「…」
3人の意見を聞いた翔太が冷蔵庫を開け、ビンに入ったコーラを1本がぶ飲みする。
そして、ビンをゴミ箱に投げ込んだ後で全員の前で自分の決断を口にする。
「奇襲だ」
「よっしゃ!」
「ブー、パン食べたかったのにー」
「キュイー」
意見を聞いてもらえて喜ぶ漁介に対して、伊織は不満げな表情を見せる。
そんな彼女を励ますように、ビャッコがみたらし団子を差し出す。
「鷹栖区にいるギャングはコモンズにある唯一の港を抑えている。セキュリティよりも先に手にすることでそいつらへのいいアピールにもなるだろう」
紙を出したモハメドが鉛筆で地図を書き始める。
覚えている範囲の物であるため、かなり大雑把なものだ。
だが、分かることはそこが2階建ての建物であり、周囲を囲むように塀があること、そして南の正門と北の裏門が存在することだ。
「ギャングチーム、ホイールズはリーダーは塀の向こう側だが、人数は20人近い。少なく見積もっても3倍の人数と戦うことになる。そして、門は2つ。さあ…どうやって奇襲する?」
楽しそうに語るモハメドはもう1度タバコを吸うために一度トレーラーから出ていく。
一方、柚子と里香、伊織の3人は晩御飯の支度をしにキッチンへ行く。
そして、翔太たちによる話し合いが始まる。
「奇襲するとなったら、時間ははー夜一択じゃな」
「どうだろうな、夜は見回りの奴らがいる。それに、この手を使えば少なくとも6人で10人のギャングと戦える状況に持ち込むことができる」
「6人…??ええ??」
なぜ6人なのかと疑問に思う伊織。
デュエルができるシェイドのメンバーはモハメドを除くと7人だ。
「で…奇襲にちょうどいい代物もあるからな」
にやりと笑う翔太の脳裏には既に奇襲のプランが出来上がっていた。
そして、その2日後の鷹栖区…。
「ふあああ…おい北野。そっちはどうなんだ?」
黒いヘルメットとゴーグルで両目と頭を隠した茶色いツナギの男性が面倒臭そうにトランシーバーを使って通信をする。
(ああ、南出。北も異常なしだぜ。くそ…!リーダーがドジ踏まなけりゃあ今頃は…)
「落ち着けよ。終わったら一杯やろうぜ」
通信を切った南出が目の前の大通りに目を向ける。
背後には放棄された病院施設があり、それをアジトとして利用している。
今のシンクロ次元の季節は夏、気温は30度を超えていて、下着は汗でビッショリ濡れている。
もうすぐだ、あと20分経てば交代の時間になり、先日やっと治ったクーラーの効いた部屋で交易によって手に入れた冷たいビールを飲むことができる。
これまでは港で手に入れた物資のほとんどがリーダーの所有物になるか、闇市で売り飛ばされてきた。
この後の休みで飲むことができれば、それは1年ぶりのビールとなる。
つまみとして柿ピーや枝豆を食べようかと考える南出の思考を停止させる事態がすぐに起こる。
「ん…なんだ、あのデカブツは??」
目の前にある大きな一本道を走る灰色のトレーラー。
ここからは自分のいる正門を除くと左右にしか道がないにもかかわらず、アクセル全開で直進している。
「あのトレーラー…まさか!!?」
嫌な予感を感じた南出が大急ぎで正門から離れる。
すると、トレーラーはそのまま正門に入り、アジトの入り口ギリギリのところで停車した。
「な、なんだってんだ??あのトレーラー、運転手がイカれたのか??」
南出とトレーラーに気付いた5人のメンバーがトレーラーを囲む。
「別にイカれてねーよ」
その声と同時に運転席側のドアが開き、それがそのドアの近くにいた男を突き飛ばす。
そこから出てきた翔太は突き飛ばされて気を失った男を見る。
「まずは1人だな」
「お前ぇ!!」
南出と4人の男がワイヤー状の拘束装置を翔太のすでに左腕に装着されているデュエルディスクに取り付け、強制的にデュエルモードに突入させる。
「俺1人に対して5人で挑むなんてな。よほど俺のことが怖いんだな」
「悪いが、敵を倒すためには手段を選ばない性質でな。俺たちと戦ってもらうぜ」
南出の言葉を聞き、ニヤリと笑った翔太がデッキから10枚カードをドローする。
「ライフ8000、手札10枚スタートでなら、その汚いデュエルに付き合ってもいいぜ」
「ああ、これから身ぐるみはがされるんだ。このくらいのハンデ、いいぜ」
相手が何者かはわからないが、このようなことをするのはライバルのギャングかもしれない。
そうであれば、倒さない理由はない。
5人は翔太にならうように、カードを引く。
「「「デュエル!!」」」
南出
手札5
ライフ4000
ギャングA
手札5
ライフ4000
ギャングB
手札5
ライフ4000
ギャングC
手札5
ライフ4000
ギャングD
手札5
ライフ4000
翔太
手札10
ライフ8000
「俺のターン!俺は手札から《アサルト・ホイール》を召喚!」
太い一輪の車輪を下半身としている茶色い装甲の機械が現れる。
頭部は《スピード・ウォリアー》のものと似ていて、両腕のマニピュレーターの代わりに青いアサルトライフル、両肩に8連装のミサイルランチャーがついていて、次世代の戦車かと思える構造のモンスターだ。
アサルト・ホイール レベル4 攻撃2300
「そして、カードを1枚伏せてターンエンド!」
南出
手札5
ライフ4000
場 アサルト・ホイール レベル4 攻撃2300
伏せカード1
ギャングA
手札5
ライフ4000
場 なし
ギャングB
手札5
ライフ4000
場 なし
ギャングC
手札5
ライフ4000
場 なし
ギャングD
手札5
ライフ4000
場 なし
翔太
手札10
ライフ8000
場 なし
「俺のターン!」
ギャングAが手札を見つつ、ターン開始を宣言すると同時に南出が行動に出る。
「永続罠《ホイール・ファクトリー》を発動!1ターンに1度、機械族モンスターの召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時、《ホイールトークン》1体を特殊召喚できる」
「俺は手札から《キャノン・ホイール》を召喚!」
《キャノン・ホイール》召喚と同時に《ホイール・ファクトリー》のソリッドビジョンからオフロード用のタイヤが発射され、ギャングAのフィールドに落ちる。
キャノン・ホイール レベル2 攻撃500(チューナー)
ホイールトークン レベル3 攻撃800
ホイール・ファクトリー
永続罠カード
互いのプレイヤーは『ホイール・ファクトリー』の効果を1ターンに1度しか発動できない。
(1):フィールド上に機械族モンスターが召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時に発動できる。そのモンスターのいるフィールドに『ホイールトークン』1体を特殊召喚する。
ホイールトークン
レベル3 攻撃800 守備800 トークン 地属性 機械族
『ホイール・ファクトリー』の効果で特殊召喚される。
(1):このカードは融合素材とすることができず、アドバンス召喚のためにリリースできない。
「レベル3の《ホイールトークン》にレベル2の《キャノン・ホイール》をチューニング!シンクロ召喚!レベル5!《A・O・Jカタストル》!!」
A・O・Jカタストル レベル5 攻撃2200
「《A・O・Jカタストル》かよ…!」
今のデッキのエースカードであれば問題はないものの、やはり闇属性以外のモンスターを問答無用に破壊するこのモンスターは厄介だ。
「《キャノン・ホイール》の効果発動!このカードがシンクロ素材として使用され墓地へ送られた時、相手に500のダメージを与える!」
幻影として現れた《キャノン・ホイール》が2門のキャノン砲の狙いを翔太に定め、オレンジ色の光線を発射する。
「ちっ…!」
翔太
ライフ8000→7500
「俺はこれでターンエンド!」
南出
手札3
ライフ4000
場 アサルト・ホイール レベル4 攻撃2300
ホイール・ファクトリー(永続罠)
ギャングA
手札5→4
ライフ4000
場 A・O・Jカタストル レベル5 攻撃2200
ギャングB
手札5
ライフ4000
場 なし
ギャングC
手札5
ライフ4000
場 なし
ギャングD
手札5
ライフ4000
場 なし
翔太
手札10
ライフ7500
場 なし
ここから翔太のターンまで省略する。
なぜなら…以下の状況を見ると分かるだろう。
南出
手札3
ライフ4000
場 アサルト・ホイール レベル4 攻撃2300
ホイール・ファクトリー(永続罠)
ギャングA
手札4
ライフ4000
場 A・O・Jカタストル レベル5 攻撃2200
ギャングB
手札5→4
ライフ4000
場 A・O・Jカタストル レベル5 攻撃2200
ギャングC
手札5→4
ライフ4000
場 A・O・Jカタストル レベル5 攻撃2200
ギャングD
手札5→4
ライフ4000
場 A・O・Jカタストル レベル5 攻撃2200
翔太
手札10
ライフ7500→6000
場 なし
全員がギャングAと同じ行動をとり、4体の《A・O・Jカタストル》が翔太を威圧する。
「あいつら…積み込みしてるんじゃないか?」
「へへへ…」
「欲しいなら」
「もっとくれてやるぜ?」
ニヤニヤ笑いながら翔太を見る5人。
彼らの手札にはまだ《キャノン・ホイール》が存在するようだ。
「俺のターン!俺は手札からフィールド魔法《六武院》と永続魔法《六武の門》、そして《六武衆の結束》を発動」
翔太の背後にソリッドビジョンで白い漆が塗られた壁が特徴的な和風の城が出現する。
木製4階建てのその城を更に黒い漆塗の城門と壁が包み込む。
壁と門は機械仕掛けとなっており、門には六武衆の家紋が大きく刻まれていた。
「俺は手札から《真六武衆―カゲキ》を召喚」
真六武衆―カゲキ レベル3 攻撃200
「こいつの召喚に成功した時、手札からレベル4以下の六武衆1体を特殊召喚できる。俺は更に手札から《六武衆の影武者》を特殊召喚」
六武衆の影武者 レベル2 攻撃400(チューナー)
「そして、《カゲキ》は俺のフィールド上に《カゲキ》以外の六武衆が存在するとき、攻撃力が1500アップする」
《六武衆の影武者》により、背中に装着されている2本の義手が修理され、より精密な動作が可能となる。
そして、5人のギャングに4つの手に握られた日本刀を向ける。
真六武衆―カゲキ レベル3 攻撃200→1700
「更に六武衆が召喚・特殊召喚されるたびに《門》には2つ、それ以外の2枚の魔法カードには1つ武士道カウンターが乗る」
上空から8本の日本刀が降ってきて、《六武院》の門の前のアスファルトに刺さる。
六武院 武士道カウンター0→2
六武の門 武士道カウンター0→4
六武衆の結束 武士道カウンター0→2
「俺は《六武の門》の効果発動。俺のフィールド上に存在する武士道カウンターを1つ取り除くことで、デッキ・墓地から六武衆1体を手札に加えることができる」
門の前に刺さっている4本の刀が消滅し、それと同時に門が開く。
そしてそこから《真六武衆―キザン》が出てくる。
六武の門 武士道カウンター4→2
六武衆の結束 武士道カウンター2→0
「更にこいつは俺のフィールドに《キザン》以外の六武衆が存在する場合、手札から特殊召喚できる」
真六武衆―キザン レベル4 攻撃1800
当然、《真六武衆―キザン》もまた六武衆。
よって、3枚のカードに武士道カウンターが乗る。
六武院 武士道カウンター2→3
六武の門 武士道カウンター2→4
六武衆の結束 武士道カウンター0→1
「更にもう1度《六武の門》の効果を発動する。武士道カウンターを4つ取り除き、デッキからもう1体の《キザン》を手札に加え、特殊召喚する」
再び4本の刀が消え、門から《真六武衆―キザン》が現れる。
そんな彼が門から数歩前に出たとき、上空から4本の刀が彼の左右に2本ずつ落ちてくる。
真六武衆―キザン レベル4 攻撃1800
六武院 武士道カウンター3→4
六武の門 武士道カウンター4→0→2
六武衆の結束 武士道カウンター1→2
「また《キザン》かよ!?だが…そいつは地属性!《カタストル》の敵じゃねえな」
「武士道カウンターはまだあるぜ。《六武の門》の効果で再び武士道カウンターを4つ取り除き、3体目の《キザン》を手札に加え、特殊召喚する」
2体目と同じ動きで再び翔太のフィールドに現れる3体目。
フィールドにいる1体目が自分そっくりのモンスターが2体も現れたことに若干苦笑いしているが、多分気のせいだろう。
真六武衆―キザン レベル4 攻撃1800
六武院 武士道カウンター4→5
六武の門 武士道カウンター 2→0→2
六武衆の結束 武士道カウンター2→0→1
たった1ターンで翔太のフィールドに5体のモンスターが並ぶ。
といっても、このデュエルでは全員が最初のターンにドローもバトルも行うことができない。
いくら高い攻撃力を持つモンスターを並べても、バトルができなければ意味がない。
「俺はレベル3の《カゲキ》にレベル2の《影武者》をチューニング。シンクロ召喚。現れろ、《真六武衆―シエン》」
真六武衆―シエン レベル5 攻撃2500
六武院 武士道カウンター5→6
六武の門 武士道カウンター2→4
六武衆の結束 武士道カウンター1→2
「そして俺は再び《六武の門》の効果を使う。武士道カウンターを4つ取り除き、デッキから《六武衆の傾奇者―ケイロウ》を手札に加える。そしてこいつは俺のフィールド上に六武衆シンクロモンスターが存在するとき、手札から特殊召喚できる」
両腕の部分が黒い布となっている赤い甲冑を身に着け、右手には柄の部分が赤くなっている槍を持った金色の長髪の大男が現れ、朱色の杯で日本酒を飲み始める。
背中には茶色のビロードマントをつけていて、肌色の糸で桃太郎、白い糸で犬、オレンジ色の糸で猿、赤い糸でキジが縫箔されている。
そして中央には大きく『大ふへん者』とも書かれている。
このモンスターのモデルが何かは誰が見てもわかるだろう。
六武衆の傾奇者―ケイロウ レベル2 攻撃1000(チューナー)
六武院 武士道カウンター6→5→6
六武の門 武士道カウンター4→2→4
六武衆の結束 武士道カウンター2→1→2
「またチューナーだと!?」
「レベル4の《キザン》にレベル2の《ケイロウ》をチューニング。シンクロ召喚。現れろ、《ゴヨウ・プレデター》」
「何!?こいつはセキュリティの…」
翔太のフィールドに現れる《ゴヨウ・プレデター》に南出達が驚く。
ゴヨウシリーズはどうやらセキュリティだけが手にできるカードらしい。
もっとも、翔太のこれは漁介が倒したセキュリティからデッキごと頂いたものだが。
ゴヨウ・プレデター レベル6 攻撃2400
「更に《ケイロウ》の効果発動。こいつをシンクロ素材として墓地へ送った場合、デッキからカードを1枚ドローできる」
デッキからカードをドローする翔太。
そのカードを見て、ニヤリと笑う。
六武衆の傾奇者―ケイロウ
レベル2 攻撃1000 守備1200 チューナー 光属性 戦士族
「六武衆の傾奇者―ケイロウ」は1ターンに1度しか(1)の効果で特殊召喚することができない。
このカードをS素材とするとき、戦士族モンスターのS召喚にしか使用できない。
(1):自分フィールド上に「六武衆」Sモンスターが存在するとき、このカードは手札から特殊召喚できる。
(2):このカードがS素材として墓地へ送られた場合に発動できる。自分はデッキからカードを1枚ドローする。
「俺は《六武衆の結束》の効果を発動。このカードを墓地へ送ることで、乗っている武士道カウンターの数だけデッキからカードをドローできる。俺はデッキからさらに2枚カードをドローする」
1度はすべて使い切った手札を《六武衆の傾奇者―ケイロウ》と《六武衆の結束》でフォローしていく。
手札はあるものの1枚か2枚しか使えなかったギャング達とは大違いだ。
「《六武院》の効果。相手フィールド上に存在するモンスターの攻撃力はこのカードに乗っている武士道カウンターの数×100ダウンする」
「何!?」
門の前にある10本の刀のうちの6本が青白く光り、それと連動するように南出達のモンスターも同じ光を放ち始める。
すると、そのモンスター達の装甲や関節部分の1部に劣化が生じ、性能が低下していく。
A・O・Jカタストル×4 レベル5 攻撃2200→1600
アサルト・ホイール レベル4 攻撃2300→1700
「更に《キザン》はこのカード以外に俺のフィールドに六武衆が2体以上存在するとき、攻撃力・守備力が300アップする」
真六武衆―キザン×2 レベル4 攻撃1800→2100
「そして、カードを2枚伏せてターンエンド」
南出
手札3
ライフ4000
場 アサルト・ホイール レベル4 攻撃1700
ホイール・ファクトリー(永続罠)
ギャングA
手札4
ライフ4000
場 A・O・Jカタストル レベル5 攻撃1600
ギャングB
手札4
ライフ4000
場 A・O・Jカタストル レベル5 攻撃1600
ギャングC
手札4
ライフ4000
場 A・O・Jカタストル レベル5 攻撃1600
ギャングD
手札4
ライフ4000
場 A・O・Jカタストル レベル5 攻撃1600
翔太
手札10→6
ライフ6000
場 真六武衆―キザン×2 レベル4 攻撃2100
真六武衆―シエン レベル5 攻撃2500
ゴヨウ・プレデター レベル6 攻撃2400
六武院(フィールド魔法 武士道カウンター6)
六武の門(永続魔法 武士道カウンター4)
伏せカード2
「へっ…!《シエン》さえ対処することができれば、あとは怖くないな!」
南出の言うことには一理ある。
《A・O・Jカタストル》よりも高い攻撃力を持ち、なおかつ闇属性であるモンスターは今のフィールドには《真六武衆―シエン》しかいない。
そして、4体の《A・O・Jカタストル》であれば2体の《真六武衆―キザン》と《ゴヨウ・プレデター》を対処できる。
「俺のターン、ドロー!!」
南出
手札3→4
「俺は手札から《キャノン・ホイール》を召喚!」
キャノン・ホイール レベル2 攻撃500→0(チューナー)
「更に《ホイール・ファクトリー》の効果で《ホイールトークン》を特殊召喚」
ホイールトークン レベル3 守備800
「レベル4の《アサルト・ホイール》にレベル2の《キャノン・ホイール》をチューニング!シンクロ召喚!レベル6!《コンバット・ホイール》!!」
コンバット・ホイール レベル6 攻撃2500
「さあ、《キャノン・ホイール》の効果をうけろぉ!!」
此度5度目の登場となる《キャノン・ホイール》の幻影。
個体が別だとはいえ、これもある意味過労死の1つなのかもしれない。
翔太
ライフ6000→5500
弾丸が翔太を貫くと同時に、《真六武衆―シエン》が刀を鞘におさめ、居合の構えを見せる。
「罠発動。《六武流剣術―漣斬り》を発動。相手がエクストラデッキからモンスターを特殊召喚した時、俺のフィールド上に六武衆シンクロモンスター1体を対象に発動。そのモンスターの攻撃力以下の攻撃力を持つ相手モンスターをすべて破壊する」
「何!?」
深呼吸をしながら目を閉じ、精神を集中させる《真六武衆―シエン》。
数秒経って集中力が極限まで高まると、猛スピードで刀を抜き、横一線に斬る。
すると、空気中に存在する酸素と水素が融合して水となり、その水がウォータージェットとなって6体の機械を切り裂いた。
「更に、この効果で破壊したモンスターの数×800のダメージをお前に与える」
モンスターを全滅させた水の刃がそのままの勢いでギャングAを切り裂いた。
「ギャアアア!!」
ギャングA
ライフ4000→0
六武流剣術―漣斬り(ろくぶりゅうけんじゅつ―さざなみぎり)
通常罠カード
「六武流剣術―漣斬り」は1ターンに1度しか発動できない。
(1):相手がエクストラデッキからモンスターを特殊召喚した時、自分フィールド上に存在する「六武衆」Sモンスターを対象に発動できる。そのモンスターの攻撃力以下の攻撃力を持つ相手フィールド上に存在するモンスターをすべて破壊する。その後、相手にこの効果で破壊したモンスターの数×800のダメージを与える。
「やろう…!!(くそ!このターンはもう通常召喚できない!)俺はカードを1枚伏せ、ターンエンド!」
南出
手札4→2
ライフ4000
場 ホイール・ファクトリー(永続罠)
伏せカード1
ギャングB
手札4
ライフ4000
場 なし
ギャングC
手札4
ライフ4000
場 なし
ギャングD
手札4
ライフ4000
場 なし
翔太
手札6
ライフ6000
場 真六武衆―キザン×2 レベル4 攻撃2100
真六武衆―シエン レベル5 攻撃2500
ゴヨウ・プレデター レベル6 攻撃2400
六武院(フィールド魔法 武士道カウンター6)
六武の門(永続魔法 武士道カウンター4)
伏せカード1
「くそう!!もう1人やられたのか!?」
2階からデュエルを見ていたギャングEがやむなく降りてきて、デュエルに乱入する。
すると、彼のライフがペナルティとして2000減らされる。
ギャングE
ライフ4000→2000
(なるほど…どうやら乱入するとペナルティが発生するというのはスタンダードになっているようだな)
乱入した以上、ここからはギャングBではなくギャングEのターンとなる。
2000もの痛手を負ってまで加勢するということは、勝算があるということだろうか。
少なくとも、2ターン目以降(バトルロイヤルルールでは全員が1ターンずつ行動した後)の乱入ではドローもバトルも行うことができるが。
「俺のターン、ドロー!」
ギャングE
手札5→6
「俺は手札から魔法カード《違法な宝札》を発動。こいつは俺のフィールド上にカードがなく、通常のドローをした後、公開し続けることでメインフェイズ1開始時に発動できる。その効果で俺はデッキからカードを2枚ドローする!」
違法な宝札
通常魔法カード
(1):自分フィールド上のカードがなく、自分のドローフェイズ時に通常のドローをしたこのカードを公開し続ける事で、そのターンのメインフェイズ1の開始時に発動できる。自分はデッキからカードを2枚ドローする。
「そして、手札から魔法カード《フィールド・セレクト》を発動。このターン、互いのプレイヤーのフィールド魔法の効果は無効となる!」
1ターンのみだが、ギャング達は武士のプレッシャーから解放される。
しかし、それもこの乱入したギャングEのターン、1ターンのみ。
この効果をどこまで最大限に生かすことができるのか。
フィールド・セレクト
通常魔法カード
(1):このカードを発動したターン終了時まで、互いのフィールド上に存在するフィールド魔法の効果は無効となる。
(2):「フィールド・セレクト」を発動後2回目以降の自分のスタンバイフェイズ時、墓地にこのカードが存在する場合、手札の魔法・罠カード1枚を墓地へ送ることで発動できる。このカード1枚を手札に加える。
「俺は手札から速攻魔法《トラップ・ブースター》を発動!手札を1枚捨て、手札から永続罠《DNA移植手術》を発動!このカードはフィールド上に存在するモンスターの属性を俺が宣言する者と同じにする!俺は光属性を宣言!」
《DNA移植手術》から放たれる白い光を浴びた3体の武士と1体の捕食者が白い膜のような障壁に包まれていく。
手札から墓地へ捨てられたカード
・アサルト・ホイール
「更に手札から《A・ボム》を召喚!」
A・ボム レベル2 攻撃400→0
「こいつは光属性モンスターとの戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、フィールド上のカードを2枚破壊する!更に手札から魔法カード《機械複製術》を発動!その効果でデッキからさらに2体の《A・ボム》を特殊召喚!」
《機械複製術》のソリッドビジョンから2体の対ワーム戦闘用特攻兵器が射出される。
A・ボム×2 レベル2 攻撃400→0
「まだまだ続くぜ!更に俺は手札から魔法カード《ご隠居の猛毒薬》を発動!その効果でライフを1200回復!」
ギャングE
ライフ2000→3200
これで彼は翔太のフィールドをボロボロにさせる算段ができた。
光属性になった4体のモンスター目掛けて《A・ボム》を特攻させ、その効果で少なくとも4枚のカードを破壊する。
現在翔太のフィールドに存在するカードはモンスター4体と魔法・罠カード3枚。
モンスターをすべて倒すことで、たとえ自身が敗北することになったとしても勝利への道を切り開くことにつながる。
だが、彼は気づいていない。
なぜ翔太が《真六武衆―シエン》の効果を使っていないのかを。
「バトルだ!!《A・ボム》!!あの無謀なガキのエースをズタボロにしろーーー!!」
3体の爆弾が翔太のフィールドに特攻してくる。
しかし、現実は非常だ。
「俺は速攻魔法《サイクロン》を発動。その効果で《DNA移植手術》を破壊する」
「な…?」
「無駄死にしろよ」
特攻してくる爆弾を見て、攻撃対象となっている《真六武衆―キザン》がフゥとため息をつく。
そして、刀の柄で《A・ボム》の弱点となっている真下のボルト部分を突く。
すると、その爆弾は爆発することなく機能を停止させて、そのモンスターの足元に落ちた。
「…」
決死の作戦が失敗し、手札が尽きたギャングEが真っ白になる。
ギャングE
ライフ3200→1100
「さあ…ここから言うことは1つだけだろ?」
「…ターン、エンド…」
南出
手札4→2
ライフ4000
場 ホイール・ファクトリー(永続罠)
伏せカード1
ギャングE
手札6→0
ライフ1100
場 A・ボム×2 レベル2 攻撃400→0
ギャングB
手札4
ライフ4000
場 なし
ギャングC
手札4
ライフ4000
場 なし
ギャングD
手札4
ライフ4000
場 なし
翔太
手札6
ライフ6000
場 真六武衆―キザン×2 レベル4 攻撃2100
真六武衆―シエン レベル5 攻撃2500
ゴヨウ・プレデター レベル6 攻撃2400
六武院(フィールド魔法 武士道カウンター6)
六武の門(永続魔法 武士道カウンター4)
ギャングEによる破壊工作は失敗し、2体の《A・ボム》がその無防備な姿をさらす。
この状況を立て直すには、残り3人の動向に身をゆだねるしかない。
「俺のターン、ドロー!」
ギャングB
手札4→5
「相手フィールド上にのみモンスターが存在するとき、このカードは手札から特殊召喚できる!《サイバー・ドラゴン》を特殊召喚!」
《サイバー・ドラゴン》が登場すると同時に急ピッチで《ホイール・ファクトリー》内部で《ホイールトークン》が製造、射出させる。
サイバー・ドラゴン レベル5 守備1600
ホイールトークン レベル3 守備800
「そして、モンスターを裏守備表示で召喚してターンエンド…」
南出
手札2
ライフ4000
場 ホイール・ファクトリー(永続罠)
伏せカード1
ギャングE
手札0
ライフ1100
場 A・ボム×2 レベル2 攻撃0
ギャングB
手札5→3
ライフ4000
場 サイバー・ドラゴン レベル5 守備1600
ホイール・トークン レベル3 守備800
裏守備モンスター1
ギャングC
手札4
ライフ4000
場 なし
ギャングD
手札4
ライフ4000
場 なし
翔太
手札6
ライフ6000
場 真六武衆―キザン×2 レベル4 攻撃2100
真六武衆―シエン レベル5 攻撃2500
ゴヨウ・プレデター レベル6 攻撃2400
六武院(フィールド魔法 武士道カウンター6)
六武の門(永続魔法 武士道カウンター4)
「俺のターン、ドロー!」
ギャングC
手札4→5
「俺は…カードを2枚伏せてターンエンド!」
南出
手札2
ライフ4000
場 ホイール・ファクトリー(永続罠)
伏せカード1
ギャングE
手札0
ライフ1100
場 A・ボム×2 レベル2 攻撃0
ギャングB
手札3
ライフ4000
場 サイバー・ドラゴン レベル5 守備1600
ホイールトークン レベル3 守備800
裏守備モンスター1
ギャングC
手札5→3
ライフ4000
場 伏せカード2
ギャングD
手札4
ライフ4000
場 なし
翔太
手札6
ライフ6000
場 真六武衆―キザン×2 レベル4 攻撃2100
真六武衆―シエン レベル5 攻撃2500
ゴヨウ・プレデター レベル6 攻撃2400
六武院(フィールド魔法 武士道カウンター6)
六武の門(永続魔法 武士道カウンター4)
「俺のターン、ドロー!」
ギャングD
手札4→5
「俺は手札から《トップ・ランナー》を召喚!」
トップ・ランナー レベル4 攻撃1100→500(チューナー)
「更に《ホイール・ファクトリー》の効果で《ホイール・トークン》を特殊召喚!」
ホイールトークン レベル3 守備800
これでレベル7のシンクロモンスターのシンクロ召喚が可能となる。
しかし、《六武院》によって攻撃力が600下がるこの状況では攻撃力3100以上のモンスターの召喚はたとえシンクロ召喚であっても至難の業。
カード効果で強化しようにも《真六武衆―シエン》によって1ターンに1度、魔法・罠カードの発動を無効にし破壊されることになるため、安全に行くのであればモンスター効果で強化する必要がある。
問題はそのような隙を翔太が与えるかどうかだ。
「俺はカードを2枚伏せ、ターンエンド!」
このような状況になるのであれば、手札を10枚も与えるべきではなかったと後悔する。
だが、一度承諾した以上は最後まで続けるのが筋だということをギャング達は理解しているため、やめるという選択肢はない。
南出
手札2
ライフ4000
場 ホイール・ファクトリー(永続罠)
伏せカード1
ギャングE
手札0
ライフ1100
場 A・ボム×2 レベル2 攻撃0
ギャングB
手札3
ライフ4000
場 サイバー・ドラゴン レベル5 守備1600
ホイールトークン レベル3 守備800
裏守備モンスター1
ギャングC
手札3
ライフ4000
場 伏せカード2
ギャングD
手札5→2
ライフ4000
場 トップ・ランナー レベル4 攻撃500(チューナー)
ホイールトークン レベル3 守備800
伏せカード2
翔太
手札6
ライフ6000
場 真六武衆―キザン×2 レベル4 攻撃2100
真六武衆―シエン レベル5 攻撃2500
ゴヨウ・プレデター レベル6 攻撃2400
六武院(フィールド魔法 武士道カウンター6)
六武の門(永続魔法 武士道カウンター4)
こうして、5人による長いターンが終了し、ようやく翔太のターンが来る。
「(こんなに長く待たされるなんてな。カップめん作りながらやりたい気分だ。ま、こいつら程度なら喰いながらでも勝てるか)俺のターン!」
翔太
手札6→7
「俺は《紫炎の寄子》を召喚」
黒い傘のような兜と同じ色の装甲に緑色の布が組み合わさった銅丸、そして背中に刺した六武衆の家紋が特徴的な猿顔の足軽が現れる。
寄子とは中世から続く、領主と領民が疑似的な親子関係を作る制度のうちの子役であり、寄親たる領主にの公事に対して負担する代わりに自らの地位と領地の保障を受けていた。
ここでは六武衆もしくは紫炎が寄親ということだろう。
紫炎の寄子 レベル1 攻撃300(チューナー)
「レベル4の《キザン》にレベル1の《寄子》をチューニング。シンクロ召喚!現れろ、《真六武衆―シエン》」
真六武衆―シエン レベル5 攻撃2500
六武院 武士道カウンター6→7
六武の門 武士道カウンター4→6
「ぐぅぅぅ…」
2体目の《真六武衆―シエン》の登場に苦い表情を浮かべる5人だが、そんな彼らに追い打ちをかけるように翔太は次の手に出る。
「更に俺は《六武の門》の効果を発動。俺のフィールド上に武士道カウンターを4つ取り除き、墓地から《キザン》を手札に加え、そのままこいつ自身の効果で特殊召喚させる」
再び門の中から《真六武衆―キザン》が出てくる。
何度も何度も休む暇もなく呼び出されているにも関わらず、表情1つ変えていない。
真六武衆―キザン レベル4 攻撃1800→2100
六武院 武士道カウンター7→8
六武の門 武士道カウンター6→2→4
「更にもう1度《六武の門》の効果で武士道カウンターを4つ取り除き、墓地から《ケイロウ》を手札に加える。そして、こいつも自らの効果で特殊召喚できる」
六武衆の傾奇者―ケイロウ レベル2 攻撃1000(チューナー)
六武院 武士道カウンター8→9
六武の門 武士道カウンター4→0→2
「レベル4の《キザン》にレベル2の《ケイロウ》をチューニング。シンクロ召喚。現れろ、《グラヴィティ・ウォリアー》」
翔太のフィールドに現れる重力の狂戦士、《グラヴィティ・ウォリアー》。
このカードはスタンダード次元で市販されており、シンクロ次元へ向かう前に六武衆デッキに組み込むために購入したものだ。
グラヴィティ・ウォリアー レベル6 攻撃2100
「《グラヴィティ・ウォリアー》の効果発動。こいつはシンクロ召喚に成功した時、攻撃力を相手フィールド上に表側表示で存在するモンスターの数×300アップさせる。蛮勇引力!」
1対1で行われる通常のデュエルではそれほど大した効果ではない蛮勇引力だが、変則的であるこのバトルロイヤル
グラヴィティ・ウォリアー レベル6 攻撃2100→3900
「攻撃力3900!!?」
レベル6には似合わない破格の攻撃力を持った《グラヴィティ・ウォリアー》に戦慄するギャング達だが、彼らにとってのサプライズはまだ終わらない。
お楽しみはこれからだ。
「そして、再び《六武の門》の効果を使う。武士道カウンターを4つ取り除き、墓地から《キザン》を手札に加え、そのまま特殊召喚」
真六武衆―キザン レベル4 攻撃1800→2100
六武院 武士道カウンター9→7→8
六武の門 武士道カウンター2→0→2
「そして、手札から魔法カード《六武流剣術―天羽之斬》を発動。俺のフィールド上にシンクロモンスターを含む六武衆モンスターが2体以上存在するとき、相手フィールド上の魔法・罠カードをすべて破壊する」
「何!?」
《真六武衆―キザン》と《真六武衆―シエン》が互いに背中を合わせつつ、刀を構える。
そして、目を閉じ深く瞑想すると上空に雷雲が発生し、周囲を暗くする。
その雲から落ちた雷が両者の刀に宿り、刀身が黄色く染まる。
2人は目を開くと、《真六武衆-キザン》から刀を受け取り、2刀流となった《真六武衆―シエン》が交差するように袈裟斬りする。
すると、双方の刀に宿る雷が集結し、大蛇のような姿となってギャング達の魔法・罠ゾーンに襲い掛かる。
5枚に伏せカードがその蛇の雷の余波で黒く焦げ、《ホイール・ファクトリー》が巨大な口に飲み込まれる。
魔法・罠カードを破壊しつくしたその蛇が姿を消す時、心無しがその表情が満足げに見えた。
破壊された伏せカード
・緊急同調
・聖なるバリア―ミラーフォース
・攻撃の無力化
・威風堂々
・スキル・サクセサー
六武流剣術―天羽之斬(あまのはばきり)
通常魔法カード
「六武流剣術―天羽之斬」は1ターンに1度しか発動できない。
(1):自分フィールド上にSモンスターを含む「六武衆」モンスターが2体以上存在する場合にのみ発動できる。相手フィールド上に存在する魔法・罠カードをすべて破壊する。
「バカな…!?」
「《緊急同調》に《威風堂々》、おまけに攻撃妨害のカードか…。ネタ晴らしされたらもう怖くないな」
虎の子のカウンター罠もろともギャングのフィールドから魔法・罠カードが消し飛んでいった。
そして、《六武院》に乗った武士道カウンターの影響で《トップ・ランナー》の攻撃力が低下する。
トップ・ランナー レベル4 攻撃500→300
「バトルだ。まずは2体の《キザン》で《A・ボム》を攻撃」
《真六武衆―キザン》が《真六武衆―シエン》から返された刀で、浮遊する《A・ボム》を一刀両断する。
両断された爆弾はギャングのフィールドで爆発し、隣にいたもう1体の《A・ボム》を誘爆させる。
「うわああああ!!」
ギャングE
ライフ1100→0
「更に《ゴヨウ・プレデター》ともう1体の《キザン》でこいつにダイレクトアタック」
翔太が指を指したのは南出だ。
うなずいた《ゴヨウ・プレデター》が十手についているロープで彼を拘束し、《真六武衆―キザン》が盾一線に切り裂く。
(バ…バカな…??これは悪い夢か?)
ライフを失った南出が卒倒する。
南出
ライフ4000→1600→0
「そして2体の《シエン》でフィールドがら空きのそいつ(ギャングC)にダイレクトアタック」
「来るなぁぁぁ!!」
大急ぎでその場を逃げ出すギャングCだが、戦場で鍛え抜かれた武将の脚力に敵うはずもなく、すぐに追いつかれる。
そして、その臆病者の背中を無慈悲に切り裂いた。
ギャングC
ライフ4000→1500→0
「バカな…1ターンで3人も!?」
「さあ、もっと来いよ?大暴れする俺を止めればご褒美確実だぜ?それとも、束になっても俺1人倒せないのか?」
ニヤっと笑いながら挑発し、ジリジリとギャング達に近づいてくる。
すると、南門や正面入り口から更に4人近くのギャングが入ってくる。
(これでデュエル前とデュエル中にぶった押した奴を含めて11人か…さあてっと、あいつらがどう動いてくれるか)
一方、アジトの裏口付近では…。
「よーし、侵入成功」
「翔太がここまで引っ張った。あとは俺たちのやることをやるだけだな」
正門での騒ぎに多くのギャングが駆けつけ、無人となっていたことから伊織と鬼柳、ジョンソン、里香、漁介、柚子、モハメドは7人であるにもかかわらず、容易に侵入に成功した。
目指すは最上階にあると思われるリーダー代行の部屋。
「よっしゃ。ならさっさと行って…」
ピッ!
「ピッ…?」
始めの第一歩でいきなり奇妙な音が里香の足元で聞こえた。
彼女の額に冷たい汗が流れ、ゆっくりと足をどかす。
「ボタンって…ヤバイ!!」
ビーッ!ビーッ!ビーッ!!!
天井や壁にあるスピーカーからサイレンが発生し、そしてランプが赤く点灯する。
廃墟をアジトとしているため、このようなセキュリティシステムがあると思っていなかった伊織と漁介、里香、柚子がびっくりする。
「えーーー!!?これだと翔太君と戦っている人たちに気付かれちゃう!絶体絶命ー!」
「里香!?この…とーすけぇ!!」
「誰が間抜けや!?こんなん誰も知らんわ!」
付き合いが長いのか、広島弁でとーすけが間抜けだということが分かった里香が漁介と口論する。
そうしている間にも扉を背後にして左右の通路から2人のギャングが走ってくる。
「くそっ!?まさか正面の奴がおとりだなんてな!」
「奇襲もどきっていうのか、これは??」
2人に対して、ジョンソンがデュエルディスクを展開する。
「ここは私が抑えよう。お前たちは行け」
「ジョンソンはん…。ここはウチが残ってやるんが」
「急いで移動しなければならない以上、目の見えない私は足手まといだ。それに…正面で戦っている彼が大立ち回りをしている以上、それと同じくらいのことができなければな」
フッと笑みを浮かべ、その場に座り、デッキからカードを引く。
「早く行け、次からはこのようなセキュリティシステムには気をつけろ」
「行くぞ!もうすぐ増援がここに来る!」
モハメドが先頭に立ち、先行して通路を進む。
それを漁介、伊織、里香、柚子、鬼柳が続く。
最後尾を鬼柳にしたのは彼がこのメンバーで一番シンクロ召喚に精通しているデュエリストであり、挟み撃ちになった時の対策を考えたうえで最適と判断したためだ。
6人の足音が小さくなるのを耳にしたジョンソンが2人に見えない眼を向ける。
「さあ…しばらく私と遊んでもらおう。私の蜘蛛の糸に絡め取られることを後悔するのだな」
「目の見えねえ奴が何を言いやがる!!姑息な手を使いやがって!!」
奇襲もどきが挑発となったのか、2人は怒り心頭だ。
(さあ…この次元のみとなるだろうが、私のデッキよ…力を貸してもらうぞ)
「「デュエル!!」」
ギャングF
手札5
ライフ4000
ギャングG
手札5
ライフ4000
ジョンソン
手札5
ライフ8000
「まずは俺からだ!手札から魔法カード《ワン・フォー・ワン》を発動!手札を1枚墓地へ送り、手札・デッキからレベル1モンスター1体を特殊召喚できる。特殊召喚!《音響戦士ベーシス》!!」
緑色の装甲でできた腕と脚がついた青と白が基調のベースギターが自分と同じ形のギターで曲を流しながらデッキから出撃する。
手足は黒で、指先にあるスピーカーからはベースギターでは表現しきれないドラムの音などが発せられている。
音響戦士ベーシス レベル1 守備400(チューナー)
手札から墓地へ送られたカード
・D・HEROディアボリックガイ
「更に墓地に存在する《ディアボリックガイ》の効果発動。このカードを墓地から除外することで、デッキから《ディアボリックガイ》を特殊召喚できる!」
胸に大きくDと黒いタトゥーが刻まれ、黒い羽根と体毛、そして2本の尻尾が特徴的な悪魔が現れる。
体毛の無い部分、間接や胸には褐色の肌が露出しており、両手には4本の突起があるメリケンサックを装備している。
D・HEROディアボリックガイ レベル6 攻撃800
「そして、《ベーシス》の効果発動!こいつは1ターンに1度、俺のフィールド上に存在する音響戦士1体のレベルをターン終了時まで俺の手札と同じ数だけ上昇させる!」
ギャングFの手札3枚が青い光を放ち、《音響戦士ベーシス》の楽器を自動的にチューニングしていく。
音響戦士ベーシス レベル1→4 守備400(チューナー)
「レベル6の《ディアボリックガイ》にレベル4の《ベーシス》をチューニング。シンクロ召喚!レベル10!《A・ジェネクス・カオスウィザード》!」
体の右半分が白、左半分が黒であり、足や手の甲部分に青や赤の透明な装甲がついている人型の機械が現れる。
額には球体型の赤い魔石が埋め込まれており、手には《カオス・ウィザード》に装備されている赤い刀身と黒い柄のある両刃鎌を持っている。
A・ジェネクス・カオスウィザード レベル10 攻撃3000
「シンクロ素材に闇属性モンスターを使用した場合、このカードの攻撃中に相手は魔法・罠カードを発動できなくなる!更に俺はモンスターを裏守備表示で召喚し、ターンエンド」
ギャングF
手札5→2
ライフ4000
場 A・ジェネクス・カオスウィザード レベル10 攻撃3000
裏守備モンスター1
ギャングG
手札5
ライフ4000
場 なし
ジョンソン
手札5
ライフ8000
場 なし
「俺のターン!俺は手札から《ジェネクス・ウンディーネ》を召喚!」
水色の装甲で手足のあるイカと表現できる奇妙な機械が現れる。
腰回りには複数のチューブが存在し、それぞれが肩甲骨や腕、背中などに接続されている。
ジェネクス・ウンディーネ レベル3 攻撃1200
「このカードの召喚に成功した時、デッキに存在する水属性モンスター1体を墓地へ送ることで、デッキから《ジェネクス・コントローラー》1体を手札に加える」
デッキから《ドラゴン・アイス》と《ジェネクス・コントローラー》が排出され、前者を墓地へ送り、後者を手札に加える。
《ジェネクス・コントローラー》は通常モンスターではあるが、ジェネクスデッキの中核ともいえるカードであり、《魔の試着部屋》や《予想GUY》と言ったカードのサポートを受けることができるなど他のチューナーにはないアドバンテージが存在する。
「更に俺は手札から手札から魔法カード《苦渋の決断》を発動。デッキからレベル4以下の通常モンスター1体を墓地へ送り、デッキからそれと同名のカード1枚を手札に加える。俺はデッキから《ジェネクス・コントローラー》を墓地へ送り、《ジェネクス・コントローラー》を手札に加える。そして手札から魔法カード《闇の誘惑》を発動!デッキからカードを2枚ドローし、手札の闇属性モンスター1体を除外する!」
次元の裂け目が出現し、その中に《ジェネクス・コントローラー》が飲み込まれていく。
これで除外、墓地、手札にそれぞれ1枚ずつ《ジェネクス・コントローラー》が存在することになる。
「更に手札から魔法カード《チューナーズ・エナジー》を発動。墓地と除外されているカードの中にチューナーが1体ずつ存在するとき、手札・デッキのレベル3以下のチューナーモンスター1体を特殊召喚できる。俺はデッキから《スペア・ジェネクス》を特殊召喚!」
両目が紫のアンテナとなっている灰色の装甲の小さな機械人形が現れる。
両腕にはマニピュレーターがなく、左手部分には白い花が咲いている。
スペア・ジェネクス レベル3 攻撃800(チューナー)
チューナーズ・エナジー
通常魔法カード
「チューナーズ・エナジー」は1ターンに1度しか発動できない。
(1):自分の墓地、除外されているカードの中に自分のチューナーが1体ずつ存在する場合にのみ発動できる。自分の手札・デッキに存在するレベル3以下のチューナー1体を特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターはターン終了時に手札に戻る。
「《スペア・ジェネクス》の効果発動。このカードは俺のフィールドに他のジェネクスモンスターが存在するとき、このカードのカード名をターン終了時まで《ジェネクス・コントローラー》として扱う。レベル3の《ジェネクス・ウンディーネ》にレベル3の《スペア・ジェネクス》をチューニング。シンクロ召喚!レベル6!《A・ジェネクス・トライアーム》!」
《ジェネクス・ウンディーネ》がいきなり分解され、そのパーツがすべて《スペア・ジェネクス》を中心に集まっていく。
そして、《スペア・ジェネクス》にある自己進化のための教育思考コンピュータが導き出した答えを元にパーツが組み立てられていく。
黒をベースに緑と青のパーツが混じった人型兵器だ。
関節部分の色は白く、顔の部分は青いゴーグル型センサーとなっている。
武器は左腕に装着された固定武装は下の部分にオレンジ色の銃口が2つ、上に黒い銃口が1つある黒いコンテナ型の銃で、背中にあるバックパックとはエネルギー供給ケーブルが繋げられている。
A・ジェネクス・トライアーム レベル6 攻撃2400
「こいつはシンクロ素材としてモンスターの属性によって使える効果が変わる!水属性の場合は1ターンに1度、手札を1枚捨てることでフィールド上の魔法・罠カード1枚を破壊できる!」
《ジェネクス・ウンディーネ》のコアからデータを読み取った《スペア・ジェネクス》の命令で左腕の銃の色が青に変化し、形状がガトリングガンに変化する。
「そして俺はカードを2枚伏せ、ターンエンド!」
ギャングF
手札2
ライフ4000
場 A・ジェネクス・カオスウィザード レベル10 攻撃3000
裏守備モンスター1
ギャングG
手札5→2(うち1枚《ジェネクス・コントローラー》)
ライフ4000
場 A・ジェネクス・トライアーム(水属性を素材) レベル6 攻撃2400
伏せカード2
ジョンソン
手札5
ライフ8000
場 なし
(なるほど…奴らのデッキはジェネクスデッキ。ある意味では、ミラーマッチということになるな)
自分の手札を右手人差し指でそっと撫でる。
(今の手札はそう言う内容か。永瀬と柊に後で礼を言っておくべきだな)
ジョンソンはこのデッキを作るにあたって、カードを覚える際に伊織と柚子に協力してもらっていた。
といっても、そのうちの3割をやったのが伊織で残りは全部柚子がやったのだが。
「私のターン。私は手札から魔法カード《機甲部隊の最前線》を発動」
「何!?まさかお前のデッキも機械族デッキなのか!?」
《機甲部隊の最前線》を見て、2人のギャングがすぐに反応する。
「そして、このカードは手札の機械族モンスターをレベルの合計が8以上になるように墓地へ捨てることで手札・墓地から特殊召喚できる。《マシンナーズ・フォートレス》と《カラクリ忍者七七四九》を墓地へ送り、墓地から《マシンナーズ・フォートレス》を特殊召喚」
2機のマシーンが《機甲部隊の最前線》で解体され、4体の緑色のつなぎを着たゴブリンの手で現地改修されていく。
そして、わずかに茶色い装甲が砲台に着いた状態の《マシンナーズ・フォートレス》が出撃する。
マシンナーズ・フォートレス レベル7 攻撃2500
「更に手札から《カラクリ小町弐弐四》を召喚」
桜模様と濃い緑色で来料に書かれた弐弐四という文字が特徴的な薄緑の着物で赤い帯をつけた、いかにも江戸時代の町娘という姿のカラクリが現れる。
登場と同時に体内の発条が動きだし、頭部にある3つの緑色の眼が光る。
カラクリ小町弐弐四 レベル3 攻撃0(チューナー)
「このカードが存在する限り、私はメインフェイズ時に1度だけ追加で手札のカラクリ1体を召喚できる。私は更に《カラクリ兵弐参六》を召喚」
背中にタルを背負い、竹槍を装備したカラクリが現れる。
3つの眼のうち一番上に位置する部分は《カラクリ小町弐弐四》とは違い赤くなっている。
カラクリ兵弐参六 レベル4 攻撃1400
「レベル4の《弐参六》にレベル3の《弐弐四》をチューニング。発条の連鎖よ、今ここに戦局を掌握するカラクリを起動させよ。シンクロ召喚!レベル7!《カラクリ将軍無零》!!」
赤いマントと黒い甲冑、そして2本の角が両サイドに着いた兜、そして赤い軍配を装備したカラクリが畳床机に座ったまま現れる。
頭部の眼は4つに増えており、いずれも青い。
カラクリ将軍無零 レベル7 攻撃2600
「《無零》の効果発動。このカードのシンクロ召喚に成功した時、デッキからカラクリ1体を特殊召喚できる。私はデッキから《カラクリ蜘蛛壱四四》を特殊召喚」
軍配を上げる《カラクリ将軍無零》の背後から小さな赤い一つ目の蜘蛛型カラクリが出てくる。
カラクリ蜘蛛壱四四 レベル2 攻撃400(チューナー)
「このカードの召喚・特殊召喚に成功した時、相手フィールド上に存在するモンスター1体の表示形式を変更させ、次の私のターン終了時まで攻撃も表示形式の変更もできなくする」
「何!?」
「蜘蛛の糸に絡め取られるがいい…!」
《カラクリ蜘蛛壱四四》の口から体内で作られた蜘蛛の糸が発射され、《A・ジェネクス・カオスウィザード》を捕縛する。
粘りのあるその糸をほどくのは至難の業で、体の自由が奪われた《A・ジェネクス・カオスウィザード》が鎌を落としてしまう。
(くそ…!こいつは光属性モンスターをシンクロ素材にした場合は相手モンスターの効果をうけなくなる。だが、今のこいつじゃあ防げない!!)
怒りに満ちた表情でギャングは機械の子蜘蛛を見る。
A・ジェネクス・カオスウィザード レベル10 攻撃3000→守備2500
A・ジェネクス・カオスウィザード
レベル10 攻撃3000 守備2500 シンクロ 闇属性 機械族
機械族チューナー+チューナー以外の光属性または闇属性モンスター1体以上
(1):このカードはフィールド・墓地に存在する限り、属性を光としても扱う。
(2):このカードのS素材としたチューナー以外のモンスターの属性によって、以下の効果を得る。
●光属性:このカードは相手のモンスター効果を受けない。
●闇属性:このカードが攻撃する場合、相手はダメージステップ終了時まで魔法・罠カードを発動できない。
カラクリ蜘蛛壱四四
レベル2 攻撃400 守備500 チューナー 地属性 機械族
(1):このカードは攻撃可能な場合には攻撃しなければならない。
(2):フィールド上に表側攻撃表示で存在するこのカードが攻撃対象に選択された時、このカードの表示形式を守備表示にする。
(3):このカードの召喚・特殊召喚に成功した時、相手フィールド上に存在するモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターの表示形式を変更する。この効果を受けたモンスターは次の自分のターン終了時まで攻撃と表示形式の変更ができない。
「私はこれでターンエンドだ…。私を倒さない限り、お前たちはここを通ることはできない」
「ぐう…!!」
この中央の廊下だけがこの建物の中でアジトの心臓部である院長室につながる。
他にも通じる道はあったようだが、老朽化による建物の崩壊などで使えなくなっている。
そして、ほとんどのギャングが正門にいる翔太の相手をしている中、あとどれくらい時間が経てばここに援軍が来るかわからない。
彼らに残された道は2人でジョンソンを倒すことだけだ。
ギャングF
手札2
ライフ4000
場 A・ジェネクス・カオスウィザード レベル10 攻撃3000
裏守備モンスター1
ギャングG
手札2(うち1枚《ジェネクス・コントローラー》)
ライフ4000
場 A・ジェネクス・トライアーム(水属性を素材) レベル6 攻撃2400
伏せカード2
ジョンソン
手札5→0
ライフ8000
場 カラクリ将軍無零 レベル7 攻撃2600
マシンナーズ・フォートレス レベル7 攻撃2500
カラクリ蜘蛛壱四四 レベル2 攻撃400(チューナー)
機甲部隊の最前線(永続魔法)
翔太とジョンソンが足止めをする中、他のメンバーはアジトの奥へ向かっていく。
そこで待つデュエルとは…。