遊戯王ARC-V 戦士の鼓動   作:ナタタク

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第41話 尋問と白い事実

「ほら、特等席だ」

「うわあ!!何が特等席だ!?めちゃくちゃくっせえぞ!!」

翔太に片手で持ち上げられ、投げ飛ばされたのは路地裏にある黒いごみ袋の山。

中身の腐った魚の骨や野菜、果物の皮が出てきて、悪臭がユーゴの鼻につく。

「おいおい、お仲間を臭いというなよ。バナナ」

「バナナじゃねえ、ユーゴだ!!」

「お前の本名なんて知らないな。じゃあ、話してもらうぜ。シンクロ次元と融合次元の関係をな」

「融合じゃねえ、ユーゴだ!!」

「誰もお前を融合なんて言ってねえよ、バーカ」

反射的に融合に反応したユーゴを馬鹿にしつつ、懐から前にオベリスクフォースから鹵獲したデッキを見せる。

「こいつは…?」

「融合次元のデッキだ。こいつは見たことあるか?」

デッキの中から《古代の機械猟犬》とそのモンスターに関連する融合モンスターをユーゴに見せる。

「…いいや、見たことねーな。にしても、融合モンスター…初めて見たぜ」

「初めて見た…ってことは、シンクロ次元は融合次元と関係がないってことか?」

「ああ。って、そもそも融合次元って何だよ?それに、ここはどこの次元なんだよ??」

キョロキョロ周囲を見ながら、首をかしげる。

目や体の動きを見て、そして彼自身の性格を見ると嘘を言っていないようだ。

「ここはスタンダード次元だ。融合次元と戦争中だ」

「せ、戦争!?にしては…静かだな」

「撤退したからな。で…なんでお前は次元を飛び越えてんだ?その目的は?」

シンクロ次元と融合次元が無関係であることが分かった以上、翔太が次に聞きたい質問はそれだ。

融合次元のデュエリストやユーゴがどのようにして次元を超えたのか、その術を知りたいのだ。

分かっていることとしたら、素良がやったようにデュエルディスクに備え付けられている装置を起動して次元を移動したということ程度だ。

また、シンクロ次元と融合次元が無関係であるならば、ユーゴには次元を越える理由はないはずだ。

「それは…探してんだよ、幼馴染を…」

「幼馴染?」

「ああ!さらわれたんだ、異次元のデュエリストに!!だから次元を越えて探してんだ!」

「…で、その幼馴染は!」

「こいつだ。名前はリン!」

懐から写真をだし、翔太に見せる。

緑のボブヘアーで茶色い瞳であること以外、背丈と顔立ちは柚子とセレナに似ている。

服装は青と白とピンクのトリコロールのライダースーツで、右腕には構造は良くわからないが2人と同じようにブレスレッドをつけている。

写真を見せられた翔太はにやりと笑う。

「な、なんだよ!?」

「女の写真を懐に…痛い奴だな、バナナ」

「てんめえ…俺をどこまでおちょくったら…」

青筋を立てて、怒りはもはや頂点に立つ寸前になっている。

そんな彼の心境をわざと無視し、翔太の尋問は続く。

「で、どうやって次元を越えてんだ?」

「こいつのおかげだよ」

デッキケースから《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》を取り出し、翔太に見せる。

「リンは俺そっくりの顔の奴にさらわれた。こいつはリンがさらわれた時に出てきたんだ。そして、こいつの力で次元を越えてる。で、最初に着いたのがエクシーズ次元だ。そこでまた俺そっくりの顔で、黒い服の奴と会った…」

「で、エクシーズ次元がリンをさらったと早とちりして交戦。融合の手先とみなされた…か?」

黒咲から聞いた話によると、エクシーズ次元にいたころにユートとユーゴが交戦した。

その時黒咲は妹である瑠璃という少女を遊矢そっくりの少年にさらわれていて、現れたユーゴを犯人と誤解してしまった。

ユーゴもまた、同じような誤解をした結果、融合次元から見れば都合のいいつぶし合いをすることになってしまった。

それが融合の手先疑惑の真相のようだ。

「バナナ、お前が戦ったエクシーズ次元のデュエリストは犯人じゃない。犯人は今お前に渡しているデッキの持ち主、融合次元のデュエリストだ」

「何!?じゃあ…エクシーズ次元は敵じゃなかったのかよ!?」

「そうだ。で、あの黒い服を着た奴はユートで、そいつも仲間を融合次元のデュエリストにさらわれている」

「嘘だろ…?」

翔太から言われた事実にユーゴが頭を抱える。

今まで次元を何度も越えたものの、行ったことのある次元はこことエクシーズ次元、シンクロ次元のみでなぜか融合次元へ飛んだことがない。

まるで《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》が融合次元自体を避けているかのように…。

「今、スタンダード次元では融合次元と戦うための組織、ランサーズを結成している。仮にその写真の女を助けたいんなら、俺からボスに掛け合ってもいい」

「そのランサーズってところに入れば、リンを助け…!!?」

急にユーゴの《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》のカードが白く光り始め、それと同時にユーゴと彼のDホイールも同じ色の光に包まれていく。

「お、おい!?ちょっと待てよ、《クリアウィング》!!俺はまだ飛ぶ訳にはいかないんだ!!」

「バナナ、何してんだ?」

「バナナじゃねえユーゴだ!!待ってくれ!俺はランサーズに…!!」

必死な願いもむなしく、白い光と共にユーゴが消えてしまう。

彼のDホイールも共に…。

「ちっ…あいつ。鹵獲したデッキを持っていきやがって…」

消えたとき、ユーゴは融合次元のデュエリストのデッキを持ったままだった。

ユーゴに見せた融合モンスターカードは翔太の手元に残っているものの。

(遊矢に顔立ちの似ている奴がこれで3人。柚子は4人、ってことは、もう1人いるってことだな…遊矢そっくりの奴が)

遊矢、ユート、ユーゴのデッキには召喚法の名前の入った竜を持っている。

なぜ遊矢と柚子に似た人物がどの次元にも存在するのか?

そして、彼らにどのような関係があるのか?

(少なくとも、シンクロ次元は敵じゃないということは分かった。零児には良い手土産になりそうだ)

「翔太くーーん!!」

「ん…?」

伊織の声が聞こえ、少しうんざりした表情を見せながら路地裏から出てくる。

「翔太君、なんでここにいるの??ずーっと施設に戻ってきてないから、心配したぞー?」

伊織はデュエルディスクのマップ画面を翔太に見せる。

マップには翔太のマシンキャバルリーのある場所にマークがついていた。

ランサーズのメンバーのデュエルディスクやDホイールにはGPS機能が搭載されていて、そのメンバーにのみ居場所が全員認知できるようになっている。

「野暮用だ。…で」

翔太は伊織の後ろにいる2人の少女に目を向ける。

セレナと柚子で、2人ともなぜか顔を真っ赤にしている。

「なんでその2人が一緒にいるんだ?ソフトボールの助っ人に行っていたんじゃなかったのかよ?」

「ええっと、それは…」

目をうろうろさせながら、顔に汗を出す。

そのことから、助っ人の話が嘘だったことがわかる。

「…で、本当は何をしていたんだ?」

 

一方、ここは舞網市とは全く異なる場所。

ボロボロなコンクリートでできた廃ビルや工場、ツギハギのあるブルーシートが屋根代わりとなっているバラック、十数年前から整備されていない、ひび割れや凸凹のある道路。

上を見上げると青い反りのある気取ったデザインの柱に支えられたハイウェイがあり、その先にはいくつもの同じ柱に支えられた空中都市のような構造物が存在する。

その都市は地上とは異なり、豪華な屋敷やスタジアム、そして高さ200メートル以上が当たり前の超高層建築物がいくつもあり、地上との格差を如実に表している。

この、公共サービルのかけらもない地上の片隅で小さな事件が起こっていた。

「あーあー、なんでわざわざこんなところをでテスト走行しなきゃならないんだー?」

「言うなよ、どうせ上の道はお偉いさんの皆様専用だ」

「けっ!エリートとは違い、俺たちは丘でウロウロかよ」

真夜中のボロボロな道路の上を走る青い1000キロ近い重さと20メートル後半くらいの全長があるであろうトレーラーをけん引する同じ色のトラックが走っている。

トレーラーの側面とトラックの前面には白くSEQURITYという文字が書かれている。

先程話している2人は緑色のジャケットでオレンジ色のスカーフを首に巻き、左胸部分に五芒星が中央に描かれている金色の横長長方形のバッジをつけている。

頭部は白と青が基調のヘルメットをつけ、目は黒いサングラスで隠されているために肌が白いという共通点以外、顔や体格の特徴の判別をつけることができない。

「にしても、こんなにでかいトレーラーが何で必要なんだ?」

「なんでもコモンズにいる俺たち治安維持局に反抗的な奴らを摘発するための前線基地にするんだとさ」

「はっ!といってもよぉ、反抗的なのはトップスの貴族様に対してだろ?全く、俺たちは汚れ役かよ?」

助手席に座る男がうんざりしながら外の景色を見る。

そんな彼を同情しながら、運転席の男が運転席の付けられている無線通信機を起動する。

「こちらトレーラー。テスト走行はあと1キロ走行で終了。これより、ピットへの帰路につく、以上」

通信を切ると同時に天井部分から大きな音がする。

「なんだ!!?」

「おいおい、コモンズのいたずらか??」

今走行している場所には何軒か廃棄されたビルが存在し、そこから物を投げればトレーラーの天井にぶつけることは可能だ。

「はあ…仕方ねえな!!」

2人の男がトレーラーから降り、右側にあるビルを手持ちのライトで照らす。

壁が崩れていて、外から見ても誰かがいると丸わかりになるのだが、誰の姿も見えない。

「おっかしいなぁ…一体何が??なあ、何か見え…!?」

運転していた男が右隣にいる助手席の男に目を向けると、そこには彼がうつぶせで倒れていた。

「お、おい…何寝てるんだ??おい!!」

何が起こったのかわからず、周囲を見渡そうとすると、背後から冷たい気配を感じる。

身動きを止め、静かに唾を飲む。

「お、お前…コモンズか!?セキュリティに反抗すると、収容所送りになるぞ??」

「…」

背後にいると思われる人物は応答することなく、右手に持っている銃の撃鉄をおろし、彼の背中に向ける。

「や、やめろ…!!俺は治安維持局の…!!!」

言い終わらないうちに銃弾が背中にぶつかり、男は静かに倒れた。

隣に倒れている仲間と同じように。

「安心しろ、ゴム弾だ」

銃を持った男は運転手の懐から車の鍵とデッキを抜き取る。

そして、もう1人の男のデッキを奪うと、気絶している2人を建物にあるゴミ箱に隠す。

更に実弾を使って、2人が装備していたヘルメットの通信装置を破壊した。

「そのトレーラー、使わせてもらう」

トレーラーに乗り、静かに発進させる。

2代目の運転手は黒いベースボールキャップをかぶり、紺色のスカーフで口と鼻を隠している。

また、上半身を茶色いジャケットコートで包み、下半身は青いデニムパンツを穿いている。

そして、わずかに存在する街灯に照らされた彼の瞳の色はモスグリーンだ。

トレーラーはピットへの道を反転し、暗い街の中へ消えていく。

治安維持局に新型トレーラーが消息を絶ったという連絡が届いたのは、その事件から1時間後のことだった。

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