遊戯王ARC-V 戦士の鼓動   作:ナタタク

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第24話 とある一室で

「…ここは…?」

目を開くと、翔太は普段着の状態で赤い水晶でできた部屋の中にいた。

「ウヒヒヒ…またお邪魔させてもらったぜ?翔太くーん」

今度はテレパシーではなく、はっきりと耳に彼の言葉が聞こえてくる。

「俺の睡眠時間まで邪魔するなんてな…とんでもなく暇な奴だ」

「ああ…俺は四六時中退屈なんだよな。お前と違ってよぉ」

翔太はビークルデュエルの後、伊織と共にホテルへ戻った。

そして夕食を楽しみ、一緒に舞網チャンピオンシップの録画中継を見た後、深夜になってやっと寝床に着いた。

声がする方向には同じ水晶でできた階段があり、その一番上に恐らく彼がいる。

彼の姿を見るため、階段を上ろうとするが段差はいつまでも続いている。

「どれだけ俺に姿を見られたくないんだ?」

「今ここでお前に姿を見せるわけにはいかねえからよ。ま、お楽しみは取っといたほうがいいんじゃねえか?」

「それで、今度は何のようだ」

「特別サービスだよ、左手を見な?」

「…!?」

左手を見た瞬間、急に緑色の光が発生する。

光と同時に激痛が翔太に襲い掛かる。

「ぐおおお…くっ…!!」

「こいつはお前が元々持っている力だぜ。そいつを俺が目覚めさせた」

「ぐぅ…何のために…?」

「大丈夫だぜー?だんだんこいつはお前の体になじんでくる。すぐに痛みは治まるさ」

彼の言うとおり、十数秒たつと痛みが消えて行った。

そして、光が収まると左掌には横一線の太くて赤い痣ができていた。

「この光といいこの痣といい…お前は何をしたい!?」

「それは秘密だ。はじめっから全部知ってたら面白くねぇだろ?」

「あくまで…すべて語るつもりはないってことかよ」

「いずれ俺に感謝するときがくる…とだけ言っておくぜ?あばよ!!」

急に周囲の水晶が赤い輝きを放ち、翔太の視界をふさいで行った。

 

一方、舞網市レオコーポレーション社宅では…。

「…ふう」

フードをかぶっているようにも見える金色の目の男がベッドの端に腰掛けている。

青い服装をしていて、首には赤いスカーフが巻かれている。

さすが大手企業であるレオコーポレーションだけあってか、置かれている家電製品も家財もすべて最先端の物で、住み心地もいい。

彼が黒咲隼、LDS代表という肩書で舞網チャンピオンシップに参加している男だ。

「RUM…」

最後の逆転の一手として使った《RUM-レヴォリューション・フォース》をじっと見る。

「この力さえあれば…必ず瑠璃を…」

目を閉じ、ほんの少し前の事を思い出す。

 

「いたぞ!!囲め囲め!!」

「エクシーズの奴らを根絶やしにしろ!」

崩壊した町の中で、黒咲は追い詰められていた。

赤や黄色、青の制服を着たデュエリストたちが《古代の機械兵士》などのアンティークモンスターを次々と召喚し、黒咲のモンスターを次々と破壊していく。

ダメージは実体化し、攻撃を受ける度に彼の体が傷ついていく。

男たちの手にはおびえた表情の人々がイラストとなっているカードが握られている。

「死ね、エクシーズの奴め!!」

「くっ…!」

手札もなく、フィールドには何もない。

ライフも残りわずか。

(済まない…瑠璃。俺は…)

目を閉じ、静かに滅びを待っていたが、次に聞こえたのはその男たちの悲鳴だった。

「うわあああ!!」

「た、助けてくれーーー!!」

「何が…起きて…」

目を開くと、既に多くの男たちが気を失い、残った男たちはおびえながらその場から逃げだしていった。

そして、黒咲の前には茶色いマントを着た少年が立っていて、羽を模したデュエルディスクを装備している。

また、その少年のそばには天使がつけるような白い翼をつけ、緑色の金属でできた鎧を装備した緑色の髪の戦士がいる。

「あ…あんたが…やったのか?たった一人で…」

少年は振り向くと、肯定するかのように静かに首を縦に振った。

そして、彼に向けてこう言った。

「君たちの次元を…滅ぼさせるわけにはいかない」

 

「それにしても、あの人はどこでこんなものを…」

回想を終えた黒咲はカードをデッキに入れ、静かにいまだに慣れないふかふかのベッドに横になる。

彼が先ほど手にしていたカードはその少年から渡されたものだ。

その少年は更に他の黒咲の仲間たちを救った。

そして、あの時自分たちを襲った存在に対抗するための力を教えてくれた。

その一つがRUMで、それは元々黒咲たちの知らないカードだった。

なぜ、彼がここまで助けてくれたのかわからない。

ある程度教え、彼らと対等に戦えるようになると、自分にはまだやるべきことがある、と言い残して姿を消してしまったのだ。

「…」

横になった黒咲はデュエルディスクの通信機能を手に取り、ある人物に電話をする。

しかしいつまでたってもつながらない。

スクリーンには黒い髪で遊矢そっくりの少年、かつて翔太が一度戦ったことのある人物が映っていて、名前欄にはユートと書かれていた。

「ユート…なぜ連絡が取れない…?」

 

「おーい翔太くーん!」

「ん…?」

「もーいつまで寝てるの?もうお昼だよ?」

目を開くと、頬を膨らませる伊織の姿が視界に入る。

「伊織…」

「もー、今日と明日はお休みになってるからって寝坊はだめだよ?さ、早く支度して!!」

「ああ、分かった分かった。顔ぐらい洗わせろ」

あの夢を見たからか、不機嫌な翔太はクローゼットから着替えを取り出し、脱衣所へ向かう。

脱衣所で、再び左掌を見る。

(やっぱりか…)

手には夢で見たのと同じ痣ができている。

(俺に元々備わっている力…?俺の記憶に関係するのか?)

ともかく、これを見られたらまた伊織に何か言われるかもしれない。

そう思った翔太は着替え終えると手袋で両手を隠す。

 

「へへへ…これでちょっとは俺の計画が進むぜ」

翔太が夢の中で見たあの結晶の部屋の中で、彼は笑いながら翔太の姿を水晶から見ている。

「まだあまり体がなじんでいねえが、あいつがかけらを集めてくれりゃあ何とでもなる。…ぐっ…!」

急に胸に痛みを感じた彼は膝を床に着ける。

たっぷり深呼吸をし、胸をなでると痛みは治まっていった。

「まだ抵抗しやがんのか?ったく、しぶとい野郎だぜ」

 

「プハア…はあ…はあ…」

翔太が目覚めたころ、舞網市の海岸からウェットスーツを着た少年が出てきた。

スーツはレオコーポレーション製だ。

「ふう…あの人の言ったとおりだ」

彼がいる海岸は翔太が発見された場所であり、石倉純也が行方不明となった場所だ。

その手には青白く光る、クリスタルでできているかのようなカードが入ったカプセルがある。

(もし僕の仮説が正しければ、このカードは…)

 

ここで、大きく舞台が移る。

絶海の孤島に建てられた、そこには似つかわしくない中世ヨーロッパ風の白い城。

海岸沿いには港があり、上空には青い浮遊物が複数存在する。

その中には紫色の玉座しかない大きな部屋が存在する。

玉座の背後にはガラスがあり、そこからは緑色の光を放つコロッセオのような建造物が見える。

そして、上から降ってくる大量のカードをその建造物が吸収している。

「プロフェッサー、紫雲院素良の記憶の検証を終了しました」

その部屋の中に、白衣の男が入ってくる。

玉座には黒い肌で頭部が機械化していて、赤いマントがついた紫色の制服を着たスキンヘッドの男が座っている。

「そうか…結果は」

「はい、エクシーズの残党と思われる人物がスタンダードにいることがわかりました。そして、興味深い情報が…」

「何?」

「はい、こちらです」

白衣の男がソリッドビジョンをプロフェッサーと呼ばれた黒い肌の男に見せる。

「ほう…」

それには遊矢と柚子、《魔装騎士ペイルライダー》を召喚している翔太、そして伊織の姿があった。

「この…青い騎士を使うデュエリストの名は?」

「は…秋山翔太です。彼が舞網市に現れたのはつい先日。それ以前についての記録は何も…」

「すぐに情報を収集せよ。特にその秋山翔太という人物については徹底的に」

「はっ!」

白衣の男が退室すると、プロフェッサーは立ち上がり、背後のガラスをじっと見る。

(秋山翔太…例の3人は分かるが、奴は何者だ?場合によっては排除しなければ。そして…)

彼はデュエルディスクからある写真を表示する。

その写真は黒咲を救った少年とその少年が使ったモンスターが映っている。

(RUMなどという余計な力を与えおって…。奴の存在自体が私の計画を大幅に遅らせることになる)

デュエルディスクの電話機能を起動させる。

「私だ…。一両日中に部隊の準備をせよ。できれば、隠密行動能力の高いメンバーを選抜してほしい。派遣先はスタンダードの…」




今回は展開上、かなり短くなってしまいました。
アニメでは急に展開が早くなったり遅くなったりで大変です。
さあ、プロフェッサーに目をつけられた翔太と伊織。
一体どうなってしまうのかぁ????
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