「ふう…」
中庭で遊ぶ子供たちを自室の窓から見ながら、翔太はため息をつく。
伊織は学校だ。
部活には入っていないものの、高校生であるため帰ってくるのは午後5時から6時当たりだ。
その間同年代の人物が周りにいないため、翔太はひどく退屈している。
やることとしたら、たまに誘ってくる子供たちと一緒に遊ぶか部屋でデッキを見ることくらいだ。
予定としては、明日実際に遊勝塾へ行くことになっている。
「やっほー、翔太君、みんな!!」
「戻ってきたのか…」
正門の前で手を振る伊織の姿を見て、ほんの少しだけ翔太の口元が緩んだ。
「ああ!!火加減が強すぎ!これだけお肉が焦げちゃう!」
「そ、そうか…ごめん…」
若干焦げてしまった牛肉を見て、かなり申し訳ない感じになる。
施設に住み始めてから、翔太は何か手伝いたいと思っていた。
少しでも恩返しをしたいという思いで、洗濯や今のように料理の手伝いを始めたがどうもうまくいかない。
「もういいから、翔太君は生ごみをお願い!」
「分かった…」
伊織がカレー作りをする中、翔太は生ごみを集め、外のごみ箱へ捨てに行く。
(まるで、全然できないな。これだと逆に迷惑をかけているだけだ…)
「はあ…」
夕食と風呂を済ませた翔太が再び溜息する。
これで、今日のため息の回数は10を超えた。
どうにも恩返しをしたいという気持ちが空回りしてしまうのだ。
「おーい、翔太君起きてる?」
「ああ、入るか?」
「お邪魔しまーす!」
青いパジャマ姿の伊織が部屋に入ってくる。
その手には自分のデッキとデュエルディスクを持っていた。
「あのさ、ちょっとこのデッキで相談したいことがあるんだけど…」
「相談?」
「そうそう、最近手札事故が多くて困ってるんだ。でも、どう手直ししたらいいかわかんなくて…」
「ふう…。デュエルを教わったばかりの相手に普通相談するか?」
そう言いながら、翔太は伊織のデッキを見る。
「HEROデッキ…?」
「うん。よくは分からないんだけど、施設に来たころから持ってたんだ」
「そういえば、伊織が施設に来たときの話を聞いたことなかったな」
「あんまり話せることがないからね。物心ついた時からここにいたし…。もしかしたら、このデッキは私とお父さんとお母さんを結び付けてくれるたった1つの物かもって…」
「…」
少しだけさびしげな表情になった伊織の額を翔太が指でつつく。
「ひゃっ!!」
「おいおい、そんな暗い表情は似合わないぞ。いつも通り、明るく能天気でいればいいんだよ。きっと、そのことをお前の親が一番願っているはずだからな」
「翔太君…」
「ふう…似合わないこと言ったな。ああ、融合主体なら、もしかしたらこのカードを入れたら…」
(翔太君…ありがとう)
心の中で翔太に礼を言うと、伊織は彼の助言に耳を傾けた。
そして、しばらく経ち…。
「ううん…?」
目を覚ますと、伊織は翔太のベッドの中にいた。
「あれあれ?なんで私、翔太君の…」
ベッドから出て、時計を見るとまだ午前4時だ。
改造を終えた伊織のデッキのそばで、翔太は壁を枕にして寝ている。
「そっか、翔太君が私を…。でも、他にもベッドがあるのに…」
デッキをそばに置いてあったデュエルディスクにセットし、翔太のそばに近寄る。
(わあ…翔太君の寝顔、可愛いなあ)
あどけない表情で眠る翔太の頬を面白半分に指でつく。
「おお、柔らかい。ちょっと遊んでみよう」
翔太の両の頬を伸ばす、動かすなどして楽しみ始める。
「お…おい、何が楽しくて寝ている人間を遊ぶんだ?」
「ひゃあ!!」
急に目を覚ました翔太を見て、びっくりする伊織。
「ふああ…まだまだ暗いし、もう少し寝かせてくれ…」
「ま、待ってよ翔太君!私とデュエルしよ!」
「俺と…?」
「そうそう!デュエルしてくれないと、みんなに私と翔太君が同じベッドで寝たって言いふらしちゃうぞー?」
「いや、俺が寝ていたのは…」
「決まりだね?」
「…はあ、分かった」
顔を洗って眠気を覚ますと、翔太と伊織は誰もいない遊戯室へ向かった。
遊戯室には絵本やおもちゃなどが置かれている。
また、大きなスペースがあるため、アクションデュエルはできないものの、通常のデュエルはできる。
「手加減は無しだぞ、伊織」
「イエッサー!」
翔太と伊織がデュエルの準備を整える。
「「デュエル!!」」
翔太
手札5
ライフ4000
伊織
手札5
ライフ4000
「俺の先攻、俺はモンスターを裏守備表示で召喚。ターンエンド」
翔太
手札5→4
ライフ4000
場 裏守備モンスター1
伊織
手札5
ライフ4000
場 なし
「うーん、前のデュエルとは違って少し消極的だなー。まあいっか。私のターン、ドロー!」
伊織
手札5→6
「いきなり翔太君が言ってたカードが来た!私は手札から《E・HEROブレイズマン》を召喚!」
オレンジ色のアーマーとバイザーのような仮面をつけた炎のヒーローが現れる。
E・HEROブレイズマン レベル4 攻撃1200
「このカードの召喚・特殊召喚に成功した時、私はデッキから《融合》を1枚手札に加えるよ!」
いきなり伊織の手札に《融合》が加わる。
これで、彼女は手札に他の素材モンスターがいれば融合召喚ができる状況だ。
「そして、私は手札から魔法カード《融合》を発動!手札の《バブルマン》とフィールドの《ブレイズマン》を融合!」
右腕に水鉄砲、そして背中に2つのタンクをつけている水色のアーマーのヒーローが現れ、《E・HEROブレイズマン》と融合する。
「炎の切り込み隊長よ、水のトリックスターよ、今こそ1つになりて、新たなヒーローに進化せよ!融合召喚!現れて、紅蓮の申し子、《E・HEROノヴァマスター》!!」
炎を模った装飾がいくつもある赤いアーマーと仮面をつけた赤いマントのヒーローが現れる。
E・HEROノヴァマスター レベル8 攻撃2600
「いきなり攻撃力2600の融合モンスターか…」
「バトル!《ノヴァマスター》で裏守備モンスターを攻撃!バーニング・ナックル!!」
両拳に炎を宿した《E・HEROノヴァマスター》が裏守備モンスターにスピードラッシュを浴びせる。
しかし、いくら攻撃しても手ごたえがない。
「あ…あれれ??」
「裏守備モンスターに対して少し迂闊じゃないか?」
裏守備モンスターの正体は背中に五芒星が刻まれている青いマントをつけた実体のない亡霊だった。
「《魔装霊レブナント》はリバースしたターン戦闘では破壊されない。そして、このカードがリバースされた時、俺はデッキから魔装モンスター1体を手札に加える。俺はデッキから《魔装槍士タダカツ》を手札に加える」
「あーーー!!ずるい!!」
「サーチも戦略の内だろ?それに、《エアーマン》もサーチ効果を持っているぞ」
「あ…そうだった!!」
わざとなのか、天然なのか分からず、翔太の頭が少しだけ痛くなる。
魔装霊レブナント レベル2 守備500(チューナー)
魔装霊レブナント
レベル2 攻撃600 守備500 チューナー 闇属性 アンデッド族
(1):このカードがリバースした時、デッキから「魔装」モンスター1体を選択して手札に加える。
(2):このカードはリバースしたターン、戦闘では破壊されない。
「けど、このままじゃ終わらないよ!私は手札から速攻魔法《ヒーロー・パーシチェイス》を発動!HEROと名のつく融合モンスターの攻撃で相手モンスターを破壊できなかったとき、その相手モンスター1体を破壊して、デッキからレベル4以下のHEROを守備表示で特殊召喚するよ!」
急に《魔装霊レブナント》が消滅し、代わりの伊織のフィールドに2つのファン、青いアーマー、戦闘機の頭部を模した仮面をつけたヒーローが現れる。
E・HEROエアーマン レベル4 守備300
ヒーロー・パーシチェイス
速攻魔法カード
(1):自分フィールド上に表側表示で存在する「HERO」融合モンスターが攻撃し、攻撃対象とした相手モンスターを破壊できなかったときに発動できる。そのモンスター1体を破壊する。その後、デッキからレベル4以下の「HERO」モンスター1体を表側守備表示で特殊召喚する。
「そして、《エアーマン》の効果発動!私はデッキからHEROを1体手札に加えるよ!私はデッキからもう1枚の《ブレイズマン》を手札に加える!」
「2枚目の《ブレイズマン》か…。これでまた《融合》をサーチするのか」
「そーゆーこと!私はカードを2枚伏せてターンエンド!」
翔太
手札4→5(うち1枚《魔装槍士タダカツ》)
ライフ4000
場 なし
伊織
手札6→1(《E・HEROブレイズマン》)
ライフ4000
場 E・HEROエアーマン レベル4 守備300
E・HEROノヴァマスター レベル8 攻撃2600
伏せカード2
「俺のターン!」
翔太
手札5→6
「俺は手札から《魔装陰陽師セイメイ》を召喚」
五芒星が刻まれた扇、そして白い式服を身に着けた黒髪の陰陽師が現れる。
彼の右肩には小さなカバンを背負った小さな白い狐の式神がいる。
魔装陰陽師セイメイ レベル3 攻撃1000(チューナー)
「チューナーモンスター!?」
「このカードの召喚に成功した時、俺は手札からレベル4以下の魔装モンスター1体を特殊召喚できる。俺は手札から《魔装獣ユニコーン》を特殊召喚」
《魔装陰陽師セイメイ》が指を鳴らすと、《魔装獣ユニコーン》を乗せた巨大な紙の人形が姿を現す。
魔装獣ユニコーン レベル4 攻撃1600
魔装陰陽師セイメイ
レベル3 攻撃1000 守備1000 チューナー 闇属性 魔法使い族
(1):このカードの召喚に成功した時、手札からレベル4以下の「魔装」モンスター1体を特殊召喚することができる。
(2):このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、相手は他の「魔装」モンスターを攻撃対象とすることができない。
「いくぞ!レベル4の《ユニコーン》にレベル3の《セイメイ》をチューニング。黄金の剛腕を持つ漆黒の戦士、その気高き力で道を拓け。シンクロ召喚!現れろ、《魔装剛毅クレイトス》!」
黄金のアームガードを右腕だけに着け、上半身が裸で浅黒い肌をした禿頭の大男が現れる。
五芒星は手甲のあたりに刻まれている。
魔装剛毅クレイトス レベル7 攻撃2600
「このカードは加減を知らない!常に本気で敵を倒す!」
「けれど、私の《ノヴァマスター》と攻撃力は同じ。倒せるのは《エアーマン》だけだよ!」
「俺は手札から魔法カード《ナイト・ショット》を発動!相手フィールド上にセットされた魔法・罠カード1枚を破壊する」
《ナイト・ショット》から放たれた光線によって伊織の《次元幽閉》が破壊される。
「バトルだ!俺は《クレイトス》で《ノヴァマスター》を攻撃!」
「え…!?相討ち狙い!?」
《魔装剛毅クレイトス》右腕に力をためながら、《E・HEROノヴァマスター》に向けて走り始める。
「《クレイトス》の効果発動!このカードはエクストラデッキから特殊召喚されたモンスターを攻撃するとき、ダメージ計算終了時まで攻撃力を1000ポイントアップする!」
《魔装剛毅クレイトス》の雄たけびと共に彼の五芒星が光り輝く。
魔装剛毅クレイトス レベル7 攻撃2600→3600
「こ…攻撃力3600!?」
「ゴールデン・アッパー!!」
《魔装剛毅クレイトス》のアッパーが《E・HEROノヴァマスター》を吹き飛ばした。
「きゃあああ!!」
伊織
ライフ4000→3000
魔装剛毅クレイトス
レベル7 攻撃2600 守備2000 シンクロ 地属性 戦士族
「魔装」チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
(1):このカードがエクストラデッキから特殊召喚されたモンスターと戦闘を行う時に発動する。このカードの攻撃力はダメージステップ終了時まで1000ポイントアップする。
「なら…私は罠カード《ヒーロー・シグナル》を発動!私のモンスターが戦闘で破壊されて墓地へ送られた時、私は手札・デッキからレベル4以下のE・HERO1体を特殊召喚するよ!私は《フォレストマン》を特殊召喚!」
体の右半分が樹木となっている緑色の原始人が現れる。
E・HEROフォレストマン レベル4 守備2000
「俺はカードを2枚伏せ、ターンエンド」
翔太
手札6→3(うち1枚《魔装槍士タダカツ》)
ライフ4000
場 魔装剛毅クレイトス レベル7 攻撃2600
伏せカード2
伊織
手札1(《E・HEROブレイズマン》)
ライフ3000
場 E・HEROエアーマン レベル4 守備300
E・HEROフォレストマン レベル4 守備2000
伏せカード1
「うう…《クレイトス》は私のデッキにはきついなあ」
シンクロモンスター、エクシーズモンスター、そして融合モンスター。
いずれもエクストラデッキから特殊召喚するモンスターだ。
伊織のエースカード達も例外ではない。
そんな彼女にとって、《魔装剛毅クレイトス》の効果は致命的だ。
「(あのカードなら!!)私のターン、ドロー!」
伊織
手札1→2
「来た!!まずは《フォレストマン》の効果発動!私のターンのスタンバイフェイズ時にデッキ・墓地から《融合》を1枚手札に加える。私は墓地の《融合》を回収!」
「ということは、《フォレストマン》を止めなければ毎ターン《融合》がお前の手札に加わるということか」
「そーゆーこと!私は手札から魔法カード《E-エマージェンシー・コール》を発動!デッキからE・HERO1体を手札に加えるよ。私はデッキから《E・HEROバイオマン》を手札に加える!そして、そのまま《バイオマン》を召喚!」
水色のアーマーで、バッタをモチーフとした仮面をつけたヒーローが現れる。
E・HEROバイオマン レベル3 攻撃800
「このカードの召喚・特殊召喚に成功した時、私はデッキ・墓地から融合、もしくはフュージョンと名のつく魔法カードを手札に加えるよ!私はデッキから《ミラクル・フュージョン》を手札に加える!さらに、このカードをリリースすることで、デッキから《マスク・チェンジ》1枚を手札に加えることができる!」
《E・HEROバイオマン》がゲル状の液体になって姿を消した。
そして、伊織の手には《ミラクル・フュージョン》と《マスク・チェンジ》が手札に加わる。
E・HEROバイオマン
レベル3 攻撃800 守備800 効果 水属性 戦士族
「E・HEROバイオマン」の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか発動できず、(2)の効果を発動したターン、自分は融合召喚または「マスク・チェンジ」以外の方法でモンスターの反転召喚・特殊召喚は行えない。
(1):このカードの召喚・特殊召喚に成功した時、デッキから「フュージョン」魔法カードまたは「融合」魔法カード1枚を手札に加える。
(2):このカードをリリースすることで発動できる。デッキから「マスク・チェンジ」1枚を手札に加える。
「そして、私は《フォレストマン》の効果で手札に加えた《融合》を発動!その効果で私は手札の《ブレイズマン》とフィールドの《フォレストマン》を融合!炎の切り込み隊長よ、大木の番兵よ、今こそ1つになりて、新たなヒーローに進化せよ!融合召喚!現れて、すべてを貫く大地の力、《E・HEROガイア》!!」
漆黒のアーマーを着用している巨大なヒーローが姿を現す。
E・HEROガイア レベル6 攻撃2200
「《ガイア》の融合召喚に成功した時、相手モンスター1体の攻撃力を半分にして、エンドフェイズまで減らした分の攻撃力を得るよ!」
E・HEROガイア レベル6 攻撃2200→3500
魔装剛毅クレイトス レベル7 攻撃2600→1300
「《クレイトス》の攻撃力が!?」
「まだ終わらないよ!私は手札から魔法カード《ミラクル・フュージョン》を発動!私のフィールド・墓地に存在するモンスターを除外し、新しいE・HEROに融合するよ!」
「2度目の融合!?」
「私は墓地の《バイオマン》と《ノヴァマスター》を融合!水の戦士よ、紅蓮の申し子よ、次元の彼方で1つとなり、新たなヒーローに進化せよ!融合召喚!現れて、永久凍土の申し子、《E・HEROアブソルートZero》!!」
解けない氷でできたアーマーと白いマントを装備した白銀のヒーローが現れる。
彼が着地すると、その周囲が凍って行った。
E・HEROアブソルートZero レベル8 攻撃2500
「まだまだ!!さらに手札から魔法カード《マスク・チェンジ》を発動!私のフィールドのHEROをM・HEROに変身させるよ!」
「何!?」
「私は《アブソルートZero》を変身させるよ!永久凍土の申し子よ、今こそ酸の力を宿し、新たなヒーローに進化せよ!変身召喚!《M・HEROアシッド》!!」
雪の結晶のような飾りがある仮面をつけると、《E・HEROアブソルートZero》のアーマーが砕け散り、更に細身な青いアーマーをつけたヒーローに変化する。
そして、右手には小型の水鉄砲が新たに装備された。
M・HEROアシッド レベル8 攻撃2600
「せっかく融合召喚した《アブソルートZero》を変身させただと!?」
しかし、翔太はまだ気づいていなかった。
これはHEROデッキ必殺コンボの発動トリガーだということを。
「私は《アシッド》と《アブソルートZero》の効果を発動!《アシッド》は特殊召喚に成功した時、相手の魔法・罠カードをすべて破壊し、相手モンスターの攻撃力を300ポイントダウンさせるよ!そして、《アブソルートZero》がフィールドから離れたとき、相手モンスターをすべて破壊するよ!」
「何!?」
「いっけーーー!酸の氷河!!」
翔太のフィールドに強い酸がこもった氷塊が大量に落下する。
氷塊を受けた《魔装剛毅クレイトス》と2枚の伏せカードが破壊されていった。
破壊された魔法・罠カード
・攻撃の無力化
・エクストラ・ミラージュ
「これが…伊織のデュエル…」
この2ターンで伊織のフィールドに2体の融合モンスターが現れ、翔太の場のカードが一掃された。
このまま2体の直接攻撃を受けたら、翔太の負けとなる。
「これで決まり!《E・HEROアシッド》でダイレクトアタック!Acid bullet!」
《E・HEROアシッド》の銃から強い酸がこもった弾丸が発射される。
「甘いぞ伊織!俺は墓地から罠カード《エクストラ・ミラージュ》を発動!」
「墓地から罠カード!?」
弾丸は確かに翔太を貫いた。
しかし、貫かれた翔太の姿が白い霧となり、その隣に翔太の姿が見える。
「このカードは墓地から除外することで、このターン相手がエクストラデッキから特殊召喚したモンスターの数だけ攻撃を無効にする!」
「あうう…これじゃあ攻撃できない。じゃあ、私はこれでターンエンド」
エクストラ・ミラージュ
通常罠カード
「エクストラ・ミラージュ」の(2)の効果は1ターンに1度しか発動できず、(1)の効果を発動したターン、発動できない。
(1):相手フィールド上のエクストラデッキから特殊召喚されたモンスターの攻撃宣言時に発動できる。その攻撃を無効にし、デッキからカードを1枚ドローする。
(2):相手フィールド上のエクストラデッキから特殊召喚されたモンスターの攻撃宣言時、墓地に存在するこのカードを除外することで発動できる。このターン、相手がエクストラデッキから特殊召喚したモンスターの数だけ相手モンスターの攻撃を無効にする。
翔太
手札3(うち1枚《魔装槍士タダカツ》)
ライフ4000
場 なし
伊織
手札2→0
ライフ3000
場 E・HEROエアーマン レベル4 守備300
E・HEROガイア レベル6 攻撃3500→2200
M・HEROアシッド レベル8 攻撃2600
「俺のターン!」
翔太
手札3→4
ドローしたカードを少し見ると、再び伊織に目を向ける。
「伊織、このターンで終わらせるぞ」
「へっ?」
「相手フィールド上にのみモンスターが存在するとき、このカードはリリースなしで召喚できる。《魔装近衛エモンフ》を召喚!」
穂先に五芒星が刻まれている槍、そして古墳時代の豪族が装備するような鎧を装備した髭面の男が現れる。
魔装近衛エモンフ レベル5 攻撃1000
「このカードをエクシーズ素材とするとき、他のエクシーズ素材は手札の魔装モンスターでなければならない。俺はレベル5の《エモンフ》と手札の《タダカツ》でオーバーレイ」
「まさか…エクシーズ召喚!?」
「万物を測りし漆黒の騎士よ、むさぼりし者たちに飢餓をもたらせ!エクシーズ召喚!!現れろ、《魔装騎士ブラックライダー》!!」
漆黒のローブをまとい、右手には黒い天秤を持つ騎士が姿を現す。
左腰にはレイピアがさしており、顔が骸骨を模した仮面で隠されている。
その額部分には五芒星が刻まれている。
魔装騎士ブラックライダー ランク5 攻撃2800
魔装近衛エモンフ
レベル5 攻撃1000 守備2000 効果 地属性 戦士族
(1):相手フィールド上にモンスターが存在し、自分フィールド上にモンスターが存在しないとき、このカードはリリースなしで召喚できる。
(2):このカードをエクシーズ素材とする場合、他のエクシーズ素材は手札の「魔装」モンスターを選択しなければならない。
「あ…あれ!?翔太君」
「??俺の顔に何かついてるのか?」
「ううん。翔太君、鏡を見て!!」
パジャマのポケットから出した手鏡に翔太の顔を映す。
彼の紫色だった眼が黒に染まっていた。
「眼の色が変わった!?」
「もしかしたら、このカードのせいかも」
《魔装騎士ブラックライダー》をじっと見つめる。
「(《ブラックライダー》…もしかして、このカードが俺の記憶の…)伊織、このことはデュエルが終わってから考えよう。俺は手札から《魔装槍士ロンギヌス》を特殊召喚。このカードは俺のフィールドに魔装騎士が存在するとき、手札から特殊召喚できる」
穂先が赤く染まった槍を持ち、古代ローマ帝国軍の鎧を着た男が現れる。
彼の両目は赤い布で隠されていて、その布の中央には五芒星が刻まれている。
魔装槍士ロンギヌス レベル3 攻撃800
「そして、《ブラックライダー》の効果発動。メインフェイズ1にオーバーレイユニットを2つ取り除くことで、このターン、相手フィールド上のすべてのモンスターに攻撃できる」
天秤に2つのオーバーレイユニットが宿り、《魔装騎士ブラックライダー》の周囲に黒い隕石が3つあらわれる。
取り除かれたオーバーレイユニット
・魔装槍士タダカツ
・魔装近衛エモンフ
魔装騎士ブラックライダー
ランク5 攻撃2800 守備2000 エクシーズ 闇属性 戦士族
「魔装」レベル5モンスター×2
(1):自分のターンのメインフェイズ1に、このカードのX素材を2つ取り除くことで発動できる。このターン、このカードは相手フィールド上に存在するすべてのモンスターに1回ずつ攻撃することができる。
「ええっ!?」
「バトルだ。俺は《ブラックライダー》で《エアーマン》を攻撃!ブラック・リブラ・メテオ」
《魔装騎士ブラックライダー》の天秤が動くと、それに合わせて隕石の1つが《E・HEROエアーマン》に向けて降ってくる。
「更に《ロンギヌス》の効果発動」
《魔装槍士ロンギヌス》はその場に座り込み、槍を天に掲げる。
「俺の魔装騎士が守備モンスターを攻撃するとき、貫通効果を与える」
「え…ええーーー!?」
《E・HEROエアーマン》に向けた隕石が巨大な鏃のようなものに変化する。
そして、そのまま《E・HEROエアーマン》を貫き、伊織に襲う。
「きゅあああ!!」
魔装騎士ブラックライダー ランク5 攻撃2800
伊織
ライフ3000→500
更に、伊織に追い打ちをかけるように残り2つの隕石が伊織のモンスターを撃破していく。
「あーあ…負けちゃった」
伊織
ライフ500→300→0
魔装槍士ロンギヌス
レベル3 攻撃800 守備0 光属性 戦士族
「魔装騎士ロンギヌス」はモンスターゾーンまたはペンデュラムゾーンに1枚しか存在できない。
【Pスケール青3:赤3】
(1):このカードはもう片方の自分のPゾーンに置かれているPモンスターが「魔装」モンスター以外の場合、墓地へ送られる。
(2):1ターンに1度、自分フィールド上に表側表示で存在するPモンスターが相手の守備モンスターを攻撃した時に発動できる。その守備力を攻撃力が超えていれば、その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。
【モンスター効果】
(1):このカードは自分フィールド上に「魔装騎士」モンスターが表側表示で存在するとき、手札から特殊召喚できる。
(2):自分フィールド上に表側表示で存在する「魔装騎士」モンスターが相手の守備表示モンスターを攻撃するとき、その守備力を攻撃力が超えていれば、その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。
「すう…はあ…」
デュエルが終わり、ゆっくりと深呼吸をする。
「あーあ、負けちゃった。なんだか落ち込むなー」
がっかりした様子で座り込み、チラっと翔太を見る。
「伊織はすごいな、一歩間違っていたら俺が負けていた」
座っている伊織に手を差し出すと、一瞬で彼女が笑顔に戻り、手を握って立ち上がる。
「そうでしょそうでしょ?次は絶対負けな…あれ?」
「どうしたんだ?」
「翔太君の目が元に戻ってる」
ぐいっと伊織が顔を近づけ、目をじっと見る。
翔太の目は彼女の言うとおり、何事もなかったかのように元に戻っている。
「おっかしいなー、さっきまで黒だったのに」
「ふああ…おはよー、伊織おね…」
「あ…」
オレンジ色の髪で、鉢巻をつけた小学生が入り口前で固まっている
「い…伊織、後ろ…」
「うん?」
可愛らしく首をかしげ、後ろを向く。
「え…あぁ!!た…太一君…??」
全てを悟ると、伊織は顔を真っ赤にしながらその場に座り込んでしまい、太一は何も言わずに部屋へ戻って行った。
「伊織…大丈夫か?」
「あうう…私、お嫁にいけないよー」
今の翔太には彼女への慰めの言葉を見つけることができなかった。