遊戯王ARC-V 戦士の鼓動   作:ナタタク

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第12話 眠り

「うわあ…これが翔太君の免許…」

「そんなに目をキラキラさせても、何も起こらないぞ」

翔太の自動二輪免許を伊織がうらやましそうに眺める。

黒マスクの少年と邂逅してからしばらく、翔太は伊織の言うとおり自動車学校に通うことになった。

ちなみに、教習料は栄次郎が自腹で支払ってくれた。

記憶喪失になる前に乗ったことがあったのか、教習も試験も順調に進み、先日正式に免許が発行された。

「ねえねえ、さっそくどこか行こうよ!!山とか、海とか!!」

「そうだな。なら、さっそく行くか?」

にやっと笑いながら、サイドカーからヘルメットを2つ取り出し、そのうちの1つを伊織に投げ渡す。

「やった!!じゃあ、どこへ行くの?」

「さあな、少なくとも、海や山じゃあないぞ」

伊織がサイドカーに乗ったのを確認すると、翔太はバイクを走らせた。

 

「ふああ…」

猛スピードで走る中、座りっぱなしの伊織が欠伸をする。

バイクは時速80キロ。

道はまっすぐで、伊織のカバンの中には黄色い通行券がある。

2人は今、高速道路を走っている。

「眠たいなら、寝てていいぞ」

「翔太君、いつになったら到着するの?」

「あとはたったの1時間半だ」

「えーーー!?じゃあ、サービスエリアでスイーツ買おうよー!」

「スイーツは帰ればいくらでも食えるだろ?」

「分かってないねー翔太君は。たまーに限定のスイーツがあったりするんだぞー?興味ないー?」

確かに、伊織の言うとおりすうぃ~と芋大福や白うさぎフィナンシェ、和歌山蜜柑チーズケーキなど、サービスエリア限定のスイーツがネットを中心にPRされている。

ちなみに、舞網市内のサービスエリアではアクションカードクレープが1つ200円で売られている。

文字通りアクションカードの形をしたクレープで、季節の果物がトッピングされた人気スイーツだ。

「興味ない」

「もー、相変わらずつれないなー翔太君は…zzz…」

「ふう…ようやく寝たか」

寝たのを確認すると、カーナビを少しだけ見る。

サービルエリアを1つはさんで、目的のインターチェンジまであと3つだ。

 

「ん…んん…」

「ようやく起きたか。着いたぞ」

「ほへ…?」

目をこすりながら、伊織は周囲を見渡す。

広い駐車場と多くの車いす、そして建物に掲げられた赤い十字マーク。

「ここが翔太君の行きたい場所?」

「ああ、YS県立病院だ」

翔太はその病院のパンフレットを見る。

それは純也の日記になぜか挟まっていたものだ。

(今は石倉純也のことからあたるしかないからな…。手当たり次第だ)

 

「はあ…では、あなたは石倉さんの親せき…」

「ええ。それで、容態は…」

「残念ながら、未だに意識を回復していません。4年前からずっと…」

看護師に案内され、翔太と伊織は304号室に到着する。

そこには白い肌で黄色くて長い髪の若い女性が眠り続けている。

彼女は石倉純也の妹、聖子。

5年前、海水浴中に純也は行方不明となり、その翌年の同じ日に聖子は意識不明の重体となっている。

目立った外傷もなく、肺に海水が入ったわけでもなく、脳にダメージがあるわけでもない。

ただただ、昏々と眠り続けているのだ。

当時の医師達は懸命に彼女の意識を回復させようと努め、アメリカやイギリスからも名医が派遣されたが何の成果もなく、今では点滴と生命維持装置により回復するまで待つしかないという状態だ。

もちろん、翔太が2人の関係者だということは嘘だ。

「では…ごゆっくり」

看護師が病室から出ていく。

「翔太君…この人が」

「ああ、こいつが石倉聖子だ。まさかこういう状態になってるとは思わなかったがな」

正直に言うと、翔太は今まで聖子がここで勤務をする医者か看護師かと思っていた。

だが、現実はご覧の通りだ。

(こいつに手がかりがあるというのか…?)

ベッドのそばにある椅子に座り、無意識に彼女の手を取る。

「…!う…こ…これは…!?」

「翔太君!?どうしたの!??」

「わ…分からない…。何かが…頭に!!」

叫びとも悲鳴とも怒号ともとれるわけのわからない声が耳ではなく脳に直接届く。

伊織が動揺する中、翔太は次第に意識を失っていく。

 

「こ…ここは…?」

声が消え、目を開くとそこは伊織と初めて会った砂浜だった。

しかし、違うのは広がるのは青空ではなく赤い空だということだ。

「だ…誰!?あなたは…!!」

背後から声がする。

翔太はゆっくり振り返る。

「あんたは…」

彼の目が大きく開く。

そこにいるのはベッドで眠っているはずの聖子だった。

「あ…あなたは…」

驚きとおびえに満ちた目で聖子は翔太を見る。

「俺を知っているのか!?答えくれ!俺は一体誰なんだ!!?」

「違う…そんなはずない!!あなたが…あなたがこんなところにいるはずがない!!」

「いるはずがないだと!?どういうことなんだ!!?」

「いや…もう来ないで!!私の前から消えて!!!」

両手で顔を隠しながら、聖子は町へ向かって逃げ出す。

「待て…!!答えてくれ!!」

大急ぎで彼女を追いかけようとする。

しかし、再び脳裏に声がする。

「おいおい翔太ちゃーん」

その声は前に翔太に力を与えた存在の物だ。

「邪魔をするな!!今は彼女を…」

「駄目だぜー?ストーカーみたいなことをやったらよお、女の子は優しく扱わねえと!」

突然、翔太の目の前に黒い球体が現れる。

「お前…一体何を!?」

「お仕置きだよ…女の子を泣かせたお仕置きさー!!」

球体が砕けると、そこにアメリカ国旗を模したバンダナと黒いグラサン姿で無精ひげの男性が姿を現す。

その男の左腕には数世代前の型の黒いデュエルディスクが装備されている。

「なんだよ、こいつは!?」

「さあさあ、ついに始まります世紀の一大勝負!!次元を超えた対決が今ここにーー!」

「ふざけるな!!俺に何をさせたい!!」

「赤コーナー、記憶を求める孤高のデュエリスト、秋山翔太!!青コーナー、数々の大会で優勝をかっさらった盗賊!バンデット・キースこと、キース・ハワードーーー!!」

「キース・ハワード…?」

キースがデュエルディスクを展開すると、突然翔太の左腕にデュエルディスクが現れ、更にデッキもセットされる。

「こいつをデュエルをしろっということか?」

「ご名答!こいつに勝てたら、また追わせてやるよ!ああ、それとここでやるのはアクションデュエルだぜ!じゃ、頑張ってねー」

あの声が徐々に聞こえなくなっていく。

周囲を見渡すと、路上やビル、看板などにアクションカードがある。

「やるしかないということか…」

あの声の主の目的が何なのかはわからない。

しかし、分かっていることはキースを倒さないと先へ進めないということだ。

「キース・ハワード。どこの誰だか知らないが、倒す」

「俺を倒すだと…」

初めて、キースの口から言葉が発せられる。

「ヘヘヘ…舐めた口きく餓鬼だな…。俺をコケにしやがった城之内とペガサスをぶっ倒す邪魔がしてえのか?」

「城之内…ペガサス…誰だ?」

「ま、ちょうどカードが足りないと思ってたところだ。お前をぶっ倒して、カードを頂く!!」

「わけのわからないことをごちゃごちゃと…もう老化が始まってるんじゃないのか?」

城之内もペガサスも翔太にとっては聞いたことのない名前だ。

その2人が今も生きているのか、そもそも存在しているのかもわからない。

「後悔させてやるぜ…バンデット・キース様の相手をしたことに!!」

「俺の邪魔をするな、おっさん!!」

「「デュエル!!」」

 

翔太

手札5

ライフ4000

 

キース

手札5

ライフ4000

 

「俺の先攻。俺は手札から《魔装獣ユニコーン》を召喚」

召喚と同時に、翔太は《魔装獣ユニコーン》に乗って路上へ向かう。

 

魔装獣ユニコーン レベル4 攻撃1600

 

「(デュエル中でも、こうして動いていれば居場所がわかるはずだ!!)俺はカードを1枚伏せてターンエンド!」

 

翔太

手札5→3

ライフ4000

場 魔装獣ユニコーン レベル4 攻撃1600

  伏せカード1

 

キース

手札5

ライフ4000

場 なし

 

「へ…へへへ…あのわけのわからねえ小僧のいうとおりだ。ソリッドビジョンがここまでなあ…。俺のターン、ドロー!」

 

キース

手札5→6

 

「俺は《モーターシェル》を召喚!」

両手に灰色の円盾を装備し、一輪で装甲とする白い機械が現れる。

 

モーターシェル レベル4 攻撃1300

 

「こいつに乗りゃあいいんだな…」

キースは《モーターシェル》に乗るが、このモンスターの大きさは彼の3分の2で、乗せて走行するための馬力がないことから、十分な速度を出せない。

「ちっ…!このポンコツがぁ!!」

不機嫌になったキースは飛び降りると、《モーターシェル》を蹴り飛ばす。

そのモンスターは大きな凹みをつけて倒れた。

「こいつで強化してやるよ。俺は手札から永続魔法《エンジンチューナー》を発動!俺のモーターモンスターはこいつがある限り守備表示に変更できねえ、守備力の半分を攻撃力に加える!《モーターシェル》の守備力は1800!よって、攻撃力は900ポイントアップだ!」

《エンジンチューナー》から3体のつなぎを着た小人が姿を現す。

そして、自身の倍近くの大きさのスパナを使い、《モーターシェル》のエンジンを強化。

加えて2つの円盾を合体させてボール状の兵器に改造した。

 

モーターシェル レベル4 攻撃1300→2200

 

エンジンチューナー(漫画オリカ・調整)

永続魔法カード

「エンジンチューナー」は自分フィールド上に1枚しか表側表示で存在できない。

(1):自分フィールド上に表側表示で存在する「モーター」モンスターの攻撃力はそのモンスターの守備力の半分の数値分アップする。

(2):自分フィールド上の「モーター」モンスターを守備表示に変更することはできない。

 

「攻撃力2200!?」

「バトルだ!!《モーターシェル》で《ユニコーン》を攻撃!!キャノン・ボール!!」

再び騎乗したキースの命令を受けた《モーターシェル》がレーダーで街中を走る《魔装獣ユニコーン》をロックオンする。

そして、エンジンを温めるとボールを発射した。

強烈なパワーと回転でビルを次々と突き破る。

「く…ここは…」

翔太はちょうど視界に入ったアクションカードに向けて《魔装獣ユニコーン》を走らせる。

交差点のど真ん中だが、車が走っていないため容易に回収できた。

「よし…アクション魔法《奇跡》!!こいつで《ユニコーン》を破壊から守り、戦闘ダメージを半減させる」

ボールは《魔装獣ユニコーン》を外し、右側の信号機に接触した。

 

翔太

ライフ4000→3700

 

「ちっ…!これがアクションカードの威力か!なら俺も…」

ボールが戻ってくるのを確認すると、《モーターシェル》は砂浜から路上へ移動する。

そして、ガードレースに張り付けられたアクションカードをキースは手に取る。

「へえ…lこいつぁいい。俺はこれでターンエンド!」

 

翔太

手札3

ライフ3700

場 魔装獣ユニコーン レベル4 攻撃1600

  伏せカード1

 

キース

手札6→5(うち1枚アクションカード)

ライフ4000

場 モーターシェル レベル4 攻撃2200

  エンジンチューナー(永続魔法)

 

「俺のターン!」

 

翔太

手札3→4

 

「俺は《魔装壁ゴルゴー》を召喚」

細身で女性的な体つきになっているレンガの人形が地中から現れる。

 

魔装壁ゴルゴー レベル2 守備1000(チューナー)

 

「レベル4の《ユニコーン》にレベル2の《ゴルゴー》をチューニング!」

「チューニング?なんだそりゃ?」

翔太を降ろした《魔装獣ユニコーン》は《魔装壁ゴルゴー》が変化した緑色の2つの輪に飛び込んでいく。

「神の血を身に宿す槍士、雷鳴のごとき苛烈さを得て戦場で踊れ!シンクロ召喚!現れろ、《魔装槍士クーフーリン》!!」

シンクロ召喚された《魔装槍士クーフーリン》はビルの壁をよじ登り、屋上へ向かう。

 

魔装槍士クーフーリン レベル6 攻撃2100

 

魔装壁ゴルゴー

レベル2 攻撃0 守備1000 チューナー 地属性 岩石族

(1):このカードを素材としてシンクロ召喚されたモンスターは相手のカード効果では破壊されない。

 

「シンクロ召喚!?どんな召喚かは知らねえが、攻撃力は《モーターシェル》の方が上!!」

「《クーフーリン》の効果発動!1ターンに1度、俺のフィールドの魔装モンスターと相手フィールドのモンスターを1体ずつ選択し、選択した相手モンスターの攻撃力・守備力をエンドフェイズまで俺の魔装モンスターのレベルかランク1つにつき400ポイントダウンさせる!ゲイ・ボルグ」

「何!?」

《モーターシェル》の姿を確認した《魔装槍士クーフーリン》はそのモンスターに向けて槍を放つ。

30本近くの銛に変化した槍は次々と《モーターシェル》に刺さり、機能を低下させた。

「くっそーー!!動けよ、このポンコツ!!」

悪態をつくキースの足が再び《モーターシェル》に凹みを生んだが、結果はただそれだけだ。

 

モーターシェル レベル4 攻撃2200→0

 

「バトルだ!俺は《クーフーリン》で《モーターシェル》を攻撃!ニードル・スピア!」

新たな槍を手に、《魔装槍士クーフーリン》は《モーターシェル》めがけて飛び降りた。

そして、落下スピードを利用してその槍で頭部を貫く。

コアを貫かれた《モーターシェル》は爆発し、爆風がキースを襲う。

「うわああ!!俺はアクション魔法《治癒》を発動!俺が戦闘ダメージを受ける時、そのダメージを無効にして受けるはずだったダメージの半分の数値分、ライフが回復する!」

 

キース

ライフ4000→5050

 

治癒

アクション魔法カード

(1):自分が戦闘ダメージを受ける時に発動できる。ダメージを受ける代わりにその数値の半分だけ自分はLP回復する。

 

「へへへ…そして俺のフィールドにパーツが残る」

爆風が晴れると、《モーターシェル》がいた場所にそのモンスターのエンジンだけが残っていた。

 

モータートークン レベル1 攻撃200

 

モーターシェル(漫画オリカ)

レベル4 攻撃1300 守備1800 効果 闇属性 機械族

(1):このカードが戦闘で破壊され墓地へ送られた時、自分フィールド上に「モータートークン」を1体攻撃表示で特殊召喚する。

 

「まあ、こいつも一応モーターモンスターだから攻撃力が上がるぜ。そいつの守備力は200。アップするのはたったの100だがな」

 

モータートークン レベル1 攻撃200→300

 

「そいつを使って、新たな上級モンスターを呼び出すつもりか?」

「ああ!全く、あのポンコツはいいブツを残して行ってくれたぜ!!」

「キュイーーー!!キュイキュイ!!」

キースの言動に怒ったビャッコがデッキから出てくる。

「落ち着けビャッコ。それにしてもお前、こんなところにまで出てくるのか?」

「キュイ!」

彼の質問を肯定するかのようにうなずく。

「伊織みたいにうるさくなるなよ?俺はこれでターンエンド」

 

翔太

手札4→3

ライフ3700

場 魔装槍士クーフーリン レベル6 攻撃2100

  伏せカード1

 

キース

手札5→4

ライフ5050

場 モータートークン レベル1 攻撃300

  エンジンチューナー(永続魔法)

 

「へへっ…俺のターン!」

 

キース

手札4→5

 

「俺は《モータートークン》を生贄に、《モーターバイオレンス》を召喚!」

キースの目の前に三連速射ビーム砲を両腕に装備している2足歩行の機会が現れる。

 

モーターバイオレンス レベル6 攻撃2100

 

(生贄…?)

現在は生贄ではなく、リリースという用語になっているにも関わらず、キースは生贄と口にした。

そのことで、彼の頭の中に3つの可能性が予想される。

1つはただ単にキースが生贄という用語を使い続けているだけということ。

1つはリリースとアドバンス召喚という用語をそもそも知らないということ。

もう1つは彼が言い換えが行われる前の時代のデュエリストだということだ。

「更に、《エンジンチューナー》の効果で攻撃力アップだ!そいつの守備力は1200。よって、攻撃力は600ポイントアップだ!」

再び小人の手で《モーターバイオレンス》が改造されていき、ビーム砲の出力が跳ね上がる。

 

モーターバイオレンス レベル6 攻撃2100→2700

 

「攻撃力2700!?」

「さあ…いくぜ!!《モーターバイオレンス》で《クーフーリン》を攻撃!!!モーターカノン!!」

出力強化された2門のビーム砲から放たれた高圧縮ビームによって、ビルごと《魔装槍士クーフーリン》が消滅する。

「くそ…!!」

 

翔太

ライフ3700→3100

 

「ハハハハ!跡形もなく吹き飛んだぜ!」

「だが、これでこいつを出せる!罠発動!《魔装光》!!俺のフィールド上に存在するレベル5以上の魔装モンスターが相手によって破壊された時、俺は手札から魔装モンスター1体を特殊召喚できる。俺は手札から《魔装鳥キンシ》を特殊召喚!」

三本の足を持ち、黄金色の輝きを放つ黒い鳶が現れる。

そして翔太はその鳶の背に乗った。

 

魔装鳥キンシ レベル7 攻撃2400

 

魔装光

通常罠カード

(1):自分フィールド上に存在する「魔装」モンスターが相手によって破壊されたときに発動できる。手札から「魔装」モンスター1体を特殊召喚する。

 

「苦し紛れにモンスターを出したか?なら…」

キースが騎乗すると同時に《モーターバイオレンス》がビーム砲を逆噴射する。

すると、そのモンスターは凄まじいスピードでビル屋上まで飛んで行った。

「まさか、こんなやり方が…!?」

「バンデット・キースを舐めるなぁ!!」

《モーターバイオレンス》から飛び降り、屋上に着地する。

そして意気揚々とアクションカードを手にした。

「アクション魔法《爆破》!こいつは相手の特殊召喚されたモンスター1体を破壊する!」

「何!?」

「くたばれーーー!!」

どこからともなく《ブラック・ボンバー》そっくりの爆弾が次々と《魔装鳥キンシ》に襲い掛かる。

それらは翔太たちを包囲した瞬間、一斉に爆発した。

「ハハハハ!!このまま落っこちちまえよ!!」

「ペンデュラムモンスターは破壊された時、墓地ではなくエクストラデッキへ行く!」

「何!?またわけのわからねえモンスターを!!」

《魔装鳥キンシ》をエクストラデッキに収納すると、すぐに翔太は近くのビルにしがみついた。

 

爆破

アクション魔法カード

「爆破」は1ターンに1度しか発動できない。

(1):相手フィールド上に表側表示で存在する特殊召喚されたモンスター1体を破壊する。

 

「全くよぉ…どいつもこいつも俺をコケにしてえようだな…。城之内…ペガサス…夜行…」

「何ぶつぶつ言っているんだ、おっさん。ターンを進めろ」

「だまれぇ!俺はカードを2枚伏せ、ターンエンド!」

 

翔太

手札3→2

ライフ3100

場 なし

 

キース

手札5→2

ライフ5050

場 モーターバイオレンス レベル6 攻撃2700

  エンジンチューナー(永続魔法)

  伏せカード2

 

ターン終了宣言がなされ、翔太のターンとなる。

しかし、片手で壁を掴んでいる状態ではカードを使用することができない。

それでも、1分以上プレイしなければ失格となることに変わりはない。

「くそ…!フィールドはがら空き、そしてあいつの姿を見失ってしまった…」

デュエルをしながら誰かを探すというのは無理があるのだろう。

それがアクションデュエルであればなおさらのことだ。

「(やはり、奴を倒ししかないか)俺のターン!」

すぐ近くのビルの壁に飛び移りながら、翔太はカードをドローする。

 

翔太

手札2→3

 

「ハハハ!!苦し紛れなプレイだなあ、おい!!」

屋上から必死な動きをする翔太を見ながら、キースはせせら笑う。

そんな彼を気にすることなく、今度は隣のビルに飛び移る。

その間もプレイをすることは忘れない。

「俺はエクストラデッキに存在する《魔装鳥キンシ》の効果を発動。このカードが表向きでエクストラデッキにあるとき、1度だけこのカードを手札に戻すことができる」

「エクストラデッキから手札に戻る…だと!?」

「そして、俺は!!」

何を思ったのか、翔太は手を離し、重力に身を任せる。

「なんだよ、コイツ!?敵わねえと思って自殺する気か??」

「俺はスケール1の《キンシ》とスケール9の《魔装剣士ムネシゲ》でペンデュラムスケールをセッティング!来たれ、時の果てに眠りし英雄の魂。希望の道を照らし、勝鬨を上げろ!ペンデュラム召喚!!現れろ、俺のモンスターたち!!《魔装黒鮫サッチ》!死を司る青き騎士、《魔装騎士ペイルライダー》!!」

真下に《魔装黒鮫サッチ》が現れたのを確認すると、翔太はそれをトランポリン代わりにして飛ぶ。

そして、上空でスラスターを起動させて飛んでいる《魔装騎士ペイルライダー》の腕に捕まり、そのままキースのいるビルまで移動した。

 

魔装黒鮫サッチ レベル4 攻撃1400

魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2500

 

「ペンデュラム召喚!?なんだよそれ!?」

見たことのない召喚方法に驚きながら、キースはデュエルディスクを見るが、何も異常が出ていない。

「何動揺してるんだ、おっさん。まだデュエルの途中だぞ。《魔装黒鮫サッチ》は俺の魔装モンスターの攻撃力を400ポイントアップさせる」

翔太と彼のモンスターが屋上でキースと対峙する。

 

魔装黒鮫サッチ レベル4 攻撃1400→1800

魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2500→2900

 

「攻撃力2900!?」

「バトル!《魔装騎士ペイルライダー》で《モーター・バイオレンス》を攻撃!クアトロ・デスブレイク!」

上空を旋回する《魔装騎士ペイルライダー》がマシンガンの代わりに装備しているライフルを撃つ。

ライフルから放たれた青い光線は的確に《モーターバイオレンス》のコアを貫き、それを爆散させた。

「うぐ…!!」

 

キース

ライフ5050→4850

 

「だ…だが、《モーターバイオレンス》が相手によって破壊された時、俺のフィールドにパーツが2つ残るぜ…」

爆散した《モーターバイオレンス》のパーツが集まっていき、2つの塊となる。

 

モータートークン×2 レベル1 攻撃200→300(《エンジンチューナー》の効果)

 

モーターバイオレンス(漫画オリカ)

レベル6 攻撃2100 守備1200 効果 闇属性 機械族

(1):このカードが相手によって破壊され墓地へ送られた時、自分フィールド上に「モータートークン」2体を攻撃表示で特殊召喚する。

 

「構うな!《サッチ》で《モータートークン》を攻撃!マジック・バイト!!」

無防備なパーツを《魔装黒鮫サッチ》がダイヤモンド並みの硬度の歯で噛み砕く。

そして、体内でそれを魔力の弾丸に変換してキースに発射する。

「ぐわあああ!!」

 

キース

ライフ4850→3350

 

「よし…これで《治癒》で増えたライフを帳消しにできた。俺はこれでターンエンド。そして、《魔装鳥キンシ》のペンデュラム効果発動。俺のターンのエンドフェイズごとに、このカードのスケールが2つ上昇する」

 

翔太

手札3→0

ライフ3100

場 魔装黒鮫サッチ レベル4 攻撃1800

  魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2900

  魔装鳥キンシ(青) Pスケール1→3

  魔装剣士ムネシゲ(赤) Pスケール9

 

キース

手札2

ライフ3350

場 モータートークン レベル1 攻撃300

  エンジンチューナー(永続魔法)

  伏せカード2

 

魔装鳥キンシ

レベル7 攻撃2400 守備1700 光属性 鳥獣族

「魔装鳥キンシ」の(1)の効果はデュエル中1回しか発動できない。

【Pスケール青1:赤1】

(1):自分のターン終了時、このカードのPスケールが2つ上がる(最大10まで)

【モンスター効果】

(1):自分のエクストラデッキにこのカードが表向きで存在するときに発動できる。そのカード1枚を自分の手札に加える。

 

「なんだよ…なんだってんだよ…こいつはよぉ…」

「何ぶつぶつ言ってるんだおっさん。あんたのターンだぞ」

「ふざけるんじゃねえよ…どいつもこいつも俺をコケにしやがって…」

まるで翔太の声が耳に入っていないかのように独り言を続ける。

「はあ…やってられねえな。失格になりたいのか?」

「ふざけるな…ふざけるな…ふざけるなふざけるなふざけるなふざけるな!!!!」

狂ったかのようにふざけるなを連呼する。

すると、彼の体から黒いオーラが発言する。

「ふざけるな…お前まで、何も知らねえお前まで俺をコケにするのかーーー!!!?」

激昂と同時にオーラが強大化していく。

「なんだ!?あの禍々しいオーラは…???」

「キュイキュイー…」

おびえるビャッコが翔太の足にしがみつく。

「俺のターン、ドローーー!!」

 

キース

手札2→3

 

「俺は手札から魔法カード《モーターリバース》を発動!!俺のフィールドの《エンジンチューナー》を墓地へ送り、墓地から機械族モンスター2体を特殊召喚する!蘇れ、《モーターシェル》、《モーターバイオレンス》!!」

キースの周囲に2体のモーターモンスターのパーツが現れる。

そして、10体近くの小人がそれらを組み立てていく。

 

モーターシェル レベル4 攻撃1300

モーターバイオレンス レベル6 攻撃2100

 

モーターリバース

通常魔法カード

(1)自分フィールド上に存在する「エンジンチューナー」1枚を墓地へ送ることで発動できる。自分の墓地に存在する機械族モンスター2体を自分フィールド上に特殊召喚する。

 

(今更《ペイルライダー》よりも攻撃力の低いモンスターを呼び出して、何をする気だ?)

「ヘ…ヘヘヘ…うずいてるぜ…このカードが…何もかもぶっ壊してえって…」

キースの手札のうちの1枚から同じオーラが発現する。

「カードからオーラだと…!?」

「見せてやるよ…神のカードってやつを…。俺は3体のスクラップどもを生贄にして、現れろ!!全てを破壊する愚かな神、《邪神イレイザー》!!」

3体のモンスターが溶け、漆黒の血だまりへと変化していく。

「血…?」

「ああ…来るぜ、俺を蘇らせてくれた神がよぉ!!」

そして、血だまりの中から薄い赤の肉体を持つ黒翼の蛇竜の姿をした邪神が姿を現す。

その神はあまりの巨体で、すべての肉体を血だまりから出すと同時にビルの周囲を飛び回る。

 

邪神イレイザー レベル10 攻撃?

 

「攻撃力が決まっていない…?」

「こいつの攻撃力は相手フィールド上のカードの数×1000ポイントになる。今てめえのフィールドには4枚のカード!よって、攻撃力は4000ポイントアップだ!!」

「ギャオーーーーーン!!!」

翔太のフィールドに存在する獲物たちを見て、邪神は狂気に満ちた鳴き声を上げる。

 

邪神イレイザー レベル10 攻撃?→4000

 

「攻撃力4000!?」

「そして俺は罠カード《スキルブレイク》を発動!このターン、フィールド上に存在するレベル4以下のモンスターの効果を無効にする!」

「何…?」

《スキルブレイク》から放たれた波動によって、《魔装黒鮫サッチ》の力が失われていく。

 

魔装黒鮫サッチ レベル4 攻撃1800→1400

魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2900→2500

 

スキルブレイク

通常罠カード

「スキルブレイク」は自分のターンにのみ発動できる。

(1):このターン、フィールド上に存在するレベル4以下のモンスターの効果を無効にする。

 

「いけ、《邪神イレイザー》!!まずはあのクソ鮫を葬れ!!ダイジェスティブ・ブレス!!!」

《邪神イレイザー》の口から黒いブレスが放たれる。

ブレスを受けた《魔装黒鮫サッチ》は次第にその姿を黒い血に変換させられ、邪神の一部となる。

そして、そのすさまじいブレスの余波が翔太を襲う。

「《サッチ》…!?うわあああ!!(ば…バカな…!?こいつは…)」

 

翔太

ライフ3100→500

 

余波によって吹き飛んだ翔太が向かいのビルのガラスを突き破り、屋内の床にたたきつけられる。

「く…そう…!!」

口にたまった血を吐きだし、ゆっくりと立ち上がる。

「おっと、今の攻撃でてめえのフィールドのカードが減っちまったなぁ…これで攻撃力は3000だ」

《邪神イレイザー》の背に乗ったキースが傷ついた翔太に愉快な笑みを浮かべる。

 

邪神イレイザー レベル10 攻撃4000→3000

 

「ほらほら、攻撃力3000なら頑張りゃ倒せそうな数値じゃねえか!!」

(《ペイルライダー》は戦った相手モンスターを破壊する効果がある。そして、《ムネシゲ》の効果で破壊から守れば、わずかにダメージを受けるだけで済む。問題は…)

翔太にとって気がかりなのはキースの2枚の伏せカード。

《魔装騎士ペイルライダー》の効果は相手を確実に死に誘う効果。

だが銃弾の殺傷能力が相手に命中することで初めて発揮されるように、その効果でモンスターと戦わなければ発動できない。

残りライフはたったの500。

効果を使うにはまずはライフを回復するしかない。

更にもしその2枚の伏せカードが攻撃妨害の物であれば敗色が濃厚になる。

(《キンシ》のペンデュラムスケールが7になるまであと2ターン…か…)

「俺はカードを1枚伏せ、ターンエンドだ!!さあさあ、もっと足掻いてくれよ!!」

 

翔太

手札0

ライフ500

場 魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2500

  魔装鳥キンシ(青) Pスケール3

  魔装剣士タダカツ(赤) Pスケール9

 

キース

手札3→0

ライフ3350

場 邪神イレイザー レベル10 攻撃3000

  伏せカード2

 

カードをドローする前に、翔太は自分の体に手を当てる。

(肋骨にひびが入ったか…。腕と足が折れていないだけましか。アクションカードはどこに…?)

屋内を駆けまわりながら、翔太はデッキトップに指を掛ける

「俺のターン」

 

翔太

手札0→1

 

「(このカードは…!!)俺はカードを1枚伏せ、《ペイルライダー》を守備表示にしてターンエンド。そして《キンシ》のペンデュラムスケールが上昇する」

 

翔太

手札1→0

ライフ500

場 魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2500→守備2000

  魔装鳥キンシ(青) Pスケール3→5

  魔装剣士ムネシゲ(赤) Pスケール9

  伏せカード1

 

キース

手札0

ライフ3350

場 邪神イレイザー レベル10 攻撃3000→4000

  伏せカード2

 

「おいおいカードを1枚伏せたか…《イレイザー》をパワーアップしてくれてありがとよ!」

「…」

キースの言葉を無視し、翔太はアクションカードを探す。

(それにしても…無様なモンスターだぜ、こいつは…)

優位に立ったにもかかわらず、キースは心の底からの楽しさを得られずにいる。

(《エンジンチューナー》の対象じゃねえし、それに攻撃力は相手に依存。そして神のくせに悪魔族かよ…)

自分にこのカードを渡した人物の言葉を思い出す。

(キース・ハワード。あなたは邪神の力によって蘇りました。そして、あなたの命はその邪神によってつなぎとめられていることをお忘れなく)

「(ああ…イライラするぜ。なにもかもに!!)俺のターン、ドロー!!」

 

キース

手札0→1

 

「まずはその真っ青な騎士を葬ってやるぜ!ダイジェスティブ・ブレス!!」

翔太のそばを走る《魔装騎士ペイルライダー》に向けて、《邪神イレイザー》が黒いブレスを放つ。

触れたすべてのものを黒い血に変えながら、ブレスは刻一刻と《魔装騎士ペイルライダー》に迫る。

「(来た…!!)《魔装剣士ムネシゲ》の効果発動!1ターンに1度、俺の魔装と名のつくペンデュラムモンスターを1度だけ破壊から守る!」

《魔装剣士ムネシゲ》が投げた円盾が《魔装騎士ペイルライダー》を黒いブレスから守る。

五芒星の力は円盾の黒血化を防いでいる。

「そして、《ペイルライダー》の効果発動!戦った相手モンスターを破壊する!」

「何ぃ!?」

「《ペイルライダー》!!」

ブレスが収まったのを確認した《魔装騎士ペイルライダー》がスラスターをきかせ、外にいる《邪神イレイザー》を光剣で切り裂こうとする。

死の騎士は今、まがい物の神にすら死を与えようとしていた。

「へっ…」

キースがにやっと笑うと同時に、外へ飛び出した《魔装騎士ペイルライダー》に稲妻が襲う。

稲妻を受けた死の騎士はそのまま邪神の首を切ることなく消滅してしまった。

「何!?まさか…」

「ああ!発動させてもらったぜ。カウンター罠《天罰》をな!!」

 

手札から墓地へ送られたカード

・デモニック・モーターΩ

 

邪神イレイザー レベル10 攻撃4000→3000

 

「く…《ペイルライダー》はペンデュラムモンスター。ペンデュラムモンスターは破壊された時、墓地へは行かずエクストラデッキへ行く(まだだ…このカードを今発動するわけにはいかない)」

翔太は前のターンに伏せたカードを見る。

「へへ…惜しかったな!もう少しで倒せるところだったのにな!俺はこれでターンエンドだ!」

 

翔太

手札0

ライフ500

場 魔装鳥キンシ(青) Pスケール5

  魔装剣士ムネシゲ(赤) Pスケール9

  伏せカード1

 

キース

手札1→0

ライフ3350

場 邪神イレイザー レベル10 攻撃3000

  伏せカード1

 

《魔装騎士ペイルライダー》の効果は不発し、更に追い詰められてしまった。

そして、《魔装騎士ペイルライダー》をペンデュラム召喚できるのはあとこのターンのみ。

「(残りライフ500…この状況ならやれる!)俺のターン!」

 

翔太

手札0→1

 

「俺はここでスケール5の《キンシ》とスケール9の《ムネシゲ》でペンデュラム召喚を行う!」

「バカか!?今のお前の手札はたった1枚!そんな状況で…」

「いや、ペンデュラム召喚の対象はエクストラデッキに眠るペンデュラムモンスターもだ!」

エクストラデッキが解放され、《魔装騎士ペイルライダー》が現れる。

 

魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2500

 

「エクストラデッキからも呼び出せるだと…!?だが、それがどうした!《イレイザー》の攻撃力がお前のフィールドにカードが増えたことでアップするぞ!」

新たな獲物を確認した《邪神イレイザー》は狂気の笑みを浮かべる。

 

邪神イレイザー レベル10 攻撃3000→4000

 

「まだだ!俺は《ペイルライダー》、《キンシ》、《ムネシゲ》でオーバーレイ!」

「何!?またわけの分からねえことを…!」

再び聞いたことのない用語を聞き、キースの機嫌が更に悪くなる。

「ペンデュラムエクシーズチェンジ!!現れろ、ペンデュラムエクシーズ!次元を超え、新たな力を宿せ!《魔装騎士フェラーレ・カヴァリエーレ》!!」

 

PX魔装騎士フェラーレ・カヴァリエーレ ランク7 攻撃2500

 

「エクシーズ…ペンデュラム…一体どうなってんだ…!?」

「フィールド上のカードが減ったことで、《イレイザー》の攻撃力は下がる!」

 

邪神イレイザー レベル10 攻撃4000→2000

 

「そして、俺は《カヴァリエーレ》の効果を発動。1ターンに1度、ペンデュラムオーバーレイユニットを1つ取り除くことで相手モンスター1体の攻撃力を0にし、ターン終了時まで選択した相手モンスターの元々の攻撃力を得る。デス・ドレイン!」

オーバーレイユニットを宿した玉石が神の力を吸収しようとする。

「バカが!!罠カード《蟲惑の落とし穴》を発動!このターンに特殊召喚されたモンスターの効果の発動を無効にし、破壊する!これでせっかくのペンデュラムエクシーズチェンジってのはおしまいだ!!」

《邪神イレイザー》が黒い血に姿を変え、《PX魔装騎士フェラーレ・カヴァリエーレ》の足元へ向かう。

そして、その血で巨大な穴を生み出すと、《PX魔装騎士フェラーレ・カヴァリエーレ》が飲み込まれていった。

「ハハハハ!!またカードが減っちまったから、《イレイザー》の攻撃力は下がる!だが、ペンデュラムモンスターとかいう訳の分からないモンスターがもうないお前にはこいつは倒せねえ!!」

 

邪神イレイザー レベル10 攻撃2000→1000

 

たしかに、オーバーレイユニットと化したペンデュラムモンスターはエクストラデッキに戻ることはない。

そして、ペンデュラムモンスターはもはや翔太の手札にはない。

しかし、キースはある重大なことを忘れていた。

エクストラデッキへ向かうことがなかったペンデュラムモンスターがどこへ行くのかを。

「いいや、俺のペンデュラムモンスターは…《ペイルライダー》は何度でも立ち上がる。敵に死を与えるまでな。罠発動!《闇夜を駆ける騎士》!!俺のフィールドのモンスターが破壊された時、手札・デッキ・墓地・エクストラデッキから《ペイルライダー》を特殊召喚する!」

「何!!?」

急に上空が満月の夜へと変化していく。

そして、《邪神イレイザー》が生み出した穴の中から《魔装騎士ペイルライダー》が現れた。

 

魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2500

 

闇夜を駆ける騎士

通常罠カード

(1)自分フィールド上のモンスターが破壊されたターンにのみ発動できる。手札・デッキ・簿p地・エクストラデッキから「魔装騎士ペイルライダー」1体を自分フィールド上に特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効化され、ターン終了時に破壊される。

 

「俺のフィールドに存在するカードは《ペイルライダー》のみ。よって、《イレイザー》の攻撃力は1000のままだ!!」

《ペイルライダー》がライフルのカートリッジを交換する。

その姿を見て、キースは密かににやっと笑った。

「《ペイルライダー》!!神を殺す時が来たぞ!!」

《ペイルライダー》のライフルから青い光線が放たれる。

そして、その光線は《邪神イレイザー》の額を見事に撃ちぬいた。

 

キース

ライフ3350→1850

 

「ハ…ハ…ハハハ…」

急にキースが狂ったように笑い始める。

「どうした?切り札がやられてついにイカれたか?」

「いいや…そうじゃねえ。うれしいんだよ。これでてめえにも死の感覚を教えることができるからなぁ…」

「何!?」

キースは《邪神イレイザー》から飛び降り、翔太の前に立つ。

額を撃ちぬかれ、絶命したはずの《邪神イレイザー》が自らの手で首を飛ばす。

すると、傷口から黒い血が四方八方に飛び散る。

「気味の悪いモンスターだな…」

「ああ…こいつの本体はこの黒い血なんだよ…。こいつは破壊されるとき、フィールド上のすべてのカードを道連れにする…」

不覚にも血を浴びてしまった《魔装騎士ペイルライダー》が溶けていく。

それだけでなく、血がどんどん増えていき、最終的には翔太とキースの視界がそれに塗りつぶされていく。

次第にそれは暗黒空間となり、2人を閉じ込めて行った。

「な…なんだよ…これは…!?」

漆黒の空間の中で、翔太は自分の視覚以外のすべての感覚が消えていくような感じがした。

体温も色も痛みもすべてが邪神に奪われていく。

「ヘヘヘ…どうやら近づいてるようだな…死に…」

「俺は…カードを1枚伏せ、ターンエンド」

 

翔太

手札1→0

ライフ500

場 伏せカード1

 

キース

手札0

ライフ1850

場 なし

 

「死なせてやるよ…てめえの騎士さんが《イレイザー》を殺したように…。俺のターン、ドロー…」

 

キース

手札0→1

 

「俺は手札から魔法カード…《死者蘇生》を発動…。その効果で蘇らせるのは…《デモニック・モーター・Ω》…」

闇の中から両手足と頭部に刃を備えた赤い装甲に人型ロボットだ。

 

デモニック・モーター・Ω レベル8 攻撃2800

 

「死んで来い…てめえ…!!」

《デモニック・モーター・Ω》の刃が翔太に襲い掛かる。

このような暗黒空間ではアクションカードを探すことはできない。

「く…!罠発動!《ガード・ブロック》!!」

不可視のバリアが翔太を攻撃から守る。

「まだ…やられていない…うぐ…!」

ドローした瞬間、急に《邪神イレイザー》の攻撃で受けた傷が痛み始める。

いや、正確には邪神によって暗黒空間に閉じ込められる前から痛みを感じていたが、デュエルに集中するためあまり気にしないようにしていた。

(不幸中の幸いか…この痛みで大分感覚が戻ってきたな…まるで、死の世界に引っ張られたかのようだったな)

「なんで…なんで死なねえんだ…?」

「何?」

先程は愉快そうにしていたキースが急におびえた表情になる。

「俺だけが死んで…あいつだけが生き残る…そんなことあるか…ああ…!!」

急に頭を抱え、手で視界を覆う。

サングラスの下から涙が零れ落ちている。

「き…消えるのか?俺はまた…復讐を果たせねえまま…こんな訳の分からねえガキに…」

偶然、キースのひじがデュエルディスクのターン終了スイッチに触れ、ターンが翔太にかわる。

そして、《デモニック・モーター・Ω》の効果で《モータートークン》が現れる。

 

翔太

手札0→1

ライフ500

場 なし

 

キース

手札1→0

ライフ1850

場 デモニック・モーター・Ω レベル8 攻撃2800

  モータートークン レベル1 攻撃200

 

「俺のターン」

 

翔太

手札1→2

 

「悪いが、あんたの都合はどうでもいい。すぐにここから出ていくぜ。手札から魔法カード《死者蘇生》を発動。その効果で俺は《魔装槍士クーフーリン》を特殊召喚」

 

魔装槍士クーフーリン レベル6 攻撃2100

 

「バトルだ。《クーフーリン》で《モータートークン》を攻撃!ニードル・スピア!!」

《魔装槍士クーフーリン》の槍が《モータートークン》を貫き、更にキースの胸を貫いた。

「…!!!」

攻撃を受けたキースはよろよろと座り込んだ。

 

キース

ライフ1850→0

 

「はあ…はあ…はあ…」

デュエル終了と同時に暗黒空間が消え、元の空間に戻る。

それと同時にキースの姿も消えてしまった。

「消えた…!?」

「アハハハハハ!まあまあなデュエルだったな!!」

再び翔太の脳裏にあの声が響く。

「おい!!一体何のつもりだ!!?奴は…!?」

「安心しなよ、こいつはキースってやつをモチーフに居眠りしながら作った虚像。別にどうってことねえよ。ああ…それと、これからお前に1つアドバイスしてやるよ」

「アドバイスだと!?それよりも…」

「聖子ちゃんのことかぁ?残念ながら、時間切れーーー!!これからすぐに元の場所へお前を強制送還するからなー!」

「ふざけんな!!なぜ俺の邪魔をする!?」

「それよりもー教えてやるよ。記憶の鍵となるモンスターを10体倒せば、聖子ちゃんの意識が戻る。ええっと、今までに倒したのは1体だけ。あと9体倒せばいいのさー!じゃあ、頑張ってねーー」

「待て!!貴様…あの時は俺を助け、今回は俺の邪魔をする!!一体何なんだ!!?」

その質問への答えが脳裏に響くことはなかった。

そして、まぶしい光に包まれて翔太は目を閉じた。

 

「…!!ハア…ハア…」

「翔太君!?どうしたの??急に汗を一杯出して…」

「い…伊織…?」

目を開くと、そこは聖子の病室だった。

「それにしても、頭は大丈夫なの?」

「ああ…問題な…!?」

伊織の腕時計を見て、翔太の目が大きく開く。

「2時21分…だと…!?」

「翔太君…?」

「伊織、俺はどれくらい意識を失っていた…?」

「え?気絶なんてしてないよ?ただ瞬きしてただけだよ。それにしてもすごいねー、瞬きする間にもう頭が痛くなくなったなんて。でも、どうしてこんなにいっぱい汗を一瞬で…」

伊織の言葉に動揺しながら、翔太は眠っている聖子を見る。

(違う…そんなはずない!!あなたが…あなたがこんなところにいるはずがない!!)

(俺が存在するはずがない…?一体どういうことなんだ…?記憶の鍵をあと9体見つけることで、それがわかるというのか…?)




権現坂のシンクロモンスターの効果に興味津々になっているナタタクです。
今回はペガサスと城之内によって奈落の底へ落ちたというキースの登場でした。(虚像ですが…)
いろいろ変な部分があるかと思うますが、その点はご容赦ください。
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