「よし…!《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》でダイレクトアタック!螺旋のストライクバーストォ!!」
《剣の墓場》ので、《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》が放つブレスがフィールドががら空きになったタツヤを襲う。
「うわあああ!!」
タツヤ
ライフ2300→0
「くうう…結局、1ポイントもライフを削れなかった…」
「悪い…大丈夫か?タツヤ」
「大丈夫、というより、むしろそれが言いたいのは僕の方。遊矢兄ちゃんこそ、大丈夫なの?」
ランサーズがスタンダード次元に戻ってから半月が経過する中、遊矢はずっとデュエルに明け暮れていた。
先週は権現坂道場へ行き、権現坂を含めた弟子全員とのほとんど休みなしのデュエルに明け暮れ、昨日は霧隠料理スクールなど、舞網チャンピオンシップ出場のために公式戦を行ったデュエルスクールに通い、そこでかつてデュエルした3人と戦った。
そんな彼についていき、その姿を見ていた柚子がとても心配そうに見ていて、そんな彼女の彼を心配する声はタツヤ達も聞いている。
「別に。とにかく、今は強くならないといけないんだ…。いくらデュエルで笑顔を与えるって言っても、それを成し遂げる力がなくちゃ、意味がないんだ…」
「遊矢兄ちゃん…」
今の遊矢からは能天気なところがなりを潜めている。
デュエルで笑顔をという信念は崩れていないように見えるが、それ以上に彼が力を求めているように見えた。
(なんだろう…?遊矢兄ちゃんが変わっていってる…。一体、どうなっちゃうの?)
シンクロ次元で左腕を失い、エクシーズ次元では自分が救おうとしたとあるデュエリストがそうしようとしたことが原因で死んでしまったと聞いている。
そんな過酷な次元戦争が彼を変化させていっていることがタツヤは恐ろしかった。
「柚子…その話、本当なのか?」
「うん…遊矢がエド・フェニックスから聞いたって…」
塾長室で柚子から遊勝の話を聞いた修造は一瞬その話が信じられなかった。
3年前から一向に音沙汰のない彼はもしかしたら死んでしまったのではないかとさえ思っていた。
気になるのは、そんな彼がなぜエクシーズ次元へ行き、更には融合次元に今いるのかだ。
「融合次元に、先輩が…遊勝さんがいる」
「ええ…。きっと、遊矢にとって次元戦争以上に大きな意味があるかもしれないの。でも…」
「柚子?どうした?」
遊勝の居場所が分かったことは喜ばしいことのはずなのに、柚子の表情が暗いのが気になった。
遊勝以外のことで、何か不安なことがあるのだろうか。
「…遊矢のことか?」
「うん…」
「まぁ、そうだな…。今のあいつは変わっていっている。俺でも、戸惑ってしまうくらいにな…」
修造も今の遊矢の変化を感じている。
次元戦争が遊矢から笑顔を奪っているように思えた。
力がなければ、信念も正義も示すことのできない現実が遊矢に容赦なく攻撃している。
修造自身は戦場に出たわけではないため、それがどれだけ過酷なのかはわからない。
きっと、それは実際に戦った遊矢達でなければわからないことかもしれない。
「お父さん…あたし、どうしたらいいの?遊矢を守りたい、支えたいのに…」
遊矢のためにできることが分からなくなり、涙を浮かべながら父親に訴える。
シンクロ次元ではロジェに捕まり、遊矢に助けられて、彼は左腕を失った。
そして、エクシーズ次元ではいつも一緒に行動していたが、遊矢がカイトを救えず、エドを失った絶望に対して、何もすることができなかった。
自分には遊矢のために何もできないのか、そんな疑念が彼女に悲しみを与える。
「柚子。俺は難しいことは分からん。熱血だ、とか根性論を言うことしかできない。ったく、情けないな…。娘が泣いているのにどうすることもできないなんて…講師失格、父親失格だなあ」
「お父さん…?」
暑苦しいほど一直線な彼がこのような弱音を吐くのが信じられず、驚いた柚子は泣くのを忘れて頭をかく修造を見る。
掌で目の周りを隠し、しばらく考え込んだ修造は手をどかして柚子を見る。
「でもな…これだけは言える。あいつは今、一番柚子にそばにいてほしいって思っているはずだ。誰よりも、あいつのことを見てきたお前に。それがあいつの一番の支えになる。もしお前なしで戦っていたら、きっと遊矢の心は壊れていたかもしれない。あいつは…本当は戦う男じゃない、誰かの笑顔を大切にできる、優しいやつだからな…」
「お父さん…」
「だから、柚子。お前だけでも、あいつを認めてやれ。お前だけでも、あいつのそばで、味方になってやれ。それはお前だけにしか、できないことなんだ…」
遊勝が失踪してから、臆病者の息子の烙印を押され、嘲笑され続けた遊矢。
そんな彼が傷つくのを、そして父親を否定する言葉を許していなかったことを柚子は誰よりも見てきた。
そんな彼が成長し、今こうして戦い続ける姿も。
父親としては、柚子には戦ってほしくないとは思っている。
しかし、それを柚子本人が望んでいない、守りたいものがあるというなら、きっと修造には止めることはできないだろう。
だからせめて、生きて帰ること、勝つモチベーションを持たせることしかできない。
涙を拭いた柚子は何も言わず、首を縦に振った。
「これが…エド・フェニックスの検死結果…」
「うん。おそらく、血液の中に本来、人間が持っていないはずの成分が見つかっていて、特に心臓部分にある血液が顕著だったよ…」
社長室で資料を見る零児に侑斗が医者から聞いた情報を説明する。
レオコーポレーション傘下の病院で、エドの検死を行った結果分かったことで、医者の結論ではナノマシンの一種らしい。
ナノマシンについてはシンクロ次元から招へいした技術者に解析してもらっている。
「エド・フェニックスが言っていたBAT-DIEの正体はそのナノマシンなのか…?」
「蝙蝠を殺すシステム…。まるで、機械みたいな考え方だよ」
小さいころに読み聞かせで聞いた卑怯な蝙蝠の話を思い出す。
裏切者が牙をむくのを止めるためのもので、そのシステムに無理やり従わされているデュエル戦士達のことを思わず同情してしまう。
「でも、デュエル戦士全員の体には入っていないみたいだよ。グロリアとグレースの血液を調べたけど、BAT-DIEは検出されていない。2人はかなりの力量を持っているデュエリストのはずなのに…」
「BAT-DIEを投与する人間の選抜基準が気になるところだが…」
エドはエクシーズ次元侵攻軍の最高責任者であるため、その彼が裏切った場合のリスクを考えると、彼を選ぶのは妥当だ。
だが、オベリスクフォースへの指揮権が一部与えられていたはずの素良には投与されていない。
先日翔太が倒し、自殺したオベリスクフォースの遺体からはBAT-DIEが検出されており、それゆえにその基準が見えてこない。
「見えてこない分、恐ろしいね。誰に投与されているかわからない。その状態で裏切者を殺すBAT-DIEの存在を知ったら…」
「否が応でも従わざるを得ない。そして、恐慌状態で私たちに襲い掛かる」
「今はBAT-DIEを解除させるナノマシンを作っているよ。でも…完成するかどうかは不透明だ。シンクロ次元でもナノマシンそのものは試作段階で、スタンダード次元に限ってはそもそもそのノウハウ自体ゼロだからね」
「…」
「駄目だよ。最近の君は『欠片』を使い過ぎだ」
融合次元との決戦のために作った例の装置も、零児が何度も『欠片』に触れて、その情報を手に入れたことで作ることができたものだ。
人の手に余るものを使い続け、それによる狂気を必死に抑え込んでいることは侑斗がよく知っている。
いくらプロフェッサーの正体が自分の父親で、彼を止めなければならない使命感があるとはいえ、これ以上『欠片』に触れるのは自殺行為と言える。
「…剣崎、『欠片』は…望むものを与える…恐ろしい誘惑を持っている。まさに、アダムとイブをエデンの楽園から追放した知恵のリンゴだ…だが、同時に私に教えてくれた…。『欠片』がなぜ生まれたのか…。あなたが一番よく知っているはずだ…」
零児の指摘に侑斗は沈黙し、首を縦に振る。
初めて零児と出会い、異世界についての話をする中で、一つだけ隠していたことがある。
場合によっては関係を破たんさせかねない重大な秘密で、おそらくこれがこの世界の始まりであり、この混乱の原因。
「そうだよ…。僕は数年前、この『欠片』の本体だったものと遭遇して…破壊した。これが二度と僕たちの世界ととある2つの世界に悲劇を招くことがないように…。『欠片』はヌメロン・コードだったものだよ」
数年前、バリアン世界の神であるドン・サウザンドがヌメロン・コードを欲し、アストラル世界と侑斗たちの世界を巻き込んだ戦争を起こした。
ヌメロン・コードは世界の運命を決定づけ、世界を生み出す力を持ったものだ。
一時的にヌメロン・コードを支配したドン・サウザンドはその力を使って相手が発動したカードを別のものに差し替える、自分にとって都合のいい事象への書き換えを行った。
それは使いようによっては誰でも好き勝手に世界を作り替えることのできる恐ろしい存在で、事後報告という形にはなったものの、それの破壊については誰も反対しなかった。
ドン・サウザンドは消滅し、消滅するはずだったバリアン世界はアストラル世界と融合することで生き延び、戦いの犠牲になった人々も戻って来たことでめでたし、めでたしとなるはずだった。
しかし、その破壊したヌメロン・コードは数えきれないほどの欠片となって飛び散り、その1つ1つが世界を作り出すという事態を招くことになった。
世界そのものを都合よく書き換えるだけの力はないとはいえ、それでも零児に知識を与えるなどの人知を超えた力を宿しているのは確かだ。
使い方を誤れば、災いを招く可能性があるため、侑斗たちは様々な世界を巡り、『欠片』を回収することに決めた。
『欠片』が失われてもそれが生み出した世界そのものは存在し続けることは、ヌメロン・コードが失われても侑斗たちのいる世界が亡くならなかったことから証明されている。
これまで複数個の『欠片』を回収したが、いずれの世界も滅びることなく、今でも存続している。
ただ、問題なのはどれだけの数の『欠片』が存在するかだ。
それについては皆目見当がつかず、世界の数だけ『欠片』が存在するとしか言うほかない。
侑斗の協力者である科学者一家が次元レーダーを開発し、それを使って世界の探知をしているが、今どれだけの世界が存在するかが全く分からないのが現状だ。
おそらく、一生かかっても回収し終えるのは不可能かもしれない。
(そうなると、あの『欠片』が見せた剣崎のあの姿は…)
知識を得る中で何度も見た光景。
それは侑斗が剣でヌメロン・ドラゴンを貫き、ヌメロン・コードを破壊する光景だった。
『欠片』が生まれる最大の原因だったからこそ、それが強く映像として残っているのかもしれない。
そして、それが『欠片』が侑斗を拒絶し、侑斗に何も与えない理由となっている。
「君のお父さんがああなったのも、もしかしたら『欠片』が原因かもしれない。だとしたら…」
「それはあなたの考えすぎだ。人間一人の行動が世界のすべてを決めるというのは傲慢だ。それに…『欠片』が望むものを与える力があるとするなら、それは赤馬零王が野心や欲望を持っていたのが原因だ。あなたがすべての原因というわけじゃない。だから、少しは気を楽にしてくれ」
「零児君…」
「この話は今は私の胸にしまっておく。皆にはあなたが伝える時だと思った時に伝えてくれればいい」
「分かったよ。その…ありがとう」
零児に頭を下げた侑斗は社長室を後にし、1人になった零児は疲れ果てたかのように背もたれに身を任せ、握るように服の心臓当たりのところを握りしめる。
「はあはあ…私に残された時間も残り少ないか…」
侑斗と会っている間、零児はずっと何ともないように装っていたが、気持ちが切れたことで一気にその反動がやって来た。
「まだだ…少なくとも、プロフェッサーを止めるまでは…持ちこたえてくれ…」
「おい、これまでの人数出していいのかよ?この人数だともし、またアカデミアが来たら…」
「俺に聞くなよ。上に聞け」
「上に聞いても、大丈夫だの一点張りだよ。クソッ、融合次元に決戦を挑むのはいいが、俺らの安全も考えねえと…」
エクシーズ次元では、レジスタンスメンバー達の中でランサーズと共に融合次元へ向かうメンバーの選抜が行われており、全体の半分以上がそこへ行くことになる。
家族や仲間、故郷を奪われた怒りから、参加を志願するメンバーが絶えないものの、比較的冷静な面々はここの防衛の心配をしていた。
エクシーズ方面軍と拠点を陥落させたことで、アカデミアからの攻撃がなくなったエクシーズ次元だが、いつまたアカデミアが攻めてくるかわからない。
今いるレジスタンスの半分以上が抜けるとなると、またエクシーズ方面軍以上の規模のデュエル戦士達が来たら、このスペード校のキャンプを守れるかどうかすら怪しくなる。
その中で、スペード校の屋上では黒咲がじっとまだ薄暗いハートランドシティの空を見ていた。
「カイト…俺はお前と同じだ。俺は…お前に反論する言葉がない」
語り合うことができないまま別れてしまった仲間のことを思いながら、黒咲はつぶやく。
まだ松葉杖がないと辛いのは変わりないが、それでも決戦までにおそらく1カ月はかかる。
それまでに戦線に復帰できる程度までの回復はできるはずだ。
「逃げていたんだ…俺も、お前も。守れなかった絶望、失った悲しみから…俺は、今も逃げ続けている」
アカデミアに復讐するため、瑠璃を救うため、デュエル戦士たちを次々とカードに変えていき、フレンドシップカップではデニスを完膚なきまでに叩きのめした。
だが、いくら屍を積み重ねたとしても、会ったのはむなしさだけだった。
瑠璃がさらわれる最大の要因となったデニスを倒しても、エドが倒され、死んだと聞いても同じだった。
「そうしなければ…耐えられなかった。俺自身が耐えられなかった。エクシーズ次元のため、瑠璃のためと言っておきながら、結局俺は自分のことしか考えていなかった…」
その復讐のための戦いは既に過去となり、どうあがいてもやり直すことができない。
やり直せない以上は今からどうするかを考えるしかない。
「けりをつけて、瑠璃を取り戻したら…俺はもう1度、向き合うつもりだ。こうすることでしか耐えることのできなかった俺自身に、そして…この現実に」
「うーーん、いい風で気持ちいい!!やっぱり、平和っていいねー!!」
「ったく、本音はここにきたいからついてきただけだろ?料金出させやがって…」
「いいじゃん。翔太君もたまにはこうしてリフレッシュしないと!それに、ここならあんまり人来ないから、ビャッコちゃんも好きに遊べるし」
「キュイー!!」
野原でビャッコは楽しそうに蝶と追いかけっこをしている。
また、セラフィムは野原でのんきに昼寝を始めている。
翔太達はYS県立病院で聖子のお見舞いをした後で、舞網市へ戻る途中にあるインターチェンジから降りた先にあるこの野山に来ていた。
伊織が友人から聞いた話では、そこはきれいな夜空を見ることができる穴場スポットらしく、昼間はあまり人が来ないらしい。
見舞いを終えた後は施設でぐっすり寝るつもりでいた翔太だが、伊織の昼ご飯代や駐車代を出さなければならなくなり、ランサーズの給料があるとはいえ、想定外の出費となった。
さすがに昼ご飯代くらいは自分の小遣いから出せと文句を言ったが、女の子のご飯代は男が出すのが当然というわけのわからない理屈の一点張りで、無理やり支払わされることになった。
おまけに注文したのはYSサービスエリアで一番高いオベリスクステーキランチで、4000円もの出費となった。
「エクシーズ次元も、こんな景色が戻ってくるかな?次元戦争が終わったら!」
「おいおい、まだ終わってもねーのに、なんでここで終わった後の話をするんだよ?」
「いいじゃん。その方がファイトがわくんだし!!」
平和だったころのエクシーズ次元のハートランドシティについては黒咲からたびたび聞いている。
お掃除ロボットであるオボットが何台も走って街をきれいにしてくれており、町の近くには自然豊かな山がいくつも存在していたという。
復讐と瑠璃を救うことだけを目的としていた彼がそんなささやかなことを話してくれたということは、何か彼の中で変化があったのかもしれない。
「それでさ…翔太君はどうするの?戦いが終わったら?」
「俺に聞くのかよ?」
「聞かせてよ!もしかして、恋人を作るとか?」
「そんなわけあるかよ…」
きっと、この戦いというのは次元戦争だけの意味ではない。
翔太の中にいるベクターとの決着をつけるということもあるのだろう。
実のところ、そこからどうするかはまだ何も決めていない。
記憶を取り戻すことを至上目的としていた翔太はその先を見出していなかった。
「そうだな…石倉純也って奴を探しに行くかな。俺の中にいる奴と、今も寝てる聖子って人のためにもな」
「あ…珍しいね。翔太君が人のためにやるって自分から口にするの」
「どうせ似合わねえよ」
「そんなことない!かっこいいよ、翔太君!」
「ちっ…ま、そのためにもまずは生きて帰るだけだけどな。それで、お前はどうなんだよ、伊織?言い出しっぺのお前の答えを聞かせろ」
「私は…まだ、決めてない。お父さんに会って、全部が分かってから決める」
これまでの伊織にとっては、スタンダード次元の施設で暮らす孤児の女子高校生ということだけが真実だった。
融合召喚が使えるという違いがあるだけで、どこにもほかの人と変わりがないと思っていた。
だが、次元戦争がはじまり、その戦いに巻き込まれる中でそうではないことに気付かされた。
自分は融合次元の人間で、そこには自分の父親がいる。
融合次元の人間だからと言って、翔太達の敵に回るつもりもなければ、アカデミアのために戦うつもりは毛頭ない。
融合次元の人間であり、アカデミアの一員であった素良も最終的にこちらの味方になり、タイラー姉妹も寝返ったのだから、別次元の人間だから敵という考えに陥る必要はない。
だが、戦いが終わった後でそうするかを決める前に、伊織は向き合いたいと思っていた。
自分に命をくれた父親に会い、自らのルーツのすべてを知る。
「決めてねーのかよ…ま、いいけどな」
「キュイー」
「頑張りましょう、伊織さん。私たちも応援しますから」
「クリクリー!!」
「うん、ありがとう!セラフィム、ビャッコちゃん、クリボーマン!」
「はあはあ…一体どーなってんだよ?それに、どうしてこんなところに飛ばされなきゃならねーんだよ…」
真夜中になり、街灯もない真っ暗な街中で、Dホイールを背もたれ代わりにしているユーゴが盗んだパンを口にする。
彼の周囲には倒れているアカデミアのデュエル戦士たちがいて、この集団はつい数分前にユーゴが倒した面々だ。
「まさか…シンクロ次元で集まって、いきなり融合次元に飛ばされるなんて…」
「ええっと、お前の言葉が正しければ、俺そっくりの奴が遊矢とあの紫色の髪の奴が集まって、そこに柊柚子って女が入ってきて、ブレスレットが光ったからこうなった…だよな」
ユーゴはこの次元に来る前後の記憶が全く抜け落ちている。
よくわからないうちにシンクロ次元にはないレンガ造りの街中に来ていて、クリアウィングに言われなければここが融合次元だということは分からなかった。
理屈は分からないが、少なくともこれで融合次元に囚われているリンを探しに行けると気合を入れなおしたユーゴだが、ここに来てから1カ月、なにも手掛かりを得ていない。
何度か襲ってくるデュエル戦士たちを蹴散らし、街中で食料を盗んでさまよってばかりだ。
幸いなのはユーゴのDホイールの動力源がモーメントであることで、それのおかげで燃料の補給はしなくて済む。
ただ、シンクロ次元ではないために当然、Dホイールのパーツを手に入れることはできないので、もし壊れたりしたらその時点で移動手段が徒歩のみとなる。
(そもそも、アカデミアの本拠地ってどこにあるんだよ?走り回ってりゃあ見つかると思ったのによぉ…)
デュエル戦士達は転移装置を使っているのか、いつも神出鬼没で飛び出して来て、こちらにデュエルを仕掛けてくる。
人だかりの中だろうとおかまいなしに彼らはリアルソリッドビジョンでデュエルを仕掛けてくる。
フレンドシップカップでランサーズの沢渡を倒し、準決勝まで勝ち進んだユーゴは並みのデュエリストには負けない自信はあるが、さすがに連続の奇襲のせいでおちおち休んでもいられない。
「くそ…!翔太って野郎に会ってから全くろくなことがねえ。こうなったら、今度会ったらあいつをぶっ倒してすっきりしてえが…」
「今はそんなつまらないことを考えるより、海を渡る方法を考えましょう。あとは海路で探すしかありませんから…」
いくら情報を集めても、今いる地域を走り回ってもアカデミアの場所を突き止めることができず、残されたのは海を渡ることだけだ。
この次元には舞網市のような海が広がっており、定期船を何度も見たことがある。
しかし、定期船を取り仕切っているのはアカデミアで、ジョイ戦の際には必ずと言っていいほど身分をチェックされる。
そうなれば身元不明者である上にアカデミアからは追われる身のユーゴは乗ることもできない。
船を奪って、それで移動することも手段としてはあるが、船の操縦方法が分からないため、そもそも却下だ。
「ああ、どうしたらいいんだよ…どうしたら…」
「あなたかしら?今この地域でデュエル戦士たちと戦っているデュエリストというのは」
「あん?誰だ!!」
眠気を覚える自分の頬を叩いて、気を確かにしたユーゴが振り返り、デュエルディスクを構えて声が聞こえた方向にいる少女を見る。
金色のロングヘアーで、白い前開きに該当に青いミニスカート姿をしており、背丈だけを見ると高校生くらいで、ユーゴよりも年上だ。
「私は天城院明日香。あなたに会いに来たの」
「俺に…?姉ちゃん、俺は忙しいんだ!後にしてくれ」
明日香の制服がどこかアカデミアのデュエル戦士をほうふつとさせるもので、ユーゴはそれが好きになれなかった。
直感だけで考えると、おそらく彼女は敵ではない。
だが、今は彼女と話すよりもアカデミアへ向かうことが最優先だった。
「アカデミアへ向かう手段を持っているわ。あなたに協力できるかもしれないの」
明日香の言葉に、Dホイールを走らせようとするユーゴの動きが止まる。
本当なのか、半信半疑に再び彼女を見つめる。
「ついてきて。私たちに協力してくれたら、そのお礼にアカデミアへ連れて行ってあげるわ」