「…」
デュエルフィールドの選手控室にガーダーが入ってくる。
そこには零児の通信装置に表示された男性が静かに小説、『モンテ・クリスト伯』を読んでいる。
「ガーダーか、ノックしてから入ってきてほしいな」
「なーに一人さびしく読んでんだ?」
「集中するためさ。こうしている方が落ち着くんだ。私も…私のデッキも」
本を閉じ、ベンチの上に置くとメガネを拭く。
「まあ、それならいいけどな。そろそろ出番だぜ?スティーラー」
「分かっている。さて、彼女がどれだけの実力があるか確かめなければ」
デュエルディスクとデッキを手に、スティーラーが控室を出ていく。
ガーダーは少し気になったのか、置かれている本をめくる。
「げぇ…こんなんが読めるのかよ??」
小説はすべてフランス語で書かれていて、日本語と英語のバイリンガルであるガーダーには読めない代物だ。
「そういやあ、ヴァプラ隊、というよりもLDS講師になる前はプロだったっけな…?」
スティーラーは貧しい家に生まれ、6年前まで世界中のプロリーグや大会で活躍するプロデュエリストになった男だ。
そのため海外のホテルで生活することが多いためか、日本語や英語だけでなく、フランス語、ロシア語、エジプト語、アラビア語などを読み書きできるマルチリンガルに自然になっていた。
しかし、急病によって引退を余儀なくされ生きる気力を失った。
病気は完治したものの、目標を失い、自堕落な生活を送っているところを零児にスカウトされる形でLDS講師となり、更に実力と経験を買われてヴァプラ隊の創設メンバーの1人に選ばれた。
(柚子の嬢ちゃん…こいつはあなどれねえぜ?)
「ふぅー…」
デュエルフィールドでは柚子が緊張した面持ちで待機していて、客席には遊矢と権現坂が座っている。
「柚子、緊張しているな」
「柚子ーー!大丈夫だ!お前なら必ずランサーズになれる!!」
遊矢が大声で声援を送っていると、デュエルフィールドにスティーラーが入ってくる。
「こんにちは、柊柚子さん。私はスティーラー、今回君のテストをするヴァプラ隊のメンバーだよ」
「は、はい…!よろしくお願いします!」
「ははは…緊張する必要はないよ。その状態だと、君は全力を出せないからね」
カチカチになったお辞儀をする柚子に笑みを浮かべながら優しく言うと、デュエルディスクを展開する。
それを見て、柚子もデュエルディスクを展開する。
「今回はスタンディング形式だ。デュエリストである以上私は手加減をすることができないから、そのつもりで」
「…はい!」
「さあいくよ…スカーナイト…」
誰にも聞こえないくらい小さな声でスティーラーは自分のデッキにつぶやく。
「「デュエル!!」」
スティーラー
手札5
ライフ4000
柚子
手札5
ライフ4000
「私の先攻。私はモンスターを裏守備表示で召喚。そして、カードを2枚伏せ、ターンエンド」
スティーラー
手札5→2
ライフ4000
場 裏守備モンスター1
伏せカード2
柚子
手札5
ライフ4000
場 なし
「(裏守備モンスターに2枚の伏せカード、無難な立ち上がり…)あたしのターン、ドロー!」
柚子
手札5→6
「あたしは手札から魔法カード《独奏の第1楽章》を発動!あたしのフィールド上にモンスターが存在しないとき、手札・デッキからレベル4以下の幻奏モンスター1体を特殊召喚できる。あたしはデッキから《幻奏の音女セレナ》を特殊召喚!」
幻奏の音女セレナ レベル4 攻撃400
「このカードの特殊召喚に成功したターン、あたしは通常の召喚に加えて手札から幻奏モンスター1体を召喚できるわ。あたしは手札から《幻奏の音女エクローグ》を召喚」
下半身部分が緑で、上半身部分が黄色の肩と腕が露出しているタイプのドレスをつけた金髪で緑色の肌の天使が現れる。
彼女の右片翼も体やドレスと同じ色合いをしていて、胸には稲をモチーフとした絵が描かれたバッジをつけている。
幻奏の音女エクローグ レベル4 攻撃1600
「更に《セレナ》は天使族モンスターをアドバンス召喚するとき、1体で2体分のリリースにできる。あたしは《セレナ》をリリース!天上に響く妙なる調べよ。眠れる天才を呼び覚ませ。いでよ!レベル8の《幻奏の音姫プロディジー・モーツァルト》!」
《幻奏の音女セレナ》が美しい声で歌を歌いながら天へ昇って行く。
そして、ブルボン朝時代のフランスの赤いドレスを身に着け、青い肌で背中に青いピアノをモチーフとした天使の羽根をつけた天使が降りてくる。
その手にはタクトが握られていて、真っ白な髪の上には赤と金を基調とした冠が輝いている。
幻奏の音姫プロディジー・モーツァルト レベル8 攻撃2600
「1ターン目からレベル8のモンスターをアドバンス召喚するとは…」
「まだよ!このカードはあたしのフィールド上に幻奏モンスターが存在するとき、手札から特殊召喚できる。《幻奏の音女ソナタ》を特殊召喚!」
幻奏の音女ソナタ レベル3 攻撃1200
「このカードは特殊召喚に成功した状態であたしのフィールドに存在するとき、あたしのフィールド上に存在する天使族モンスターの攻撃力・守備力を500アップさせるわ」
《幻奏の音姫プロディジー・モーツァルト》が動かすタクトに従い、2体の音女がコンサートを始める。
幻奏の音女エクローグ レベル4 攻撃1600→2100
幻奏の音女ソナタ レベル3 攻撃1200→1700
幻奏の音姫プロディジー・モーツァルト レベル8 攻撃2600→3100
「よし!!これで《エクローグ》で裏守備モンスターを攻撃して、残り2体のモンスターでダイレクトアタックすれば、1ターンキルで柚子の勝ちだ!!」
「ううむ…」
幼馴染の勝利を確信する遊矢だが、権現坂はスティーラーの表情が気になって仕方がない様子だ。
彼は1ターンキルされるのではないかという状況であるにもかかわらず、一筋の汗も流さず、呼吸も乱れず、笑みを浮かべたままだ。
「バトルよ!あたしは《エクローグ》で裏守備モンスターを攻撃!パストラル・ヴォイス!!」
《幻奏の音女アリア》の口から放たれる炊き立ての新米のにおいが含まれた音波が裏守備モンスターをバラバラにする。
それがスティーラーの狙いであることも知らずに。
裏守備モンスター
キラー・トマト レベル4 守備1100
「《キラー・トマト》の効果発動。このカードが戦闘で破壊され墓地へ送られた時、デッキから攻撃力1500以下の闇属性モンスター1体を攻撃表示で特殊召喚できる。私が特殊召喚するのは…私のエースカード、《スカブ・スカーナイト》!!」
《スカブ・スカーナイト》のカードがデッキから自動排出され、スティーラーのデュエルディスクに置かれる。
すると彼のフィールドが揺れ始め、地中から青と紫を基調としたボロボロな装甲で覆われた人形が出てくる。
スカブ・スカーナイト レベル4 攻撃0
「攻撃力0のモンスターが…」
「エース??」
《スカブ・スカーナイト》を見て、首をかしげる遊矢と権現坂。
そんな彼らを見たスティーラーはフッと笑う。
「このカードが存在するとき、君のモンスターたちは可能な限りこのカードに攻撃しなければならない。スカー・グラビティ!!」
《スカブ・スカーナイト》が激しく咆哮すると、《幻奏の音姫プロディジー・モーツァルト》と《幻奏の音女ソナタ》が何かに引っ張られるかのようにそのモンスターの近くまでいってしまう。
「けど、攻撃力0なら戦闘ダメージで私の…」
「甘いよ。私は永続罠《スピリットバリア》を発動。私のフィールド上にモンスターが存在する限り、私が受ける戦闘ダメージは0となる」
2体の幻奏モンスターがやむなく拳で攻撃しようとするが、目の前に突然現れた《スカブ・スカーナイト》と同じ特徴の壁に阻まれる。
「そして、バトルフェイズ終了時に《スカブ・スカーナイト》と戦闘を行ったモンスターの中から1体のコントロールを奪う」
「ええ!!?」
2体の攻撃を阻んだ壁が《幻奏の音姫プロディジー・モーツァルト》のドレスに付着する。
すると、彼女の眼の色が赤く染まり、スティーラーのフィールドへ移っていく。
幻奏の音姫プロディジー・モーツァルト レベル8 攻撃3100→2600
スカブ・スカーナイト(アニメオリカ・TF仕様)
レベル4 攻撃0 守備0 効果 闇属性 戦士族
「スカブ・スカーナイト」は自分フィールド上に1枚しか表側表示で存在できない。
(1):このカードは戦闘では破壊されない。
(2):このカードが表側守備表示で存在する場合、このカードを破壊する。
(3):攻撃可能な相手モンスターはこのカードに攻撃しなければならない。
(4):バトルフェイズ終了時にこのカードと戦闘を行った相手モンスター1体のコントロールを得る事ができる。
「君の《プロディジー・モーツァルト》の特殊召喚効果はとても厄介だからね。封じさせてもらうよ」
「そんな…」
コントロールを奪われた《幻奏の音姫プロディジー・モーツァルト》をじっと見つめる。
仮に《幻奏の音女アリア》を《独奏の第1楽章》か《幻奏の音姫プロディジー・モーツァルト》の効果で特殊召喚できれば、《スカブ・スカーナイト》の効果を受けることはなかっただろう。
しかし、手札にない以上はどうしようもない。
《独奏の第1楽章》の効果で特殊召喚するという選択肢もあるが、それでは1ターンキルできるくらいモンスターを展開できない。
エースカードを奪われるという最悪な事態を招いてしまった。
「柊柚子さん、《スカブ・スカーナイト》は君の戦う覚悟を試す大きな壁だ。そして、このカードを…私の魂のカードを倒さない限り、君に勝利もランサーズに加わる道もない」
「うう…」
《スカブ・スカーナイト》に睨みつけられ、2体の幻奏モンスターが身震いする。
「あたしはカードを2枚伏せて、ターンエンド!」
スティーラー
手札2
ライフ4000
場 スカブ・スカーナイト レベル4 攻撃0
幻奏の音姫プロディジー・モーツァルト レベル8 攻撃2600
スピリットバリア(永続罠)
伏せカード1
柚子
手札0
ライフ4000
場 幻奏の音女エクローグ レベル4 攻撃2100
幻奏の音女ソナタ レベル3 攻撃1700
伏せカード2
「全く、相変わらずえげつないプレイだぜ、スティーラーの奴!」
実況室で観戦しているガーダーは初めて彼とデュエルをしたときのことを思い出す。
その時も《スカブ・スカーナイト》によって次々とモンスターを奪われ、窮地に陥ってしまった。
最終的には勝利したものの、今までにない恐ろしいデッキであることを今でも覚えている。
「私のターン、ドロー」
スティーラー
手札2→3
「私はモンスターを裏守備表示でセット、バトルだ。《スカブ・スカーナイト》で《幻奏の音女ソナタ》を攻撃」
《スカブ・スカーナイト》の装甲から剥離した破片が《幻奏の音女ソナタ》に襲い掛かる。
「(せめて戦闘ダメージだけでも!!)あたしは罠カード《砂塵の大竜巻》を発動!相手フィールド上の魔法・罠カード1枚を破壊するわ!」
「よし!!それで《スピリットバリア》を破壊すれば、柚子の勝機が見えてくる!!」
砂漠の砂を巻き込んだ竜巻がスティーラーを包む透明な障壁を破壊しようと襲い掛かる。
「おみとおしだよ。私は永続罠《宮廷のしきたり》を発動。これでお互いのフィールド上に存在する《宮廷のしきたり》以外の永続罠は破壊されなくなる」
「ええ!?」
《宮廷のしきたり》がスティーラーの前に出現し、《砂塵の大竜巻》が消滅する。
そして、剥離した装甲が体中についてしまった《幻奏の音女ソナタ》が苦しみ始める。
「さあ、まだ攻撃があるよ。《幻奏の音姫プロディジー・モーツァルト》よ、《エクローグ》を攻撃しろ!」
《幻奏の音姫プロディジー・モーツァルト》の赤い瞳の輝きが強まると、《幻奏の音女エクローグ》に向けて真っ黒な音符が何個も含まれた波動を発射する。
「まずい!!この攻撃が通ったら、柚子のフィールドからモンスターがいなくなる!!」
「あたしは罠カード《ガード・ブロック》を発動!あたしが受ける戦闘ダメージを0にし、デッキからカードを1枚ドローするわ」
波動を受けた《幻奏の音女エクローグ》が消滅するが、柚子の前でその波動が消滅する。
「《エクローグ》が相手モンスターの攻撃によって破壊され墓地へ送られた時、墓地から幻奏モンスター1体を手札に加え、更にデッキから《融合》を1枚手札に加えるわ」
デッキから《融合》が、墓地から《幻奏の音女セレナ》が自動排出されて柚子の手札に加わる。
柚子
手札0→3(うち2枚《幻奏の音女セレナ》《融合》)
「手札は増えたが、これでまた1体君のモンスターは奪われる。私はバトルフェイズを終了する」
終了宣言と同時に、苦しんでいた《幻奏の音女ソナタ》の目の色が赤く染まり、スティーラーのフィールドへ向かう。
幻奏の音姫プロディジー・モーツァルト レベル8 攻撃2600→3100
「くそ…!《ソナタ》が奪われたことで、スティーラー殿のフィールドにいる《プロディジー・モーツァルト》が強化されてしまった!」
「柚子の手札には《融合》があるけど、残り1枚の手札かドローしたカードが融合素材になれるモンスターでなきゃ意味がない!!」
2体のモンスターを従えたことを喜んでいるのか、《スカブ・スカーナイト》が空に向けて咆哮する。
それと共に、奪った2体のモンスターが赤いオーラを放つ。
「私はカードを2枚伏せ、手札から魔法カード《スカブ・ブラスト》を発動。私のフィールド上に《スカブ・スカーナイト》が存在するとき、私のフィールド上に存在するモンスター1体につき200のダメージを与える」
《スカブ・スカーナイト》の口が開き、赤い光弾が柚子を襲う。
「きゃあああ!!」
柚子
ライフ4000→3400
「私はこれでターンエンド」
スティーラー
手札3→0
ライフ4000
場 スカブ・スカーナイト レベル4 攻撃0
幻奏の音姫プロディジー・モーツァルト レベル8 攻撃3100
幻奏の音女ソナタ レベル3 攻撃1700
スピリットバリア(永続罠)
宮廷のしきたり(永続罠)
伏せカード2
柚子
手札3(うち2枚《幻奏の音女セレナ》《融合》)
ライフ3400
場 なし
再び柚子のフィールドからカードが消えた。
そして、スティーラーのフィールドにある2枚の伏せカードが柚子の平常心を乱す。
(もしこの2枚のカードが《宮廷のしきたり》みたいなカードか、永続罠カードだったら…)
そんな彼女の心境を見透かしたのか、スティーラーが発言する。
「どうしたのかな?次々と自分のモンスターが奪われて、どうようしているのかな?それともこの伏せカードが気になるのかい?」
「あたしのターン、ドロー!!」
スティーラーの言葉を遮るように、柚子はカードを引く。
柚子
手札3→4
「あたしは《クリスタル・ローズ》を召喚!」
クリスタルでできていて、茎部分が透明になっている薔薇の造花が現れる。
クリスタル・ローズ レベル2 攻撃500
「このカードは1ターンに1度、手札・デッキからジェムナイトモンスターが幻奏モンスター1体を墓地へ送ることで、そのモンスターに変身できる!」
柚子のデッキから《幻奏の歌姫ソプラノ》が自動排出され、彼女の墓地へ送られる。
すると、《クリスタル・ローズ》の姿が墓地へ送られたモンスターの姿に、クリスタルの状態を維持しながら変化していく。
オレンジ色で描かれた左右対称のクエスチョンマークの上部分2つが前足のひざ部分にある白いロングスカートと同じ色のラインがいくつもある黒い胸元と両腕、首を露出させた鎧、同じ色のアイマスクに肩パット、アームガード。
緑色の肌に赤い癖の多い長髪とその再現度はかなりのものだ。
「そしてあたしは手札から魔法カード《融合》を発動!あたしが融合素材にするのは《クリスタル・ローズ》と《幻奏の音女セレナ》!!騎士より託されし水晶の薔薇よ!天使の囀りよ!タクトの導きにより力重ねよ!」
上空に発生した《融合》の渦に2体のモンスターが溶けこんでいく。
そして、柚子は目を閉じて左掌を自身の右胸へ置き、右手をタクトを握っているような状態にして少しひじを曲げた状態で前に出す。
「融合召喚!!」
召喚宣言と同時に目を開き、左手の状態を維持しながら右腕を頂角から三角形を一筆書きをするように動かす。
そして、一筆書きを終えると同時に少しだけ右腕を上に動かしてから手をひろげ、体と腕が垂直になるように前へ出す。
それと同時に渦が激しい光を放つ。
「今こそ舞台に安らぎの序曲を!《幻奏の音姫プレピュード・デビュッシー》!」
渦の中から夕陽をイメージさせるオレンジ色の髪で顔全体を麦の色の仮面で隠した女性が現れる。
黒い渦のような模様が印象的な純白でハイネックになっている長いドレスと白い手袋で、《幻奏の歌姫ソプラノ》とは異なる少し清楚な雰囲気を見せている。
靴は茶色く丈夫な革の長靴になっていて、全身をどこから見ても肌の色がわからない。
幻奏の音姫プレピュード・デビュッシー レベル7 攻撃2400
「《プレピュード・デビュッシー》の効果発動!このカードの特殊召喚に成功した時、相手に1000ダメージを与えることができる!微睡のフルート!」
《幻奏の音姫プレピュード・デビュッシー》の仮面の口元部分が開き、その口にフルートを咥える。
それを吹くと、子守唄のような安らかな音がフィールドを包み込んでいく。
スティーラー
ライフ4000→3000
「更にこのカードが《ソプラノ》を素材に融合召喚されている場合、1ターンに1度、相手フィールド上の魔法・罠カードを2枚破壊できる!あたしが選択するのは左側の伏せカードと《宮廷のしきたり》!!」
上空から降りてきたヴァイオリンを手に取った《幻奏の音姫プレピュード・デビュッシー》は静かに音を奏でる。
その音は最初は静かだったが、突然鎌鼬を引き起こす。
風の刃は2枚の魔法・罠カードを真っ二つにする。
しかし、伏せカードの方から鎌鼬が発生して《幻奏の音姫プレピュード・デビュッシー》をヴァイオリン毎真っ二つに切り裂く。
その鎌鼬が通ったところの地面には砂漠の砂が落ちている。
「なんで《プレビュート・デビュッシー》が破壊されたの!?」
「君が破壊した伏せカードは《荒野の大竜巻》。セットされているこのカードが破壊され墓地へ送られた時、フィールド上に表側表示で存在するカード1枚を破壊するのさ。私の伏せカードに警戒しすぎたみたいだ」
「うう…」
虎の子の融合モンスターを容易く破壊されてしまったことのショックは大きく、柚子が動きを止める。
幻奏の音姫プレピュード・デビュッシー
レベル7 攻撃2400 守備2000 融合 光属性 天使族
「幻奏」モンスター×2
「幻奏の音姫プレピュード・デビュッシー」の(1)(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。
(1):このカードの特殊召喚に成功した時に発動できる。相手に1000ダメージを与える。
(2):このカードが「幻奏の歌姫ソプラノ」を融合素材として融合召喚に成功した場合、以下の効果を得る。
●自分のターンのメインフェイズ時に発動できる。相手フィールド上に存在する魔法・罠カードを2枚破壊する。
「まずい…これで次のターンに総攻撃を受ける!!」
「柚子…」
ここから状況を立て直さなければならない柚子だが、手札は1枚のみ。
その1枚が攻撃を防ぐカードでなければ、彼女は敗北する。
「あたしは…カードを1枚伏せて、ターンエンド」
スティーラー
手札0
ライフ3000
場 スカブ・スカーナイト レベル4 攻撃0
幻奏の音姫プロディジー・モーツァルト レベル8 攻撃3100
幻奏の音女ソナタ レベル3 攻撃1700
スピリットバリア(永続罠)
伏せカード1
柚子
手札4→0
ライフ3400
場 伏せカード1
「私のターン、私は墓地の《スカブ・ブラスト》の効果を発動。私のターンのドローフェイズ時、通常のドローを行う代わりにこのカードを墓地から手札に戻すことができる」
スティーラーの墓地から《スカブ・ブラスト》が排出される。
これは毎ターンじわじわと柚子のライフを削ることができるというメッセージでもある。
スカブ・ブラスト(アニメオリカ・調整)
通常魔法カード
(1):自分フィールド上に「スカブ・スカーナイト」が存在する場合にのみ発動できる。自分フィールド上に表側表示で存在うするモンスターの数×200ダメージを相手ライフに与える。
(2):このカードが墓地に存在する場合、自分のターンのドローフェイズ時に発動できる。通常のドローを行う代わりにこのカードを手札に加える。
「バトルだ。私は《プロディジー・モーツァルト》でダイレクトアタック!」
《幻奏の音姫プロディジー・モーツァルト》のタクトから放たれる音符つきの波動が柚子を襲う。
「きゃあああ!!」
柚子
ライフ3400→300
「柚子!!」
直接攻撃を受け、悲鳴を上げる柚子を見て遊矢が叫ぶ。
その間にも《幻奏の音女ソナタ》は既に攻撃準備を終えている。
「さあ、この攻撃を防がないと君はランサーズに入ることができなくなる。《ソナタ》でダイレクトアタック!」
《幻奏の音女ソナタ》の口からとどめの音波が放たれる。
「あたしは罠カード《輪舞の第2楽章》を発動!あたしが直接攻撃でダメージを受けたとき、デッキから受けたダメージ以下の攻撃力を持つ幻奏モンスター1体を特殊召喚できる!あたしが特殊召喚するのは《幻奏の音女アリア》!!」
《幻奏の音女アリア》が現れると同時に歌い始める。
楽譜を模した障壁が歌と共に柚子を包み込んでいく。
幻奏の音女アリア レベル4 攻撃1600
「そして、ターン終了時まであたしはこの効果で特殊召喚したモンスターの攻撃力以下の戦闘ダメージと効果ダメージを受けないわ。そして、特殊召喚された《アリア》が存在する限り、あたしのモンスターはカード効果の対象にならず、戦闘では破壊されないわ」
輪舞の第2楽章
通常罠カード
(1):相手モンスターの直接攻撃によって自分が戦闘ダメージを受けたときに発動できる。受けたダメージ以下の攻撃力を持つ「幻奏」モンスター1体をデッキから表側攻撃表示で特殊召喚する。この効果で特殊召喚に成功したターン、自分はそのモンスターの攻撃力以下の戦闘・効果ダメージを受けない。
「よし!!これで柚子のモンスターが《スカブ・スカーナイト》の効果で奪われることは…」
このターンの敗北が回避されたことで遊矢は安堵する。
しかし、現実はそれほど甘くはない。
「私は罠カード《奈落の落とし穴》を発動。攻撃力1500以上のモンスターを相手が召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時、そのモンスターを破壊し、ゲームから除外する」
「ええ!!?」
急に柚子のフィールドに現れた紫色の空間で構築された落とし穴。
《幻奏の音女アリア》はその中へ落ちていくと、バシュンという音と共に穴が消滅した。
「これでまた君のフィールドからモンスターがいなくなった。そして…《ソナタ》の音波はまだ消えていないよ?」
スティーラーの言うとおり、柚子が動揺している間に《幻奏の音女ソナタ》の音波が彼女を包む障壁にひびを入れていく。
《輪舞の第2楽章》の効果で防げるダメージは1600以下のみ。
攻撃力1700のこの攻撃によるダメージを防ぐことはできない。
「柚子----!!」
「あたしは墓地に存在する《幻奏の音女エクローグ》の効果を発動!あたしの墓地に幻奏融合モンスターが存在し、あたしの手札が0枚で相手がダイレクトアタックするとき、このカードを墓地から特殊召喚することでその攻撃を無効にするわ!」
《幻奏の音女エクローグ》が上空に現れた紫色の魔法陣から出てきて、柚子を襲う音波を自身の音波で相殺する。
幻奏の音女エクローグ
レベル4 攻撃1600 守備1200 効果 光属性 天使族
「幻奏の音女エクローグ」の(1)の効果は1ターンに1度しか発動できず、(2)の効果はデュエル中1度しか発動できない。
(1):このカードが相手モンスターの攻撃によって破壊され墓地へ送られた時に発動する。自分の墓地に存在する「幻奏」モンスター1体とデッキに存在する「融合」魔法カード1枚を手札に加える。
(2):このカードと「幻奏」融合モンスターが墓地に存在し、自分の手札が0枚の場合、相手の攻撃宣言時に発動できる。このカードを墓地から特殊召喚し、その攻撃を無効にする。
「では…《スカブ・スカーナイト》で《エクローグ》を攻撃」
最後まで待機していた《スカブ・スカーナイト》が咆哮と共に装甲を剥離させ、《幻奏の音女エクローグ》に向けて飛ばす。
装甲が体中に付着した彼女が苦しみながらスティーラーのフィールドへ向かっていく。
「くそ!!また柚子のモンスターが奪われた!!」
「私はこれで…ターンエンド」
スティーラー
手札1(《スカブ・ブラスト)
ライフ3000
場 スカブ・スカーナイト レベル4 攻撃0
幻奏の音姫プロディジー・モーツァルト レベル8 攻撃3100
幻奏の音女ソナタ レベル3 攻撃1700
幻奏の音女エクローグ レベル4 攻撃1600→2100
スピリットバリア(永続罠)
柚子
手札0
ライフ300
場 なし
これで柚子は3体モンスターを奪われてしまった。
おまけにライフ300でフィールドにカードはなく、手札も0。
まさに絶体絶命だ。
「分かっていると思うけれど、私の手札は《スカブ・ブラスト》で魔法・罠ゾーンには《スピリットバリア》以外のカードは存在しない。《ブレイクスルー・スキル》や《ネクロ・ガードナー》のような墓地で真価を発揮するカードもない。反撃するなら今しかないよ」
とはいうものの、《スカブ・スカーナイト》に攻撃してもダメージは0で、更にはコントロールまで奪われてしまう。
(どうするんだ…柚子?)
遊矢はじっと柚子を見る。
(確かにこのターンで勝たないと、《モーツァルト》か《スカブ・ブラスト》で負けてしまう。すべてはこのドローにかかってる!)
柚子がデッキトップに指をかけ、目を閉じる。
「(あたし、遊矢と一緒に戦いたい。だから…応えて、あたしのデッキ!!)ドローーー!」
目を開くと同時に思いっきりカードをドローする。
柚子
手札0→1
「このカード…!」
ドローしたカードを見て、柚子は目を大きく開く。
これは昨晩、柚子がランサーズに入ると遊矢に言った後のことだ。
「柚子。このカードを」
「え…?」
遊矢から差し出されたカードを手にし、びっくりした表情を見せる。
「遊矢これって!?」
「このカードなら、きっと柚子を助けてくれる。一緒に戦う証だ!」
(遊矢…)
不意に彼女の目線が遊矢に向く。
そして、互いにうなずくと柚子の目線が再びスティーラーに向く。
「あたしは手札から魔法カード《マジシャンズ・カード》を発動!あたしのフィールドにカードがなく、手札がこのカードだけの時、相手フィールド上に存在するカードの数だけデッキからカードをドローして、手札のカードを相手に見せるわ!」
スティーラーのフィールドに存在するカードは合計5枚。
このカード1枚によって、情報アドバンテージを与えてしまうものの柚子の手札が一気に補充される。
柚子
手札0→5
ドローしたカード
・光神化
・幻奏の音姫ローリイット・フランソワ
・融合
・アテナ
・純愛のタランテラ
「あたしは手札から速攻魔法《光神化》を発動!手札から天使族モンスター1体を攻撃力を半分にして特殊召喚する!あたしは《ローリイット・フランソワ》を特殊召喚!」
ピアノの音とともに胸元に薔薇を模した模様のある紫色の長いドレスで薄い紫の肌、そして左右に2つのロールがある青い髪の女性が現れる。
背中には《幻奏の音姫プロディジー・モーツァルト》と同じ羽根があり、自分の目の前に透明なピアノを召喚してそれを奏でる。
幻奏の音姫ローリイット・フランソワ レベル7 攻撃2300→1150
「《フランソワ》の効果発動!1ターンに1度、墓地から天使族・光属性モンスター1体を手札に加えることができる。あたしは墓地から《幻奏の歌姫ソプラノ》を手札に加える。そして、手札から魔法カード《融合》を発動!
あたしが融合素材にするのは《ソプラノ》と《フランソワ》!!」
上空に再び現れた《融合》の渦。
その中に2体のモンスターが取り込まれていく。
「天使の囀りよ!情熱を歌いしピアノの詩人よ!タクトの導きにより力重ねよ!融合召喚!今こそ舞台に勝利の歌を!《幻奏の華歌聖ブルーム・ディーヴァ》!」
《融合》の渦から出てくるハスの花。
その花に乗って水色でノースリーブの長いドレスを身に着けた、水色は混じった紫の髪で星形の飾りがついたピアスを両耳に着けた青い眼の妖精が現れる。
その大きさは少なくとも《幻奏の音姫プロディジー・モーツァルト》の三分の一から半分程度ほどだ。
幻奏の華歌聖ブルーム・ディーヴァ レベル6 攻撃1000
「更にあたしは手札から魔法カード《純愛のタランテラ》を発動!あたしのフィールド上に幻奏モンスターが存在するとき、相手フィールド上に存在するモンスター1体の効果をターン終了時まで無効にするわ!」
「何!?」
《幻奏の華歌聖ブルーム・ディーヴァ》が花の上で踊り始める。
すると、《スカブ・スカーナイト》もそのモンスターにつられて踊り始め、能力を踊りによって奪われていく。
「更に《純愛のタランテラ》の効果を発動!発動時にあたしのフィールドに《ブルーム・ディーヴァ》が存在するとき、そのモンスターは攻撃力がターン終了時まで0になり、このターンのバトルフェイズ中2回攻撃ができるわ!」
「だが、《ブルーム・ディーヴァ》の攻撃力は1000…とはいうものの、効果があるのだろう?私を倒すための効果を…」
「《ブルーム・ディーヴァ》は破壊されず、このカードの戦闘で発生するあたしへのダメージを0にするわ。そして、相手モンスターと戦闘を行ったダメージ計算終了時にそのモンスターとの元々の攻撃力の差分のダメージを相手に与え、攻撃対象にしたモンスターを破壊するわ!」
「見事だよ、柊柚子さん」
「さあ、幻奏モンスターによるコンサートの始まりよ!!」
《幻奏の華歌聖ブルーム・ディーヴァ》がハスの花びらを周囲に舞わせながら、静かに歌い始める。
その歌が2体のコントロールを奪われたモンスターの心に安らぎを与え、彼らを束縛する装甲がフィールドに落ちる。
《幻奏の音姫プロディジー・モーツァルト》と《幻奏の音女エクローグ》が柚子のフィールドに戻ると、《幻奏の華歌聖ブルーム・ディーヴァ》を中央にし、《幻奏の音姫プロディジー・モーツァルト》を柚子から見て右、《幻奏の音女エクローグ》を左にして手を取り合って歌う。
3体の歌によって装甲から解放された《幻奏の音女ソナタ》も《幻奏の音姫プロディジー・モーツァルト》の隣へ行って歌い始める。
4体のモンスターの歌によって《スカブ・スカーナイト》は戦意を失い、その場に座り込んだ。
「私の…負けだ」
幻奏の華歌聖ブルーム・ディーヴァ レベル6 攻撃1000→0
スティーラー
ライフ3000→400→0
マジシャンズ・カード(アニメオリカ・調整)
「マジシャンズ・カード」は1ターンに1度しか発動できず、(1)の効果を他のカード効果によって発動することができない。
(1):手札がこのカード1枚で、自分フィールドにカードが存在しない場合に発動できる。相手フィールドのカードの数だけ、自分はデッキからドローする。その後、手札を相手に見せる。このターン終了時、自分フィールドの全てのカードを除外する。
純愛のタランテラ
通常魔法カード
(1):自分フィールド上に「幻奏」モンスターが存在する場合にのみ発動できる。相手フィールド上に存在するモンスター1体の効果をターン終了時まで無効にする。
(2):このカードを発動した時、自分フィールド上に「幻奏の華歌聖ブルーム・ディーヴァ」1体が存在する場合、そのモンスターの攻撃力はターン終了時まで0となり、このターンのバトルフェイズ中、そのモンスターは2回攻撃することができる。
「見事だ。ギリギリといったところだけど、これならあと少し訓練すれば融合次元とも戦うことができるだろう。テストは合格だ。おめでとう」
優しげな笑みを浮かべるスティーラーが静かに柚子の合格を祝う。
「やりおった!!」
「やったな、柚子!!」
身を乗り出した遊矢が柚子の勝利を祝う。
彼女は遊矢に顔を向けると、とびきりの笑顔でVサインをした。
今回は久しぶりに柚子のデュエルです。
《スカブ・スカーナイト》…本当はもう1枚のスカーナイトも出したかったですが、まあそれは次の機会ということで。