「非正規の部隊まで出したということか…」
オペレータールームで、零児は冷静に呟く。
モニターには懲罰部隊にたった1人で応戦する翔太の姿が映っていた。
それだけではない。
先程まで行われていたバレットとのデュエルもラストターンのみだがモニターに映っていた。
「剣崎、あなたが榊遊矢に渡したカードの1枚が彼に横取りされたぞ?」
「それでいいんだ。2枚のうちの1枚はどのみち彼に渡すつもりだったから」
「あの、剣崎さん…さっき翔太さんが使ったカードって…?」
「PCMのこと?」
侑斗の言葉に柚子は何も言わずにうなずく。
先程の零児との会話が正しければ、遊矢もそのPCMを持っていることになる。
しかし、なぜ2人にそのカードを渡したのか理解できなかった。
「すぐにわかるよ。そのカードは遊矢君にとって、必要なカードなんだ…」
「必要なカード…?」
「社長!本社ビル入り口付近で2つのデュエルが!!」
「モニターに映せ」
「はっ!!」
命令を受けたオペレーターが慣れた手つきでモニターの画面を切り替える。
1つのデュエルは本社ビル入り口前ですでに行われていて、沢渡、青いマスクの忍者、権現坂、セレナ、黒咲が3人のオベリスクフォースとデュエルをしている。
セレナのそばには2枚のカードが落ちていて、そこには未知夫と鉄平の姿がイラストに描かれている。
「そんな…また!!」
「ウィンダ、ヴァプラ隊の動きはどうなってるの?」
「うん!遺跡エリアに残っていたオベリスクフォースは全部やっつけたって!氷山エリアで生き残ったデュエリストを探したら、すぐに火山エリアへ行くみたい」
「できるかぎり急ぐように言って…これ以上犠牲者を出すわけにはいかないから…」
そう言っている間にもう1つのデュエルの映像が流れる。
黒咲たちとは数十メートル離れた場所で、溶岩を隔てて遊矢と素良が対峙している。
デュエルディスクを展開していて、手札がどちらも5枚であることから、まだ始まったばかりであることがわかる。
どうやら柚子を探しているうちにここで素良と遭遇したようだ。
彼の足元には赤いマスクの忍者のイラストが描かれたカードが落ちている。
そのことから、彼は素良に敗れてカード化してしまったことがわかる。
「遊矢!素良!!」
それを見た柚子が部屋を飛び出そうとする。
しかし、ウィンダが扉の前へ行ってそれを阻む。
「どいて!!私は遊矢を…」
「駄目!融合次元のデュエリストに捕まっちゃう!!」
「でも…!」
「彼らの目的は君とセレナちゃんの確保にあるんだ。なんでそんなことをするのかまでは分からないけど…」
自分とセレナの確保。
柚子はユーリの言葉を思い出す。
彼は自分をカード化してまで捕まえようとしていた。
しかし、他のデュエリストに関しては有無を言わさずカード化している。
「なら、私を身代わりに…」
「彼らは本気で、無邪気だ。たとえ君が自らつかまろうとしても、攻撃を続行するよ。何の疑問も持たずに…」
「そんな…」
この戦いを止めることができない現実に柚子が崩れ落ちる。
「赤馬…零王…!!」
零児の隣にいる少年が彼を見て、おびえる。
冷静な彼が怒りを帯びていたからだ。
一方、遊矢と素良は…。
素良
手札5
ライフ4000
遊矢
手札5
ライフ4000
「僕のターン!僕は手札から魔法カード《融合》を発動!その効果で僕は手札の《ファーニマル・キャット》と《エッジインプ・チェーン》を融合!」
天使の羽根をつけた紫色のネコのぬいぐるみと自動車用のチェーンなどの様々な規格の鎖で構成された悪魔が現れ、融合する。
「悪魔の鎖よ、研ぎ澄まされし爪よ、神秘の渦で1つとなりて、新たな力と姿を見せよ!融合召喚!現れ出ちゃえ、すべてを封じる鎖のケダモノ!《デストーイ・チェーン・シープ》!」
肢体が鎌と鎖、鎖によって回転させることができるオレンジの円盤となり、目玉が飛び出た状態のグロテスクな羊のぬいぐるみが現れる。
オレンジの円盤は左前脚と後ろ足だけでなく、背中にも2つついている。
デストーイ・チェーン・シープ レベル5 攻撃2000
「そして《エッジインプ・チェーン》の効果発動。このカードが手札・フィールドから墓地へ送られた時、デッキからデストーイカード1枚を手札に加えることができる。僕はデッキから《魔玩具融合》を手札に加える。更に《ファーニマル・キャット》の効果発動。このカードを融合素材として墓地へ送った時、墓地から《融合》を1枚手札に加える」
素良の手に使用済みの《融合》ともう1枚の融合魔法が手札に加わる。
これで彼は手札に素材モンスターがいれば、更なる融合召喚が可能になった。
「そして僕はカードを1枚伏せて、ターンエンド。さあ来なよ、遊矢。僕の本気を見せてあげるから」
素良
手札5→3(うち2枚《融合》《魔玩具融合》
ライフ4000
場 デストーイ・チェーン・シープ レベル5 攻撃2000
伏せカード1
遊矢
手札5
ライフ4000
場 なし
「素良…俺はお前の本当の笑顔を取り戻してやる!!」
遊矢はデッキトップに指をかける。
彼は初めて会ったときの素良の無邪気な笑顔が本物だということを信じている。
デュエリストをカード化する、エクシーズ次元を滅ぼすような連中の仲間であることは事実だ。
だが、きっとそれは強要されただけなのかもしれない。
確証はないが、何よりも素良を敵とみなしたくないという思いが遊矢をそう思わせている。
「俺のターン、ドロー!!」
遊矢
手札5→6
「俺はスケール1の《星読みの魔術師》とスケール8の《時読みの魔術師》でペンデュラムスケールをセッティング!!これで俺はレベル2から7のモンスターを同時に召喚可能!揺れろ!魂のペンデュラム!天空に描け光のアーク!ペンデュラム召喚!! 現れろ、雄々しくも美しい二色の眼、《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》!!」
オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン レベル7 攻撃2500
「思い出せ素良!!初めてデュエルしたあの時のことを!!」
遊矢と素良が初めてデュエルをしたとき、素良は遊矢のペンデュラム召喚を食い入るように見ていた。
そして、遊矢のエンタメデュエルをいつも楽しみにしていた。
だが、今の彼は違う。
「あれは半分遊びだったからだよ。でももう…あの時のような生ぬるいデュエルはしない」
「あの時の笑顔は本物だった!バトルだ!俺は《オッドアイズ》で《デストーイ・チェーン・シープ》を攻撃!!」
《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》の口から赤い回転するブレスが放たれる。
素良は浮遊している複数の岩に向けて跳躍し、アクションカードを手にする。
しかし、2体の魔術師の力によって彼はペンデュラムモンスターの攻撃中、魔法も罠も発動できない。
「螺旋のストライク・バースト!!」
《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》のブレスが《デストーイ・チェーン・シープ》を貫き、素良に襲い掛かる。
「《オッドアイズ》は相手モンスターとの戦闘で発生する相手へのダメージを倍にする!!」
素良
ライフ4000→3000
「けど、ここで僕はアクション魔法《フレイム・チャンス》を発動!僕のモンスターが戦闘で破壊された時、デッキからカードを1枚ドローする。そして、《デストーイ・チェーン・シープ》は1ターンに1度、破壊された時に攻撃力を800アップさせた状態で復活できる!」
ブレスで貫かれ、バラバラになったいびつなぬいぐるみが鎖で繋げられ、再起動する。
そして、破壊された恨みなのか円盤が火花が起こるくらい速く回転し始める。
デストーイ・チェーン・シープ レベル5 攻撃2000→2800
復活までのタイムラグの間に、遊矢は岩でできた天井にあるアクションカードを《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》を踏み台にして手にする。
「げっ…アクション罠!?こんな時に!!」
「そうやってぬるいことをしてるからだよ、遊矢」
遊矢が手にしたアクション罠《誤配送》を見て、彼を馬鹿にしながらカードを1枚ドローする。
素良
手札3→5
フレイム・チャンス
アクション魔法カード
(1):自分フィールド上に存在するモンスターが戦闘で破壊され墓地へ送られた時に発動できる。デッキからカードを1枚ドローする。
誤配送
アクション罠カード
(1):相手はデッキからカードを1枚ドローする。
「俺はカードを1枚伏せて、ターンエンド!」
素良
手札5(うち2枚《融合》《魔玩具融合》)
ライフ3000
場 デストーイ・チェーン・シープ レベル5 攻撃2800
伏せカード1
遊矢
手札6→2
ライフ4000
場 オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン レベル7 攻撃2500
星読みの魔術師(青) ペンデュラムスケール1
時読みの魔術師(赤) ペンデュラムスケール8
伏せカード1
「素良、俺たちはこうしてデュエルをすることで友達になったじゃないか!!」
「デュエルは戦いだ。友情だとか生ぬるいことなんかよりも…僕には大事なことがある!!」
遊勝塾での関係を無にするような言動が遊矢に襲い掛かる。
かつて彼を感動させたペンデュラム召喚ですら、彼を笑顔にすることができない。
「勝利こそがすべて…負けたら…全部終わりなんだ!!僕のターン、ドロー!!」
素良
手札5→6
「僕は手札から魔法カード《融合の宝札》を発動。手札の《融合》を墓地へ送ることで、デッキからカードを2枚ドローする!」
融合の宝札
通常魔法カード
「融合の宝札」は1ターンに1度しか発動できない。
(1):手札の「融合」カード1枚を墓地へ送ることで発動できる。デッキからカードを2枚ドローする。このカードを発動したターン、自分は融合召喚以外の方法でエクストラデッキからモンスターを特殊召喚することができない。
「更に罠カード《融合準備》を発動!その効果で僕は融合素材モンスター、《エッジインプ・シザー》をデッキから手札に加え、《融合》を墓地から手札に加える!」
「一気に4枚も手札増強を!!?」
ドローする度に放たれる素良のプレッシャーが強くなっていく。
それを感じるほど、今の彼は初めてデュエルした時と比べ物にならないくらい本気であることが分かってしまう。
「そして、手札から《ファーニマル・オウル》を召喚!」
眉毛が天使の羽根となっている黄色いフクロウが《融合》を口の咥えた状態で現れる。
「このカードの召喚・特殊召喚に成功した時、デッキから《融合》を手札に加えることができる!」
ファーニマル・オウル レベル2 攻撃1000
「僕は手札から魔法カード《融合》を発動!!その効果で僕は手札の《エッジインプ・シザー》、《ファーニマル・ベアー》、更にフィールドの《ファーニマル・オウル》を融合!!悪魔の爪よ!野獣の牙よ!煉獄の眼よ!神秘の渦で1つとなりて、新たな力と姿を見せよ!融合召喚!現れ出ちゃえ!すべてを引き裂く密林の魔獣!《デストーイ・シザー・タイガー》!」
《ファーニマル・オウル》と天使の羽根がついたピンク色の熊のぬいぐるみ、そして複数のハサミが合体した悪魔が融合する。
そして、腹部が巨大なハサミで大きく切られている巨大で青い虎のぬいぐるみが遊矢の前に立ちはだかる。
デストーイ・シザー・タイガー レベル6 攻撃1900
「《デストーイ・シザー・タイガー》…!?」
「こいつは融合次元で新しく手に入れたカード、そして遊矢!!君との決別の証さ!!このカードの融合召喚に成功した時、素材となったカードの数だけフィールド上のカードを破壊できる!」
「何!!?」
《デストーイ・シザー・タイガー》が大きく跳躍し、ペンデュラムスケールをセッティングしている2体の魔術師を掴み、口の中に放り込む。
仲間を救おうと《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》が突撃するが、腹部の巨大なハサミがその竜の頭部を切断した。
そして、口の中が空になったのを見計らうとそのまま動かなくなった竜をも丸呑みにした。
「うう…!!」
その光景を見てしまった遊矢が嘔吐しそうになる。
あまりのもその光景がグロテスクだからだ。
「更にこのカードは僕のデストーイモンスターの攻撃力を僕のフィールド上のファーニマルモンスターとデストーイモンスターの数×300アップさせる!」
デストーイ・シザー・タイガー レベル6 攻撃1900→2500
デストーイ・チェーン・シープ レベル5 攻撃2800→3400
「更に僕は手札から魔法カード《魔玩具融合》を発動!フィールド・墓地のモンスターを素材にデストーイモンスターを融合召喚する!!」
「まさか…また《シザー・タイガー》を!?」
「安心しなよ、《シザー・タイガー》は自分フィールド上に1枚しか存在できないモンスター。狂暴すぎるのが玉にキズなモンスターだからね。僕は《エッジインプ・シザー》と《ファーニマル・ベアー》、《ファーニマル・オウル》、《ファーニマル・キャット》を融合!!悪魔の爪よ!野獣の牙よ!煉獄の眼よ!研ぎ澄まされし爪よ!融合召喚!現れ出ちゃえ!すべてを引き裂く平原の魔獣、《デストーイ・シザー・ウルフ》!!!」
墓地に眠る4体が1つとなり、《デストーイ・シザー・タイガー》と同じように腹部が大きくハサミで切られている青い狼のぬいぐるみが現れる。
その両前足は青い持ち手のハサミによって体とつなぎ荒らされている。
デストーイ・シザー・ウルフ レベル6 攻撃2000
「《シザー・ウルフ》は素材にしたモンスターの数だけ攻撃できる!そして、《シザー・タイガー》の効果で攻撃力がアップする!!」
デストーイ・シザー・タイガー レベル6 攻撃2500→2800
デストーイ・チェーン・シープ レベル5 攻撃3400→3700
デストーイ・シザー・ウルフ レベル6 攻撃2000→2900
「融合召喚…素良!!融合召喚を柚子に教えたのは、友情のためじゃなかったのか!?」
柚子に融合召喚を教えたのは素良だ。
それに対して、彼が見返りを要求したことはない。
だとしたら、柚子を仲間だと思っているからそうしたに違いない。
遊矢は素良の本性が遊勝塾で見せたものだと信じた。
いや、信じたかったというべきか。
あのようなグロテスクな光景を見せ、そしてデュエリストをカードに封印するような外道を平然と行う彼への遊矢の信頼が無意識のうちにわずかながら薄らいでいた。
「あれは余計だったよ。融合召喚はもっと尊い目的のために使うべきだ。世界を1つにするためにね」
「力で世界を1つにしようだなんて間違っている!!」
「だったら僕に勝って、それを証明すればいいだろう!!?バトルだ!!3体のデストーイモンスターよ。遊矢にとどめを刺せ!!」
遊矢の言葉がそうさせているのか、素良の言葉に苛立ちの色が混ざる。
だが攻撃命令を出していることは変わらず、3体のモンスターが一斉に遊矢を襲う。
「遊矢!!」
近くまで来て、遊矢の状況を見た翔太が叫ぶ。
「ハアハアハア!!」
だが、アクションカードを探す遊矢に彼の言葉にこたえる余裕はない。
浮遊する岩を飛びつつ、アクションカードを探す。
「…!!」
わずかながら横に目を向けている間に、目の前に《デストーイ・チェーン・シープ》が現れ、そのかか遊矢に頭突きする。
「うわああああ!!」
攻撃を受けた遊矢が吹き飛ばされていく。
遊矢
ライフ4000→300
「どうしたの遊矢?あと1回攻撃を受けたら、終わっちゃうよ??」
吹き飛ばされる遊矢をあざわらう。
そんな中、《デストーイ・シザー・ウルフ》が遊矢を丸呑みにしようと襲い掛かる。
あまりの激痛で遊矢の意識が薄らぐ。
(そんな…ここで、終わり…?素良1人の笑顔も取り戻せないまま…)
己の非力を悔やみ、涙を浮かべる遊矢の目には遊勝塾で見た素良と権現坂、そして柚子の笑顔が浮かんでは消えていく。
(柚子…みんな…ごめん…)
そのまま意識を手放そうとした瞬間、遊矢の額に石が当たる。
何だと思い、目を開くと崖の上に翔太の姿が見えた。
「おい、何やってんだ?ガキでも欲しいものがあれば、もう少し粘るぞ!!俺はアクション魔法《フレイム・キャノン》を発動!その効果で俺は遊矢の伏せカードを破壊する!!」
溶岩の中から火球が出現し、遊矢の伏せカードを破壊する。
「はぁ!?何やってるの?助ける相手の伏せカードを破壊しちゃうなんて!?」
「お前みたいなクソガキは黙って見てろ」
そう言っている間に、翔太にペナルティダメージが発生する。
翔太
ライフ4000→2000
「だったら遊矢を倒した後はお前も倒してやる!!《シザー・ウルフ》!!さっさと遊矢を…」
「俺は…墓地から罠カード《エクストラ・ミラージュ》を発動!」
「何!?まさかそれは…」
《エクストラ・ミラージュ》を見て素良がハッとする。
先程《フレイム・キャノン》の効果で破壊したカード、それが《エクストラ・ミラージュ》だったのだ。
「このカードを除外することで、このターン相手がエクストラデッキからモンスターを特殊召喚したモンスターの数だけ攻撃を無効にする!!」
遊矢の前に突然現れた障壁によって、《デストーイ・シザー・ウルフ》が吹き飛ばされる。
その間に、遊矢が別の足場で落ちる。
「くっそぉ!!でも、それで無効にできるのはあと1回!!もう1度攻撃だ!!《シザー・ウルフ》!」
再び狼のぬいぐるみが攻撃を開始する。
先ほどと同じように障壁で吹き飛ばされたものの、それと同時に障壁が消える。
障壁の消えた遊矢をまた攻撃しようと壁を蹴ろうとするが、急にその足を炎の縄に拘束され、そのまま足場に転落する。
その炎の縄を持っていたのは翔太だった。
「アクション魔法《ファイア・ロープ》。こいつは1ターンの間だけ相手モンスター1体のみ動きを封じる」
《デストーイ・シザー・ウルフ》が起き上がるのと同時に、とどめを刺すべきついに《デストーイ・シザー・タイガー》が動き出す。
そんな中、遊矢は痛みに耐えながら立ち上がり、吹き飛ばされている間にいつの間にか左腕に張り付いていたアクションカードを手にする。
「よし!!俺はアクション魔法《ソウル・バーニング》を発動!!1度だけ俺が受けるダメージを0にする!うおおおおおお!!」
発動と同時に遊矢の体が炎に包まれる。
《デストーイ・シザー・タイガー》がハサミで彼を切断しようとしたが、その前に炎でハサミが溶けてしまう。
ファイア・ロープ
アクション魔法カード
(1):相手フィールド上に存在するモンスター1体を対象に発動できる。その門スタはターン終了時まで攻撃できず、表示形式を変更できない。
フレイム・キャノン
アクション魔法カード
(1)フィールド上にセットされている魔法・罠カードを1枚破壊する。
ソウル・バーニング
アクション魔法カード
(1):このターン、1度だけ自分が受けるダメージを0にする。
「は…ははは…まさか、助けが入ったとはいえここまで攻撃を防いじゃうなんて…」
なぜか素良が笑い始める。
それが見下したものではなく、予想外の事態の発生を楽しむ純粋なものだ。
「まあいいや、次のターンで倒せるし。僕はカードを1枚伏せて、ターンエンド」
素良
手札6→3
ライフ3000
場 デストーイ・シザー・タイガー レベル6 攻撃2800
デストーイ・チェーン・シープ レベル5 攻撃3700
デストーイ・シザー・ウルフ レベル6 攻撃2900
伏せカード1
遊矢
手札2
ライフ300
場 なし
翔太
手札5
ライフ4000
場 なし
「はあ、はあ、はあ…」
なんとかこのターンの猛攻をしのぐことができた。
しかし、フィールド上にカードはなく、今の手札では次のターンをしのぐ手がない。
「遊矢、もう分かっただろ?僕と遊矢はもう…あの時のようにはなれない」
「はあ、はあ…素良…」
「目的を達成したら、ここもエクシーズ次元のようにする。みんな、僕たちのハンティングゲームの獲物になるんだ」
「な…に…!?」
「さあてっと、遊矢を狩ったら、次はだれを狩ろうかなー?じゃあ、柚子にしようかな?だって、1人ぼっちになったら可哀そうだし」
「柚子を…だと…!?」
ハンティングゲーム、柚子という言葉に遊矢の脳裏にある光景が浮かび上がる。
突然現れる制服姿のデュエリストの集団と大量のアンティーク・ギアモンスター達。
火の海と化していく町の中で彼らの攻撃を受け、カード化されていく人々。
その中にはデュエリストでない人も含まれている。
そして、自分の目の前で自分に助けを求めながらカード化していく柚子の姿が…。
「素良ぁぁぁぁぁ!!!」
「ちっ…あの馬鹿。また暴走するつもりか!?」
遊矢が黒いオーラに包まれていく。
暴走を防ぐため、翔太が彼の元へ向かう。
「俺のタァーーーーン!!!!」
遊矢
手札2→3
(駄目だよ…憎しみが残すのは空しさだけだ)
「な…!?」
急に耳ではなく脳に直接聞こえた聞き覚えのない少年の優しい声が遊矢を正気に戻す。
そして、彼を包むオーラも消えた。
「今の声は…一体…??」
ドローしたカードを見る。
それは翔太が使用した《PCM-シルバームーン・アーマー》だった。
「なんでこれが俺のデッキの中に!?」
カードを見ると同時に、遊矢のペンデュラムが淡い光を放つ。
そして、脳裏に白銀の鎧をまとった《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》の姿が浮かぶ。
「俺は手札から魔法カード《逆境の宝札》を発動。俺のフィールド上にモンスターが存在せず、相手フィールド上に特殊召喚されたモンスターが存在するとき、デッキからカードを2枚ドローできる。そして俺はスケール4の《流星の魔術師》をペンデュラムゾーンへ!!(赤馬零児、あんたがくれたカード、使わせてもらうぞ!!)」
背中に流星が描かれた茶色い袈裟を着たスキンヘッドの僧侶が遊矢の右側で上空へ浮遊し、光の柱を生み出す。
左目瞼には縦の切り傷があり、閉じていて、右手には数珠がある。
このカードは大会出場のための4連戦の前に沢渡襲撃の犯人と間違われたことへの侘びとして零児から受け取ったカードだ。
「星の塵を見定める《流星の魔術師》よ、その明快なる力で届かぬ声に耳を傾けよ!このカードをペンデュラムゾーンに置いた時、エクストラデッキに存在するスケール7以上の魔術師をペンデュラムゾーンに置くことができる!俺は《時読みの魔術師》をペンデュラムゾーンに置く!スターダスト・セッティング!!」
遊矢の左側に向けて数珠を投げる。
すると、数珠を中心に光の柱が生まれ、上空から降りてきた《時読みの魔術師》がそれを掴む。
流星の魔術師
レベル8 攻撃0 守備3000 光属性 魔法使い族
【Pスケール:青4/赤4】
(1):このカードをPゾーンに置いた時、自分のPゾーンに他のカードが無い場合に発動する。エクストラデッキからPスケールが7以上の「魔術師」Pモンスター1体を選び、自分のPゾーンに置く。
【モンスター情報】
俗世を捨て、山の中で60年もの時を孤独に生きる僧侶。
彼について知る者は誰もおらず、その左目瞼の傷だけがそれを物語る。
ただ1つ分かることは彼が流れ星からこの世の流れを見抜くことができるということだけだ。
「これで俺はレベル5から7までのモンスターを同時に召喚可能!ペンデュラム召喚!!現れろ、《時読みの魔術師》、《EMスプリングース》、《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》!!」
エクストラデッキから2体のモンスターが飛び出すとともに、腹部になぜかバネをつけている、シルクハットと紫の蝶ネクタイ、そして白シャツと青いスーツを着た白いガチョウが現れる。
星読みの魔術師 レベル5 攻撃1200
オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン レベル7 攻撃2500
EMスプリングース レベル5 攻撃1100
「今更《オッドアイズ》を呼び出したとしても、攻撃力2500じゃ、僕のデストーイモンスター達には勝てないよ!!」
素良の言うとおり、今だしたモンスターの中で最大の攻撃力を持つ《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》ですら一番攻撃力の低い《デストーイ・シザー・タイガー》には及ばない。
《星読みの魔術師》と融合させることができれば、《ルーンアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》を融合召喚し、3回攻撃で殲滅することができるが、今の彼のデッキには《融合》がなく、《融合》とほぼ同じ効果を持つ《EMトランプ・ウィッチ》も手札にはない。
遊矢は《PCM-シルバームーン・アーマー》をじっと見る。
(このカードが《オッドアイズ》と俺に与えてくれる力が何なのかわからないけど…俺は!!)
そのカードを発動しようとするが、急に《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》が遊矢に目を向ける。
「…!?どうした?《オッドアイズ》??」
ソリッドビジョンの存在であるそのモンスターがなぜこのような行動をしたのかわからず、答えないとは分かったうえで質問する。
すると、《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》が急に遊矢の体を握り、自分の目の前まで持っていく。
「何!?一体どうしたんだ《オッドアイズ》!!…うわぁ!!」
竜の手に体が圧迫され、遊矢が吐血する。
「《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》が…!?」
「ちっ…一体どうなっているんだ!?」
翔太が遊矢を助けようと駆け寄るが、そんな彼を赤い竜の尻尾が襲い掛かる。
「こいつ、俺を近づけさせないつもりか!?」
回避した翔太は遊矢を握ったままの《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》をじっと見る。
「オッド…アイズ…え??」
遊矢が相棒の竜の目を見たとき、なぜかそのモンスターの心が伝わってくる感じがした。
「俺が…デュエリストが…憎い…!?」
遊矢に伝わってくる憎しみの心。
それは自分たちデュエルモンスター達を争いの道具にし、弄ぶデュエリストすべてへの怒りだった。
「(《オッドアイズ》…お前…)うわあああ!!」
「あーあ、甘い考えがついに自分のモンスターまで怒らせちゃったんだ。じゃあ、今のうちにアクションカードを探そうっと」
吐血し、苦しむ遊矢をよそに素良はアクションカードを探し始める。
そして、岩陰に隠れているアクションカードを手に取る。
「あ…アクション罠。まあ、今の遊矢には問題ないか」
《失敗率100%》を見ながら、素良は遊矢を見る。
そして、遊矢のフィールドには《EMディスカバー・ヒッポ》が現れる。
EMディスカバー・ヒッポ レベル3 攻撃800
失敗率100%
アクション罠カード
(1):相手はデッキからレベル4以下のモンスター1体を特殊召喚する。
(《オッドアイズ》…)
なぜか遊矢には《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》の思いがわかる気がした。
エクシーズ次元を攻撃し、更には今こうしてスタンダード次元に進行しているのはオベリスクフォースだ。
しかし、厳密に言うと実際に攻撃し、蹂躙しているのはデュエルモンスターズ達で、応戦するのも同じデュエルモンスターだ。
争いの道具にされるのは気分のいいものであるわけがない。
「ごめんな…《オッドアイズ》…」
力を一向に緩めない《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》に遊矢が侘びの言葉を送る。
アクションデュエルで何度も自分のモンスターと一緒に戦ったからこそ、《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》の思いがただのデータではないと思えたのだろう。
「悪いのは融合次元で、今こうしてみんなを傷つけているあいつら…デュエルモンスターには罪がないのに…。だから、こんなことは絶対に終わらせる!こんなバカげたデュエルでこれ以上みんなを苦しませたくない!!うわああああ!!」
再び握る力が強まり、吐血してしまう。
このままでは内臓が破裂するかもしれない。
更には竜の爪がわき腹に刺さっていく。
「くそ!!遊矢、このままだと死ぬぞ!!」
「翔太、手を出さないでくれ!!俺は《オッドアイズ》と話をしているんだ!!」
「遊矢…」
「デュエリストのけじめはデュエリストがつける!!そして、お前にも笑顔を与えて見せる!だから…俺に力を貸してくれ!!《オッドアイズ》---!!」
涙を流し、口からは血を流しながら、《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》に自分の想いを伝える。
それに答えたのか、竜は彼を放した。
服の裾で口についた血をふき取ると、遊矢は素良に目を向ける。
「モンスターとの喧嘩はどうだった?遊矢」
「喧嘩じゃない…俺は《オッドアイズ》の思いを感じたんだ?」
「はぁ?」
遊矢の言葉が理解できない素良。
モンスターを道具とみなしている彼には永遠にわからないだろう。
「《オッドアイズ》が教えてくれた。モンスターにも心がある。だから俺はお前も、みんなも、デュエルモンスター達も笑顔にして見せる!それが俺のエンタメデュエル!!俺は手札から《PCM-シルバームーン・アーマー》を発動!!このカードは俺のフィールド上に存在するレベル7のペンデュラムモンスター1体を同じ種族でランク7のエクシーズモンスターに変化させる。俺は《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》でオーバーレイ!!」
《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》が上空に向けて咆哮すると、天井となっている岩が次々と砕けて溶岩の中に落ちる。
そして、上空が一瞬だけ熱い雲に覆われ、昼から夜の空へと変わってしまう。
満月を見た《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》は月の重力に引かれ、そこへ向けて飛んでいく。
「《オッドアイズ》が月へ!?本当に…想定外なことをするよ、遊矢…」
再び遊勝塾で見せた笑顔を見せる素良。
それに気づくと、首を大きく横に振って表情を元に戻す。
「月の光よ、今こそ憎悪の心を鎮め、魂を救済する刃を生み出せ。ペンデュラムエクシーズチェンジ!!月の鎧纏いし二色の眼、《MLX-オッドアイズ・月下・ドラゴン》!!」
月に降り立った竜を魔法陣が包み込む。
すると、《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》が全身に重量感のある白銀の分厚い鎧と三日月を模した額当てが装着され、右手には《アームズ・エイド》のような補助腕が装着され、装着と同時に背中に刺している日本刀を引き抜く。
鎧と刀を得た竜は魔法陣と共に瞬時に遊矢の前までワープする。
ワープし終えると、右の角には「明鏡止水」、左の角には「鎮怒祓邪」という文字の形をしたひび割れができた。
MLX-オッドアイズ・月下・ドラゴン ランク7 攻撃2500
「MLXモンスターだって!?それにこの姿…」
目の前に現れた新たな遊矢の力に素良が興奮を隠せない。
否定していた笑顔が前面に出てしまう。
「それだけでもびっくりなのに…完全武装だなんて!!」
「そうだ、こうして素直な笑顔を見せている!!それが本当のお前なんだ、素良!!」
「…!?」
遊矢の指摘を受け、再び首を激しく横に振る。
しかし、何度首を振っても、そして頬を叩いても笑顔になってしまう。
(なんで…なんでなんだよ!?僕は融合次元の戦士!遊矢の…)
「俺は手札から魔法カード《イリュージョン・ファイヤー》を発動!俺のフィールド上のモンスター1体はこのターン、俺のフィールド上に存在するほかのモンスターの数だけ攻撃できる!!」
透き通るような鋼でできた刀を手に、素良の3体の融合モンスターを見つめる《MLX-オッドアイズ・月下・ドラゴン》。
遊矢に見せたように憤怒はなく、水のように穏やかだ。
「でも、いくらエクシーズモンスターになったところで攻撃力は2500のまま!!それじゃあ…」
「バトルだ!!俺は《オッドアイズ・月下・ドラゴン》で《シザー・タイガー》を攻撃!!」
「何!!?」
《MLX-オッドアイズ・月下・ドラゴン》が《デストーイ・シザー・タイガー》に向けて突撃する。
攻撃力が上回っている《デストーイ・シザー・タイガー》はそのまま丸呑みするために両腕を伸ばす。
「このカードは俺のライフが1000以下の時、戦闘では破壊されず、発生する俺へのダメージが0になる!」
遊矢が効果説明すると同時に、《MLX-オッドアイズ・月下・ドラゴン》が日本刀でその両腕を切り裂く。
両腕を失い、《デストーイ・シザー・タイガー》が大きく動揺している間に今度はその頭部に刃が突き刺さる。
「更に、ライフが1000以下で《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》をペンデュラムオーバーレイユニットとしている時、攻撃対象としたモンスターをダメージステップ終了時に破壊し、その攻撃力分のダメージを与える!!」
「何!!?」
「《デストーイ・シザー・タイガー》が俺たちとの決別の証なら、それを倒してもう1度友達になってやる!!月光のムラマサ・スラッシュ!!」
《MLX-オッドアイズ・月下・ドラゴン》が咆哮すると、刀を口に咥え、そのまま《デストーイ・シザー・タイガー》を真っ二つに切り裂いていく。
「遊…矢…」
素良
ライフ3000→200
イリュージョン・ファイヤー(アニメオリカ・調整)
通常魔法カード
「イリュージョン・ファイヤー」は1ターンに1度しか発動できない。
(1):自分フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。このターン、そのモンスター以外の自分フィールドのモンスターは攻撃できず、その対象のモンスターはそれ以外の自分フィールドのモンスターの数だけ攻撃できる。
MLX(ムーンライトエクシーズ)-オッドアイズ・月下・ドラゴン
レベル7 攻撃2500 守備2000 エクシーズ 闇属性 ドラゴン族
「オッドアイズ」レベル7モンスター×2
(1):このカードが相手モンスターと戦闘を行う場合、このカードが相手に与える戦闘ダメージは倍になる。
(2):自分LPが1000以下の場合、このカードは戦闘では破壊されず、自分が受ける戦闘ダメージは0となる。
(3):「オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン」をX素材としている場合、以下の効果を得る。
●自分LPが1000以下の場合、このカードが相手モンスターを攻撃したダメージステップ終了時に発動できる。攻撃対象のモンスターを破壊し、そのモンスターの攻撃力分のダメージを相手に与える。
「《オッドアイズ》!!そのまま残り2体を…」
攻撃しろという直前に、急にフィールド中にサイレンが鳴る。
時計は午後0時、バトルロワイヤル終了時刻だった。
(えーー、24時間という長きにわたるバトルロワイヤルはここで終了でございます!!)
終了放送と同時にアクションフィールドが消えていく。
「終わった…?素良!!」
「くっ…!!」
遊矢が歩み寄る前に素良がデュエルディスクにパスワードを入力する。
すると彼が青い光に包まれ、消えてしまった。
「待て!!待ってくれ…素良…!」
動こうとした瞬間、今まで我慢していた痛みが一気に襲い掛かる。
更に《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》に握りつぶされそうになった際に血を流しすぎたこともあり、意識がぼやけてくる。
「おいおい、こんなところで…」
「遊矢!!」
翔太が駆け寄ろうとした瞬間、柚子が遊矢の元へ走ってくる。
彼女に抱かれ、遊矢は朦朧としながらも口を動かす。
「柚子…本当に…柚子…なのか…?」
「うん…うん!!遊矢!!」
眼に涙を浮かべ、今にも泣きそうな表情で柚子が応える。
「そうか…良かった…」
柚子の声を聞き、安心するように安らかな表情を見せると、そのまま意識を失った。
目を閉じるのと同時に、彼の目から一筋の涙がこぼれる。
「遊矢!!!」
「無理もないだろう。ボロボロになるまでデュエルをしたんだ」
翔太が遊矢を柚子からとり、彼をおんぶする。
「いくぞ、さっさと治療させないと、死ぬぞ?」
翔太におんぶされて本社ビルへ向かう遊矢とついていく柚子。
意識を失った彼の口から何度も彼女の名前を呼ぶ声が聞こえ、翔太がイライラしたのはまた別の話だ。
月の刀を手にした《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》!!
心を鎮めし刃の切れ味はまさに日本刀の如し!
…かなり強引な展開でごめんなさい。