遊戯王ARC-V 戦士の鼓動   作:ナタタク

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第27話 謎の影

「ルッビィーー♪」

「キュキュキュイー!」

翔太たち本選出場者が宿泊するホテルで、翔太たちが止まっている部屋より1つ上の階、そして西側の端にあるのがハンスたちの部屋だ。

その部屋で、《宝玉獣ルビー・カーバンクル》の精霊、ルビーとビャッコが楽しそうに遊んでいて、それを他の宝玉獣の精霊たちが見守っている。

「ヒ…ヒィィ…こんなに精霊がいっぱい…」

「もー、恥ずかしがり屋さんだなー、セラフィムちゃんは。もっと打ち解けないと、仲良くなれないぞー?」

「そうは言われましても…は、恥ずかしい…」

《E・HEROセラフィム》の精霊、セラフィムが経験したことのない大量の精霊たちのいる空間に動揺し、顔を真っ赤にしながら伊織の後ろに隠れている。

ちなみに、翔太がハンスとデュエルをしているときは近くにある自然公園の木陰でぐっすり眠っていたようだ。

ビャッコは今までハンカチに化けて、身動きが取れなかった分、ここでストレスを発散している。

「それにしても、うれしいぜ。俺以外にも精霊が見えるデュエリストがいるっていうのは」

「ふん…お前と違って、俺は全く懐かれていないけどな」

「キュイー!」

「もー、ビャッコちゃん遊んでほしいの?」

ルビーと共にビャッコが伊織の元へ向かい、2匹仲良く高い高いしてもらっている。

「ま、俺とあいつらは長い間ずっと一緒にいるんだ。今は俺の家族同然さ。もちろん、こいつらも!」

先程のデュエルで召喚された2体の宝玉騎兵、そして2体の宝玉ペンデュラムモンスターがハンスの背後に現れ、翔太に向けてお辞儀をする。

「にしても、不思議だよなぁ。いつまでも実体化している精霊って」

「…?精霊はいつでも実体化できるんじゃないのか?」

「それは強い力を持っている精霊だけさ。大抵の精霊はそもそも実体化できないし、しかも実体化したとしても長い間その状態を保つことができないのさ」

「なるほどな…俺にはこいつがそんなに強力な力があるとは思えないけどな」

2匹の精霊が高い高いされた後、みたらしだんごを食べ始める。

またセレフィムもビャッコからみたらし団子をもらったのか、伊織の背後でこそこそ食べる。

「それで、なんで俺を呼んだんだ?同じ精霊が見えるからという理由だけか?」

怪しそうにハンスを見つめる。

ビークルデュエルで少しだけ見たことがあるものの、本格的に知り合ったのはあのダンジョンデュエルの時だ。

そんな、満席の喫茶店で仕方なく合席した程度の関係の人間をこれほどあっさりと自分たちの部屋に入れるとは翔太には到底思えない。

更に鍵であった《究極宝玉神レインボー・ドラゴン》。

何かあると疑わざるを得ない。

「ああ、それだけ」

間を置くことなく、ハンスがそう述べる。

「おいおい、ハンスはそこまでクレバーな奴じゃないぞ?正真正銘のデュエルバカなんだぞ?」

「何度も顔を合わせたことのない奴をそんなに信用できると思うか?」

「もーもー翔太君!そんなこといわないの。ほらほら、一緒にビャッコちゃんのみたらし団子を食べよーよ!」

「キュイー!」

ビャッコがハンスやジェイク、他の精霊たちに串つきみたらし団子を配っている。

伊織に限っては4本も…。

「伊織、お前なぁ…」

「はい、翔太君!」

強引にみたらし団子を渡される。

(はぁ…にしても、遊矢達は今どうしているんだ?)

丁度、設置されている窓の方角は舞網市のそれと同じだ。

翔太はそこから外を見つつ、ため息をつきながらみたらし団子を口にした。

(ビャッコが用意したものだからか…変な味じゃないな。…!?)

急に左掌の痣から痛みが発生する。

その痛みと共に、翔太の脳裏にビジョンが浮かび上がる。

駅付近の路地裏に突然発生した緑色の渦、そこから出てくる青い制服で赤いレンズと額部分の大きな宝石と3本の刃を左右に着けたかのような形状が特徴の仮面をつけた男…。

「(こいつは…)悪い、部屋に忘れ物をしてきた」

「えー?朝出る時に何度も確認したじゃんかー!」

「悪い。すぐに戻るから、お前らは何本でもみたらし団子を食ってろ」

部屋を飛び出した翔太は大急ぎで階段を下りていく。

「翔太君…そんなに急がなくてもいいのに。ってあれ?ビャッコちゃんは?」

出ていく翔太を見ていた伊織が目線を部屋の中に戻すが、いつの間にかビャッコがいなくなっていることに気付く。

「セラフィム!ビャッコちゃんを見なかった?」

「ビャッコさん…ですか??さあ…??それよりも伊織さん、私早くカードの中に…」

「俺が探すよ」

みたらし団子を食べ終え、串をゴミ箱に捨てたハンスが《宝玉獣コバルト・イーグル》を見る。

「コバルト、頼むよ」

「任せな、ハンス」

コバルトが窓から飛び出していく。

「こいつは一番目のいい精霊なんだ、すぐに見つかるさ」

「すっごーい!ありがとう、ハンス君!」

「にしても、あいつはなんで急いで部屋を出たんだ…?」

翔太のとった行動を疑問に思いながら、蚊帳の外となっていたジェイクは外を見る。

 

路地裏では、突然1人の男性がゴミ袋の山の中へ突き飛ばされる。

「な、なんだよお前…俺が何をしたって言うんだよぉ!?」

「黙れ!悪く思うなよ…?」

ニヤリと笑うと、制服姿の男は左腕に装備しているデュエルディスクを光らせる。

すると、男の体がデュエルディスクから放たれる紫色の光と同じ光を放ち始めた。

「な、なんだよこれ!?一体、何が…!?うわああああ!!!!」

光が消えると同時に、男は来ていた服を残して消滅してしまった。

「ふん…おとなしく俺に協力すれば、カードにならずに済んだものを。ったく、補給班はちゃんとこの世界の服を調達しろよな」

手際の悪い補給班に悪態をつきながら、カードを見る。

カードには先ほど消滅した男が恐怖に染まった表情でイラストとなっている。

「さあて、あとは…」

「おい」

「なんだ…!!?」

振り返ろうとした瞬間、制服の男の頬に拳がめり込む。

殴られた彼は先ほど自分が消滅させた男と同じようにゴミの山へと飛んでいく。

「き…貴様は…」

彼の目に映ったのは、左手の痣の部分が青白く光っている状態の翔太だ。

「お前…アカデミアの奴か?」

「貴様、なぜそれを?(プロフェッサーの話によれば、奴が我々の存在を知っている可能性があるようだが…その手は何だ?)」

彼が気にしているのは翔太の痣だ。

痣について、彼は何の情報も持っていない。

「悪いが、この町にお前らが欲しがるようなものはないと思うぞ。さっさと元来たところへ帰るんだな」

「いや…これは好都合だ。お前を餌にすれば容易く任務を終えることができる」

にやりと笑うと、制服の男がデュエルディスクを起動させる。

それを見た翔太もデュエルディスクを起動する。

「確か、お前がさっき使ったのは…エクシーズ次元の人間にやったのと同じか?」

「エクシーズ次元?大したことなかったぜ、俺1人で10人くらい仕留めることができた。雑魚ばっかりで…」

「黙ってろ、お前はここでぶちのめす」

「ふん…」

ぶちのめすという言葉を鼻で笑いながら、カードをドローする。

「「デュエル!!」」

 

制服の男

手札5

ライフ4000

 

翔太

手札5

ライフ4000

 

「俺の先攻、俺は手札から《古代の機械探究者》を召喚」

両目が望遠鏡で、背中や肢体の各関節部分にアンテナがついている人型の機械が現れる。

装甲の色が緑が基調としていて、ところどころに茶色い部分がある。

また、腰の左右には灰色で大きな歯車が存在する。

 

古代の機械探究者 レベル4 攻撃1400

 

「自分フィールド上にモンスターが存在しない場合にこのカードの召喚に成功した時、デッキからアンティーク・ギアモンスターを1体手札に加える。俺はデッキから《古代の機械巨人》を手札に加える」

彼が《古代の機械巨人》を手にしたのと同時に、《古代の機械探究者》の歯車が猛スピードで回転を始める。

「何!?」

「更にこの効果を発動した時に俺のフィールドに魔法・罠カードが存在しない場合、手札に加えたモンスターをそのまま召喚できる!その時、俺はモンスターをリリースする必要はない!現れろ、《古代の機械巨人》!!」

男のフィールドに《古代の機械探究者》の何倍もの大きさを持つ茶色い装甲で、体の各所に歯車をつけた人型機械が現れる。

その機械は翔太の姿を認識すると同時に頭部のカメラを赤く光らせた。

 

古代の機械巨人 レベル8 攻撃3000

 

古代の機械探究者(アンティーク・ギアクエスター)

レベル4 攻撃1400 守備200 効果 地属性 機械族

「古代の機械探究者」の(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードの召喚に成功した時、自分フィールド上にモンスターが存在しない場合、デッキから「古代「アンティーク・ギア」モンスター1体を選んで手札に加える。

(2):(1)の効果を発動した時、自分フィールド上に魔法・罠カードが存在しない場合にのみ発動できる。その効果で手札に加えたモンスターを召喚する。その時、モンスターをリリースする必要はない。

 

「1ターン目から《古代の機械巨人》か…!?」

「そして俺はカードを1枚伏せ、ターンエンド」

 

制服の男

手札5→4

ライフ4000

場 古代の機械巨人 レベル8 攻撃3000

  古代の機械探究者 レベル4 攻撃1400

  伏せカード1

 

翔太

手札5

ライフ4000

場 なし

 

1ターン目から攻撃力3000で、貫通効果を持つモンスター。

しかし、この程度であればいくらでも巻き返すことが可能だ。

「俺のターン!」

 

翔太

手札5→6

 

「俺は手札から魔法カード《おろかな埋葬》を発動。デッキからモンスター1体を墓地へ送る」

 

デッキから墓地へ送られたカード

・魔装騎士ペイルライダー

 

「何…!?自らエースモンスターを墓地へ送っただと!?」

「相手フィールド上にのみモンスターが存在するとき、このカードはリリースなしで召喚できる。《魔装近衛エモンフ》を召喚」

 

魔装近衛エモンフ レベル5 攻撃1000

 

「このカードをエクシーズ召喚とするとき、他の素材は手札の魔装モンスターでなければならない。更に俺は手札から魔法カード《魔装の杯―ナルタモンガ》を発動」

5本指の竜の手を模した金が基調の杯が現れる。

爪の部分はルビーで、うろこは銀になっている。

「このカードは俺のフィールド上に存在する魔装モンスター1体のレベルまたはランク以下の数値のレベルを持つモンスター1体をデッキから表側守備表示で特殊召喚できる。俺はデッキから《魔装鍛冶クルダレゴン》を特殊召喚」

杯から飛び出した火の玉が巨大化し、その姿が炎を宿した鉄製の天使の翼を持つ男に変化する。

白いトーガを身にまとい、鋼でできた右腕には五芒星が柄に刻まれた鍛冶用のハンマーが直接取り付けられている。

 

魔装鍛冶クルダレゴン レベル2 守備500

 

「このカードの召喚・特殊召喚に成功した時、手札・フィールド上に存在する魔装モンスター1体のレベルをターン終了時まで1または2上昇させることができる。俺は《エモンフ》のレベルを2つ上昇させる」

《魔装鍛冶クルダレゴン》が五芒星が光るハンマーで《魔装近衛エモンフ》の槍を鍛える。

鍛え終わると同時に、しかるべき身分の物を守護する兵士のレベルが変動する。

 

魔装近衛エモンフ レベル5→7 攻撃1000

 

魔装の杯―ナルタモンガ

通常魔法カード

「魔装の杯―ナルタモンガ」は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールド上に存在する「魔装」モンスター1体を対象に発動できる。デッキからそのモンスターのレベルまたはランクの数値以下のレベルを持つ「魔装」モンスター1体を表側守備表示で特殊召喚する。

(2):このカードを発動した時、自分の墓地に存在する「魔装」モンスターが3種類以上の場合、次の自分のターンに自分は通常のドローに加えてデッキからカードをもう1枚だけドローする。

 

「《エモンフ》のレベルを7に変えた…まさか!!」

「俺はレベル7の《エモンフ》と手札の《魔装鳥フェニックス》でオーバーレイ!現れろ、大地より生まれし神討ちの竜、《魔装竜テュポーン》!」

 

魔装竜テュポーン ランク7 攻撃2000

 

「まさかランク7のエクシーズモンスターを出すとは…だが、攻撃力はたかが2000!エクシーズが我らに勝てる道理はない!!」

バカにされていることが分かったのか、《魔装竜テュポーン》が怒りを込めて咆哮する。

「俺は《テュポーン》の効果を発動。1ターンに1度、オーバーレイユニット1つと俺のフィールド上に存在するほかのモンスター1体を代価にして、俺の墓地から魔装モンスター1体を特殊召喚する」

《魔装竜テュポーン》がオーバーレイユニットを飲み込むと同時に、《魔装鍛冶クルダレゴン》が消滅する。

そしてビルの屋上から《魔装騎士ペイルライダー》が飛び降り、制服の男の前に立つ。

 

魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2500

 

取り除かれたオーバーレイユニット

・魔装鳥フェニックス

 

「何…《おろかな埋葬》はそのために…!?」

「仮にも融合召喚のスペシャリストだろう?墓地融合も分からねえのか、低レベルなんだな」

少し笑いそうになりながら、そう述べると、仮面で隠れた顔が赤くなる。

「更に《魔装鍛冶クルダレゴン》はペンデュラムモンスター。フィールドから墓地へ行く場合、代わりにエクストラデッキへ行く。そして《テュポーン》は攻撃力2000アップの装備カードとして魔装騎士に装備できる」

《魔装竜テュポーン》の肉体が変化した魔力の嵐を五芒星で吸収した《魔装騎士ペイルライダー》の力が鎧の色が緑色に変化すると同時に爆発的に増大する。

 

魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃2500→4500

 

「攻撃力4500!!?」

「更に俺は手札から魔法カード《ナイト・ショット》を発動。相手フィールド上にセットされている魔法・罠カード1枚を破壊する。このカードの発動に対して、お前は対象となったカードを発動できない」

周囲のビルのどこかから銃声が鳴る。

その後1秒も経ずに弾丸が制服の男の伏せカードを貫き、消滅させる。

 

破壊された伏せカード

・攻撃の無敵化

 

「あ…ああ…」

「そして俺は手札から魔法カード《次元突破》を発動。このターン、俺のフィールド上に存在する魔装騎士の攻撃力をターン終了時まで倍にする」

 

魔装騎士ペイルライダー レベル7 攻撃4500→9000

 

次元突破

速攻魔法カード

(1):このカードの発動時、自分フィールド上に存在する「魔装騎士」モンスターの攻撃力はターン終了時まで倍になる。

 

魔装鍛冶クルダレゴン

レベル2 攻撃0 守備500 炎属性 天使族

【Pスケール:青8/赤8】

(1):このカードはもう片方の自分のPゾーンに置かれているPモンスターが「魔装」モンスター以外の場合、墓地へ送られる。

(2):1ターンに1度、自分が「魔装」モンスターのP召喚に成功した時、自分の墓地に存在する「魔装」モンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターを手札に戻す。

【モンスター効果】

(1):このカードの召喚・特殊召喚に成功した時、自分の手札・フィールド上に存在する「魔装」モンスター1体を対象に、以下の効果から1つを選択して発動できる。

●選択したモンスターのレベルをターン終了時まで1つ上げる。

●選択したモンスターのレベルをターン終了時まで2つ上げる。

 

一撃必殺の攻撃力を手にした《魔装騎士ペイルライダー》を見て、制服の男が真っ白になる。

「バ…バカな…!?融合が…エクシーズに敗れるだと…!?」

「訳の分からないことをごちゃごちゃいうな、華々しく負けてろ。《ペイルライダー》で《古代の機械巨人》を攻撃。クアトロ・デスブレイク」

《魔装騎士ペイルライダー》を排除しようと、《古代の機械巨人》が拳を振るう。

古代に作られた旧型機械とは思えないほどの馬力とスピードがあるが、《魔装騎士ペイルライダー》は高く跳躍して回避する。

そしてすぐに召喚された電気を宿すメリケンサックを装着し、それで《古代の機械巨人》の胸を大きくへこむほどの力で殴る。

殴られたことで内部の精密機器が粉砕され、更に膨大な電気を流し込まれてショートしたためか、《古代の機械巨人》が爆発することなく機能停止した。

 

制服の男

ライフ4000→0

 

「ワ…1ショットキル…」

後攻1ターン目で、たった1度の攻撃によって敗北したという現実に頭が真っ白になる。

そんな中、急に小動物が懐に飛び込み、男のカードを取った。

「キュイー!」

「な…!?」

「ビャッコ、ついてきていたのか?」

「キュイ!」

うなずきながら、翔太にカードを差し出す。

カードを手に取ると同時に、翔太の痣が光を放ち、その光とカードが反応する。

「何…!?」

痣と同じ光を放ちながら、カードが宙に浮く。

そして、しばらくするとカードが爆発した。

「うわあああ!!」

「キュイ!!」

「こいつは…」

目の前には封印されていた男が気絶した状態で倒れている。

念のために脈と呼吸を確認する。

「少し時間がたてば目を覚ますか。あとは…」

「ヒ…ヒィィィ!!」

ゆっくりと近づく翔太に制服の男が悲鳴を上げる。

「俺を使えば任務が容易く済むとか言っていたよな?何をしようとしていた?」

「い…言える…かぁ!!」

急に懐から青と白のカプセル剤を取り出し、自らの口に放り込む。

「お前…一体何を!!?」

「任務失敗…お許しを…」

それだけ言うと、急に目を大きく開き、そのまま倒れた。

口からは黒い煙が出ている。

「自ら口を封じたか…くそっ!!」

こうなった以上、この男から情報を聞き出すことができない。

仕方なく、翔太は男の制服とデュエルディスク、そして仮面をはぎ取る。

「別にいいだろ?もうお前には必要ないものばかりだ」

確認のために言っておく、これは主人公の行いだ。

手にした物をビャッコのカバンの中に入れる。

遠くからパトカーのサイレンが聞こえてくる。

「あとは警察に任せるか。いくぞ、ビャッコ」

「キュイ!」

警察がここに来る前に翔太はホテルへ走って行く。

数分経って、翔太たちはホテル付近の広い道につく。

ちなみにビャッコは猫の姿に変化している。

(今回のことで分かったとすれば…この痣はあいつの言うとおり、力があるってことだな。まさかカード化した人間を解放する力だとは思わなかったが…)

「翔太くーーん!」

「…ちっ、追いかけてきたのかよ」

「キュイーーー!」

目の前で伊織が走って近づいてくる。

ビャッコは伊織を見て、嬉しそうにそちらの方向へ走って行く。

「翔太君、どうしたの?ホテルの外に出ちゃって…」

「買い物をしてただけだ。いろいろ足りないものを思い出してな」

「ふーーん…あ、それから翔太君。これ!」

いろいろ疑問が尽きないが、まあいいかと自己完結した伊織が懐から手書きの手紙を翔太に見せる。

「こいつは…?」

「うん、明日舞網市へ今回の準々決勝に参加した組と零児君が赤馬さんが選んだデュエリスト全員を連れて行くって」

「舞網市だと…??ちょっと待てよ、大会はどうなるんだ?」

「準決勝と決勝はそのまま舞網市で行うって」

(なんだ…?急な連絡だな。こういう場合は大会前に伝えられるはずだ。赤馬…一体何を考えている?)

 

一方、舞網市では…。

「ハア…ハア…ハア…!!」

路地裏で息を切らせながら北斗が走っている。

体は傷でいっぱいになっていて、デュエルディスクもなぜか破損している。

「そこまでだ!エクシーズの残党!!」

「あ…あああ…」

曲がった先は行き止まりで、来た道は黒いマントで身を包んだ少女に封鎖されている。

「さあ…お前を封印して、プロフェッサーに私の価値を…」

「や、やめろ!!やめてくれーーーー!!」

足がすくみ、その場に座ってしまう。

震えが止まらず、逃げることも、無駄な抵抗をすることもできない。

カードが光を放とうする。

このまま北斗はカードに封印されるという結末を迎えようとしていたが…。

「キャ…!!!」

急に激しい風が吹き、少女の手からカードが離れていく。

それと同時に、少女を包んでいたマントも飛ばされていった。

「な…!!?」

少女の姿を見た北斗は絶句する。

赤い制服と下にスパッツをつけたミニスカートを着ていて、青い宝石が付いたブレスレットを腕につけた黒咲そっくりの青い髪の少女。

少女の顔は柚子にそっくりで、髪の後ろには黄色いリボンがついている。

「なんだ…!?今の風は…??」

「駄目だよ、こんなことをしたら」

「…!?」

少女の視線が北斗の背後にある建物の屋上へ向く。

そこには翔太がカードショップで出会った少年がいる。

違う点があるとすれば、サングラスと帽子をつけておらず、緑色の学ランを身に着けているところだ。

「降りてこい!!私の邪魔をしたということがどういう意味か分かっているだろう!!!?」

「分かってるよ、だから邪魔をするんだ。このばかげたことをね」

「何!?」

少年が屋上から飛び降りる。

そして、急に足元に発生させた緑色の旋風で落下スピードを落とし、無傷で北斗の前に着地した。

「そ、その眼は…!!?」

少女が少年を間近で見て驚愕する。

ガスタの印が刻まれた緑色の両目…。

そして羽を模したデュエルディスク。

「貴様は…剣崎侑斗!!我らの大義の邪魔をする!!」

「ふぅ…大義というのは便利な言葉だけど、行き過ぎるとただのエゴだよ」

デュエルディスクを展開し、少女をじっと見る。

(なんだ…?剣崎侑斗?なんで僕を助けたんだ…??」

(何?なんだこれは…?)

侑斗から放たれるプレッシャーを受け、少女は自らの体に異変が起こるのを感じる。

(う、嘘だ…!?彼を見ていると…手が…手の震えが止まらない!!恐れているのか…私は彼を!?)

「どうしたの?ちょっと強い相手が前だとおびえてしまうの?」

「ふ…ふざけるな!!私は…私はどんな相手でも恐れはしない!!」

必死に否定するが、声にも震えがあり、手足はいまだに震え続けている。

(ユウ…)

(大丈夫、彼女に非道なことをさせたくないだけだから…)

精霊の姿になっているウィンダとテレパシーで会話する。

「デュエルをしよう…セレナちゃん」

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