遊戯王ARC-V 戦士の鼓動   作:ナタタク

115 / 145
第107話 解放の代償

ハートランドの空は鉛色に染まり、戦場を洗い流すように雨が降り続ける。

雨の中、デュエルディスクとデッキを没収されたデュエル戦士たちがレジスタンス達の手で連行される。

連行するレジスタンス達と避難民たちは憎しみのこもった目で彼らを見ていた。

「あいつらが家族を…俺たちの街を!!」

「殺してやる!!殺してやりたいよ!」

ヴァプラ隊も警備の列に加わっており、いつでも鎮圧できるようにデュエルディスクを展開している。

デュエル戦士達だけでなく、憎しみで暴走するかもしれない住民やレジスタンスメンバーをいつでも対処できる。

スタンダード次元にいるヴァプラ隊の大半を送り込んでいるため、今のヴァプラ隊とレジスタンスの比率は3:2。

鎮圧されることは分かっているため、憎しみを無理にでも飲み込むしかない。

侑斗はその光景を校舎の談話室の窓から見ていた。

「ユウ…これ、カード化された人達の…」

いつもなら笑顔を見せるウィンダだが、今は違う。

悲しげで、今にも泣き出しそうな表情だ。

確かに、エクシーズ次元の解放には成功した。

彼の手にはエクシーズ次元の基地で見つかった『欠片』が入ったカプセルが握られている。

レジスタンスにもヴァプラ隊にも、少なくない犠牲者が出ている。

ウィンダから受け取ったタブレット端末を手にする。

あくまで手元にあるのは現状確認できるだけの数でしかない。

「…」

「それに、翔太君のことも」

「うん。彼の中にベクターがいる…」

今回は凌牙が止めたおかげで、一時的にベクターを抑えることができた。

しかし、だからといって、ベクターがもう表出しないとは限らない。

現状、翔太を殺す以外にベクターを抹殺する方法はないだろう。

しかし、翔太を生かしつつ、ベクターを消滅させる手段もある。

(残り3枚の記憶のカード…それで翔太君が体の主導権を完全に掌握できる…か)

戻ってきて、少しだけ落ち着きを取り戻した翔太が伝えてくれたことだ。

彼の中にいるというもう1つの魂、石倉純也の弟である石倉純次の存在。

普通の人なら世迷言として信じなかったかもしれない。

だが、その普通とは違う経験をいくつも重ねてきたからこそ、彼の言葉を信じることができた。

「あとは、彼自身がどれだけベクターを押さえつけることができるか」

彼のことも気がかりだが、今はそれ以上に重要なことが残っている。

エクシーズ次元のレジスタンスの協力を取り付け、3つの次元の連合軍でアカデミアを攻撃する。

決戦のための準備のため、スタンダード次元へ戻らなければならない。

同時に、BAT-DIEのこともある。

(BAT-DIEを消さない限り、アカデミアとの戦争がどちらかが全滅するまで終わらない殲滅戦になってしまう…)

その地獄の入り口を凌牙たちは目にしている。

BAT-DIEに殺される恐怖にかられたデュエル戦士達の悲しい姿。

その恐怖に突き動かされたデュエルから遊矢たちを守るために、増援で駆け付けたヴァプラ隊の何人かが犠牲になった。

戦いが収束した後で、そのデュエルの当事者となった沢渡と権現坂は怒りをあらわにしていた。

(俺はアカデミアの奴らが許せねえ…けど、そいつらに戦いを強要して、駒みたいにしてやがることがもっと許せねえよ!!)

(なぜだ…?なぜアカデミアはこうもデュエルを汚すことができる!?仲間の命をも一片の紙のごとく捨てることができるのだ!?)

「BAT-DIE、そしてアークエリア・プロジェクト…。エクシーズ次元を解放しても、少し計画が遅れるだけ…」

おそらく、それは『欠片』を失ったとしても変わらないことなのだろうか。

そもそも、なぜアカデミアは人々をカード化する、いやしなければならないのかも疑問だ。

そのようなまどろっこしい方法を取らなくても、侵略はできるはずだ。

(真実に近づけたと思ったけれど、結局わからないことだけが増えてしまった…。一体、アークエリアプロジェクトは…赤馬零王の計画は何なんだ…?)

 

学校外の開けた場所で、エドの遺体が入ったカプセルがヴァプラ隊の手でヘリに運ばれ、ヘリは上空で次元転移をする。

スタンダード次元のLDS管轄の病院で、エドを殺したBAT-DIEの解析と治療法を見つけてくれるはずだ。

「エド…」

柚子と共に遊矢はそれを見送っていた。

ヘリが見えなくなると、遊矢はすぐに屋内へのドアへ向けて歩いていく。

「遊矢…」

「行こう、柚子。見送りは済んだから…さ」

振り返り、笑みを見せる遊矢だが、柚子にはそれがあまりにも悲しすぎた。

柚子が見たい笑顔は曇り一つない、純粋に心の底から見せてくれる笑顔だ。

今の笑顔からは喜びではなく、悲しみしか感じることができない。

思わず柚子は駆け寄り、後ろから彼を抱きしめる。

「柚子…」

「我慢、しなくていいよ…遊矢…。誰も、見てないから…」

今ここにいるのは2人だけ。

周りのことなど気にする必要もない。

だからこそ、素直に感情を出してもいい。

悲しみを我慢しなくていい。

柚子の手に触れる遊矢の手が次第に震え始める。

震えが次第に胴体に、足に伝染していき、膝から崩れる形でその場にうずくまる。

「俺は…俺は、エドを…救えなかった…!!」

確かにエドを笑顔にすることができた。

だが、BAT-DIEにむしばまれ、死んでいくエドをただ見ていることしかできなかった。

冷たくなっていく彼に何もできなかった。

その現実と己の無力さが遊矢に絶望を突きつける。

遊矢の理想をあざ笑うかのように否定する。

次第に遊矢の目から涙が零れ落ちる。

雨と同じく、ポタポタと床に落ちるが、どれも等しく床を濡らすだけだった。

そんな遊矢をどうやって慰めればいいのか、柚子にはわからない。

エドの言葉をもう1度伝えたからと言って、それで区切りをつけることなどできないだろう。

だから、柚子にできるのはこれだけだった。

次第に耐えきれなくなった遊矢は振り返り、柚子を抱きしめ、声を上げて泣き始める。

その彼の悲しみを感じ、柚子も目を閉じ、彼を抱きしめたまま静かに泣いた。

明日からの、これからの自分たちの未来が見えないまま…。

 

「そうか…エクシーズ次元を取り戻したのは喜ばしいが、まさかBAT-DIEを味方に撃ち込んでいたとはな…」

レオコーポレーションの社長室で、侑斗と次元間通信を行う零児はあまりのことに目を閉じ、考え込む。

裏切者を抹殺するためとはいえ、味方を殺すウイルスをあらかじめデュエル戦士たちに投与しておく。

大局的に見ると正しいかもしれないが、それは人間のやることではない。

(ここまで…狂気に落ちてしまったというのか、父さん…!!)

幼いころの、自分と母を捨てる前の零王を零児は思い出す。

 

幼いころから秀才だった零児のため、零王は日美香に説得して家族そろってアメリカに引っ越し、彼を名門学校へ進学させてくれた。

そして、彼は家族のために日夜レオコーポレーションの社長としての仕事に励んでいた。

そんなある日、学校から帰ってきた零児を待っていたのは、まだ会社にいるはずの零王だった。

余り笑っておらず、説教のためだろうと思った零児は心当たりもあることから、「ただいま」というだけで沈黙していた。

日美香は買い物に出て不在で、2人はテーブルをはさんで対面する形で椅子に座る。

「零児、どうしたんだ?教授から成績が落ちたと連絡が来たぞ。さすがにその年齢で大学は無理だろう…とな」

「お説教のつもり…?」

穏やかな口調で、あまり怒っているようには見えない。

零王はコーヒーを一口飲んだ後で、もう1度零児を見る。

「まぁ、そうでもあり、そうでもない。お前が望むならそうすればいい。私はお前があの大学の授業についていけていないということなど思っていない。わざと…テストを白紙で提出したな?」

フフフと笑いながら、見透かすように零児を見る。

そのテストは国際経営学の小テストで、零児はそのテストを白紙で提出し、それを見た教授は大いに驚いていたという。

「間違った答えを書くのはプライドが許さなかったか?それでも、罠を張るときはその罠にリアリティを持たせるべきだ。例えば…まるで正解みたいにもっともらしく間違った答えを書くとか。それにしても、驚いたよ。わざと成績を下げて私の興味を引こうなどと…」

すっかり説教する気がないようで、笑いながら零児の肩に手を置く。

その後は再び同じようなことになったときのもっともらしい間違った答えの書き方講座が彼女が帰ってくるまで続いた。

そして、その日は珍しく家族そろっての晩御飯になり、楽しく談笑しながらその時間を過ごした。

 

(あの時…中々父さんと会えなくて寂しかった。それを分かってくれて、わざわざ休みを取って、私のために時間を作ってくれた…)

変わってしまう前の零王はまさに零児にとっては人生の目標というべき存在で、頼れる理想的な父親だった。

そんな彼だからこそ、今ではすっかり彼を毛嫌いしている日美香も彼と結婚し、人生を共にしようと思ったのかもしれない。

(だが…今はどうだ!?家族もレオコーポレーションも捨て、別次元を侵略する独裁者に変わってしまった…!そして、私たちの故郷を…スタンダード次元をもその矛先としている…父さん、『欠片』があなたをここまで変えてしまったというのか!?)

エクシーズ次元の『欠片』を手にしたことで、これで残る『欠片』は融合次元の、アカデミアが持っている1つだけになった。

その1つを奪い、アカデミア本部と零王を倒さなければ、この戦いは終わらない。

(そして、この戦いが終わった暁には、すべての『欠片』をもう誰の手にもわたらないよう封印する…。私や父さんのように、『欠片』の力で世界を混乱させるようなことがあってはならない…)

ノートパソコンに設計図が送られてきて、それを読む零児の額から冷たい汗が流れる。

設計図の機械の名前は『アキレスの盾』。

アカデミアとの決戦で欠かすことのできない重要なピースだ。

そして、これは零児が『欠片』から得た知識で生み出されている。

「ふっ…私も、毒されているな。『欠片』に…。血は争えないというのか…?」

『欠片』の力を使うたびに、心の中に欲望が浮かび上がる。

その力でスタンダード次元を統べたい、人々を思うようにコントロールしたいという支配欲。

融合次元そのものを破壊することで最小限の犠牲による次元戦争終結という恐ろく狂気じめた発想。

おまけに『欠片』の力を得た自分が世界で最高の存在だという妄想までもがあふれ出ていた。

そのような感情を浮かべることを恐れ、何度か『欠片』を捨てようと考えたこともある。

だが、『欠片』に立ち向かうことができるのは『欠片』のみ。

そして、この戦争の原因は父親である零王。

だからこそ、零児は1人で『欠片』の誘惑に耐えながら、その力を使い続けてきた。

(戦争が終わるまででいい…。持ちこたえてくれ…)

 

「翔太君、ごはん持ってきたよー」

校舎地下の独房代わりに使われている倉庫に入った伊織はそこに入れられている翔太に弁当箱を渡す。

こちらへ派遣されたヴァプラ隊が補給物資とともに持ってきたもので、レオコーポレーションが開発したレーションだ。

その容器を見た翔太は見慣れた嫌いなものに露骨なほど嫌がるが、腹を空かせているため、文句は言えない。

エクシーズ次元へ向かう前に、味に慣れるためということで翔太達は何度もそれを食べた。

栄養価は高いものの、かなりまずいとのことで、特に味にうるさい沢渡が嘔吐してしまうほどだ。

そんなものを食べなければならないのかとがっかりしながら、容器のふたを開ける。

中身は苦い汁が入った油揚げのようなハンバーグとパサパサした米、梅干し以上に酸っぱい葉物野菜ともはや色が元々の贖罪の者とは全く別物と化してしまった根野菜が詰まっている。

一番無難なのはパサパサ米で、それを口に運ぶ。

食べている間、ずっと無言のままの翔太が気になり、伊織は彼の隣に座る。

(なんて、言えばいいのかな…?)

凌牙によって気絶させられる直前の、あの取り乱した翔太の姿が頭に浮かぶ。

今はおとなしくしているものの、心の中では自分の中にいるベクターを恐れ、嫌悪しているのだろう。

おそらく、今どんな言葉をかけたとしても、翔太にとっては逆効果にしかならないだろう。

「ちっ…まずいメシだ」

黙って座る伊織には目を合わせず、翔太はひたすらそのまずいレーションを食べ続ける。

そんな彼を見た後で、伊織は倉庫の中を見る。

(思ったより広い…ここ…)

倉庫とは言うが、バスケットボールなどの本来なら入って当たり前のはずの球技道具などはすべて運びされており、中に残っているのはそれらを入れていたカートや棚だけで、それらはすっかりボロボロになっている。

元々この校舎には800人以上の生徒と教師を収容していたようで、そのせいかこの倉庫も遊勝塾のデュエルリングの半分くらいの広さだ。

アクションデュエルはできないが、それでもデュエルをするには十分だ。

幸い、独房に入れられる際にはデュエルディスクとデッキは没収されていない。

今の彼のデュエルディスクはリアルソリッドビジョンシステムに一部制限が加えられているが、それでも普通のデュエルをするには何の問題もない。

ならば、やることは一つと伊織は立ち上がる。

「翔太君、久しぶりに私とデュエルをしない?」

翔太の前へ行き、展開したデュエルディスクを構える。

翔太の箸の動きが一度は止まるものの、結局また動きはじめ、やがて米を食べきる。

「いいからデュエルしようよ!ずっとこんなところで縮こまってても、体がなまるだけだよ?」

「好きでこんなところにいるんじゃねえよ…」

気が付いたらここに押し込められていて、スタンダード次元への帰還の日が来るまで出られないということになっていたから出ていないだけ。

少なくとも、扉越しに凌牙からはそういわれた。

「だったら、すごく暇でしょ?早く食べ終えて、デュエルの準備をして!」

「うるせえなぁ…今はデュエルをする気はねえよ」

「ふーん、もしかして、今の私とデュエルをするのが怖いってこと?」

「何…?」

挑発するかのように眉を動かし、口角を釣り上げてみてくる伊織に翔太の手が止まる。

明らかに怒気のこもった声で、それでこそ伊織にとっては好都合な話だ。

「そりゃあ、そうだよねー。だって、次元戦争でいろんな人とデュエルをしてきて、すっごく強くなったんだから…今なら翔太君も楽勝かも」

「ふざけたことを言ってんじゃねえぞ…?伊織のくせに」

「そーんなことを言っても怖くなーいよ。翔太君のくせにー」

これまで何度も自分に対して上から目線で言葉を吐いてきた翔太にこれを機にやり返してやろうとせめたてる。

我慢できなくなったのか、それともいい加減にまずいレーションを食べたくなくなったのか、翔太は残りを床にぶちまけて立ち上がる。

既にデュエルディスクは展開されており、5枚のカードもドロー済みだ。

「そうそう、そうじゃなきゃ」

「さんざん言ってきたんだ…その安い挑発に乗ってやるよ」

「安い挑発で悪かったわねー。でも、その挑発に乗ったこと、後悔させてあげる」

勝敗は伊織にとっては問題ないことだが、やはり負けるよりは勝った方がいい。

これまで何度か翔太とデュエルをしてきたが、いまだに白星がない。

ここで1つでも白星がほしいところだ。

「さあ、楽しもう!翔太君!」

「楽しむ…?勝手に言ってろ」

「「デュエル!!」」

 

伊織

手札5

ライフ4000

 

翔太

手札5

ライフ4000

 

「私の先攻!手札から《E・HEROブレイズマン》を召喚!」

 

E・HEROブレイズマン レベル4 攻撃1200

 

「《ブレイズマン》の効果発動!デッキから《融合》を1枚手札に加えるよ。そして、手札の《スノーピクシー》の効果発動。手札のこのカードと私のフィールドのE・HEROを素材に融合召喚を行うことができる!私は《スノーピクシー》と《ブレイズマン》を融合。雪の妖精よ、炎の切り込み隊長よ、今こそ1つになりて、新たなヒーローに進化せよ!融合召喚!現れて、永久凍土の申し子、《E・HEROアブソルートZero》!!」

 

E・HEROアブソルートZero レベル8 攻撃2500

 

「いきなり、《アブソルートZero》か…」

「そして、私はカードを2枚伏せてターンエンド!」

 

伊織

手札5→1(伏せカード、と手札のうち1枚《融合》)

ライフ4000

場 E・HEROアブソルートZero レベル8 攻撃2500

  伏せカード2

 

翔太

手札5

ライフ4000

場 なし

 

「面倒だな…」

「フフン。怖気づいちゃった?」

余裕な伊織はドヤ顔を見せてくる。

それにはムカッとした翔太だが、むやみに《E・HEROアブソルートZero》を除去できないうえ、伏せカードにも問題がある。

「《アブソルートZero》と《マスク・チェンジ》、《M・HEROアシッド》か…」

この3枚の組み合わせによって、伊織は相手フィールドのカードを全滅させることができる。

伏せカードのうちの1枚に《マスク・チェンジ》が隠れていても不思議ではない。

「俺のターン、ドロー」

 

翔太

手札5→6

 

「俺はカードを2枚伏せ、ターンエンド」

 

伊織

手札1(伏せカード、と手札のうち1枚《融合》)

ライフ4000

場 E・HEROアブソルートZero レベル8 攻撃2500

  伏せカード2

 

翔太

手札6→4

ライフ4000

場 伏せカード2

 

「あれあれー?モンスターを召喚しなくていいの?もしかして、そんなに《アブソルートZero》が怖いのかなー?」

「言ってろ。お前のターンだぞ」

うっとうしく感じた翔太はぶっきらぼうに手を振って、彼女を急かすが、あまり覇気が感じられない。

あるのはさっさとデュエルを終わらせたいという思いだけだった。

「ふーん、まぁいいや。私のターン、ドロー!」

 

伊織

手札1→2

 

「私は手札から《E・HEROエアーマン》を召喚!」

 

E・HEROエアーマン レベル4 攻撃1800

 

「《エアーマン》の効果発動!デッキからHEROモンスター1体を手札に加えるか…」

「こいつ以外のHEROの数だけ、フィールドの魔法・罠カードを破壊できる」

「うん?」

急に翔太が《E・HEROエアーマン》のもう1つの効果を宣言したことに、伊織は違和感を抱く。

ちょっと気落ちしている翔太だが、無意味にそんなことを言っているようには思えない。

「気をつけな。もしここで効果の選択を誤れば、お前の虎の子の《アブソルートZero》と《アシッド》のコンボは不発に終わるぞ」

「あ…やっぱり、《マスク・チェンジ》が気になっちゃう?でも、もっと気にしなきゃいけないことがあるんじゃない?」

《E・HEROエアーマン》と《E・HEROアブソルートZero》がフィールドに存在し、翔太のフィールドにはモンスターはいない。

この2体のダイレクトアタックが決まれば、これで勝敗がついてしまう。

「うーーん。あ、もしかして!!」

伊織の脳裏に1枚のカードが思い浮かぶ。

そのカードがあれば、たとえあのコンボを使ったとしても、逆転されることに変わりはなくなってしまう。

「じゃあ、私は《エアーマン》の効果で翔太君の右側の伏せカードを破壊!!」

《E・HEROエアーマン》の両翼のファンから発生する竜巻が翔太の伏せカードを飲み込み、粉々に破壊する。

(もう1枚の伏せカードが気になるけど、これなら…!)

「俺はお前が破壊した伏せカード、《ミラーフォース・ランチャー》の効果を発動」

「え…?」

「セットされているこのカードが相手の効果によって破壊され墓地へ送られたとき、墓地のこのカードと手札・デッキ・墓地に存在する《聖なるバリア-ミラーフォース》を俺のフィールドにセットすることができる」

破壊したはずの《ミラーフォース・ランチャー》が何事もなかったかのようにセットされた状態でフィールドに戻ってきたうえに、《聖なるバリア-ミラーフォース》のセットまで許してしまった。

「で、でも…!セットしたターンなら、《ミラーフォース》は発動できないはず!バトル!!《アブソルートZero》でダイレクトアタック!瞬間氷結!!」

《E・HEROアブソルートZero》両手から吹雪を発生させ、翔太を氷漬けにしようとする。

「悪いが、《ミラーフォース・ランチャー》と《ミラーフォース》はこの効果でセットされた場合、セットしたターンでも発動できる。俺は《ミラーフォース》を発動。これで、お前のフィールドの攻撃表示モンスターはすべて破壊される」

「ううう…でも、私は速攻魔法《マスク・チェンジ》を発動!私のフィールドのHERO1体を同じ属性のM・HEROに変身させる!私は《エアーマン》を選択!疾風の戦士よ、今こそ神風の力を宿し、新たなヒーローに進化せよ!変身召喚!《M・HEROカミカゼ》!!」

吹雪を受け止めた《聖なるバリア-ミラーフォース》から光が拡散し、その光の中に《E・HEROアブソルートZero》が消えていく。

そして、仮面を装着した《E・HEROエアーマン》はその姿を《M・HEROカミカゼ》へと変化させ、拡散する光を上空で飛び回って回避していく。

 

M・HEROカミカゼ レベル8 守備1900

 

「《カミカゼ》がフィールドに存在する限り、翔太君はバトルフェイズ中にモンスター1体しか攻撃できないよ!」

「だが、《カミカゼ》の守備力は1900。突破できるモンスターの方が多いな」

「それはそうだけど…でも、《ミラーフォース》に巻き込まれないだけマシ!私はこれで、ターンエンド!」

 

伊織

手札2→1(伏せカード、と手札のうち1枚《融合》)

ライフ4000

場 M・HEROカミカゼ レベル8 守備1900

  伏せカード1

 

翔太

手札4

ライフ4000

場 伏せカード2(うち1枚《ミラーフォース・ランチャー》)

 

《ミラーフォース・ランチャー》1枚のために崩されたのは痛いが、フィールドにモンスターを残すことができたのは伊織にとって幸いだ。

だが、手札の枚数では翔太の方が勝っており、伊織の手の中にある《融合》は今の状況で死に札だ。

《M・HEROカミカゼ》の壁も、破壊さえできれば大したことはない。

「俺のターン、ドロー」

 

翔太

手札4→5

 

「俺はスケール2の《魔装剛毅アトレウス》とスケール5の《魔装獣スフィンクス》でペンデュラムスケールをセッティング…これで俺はレベル3と4のモンスターを同時に召喚可能。更に、俺は《スフィンクス》のペンデュラム効果を発動。デッキの上からカードを3枚まで墓地へ送り、ターン終了時まで墓地へ送ったカードの数だけ、このカードのスケールを変動させる。俺は3枚カードを墓地へ送り、《スフィンクス》のスケールを5から8に変更する」

 

デッキから墓地へ送られたカード

・魔装光

・魔装猫バステト

・魔装獣ユニコーン

 

魔装獣スフィンクス(赤) Pスケール5→8

 

「これで、俺はレベル3から8までのモンスターを同時に召喚可能。来たれ、時の果てに眠りし英雄の魂。漆黒の魂と契約し、封印から解き放たん。ペンデュラム召喚。現れろ、《魔装騎士ペイルライダー》、《魔装郷士リョウマ》)

 

魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2500

魔装郷士リョウマ レベル4 攻撃1900

 

「俺は《リョウマ》の効果を発動。このカードが手札からペンデュラム召喚に成功したとき、墓地の魔装モンスター1体を手札に戻す。俺は《ユニコーン》を手札に戻す。そして、《ユニコーン》を通常召喚」

 

魔装獣ユニコーン レベル4 攻撃1600

 

「《ユニコーン》の効果。このカードを《ペイルライダー》の装備カードとし、攻撃力を800アップさせる」

《魔装騎士ペイルライダー》を背に乗せた《魔装獣ユニコーン》の体が青く染まり、第4の騎士は光剣を手にする。

「これで…今度は俺が1ターンキルできる状態になったな」

《魔装獣ユニコーン》を装備した《魔装騎士ペイルライダー》が戦闘で相手モンスターを破壊し墓地へ送ったとき、破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを与える。

これで、《M・HEROカミカゼ》を戦闘破壊すれば、伊織に2700のダメージを与えることができる。

更に、その後で《魔装郷士リョウマ》でダイレクトアタックをすれば、勝敗が決まる。

(あとは、あいつの伏せカードだがな…)

伊織のフィールドに残った最後の1枚の伏せカード。

除去しておきたいところだが、自分が《ミラーフォース・ランチャー》を使ったこともあり、下手に刺激するととんでもないしっぺ返しが待っている可能性がある。

「バトル!《ペイルライダー》で《カミカゼ》を攻撃。クワトロ・デスブレイク」

《魔装騎士ペイルライダー》を乗せた《魔装獣ユニコーン》が走り出し、《魔装騎士ペイルライダー》は光剣で彼を両断する。

両断された《M・HEROカミカゼ》が消滅し、その衝撃が伊織を襲う。

「キャアアア!!」

 

伊織

ライフ4000→1300

 

「私は罠カード《ヒーロー・シグナル》を発動!デッキからレベル4以下のE・HERO1体を特殊召喚する。私は《シャドー・ミスト》を特殊召喚!」

 

E・HEROシャドー・ミスト レベル4 守備1500

 

「「ちっ…なら、《リョウマ》で《シャドー・ミスト》を攻撃」

《魔装郷士リョウマ》がピストルを連射し、特殊召喚されたばかりの《E・HEROシャドー・ミスト》を穴だらけにして消滅させた。

「《シャドー・ミスト》の効果!このカードが墓地へ送られたとき、デッキから《シャドー・ミスト》以外のE・HEROを手札に加えることができる。私はデッキからもう1枚の《エアーマン》を手札に加える!」

「俺は永続罠《ミラーフォース・ランチャー》を発動。俺のターンのメインフェイズ時に、手札のモンスター1体を墓地へ送り、デッキ・墓地から《ミラーフォース》をセットする。俺は墓地の《ミラーフォース》をセット」

 

手札から墓地へ送られたカード

・魔装壁ゴルゴー

 

「俺はこれで、ターンエンドだ。同時に《スフィンクス》のペンデュラム効果は終了する」

 

伊織

手札1→2(《融合》、《E・HEROエアーマン》)

ライフ1300

場 なし

 

翔太

手札5→0

ライフ4000

場 魔装騎士ペイルライダー(《魔装獣ユニコーン》装備) レベル7 攻撃3300

  魔装郷士リョウマ レベル4 攻撃1900

  魔装剛毅アトレウス(青) Pスケール2

  魔装獣スフィンクス(赤) Pスケール8→5

  ミラーフォース・ランチャー(永続罠)

  伏せカード2(うち1枚《聖なるバリア-ミラーフォース-》)

 

(《エアーマン》が手札に加わったのはいいけど、これだと…)

墓地に《魔装猫バステト》が落ちたうえに、ペンデュラムゾーンには《魔装剛毅アトレウス》がいる上に《ミラーフォース・ランチャー》の効果で再びフィールドに戻った《聖なるバリア-ミラーフォース-》がある。

(でも、安心した…。翔太君のデュエル、ブレがなくて)

ベクターのことを聞き、独房の中の翔太からは気力が感じられなかった。

でも、今の翔太のプレイはいつもの彼のものだ。

「負けられない…!私のターン、ドロー!」

 

伊織

手札2→3

 

「私は手札から魔法カード《聖天使の施し》を発動。私のフィールドにカードがない時、デッキからカードを2枚ドローして、その後で手札1枚を墓地へ捨てる!」

 

手札から墓地へ送られたカード

・E・HEROゴルディオン・ヴァルキリー

 

「そして、手札から《E・HEROエアーマン》を召喚!」

 

E・HEROエアーマン レベル4 攻撃1800

 

「《エアーマン》の効果発動!デッキから《ドラゴンガール》を手札に加える。そして、手札から魔法カード《融合》を発動!《エアーマン》と《ドラゴンガール》を融合!疾風の戦士よ、竜を愛でる少女よ!今こそ1つになりて、新たなヒーローに進化せよ!融合召喚!現れて、竜巻の王者、《E・HERO Great TORNADO》!!」

 

E・HERO Great TORNADO レベル8 攻撃2800

 

「《Great TORNADO》の効果発動!このカードの融合召喚に成功した時、相手フィールド上のモンスターの攻撃力・守備力を半分にするよ!ダウン・バースト!!」

鉤から放たれる暴風が翔太のフィールドを襲い、風を受けたモンスターたちの力を奪っていく。

 

魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃3300→1650

魔装郷士リョウマ レベル4 攻撃1900→950

 

「更に《ドラゴンガール》の効果!!このカードを融合素材としてHEROと名のつく融合モンスターの融合召喚に成功した時、デッキからカードを2枚ドローして、その後で手札を1枚墓地へ送るよ!!」

 

手札から墓地へ送られたカード

・E・HEROムーンナイト

 

「墓地の《ムーンナイト》の効果発動!墓地のこのカードを除外することで、デッキから攻撃力1500以下のHERO1体を特殊召喚できる。私は《バブルマン》をデッキから特殊召喚!」

伊織の背後に三日月を模したレリーフがついた水色のスーツを着たオレンジ色の髪の剣士の幻影が現れ、その姿が《E・HEROバブルマン》に変化・実体化してフィールドへとジャンプする。

 

E・HEROバブルマン レベル4 攻撃800

 

「そして、手札から速攻魔法《マスク・チェンジ》発動!《バブルマン》をM・HEROに変身させる!水のトリックスターよ、酸の力を宿し、新たなヒーローに進化せよ!変身召喚!《M・HEROアシッド》!!」

 

M・HEROアシッド レベル8 攻撃2600

 

「ここで《アシッド》か…!」

「《アシッド》の効果発動!このカードの特殊召喚に成功したとき、相手フィールドの魔法・罠カードをすべて破壊し、相手フィールドのモンスターの攻撃力を300ダウンさせる!アシッドレイン!」

「なら俺は速攻魔法《揺れる眼差し》を発動。ペンデュラムゾーンの《スフィンクス》と《アトレウス》を破壊し、お前に500のダメージを与える!」

強酸の雨が降る前に2体のペンデュラムモンスターが姿を消し、フィールドの中央から波紋が発生する。

 

伊織

ライフ1300→800

 

「そして、デッキから《魔装砲士ボナパルド》を手札に加える。更に俺は罠カード《アレスの誓約》を発動。俺のフィールドに魔装モンスターが存在し、相手フィールドにエクストラデッキから特殊召喚されたモンスターが存在するとき、デッキから魔装モンスター1体を墓地へ送り、デッキからカードを1枚ドローする」

 

デッキから墓地へ送られたカード

・魔装盾イージス

 

「でも、これで《ミラーフォース・ランチャー》と《ミラーフォース》は破壊できる!」

強酸の雨が翔太の魔法・罠カードを溶かしていき、《魔装獣ユニコーン》が消滅する。

そして、雨を浴びた2体のモンスターの体からは煙が出て、力を弱める。

 

魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃1650→850→550

魔装郷士リョウマ レベル4 攻撃950→650

 

「ふふん!これで形勢逆転だよ!」

「ちっ…一気に展開してきやがって」

たった1枚のドローから一気に状況をひっくり返してきた伊織のデュエルにさすがの翔太も舌を巻く。

ペンデュラムゾーンをがら空きにせざるを得なくなり、2体のモンスターの攻撃力も一気に低下した。

このまま2体の融合モンスターの攻撃を許せば、翔太の敗北が決まる。

「バトル!《Great TORNADO》で《ペイルライダー》を攻撃!!」

《E・HERO Great TORNADO》が煙を出した状態で片膝をつく《魔装騎士ペイルライダー》を鉤で切り裂く。

だが、《魔装騎士ペイルライダー》は握っていた光剣に力を籠め、攻撃を受けながらもその刃を嵐のヒーローのj腹部に突き刺す。

「《ペイルライダー》は…戦闘した相手モンスターを破壊する!!」

「でも、ダメージは来るよ!」

 

翔太

ライフ4000→1750

 

「そして、《アシッド》で《リョウマ》を攻撃!!これで終わりぃ!!」

《M・HEROアシッド》の銃から放たれる酸のこもった弾丸が《魔装郷士リョウマ》の額を撃ち抜き、消滅させる。

そして、弾丸はそのまま翔太を襲うが、彼の目の前に五芒星が中央に刻まれた白銀の盾を左手に握る女性の天使が現れ、弾丸を受け止める。

「俺は墓地の《魔装盾イージス》の効果を発動。墓地のこのカードを特殊召喚し、魔装モンスターとの戦闘で発生する俺へのダメージを0にする」

 

魔装盾イージス レベル4 守備1900

 

「ううう、間一髪で止められちゃった…」

「ヒヤリとは、したけどな…」

どうにか敗北は免れたが、一歩間違えば敗北が決まっていた分、ここまで自分を追い込んだ伊織に驚きを覚える。

「でも、良かった。翔太君…ちゃんと翔太君のデュエルができてるから」

「はぁ…?俺のデュエル?」

「うん。だから…翔太君は絶対にベクターに勝てるよ」

「無責任なことを…」

「それでもそう思ってる!あーーー、翔太君の中のベクター!ここで私が宣言するよ!!秋山翔太は絶対にあなたに勝つ!!どんなことがあっても!!だから…おとなしく翔太君の中に引きこもってなさーーい!!」

叫ぶ伊織自身も、この声がベクターに聞こえているとは思っていない。

だが、ひたすらに翔太を信じる伊織の言葉が少なからず翔太の心にしみこんでいく。

(あいつ…なんでここまで俺を…?)

「ふうう…すっきりした。私はカードを1枚伏せてターンエンド!」

 

伊織

手札3→0

ライフ800

場 E・HERO Great TORNADO レベル8 攻撃2800

  M・HEROアシッド レベル8 攻撃2600

  伏せカード1

 

 

翔太

手札0→2(うち1枚《魔装砲士ボナパルド》)

ライフ1750

場 魔装盾イージス レベル4 守備1900

 

「分からねえな…」

翔太のターンとなり、デッキトップに指をかける翔太がデッキトップに指をかけ、小さくつぶやく。

伊織のこともそうだが、どうしてここまで他人のために何かをしようとすることができるのか。

記憶を取り戻すことを中心にしか考えていない翔太には理解できない。

「翔太君だって同じだよ。忘れたことがないよ、私を初めて助けてくれた時のことを」

「…俺は何も言ってねーぞ」

いきなり自分の心を読んだかのような伊織の言葉にうろたえる。

「どれだけ一緒に戦ってると思ってるの?わかるよ」

「ちっ…」

舌打ちしてしまうが、なぜかそれが悪く感じられない。

あの時は確かに、伊織を助けることで頭がいっぱいだった。

そんなことは一度しかなく、それからまもなく多くの問題が降りかかったことでそのことはとっくに忘れていた。

正義の味方というのは柄じゃないが、少なくとも自分だけが違うというわけではないことがやっとわかった気がする。

「俺のターン、ドロー!」

 

翔太

手札2→3

 

「俺は手札から魔法カード《魔装天啓》を発動。俺のエクストラデッキ・墓地の魔装ペンデュラムモンスター2体を手札に加える。俺は《アトレウス》と《スフィンクス》を手札に加える。そして、再びこいつらでペンデュラムスケールをセッティング!」

再び翔太の前に2体のペンデュラムモンスターが現れ、光の柱を生み出す。

「そして、《スフィンクス》の効果発動。デッキの上からカードを3枚墓地へ送り、ペンデュラムスケールを3つ上げる」

 

魔装獣スフィンクス(赤) Pスケール5→8

 

デッキから墓地へ送られたカード

・魔装融合

・貪欲な壺

・魔装鬼ロクベエ

 

「これで俺はレベル3から7までのモンスターを同時に召喚可能。来たれ、時の果てに眠りし英雄の魂。漆黒の魂と契約し、封印から解き放たん。ペンデュラム召喚。現れろ、《魔装騎士ペイルライダー》、《魔装郷士リョウマ》、《魔装砲士ボナパルド》」

 

魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2500

魔装郷士リョウマ レベル4 攻撃1900

魔装砲士ボナパルド レベル5 攻撃2100

 

「そして、俺は手札の《RUM-魔装の刻印》を墓地へ送り、《ペイルライダー》を進化させる」

「そのカードって、もしかしてサヤカちゃんとのデュエルで…!!」

「こいつは俺のペンデュラムゾーンに2体の魔装カードが存在するときに、その方法でエクシーズ召喚できる。混沌の力を得た死の騎士が冥界へ魂を誘う!カオスエクシーズチェンジ!現れろ、けがれた富に包まれし魂を死へ誘う獣、《CX魔装死獣プルートー》!」

《魔装騎士ペイルライダー》の姿が猛々しい獣へと変貌していき、その眼はギロリと伊織のヒーローたちに向けられる。

 

CX魔装死獣プルートー ランク8 攻撃3500

 

「こいつの効果は知ってるよな?こいつのエクシーズ召喚に成功したとき、相手フィールドのセットされているカードをすべてこいつのオーバーレイユニットにする!」

その効果も既にサヤカから聞いており、その恐ろしさも知っている。

オーバーレイユニットと相手モンスターが存在する限り、オーバーレイユニットを取り除くことで、何度でも攻撃力をアップさせて連続攻撃することもできる。

「ということは…!!」

「そうだ。お前の頼みの綱の伏せカードを失う!バアル・ライトニング!!」

《CX魔装死獣プルートー》が引き起こした雷が独房を駆け巡り、伊織の伏せカードを貫く。

雷を受けた伏せカードはカオスオーバーレイユニットとなり、死の獣の糧となる。

「《プルートー》で《アシッド》を攻撃!ユーピテル・クロウ!!」

《CX魔装死獣プルートー》が雷で光る水晶の爪で《M・HEROアシッド》を引き裂こうとする。

今の伊織にはその攻撃を防ぐ手立てがなく、これは受けるしかない。

しかし、ただで終わるつもりはなかった。

「翔太君!今回は私、負けるつもりなんてないから!!」

「何?」

「私は墓地の《E・HEROゴルディオン・ヴァルキリー》の効果発動!!」

「そいつは…!」

伊織が《聖天使の施し》の効果で墓地へ送ったカードを思い出す。

伊織のフィールドに青色の服と金色の鎧を重ね着した、三つ編みをした金色のロングヘアーの少女が両手で剣を握り、《CX魔装死獣プルートー》の爪を正面から受け止める。

「このカードは私のHERO融合モンスターが相手モンスターの攻撃対象になったとき、墓地から除外することで、攻撃モンスターを破壊する!」

「ちっ…このタイミングだと…!」

《CX魔装死獣プルートー》は魔装騎士をカオスオーバーレイユニットにしている状態で効果を発動するとき、相手のカード効果の発動を禁じる。

しかし、それ以外のタイミングでは相手のカード効果の発動を妨害できない。

「まだまだ翔太君にはかなわないけど…これくらいならできる!!」

爪を仲間が受け止めている間に《M・HEROアシッド》が銃身が焼けるまで撃ち続け、《CX魔装死獣プルートー》の体が強酸の弾丸でボロボロになっていく。

「そして、破壊されたモンスターの攻撃力の半分のダメージをお互いに受ける!!」

「《プルートー》の攻撃力は3500!!ということは…!」

「そう!1750のダメージを受ける!!」

爪を受け止め続けた女騎士の体からまぶしい光が発生し、その光の中にフィールドと翔太達は飲み込まれていく。

光が収まると、お互いのフィールドのモンスターが消え、翔太と伊織だけが残っていた。

 

翔太

ライフ1750→0

 

伊織

ライフ800→0

 

魔装盾イージス

レベル4 攻撃0 守備1900 効果 光属性 天使族

(1):自分フィールドの「魔装」モンスターが戦闘を行うときに発動できる。手札・墓地に存在するこのカードを自分フィールドに特殊召喚し、その戦闘で発生する自分へのダメージを0にする。この効果を発動したターン、このカードは(2)の効果を発動できない。

(2):自分フィールドに存在する「魔装騎士」モンスター1体を対象に発動できる。自分フィールドに存在するこのカードを守備力1000アップの装備カード扱いとしてそのモンスターに装備する。

(3):この効果で装備カード扱いとなったこのカードの装備モンスターが破壊されるときに発動できる。代わりにこのカードを墓地へ送る。そして、そのモンスターはこのターン、戦闘・効果では破壊されない。

 

E・HEROムーンナイト

レベル4 攻撃1600 守備1500 効果 闇属性 戦士族

このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールドの「HERO」モンスターが相手モンスターを攻撃するとき、相手モンスターの攻撃力が攻撃モンスターを上回っている場合のダメージステップ開始時に発動できる。手札のこのカードを特殊召喚し、攻撃モンスターの攻撃力をターン終了時までその相手モンスターの攻撃力+1000にする。この効果で特殊召喚されたこのモンスターはターン終了時に墓地へ送られる。

(2):自分の墓地に存在するこのカードを除外し、自分にデッキに存在する攻撃力1500以下の「HERO」モンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターを自分フィールドに特殊召喚する。この効果を発動したターン、自分は「HERO」以外のモンスターを召喚・特殊召喚できない。

 

E・HEROゴルディオン・ヴァルキリー

レベル4 攻撃1500 守備1600 効果 光属性 戦士族

このカード名の(1)(2)の効果は1ターンにそれぞれ1度しか発動できない。

(1):1ターンに1度、自分のデッキから「HERO」モンスター1体を除外することで発動できる。このカードの攻撃力をターン終了時まで500アップさせる。この効果で墓地へ送られたカードはこの効果を発動してから2回目の自分スタンバイフェイズ時に自分の手札に加える。

(2):自分LPが相手よりも低く、自分フィールドの「HERO」融合モンスターが相手モンスターの攻撃対象となったとき、墓地のこのカードを除外することで発動できる。その攻撃を無効にし、攻撃モンスターを破壊する。その後、破壊したモンスターの攻撃力の半分の数値分のダメージをお互いに受ける。

 

「ったく、負けず嫌いなのかよ?お前は…」

勝てると思ったデュエルがまさかの自爆カードによって引き分けにされ、その場に座り込んだ翔太はため息をつく。

だが、内心はデュエルをする前よりも晴れやかになっていた。

「さあ?どうでしょー?」

「そういうの、ムカつくな。で、俺はいつここを出ればいいか、話はついたのか?」

「ああ、すっかり忘れてた!!今日の夕方、出ていいんだって!スタンダード次元へ戻る手伝いをしてほしいって…」

「忘れるなよ…」

自分が出れるか否かはどうでもいいのかと少しがっかりした翔太は敷布団代わり体操用マットで横になる。

肉体労働中心になるかもしれず、少しでも多く睡眠をとっておこうと考え、目を閉じる。

「えへへ、ごめんごめん。じゃあ、夕方ね!」

手を振った後で、伊織は独房を出ていき、鍵がかけられる。

「…ありがとうな」

再び1人になった空間の中で、誰にも聞こえないだろうと感謝の言葉を小さく口にする。

そして、固いマットの上であるにもかかわらず、ものの数分で眠りについた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。