデュエルをやってみろよ。お前の本当の気持ちに従えよ」

「僕の…本当の、気持ち…」

エドは自分のデッキトップに指をかけ、目を閉じる。

アカデミアに入る前のエドは孤児で、スラム街で生活をしていた。

その中で、捨てられたカードを集めてデッキを作り、年長者の子供からデュエルを学んだ。

何度も破れたものの、そのたびにカードを拾い、デッキを改造し、それでようやく勝利を収めたときは本当にうれしかった。

その時を思い出し、エドに口角がわずかに上がる。

「なんだと…?」

「あの司令が…笑った!?」

観戦していたデュエル戦士たちは初めて見るエドの純粋な笑顔に動揺する。

「いいだろう、榊遊矢!このドローで僕の勝利を呼び寄せて見せる!僕のターン、ドロー!!」

 

エド

手札0→1

 

「僕がドローしたカードは…魔法カード《D-アドベント》!僕のフィールドにD-HERO融合モンスターが存在するとき、僕のフィールドに存在するすべてのモンスターをデッキに戻す!《ドリームガイ》はフィールドを離れるとき、除外される」

エドのフィールドのモンスターがすべて消え去り、無防備な姿を遊矢の前にさらす。

「そして、その効果でフィールドから離れたカード+1枚、僕はデッキからカードをドローする」

 

D-アドベント

通常魔法カード

このカード名のカードの効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分フィールドの「D-HERO」融合モンスターが存在するときに発動できる。自分フィールドのモンスターをすべて持ち主のデッキに戻す。その後、この効果でデッキに戻したカードの数+1枚デッキからカードをドローする。このカードを発動したターン、自分は「D-HERO」「Dragoon D-END」以外のモンスターを召喚・特殊召喚できない。

 

「これで、エドの手札は4枚…」

「そして、手札から魔法カード《デステニー・ドロー》を発動。手札のD-HERO1体をセメタリーへ送り、デッキからカードを2枚ドローする」

 

エド

手札1→4

 

手札から墓地へ送られたカード

・D-HEROダイナマイトガイ

 

「そして、僕はセメタリーの《フュージョンガイ》のエフェクト発動!このカードがセメタリーに存在し、相手フィールドにのみモンスターが存在するとき、このカードと手札・セメタリーのモンスターを素材にD-HEROを融合召喚できる!」

「何!?《D-アドベント》でフィールドからモンスターを消したのはそのために…!?」

「僕が融合素材とするのは《デッドリーガイ》と《フュージョンガイ》!死神の刃を持つ英雄よ、渦の中に溶け込む英雄よ、今1つになりて黄昏の理想郷に君臨せよ!融合召喚!カモン、《D-HEROダスクユートピアガイ》!」

これまでのD-HEROとは異なり、黄金の鎧を身にまとい、羽根を模した飾りを肩や左腕につけている英雄がフィールドに現れる。

 

D-HEROダスクユートピアガイ レベル10 攻撃3000

 

D-HEROフュージョンガイ

レベル1 攻撃0 守備0 効果 闇属性 戦士族

このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか発動できず、(2)の効果はデュエル中1度しか発動できない。

(1):自分バトルフェイズ中、自分フィールドに存在するモンスターが「D-HERO」モンスター1体のみの場合、手札から発動できる。このカードと自分フィールドのそのモンスターを素材に「HERO」融合モンスター1体を融合召喚する。この効果を発動したターン、自分は「HERO」融合モンスター以外を特殊召喚できない。

(2):このカードが墓地に存在し、自分フィールドにモンスターが存在せず、相手フィールドにモンスターが存在する場合に発動できる。手札・墓地から「D-HERO」融合モンスターカードによって決められた、このカードを含む融合素材モンスターを除外し、その融合モンスター1体をEXデッキから特殊召喚する。この効果を発動したターン、自分は「HERO」モンスター以外を召喚・特殊召喚できない。

 

「《ダスクユートピアガイ》のエフェクト発動!このカードの融合召喚に成功したとき、手札・フィールドのモンスターを素材に融合召喚できる。僕は手札の《ドリルガイ》と《ダッシュガイ》を融合!運命の岩盤を穿つ英雄よ、神速の世界の英雄よ、今一つとなりて暗黒の未来に君臨せよ!!融合召喚!!カモン!《D-HEROディストピアガイ》!」

 

D-HEROディストピアガイ レベル8 攻撃2800

 

「《ディストピアガイ》のエフェクト発動!墓地の《ドリルガイ》の攻撃力分、1600のダメージをお前に与える!スクイズ・パーム!!」

融合召喚で再びフィールドに呼び戻されたばかりの《D-HEROディストピアガイ》の胸部から発射されたビームが遊矢に襲い掛かる。

「永続罠《ペンデュラム・バリア》!俺のペンデュラムゾーンにペンデュラムカードが2枚存在するとき、俺が受ける効果ダメージを0にする!」

ペンデュラムゾーンに待機する2体のペンデュラムモンスターが両手を前にかざすと、遊矢の前に障壁が出現し、それが彼の身を護る。

「更に僕は手札から魔法カード《フュージョン・デステニー》を発動!手札・デッキのモンスターを素材にD-HEROを融合召喚する!」

「このターンで3回目の融合召喚!?」

「僕が融合素材とするのはデッキにある《ドグマガイ》と《Bloo-D》!自らの正義に殉ずる英雄よ、悪を血へ還す英雄よ、今一つとなりて、究極のDへと姿を変えよ!融合召喚!カモン!《Dragoon D-END》!」

フィールドに《D-HERO Bloo-D》が現れると、黒いドラゴンの頭を模した兜と鎧、尻尾を模した剣が上空から降りて来て、それらをそのモンスターが身に着けた。

それらを装着し終えた究極のDは上空へ飛び、遊矢のモンスターたちを威嚇するように雄たけびを上げる。

 

Dragoon D-END レベル10 攻撃3000

 

「僕はセメタリーの《ダイナマイトガイ》のエフェクト発動!このカードを墓地から除外し、僕のD-HERO1体の攻撃力を次の相手ターン終了時まで1000アップさせる!僕は《ディストピアガイ》の攻撃力をアップ!」

 

D-HEROディストピアガイ レベル8 攻撃2800→3800

 

「そして、《ディストピアガイ》のエフェクト発動!このカードの攻撃力が元々の攻撃力と異なるとき、フィールド上のカード1枚を破壊し、攻撃力を元に戻す!僕は《オッドアイズ・ユニコーン》を破壊する!ノーブル・ジャスティス!」

《D-HEROディストピアガイ》の胸部から発射されたビームが《EMオッドアイズ・ユニコーン》に襲い掛かる。

「俺は速攻魔法《ペンデュラム・モラトリアム》を発動!このターン、お互いのペンデュラムゾーンのカードは相手のカード効果では破壊されず、ペンデュラムゾーンのカードを対象として発動した相手のカード効果を無効にする!」

「くっ…!!」

発射されたビームが《EMオッドアイズ・ユニコーン》に命中する直前に消滅する。

何度も発動した効果であるためか、やはり発動を妨害されることとなった。

「無効となった以上、《ディストピアガイ》の攻撃力はこの効果で元に戻ることはない!《Dragoon D-END》のエフェクト発動!1ターンに1度、相手フィールドのモンスター1体を破壊し、破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを相手に与える!」

《Dragoon D-END》の胸部のドラゴンから黒い炎が発射され、その炎が《EMスマイル・マジシャン》を焼き尽くす。

「《スマイル・マジシャン》はペンデュラムモンスター!破壊されても墓地へ行かず、エクストラデッキへ行く!」

「《Dragoon D-END》の破壊と効果ダメージは同時!ペンデュラムモンスターのルールでたとえエクストラデッキへ行ったとしても、ダメージは遊矢!お前にも及ぶ!」

「《ペンデュラム・バリア》の効果でその効果ダメージは0になる!」

再び2体のペンデュラムモンスターが生み出したバリアが遊矢を《Dragoon D-END》からの効果ダメージから守る。

「《Dragoon D-END》がこの効果を発動したターン、僕はバトルフェイズを行えない…だが!!」

急にエドが走り出し、アクションカードを探し始める。

アクションデュエルを否定し、アクションカードはすべて相手に使わせるというスタンスだったエドのパラダイムシフトにデュエル戦士たちのみならず、遊矢と柚子も驚きを見せた。

「エド…」

驚いていた遊矢だが、次第にそれはエドがデュエルの楽しさを思い出してくれたことへの喜びへと変わっていった。

そして、エドは建物の入り口に貼り付けられているアクションカードを手にする。

「よし…!僕はカードを1枚伏せてターンエンド!そして、《Dragoon D-END》は《フュージョン・デステニー》の効果の代償として破壊される。だが、このカードは僕のスタンバイフェイズ時にセメタリーに存在するとき、セメタリーのD-HERO1体を除外することでセメタリーから特殊召喚できる!」

 

遊矢

手札6(うち2枚《EMユーゴーレム》、《スマイル・ワールド》)

ライフ150

場 EMオッドアイズ・ディゾルヴァー レベル8 攻撃2300

  オッドアイズ・ファンタズマ・ドラゴン レベル8 攻撃3000

  EMペンデュラム・マジシャン レベル4 攻撃1800

  魂のペンデュラム(永続魔法)(カウンター1)

  ペンデュラム・バリア(永続罠)

  伏せカード1

  EMゴムゴムートン(青) ペンデュラムスケール1

  EMオッドアイズ・ユニコーン(赤) ペンデュラムスケール8

 

エド

手札4→1(アクションカード)

ライフ900

場 D-HEROディストピアガイ レベル8 攻撃3800

  D-HEROダスクユートピアガイ レベル10 攻撃3000

  伏せカード1

 

アクションカードを手にした時に笑みを見せたにもかかわらず、すぐに発動することなく、結局は《Dragoon D-END》の制約によってバトルフェイズを行うことなくターンを終えた。

だが、《ペンデュラム・モラトリアム》の効果が終了したことでペンデュラムゾーンのカードを守る術を失い、《D-HEROディストピアガイ》の攻撃力も3800のままだ。

「(エドは…俺のターンでも動いてくるつもりだ…!)俺のターン、ドロー!」

 

遊矢

手札6→7

 

「この瞬間、《ディストピアガイ》のエフェクト発動!君の《オッドアイズ・ユニコーン》を破壊し、攻撃力を元に戻す!ノーブル・ジャスティス!」

再び発射される《D-HEROディストピアガイ》のビームが今度は《EMオッドアイズ・ユニコーン》を消滅させる。

 

D-HEROディストピアガイ レベル8 攻撃3800→2800

 

「そして、僕はアクション魔法《バブル・ショック》を発動!3ターン目以降で、相手の手札が6枚以上存在するスタンバイフェイズ時に発動でき、相手のメインフェイズ1開始前に僕のバトルフェイズを行う!」

「何!?メインフェイズ1に割り込むだって!?」

 

バブルショック

アクション魔法カード

(1):3ターン目以降の、相手の手札が6枚以上存在する相手スタンバイフェイズ時に発動できる。相手のメインフェイズ1開始前に自分バトルフェイズを行う。

 

「バトル!《ディストピアガイ》で《オッドアイズ・ディゾルヴァー》を攻撃!」

《D-HEROディストピアガイ》の右手か黒の光線が発射され、それを受けた《EMオッドアイズ・ディゾルヴァー》を焼き尽くし、遊矢を襲う。

「《ペンデュラム・バリア》の効果!俺のペンデュラムモンスターが戦闘を行うとき、このカードを墓地へ送ることでこのターン、自分のペンデュラムモンスターとの戦闘で発生する俺へのダメージを0にする!」

破壊され、消滅するはずの《EMオッドアイズ・ディゾルヴァー》がバリアへと変化し、遊矢を包み込んで黒の光線を防ぐ。

 

ペンデュラム・バリア

永続罠カード

(1):自分Pゾーンにカードが2枚存在するとき、自分が受ける効果ダメージが0となる。

(2):自分Pモンスターが戦闘を行うとき、自分フィールドに表側表示で存在するこのカードを墓地へ送ることで発動できる。このターン、自分Pモンスターが行う戦闘で発生する自分への戦闘ダメージが0となる。

 

「ちっ…だが、戦闘破壊までは防ぐことはできない!《ダスクユートピアガイ》で《オッドアイズ・ファンタズマ・ドラゴン》を攻撃!」

《D-HEROダスクユートピアガイ》が右手から黄金の光線を発射し、《オッドアイズ・ファンタズマ・ドラゴン》が反撃のためにブレスを放つ。

その間にエドはアクションカードを見つけ出し、即座に発動する。

「アクション魔法《論争》!これで攻撃力を《オッドアイズ・ファンタズマ・ドラゴン》と同じにする」

 

D-HEROダスクユートピアガイ レベル10 攻撃3000→3300

 

「けど、これなら相討ち…」

「それはどうかな?」

攻撃力が同じであるにもかかわらず、黄金の光線が競り勝ち、《オッドアイズ・ファンタズマ・ドラゴン》を消滅させる。

「何!?」

「《ダスクユートピアガイ》のエフェクトさ。フィールド上のモンスター1体はこのターン、戦闘・効果では破壊されず、そのモンスターの戦闘で発生するお互いへの戦闘ダメージは0になるのさ」

その効果を使ったことで、《D-HEROダスクユートピアガイ》はフィールドに残ることができた。

同時に、遊矢がこのターン破壊できるモンスターは《D-HEROディストピアガイ》1体だけになった。

遊矢のライフを考えると、このターンで決着をつけなければならない。

(僕が伏せているカードは《D-シールド》。僕のD-HEROが攻撃対象となったとき、そのモンスターを守備表示にし、このカードを装備させる。そして、このカードを装備したモンスターは戦闘では破壊されない…。貫通ダメージ効果を持たない限り、僕に戦闘ダメージは来ない…)

既に《D-HEROディストピアガイ》を破壊できるモンスターである《オッドアイズ・ファンタズマ・ドラゴン》も《EMスマイル・マジシャン》もフィールドから離れている。

だが、スケール8以上のペンデュラムモンスターを遊矢が手札に加えていたら、《魂のペンデュラム》の効果でペンデュラム召喚可能な状況を作ることができる。

もっとも、それが遊矢の手札にあればの話だが。

「遊矢…」

状況は遊矢の圧倒的不利。

祈るように柚子は遊矢の名を呼ぶ。

その瞬間、遊矢が笑みを見せる。

「かかったな、エド!!」

「何!?」

「俺は罠カード《ペンデュラム・リボーン》を発動!エクストラデッキに表側表示で存在する、もしくは墓地のペンデュラムモンスター1体を特殊召喚できる。俺は《オッドアイズ・ファンタズマ・ドラゴン》を特殊召喚!」

 

オッドアイズ・ファンタズマ・ドラゴン レベル8 攻撃3000→3300

 

「そして、スケール2の《EMラクダウン》をセッティング!そして、《ラクダウン》のペンデュラム効果発動!相手フィールドのモンスターすべての守備力を800ダウンさせる!そして、このターン俺のモンスター1体は守備モンスターを攻撃するとき、貫通ダメージを与える!」

その宣言と同時に、2人はアクションカードを手にするために走り始める。

 

D-HEROディストピアガイ レベル8 守備2400→1600

 

「《オッドアイズ・ファンタズマ・ドラゴン》で《ディストピアガイ》を攻撃!!」

これで、たとえ《D-HEROディストピアガイ》が守備表示になったとしても、貫通ダメージが入るうえに、たとえ攻撃表示のままにしても、《オッドアイズ・ファンタズマ・ドラゴン》の効果で攻撃力が0になるため、エドのライフが尽きることになる。

望みはアクションカードで、上空に浮かぶ2枚のカードを手にするために大きくジャンプをした。

 

「おかしいぜ…一体どうなってやがる…?」

1人でアカデミアの基地へ乗り込むこととなった凌牙は人っ子一人いない周囲の状況に違和感を覚える。

召喚エネルギー反応から、体育館に誰かがいることは分かっている。

しかし、ここに入ってきてから1時間近く経過しているのに、まだデュエル戦士と遭遇していない。

「隠れているのか…?それとも…!?」

何かを感じた凌牙は背後に振り返り、デュエルディスクを盾替わりにして構える。

路地裏からのっそりと野呂が歩いて出てきた。

「お待ちしておりました、ヴァプラ隊の1人、神代凌牙…」

口角を釣り上げ、普段は気にするはずの時計を見る動きを見せない。

そこには基地でエドやほかのデュエル戦士に見せたような気弱な中間管理職としての姿はなかった。

「やるのか…?」

「いえいえ、とんでもない。私の実力ではあなたには到底及ばない。このまま素通りし、体育館へ向かっていただければ結構。私には別の任務がございますので…」

恭しくお辞儀をした野呂はゆっくりと路地裏へと戻ろうとする。

追いかけようと思った凌牙だが、動く前に自分の体に嫌な汗が流れていることに気付いた。

「ああ、そうそう。早く向かわれるといい。面白いものを見ることができますから…」

「面白いもの…だと!?」

「それを見て、判断するといいでしょう。これは正真正銘の戦争だということを…」

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