ランサーズとヴァプラ隊による攻撃が徐々にアカデミアに近づいていき、授業中のデュエル戦士候補生たちも次々と教師の命令のもとに前線へと駆り出される。
「ええい、スタンダード次元め…!ここまで攻め込んでくるとは…!」
黒い制服を身にまとい、戦士らしく整った髭と大柄で引き締まった体つきをした男、サンダースは苦々しい今の状況に歯ぎしりを立て、愛用の鞭を握りしめる。
最初期のオベリスクフォースとして選ばれ、エクシーズ次元で数多くの人々をカードに変えた功績から今では教師として多くのデュエル戦士を育てることを命じられた彼のもとで育ったデュエル戦士の中にはオベリスクフォースに選ばれるほどのエリートも存在する。
そんな彼らをも片付けたランサーズに、スタンダードと侮っていた連中についにはまだ育てて間もない生徒までも動かさなければならない程に追い詰められている。
「お困りのようだな、サンダース。こんな奴ら、いくら束にしても今のランサーズを討ち取ることはできんよ」
「ブーン…貴様!」
壁にもたれかかり、前線へと向かう幼いデュエル戦士たちを見送るだけのブーンをサンダースはにらむ。
オベリスクフォースを超えるプロフェッサー直属の特務部隊ジェルマンであるにも関わらず、あげた成果とすればBAT-DIEのデータ収集とセレナの奪還程度。
セレナの奪還についても、構成員の暴走によってオベリスクフォースのメンバーの一人が殺されている。
「怒るなら、そのエネルギーを敵にぶつけるんだな。俺にぶつけるのはお門違いといったところだ」
「黙れ…!貴様こそなんだ!?出撃もせずにここでさぼるつもりか!?」
「あくまで俺たちが従うのはプロフェッサーのみ。上官でもプロフェッサーでもないお前の命令を聞く理由はない。それに、あんたにはまだ切り札があるだろう?」
「あいつのことか…!?」
ブーンの言う切り札の力は育てた張本人であるサンダースも分かっている。
オベリスクフォースを上回る実力を発揮した彼なら、ランサーズと戦っても渡り合える。
だが、その強さと引き換えに大きな欠陥を抱えているから、サンダースは切り札を出すことをためらっている。
かつては今まで育てたデュエル戦士の中では最強だとサンダースも考え、認めていた彼だが、ある日の訓練中に突然発狂し、なんと味方であるはずのデュエル戦士をカードに変えてしまった。
そのことから現在、彼には欠陥品の烙印が押され、独房に入れられている。
「もう手段を選んでいる場合じゃないだろう。それに、奴は欠陥品というよりも劇薬だ。その毒を使うときじゃないのか?」
「貴様…命令を聞く理由がないといいながら私に指図を…」
「ああ…こういえばいいか。これはプロフェッサーからの命令だ。お前の切り札、BBを投入しろ。問題ない、こいつを使えばいいのだから」
ニヤリと笑うブーンはサンダースに使い捨ての空気注射器を手渡す。
その中に入っているものが何かに気づいたサンダースは顔をゆがませ、ブーンは口角を吊り上げた。
「痛…て。て…。くそ、体がまだ痛むぜ…」
地上に落ちていたユーゴは意識を取り戻したが、先ほどまでは全身に感じる激痛のせいでしばらく起き上がることができなかった。
Dホイールの練習をしていた際に何度か操作を誤って転倒したり、衝突したりしたことがあり、それでけがをしたこともあるが、今回はそれ以上のダメージだ。
いくらか骨折もしていて、どうにか起き上がって歩くことができるだけでも奇跡だ。
「デュエルディスクが左腕に…。でも、クリアウィングの声が聞こえねえ。Dホイールもねえ…」
デュエルディスクの中には《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》も《HSR/CWライダー》も入っているが、いつも聞こえているはずだったクリアウィングの声が聞こえない。
おそらく、甦ったDホイールに宿ったせいなのかもしれない。
「あいつが復活させたんだ…。壊れるなんてことはねえだろうが…」
彼のことが心配だが、今度こそリンを助けるためにもう1度動き出さなければならない。
その過程でもしかしたら、クリアウィングとも再会できるかもしれない。
(にしても、初めてだな…。あいつの声が聞こえねえなんてことは)
ユーゴにとって、彼の声が聞こえるのは当たり前の状況だった。
物心ついてから彼の声が聞こえ、口喧嘩をすることもあったが、それでもリンと同じく幼いころから一緒に過ごしてきた仲間の一人だ。
最も、クリアウィングと話すときは彼の姿が見えないことから周囲には独り言を言っている変な奴だとみられることが多かった。
例外はリンで、リンはクリアウィングと話せることを信じてくれた。
「待ってろ、リン…」
「いけ!《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》!ダイレクトアタックだ!!」
「《魔装騎士ペイルライダー》でダイレクトアタック」
「「うわああああ!!!」」
デュエル戦士A
ライフ2300→0
デュエル戦士B
ライフ1000→0
「よし…もうちょっとで中に入れるな」
倒したデュエル戦士に目もくれず、翔太はその先にある大きなグラウンドとその先に見える大きな扉に目を向ける。
そこから校内に突入することもできるが、なぜかグラウンドには人っ子一人いない。
先ほどまではデュエルロイドやデュエル戦士が山ほどいたにもかかわらず、グラウンドを突破されると校内に入られるのは敵も分かっているはずだが。
「気をつけろ、遊矢。こういう場所には罠が待っているものだ」
「罠…?」
「わかりやすくもある…。だが…」
だとしたら、ほかのルートから校内に侵入する手立てを探すことも選択肢の一つだろう。
だが、その別のルートを見つけることができるかはわからないうえに、再び多くのデュエル戦士とデュエルロイドと戦うことになりうる。
そして、このルートを確保するために多くのヴァプラ隊員が犠牲になっている。
「進むしかない…。戦いを終わらせるために犠牲になった彼らに報いるためにも。たとえ、それが罠だとしてもだ」
「兄さま…」
「だったら、俺が先に入ってやるよ!一番乗りはこの俺、沢渡シンゴだ!」
「なんだよ、はりきっちまって。今までろくに出番をもらえなかったから、目立とうとしてやがるな?」
「うるせー!それはてめーも同じことだろうが!!」
プンスカ怒りながらグラウンドに入ると同時に急に何もない砂だけのはずの空間が揺れ始める。
「地震…!?」
「いや、これは…!!」
「おいおいおい、こいつは…リアルソリッドビジョン!?」
グラウンドがみるみるとアマゾンの密林のような空間へと変貌を遂げ、校舎が林とその中に見え隠れする遺跡によって覆い隠されてしまう。
真っ先に入った沢渡はその木々に覆い隠されてしまう。
「沢渡!!」
「よせ、あの密林の中には何があるか分かったものではないぞ!おそらく罠が…」
「いや…もう私たちは罠にはまっている。この密林のデュエルフィールドが出現した時点で」
全員のデュエルディスクは強制的にバトルロイヤルモードに切り替えられており、デュエルディスクが展開されていた。
「くそーーー!なんだよ!?戻ってるんじゃねーのか?!」
密林に閉じ込められた沢渡は反対方向を歩いて遊矢たちと合流しようともくろむが、ほんの数歩だけ先に進んでいただけなのにもかかわらず、どれだけ引き返しても彼らの姿が見えず、密林の中を進むばかり。
彼のデュエルディスクも零児達と同様、バトルロイヤルモードに切り替わっていた。
バトルロイヤルモードについてはLDSの授業の中で学んでいる。
(乱入ペナルティが廃止され、最後の一人になるまでデュエルが終わらねえ…。タッグデュエルとは違って、味方への攻撃も可能…ま、バトルロイヤルモードに敵も味方もねえが…)
だが、それはあくまでもルールの中での話。
このルールでは数人で手を組んで一人のデュエリストにリンチをかけることもできる。
舞網チャンピオンシップなどでオベリスクフォースが仕掛けてきたのと同じように。
こんな危険な状況を早々に脱したいと考える沢渡だが、近くから草が動く音が聞こえてくる。
「敵か!?おい!気づいてんだよ、さっさと姿を見せろ!!」
デュエルディスクを構え、音が聞こえた方向に目を向けた沢渡が叫ぶ。
(だ、団長…)
「ああ、なんだよルーキー。びびってんじゃねえ!」
肩の上の小人のような大きさで現れたサッシー・ルーキーに驚くことなく叱咤する中、草むらから出てきたのは毛皮でできたアマゾンの原住民族の服装を模した姿で、目元を墨で塗りたくった男だった。
乱暴にナイフで切っているためか、髪は整っておらず、獣のようなうなり声をあげている。
「こいつもアカデミアの…?にしても、制服を着てねえってのはどういうことだよ!?」
今までのデュエル戦士にはない野性的な凶暴さの見え隠れする目の前のデュエル戦士に驚く沢渡だが、彼は既にデュエルの準備を整えている。
バトルロイヤルモードが既に開始されている以上、もう彼とのデュエルも始まっている。
「バトル・ビースト…。サンダース教授が生み出した化け物」
校舎内でタブレット端末を手にし、そこから流れる密林の中でデュエルをする野生の少年と沢渡の映像を見るブーンはにやりと笑う。
「最も、化け物と臆病者の境界線はあいまいだ。それに、狼は…」
バトル・ビースト
手札5
ライフ4000
沢渡
手札5
ライフ4000
「おーい、どこにいる沢渡!?返事をしろー!!」
密林に入らざるを得なかった権現坂達は先に入ったはずの沢渡を探し始める。
そんなに先に進んでいないはずの沢渡の姿はいくらまっすぐ進んでも見つけることができない。
集団で動いたことで彼以外ははぐれずに済んでいるが、このフィールドがどこかおかしいということは理解できた。
「ユウ、このフィールド…なんか、いやだ」
精霊の姿に戻ったウィンダの言葉に侑斗は何も言わずに首を縦に振る。
「僕もそう感じるよ…。嫌な力が働いてる。きっと、沢渡君と合流できないのも、そのせいだ」
「ぐうう!!俺の、俺の先攻!!俺は、《剣闘獣アトリクス》を召喚!!」
湾曲した短剣を手にしたメスの豹をモチーフとしている剣闘獣が密林の中から飛び出してくる。
剣闘獣アトリクス レベル4 攻撃800
「け、剣闘獣だぁ!?」
剣闘獣は翔太と伊織が世話になっているという施設の院長である栄次郎が使っていると聞いているデッキで、沢渡もLDSの授業で何度も聞いたことのある。
「カードを2枚伏せ、永続魔法《剣闘排斥波》を発動!ターンエンド…」
バトル・ビースト
手札5→1
ライフ4000
場 剣闘獣アトリクス レベル4 攻撃800
剣闘排斥波(永続魔法)
伏せカード2
沢渡
手札5
ライフ4000
場 なし
「沢渡…沢渡。おい!!サワガニ、応答しろ!ちっ、だめだ。つながらねえ…」
「船とも通信できないなんて…」
翔太と伊織だけでなく、遊矢たちもどうにか外にいる仲間や沢渡と通信をつなげようとする。
だが、通信は一向につながる気配がなく、雑音が響くばかりだ。
「どうやら、この密林を攻略しない限り…我々は外の世界と寸断される。孤立無援と同じか…」
おまけに下手にバラバラになれば、沢渡のように合流できない状態になる。
進むにも退くにも、行き先は誰にもわからない。
「伏せカード2枚に《剣闘排斥波》かよ…だったら、てめーのフィールドを剣闘獣の山にするわけにはいかねえ!さっさと蹴散らしてやるぜ!俺のターン、ドロー!!」
沢渡
手札5→6
「俺はスケール2の《魔界劇団-ワイルド・ホープ》とスケール9の《魔界劇団-ティンクル・リトルスター》でペンデュラムスケールをセッティング!」
「ぐうううう…」
《魔界劇団-ワイルド・ホープ》とともに魔界劇団の重鎮といえる《魔界劇団-ビッグ・スター》の帽子と《魔界劇団-プリティ・ヒロイン》の靴を身に着け、左右に人の顔が描かれた紅葉をもしたぬいぐるみを浮かべた赤毛の少女が宙を舞い、光の柱を生み出す。
「これで俺はレベル3から8までのモンスターを同時に召喚可能!現れろ、《魔界劇団-ビッグ・スター》!《魔界劇団-デビル・ヒール》!!」
魔界劇団-ビッグ・スター レベル7 攻撃2500
魔界劇団-デビル・ヒール レベル8 攻撃3000
「《デビル・ヒール》の効果発動!このカードの召喚・特殊召喚に成功したとき、相手フィールドのモンスター1体の攻撃力を俺のフィールドの魔界劇団1体につき1000ダウンさせる!」
「ぐうううう!!《剣闘排斥波》の効果!!俺のフィールドの剣闘獣はバトルフェイズ以外では相手のカード効果の対象にならない!!」
「んなことわかってんだよ!やれ!《デビル・ヒール》!!」
《魔界劇団-デビル・ヒール》の口から放たれる紫の炎が《剣闘獣アトリクス》ではなく、バトル・ビーストの背後の木々をも巻き込む。
(よく燃えてくれよ!そして、あいつらに俺の居場所を知らせてくれ!!)
「さらに俺は手札から《魔界台本「火竜の住処」》を《デビル・ヒール》を対象に発動!」
滝や火山、洞窟、平原といった様々な地域が混ざり合った台本が現れ、そこから放たれた炎が《魔界劇団-デビル・ヒール》の体を包んでいく。
「《「火竜の住処」》の効果を受けた《デビル・ヒール》が戦闘で相手モンスターを破壊したとき、お前は自分のエクストラデッキからカードを3枚選んで除外しなきゃならねえ!こいつでお前のエクストラデッキを空っぽにしてやるぜ!」
剣闘獣の武器はフィールドに並んだ仲間を利用した《融合》なしでの融合召喚。
それによって強力な剣闘獣融合モンスターを召喚されるのであれば、除外してそれを封殺する。
エクストラデッキに依存するデッキには《魔界台本「火竜の住処」》がいい薬になる。
「バトルだ!《デビル・ヒール》で《アトリクス》を攻撃!剛腕鉛武拳!!」
炎をまとった《魔界劇団-デビル・ヒール》がその炎を右拳に集中させ、それを《剣闘獣アトリクス》に向けてふるう。
(このまま《デビル・ヒール》と《ビック・スター》、ライバル同士のパワーアタックで決めて…!)
「俺は罠カード《和睦の使者》を発動!このターン、俺のフィールドのモンスターは戦闘では破壊されず、俺が受ける戦闘ダメージも0になる」
《魔界劇団-デビル・ヒール》の剛腕と本来ならそれで軽くつぶされることになるはずの《剣闘獣アトリクス》の短剣がぶつかり合い、互角のつばぜり合いを演じる。
「ちぃ…このままさっさと倒せたはずなのによぉ!!」
そして、ここから始まる剣闘獣による特殊召喚ラッシュが沢渡の脳裏に浮かぶ。
「グオオオオオ!!!《アトリクス》の効果発動!このカードが戦闘を行ったバトルフェイズ終了時、このカードをデッキに戻すことで、デッキから新たな剣闘獣を特殊召喚できる!俺は《剣闘獣サジタリィ》を特殊召喚!!
!!」
《剣闘獣アトリクス》が密林の中へと消えていき、入れ替わるように下半身が馬となっている射手が飛び出してくる。
剣闘獣サジタリィ レベル3 攻撃1400
「さらに《剣闘排斥波》の効果発動!デッキから剣闘獣の特殊召喚に成功したとき、さらにデッキから俺のフィールドに存在しない種族の剣闘獣を守備表示で特殊召喚できる!《ベストロウリィ》を特殊召喚!」
剣闘獣ベストロウリィ レベル4 守備800
「そして、《サジタリィ》の効果。手札の剣闘獣カード1枚を捨て、デッキからカードを2枚ドローする!!」
バトル・ビースト
手札1→2
手札から墓地へ捨てたカード
・剣闘獣アウグストル
「くそっ!《ベストロウリィ》まで!!」
沢渡の脳裏に浮かんだのは《剣闘獣ガイザレス》。
《剣闘獣ベストロウリィ》とほかの剣闘獣をデッキに戻すだけで現れるそのモンスターはフィールド上のカードを2枚まで破壊できる効果を持つ。
おまけに戦闘を行ったバトルフェイズ終了時にエクストラデッキに戻すことで、新たな剣闘獣を2体もデッキから呼び出すことができる。
そのモンスターの特殊召喚だけは防がなければならない。
「俺は手札から魔法カード《魔界台本の執筆》を発動!俺の手札がこのカードのみで、俺のペンデュラムゾーンに魔界劇団が2枚存在するときにだけ発動でき、俺のフィールドのレベル7以上の魔界劇団の種類だけデッキからカードをドローする。俺のフィールドにいるレベル7以上の魔界劇団は《ビック・スター》と《デビル・ヒール》。よって、カードを2枚ドローする。そして、手札から魔法カード《一時休戦》を発動!お互いにデッキからカードを1枚ドローし、次のお前のターン終了時までお互いに受けるすべてのダメージを0にする。そして、カードを1枚伏せてターンエンド」
バトル・ビースト
手札2→3
ライフ4000
場 剣闘獣ベストロウリィ レベル4 守備800
剣闘獣サジタリィ レベル3 攻撃1400
剣闘排斥波(永続魔法)
伏せカード1
沢渡
手札6→0
ライフ4000
場 魔界劇団-ビッグ・スター レベル7 攻撃2500
魔界劇団-デビル・ヒール レベル8 攻撃3000
伏せカード1
魔界劇団-ワイルド・ホープ(青) Pスケール2
魔界劇団-ティンクル・リトルスター(赤) Pスケール9
「俺の…俺のターン!」
バトル・ビースト
手札3→4
「ちょっと待ったぁ!俺は《ビッグ・スター》をリリースして、罠カード《魔のデッキ破壊ウイルス》を発動!こいつは俺のフィールドの攻撃力2000以上の闇属性モンスターをリリースすることで、お前のフィールド、手札、そしてこれから3ターンの間お前がドローするカードの中に攻撃力1500以下のモンスターが存在する場合、そいつらをすべて破壊する!」
《魔界劇団-ビッグ・スター》が帽子を残して姿を消し、残された帽子の中から「魔」の一文字が描かれたウイルスの大群がバトル・ビーストを襲う。
ウイルスに飲まれたフィールド上の2体の剣闘獣が消滅していく。
そして、バトル・ビーストは自分の手札を沢渡に見せる。
バトル・ビーストの手札
・剣闘獣ラクエル
・剣闘獣ウェスパシアス
・団結する剣闘獣
・スレイブタイガー→《魔のデッキ破壊ウイルス》の効果により破壊される。
「《団結する剣闘獣》だと…?!」
見たくなかった1枚にせっかく見えていた《剣闘獣ガイザレス》のいないデュエルのイメージが消滅する。
幸いここから3ターンの間、手札に来る剣闘獣の妨害はできるものの、これから特殊召喚されるものに対してはどうのしようもない。
「俺は《剣闘獣ラクエル》を召喚!!」
剣闘獣ラクエル レベル4 攻撃1800
「バトルフェイズに入り、手札から速攻魔法《団結する剣闘獣》を発動!俺かお前のターンのバトルフェイズ中にだけ発動でき、手札・フィールド・墓地の剣闘獣をデッキに戻すことで、エクストラデッキから新たな剣闘獣融合モンスターを召喚条件を無視して特殊召喚できる!俺は墓地の《サジタリィ》、《ベストロウリィ》をデッキに戻し、《剣闘獣ガイザレス》を特殊召喚!!」
剣闘獣ガイザレス レベル6 攻撃2400
「《ガイザレス》の効果発動!!このカードの特殊召喚に成功したとき、フィールド上のカードを2枚まで破壊できる!《デビル・ヒール》と《ワイルド・ホープ》を破壊!!」
《剣闘獣ガイザレス》の両翼からかまいたちを引き起こし、それらが《魔界劇団-デビル・ヒール》と《魔界劇団-ワイルド・ホープ》を真っ二つに切り裂いて消滅させる。
「やばいよ、やばいよ団長ーー!!これじゃあペンデュラム召喚できないよー!!」
「んなことわかってるっての!《一時休戦》の効果でダメージは受けないから心配すんな!!」
《団結する剣闘獣》を使われたのは予想外だが、それでも最悪の事態だけは回避できるようにはしている。
ただし、《一時休戦》はあくまでダメージを0にするだけで、戦闘を止めることはできない。
「バトル!!《ガイザレス》と《ラクエル》でダイレクトアタック!!」
バトル・ビーストの命令で突撃する《剣闘獣ラクエル》と《剣闘獣ガイザレス》だが、沢渡を包む見えないバリアがそれを受け止める。
そして、攻撃を終えたそれらモンスターは飛翔し、太陽と重なってその姿を隠す。
「《ガイザレス》の効果!俺のターンのバトルフェイズ中に戦闘を行ったこのカードをバトルフェイズ終了時にエクストラデッキに戻すことで、デッキから剣闘獣を2体特殊召喚する!俺はデッキから《剣闘獣エクイテ》、《剣闘獣ノクシウス》を特殊召喚!《エクイテ》の効果!戦闘を行ったこのカードをバトルフェイズ終了時にデッキに戻し、デッキから《剣闘獣ウェスパシアス》を特殊召喚!」
《剣闘獣ガイザレス》の代わりに上空から降りてきたのは《剣闘獣エクイテ》と両腕に大型クローをつけた手甲をつけ、両足と胴体に機械のアーマーを装着した二本足の虎が降りてくる。
そして、その2体の後ろに飛び降りてきたのは左手に薄い金色の剣を握る青い海竜だ。
剣闘獣エクイテ レベル4 攻撃1600
剣闘獣ノクシウス レベル5 守備1000
剣闘獣ウェスパシアス レベル7 攻撃2300
「《エクイテ》の効果!このカードを剣闘獣カードの効果で特殊召喚に成功したとき、墓地の剣闘獣カード1枚を手札に戻す。俺は《団結する剣闘獣》を手札に戻す。さらに《ノクシウス》の効果。デッキから剣闘獣1体を墓地へ送る。俺は《ベストロウリィ》を墓地へ送る!」
「くそ…!これで次の俺のターンでまた《ガイザレス》を特殊召喚できるのかよ!!」
「そして、《剣闘排斥波》の効果!デッキからさらに《剣闘獣ムルミロ》を特殊召喚!」
剣闘獣ムルミロ レベル3 守備400
戦闘という間を挟むものの、それを維持することでバトル・ビーストは毎ターン2枚のカードを破壊できる状況を作り上げた。
破壊された沢渡のカードはいずれもペンデュラムカードのため、ペンデュラムスケールを準備できればまたすぐにフィールドに戻すことができる。
《剣闘獣ガイザレス》の攻撃力も2400で、戦闘破壊できないほどのカードでもない。
「《ウェスパシアス》の効果発動ぉ!!剣闘獣モンスターの効果で特殊召喚に成功したこのカードがフィールドに存在する限り、自分フィールドのモンスターの攻撃力を500アップさせる!」
剣闘獣エクイテ レベル4 攻撃1600→2100
剣闘獣ノクシウス レベル5 攻撃0→500
剣闘獣ウェスパシアス レベル7 攻撃2300→2800
剣闘獣ムルミロ レベル3 攻撃800→1300
「そして、俺はカードを1枚伏せてターンエンド!!」
バトル・ビースト
手札4→0
ライフ4000
場 剣闘獣エクイテ(《剣闘獣ウェスパシアス》の影響下) レベル4 攻撃2100
剣闘獣ノクシウス(《剣闘獣ウェスパシアス》の影響下) レベル5 守備1000
剣闘獣ウェスパシアス(《剣闘獣ウェスパシアス》の影響下) レベル7 攻撃2800
剣闘獣ムルミロ(《剣闘獣ウェスパシアス》の影響下) レベル3 守備400
剣闘排斥波(永続魔法)
伏せカード2(うち1枚《団結する剣闘獣》)
沢渡
手札0
ライフ4000
場 魔界劇団-ティンクル・リトルスター(赤) Pスケール9
「くそ…!俺のフィールドは《ティンクル・リトルスター》だけで、手札0かよ…!」
《一時休戦》のおかげでライフは減らなかったとはいえ、4体の剣闘獣がフィールドに存在する上に《団結する剣闘獣》の効果でバトルフェイズ突入とともに融合召喚が行われる準備まで整っている。
《剣闘獣ガイザレス》以外にも数多くの剣闘獣融合モンスターが存在することは授業で学んでおり、今のバトル・ビーストは状況に応じてその強力なモンスターを召喚できる。
「団長、もしかして…これ、オイラたちの負け??」
「負け…?フッ、誰がそんなことを決めたんだよ」
確かにバトル・ビーストは強いデュエリストであることは沢渡もこのターンで認めている。
だが、彼には唯一誤算がある。
それは相手が沢渡だということだ。
「俺をだれだと思っている?俺は無敵のデュエリスト、沢渡シンゴ様だぜ!?俺のターン!!」
沢渡
手札0→1
「俺は手札から魔法カード《逆境の宝札》を発動!自分フィールドにモンスターが存在せず、相手フィールドに特殊召喚されたモンスターが存在するとき、デッキからカードを2枚ドローできる。そして、俺は《エキセントリック・デーモン》をセッティング!」
悪魔の骸骨でできた仮面をつけ、右手にスティックを握る灰色の肌の少女がニヤニヤと笑いながら上空に浮遊し、光の柱を生み出す。
「《エキセントリック・デーモン》のペンデュラム効果発動!こいつとこのカード以外の魔法・罠カードを1枚破壊する!俺は《剣闘排斥波》と《エキセントリック・デーモン》を破壊だ!」
光の柱から飛び出した《エキセントリック・デーモン》がバトル・ビーストの《剣闘排斥波》のソリッドビジョンに向けて飛び込んでいく。
そして、どこからか爆弾を取り出すとためらうことなくそれに火をつけ、自爆した。
破壊された伏せカード
・団結する剣闘獣
「よし…そして、俺は手札から《魔界小道具「ジャグリングボール」》を発動!こいつは俺のフィールドにモンスターが存在せず、相手フィールドにエクストラデッキから特殊召喚されたモンスターが存在するとき、デッキから魔界劇団1体と魔界台本1枚を手札に加える。俺は《魔界劇団プリティ・ヒロイン》と《魔界台本「悲劇の姫君」》を手札に加える。そして、スケール2の《プリティ・ヒロイン》をセッティング!これで俺はレベル3から8までのモンスターを同時に召喚可能!ペンデュラム召喚!現れろ、《魔界劇団-ビッグ・スター》、《魔界劇団-デビル・ヒール》、《魔界劇団-ワイルド・ホープ》!!」
魔界劇団-ビッグ・スター レベル7 攻撃2500
魔界劇団-デビル・ヒール レベル8 攻撃3000
魔界劇団-ワイルド・ホープ レベル4 攻撃1600
「《ワイルド・ホープ》の効果発動!こいつの攻撃力を俺のフィールドの魔界劇団の種類1つにつき100アップさせる!」
魔界劇団-ワイルド・ホープ レベル4 攻撃1600→1900
「さらに《ビッグ・スター》の効果。1ターンに1度、デッキから魔界台本1枚をセットすることができる。この効果でセットされたカードはターン終了時に墓地へ送られる。俺がセットするのは《魔界台本「魔王の降臨」》!そして、セットした《「魔王の降臨」》を発動!俺のフィールドに攻撃表示で存在する魔界劇団の種類の数まで、フィールド上に表側表示で存在するカードを破壊する!俺のフィールドに存在する魔界劇団は3種類!よって、《ウェスパシアス》と《エクイテ》と《ノクシウス》を破壊する!」
《魔界劇団-ビッグ・スター》が取り出した台本が広がり、そこからは真っ黒なオーラをまとった、巨大な悪魔のようなシルエットが現れる。
それの口から放たれた炎が3体の剣闘獣を焼き尽くしていった。
「まだいくぜ?俺はさらに手札から《魔界台本「悲劇の姫君」》を発動!俺のフィールドにレベル7以上の魔界劇団が存在するとき、相手フィールドにセットされているカードをすべて破壊する!」
続けて現れた台本には氷に閉ざされた城が出現し、その中には氷漬けになった姫君がとらわれている。
台本から発生した吹雪はバトル・ビーストの2枚の伏せカードを氷漬けにした後、粉々に砕け散らせた。
破壊された伏せカード
・団結する剣闘獣
・いがみ合う剣闘獣
「ハッハッハッ!俺様ってばカードに選ばれてるぅ!この状況を一気にひっくり返してやったぜぇ!!」
これでバトル・ビーストのフィールドに残ったのは《剣闘獣ムルミロ》1体のみ。
それに対して沢渡のフィールドには3体の魔界劇団が存在する。
このまま3体による一斉攻撃を決めれば、バトル・ビーストを倒せる。
「バトルだ!まずは《ワイルド・ホープ》で《ムルミロ》を攻撃!!」
まず先手を打つ《魔界劇団-ワイルド・ホープ》が手に持っている銃で《剣闘獣ムルミロ》を撃ちぬく。
「そして、《デビル・ヒール》と《ビッグ・スター》でダイレクトアタック!!」
続けて、《魔界劇団-デビル・ヒール》がその巨体を大きく跳躍させ、ボディプレスを決める。
巨体の下敷きになったバトル・ビーストはグウウウウとうなり声をあげて痛みに耐える。
バトル・ビースト
ライフ4000→1000
そして、その巨体が離れた後でとどめに一撃と言わんばかりに《魔界劇団-ビッグ・スター》が根本が槍のように鋭くなっているバラを出すと、それをバトル・ビーストに向けて投げつけた。
「これで俺の勝ちだ!!」
「グウウウウ!!俺は墓地の罠カード《いがみ合う剣闘獣》を発動!!」
「何?!こいつは俺が破壊した…」
「俺が直接攻撃を受けるとき、墓地の剣闘獣を相手フィールドに特殊召喚し、バトルフェイズを終了させる!そして…俺はこの効果で特殊召喚された剣闘獣の攻撃力分のダメージを受ける…俺が特殊召喚するのは《剣闘獣ウェスパシアス》!!」
「何!?《ウェスパシアス》の攻撃力は2300!自爆する気か!?」
「ヒ、ヒヒ、ヒ…!ハーーーハハハハハハハハハハハ!!」
先ほどまでの獣のようなしぐさとは正反対に高笑いを始めるバトル・ビースト。
敗北のショックで狂ったのかと思った沢渡だが、それはすぐに否定される。
「何!?こ、こいつ…こいつら!!」
密林の中から出てくる人影。
それに沢渡は動揺を隠すことができない。
その人影は既にデュエルディスクをセットし、バトルロイヤルモードによって乱入していた。
そのフィールドに《剣闘獣ウェスパシアス》が現れ、剣から放たれたビームがバトル・ビーストを襲う。
「アハハハハハハハハハハハ!!!!」
高笑いしながらビームを受けたバトル・ビーストはやがて笑わなくなり、その場に倒れる。
バトル・ビースト
ライフ1000→0
魔界台本の執筆
通常魔法カード
このカード名のカードは1ターンに1度しか使用できず、このカードを発動したターン、自分は「魔界劇団」以外のモンスターの召喚・特殊召喚を行えない。
(1):自分の手札に存在するカードがこのカードのみで、自分Pゾーンに「魔界劇団」カードが2枚存在する場合に発動できる。自分フィールドに存在するレベル7以上の「魔界劇団」モンスターの種類の数だけデッキからカードをドローする。
魔界小道具「ジャグリングボール」
通常魔法カード
このカード名のカードは1ターンに1度しか使用できない。
(1):自分フィールドにモンスターが存在せず、相手フィールドにEXデッキから特殊召喚されたモンスターが存在する場合にのみ発動できる。デッキから「魔界劇団」モンスター1体と「魔界台本」魔法・罠カード1枚を手札に加える。この効果を発動したターン、自分が「魔界劇団」モンスターの召喚・反転召喚・特殊召喚を行わなかった場合、もしくは「魔界台本」魔法・罠カードの効果を発動しなかった場合、ターン終了時に2000LPを失う。
魔界台本「悲劇の姫君」
通常魔法カード
(1):自分フィールドにレベル7以上の「魔界劇団」モンスターが存在する場合にのみ発動できる。相手フィールドにセットされているカードをすべて破壊する。
(2):自分EXデッキに「魔界劇団」Pモンスターが存在し、セットされたこのカードが相手の効果によって破壊された場合に発動できる。フィールド上のモンスター1体を墓地へ送り、そのモンスターの攻撃力分のダメージを相手に与える。
いがみ合う剣闘獣
通常罠カード
(1):自分フィールドに「剣闘獣」が存在する場合に発動できる。手札に存在する「剣闘獣」1体を相手フィールドに特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターは戦闘では破壊されず、ターン終了時に持ち主の手札に戻る。
(2):相手の直接攻撃宣言時、墓地に存在するこのカードを除外することで発動できる。自分の墓地に存在する「剣闘獣」1体を相手フィールドに特殊召喚し、バトルフェイズを終了させる。その後、自分はこの効果で特殊召喚されたモンスターの攻撃力分のダメージを受ける。
そして、その姿はなぜかデュエルロイドへと変化した。
「こいつは…ロボット!?人間じゃねえのかよ!?」
「だ、団長…」
「なんだよ、これ…。俺ってば、最後まで生き残るんじゃなかったのかよ…?そういう役回りじゃないのかよ…?」
「ハ、ハハハ…ハハハ…素晴らしい。これは、実に素晴らしい!なんということだ!あの欠陥品をこうして使うことで完成させることができるとは!!」
どこかの部屋のモニターで密林での沢渡が追い詰められていく様子にサンダースは笑いを隠すことができない。
その様子を後ろから眺めるブーンは口角を吊り上げる。
「確かにバトル・ビーストは制御の利かないけだもの。だが、そんなものはドクトルが作ったあの虫で制御できる。そして、それをワンオフにするのはもったいない…。ならば」
「くっ…!!伊織、大丈夫かよ!?」
「う、うん!でも、これって…何!?どうして…」
円陣を組んだ状態でデュエルを行う翔太たちの周りには数多くのバトル・ビーストの姿があり、剣闘獣達がフィールドに並んでいた。
「アカデミアは気でも狂ったのか!?クローンでも作ったのかよ!」
「じゃあ、まさか沢渡も…」
「うわあああああああああああああ!!!!!」
「沢渡!?沢渡ーーーーー!!」
どこからか聞こえる沢渡の悲鳴。
だが、誰も彼を助けるすべも余裕も持ち合わせていなかった。
密林のフィールドのどこかで、集まっていたバトル・ビースト達が次の獲物を求めて再びその中へと消えていく。
そこに残ったのは苦悶の表情を浮かべた沢渡が描かれたカード1枚だけだった。