遊戯王ARC-V 戦士の鼓動   作:ナタタク

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第49話 サイコロに委ねる戦い

「たーのーもーーー!!」

2階の院長室の扉を伊織が思いっきり押して開く。

あまりの緊張感のない行動をする伊織に漁介と里香、モハメドがあきれ果てる。

(伊織、こんな状況でもいつものペース…。あたしは、どうなのかしら…?)

一方、柚子はそんな彼女をうらやましく思えていた。

彼女に対して自分はどうだ?

出発前は強がって遊矢を励ましていたくせに、今は心の中に芽生えている恐れを抑えるのに精いっぱいだ。

相手が融合次元からシンクロ次元のデュエルギャングに変わっただけで、舞網チャンピオンシップでのバトルロワイヤルと変化がないのが今の現実だ。

相手がギャングである以上、カード化はされないかもしれないが何をされるかわからない。

「さぁ、年貢の納め時でい!」

江戸時代の岡っ引きの真似をしつつ、椅子に座る男を挑発する。

赤いレンズのゴーグルで両目を隠した、褐色の大男が彼だ。

既にデュエルディスクを装着していて、立ち上がるとそれを展開する。

「ふん、トレーラーはただの囮。思い切った作戦を実行したものだな」

立ち上がり、ゆっくりと椅子の前に置かれている机を思いっきり横へどかす。

「せっかくチャンスが巡って、こうしてボスになった。この絶好の時間をお前たちにつぶされてたまるかぁ!!」

先程の余裕の態度をあっさり崩し、地の態度を見せつつ、2つの茶碗を6つのサイコロを出す。

「お茶碗とサイコロ…?」

なぜこのようなものを出すのかと伊織達は首をかしげる。

「こうして俺たちのナワバリに土足で入ってきたのだからな、俺たちのルールでデュエルをしてもらうぜ?」

「そのルールとして、それを使うんか?」

「ああ…チンチロリンデュエルとでも言っておこう」

床に置いた茶碗に向けて、3つのサイコロを立ったまま入れる。

数回回転し、出た目は4,4,1。

「チンチロ…リン??」

初耳なのか、首をかしげる少年少女たちにモハメドが解説する。

「チンチロリンは親となるプレイヤー1人と子となるプレイヤー1人以上で行うゲームだ。3つのサイコロを振って出た目によって組み合わせ、出目が決まり、一番強い出目を出したプレイヤーが勝つゲームだ。ちなみに、今あの男が出した目は4,4,1。この場合は2つの目が一致しているから残り1つの目の数字を使う。つまり、出目は1。当然、1から順番に強い目として扱われる。それ以外にも役はあるが、まあそれはゲームをやりながら解説させてもらうぞ」

「さあ、さっき舐めた態度を取った嬢ちゃんにやってもらうぜ!」

そう言うと、男が伊織の前まで行き、茶碗をおいてサイコロ3つを手渡す。

「え…ええええーーーー!!?」

サイコロを握った伊織がびっくりし、大声を出す。

まさか自分がギャングのボス代行とデュエルをするとは思いもよらなかったのだろう。

こういうことは翔太がやるものだという考えが定着しているためだ。

(翔太くーーん、こういう時にかっこよく登場してこその主人公だよー?)

(伊織様、大丈夫ですか…?)

サイコロを見る伊織のそばにセラフィムが現れる。

(デュエルするとしても、まだテストもしていないデッキですよ?なら、いつもの…)

「だ…だいじょぶだいじょぶ。なんとかなーるなんとかなーる…」

自分に暗示をかけるように大丈夫や何とかなると口にするが、変則ルールと初めて使用するデッキという点からどうしても大丈夫に見えない。

そんな彼女を心配する漁介達だが、そんなことを気にしていられない事態が起こる。

「ボス代行ーーー!!」

「遅くなりやした!!」

天井にある通風口が開き、ギャングが3人入ってくる。

彼らはジョンソンがいる通路を通るのをあきらめ、通風口を通ってここまで来たのだ。

3人ともデュエルディスクを展開し、伊織たちを見ている。

「はぁ、どーなろーに!!」

「しゃあない!!伊織、ここは頼むで!」

「大物は譲ってやる」

漁介、里香、鬼柳がデュエルディスクを展開し、3人を相手にする。

柚子とモハメドが伊織を見守る。

「まずは最初の手札を決めるところからだ!サイコロを振るのはここと自分のドローフェイズ時!そして、役が決まらなかった場合は2回まで降り直しができ、それでも役が決まらない場合はドローできず、最初の手札は0になる」

男がサイコロを立ってまま茶碗に転がす。

出た目は6,6,5だ。

「出目5だ!よって、俺の最初の手札は5枚!!座ってサイコロを振っても構わん」

「ふうう…」

5枚ドローした男を見て、伊織はゆっくり深呼吸し、その場に座る。

(お願い…いい役出て!!)

目を閉じ、手の中にある3つのサイコロを茶碗の中に落とす。

出た目は1,2,3だ。

「1…2…3?」

「ああ…こいつはひどい!」

伊織の出目を見たモハメドが頭を抱える。

「モハメドさん、1,2,3って悪い役なんですか?」

「ああ…この目はヒフミといってな、通常のチンチロリンでは敗北確定で賭け金の倍の額を支払うことになる。おそらく、このデュエルでは…」

「貴様は運がないな。ヒフミはドローできない上に相手に1枚ドローさせる。この場合は俺は手札6枚、お前は手札0枚からのスタートになる!」

「えーーーー!!!???」

「そのかわり、その場合は貴様が後攻になるだな」

先攻1ターン目はドローできないというルールがある以上、手札0枚で最初のターンが来た場合は何もせずにターン終了となってしまう。

それはあまりにもひどいため、ある意味では救済措置としてこのルールが適応される。

どちらも出目なしの場合は両者ともに手札1枚からのスタートとなる。

「俺の名前はバルサム。土足で俺の土地に入った報いを受けてもらう!!(この俺の独壇場でな…)」

(うう…手札0枚からのスタートはきついよー…)

「「デュエル!!」

 

バルサム

手札6

ライフ4000

 

伊織

手札0

ライフ4000

 

「俺のターン!俺はモンスターを裏守備表示で召喚。そして、カードを1枚伏せてターンエンド!」

 

バルサム

手札6→4

ライフ4000

場 裏守備モンスター1

  伏せカード1

 

伊織

手札0

ライフ4000

場 なし

 

「さあ、貴様のターンだ!サイコロを振れぇ!」

バルサムの声を聞き、伊織は自らの手に握られているサイコロを見る。

(またヒフミになったら、あのおじさんに1枚ドローさせることになっちゃうけど…もし出目で6が出たら…!)

詳しい説明がなかったものの、良い出目を出したら今の状況を打開できるかもしれない。

幸い、バルサムのフィールドに存在するモンスターは裏守備モンスター1体のみ。

(伊織の嬢ちゃん…ヒフミ以上にションベンは気を付けてくれ…!茶碗からサイコロが出たら元も子もない…!)

「お願い!!」

その場に座った伊織がサイコロを茶碗の中に落とす。

茶碗の中で、伊織の体感ではかなりゆっくりと3つのサイコロが回る。

出た目は2,5,6、出目なしでもう1度降る。

2度目の出た目は5,4,5。

「出目は4。この場合、貴様は手札が4枚になるようにカードをドローする。もし5枚以上手札がある状態でそれを出した場合、お前は手札が4枚になるようにカードを墓地へ捨てる必要がある」

「やった!サイコロちゃん、このままずっと私の味方でいてね?」

にっこりと笑いながらサイコロを回収し、4枚カードをドローする。

 

伊織

手札0→4

 

「私は手札から魔法カード《調律》を発動!デッキからシンクロンチューナー1体を手札に加え、その後でデッキトップのカード1枚を墓地へ送る!私はデッキから《ジャンク・シンクロン》を手札に!」

伊織の手に《ジャンク・シンクロン》が手札に加わり、デッキトップのカードがデュエルディスクによって自動的に排出され、同じく彼女の手で墓地へ送られる。

 

デッキから墓地へ送られたカード

・ワンショット・ブースター

 

「そして、手札から《ジャンク・シンクロン》を召喚!」

 

ジャンク・シンクロン レベル3 攻撃1300(チューナー)

 

「このカードの召喚に成功した時、墓地からレベル2以下のモンスター1体の効果を無効にし、守備表示で特殊召喚する。私は墓地から《ワンショット・ブースター》を特殊召喚!」

 

ワンショット・ブースター レベル1 守備0

 

「そして、このカードは自分の墓地のモンスターの特殊召喚に成功した時、手札から特殊召喚できるよ。《ドッペル・ウォリアー》を特殊召喚!」

 

ドッペル・ウォリアー レベル2 攻撃800

 

「これでレベル4か5、6のモンスターをシンクロ召喚できる…」

フィールドに現れた3体のモンスターを見て、柚子がそう口にする。

チンチロリンのルールに救われて手札補充できたとはいえ、手札0枚からここまで状況を整えた彼女をすごいと思った。

「レベル2の《ドッペル・ウォリアー》とレベル1の《ワンショット・ブースター》にレベル3の《ジャンク・シンクロン》をチューニング!星の力を宿した2本槍で正面突破!シンクロ召喚!現れて、《スターダスト・アサルト・ウォリアー》!!」

伊織にとって人生初となるシンクロ召喚。

それによって現れたモンスターは《スターダスト・ドラゴン》を模した兜と鎧を着け、そしてドライバー状の槍を両腕に装備した戦士だ。

 

スターダスト・アサルト・ウォリアー レベル6 攻撃2100

 

「このカードのシンクロ召喚に成功した時、私のフィールド上にほかのモンスターがいない場合、墓地のジャンクモンスター1体を特殊召喚できる!復活!《ジャンク・シンクロン》!!」

《スターダスト・アサルト・ウォリアー》が2本の槍をぶつける。

すると、その2本の槍から白い電撃が発生し、それと同時に上空に青い渦が生まれ、中から《ジャンク・シンクロン》が飛び出す。

 

ジャンク・シンクロン レベル3 攻撃1300(チューナー)

 

「そして、《ドッペル・ウォリアー》の効果発動!このカードがシンクロ素材として墓地へ送られた時、《ドッペル・トークン》2体を攻撃表示で特殊召喚できる!」

 

ドッペル・トークン×2 レベル1 攻撃400

 

「更にレベル1の《ドッペル・トークン》2体にレベル3の《ジャンク・シンクロン》をチューニング!機械仕掛けの図書館をたった1人で管理する天才司書さん、ここに登場!シンクロ召喚!現れて、《TGハイパー・ライブラリアン》!!」

 

TGハイパー・ライブラリアン レベル5 攻撃2400

 

このターンで2体のシンクロモンスターが現れた。

(《ハイパー・ライブラリアン》か…やるな)

モハメドの目が《TGハイパー・ライブラリアン》に向けられる。

シンクロ召喚が行われるたびに、デッキからカードを1枚ドローできる。

手札が不安定なチンチロリンデュエルである程度確実に手札を得ることができる貴重なモンスターだ。

「バトル!《スターダスト・アサルト・ウォリアー》で裏守備モンスターを攻撃!」

《スターダスト・アサルト・ウォリアー》が2本槍を前面に押し立て、目の前の裏守備モンスターに向けて突撃する。

「《スターダスト・アサルト・ウォリアー》は貫通効果がある!これでちょっとでもダメージを…!」

2本の槍が裏守備となって身をひそめていた、《メタモルポッド》の黒い体を容易に貫く。

「ふん…!」

 

バルサム

ライフ4000→2500

 

裏守備モンスター

メタモルポッド レベル2 守備600

 

「やった、先制ダメージを与えたわ!」

「いや、こいつは…」

喜ぶ柚子のそばで、モハメドが破壊された《メタモルポッド》を見る。

《メタモルポッド》を扱うデッキがどのようなカードを入れているかは明確だ。

「《メタモルポッド》のリバース効果。お互いに手札をすべて墓地へ捨て、デッキからカードを5枚ドローする」

「あうう…」

悔しそうに手札に残った2枚を墓地へ捨てる。

 

手札から墓地へ送られたカード

バルサム

・暗黒界の尖兵ベージ

・暗黒界の導師セルリ

・暗黒界の術使スノウ

・ネクロ・ガードナー

 

伊織

・くず鉄のかかし

・くず鉄のバリケード

 

くず鉄のバリケード

カウンター罠

(1):フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を対象に発動できる。ターン終了時までそのモンスターは相手のカードの効果によって破壊されない。発動後このカードは墓地へ送らず、そのままセットする。

 

「《ベージ》の効果発動。こいつはカード効果で手札から墓地へ送られた場合、手札から特殊召喚できる。そして、《セルリ》は手札から墓地へ送られた場合、相手フィールド上に表側守備表示で特殊召喚できる!」

伊織とバルサムのフィールドに穴が開き、そこからそれぞれモンスターが1体ずつ出てくる。

バルサムのフィールドに現れたのは青い肉体と骨でできた軽装な鎧、ヘッドギア、槍を装備した兵士が出てくる。

伊織のフィールドには同じ肉体だが、全身を鋼鉄の鎧と青いマント、そして杖を装備した、小学生程度の身長を持つ魔導士が現れる。

杖は黒い木でできていて、先端の鳥のくちばしのような銀の飾りの中には青い魔石がある。

 

暗黒界の尖兵ベージ レベル4 攻撃1600

暗黒界の導師セルリ レベル1 守備300

 

「更に《スノウ》の効果発動。こいつがカード効果で手札から墓地へ送られた時、デッキから暗黒界カード1枚を手札に加える」

デッキから《暗黒界の軍神ゴルド》が排出される。

そして、まだバルサムの仕掛けの効果が続く。

「《セルリ》の効果発動。このカードが暗黒界カードの効果で特殊召喚に成功した時、相手は手札のカード1枚を選択して墓地へ送る」

宣言と同時に先ほど手札に加わったカードを墓地へ送る。

すると、《スターダスト・アサルト・ウォリアー》と《TGハイパー・ライブラリアン》の足元から金色の手甲をつけた腕が出てきて、2体を掴む。

そして、彼らを道連れにそのまま地中へと戻っていく。

「なんで私のモンスターが!?」

「《ゴルド》は相手のカード効果で手札から墓地へ送られた時、相手フィールド上に存在するカードを2枚まで破壊できる。そして、カード効果で手札から墓地へ送られた場合、そのまま墓地から特殊召喚できる」

バルサムのフィールドの中央が砕け、そこから灰色の肉体で黄金の手甲と肩当、翼を持つ、《暗黒界の尖兵ベージ》の2倍の大きさの悪魔が現れる。

その手には黄金でできた刀身の鎌が握られている。

 

暗黒界の武神ゴルド レベル5 攻撃2300

 

《メタモルポッド》が原因で、伊織がせっかく召喚した2体のシンクロモンスターが失われ、2体の暗黒界モンスターが出現した。

更に《ネクロ・ガードナー》も墓地に存在するため、確実に1度は攻撃を無効にされてしまう。

一気に窮地に陥る。

「私はカードを3枚伏せて、ターンエンド!」

 

バルサム

手札4

ライフ2500

場 暗黒界の武神ゴルド レベル5 攻撃2300

  暗黒界の尖兵ベージ レベル4 攻撃1600

  伏せカード1

 

伊織

手札4→3

ライフ4000

場 暗黒界の導師セルリ レベル1 守備300

  伏せカード3

 

「よし…俺のターン!」

ターン開始宣言と同時にサイコロが茶碗へ投げられる。

1回目は1,3,6で出目なしのため、2回目が降られる。

「5,5,6!!なら俺は手札が6枚になるようにカードをドローする!!」

「えーーー!!?」

 

バルサム

手札4→6

 

「俺は手札から魔法カード《暗黒界の雷》を発動。相手フィールド上にセットされているカード1枚を破壊する!」

《暗黒界の雷》から放たれる青い電撃によって、伊織の目の前にある伏せカードが破壊される。

 

破壊された伏せカード

・攻撃の無力化

 

「ふん…《攻撃の無力化》で阻止しようとしていたのか?甘い甘い。更に《暗黒界の雷》の効果で俺は手札を1枚選択して捨てる。俺は《暗黒界の龍神グラファ》を捨てる!そして、《グラファ》がカード効果で手札から墓地へ送られた時、相手フィールド上に存在するカード1枚を破壊する。《セルリ》、下がれ!!」

主の命令を受けた《暗黒界の導師セルリ》が静かに頭を下げ、足元に現れた黒い渦の中へと消えていく。

「更に《グラファ》は俺のフィールド上に存在する暗黒界モンスター1体を手札に戻すことで墓地から特殊召喚できる。俺は《ベージ》を手札に戻す!蘇れ、闇を侵略する光を喰らう守護神!《暗黒界の龍神グラファ》!!」

上空から落ちる青い稲妻によって伊織のもう1枚の伏せカードが破壊される。

バルサムの背後に青い渦が生まれ、そこから黒い翼竜が飛び出してくる。

肉体のところどころに髑髏の模様があり、口からは冷気が漏れ出ている。

 

暗黒界の龍神グラファ レベル8 攻撃2700

 

破壊された伏せカード

・緊急同調

 

「まずい…伏せカードを破壊されただけでなく、上級モンスターを呼び出した。これで、この2体の攻撃を防ぐことができなければ…永瀬の負けだ」

「伊織…」

心配そうに伊織を見つめる柚子。

仮にその場に立っているのが自分だったら、泣いて遊矢に助けを求めてしまうのではないかと思ってしまう。

「バトルだ。俺は《グラファ》でダイレクトアタック!」

《暗黒界の龍神グラファ》の口から放たれる冷気によって、フィールドが凍り付いていく。

そして、伊織の頭上に巨大なつららができて彼女に向けて落下する。

「きゃああ!!」

あわててかわした伊織だが、ライフは減る。

 

伊織

ライフ4000→1300

 

「あ痛たたた…一気に逆転されちゃった。けど、私は手札の《シンクロン・キーパー》の効果発動!このカードは私のフィールド上にモンスターが存在しない状態でダイレクトアタックによるダメージを受けたとき、手札から特殊召喚できる!」

鋼の両腕に黄色いバイク型ミニカーをつけていて、頭部が《ラピッド・ウォリアー》で胴体にシャッターがついている戦車が現れる。

マニピュレーターの指1本1本には銃口があり、そこから銃弾が放たれる仕組みだ。

 

シンクロン・キーパー レベル5 守備1200

 

「このカードが特殊召喚に成功した時、墓地からシンクロンモンスター1体を特殊召喚できる!その効果で特殊召喚したモンスターは戦闘では破壊されない!」

胴体のシャッターが開き、そこから《ジャンク・シンクロン》が飛び出す。

そのモンスターの周囲には電磁波によって制御された小型の円盤端シールドが複数展開されていて、それが攻撃を防ぐ。

 

ジャンク・シンクロン レベル3 守備500(チューナー)

 

シンクロン・キーパー

レベル5 攻撃2200 守備1200 効果 地属性 機械族

「シンクロン・キーパー」の(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールド上にモンスターが存在せず、直接攻撃によって自分がダメージを受けた時に発動できる。このカードを手札から特殊召喚できる。

(2):このカードの特殊召喚に成功した時、自分の墓地に存在する「シンクロン」モンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターを自分フィールド上に特殊召喚する。この効果で特殊召喚に成功したこのカードは戦闘では破壊されない。

(3):(1)の効果で特殊召喚された場合、このカードは以下の効果を得る。

●このカードは1ターンに1度、戦闘および効果によって破壊されない。

 

「ふん…大きなダメージと引き換えにシンクロ素材となるモンスターをそろえたか。ならば俺はカードを1枚伏せてターンエンド!」

 

バルサム

手札6→4(うち1枚《暗黒界の尖兵ベージ》)

ライフ2500

場 暗黒界の武神ゴルド レベル5 攻撃2300

  暗黒界の龍神グラファ レベル8 攻撃2700

  伏せカード2

 

伊織

手札3→2

ライフ1300

場 シンクロン・キーパー(特殊召喚されている) レベル5 守備1200

  ジャンク・シンクロン(《シンクロン・キーパー》の影響下) レベル3 守備500(チューナー)

  伏せカード1

 

《シンクロン・キーパー》に救われ、このターンの敗北をしのいだ伊織。

だが、フィールドに暗黒界モンスターが存在すれば容易に復活できる《暗黒界の龍神グラファ》が登場した。

更に特殊召喚の際に手札に戻った《暗黒界の尖兵ベージ》をこのまま有効活用しない手はない。

「さあ、貴様のターンだ!」

「私のターン、ドロー!」

バルサムの威圧的な声に押される形で、伊織はサイコロを振る。

3,3,1。

「出目…1??」

「出目1か。今の貴様の手札は2枚。ならば手札が1枚になるようにカードを墓地へ捨てろ!ちなみに、このルールで手札から墓地へ捨てたカードの効果は発動しないということを覚えておくのだな!」

なぜこのような状況で悪い出目が出るのか?

悔しそうに手札を見る。

すると、急に伊織の表情が明るくなる。

「じゃあ、私はルールにより、手札から《レベル・スティーラー》を墓地へ捨てる!そして、墓地の《レベル・スティーラー》の効果発動!」

《シンクロン・キーパー》のシャッターが開き、そこから5つの星が射出される。

そして、そのうちの1つが《レベル・スティーラー》に変化し、残りの星が再び《シンクロン・キーパー》の中へ戻っていく。

「《レベル・スティーラー》は私のフィールド上に存在するレベル5以上のモンスター1体のレベルを1つ減らすことで墓地から特殊召喚できる!」

 

レベル・スティーラー レベル1 攻撃600

シンクロン・キーパー レベル5→4 守備1200

 

「レベル4の《シンクロン・キーパー》とレベル1の《レベル・スティーラー》にレベル3の《ジャンク・シンクロン》をチューニング!この世の悪を壊す優しい巨人、地響きと共にただ今登場!シンクロ召喚!現れて、《ジャンク・デストロイヤー》!!」

 

ジャンク・デストロイヤー レベル8 攻撃2600

 

「何!?《ジャンク・デストロイヤー》だと…!?貴様ぁぁ!!」

《ジャンク・デストロイヤー》の効果を知っているバルサムが激昂する。

「《ジャンク・デストロイヤー》の効果発動!このカードのシンクロ召喚に成功した時、シンクロ素材にしたチューナー以外のモンスターの数までフィールド上のカードを破壊できる!ダイダル・エナジー!!」

《ジャンク・デストロイヤー》の胸部から放たれる白い破壊エネルギーの波がバルサムのフィールドに襲い掛かる。

それによって、彼のフィールドにいた2体の暗黒界の神が消滅していく。

ルールによって《レベル・スティーラー》を墓地へ送ったことで、バルサムが受ける損害が大きくなってしまった。

「まだまだぁ!私は手札から《ジェット・シンクロン》を召喚!」

 

ジェット・シンクロン レベル1 攻撃500(チューナー)

 

「そして、《レベル・スティーラー》の効果発動!《ジャンク・デストロイヤー》のレベルを1つ下げて、墓地から特殊召喚!」

 

レベル・スティーラー レベル1 攻撃600

ジャンク・デストロイヤー レベル8→7 攻撃2600

 

「レベル1の《レベル・スティーラー》にレベル1の《ジェット・シンクロン》をチューニング!どんな道であっても目指せ、トップチェッカー!!シンクロ召喚!《フォーミュラ・シンクロン》!!」

 

フォーミュラ・シンクロン レベル2 守備1500(チューナー)

 

「今度はシンクロチューナーか…おのれ!!」

再び《レベル・スティーラー》を利用した伊織に腹を立てるが、そんなことを気にしない伊織はまだまだ行動する。

「《フォーミュラ・シンクロン》の効果発動!このカードのシンクロ召喚に成功したとき、デッキからカードを1枚ドローできる!更に《ジェット・シンクロン》はシンクロ素材として墓地へ送られた時、デッキからジャンクモンスター1体を手札に加えることができる!私はデッキから《ジャンク・サーバント》を手札に!」

《フォーミュラ・シンクロン》、そして《ジェット・シンクロン》の力で更に手札を増やす伊織。

この2枚が更に彼女の動きを加速させていく。

「更に私は墓地の《レベル・スティーラー》の効果をもう1度使う!」

《ジャンク・デストロイヤー》のレベルを下げて再び登場する《レベル・スティーラー》。

たった1ターンの間に休みなしで3回も登場したためか、息切れを見せている。

 

レベル・スティーラー レベル1 攻撃600

ジャンク・デストロイヤー レベル7→6 攻撃2600

 

「そしてこのカードは私のフィールド上にジャンクモンスターが存在するとき、手札から特殊召喚できる!出てきて、《ジャンク・サーバント》!!」

左だけ長めの左右非対称な肩当をつけた、青とオレンジ、黄のトリコロールが基調となっている人型ロボットが現れる。

左右非対称なのは肩当だけでなく、カメラもそうで、右の青いレンズが大きく、左の赤いレンズが小さい。

また、頭部に左側には棘付きの帽子のようなアクセサリーが付けられている。

サーバントという名前のように、登場したそのモンスターはすぐにスポーツドリンクをだし、ストローをつけて《レベル・スティーラー》に飲ませた。

 

ジャンク・サーバント レベル4 攻撃1500

 

「レベル1の《レベル・スティーラー》とレベル4の《ジャンク・サーバント》にレベル2の《フォーミュラ・シンクロン》をチューニング!私も器用になりたい!シンクロ召喚!現れて、《セブン・ソード・ウォリアー》!!」

はっきり言って、口上はもはや自分の願望だ。

まさかこのようなことを言われるとはと思った《セブン・ソード・ウォリアー》も少しきょとんとしている。

 

セブン・ソード・ウォリアー レベル7 攻撃2300

 

「くっそ!何度シンクロ召喚すれば気が済む!?」

「そして、私は手札から装備魔法《錆びた剣―ラスト・エッジ》を《セブン・ソード・ウォリアー》に装備!このカードは戦士族専用の装備魔法で、攻撃力を800アップさせる!」

錆びていて、とても切れ味が良いとは言えない剣が《セブン・ソード・ウォリアー》に装備される。

質量はあるため、もしかしたら鈍器としては使えるのかもしれない。

「《セブン・ソード・ウォリアー》の効果発動!1ターンに1度、このカードが装備カードを装備した時、相手に800ダメージを与える!イクイップ・ショット!」

《錆びた剣―ラスト・エッジ》から放たれる光線がバルサムの胸部を貫く。

「ぐはぁ!!」

 

バルサム

ライフ2500→1700

 

セブン・ソード・ウォリアー レベル7 攻撃2300→3100

 

「(よし…これで、私のフィールドにはあのおじさんにとどめを刺すことができるモンスターが2体。1体目の攻撃は《ネクロ・ガードナー》に防がれちゃうけど、もう1体の攻撃は届く!)バトル!まずは《セブン・ソード・ウォリアー》でダイレクトアタック!!」

先行する《セブン・ソード・ウォリアー》が錆びた剣の刀身をバルサムにたたきつけようとするが、そんな彼の前に《ネクロ・ガードナー》が立ちはだかる。

「《ネクロ・ガードナー》の効果発動!このカードを墓地から除外することで、1度だけ貴様からの攻撃を阻止できる!」

《ネクロ・ガードナー》が《セブン・ソード・ウォリアー》の剣を白刃取りするものの、最後は腹部に蹴りを加えられて破壊される。

そして、《ジャンク・デストロイヤー》がその間に4つの拳にエネルギーを集中させている。

「《ジャンク・デストロイヤー》!!とどめを刺して!!」

《ジャンク・デストロイヤー》の4つの拳から放たれるエネルギー弾が襲い掛かるものの、バルサムの目の前に現れて分厚い氷の壁に阻まれる。

「ええ…!?」

「速攻魔法《暗黒界に続く結界通路》を発動。この効果で墓地から《暗黒界の龍神グラファ》を特殊召喚した」

彼の背後に再び現れる《暗黒界の龍神グラファ》が静かにその冷徹な目線を《ジャンク・デストロイヤー》に向ける。

 

暗黒界の龍神グラファ レベル8 攻撃2700

 

「うう、とどめを刺せなかった…。じゃあ、《ジャンク・デストロイヤー》の攻撃はおしまい!このままターンエンド!」

悔しそうに《暗黒界の龍神グラファ》を見る伊織。

《セブン・ソード・ウォリアー》の効果を使えば容易に破壊できるが、容易に復活することからこのターンでの破壊はあまり意味をなさない。

 

バルサム

手札4(うち1枚《暗黒界の尖兵ベージ》)

ライフ1700

場 暗黒界の龍神グラファ レベル8 攻撃2700

  伏せカード1

 

伊織

手札2→1→0

ライフ1300

場 ジャンク・デストロイヤー レベル6 攻撃2600

  セブン・ソード・ウォリアー(《錆びた剣―ラスト・エッジ》装備) レベル7 攻撃3100

  伏せカード1

 

「くそぅ、あと一歩攻めきることができなかったな…。これが吉と出るか凶と出るか…」

 

一方、翔太とジョンソンは…。

「あとはお前を倒したら終わりだな…」

翔太の周囲にはすでに10人を超えるギャングが敗北し、気を失っている。

「や、やれるもんならやってみろ!!《A・O・Jディサイシブ・アームズ》の攻撃力は3300!攻撃力2500の《真六武衆―シエン》では倒せない!!」

ガクガク震えながら論理的に自分が敗北しない理由を口にする。

フウとため息をついた翔太はとどめのために行動する。

「俺はレベル5の《真六武衆―シエン》にレベル2の《六武衆の影武者》をチューニング。シンクロ召喚。現れろ、《六武衆の大将軍―紫炎》!!」

青いマントがついた深紅の大鎧と兜を身に着けた《真六武衆―シエン》が現れる。

その姿はある程度天下に名をとどろかせたことの姿であり、まだ天下自体を獲ってはいない。

 

六武衆の大将軍―紫炎 レベル7 攻撃2500

 

「そして俺は手札から魔法カード《貪欲な壺》を発動。それと同時に《紫炎》の効果発動。1ターンに1度、魔法・罠カードの発動を無効にし、破壊する」

「何!?自分が発動した魔法カードを無効にするだと…!?」

一見すると無駄だともいえる翔太の行動だが、それによってギャングの敗北が決定的なものとなる。

「そして、《紫炎》が《真六武衆―シエン》もしくは紫炎モンスターを素材にシンクロ召喚した状態で魔法・罠カードの発動が無効になった時、攻撃力がターン終了時まで倍になる」

 

六武衆の大将軍―紫炎 レベル7 攻撃2500→5000

 

六武衆の大将軍―紫炎

レベル7 攻撃2500 守備2000 シンクロ 闇属性 戦士族

戦士族チューナー+チューナー以外の「六武衆」「紫炎」Sモンスター1体

(1):1ターンに1度、魔法・罠カードを発動した時に発動できる。その発動を無効にし破壊する。

(2):フィールド上に表側表示で存在するこのカードが破壊される場合、代わりにこのカード以外の自分フィールド上に存在する「六武衆」モンスター1体を破壊する事ができる。

(3):このカードが「真六武衆―シエン」もしくは「紫炎」モンスターをS素材としてS召喚した場合、以下の効果を得る。

●1ターンに1度、魔法・罠カードの発動が無効となったときに発動できる。ターン終了時までこのカードの攻撃力が倍となる。

 

「攻撃力5000!?」

「《大将軍―紫炎》で《ディサイシブ・アームズ》を攻撃!」

《六武衆の大将軍―紫炎》が手を空に掲げると、上空に赤黒い雲が現れ、そこから1本の刀が降りてくる。

刀身には『宗三左文字』と刻まれている黒い持ち手の刀であり、これは彼が初めて自らの運命を賭けた戦をし、倒した敵大将の刀だ。

《六武衆の大将軍―紫炎》はそれを手に取ると、一撃で巨大な《A・O・Jディサイシブアームズ》を切り裂いた。

「ぐにゃあああ!!?」

 

ギャング

ライフ400→0

 

「これで…俺の任務は完了ってところだな」

もうデュエルのできる相手がいないことを確認した翔太は堂々と正面の扉から中へ入っていく。

(ま、あいつらの手伝いくらいはしとかねえとな)

 

また、ジョンソンも決着の時を迎えようとしている。

既に最初に戦った1人と、痕から駆けつけていた2人を倒し、最後の1人と対峙する。

「く、くそぉ!!」

「バトルだ。私は《カラクル大将軍無零怒》でダイレクトアタック」

《カラクル大将軍無零怒》が両手に2本の刀を無慈悲に無力な男の頭上に振り下ろしていく。

「こんなんで終われるかよ!?永続罠《リビングデッドの呼び声》発動!その効果で《A・ジェネクス・アクセル》を特殊召喚!」

金色の手や黒い車輪型の両足、そして背中についている表が銀で裏が金の輪以外の装甲と構造が《A・ジェネクス・トライアーム》とそっくりになっている機械が現れる。

その輪は自立浮遊のために、両サイドに青い球体型の重力軽減装置が埋め込まれている。

 

A・ジェネクス・アクセル レベル8 攻撃2600

 

(こいつでしのいで…次のターンのドローに…!)

多少のダメージを承知のうえで勝負に出るギャングだが、ジョンソンにそのような手は通用しない。

既に対策済みだ。

「私は手札から速攻魔法《インスタント・チューン》を発動。私のフィールド上にシンクロモンスターが存在し、相手がモンスターの特殊召喚に成功した場合、デッキのレベル1モンスターとフィールド上の私のシンクロモンスターでシンクロ召喚を行う。私はデッキから《カラクリ漁師七無三》を選択する!」

デッキから両腕にはさみのようなアンカーがついていて、《カラクリ忍者九壱九》のような細い足の肘部分に麻酔銃が装着された、青い毛皮で上半身を包んだカラクリが現れる。

背中には更にアンカーでも使用できる茶色い単発式の猟銃があり、更には獲物を入れるための藁籠もついている。

「レベル8の《無零怒》にレベル1の《七無三》をチューニング。シンクロ召喚!レベル9!現れろ、戦場を操る軍配、《カラクリ大将軍無零苦》!」

頭部を赤い鬼の仮面で隠し、全身を赤いボロボロなマントで身を隠した巨大なからくりが現れる。

太くて茶色い木造の右腕だけがマントから出ており、その手には赤い日の丸がついた漆黒の軍配が握られている。

それ以外は顔を含めて仮面とマントに隠されていて、このモンスターが本当にカラクリなのかすらわからない。

 

カラクリ大将軍無零苦 レベル9 攻撃3000

 

「《無零苦》の効果。このカードのシンクロ召喚に成功した時、デッキからカラクリモンスター1体を特殊召喚できる。私はデッキから《カラクリ無双八壱八》を特殊召喚」

白い頭巾と青い袈裟、数珠に鉤槍という僧兵のような装備をしている大型のカラクリが現れる。

無駄な消耗を軽減するためか、現在は東部に大きく1つだけついている赤いカメラの光が消えている。

 

カラクリ無双八壱八 レベル4 攻撃2100

 

「そして、《カラクリ大将軍無零苦》は1ターンに1度、フィールド上のモンスター1体の表示形式を変更できる。私は《アクセル》の表示形式を守備表示に変更させる」

《カラクリ大将軍無零苦》が軍配を振ると、激しい風がギャングのフィールドに襲い掛かる。

そして、《A・ジェネクス・アクセル》は吹き飛ばされないように身をかがめ、守備表示に変更してしまう。

 

A・ジェネクス・アクセル レベル8 攻撃2600→守備2000

 

「はぁ!?何無駄な行為を…?」

「《カラクリ大将軍無零苦》の効果。カラクリモンスターが守備表示モンスターを攻撃した時、そのモンスターの攻撃力か守備力のどちらか高い方の数値分のダメージを相手に与える」

軍配が起こした風が次第に強くなっていき、鎌鼬となってギャングに襲い掛かる。

「う、うううう、そだろーーー!??」

 

ギャング

ライフ2600→0

 

カラクリ漁師七無三

レベル1 攻撃700 守備300 チューナー 地属性 機械族

「カラクリ漁師七無三」の(3)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードは攻撃可能な場合には攻撃しなければならない。

(2):フィールド上に表側攻撃表示で存在するこのカードが攻撃対象に選択された時に発動する。このカードの表示形式を守備表示にする。

(3):このカードの召喚に成功した時に発動できる。自分の墓地に存在するレベル4以下の「カラクリ」モンスター1体を攻撃表示で特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化される。

 

カラクリ大将軍無零苦(ブレイク)

レベル9 攻撃3000 守備2800 シンクロ 地属性 機械族

チューナー+チューナー以外の「カラクリ」Sモンスター1体以上

(1):このカードがS召喚に成功した時に発動できる。自分のデッキから「カラクリ」モンスター1体を特殊召喚する。

(2):1ターンに1度、フィールド上に存在するモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターの表示形式を変更する。その時、リバース効果は発動できない。この効果は相手ターンでも発動できる。

(3):1ターンに1度、自分フィールド上に存在する「カラクリ」モンスターが相手フィールド上に存在する守備表示モンスターを攻撃するとき、ダメージ計算時に発動できる。そのモンスターの攻撃力か守備力の高い方の数値分のダメージを相手に与える。

 

「足音が上からしか聞こえない。デュエルの音も…。ん?1階にこちらへ走ってくる奴が…?」

デュエル後、耳に集中したジョンソンが慎重にその足音を分析する。

「隠密性の欠片の無い大きな足音。敵がいないことを確信している。歩幅からして彼は…」

「よお、蜘蛛野郎」

「…お前か、秋山」

フッと笑ったジョンソンは立ち上がり、ついさっき到着した翔太を迎える。

「伊織たちはどうした?」

「ボスの部屋だ。…まさか、永瀬の名前を真っ先に出すとはな」

「ふん、あいつがヘマをしないか心配なだけだ」

さっさといくぞと言ってから、ジョンソンが塞いでいた廊下を進もうとする翔太。

そこでジョンソンが念のために説明をする。

「待て。デュエルをしている際にかすかだが、陶器に何か堅いものが何度も当たる音が聞こえた。おそらく、2階からだろう」

(こいつの耳…違う意味で壊れているんじゃねえか?)

「おそらく、デュエルは既に始まっている。用心しろ」

「そのセリフ、そのまま返すぜ」

そう言うと、翔太は再び走り出す。

そして、ジョンソンは里香がやってしまったことを思い出し、杖で足元を確認しつつ、ゆっくりと歩を進める。

 

ここで、場所が2階へ移り、デュエルはバルサムのターン。

「俺のターン、ドロー!!」

サイコロを茶碗の中に向けて投げる。

3つのサイコロが導き出すは4,6,6。

「出目は4!よって俺は手札が4枚になるようにカードをドローする必要があるが、もう手札は4枚。ドローはできない!」

「はふう…」

ドローされずに済んだことでほっとする。

4枚のうち1枚は《暗黒界の尖兵ベージ》。

問題は残り3枚の手札の正体だ。

「俺は罠カード《暗黒よりの軍勢》を発動!墓地に存在する暗黒界モンスター2体を手札に戻す」

 

墓地から手札に戻ったカード

・暗黒界の導師セルリ

・暗黒界の術師スノウ

 

(さてと…あとはこいつを使わせてもらおうか…)

ニヤリとバルサムは手札からあるカードをフィールドに出す。

「俺は手札から魔法カード《融合》を発動!」

「え、ええ!?!?」

「《融合》!?どうして…??」

なぜシンクロ次元のデュエリストが《融合》を!?

柚子と伊織、そしてデュエルをしている鬼柳と漁介、そして里香が驚く。

 

これは数日前のこと。

「何??ボスをセキュリティに引き渡せだと!?」

雨の降る夜、何者かに手紙で呼び出されたバルサムが茶色いフード付きのコートで全身を包み込んだ男からある依頼をされる。

それが今、バルサムが驚きながら確認するように連呼したセリフだ。

真っ暗で顔は見えないが、このようなことを口にするとしたら相手はセキュリティに間違いない。

暗黙の掟として、ギャングはデュエルに強い相手に従うことになっている。

決して、敵対するギャングのメンバーであったとしてもセキュリティに引き渡すのはご法度。

「報酬として、このカードを差し上げましょう」

雨に濡れないように、丁寧に透明なビニールで包まれた2枚のカードが渡される。

1枚は融合モンスター、もう1枚は《融合》。

「《融合》…??」

「これは未知の召喚法です。これを使うことで、あなたはこのギャング、ホイールズをコモンズ最強のチーム。セキュリティをも従えるほどの力を得ることができるでしょう」

「コモンズ…最強…」

彼の目に数日前に新しく張り出されたばかりのポスターが映る。

Dホイール、ホイール・オブ・フォーチュンに乗るジャックとキャッチフレーズ。

『デュエルキング、ジャック・アトラス 最高のsatisfactionをあなたに』

コモンズから身を起こし、最強のデュエリストとなったジャック・アトラス。

そんな彼が過ごしているであろう生活を想像する。

数多くの美女、何もせずに降ってくる札束のシャワー、見たこともない優雅な料理、名声。

「ふふ…あなたの思っていることは分かりますよ。そう、このカードがあればあなたは…」

ゆっくりと彼の傍まで近づき、耳元で静かにこうつぶやく。

「新たなキングにもなれる」

 

「(そうだ…コモンズ最強のギャングチームを持ち、ジャック・アトラスを倒す!!そして、手に入れる!!甘美な日々を!!)このカードは手札・フィールドのモンスターを素材に融合召喚を行う!俺が融合素材とするのは《暗黒界の龍神グラファ》、《暗黒界の軍神シルバ》、《暗黒界の尖兵ベージ》、《暗黒界の導師セルリ》、《暗黒界の騎士ズール》!!」

フィールド、手札にいる暗黒界5体が上空に現れた《融合》の渦に取り込まれていく。

「いきなり、この次元で《融合》だなんて…」

「暗黒の果て、混沌を統べし王よ!闇を救済せんがため、今こそ暗黒界の門より出でよ!融合召喚!レベル12!《暗黒界の混沌王カラレス》!!」

《融合》が次第に骸骨の装飾が複数ついた漆黒の門へと変化する。

そして、そこから黒い肉体を銀の細工が優雅についた黒い鎧とマントで包み込んだ、銀色の2本角の悪魔が現れる。

右手には七支刀を模した銀の剣が握られている。

 

暗黒界の混沌王カラレス レベル12 攻撃3500

 

「《暗黒界の混沌王カラレス》…」

銀のような白と鉛のような黒だけで色彩されたシンプルな悪魔に戦慄する。

「こいつは暗黒界最強のモンスター!このカードで頂点を目指す!!バトルだ!《カラレス》で《セブン・ソード・ウォリアー》を攻撃!!」

《暗黒界の混沌王カラレス》の剣に灰色のオーラが宿り、その剣で《セブン・ソード・ウォリアー》の《錆びた剣―ラスト・エッジ》とつばぜり合いする。

すると、剣から徐々に《セブン・ソード・ウォリアー》の肉体が石化していく。

なぜ自分が石になっていくのか?

その理由が混沌王の力ゆえであることを理解した時には既に全身が石となり、風化した後だった。

「《セブン・ソード・ウォリアー》が…!!」

 

伊織

ライフ1300→900

 

「けど、《ラスト・エッジ》の効果発動!装備されているこのカードが墓地へ送られた時、相手に800ダメージを与える!」

 

バルサム

ライフ1700→900

 

「ふん…だがここで《カラレス》の効果が発動する。このカードが相手モンスターと戦闘を行ったダメージ計算終了時に、俺は手札1枚墓地へ捨てることができる。この効果で墓地へ捨てたカードは相手の効果によって捨てたものとして扱われる。俺は手札の《暗黒界の術師スノウ》を捨てる!」

手札から墓地へ捨てられた《暗黒界の術師スノウ》の霊気がバルサムのデッキと伊織の墓地に憑依する。

「このカードがカード効果によって手札から墓地へ捨てられた場合、デッキから暗黒界カード1枚を手札に加える。俺はもう1枚の《暗黒界の龍神グラファ》を手札に加える。そして、もう1つの効果も発動。このカードが相手のカード効果によって手札から墓地へ捨てられた場合、相手の墓地に存在するモンスター1体を表側守備表示で特殊召喚できる。俺は貴様の墓地に存在する《TGハイパー・ライブラリアン》を特殊召喚する!」

墓地に眠る《TGハイパー・ライブラリアン》が冷気に触れらことで肌の色が青くなっていく。

そして、全身から青白いオーラを放ちながらバルサムのフィールドへ向かっていく。

 

TGハイパー・ライブラリアン レベル5 守備1800

 

「あうう…」

ドローソースとしての効果のある《TGハイパー・ライブラリアン》が奪われたことで、伊織はむやみにシンクロ召喚を行うこともできなくなった。

《暗黒界の混沌王カラレス》の効果は攻撃された場合でも発動できる。

被害を抑え、確実に勝利を収めるには一撃。

たった一撃で《カラレス》を倒し、バルサムのライフを0にすること。

(どうしてあの人が融合召喚を使うのかはわからないけど…このデュエルに勝って聞き出せば…!)

「俺はこれでターンエンド!次が貴様のラストターンだ!!」

 

バルサム

手札4→1(《暗黒界の龍神グラファ》

ライフ900

場 暗黒界の混沌王カラレス レベル12 攻撃3500

  TGハイパー・ライブラリアン レベル5 守備1800

 

伊織

手札0

ライフ900

場 ジャンク・デストロイヤー レベル6 攻撃2600

  伏せカード1

 

バン!!

ターン終了と同時に扉が開き、翔太とジョンソンが入ってくる。

「ジョンソンはん!」

「翔太!!」

「翔太か」

《ドラグニティアームズ―レヴァテイン》と《氷結界の龍グングニール》、《煉獄龍オーガ・ドラグーン》でそれぞれがギャングにとどめを刺した後、3人が2人に駆け寄る。

「済まない、まさかまだ追手がいたとは…」

「気にすんなって、おかげでゆーに倒せたんじゃ」

笑いながら自分の倒したギャングを見る漁介。

そして、里香と鬼柳が翔太たちに事情を説明する。

「それよりも大変なんや!このギャングのボスのおっちゃん、融合を使うたんやで!」

「シンクロ次元の人間が融合…におうな」

「…」

翔太は2人の言葉を聞いた後で、《暗黒界の混沌王カラレス》と伊織を見る。

そして、ニヤッと笑う。

「はぁ!?何を笑うとるんや!?このままやと伊織が…」

「何言ってんだ?この程度で負けるタマじゃねえだろ」

「お前、今あいつがやっているデュエルのことを分かったうえで言ってるのか?」

「知らねえな」

倒れているギャングを椅子代わりにする翔太がデュエルを見る。

そして、《暗黒界の混沌王カラレス》から目線を完全に伊織に向ける。

「伊織。さっさとこの程度の相手、倒してしまえよ」

「翔太君…」

先程のこの程度で負けるタマじゃねえという言葉は聞こえていた。

好意的に解釈すれば、翔太は自分の勝利を信じてくれている。

素直に入ってくれないのが不満だが。

「私のターン…」

3つのサイコロを右手に納めると、それを額に当てる。

(お願い…いい目になって!!)

一縷の願いを込めて、サイコロを振る。

出たのは4,5,6。

「何!?シゴロだと!?!?シゴロは今の手札の枚数に関係なく、デッキからカードを2枚ドローする…」

「うーん、うれしいような嬉しくないような…」

出目3以上の方がもっと手札を増やすことができた伊織は苦笑いしながらカードを引く。

ちなみに3つすべて同じ目の場合、アラシは手札の枚数に関係なくデッキからカードを1枚ドローすることになる。

 

伊織

手札0→2

 

「私は墓地に存在する《ジェット・シンクロン》の効果を発動!このカードは手札を1枚墓地へ送ることで墓地から特殊召喚できる!」

 

ジェット・シンクロン レベル1 攻撃500(チューナー)

 

手札から墓地へ送られたカード

・クイック・シンクロン

 

「更に私は手札から《シンクロン・エクスプローラー》を召喚!」

 

シンクロン・エクスプローラー レベル2 攻撃0

 

「このカードの召喚に成功した時、墓地のシンクロンモンスター1体を特殊召喚できる!現れて、《クイック・シンクロン》!!」

《シンクロン・エクスプローラー》の腹部にあるハッチが開き、そこから《クイック・シンクロン》が飛び出してくる。

 

クイック・シンクロン レベル5 攻撃700(チューナー)

 

「レベル2の《エクスプローラー》にレベル5の《クイック・シンクロン》をチューニング!次元を越えて自由を目指せ!シンクロ召喚!現れて、《ジャンク・アーチャー》!!」

 

ジャンク・アーチャー レベル7 攻撃2300

 

「《ハイパー・ライブラリアン》の効果で、俺はカードを1枚ドロー!」

「《ジャンク・アーチャー》のレベルを1つ下げて、墓地から《レベル・スティーラー》を特殊召喚!」

 

レベル・スティーラー レベル1 攻撃600

ジャンク・アーチャー レベル7→6 攻撃2300

 

「そして、《ジャンク・アーチャー》の効果発動!1ターンに1度、相手フィールド上に存在するモンスター1体をターン終了時まで除外できる!ディメンション・シュート!!」

《ジャンク・アーチャー》が右目部分のセンサーのレベルを上げつつ、左手に持つ弓に矢をかける。

そして、センサーが距離や最適な力の入れ具合を計測し、それに従って矢を放つ。

矢を受けた《暗黒界の混沌王カラレス》が一瞬で姿を消してしまった。

「何!?《カラレス》が…!」

「バトル!《ジャンク・アーチャー》で《ハイパー・ライブラリアン》を攻撃!スクラップ・アロー!!」

《ジャンク・アーチャー》が2本目の矢を放ち、その矢を受けた《TGハイパー・ライブラリアン》が爆発した。

「ぐううう!!」

「《ジェット・シンクロン》と《レベル・スティーラー》でダイレクトアタック!!」

《ジェット・シンクロン》が《レベル・スティーラー》の背中に乗り、後方についているスラスターを起動させる。

スラスターによってスピードが増した《レベル・スティーラー》がそのままバルサムの腹部を貫いていく。

「ぐわああああ!!」

 

バルサム

ライフ900→400→0

 

暗黒界の混沌王カラレス

レベル12 攻撃3500 守備3000 融合 闇属性 悪魔族

「暗黒界」モンスター×5

このカードは融合召喚でのみ特殊召喚できる。

(1):このカードが相手モンスターと戦闘を行ったダメージ計算終了時に発動できる。自分の手札1枚を墓地へ捨てる。この効果で捨てる場合、相手の効果によって捨てられた事になる。

(2):このカードが破壊された場合、自分の墓地に存在する「暗黒界」カード2枚を対象に発動する。そのカードを手札に加える。

(3):このカードは効果では破壊されない。

 

「やったーーー!!」

勝利した伊織が無邪気にバンザイする。

「これでここはウチらの縄張りやな!!」

「ふん…」

ボスを倒したことで、ホイールズが領有していた鷹栖区がシェイドの縄張りとなり、港を抑えることに成功した。

これでコモンズで作った製品を海外や他の都市へ売ること、もしくはその地の商品の購入が可能となった。

そして、翔太はゆっくりと倒れているバルサムのところへ歩いていく。

墓地にあると思われる《融合》とカードケースに入っている《暗黒界の混沌王カラレス》を回収するために。

しかし…いくら探してもその2枚にカードが見つからない。

(カードが消えた…だと??)

証拠抹消のためなのか、それとも彼はただ利用されただけなのか、自分たちが夢を見ていただけなのか…?

「ほらほら翔太君、今回MVPの伊織様を称えなさーい」

少し調子に乗った伊織が真面目に考えている翔太に能天気に声をかける。

「…この程度の相手に苦戦してるんじゃねーよ。お先真っ暗だな」

「もーー!!翔太君は今日の晩御飯抜き!」

「今日の晩飯当番、お前じゃねーだろ」

ギャーギャー口げんかをし、伊織の言葉をのらりくらりと交わす翔太。

それを見た柚子は今どこで何をしているのかわからない遊矢に想いを馳せる。

(遊矢…私、ちゃんと頑張ってるから…)

 

「バルサム…あなたはポーンにすらなることができませんでしたか…」

前方と左右がガラス張りで、自動扉がある背後の壁と床は青を基調とした装甲となっている部屋の中、1人でチェスを行う男が黒いポーンをフィールドから追放する。

彼がジャン・ミシェル・ロジェ。

治安維持局長官となった彼だが、それ以前の経歴は謎に包まれている。

前方のガラスにはトップスとコモンズの地図が表示されていて、鷹栖区の色が青から黒に変化した。

「失礼します」

扉があき、そこから白い鉢巻きで整えた紫色の髪で色が青ではなく灰色のオベリスクフォースの制服を着た男が入ってくる。

50代後半であるためか、顔には少なくない皺が存在し、とび色の瞳を細くロジェに向けている。

「バルサムが敗れたとのことです」

「そうですね…彼ではコモンズの人間すら倒せませんでしたか」

フッと笑いながら地図を見つめる。

背後にいる男に目を向けることはない。

「ロジェ様。バルサムを倒したギャングチームの名前がわかりました。チーム名はシェイド。最近結成されたばかりのチームです」

「その程度のチームに足を救われるとは…恥ずかしい事ですね。だが…」

白い騎士の駒を手にとり、それを2マス先の右側のマスに移動させる。

「シェイドについて調査をしてください。あなた方は表向きでは私個人に雇われた凄腕のデュエリスト。この程度なら可能なはずです」

「…承知しました」

頭を下げた後で男が部屋から出ていく。

その後で、ロジェがコンピュータを操作して地図からその男の履歴書に表示を変更する。

「ブーン。戦果を期待していますよ。シェイド…一体どちらの影なのでしょうか」

 

その日の夜のとある廃墟となっているマンション…。

そこの306号室に月影が窓から侵入する。

多くの部屋はドアもガラスも壊れていて、満足に生活できない環境である中でこの部屋は数少ないガラスもドアも健在だ。

訓練によって、暗い空間の中で物を見るのに慣れている月影がゆっくりと奥へと入っていき、居間に到達する。

すると何かの気配を感じたのか背中の忍刀を抜いてすぐに背後の振り返る。

それと同時に冷たい銃口が彼の額に密着する。

「…なるほど、刃が近いにもかかわらず、呼吸や体の動きに乱れはない」

「それはお前も同じことだ」

冷たい刃は首から横にわずか4センチ離れていて、少し動かすだけで頸動脈を切り裂くことが可能だ。

にもかかわらず、動揺しない点に月影は表情と動きには見せないもののかなり驚いている。

銃を持つ男もまた、月影の動揺の無さを評価する。

「俺に伝えたいことは何だ?風魔月影」

「伝言でござる。ヒイロ・リオニス殿」

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