遊戯王ARC-V 戦士の鼓動   作:ナタタク

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第106話 蝙蝠の呪い

「おおおおお!!」

「このカードを…!!」

遊矢とエドの手がそれぞれのアクションカードに届き、それぞれがそのカードを見る。

勝敗を分ける最後のカードの正体が明暗を分ける。

「アクション魔法《奇跡》!」

戦闘するモンスター1体の破壊を無効にし、自分への戦闘ダメージを半減させるアクションカード。

これで、エドのライフは50残り、《D-HEROディストピアガイ》も生き残る。

だが、今回勝利の女神がほほ笑んだのは遊矢だった。

「アクション魔法《エクストリームソード》!《オッドアイズ》の攻撃力を1000アップさせる!!」

 

オッドアイズ・ファンタズマ・ドラゴン レベル8 攻撃3300→4300

 

「何…!?」

「ファンタスティック・フォース!!」

《オッドアイズ・ファンタズマ・ドラゴン》のブレスが《D-HEROディストピアガイ》を包み込む。

両腕でガードして受け止め続ける《D-HEROディストピアガイ》だが、やがて力尽き、消滅する。

そして、そのブレスはエドをも巻き込んでいく。

「ふっ…」

どうしても勝ちたいと願っていた相手の息子に敗れて悔しいはずなのに、なぜかエドにはそんな感情がほんのわずかしかない。

あるのはさばさばとした、どこか安らぎを抱いている。

あおむけに倒れるエドはじっと上を見上げ、口元はわずかに緩んでいた。

 

エド

ライフ900→0

 

「そんな…総司令がやられた…!?」

「あり得ない…これが、現実だというのか!?」

敗北したエドを見たデュエル戦士たちの間に動揺が走る。

エクシーズ次元のデュエル戦士たちの中では最強のはずのエドがランサーズのデュエリストに敗れた。

それを見た彼らが平然としていられるはずがない。

「終わったのか…?」

体育館へ飛び込んだ凌牙は消えていくリアルソリッドビジョンと倒れているエドの姿を見る。

それだけでここで起こったことの顛末が分かった。

同時に、つりさげられていた権現坂が自動的に椅子ごと床に降ろされていく。

「柚子、権現坂を頼む」

「ええ…!」

遊矢はあおむけに倒れているエドの元へ走る。

エドは倒れたままで、遊矢に目を向けようともしない。

「なんだ…これは?榊遊勝の息子であるお前に負けたのに…」

遊勝に敗北したとき、あの時は悔しさがあった。

だが、今はその悔しさが感じられない。

その理由が分からない。

「楽しかっただろ…?デュエル」

「楽しい…」

「素直になれよ。本当に思っていることにさ」

笑顔を見せる遊矢がエドに手を差し伸べる。

その笑顔とあの時、遊勝が見せた笑顔が重なって見える。

そして、胸の中にずっと封印してきた感情が激しくたたいてくる。

「ああ、そうか…。僕は…」

エドはゆっくりと遊矢に手を伸ばし、彼の手を握り、ゆっくりと立ち上がる。

ようやくエドも曇りのない笑顔を見せる。

だが、その瞬間、急にエドは左手で胸を抑え、苦しみ始める。

「う、うう…!?」

「おい、どうしたんだ!?エド!!」

なんでエドが苦しみ出したのかわからず、片膝をついた彼の肩に手を当てる。

デュエルでのダメージではない、何かが起こっているように感じた。

遊矢の片目が黒く染まり、じっとエドの体を見る。

(何だ…これは!?)

エドの体の中に何か得体のしれないものが見えてくる。

抽象的にしか表せないが、何か怖いものがエドの体の中で暴れまわっている。

「フフフフ…面白いものが始まりましたよ。神代凌牙、柊柚子、そして…榊遊矢」

ステージ裏から出てきた野呂が口角を右だけ釣り上げて、遊矢たちの様子を愉快そうに眺める。

ナビのカメラから今の野呂の姿を見るグロリアはとても普段の彼とは思えない。

いつも典型的な中間管理職のように、時間と作戦の侵攻ばかりを気にしていた。

そんな彼が今はこれまで見たことのない表情をこちらに見せている。

「おっと、カメラ越しではありますが、久しぶりですね。グロリアさん…ですが、今はあなたに用はない」

ナビを見て、ニヤリと笑い続ける野呂は今度は苦しんでいるエドに目を向ける。

愉快そうに笑い、左腕のデュエルディスクで計算を始める。

「ふむ…やはり、効果ありですな。BAT-DIEは確かにエド・フェニックスの体を蝕んでいる」

「BAT-DIE…!?」

「あなた方にわかりやすいように説明すれば、裏切者を自動的に殺してくれるナノマシンですよ」

「裏切者を…!!じゃあ、エドが苦しんでいるのは…」

「その、BAT-DIEというもののせいだな…体中を傷つけて回っているのを感じる…」

痛みに耐えるエドはいつBAT-DIEが体内に入れられたのかに察しがついた。

定期的に行われる検診で、毎回のように注射を受けていた。

おそらく、その時にBAT-DIEも投与されたのだろう。

「ええ…。あなたの本心が再び呼び起こされたとき、あなたはアカデミアに反旗を翻す。そうなると、これからの作戦に…真のアークエリア・プロジェクトに支障をきたす。不安要素を…裏切りを未然に防ぐのは効率が良いでしょう?」

「野呂…貴様の任務は…」

「そうですよ。エド・フェニックス。私はあなたの監視役、そしてあなたへの死刑執行の見届け人です」

「そんな…じゃあ、俺がやったことは…」

エドに笑顔を与えるためにデュエルをしたが、それ故にエドの体内のBAT-DIEを発動させることになった。

その事実が彼の心に重くのしかかる。

「遊矢…こんなのって…」

「くっ…遊矢…」

「そうですよ。榊遊矢…あなたがエド・フェニックスを殺したのです。あなたの…エンタメデュエルでねぇ!!」

せせら笑いながら冷酷に事実を突きつける。

遊矢の顔が青く染まっていき、その場に座り込む。

「そんな…俺が…俺が…」

「こんな奴に耳を貸すんじゃねえ、遊矢!そのBAT-DIEっていうふざけた代物が原因だろうが!!」

凌牙はデュエルディスクを展開し、野呂をにらむ。

周囲のデュエル戦士たちはBAT-DIEの話を聞き、恐怖と共にデュエルディスクを展開し始める。

「そう、そうです…。もしも、裏切ろうなどとしたらエド・フェニックスと同じ運命をたどることになる…。生きるためには戦うのです。死ぬまで!!すべてはアークエリア・プロジェクトのために!!」

「ちっ…まずいな…」

野呂1人だけなら、戦うことができたかもしれない。

だが、今体育館にいるデュエル戦士だけでも数十人。

それに、ここ以外にも数多くのデュエル戦士がいる可能性だってある。

柚子は権現坂のカバーに入らなければならず、遊矢はショックで戦意を喪失している。

実質的に戦えるのは凌牙1人だけだ。

「いや、1人じゃねえな…。間に合ったみてえだ」

「ほぉ…」

 

アカデミア本部周囲に水色の渦がいくつも出現し、そこからレオコーポレーションのロゴが刻まれたヘリコプターが飛び出してくる。

ヘリコプターの扉が開き、そこから沢渡が顔を出す。

「シンクロ次元の時に見たときはびっくりしたが、まさか本当に乗り物ごと転移できるなんてな!!くぅーーー!」

遊矢達がエクシーズ次元にわたってから、沢渡らほかのランサーズ達はずっとスタンダード次元で訓練を受けながら待機し続けてきた。

スタンダード次元ではデュエル戦士たちが侵入したことはなく、沢渡はずっと退屈で、早くアカデミアと戦いたくてうずうずしていた。

ヘリから見下ろすと、多くのデュエル戦士がいて、動揺が見える。

「へへ…誰も俺らが入ってくるとは思っていねーみてーだな!行くぞ、お前ら…ぶほぉ!!」

「なんであんたがでしゃばんねん!!さっさと…行かんかい!!」

沢渡を殴った里香は今度は彼でヘリコプターから蹴り落とす。

沢渡にはパラシュートが装備されており、落ちていくのと同時にパラシュートが展開される。

それがあるとはいえ、まさか本気で蹴るとは思いもよらず、一緒に出撃待機していた漁介が思わずドン引きする。

「少し…加減せえって。死んだらどうすんじゃ!」

「馬鹿は死なん!いくでぇ!」

漁介の言葉に聞く耳を持たず、里香もヘリコプターから飛び降りていく。

パラシュートがあるとはいえ、上空400メートル以上もの高さから飛び降りるのには勇気がいる。

下を見たら下手な恐怖を感じてしまうため、漁介は上を見上げ、ヘリコプターから飛び降りた。

「増援!?こんなタイミングで!?」

「ひ、ひるむな!!迎え撃てぇ!!」

デュエル戦士たちは迎撃のために動き出す。

だが、突然の奇襲に足並みがそろっておらず、得意の集団戦闘が難しい状態にあった。

 

「なるほど…あなたや榊遊矢たちがここへ来た時点で、勝負は決まっていたと…」

デュエルディスクにランサーズ襲来の情報が飛び込んできたが、聞く耳を持たず、野呂は無関心に通信を一方的に遮断する。

「お前…」

部下の危機であるにもかかわらず、笑みを浮かべたままでなにもしようとせず、あまつさえ彼らにBAT-DIEを仕込んで闘わせようとする野呂から凌牙はベクターのような強烈な悪意を感じずにはいられなかった。

だが、ベクターについては己の欲を満たすためという意味合いが強い。

それに対して、野呂のそれは身震いするほどの空虚が感じられた。

体育館にも、ランサーズと共に出撃したヴァプラ隊やエクシーズ次元で戦っていたレジスタンスたちも突入してくる。

「き…来たぞ!!」

「くっそぉ!!やるよ!やればいいんだろう!!」

もしやらなければ、エドのようになる。

殺される恐怖を押し殺すように叫び声をあげ、デュエル戦士たちは突入してきたレジスタンスたちに挑む。

「そう、それです…。生存本能を極限に高めれば、窮鼠猫を噛むのように、惰弱な兵士も屈強な兵士に変わる…」

「てめえ…!部下を、命を何だと思っていやがる!!」

「すべてはアークエリア・プロジェクトを成し遂げるための捨て駒です。私と同じように…」

「こいつ…!」

笑みを浮かべる彼だが、目は笑っていない。

彼は凌牙を見て、デュエルディスクを展開する。

「エクシーズ次元における目標は達成しています。もう放棄しても問題はありません。ですが、あなたには消えてもらいましょう」

「消えるのは…てめえだ!人形が!!」

怒気に満ちた声をぶつけながら、凌牙もデュエルディスクを展開する。

だが、野呂はそのような怒りすらも笑って受け流していた。

「ええ…。私は人形ですよ。彼らと同じように…。だから、真のアークエリア・プロジェクト達成のためなら、いくらでも障害を排除し、そして死にましょう」

「ざけんな…!なら、俺がここでお前を地獄へ送ってやる!!」

「「デュエル!!」」

 

野呂

手札5

ライフ4000

 

凌牙

手札5

ライフ4000

 

(そういえば、野呂のデュエルは今まで見たことがないわね…)

ナビで野呂の様子を見るグロリアはこれまでの野呂のことを思い出す。

彼は常に補給をはじめとした事務要因として動き続けていて、デュエルをした様子を一度も見たことがない。

実戦に出たことなく、保身ばかり考えていることから人望がなく、よく妹のグレースと共にノロマと馬鹿にしていた。

だが、この姿と本当の任務から、すべて演技だったのだろう。

そして、万が一の時には見届け人から死刑執行人へと変わっていたかもしれない。

(けれど、もし彼の言葉が本当なら、私やグレースも…?)

 

「私の先攻です。手札から魔法カード《苦渋の決断》を発動。デッキからレベル4以下の通常モンスターを墓地へ送り、デッキから同じ名前のカードを手札に加える。私は《メタルフォーゼ・スティエレン》を墓地へ送り、もう1枚の《メタルフォーゼ・スティエレン》を手札に加える」

ニヤリと笑う野呂は手札に加えたばかりの《メタルフォーゼ・スティエレン》を凌牙に見せる。

通常モンスターと言っていたが、下半分は魔法カードのように外ぶちが緑色になっていた。

「まさか…ペンデュラムモンスター!?」

「ペンデュラム召喚はしっかりと研究させてもらいました。おかげさまで、我々もペンデュラム召喚が可能となったのです。その点はランサーズには感謝しておりますよ…。そして、私はスケール1の《レアメタルフォーゼ・ビスマギア》とスケール8の《メタルフォーゼ・ヴォルフレイム》でペンデュラムスケールをセッティング」

七色の装甲をしたバイクに乗る紫のロングヘアーで装甲と同じ色の体をした女性ライダーと、炎のような赤と黒の装甲のバイクと右手に炎を宿した刀を握る水色の髪のライダーが青い光の柱を生み出す。

「そして、私は手札から《メタルフォーゼ・ゴルドライバー》を召喚」

橙色の四輪車に乗り、右手に燃える斧を握ったマッシブな体つきのライダーがけたたましくエンジンをふかしながらフィールドに飛び出す。

 

メタルフォーゼ・ゴルドライバー レベル4 攻撃1900

 

「《メタルフォーゼ・スティエレン》にペンデュラム効果発動。1ターンに1度、私のフィールドのこのカード以外の表側表示のカード1枚を破壊し、デッキからメタルフォーゼ魔法・罠カード1枚をセットします。私は《ゴルドライバー》を破壊する」

《メタルフォーゼ・ヴォルフレイム》が刀の先を《メタルフォーゼ・ゴルドライバー》に向け、炎を発射する。

炎を受けた《メタルフォーゼ・ゴルドライバー》は消滅し、野呂のデュエルディスクからカードが1枚自動排出される。

「そして、デッキから《メタルフォーゼ・コンビネーション》をセット。更に私は手札から魔法カード《ワン・フォー・ワン》を発動。手札のモンスター1体を墓地へ送り、手札・デッキからレベル1のモンスター1体を特殊召喚します。私は《メタルフォーゼ・シルバード》を墓地へ送り、《おもちゃ箱》を特殊召喚」

 

おもちゃ箱 レベル1 攻撃0

 

「そして、《ビスマギア》の効果発動。このカードも《スティエレン》と同じペンデュラム効果を持っています。よって、《おもちゃ箱》を破壊し、デッキから《錬装融合》をセットします」

「やはり…《融合》もデッキにあったか!!」

「それだけではありませんよ?破壊された《おもちゃ箱》の効果。このカードが破壊され、墓地へ送られたとき、デッキから攻撃力か守備力が0のカード名の異なる通常モンスター2体を表側守備表示で特殊召喚できる。私は《メタルフォーゼ・スティエレン》と《竜剣士マスターP》を特殊召喚」

《メタルフォーゼ・スティエレン》と共に、金色の羽根をつけている、純白の鎧と盾、そして剣を装備した竜騎士がフィールドに現れる。

その優雅な姿は無骨な一面の有るメタルフォーゼには不釣り合いな者だった。

 

メタルフォーゼ・スティエレン レベル2 守備2100

竜剣士マスターP レベル4 守備0

 

「そして、魔法カード《錬装融合》を発動。このカードはメタルフォーゼ専用の《融合》。私は《スティエレン》と《マスターP》を素材とします。黒鉄の体を持つライダーよ、白銀の竜騎士よ、大いなる計画の元、今一つとなりて、新たな人形へと姿を変えよ。融合召喚。現れなさい、紅蓮の刃を持つ剛の者、《メタルフォーゼ・アダマンテ》」

《メタルフォーゼ・スティエレン》のバイクが変形し、上半身を包む軽装なアーマーとなって彼の体に装着される。

そして、そのアーマーに《竜剣士マスターP》が吸収され、彼が持っていた剣は炎の刀となって《メタルフォーゼ・スティエレン》の手に渡った。

 

メタルフォーゼ・アダマンテ レベル5 攻撃2500

 

「そして、《錬装融合》の効果。このカードが墓地に存在するとき、そのカードをデッキに戻し、デッキからカードを1枚ドローできる。そして、融合素材となった2体はペンデュラムモンスター。よって、エクストラデッキに加わる」

「くっ…!」

残りの手札が罠カードの《メタルフォーゼ・コンビネーション》であることから、ここから展開できないと思っていたが、《錬装融合》に自己再生とドロー効果を持っていることは予想外だった。

ペンデュラムモンスターの特性を考えると、これで野呂は毎ターン《錬装融合》でメタルフォーゼ融合モンスターを融合召喚できるということになる。

「そして、私はペンデュラム召喚を行う。現れなさい。私の人形たち、《メタルフォーゼ・スティエレン》、《竜剣士マスターP》、《メタルフォーゼ・ゴルドライバー》」

融合素材として一度はフィールドから消えた2体と、カード効果で破壊された《メタルフォーゼ・ゴルドライバー》がフィールドに舞い戻る。

 

メタルフォーゼ・スティエレン レベル2 守備2100

竜剣士マスターP レベル4 攻撃1950

メタルフォーゼ・ゴルドライバー レベル4 攻撃1900

 

「そして、カードを1枚伏せて、ターンエンド」

 

野呂

手札5→0

ライフ4000

場 メタルフォーゼ・アダマンテ レベル5 攻撃2500

  メタルフォーゼ・スティエレン レベル2 守備2100

  竜剣士マスターP レベル4 攻撃1950

  メタルフォーゼ・ゴルドライバー レベル4 攻撃1900

  伏せカード2(うち1枚《メタルフォーゼ・コンビネーション》)

  レアメタルフォーゼ・ビスマギア(青) ペンデュラムスケール1

  メタルフォーゼ・スティエレン(赤) ペンデュラムスケール8

 

凌牙

手札5

ライフ4000

場 なし

 

ペンデュラム召喚を使ったとはいえ、融合モンスターを含めて4体ものモンスターが展開されたうえに、2枚の伏せカードがある。

うち1枚の正体は分かっているが、問題はもう1枚のカードだ。

おまけに、ペンデュラムスケールを生み出している2体をどうにかしなければ、毎ターンメタルフォーゼ魔法・罠カードのサーチを許してしまう。

「俺のターン、ドロー!」

 

凌牙

手札5→6

 

ドローしたカードを見た凌牙は笑みを浮かべる。

「(さっそく使わせてもらうぜ…侑斗!)俺はスケール2の《クリスタル・シャーク》とスケール6の《アビス・シャーク》でペンデュラムスケールをセッティング!」

「ほぉ…あなたもペンデュラム召喚を…」

氷のように冷たいクリスタルでできた鮫と青と金色の鎧を身に着けた水色の鮫が現れ、水柱を上げるとともに光の柱を生み出す。

「これで俺は、レベル3から5までのモンスターを同時に召喚可能!海の王者の叫びに応え、激流と共に現れろ!ペンデュラム召喚!現れろ、俺のモンスターたち!《キラー・ラブカ》!《スターフィッシュ》!」

 

キラー・ラブカ レベル3 攻撃700

スターフィッシュ レベル3 攻撃300

 

「そして、俺はレベル3の《キラー・ラブカ》と《スターフィッシュ》でオーバーレイ!エクシーズ召喚!現れろ、《No.47ナイトメア・シャーク》!」

 

No.47ナイトメア・シャーク ランク3 攻撃2000

 

「ペンデュラム召喚からのエクシーズ召喚ですか…。しかし、攻撃力はわずか2000。私の《メタルフォーゼ・アダマンテ》には届いていません」

「だが、《ナイトメア・シャーク》は1ターンに1度、オーバーレイユニットを1つ取り除くことで、俺のフィールドの水属性モンスター1体のダイレクトアタックを可能にする。そして、《アビス・シャーク》のペンデュラム効果はこのカードが表側表示で存在する限り、1度だけ俺の水属性エクシーズモンスターが攻撃するとき、その攻撃力を元々の攻撃力の倍にする」

《アビス・シャーク》の効果で攻撃力4000となった《No.47ナイトメア・シャーク》のダイレクトアタック

が野呂を襲い、1ショットキルとなる。

凌牙は彼と長々とデュエルをするつもりなどなかった。

「確かに、私の絶体絶命ですねぇ…。うまくいけばの話ですが…」

「その余裕の顔、すぐにぶっ壊してやる!《ナイトメア・シャーク》の効果発動!オーバーレイユニットを1つ取り除き、自らのダイレクトアタックを可能にする!ダイレクト・エフェクト!!」

《No.47ナイトメア・シャーク》がオーバーレイユニットを食らうとともに大きく飛翔する。

そして、再び口を大きく開いた。

 

取り除かれたオーバーレイユニット

・キラー・ラブカ

 

「バトルだ!《ナイトメア・シャーク》でダイレクトアタック!!更に、《アビス・シャーク》のペンデュラム効果!!《ナイトメア・シャーク》の攻撃力が倍になる!」

《アビス・シャーク》の胸部の青い宝石が光り、野呂に飛び込んでいく《No.47ナイトメア・シャーク》の体が青いオーラに包まれる。

 

No.47ナイトメア・シャーク ランク3 攻撃2000→4000

 

「罠発動!《進入禁止!No Entry!!》。フィールド上で攻撃表示で存在するモンスターをすべて守備表示に変更する」

発動と同時に、フィールドに警告音とパトカーのライトの光に照らされ、モンスターたちは警戒して守備表示に変わる。

 

No.47ナイトメア・シャーク ランク3 攻撃4000→守備2000

 

 

メタルフォーゼ・アダマンテ レベル5 攻撃2500→守備2500

竜剣士マスターP レベル4 攻撃1950→守備0

メタルフォーゼ・ゴルドライバー レベル4 攻撃1900→守備500

 

「ちっ…《錬装融合》の効果でそのカードをドローしていたのかよ!!」

1ショットキルがかわされたものの、墓地に《キラー・ラブカ》を落とした。

少なくとも、これで《No.47ナイトメア・シャーク》を1度は守ることができる。

それに、《クリスタル・シャーク》の効果も使っていない。

「俺はカードを1枚伏せて、ターンエンド」

 

野呂

手札0

ライフ4000

場 メタルフォーゼ・アダマンテ レベル5 守備2500

  メタルフォーゼ・スティエレン レベル2 守備2100

  竜剣士マスターP レベル4 守備0

  メタルフォーゼ・ゴルドライバー レベル4 守備500

  伏せカード1(《メタルフォーゼ・コンビネーション》)

  レアメタルフォーゼ・ビスマギア(青) ペンデュラムスケール1

  メタルフォーゼ・スティエレン(赤) ペンデュラムスケール8

 

凌牙

手札6→1

ライフ4000

場 No.47ナイトメア・シャーク(オーバーレイユニット1) ランク3 守備2000

  伏せカード1

  クリスタル・シャーク(青) ペンデュラムスケール2

  アビス・シャーク(赤) ペンデュラムスケール6

 

「ふふふ…怒りに任せて1ショットキルを決めたかったようですが、残念でしたね…」

「一つ、聞いておくぜ。てめえ…真のアークエリア・プロジェクトってほざいていたが、こいつらに知らされているアークエリア・プロジェクトと違うのか?」

「いいえ、何一つ変わりません。すべての次元が一つになることも…それが人々の幸福につながることも。しかし、ここまででだいぶスケジュールが乱れた…。より効率的に遂行するためにも、ここからが重要です。まぁ、よそもののあなたには関係のない話ですが」

「俺たちの素性…知っているみてーだな」

「ええ…。非効率的な理由でここにきている。そんなあなた方では、この計画のすばらしさは分からないでしょう…。私のターン、ドロー」

 

野呂

手札0→1

 

「私は手札から装備魔法《盗人の煙玉》を《アダマンテ》に装備。そして、《ビスマギア》のペンデュラム効果発動。《盗人の煙玉》を破壊し、デッキから《錬装融合》をセット…。そして、《盗人の煙玉》は装備されている状態でカード効果によって破壊されたとき、相手の手札を確認し、その中から1枚を墓地へ送る」

「くそ…!」

目を閉じ、歯を食いしばりながら、凌牙は手札を野呂に見せる。

「ふん…《死者蘇生》を残していたわけですか…。残念ですが、墓地へ捨ててもらいましょう」

凌牙の手から《死者蘇生》が離れていく。

おまけに野呂の手札には再び《錬装融合》が加わってしまう。

「更に私は永続罠《メタルフォーゼ・コンビネーション》を発動。1ターンに1度、融合モンスターが融合召喚されたとき、そのモンスターよりもレベルの低いメタルフォーゼを1体、墓地から特殊召喚できる。そして、手札から《錬装融合》を発動。私が融合素材とするのは《スティエレン》、《ゴルドライバー》、そして《マスターP》。黒鉄の体を持つライダーよ、黄金のライダーよ、白銀の竜騎士よ、大いなる計画の元、今一つとなりて、新たな人形へと姿を変えよ。融合召喚。現れなさい、灼熱の鎧纏いし巨人、《メタルフォーゼ・カーディナル》」

3体のモンスターが赤く熱した鉄と変わって、融合していく。

そして、その姿を赤い太さと無骨さを併せ持つ、丸みを帯びた大型アーマーを装着した人型モンスターへと変化させていく。

そして、両腕から炎の刃を展開させ、凌牙に向ける。

 

メタルフォーゼ・カーディナル レベル9 攻撃3000

 

「3体はペンデュラムモンスターですので、エクストラデッキへ行きます。そして、《メタルフォーゼ・コンビネーション》の効果発動。墓地から《スティエレン》を特殊召喚」

《メタルフォーゼ・カーディナル》が刃を《メタルフォーゼ・コンビネーション》に向けると、《苦渋の選択》で墓地へ送られていた《メタルフォーゼ・スティエレン》が舞い戻る。

 

メタルフォーゼ・スティエレン レベル2 守備2100

 

「そして、《錬装融合》の効果。墓地のこのカードをデッキに戻し、デッキからカードを1枚ドローする。更に、《スティエレン》のペンデュラム効果発動。《メタルフォーゼ・コンビネーション》を破壊し、デッキから《メタルフォーゼ・カウンター》をセット。そして、《メタルフォーゼ・コンビネーション》の効果。このカードがフィールドから墓地へ送られたとき、デッキからメタルフォーゼモンスター1体を手札に加えることができます。私は《メタルフォーゼ・シルバード》を手札に加えます。そして、ここで私はペンデュラム交換を行います。現れろ、《マスターP》、《ゴルドライバー》」

 

竜剣士マスターP レベル4 攻撃1950

メタルフォーゼ・ゴルドライバー レベル4 攻撃1900

 

融合召喚を行ったにもかかわらず、逆にフィールドのモンスターの数が増えてしまい、中には攻撃力3000のモンスターまでいる。

「融合召喚とペンデュラム召喚の組み合わせがこんなに…キャ!!」

よそ見してしまった柚子は《古代歯車の兵士》に《幻奏の音女アリア》を攻撃され、戦闘ダメージを受けてしまう。

「柚子…!!ぐうう…!!」

ダメージを受けた柚子を見た権現坂はたび重ねる電気ショックでボロボロな体を起こし、左腕のデュエルディスクを展開する。

幸い、デュエルディスクもデッキも奪われてはおらず、故障もしていなかった。

「権現坂!?」

「相手を見ろ、生き残るためにも…今は自分の身を守れ!!」

「バトル!《メタルフォーゼ・カーディナル》で《ナイトメア・シャーク》を攻撃!」

2本の炎の刃を重ね合わせ、天井を貫くほどの長い炎の刃を作り出した《メタルフォーゼ・カーディナル》が《ネイトメア・シャーク》を切り裂こうとする。

しかし、刃がぶつかると同時に炎が消えてしまい、余波が野呂を襲う。

「ぐうう…まさか、《クリスタル・シャーク》のペンデュラム効果を…」

「そうだ。《クリスタル・シャーク》のペンデュラム効果だ。こいつが表側表示で存在する限り1度だけ、俺の水属性エクシーズモンスターが相手モンスターと戦闘を行うとき、戦闘を行う相手モンスターの攻撃力を元々の攻撃力の半分にする」

 

メタルフォーゼ・カーディナル レベル9 攻撃3000→1500

 

野呂

ライフ4000→3500

 

「ならば、《メタルフォーゼ・アダマンテ》で《ナイトメア・シャーク》を攻撃」

「《キラー・ラブカ》の効果発動!俺の水族・魚族・海竜族が攻撃対象となったとき、墓地のこのカードを除外することで、その攻撃を無効にし、攻撃モンスターの攻撃力を500下げる!」

《キラー・ラブカ》が紫色の魔法陣から飛び出し、攻撃を仕掛けようとした《メタルフォーゼ・アダマンテ》にかみつく。

噛みついた《キラー・ラブカ》は姿を消すが、噛まれた箇所の装甲には大きなひびが入っていた。

 

メタルフォーゼ・アダマンテ レベル5 攻撃2500→2000

 

「《ナイトメア・シャーク》を守り抜きましたか…。だが、これで《アビス・シャーク》も《クリスタル・シャーク》も効果を使ってしまいましたね…。私はカードを1枚伏せて、ターンエンド」

 

野呂

手札1→0

ライフ4000

場 メタルフォーゼ・アダマンテ レベル5 攻撃2000

  メタルフォーゼ・カーディナル レベル9 攻撃1500→3000

  メタルフォーゼ・スティエレン レベル2 守備2100

  竜剣士マスターP レベル4 守備0

  メタルフォーゼ・ゴルドライバー レベル4 守備500

  伏せカード1

  レアメタルフォーゼ・ビスマギア(青) ペンデュラムスケール1

  メタルフォーゼ・スティエレン(赤) ペンデュラムスケール8

 

凌牙

手札1→0

ライフ4000

場 No.47ナイトメア・シャーク(オーバーレイユニット1) ランク3 守備2000

  伏せカード1

  クリスタル・シャーク(青) ペンデュラムスケール2

  アビス・シャーク(赤) ペンデュラムスケール6

 

「俺のターン、ドロー」

 

凌牙

手札0→1

 

「俺は…《サイレント・シャーク》を召喚」

黒々とした鎧を身に着け、左目に傷のある鮫が現れる。

 

サイレント・シャーク レベル4 攻撃1600

 

「このカードの召喚に成功したとき、俺のフィールドのオーバーレイユニットとなっている水属性モンスター1体を特殊召喚できる。俺は《スター・フィッシュ》を特殊召喚」

オーバーレイユニットとして旋回していた《スター・フィッシュ》が元の姿を取り戻して、凌牙のフィールドへ戻る。

「そして、この効果で特殊召喚されたモンスターのレベルは4になる」

 

スター・フィッシュ レベル3→4 攻撃300

 

「ふむ…?」

「レベル4の《スター・フィッシュ》と《サイレント・シャーク》でオーバーレイ!エクシーズ召喚!現れろ、《No.101S・H・Ark Knight》!!」

 

No.101S・H・Ark Knight ランク4 攻撃2100

 

「《Ark Knight》の効果!オーバーレイユニットを2つ取り除くことで、相手フィールドの攻撃表示で存在する特殊召喚されたモンスター1体をこのカードのオーバーレイユニットにする。俺は《カーディナル》をオーバーレイユニットに変える!エターナル・ソウル・アサイラム!」

オーバーレイユニットを取り込んだ《No.101S・H・Ark Knight》がアンカーを発射し、それで《メタルフォーゼ・カーディナル》を突き刺し、コンテナに格納しようとする。

「ふふふ…それで勢いを取り戻そうとでも?私は速攻魔法《重錬装融合》を発動!メタルフォーゼ融合モンスターの融合召喚を行います!」

「ぐうう…!やはり、速攻魔法の融合魔法があったか…!」

「私が融合素材とするのは《スティエレン》と《カーディナル》。黒鉄の体を持つライダーよ、灼熱の鎧纏いし巨人よ、大いなる計画の元、今一つとなりて、新たな人形へと姿を変えよ。融合召喚。現れなさい、すべてを取り込む錬金術師、《フルメタルフォーゼ・アルカエスト》」

アンカーが突き刺さる直前に赤い金属の液体へと変わり、同じく液体となった《メタルフォーゼ・スティエレン》と共に背後の渦に取り込まれていく。

そして、その中から背中にバイクのエンジンを付けた緑色のローブ姿の錬金術師が現れる。

 

フルメタルフォーゼ・アルカエスト レベル1 守備0

 

「攻撃力も守備力も0の融合モンスターだと…?」

拍子抜けするステータスだが、相手は取り込まれる寸前だったとはいえ、攻撃力3000の《メタルフォーゼ・カーディナル》を素材にしてまで融合召喚したモンスター。

必ず何かがあることをデュエリストとしての勘がささやいている。

「《アルカエスト》の効果。相手ターンに1度、フィールド上の効果モンスター1体を装備カード扱いとして取り込むことができる。私はあなたの《Ark Knight》を取りこむ!」

「何!?」

《フルメタルフォーゼ・アルカエスト》の杖から炎のロープが飛んでいき、それに縛られた《No.101S・H・Ark Knight》が炎の粒子に分解されていき、そのモンスターに取り込まれていく。

「そして、《アルカエスト》の守備力は取り込んだ効果モンスターの元々の攻撃力分アップ」

 

フルメタルフォーゼ・アルカエスト レベル1 守備0→2100

 

「俺は…オーバーレイユニットのない《ナイトメア・シャーク》でオーバーレイネットワークを再構築!アーマードエクシーズチェンジ!現れろ、《FA―ブラック・レイ・ランサー》!」

 

 

FA―ブラック・レイ・ランサー ランク4 攻撃2100

 

「ランクアップマジック以外でのエクシーズチェンジですか…」

「《ブラック・レイ・ランサー》の攻撃力は…このカードのオーバーレイユニット1つにつき、200アップする」

 

FA-ブラック・レイ・ランサー ランク4 攻撃2100→2300

 

「へっ…あんた、効率を重視するって言った割には読みが甘えな。こいつはオーバーレイユニットのないランク3・水属性のエクシーズモンスターを素材にエクシーズ召喚できるモンスターだ。もし、《ナイトメア・シャーク》の方を取り込ませりゃあ、こいつを召喚されずに済んだのにな」

「なるほど…あなたはそれを見越して、《ナイトメア・シャーク》のオーバーレイユニットを失わせたわけですか…」

「バトルだ!《ブラック・レイ・ランサー》で《フルメタルフォーゼ・アルカエスト》を攻撃!」

《FA-ブラック・レイ・ランサー》を槍を《フルメタルフォーゼ・アルカエスト》に向けて投げつける。

胸部をそれで貫かれた錬金術師は消滅する。

「まだ終わりじゃねえ!《ブラック・レイ・ランサー》の効果!こいつが戦闘で相手モンスターを破壊したとき、相手の魔法・罠カードを1枚破壊できる。俺はペンデュラムゾーンの《スティエレン》を破壊する!」

背中に装着されているブースターから発射されるミサイルがペンデュラムゾーンの《メタルフォーゼ・スティエレン》に向けて複数発射される。

ミサイルの爆発の中にそのモンスターは消え、これで野呂はペンデュラム召喚を行えない状態になった。

「俺はこれで、ターンエンドだ」

 

野呂

手札0

ライフ4000

場 メタルフォーゼ・アダマンテ レベル5 攻撃2000

  竜剣士マスターP レベル4 守備0

  メタルフォーゼ・ゴルドライバー レベル4 守備500

  レアメタルフォーゼ・ビスマギア(青) ペンデュラムスケール1

 

凌牙

手札1→0

ライフ4000

場 FA-ブラック・レイ・ランサー(オーバーレイユニット1) ランク4 攻撃2300

  伏せカード1

  クリスタル・シャーク(青) ペンデュラムスケール2

  アビス・シャーク(赤) ペンデュラムスケール6

 

「おやおや、これは痛いですねぇ…《アルカエスト》はメタルフォーゼ融合モンスターの融合召喚を行う際、装備しているモンスターを融合素材として使うことができる効果があります。そのモンスターをペンデュラムゾーンごと破壊されるとは…」

額に手を当て、読み誤ったと残念がる野呂だが、それが演技なことは凌牙は分かっていた。

まだ《レアメタルフォーゼ・ビスマギア》が存在し、そのモンスターの効果でメタルフォーゼ魔法・罠カードをサーチすることができる上に、まだまだ2体のペンデュラムモンスターが存在する。

いくらでも巻き返しができる一方、凌牙のフィールドには伏せカード1枚と《FA-ブラック・レイ・ランサー》がいるだけで、2体のペンデュラムモンスターの効果はもう使えない。

(《ブラック・レイ・ランサー》は破壊されるとき、代わりにオーバーレイユニットを1つ取り除くことができる。だが…それで耐えることができるかは…奴の動きを見るしかない…)

「ここまでのデュエル…まだ2人ともライフが1ポイントも減っていない…。けれど、状況は神代凌牙の方が不利ね…」

「私のターン、ドロー」

 

野呂

手札0→1

 

「《ビスマギア》のペンデュラム効果。《ゴルドライバー》を破壊し、デッキから《錬装融合》をセット。更に、ペンデュラムゾーンに《ヴォルフレイム》をセッティング」

並列型のミサイルポッドを握ったマニピュレーターを左右につけている、赤い四輪車に乗ったライダーが光りの柱を生み出す。

そのモンスターも先ほどいた《メタルフォーゼ・スティエレン》と同じスケール8のペンデュラムモンスター。

おまけに、ペンデュラム効果も同じだ。

「《ヴォルフレイム》のペンデュラム効果。《マスターP》を破壊し、デッキからもう1枚の《メタルフォーゼ・コンビネーション》をセット。そして、ペンデュラム召喚。現れなさい、私のモンスターたち。《スティエレン》2体、《ゴルドライバー》、《マスターP》」

 

メタルフォーゼ・スティエレン×2 レベル3 守備2100

竜剣士マスターP レベル4 攻撃1950

メタルフォーゼ・ゴルドライバー レベル4 攻撃1900

 

「ふむ…また私のペンデュラムゾーンのカードが破壊されるようなことがあってはまずいですね…ですので、私はフィールドの《スティエレン》と《マスターP》をリリース」

「今度は《融合》なしで融合召喚か!」

「その通り。このモンスターは融合素材となるモンスターを私のフィールドからリリースした場合にのみ、エクストラデッキから特殊召喚できます。私は《剛竜剣士-ダイナスターP》を特殊召喚」

2体のモンスターがエクストラデッキへ向かい、同時に水色の外套型のパーツ付きのアーマーを装着し、タワーシールドと大剣を握る竜剣士が入れ替わるように現れる。

 

剛竜剣士-ダイナスターP レベル8 守備2950

 

「このカードが存在する限り、私のモンスターゾーンとペンデュラムゾーンに存在するペンデュラムモンスターは戦闘及びカード効果では破壊されません」

「ペンデュラムモンスターをモンスターゾーンでもペンデュラムゾーンでも守るカードか!!」

「それだけで終わらない…分かっていますよね?私はセットしている魔法カード《錬装融合》を発動。私が融合素材とするのは《ゴルドライバー》と《スティエレン》。黄金のライダーよ、黒鉄のライダーよ、大いなる計画の元、今一つとなりて、新たな人形へと姿を変えよ。融合召喚。現れなさい、異世界の金属の騎士、《メタルフォーゼ・ミスリエル》」

2体のモンスターが液体に変わり、交わりあうことで、背中に6枚羽根のパックパックをつけた銀色のアーマーを装着した紫色の髪の戦士が現れる。

 

メタルフォーゼ・ミスリエル レベル6 攻撃2600

 

「そして、墓地の《錬装融合》の効果。このカードをデッキに戻し、デッキからカードを1枚ドローします。更に、《ミスリエル》の効果。1ターンに1度、墓地のメタルフォーゼカード2枚をデッキに戻し、フィールド上のカード1枚を手札に戻す」

(ちっ…!バウンスじゃあ、《ブラック・レイ・ランサー》の効果が使えない!!)

《重錬装融合》と《メタルフォーゼ・スティエレン》がデッキへ戻っていき、バックパックの左右に存在する赤いファンから竜巻が発生する。

竜巻に飲み込まれた《FA-ブラック・レイ・ランサー》がフィールドから消え、凌牙のフィールドががら空きになる。

「バトル。《ミスリエル》でダイレクトアタック」

《メタルフォーゼ・ミスリエル》のファンから発生する竜巻が今度は凌牙を襲う。

「うわあああ!!」

竜巻に巻き込まれた凌牙は上空を舞い、収まると同時に地面へ転落した。

 

凌牙

ライフ4000→1400

 

「ぐ…くそ…!」

「まだ立ち上がる力があるとは…さすがですね」

体中が傷だらけになった凌牙は残り2体の攻撃可能モンスターを見る。

この2体のモンスターのいずれかの攻撃が通っても、凌牙の負けが決まってしまう。

「まだです!《アダマンテ》でダイレクトアタック!」

《メタルフォーゼ・アダマンテ》がとどめを刺すべき、炎の刃を凌牙に向けて振るう。

「罠発動!《ハイドロ・エクシーズ・ディメンション》!!俺の墓地に存在する水属性エクシーズモンスター1体を除外し、除外したモンスターと同じランクの水属性エクシーズモンスター1体を特殊召喚する!俺は《ナイトメア・シャーク》を除外し、エクストラデッキから《リバリアン・シャーク》を特殊召喚!」

左の翼に自分のナンバーを刻んだ、《No.17リバイス・ドラゴン》が紫がかった体となったかのようなモンスターが激流と共にフィールドに現れ、《メタルフォーゼ・アダマンテ》の刃を受け止める。

 

No.71リバリアン・シャーク ランク3 守備2000

 

「その程度の守備力では、届きませんね!私は手札から速攻魔法《突進》を発動」

再び振りかざした炎の刃の次の一撃が迫る。

最初の一撃を受けたときに、深い傷を負った《No.71リバリアン・シャーク》にそれを耐えきる力はなく、切り裂かれるとともに消滅した。

 

メタルフォーゼ・アダマンテ レベル5 攻撃2000→2700

 

「《リバリアン・シャーク》の効果!このカードが墓地へ送られたとき、デッキのRUM1枚をデッキトップへ移動させることができる。俺は《七皇の剣》をデッキトップへ移動させる!」

「《七皇の剣》…!そうですか、そのカードを得るために《リバリアン・シャーク》を…」

《RUM-七皇の剣》のデータは既にあり、その効果は野呂も知っている。

条件が重い代わりに、フィールド・墓地に素材となるオーバーハンドレッドナンバーズが存在すれば、そのモンスターをカオス化できる。

そして、彼のデッキには《CNo.101S・H・Dark Knight》が存在する。

それに、そもそも攻撃モンスターがまだ野呂のフィールドに残っている。

「残念ながら、そのカードを使う機会はもうあなたにはありません…!《ゴルドライバー》でダイレクトアタック」

「俺は墓地へ送られた罠カード《ハイドロ・エクシーズ・ディメンション》の効果発動!このカードが墓地に存在する状態で相手の直接攻撃宣言時、墓地のこのカードを除外することで、ゲームから除外されているランク3以下の水属性エクシーズモンスター1体を特殊召喚する!俺は《ナイトメア・シャーク》を特殊召喚!」

 

No.47ナイトメア・シャーク ランク3 攻撃2000

 

「そして、次の俺のターンのスタンバイフェイズ時にデッキからカードを1枚ドローする」

「攻撃は中断ですね…ターンエンド」

 

ハイドロ・エクシーズ・ディメンション

通常罠カード

(1):自分の墓地に存在する水属性Xモンスター1体を除外することで発動できる。自分EXデッキからそのモンスターと同じランクでカード名の異なる水属性Xモンスター1体を自分フィールドに特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターはこのターン、攻撃できない。

(2):相手の直接攻撃宣言時、自分の墓地に存在するこのカードを除外することで発動できる。ゲームから除外されているランク3以下の自分の水属性Xモンスター1体を特殊召喚し、攻撃対象をそのモンスターに変更する。

 

野呂

手札1→0

ライフ4000

場 メタルフォーゼ・アダマンテ レベル5 攻撃2700→2000

  メタルフォーゼ・ミスリエル レベル6 攻撃2600

  剛竜剣士-ダイナスターP レベル8 守備2950

  メタルフォーゼ・ゴルドライバー レベル4 攻撃1900

  伏せカード1(《メタルフォーゼ・コンビネーション》)

  レアメタルフォーゼ・ビスマギア(青) ペンデュラムスケール1

  メタルフォーゼ・ヴォルフレイム(赤) ペンデュラムスケール8

 

凌牙

手札0

ライフ1400

場 No.47ナイトメア・シャーク ランク3 攻撃2000

  クリスタル・シャーク(青) ペンデュラムスケール2

  アビス・シャーク(赤) ペンデュラムスケール6

 

これで、凌牙は少なくとも次のターンにつなげることができた。

(あとは…《七皇の剣》の次にドローするカードだ…)

たとえ《No.101S・H・Dark Knight》を召喚したとしても、戦局を打開できるとは思えない。

最後の頼みはもう1枚確約されたドローカードだ。

凌牙はデッキトップに指をかける。

「俺のターン、ドロー!!」

 

凌牙

手札0→1

 

「俺がドローしたカードは《七皇の剣》!」

「ええ。ですが、問題はその次のカードですよ…?」

そのカードが2人の明暗を決めることを野呂も分かっている。

凌牙はドローしたばかりの《RUM-七皇の剣》を手札に加え、次のカードを指にかける。

そして、目を閉じてそのカードを引き抜いた。

ドローしたカードを目を開き、じっと見る。

「引いたぜ…まずは《七皇の剣》を発動!墓地から《S・H・Ark Knight》を特殊召喚!」

 

No.101S・H・Ark Knight ランク4 攻撃2100

 

「そして、《Ark Knight》をカオス化する!カオスエクシーズチェンジ!現れろ、CNo.101!満たされぬ魂の守護者よ!暗黒の騎士となって導け!《S・H・Dark Knight》!」

 

CNo.101S・H・Dark Knight ランク5 攻撃2800

 

「《Dark Knight》の効果!1ターンに1度、相手フィールドの特殊召喚されたモンスター1体をこのカードのカオスオーバーレイユニットとする!ダークソウルローバー!!」

《CNo.101S・H・Dark Knight》の槍からはなられるカオスのエネルギーが《メタルフォーゼ・ミスリエル》に注ぎ込まれ、カオスオーバーレイユニットへと変換する。

(《ミスリエル》はフィールドから墓地へ送られたとき、エクストラデッキに表側表示で存在するメタルフォーゼペンデュラムモンスター、または墓地に存在するメタルフォーゼ1体を特殊召喚できる効果がある…。だが、オーバーレイユニットに変えられたのなら、効果を発動しない…)

「そして、俺は手札から装備魔法《激瀧神の杖》を《Dark Knight》に装備!!このカードはランク5以上の水属性エクシーズモンスター専用の装備魔法だ!!」

握っていた槍が《No.73激瀧神アビス・スプラッシュ》が装備していた杖へと変化し、それと同時に彼の鎧も金と水色をベースとしたカラーリングへと変化していく。

「《激瀧神の杖》の効果!1ターンに1度、自分フィールドのほかの水属性エクシーズモンスター1体の攻撃力をターン終了時まで装備モンスターに加える。《ナイトメア・シャーク》の攻撃力は2000!よって、攻撃力が2000アップする!」

 

CNo.101S・H・Dark Knight ランク5 攻撃2800→4800

 

「バトルだ!《S・H・Dark Knight》で《メタルフォーゼ・アダマンテ》を攻撃!!ファイナル・カオスフォール!!」

《CNo.101S・H・Dark Knight》が杖に力を籠め、横に薙ぎ払うと同時にカオスのエネルギーで染まった巨大な波が発生し、野呂のフィールドを襲う。

「ぐううああああ!!!」

波に飲み込まれた《メタルフォーゼ・アダマンテ》が消滅し、野呂は大きく吹き飛ばされる。

 

野呂

ライフ4000→1200

 

「まだだ!!《激瀧神の杖》の効果発動!装備モンスターが戦闘で相手モンスターを破壊したとき、オーバーレイユニットを1つ取り除くことで、続けてもう1度だけ攻撃できる!!」

「何!?」

「地獄へ落ちろ、野呂ぉ!!」

凌牙の叫びと共に、再び《CNo.101S・H・Dark Knight》が杖に力を宿し、カオスの波を召喚する。

再び発生した波は最初よりも大きく、《メタルフォーゼ・ゴルドライブ》と野呂を飲み込んでいった。

 

野呂

ライフ1200→0

 

アビス・シャーク

レベル3 攻撃1200 守備1500 水属性 魚族

【Pスケール:青6/赤6】

(1):このカードが表側表示で存在する限り1度だけ、自分フィールドの水属性Xモンスターの攻撃宣言時に発動できる。ターン終了時までそのモンスターの攻撃力を元々の攻撃力を倍にした数値にする。

【モンスター効果】

このカード名のカードの効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードの召喚に成功したとき、自分フィールドにほかのモンスターが存在しない場合に発動する。自分の墓地に存在する水属性Xモンスター1体を特殊召喚し、このカードをそのモンスターの下に置いてX素材とする。この効果で特殊召喚されたモンスターはターン終了時、X素材が存在しない場合、破壊される。

 

クリスタル・シャーク

レベル5 攻撃2200 守備1800 水属性 魚族

【Pスケール:青2/赤2】

(1):このカードが表側表示で存在する限り1度だけ、自分フィールドの水属性Xモンスターが相手モンスターと戦闘を行うときに発動できる。ターン終了時まで戦闘を行う相手モンスターの攻撃力を元々の攻撃力を半分にした数値にする。

【モンスター効果】

(1):水属性Xモンスターをリリースしてこのカードのアドバンス召喚に成功したときに発動する。デッキから同じレベル・種族の水属性モンスター2体を手札に加える。(同名カードは1枚まで)

(2):P召喚に成功したこのカードを素材に水属性XモンスターのX召喚に成功したとき、そのXモンスターは以下の効果を得る。

●このカードは戦闘では破壊されない。

 

サイレント・シャーク

レベル4 攻撃1600 守備1600 水属性 魚族

【Pスケール:青4/赤4】

(1):このカードが表側表示で存在する限り1度だけ、自分フィールドの水属性Xモンスターを対象に発動できる。そのモンスターはターン終了時まで戦闘では破壊されず、相手のカード効果を受けない。

【モンスター効果】

(1):このカードの召喚に成功したとき、自分フィールドのX素材となっている水属性モンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターを特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効化され、レベルは4となり、攻撃できない。

(2):このカードをEXデッキからP召喚に成功したとき、自分フィールドにこのカード以外のモンスターが存在しない場合に発動できる。墓地からレベル4・水属性モンスターを2体まで特殊召喚する。その後、それらのモンスターを素材として水属性XモンスターのX召喚を行う。

 

激瀧神の杖

装備魔法カード

ランク5以上の水属性Xモンスターにのみ装備可能。

(1):1ターンに1度、自分フィールド・墓地に存在する水属性Xモンスター1体を対象に発動できる。ターン終了時まで、装備モンスターの攻撃力はそのモンスターの元々の攻撃力分アップする。

(2):1ターンに1度、装備モンスターが戦闘で相手モンスターを破壊したときに発動できる。装備モンスターのX素材を1つ取り除き、もう1度だけ続けて攻撃する。

 

「ふ、ふふふ…」

敗北したにもかかわらず、表情を変えることなく、笑う余裕すら見せる野呂を凌牙はにらみつける。

野呂が敗れてもなお、デュエル戦士たちは植え付けられた恐怖心から戦いを辞める様子がない。

「私を倒したとしても…何も、変わりません。神代凌牙、既に時計の針は動いている。あなたがしたことは、ただその針をほんのわずかに遅らせただけです…」

デュエルディスクを操作し、底から発生する光を自らに向ける。

それを見た凌牙は彼に背中を向けた。

「特等席を確保して…お待ちしていますよ」

その言葉を最後に、野呂の姿は光とともに消え、その場には笑みを浮かべる野呂がイラストとなっているカードだけが残った。

「くそっ…!早く来てくれ!!このままじゃあ!!」

傷を押して戦う権現坂と柚子やヴァプラ隊に守られる遊矢は必死に連絡を取るが、デュエル戦士の抵抗が激しく、あとどれくらいで到着できるかわからない状態だった。

だが、エドは苦しみながらもどこか頭の中がすっきりした感じがした。

「無駄だ…遊矢。僕はもう、助からない…」

「エド!!あきらめるなよ!!BAT-DIEなんかに…」

「遊矢、いいんだ…」

遊矢の手に自分の手を重ね、穏やかな表情で首を横に振る。

遊矢も、エドを助けることができないのは頭の中では分かっていた。

ただ、認めたくないだけだった。

「遊矢…僕の死体は必ず回収しろ…。そして、突き止めるんだ…。BAT-DIEの正体と…治療法を…。そうすれば、僕以外にBAT-DIEを打たれている人たちを…救える…うう!!!」

「エド!!俺のせいだ…俺がエドを…」

エドに笑顔を与えてしまったがために、今エドがここで死ぬことになってしまった。

何のためのデュエルだったのか、エンタメデュエルを否定されたも同然な悲しい結末に涙する。

「いいんだ…。君との、デュエルで…ようやく僕は素直になれた…。遊矢、君は僕を殺したんじゃない…。君は…僕を…救った…んだ…」

体から力が抜け、遊矢の手に重ねていた手がぶらりと下に垂れる。

(ああ…そんな!これが…エドの…人の死…命の消滅…!!)

ボロボロと涙があふれ出て、止まらない。

もし少し出会いが違えば、デュエルの楽しさを分かり合える仲間に慣れたはずの彼が今、死んでしまった。

「うわあああああああ!!!!」


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