「はあはあはあ…」
デュエルが終わり、Dホイールを止めた翔太がゆっくりと息を整える。
久しぶりにハードなデュエルをしたことで、かなり疲れはしたものの、達成感があった。
「よぉ、いいデュエルだったなぁ」
Dホイールから降り、いつの間にヘルメットとライディングスーツを外し、緑色の甚平姿と茶色い下駄をはいた姿になった徳松が敗れたにもかかわらず、うれしそうに笑いながら彼に声をかける。
「まぁな。おっさんにはきついデュエルだったか?」
「おいおい、おっさんはないだろ。…このまま勝ち進めよ?」
「はぁ?」
勝ち負けは関係なく、楽しめたかだけが重要だと説く徳松らしからぬ最後の言葉に疑問を持つ。
そんな彼を無視して、徳松は観客席を見る。
「デュエルとはすなわち、人生なり。負けを恥じず、勝って驕らず。すなわち、レッツエンジョイ!」
自らの信条を表現する言葉を観客たちに投げかける。
そんな彼に向けて、客席からは惜しみない拍手が送られる。
それに満足した徳松はじっと自分が入った門に目を向ける。
「さぁ…参ろうか」
そして、彼は静かにその門の中へと入っていった。
「ん…?」
ふと、周囲を見渡す。
召喚したとき、そばにいたはずのビャッコの姿が見えないのだ。
「あいつ、どこへ行ったんだ?」
「ふぅぅぅ、翔太君が勝ったー」
あまりにもハラハラしたデュエルのためか、伊織はフウウと息を整える。
「キュイー…」
「あ、ビャッコちゃん!どこへ行ってたのー??」
いつの間に隣に現れたビャッコを伊織がモフモフし始める。
なお、モハメドは少し残念そうにしている。
「エンジョイ長次郎…叶うならば、まだあんたのデュエルを見たいぜ。叶うなら…」
「何を言っているんだ?まるで、もう二度と見ることができないみたいな言い草だな」
「二度と見れないか…。フッ、そうかもな」
「…?」
どういうことだと問いかけようとする鬼柳だが、テレビではすぐに次の試合の放送が始まる。
(さあみなさん、お待たせしました!!これより、フレンドシップカップ1回戦第4試合を開始します…」
第4試合が始まる中、治安維持局長官室ではロジェが自分のノートパソコンにリアルタイムで送られるデータを見ながら笑みを浮かべていた。
もちろん、それの左隣にはチェス盤と駒が置かれている。
「権現坂昇、風魔月影…。ランサーズの2人は少々残念な結果でしたが、秋山翔太…彼からは今後も良質なデータを取ることができそうだ」
ディスプレイにはこのフレンドシップカップでデュエルをした権現坂、クロウ、月影、シンジ、翔太、徳松のデッキ内容や戦術などが数値化されたうえで表示されている。
そして、集まった膨大なデータを自らの手で整理していく。
権現坂のデータ整理を終え、次に月影のものに手を付けようとしたとき、女性職員の声がノートパソコンから発せられる。
(長官。お客様です)
「今は忙しい。時間を改めるようにお伝えしなさい」
(わかりました。お伝えします…って、ええ??らりるれろ??)
らりるれろ、という言葉を聞いたロジェの手がぴたりと止まる。
(あの、らりるれろとはどういう…!?…帰られました)
事情の分からない職員は混乱しながらも、最低限の報告を行う。
「ほぉ…」
指示を願う職員をよそに、静かに笑みを浮かべる。
そして、一方的に通信を切ると、別の人物と通信をつなげる。
「君の出番ですよ」
それだけ言い残すと、ロジェは先ほどと同じように通信を切った。
イリアステル区の真下に位置するスラム街、旧イリアステル区。
ほかのコモンズの地区とは異なり、高層ビルや議事堂など中心都市だったころの面影が色濃く残る地域だ。
しかし、中心都市の機能がトップスのイリアステル区に移った今はスラム街と化し、貧民やギャングのたまり場と化している。
その地区の南東部に位置する、土も花もない花壇と機能を停止し、水のなくなった噴水が残る公園にブーンの姿があった。
「…。らりるれろ」
噴水のそばで、ブーンが右手に握るトランシーバーに向かってそう口にする。
そして、彼の背後に車いすに乗った男が現れる。
「遅かったですね、ブーンさん」
「ふん…貴様が回りくどいやり方を決めるからだ」
トランシーバーを置いたブーンはゆっくりと後ろの振り返る。
そして、車いすの男の名前を呼ぶ。
「エリク・ファビアン」
名前を呼ばれたエリクはロジェに似たうっすらとした笑みを浮かべ、左手に義手から右手を離す。
「どういうつもりだ?シェイドと同盟を結ぶとは…?」
「有益な情報を得る一番の方法をとっただけですよ」
「ふん…スパイか」
「あなたたちジェルマンこそ、私と似た行動をしているのではないのですか」
「何のことだろうな」
そういいながら、ブーンは葉巻たばことピンク色の100円ライターを出す。
「吸うか?サティスファクションタウン産だ」
「いえ…この体になってしまってから、健康に気を遣うようになりまして。お気持ちだけいただきます」
「そうか」
煙草に火をつけ、口に加える。
紙巻のものとは違い、ゆっくりと燃える葉巻たばこからはゆっくりと黒い煙が空へ登っていく。
「頼まれた品物は用意しているか?」
「ええ…。こちらです」
車いすをブーンのそばまで移動させたエリクが彼にUSBメモリを渡す。
「これがあなたとロジェが望んでいる品です。ですが、念のためにパスワードを入れておきました。仮に私の正体がばれ、殺された際に情報が渡らないように…」
そういうと、エリクは左腕のリモコンを操作する。
そして、車いすからデュエルディスクとデッキが出現し、彼のひざ元にセットされる。
「なるほど…。デュエルをしなければ解除されないと」
「ええ。必要な手順を踏んだうえで…ですが」
「いいだろう。この次元に来てから、ろくにデュエルをしていないからな」
エリクに無理をさせないように、ブーンが自ら歩いて距離を置き、それからデュエルディスクを展開する。
「「デュエル!!」」
エリク
手札5
ライフ4000
ブーン
手札5
ライフ4000
「私は手札から儀式魔法《黒竜降臨》を発動します。このカードは手札・フィールドから合計レベルが4以上になるようにモンスターをリリースし、手札から《黒竜の聖騎士》を儀式召喚します。私は手札の《デーモンの召喚》をリリース」
エリクのフィールドに《デーモンの召喚》が現れる。
そして、すぐにそのモンスターは自らの姿を6つの黒い火の玉に替え、円陣を組む。
「黒竜を呼ぶ闇の騎士よ、悪魔の叫びに応え、地獄より舞い戻れ。儀式召喚!レベル4!《黒竜の聖騎士》!」
エンジンから黒い火柱が上がると、その中から《青眼の白龍》と似た姿をした黒い竜が飛び出す。
そして、その背には右手に片手剣を握り、その竜を模した黒い鎧を着た褐色の騎士が乗っている。
黒竜の聖騎士 レベル4 攻撃1900
「このカードをリリースすることで、手札・デッキからレッドアイズモンスター1体を特殊召喚できます。私は《黒竜の聖騎士》をリリースし、デッキから《真紅眼の黒炎竜》を特殊召喚」
聖騎士が姿を消し、黒竜がその身を翼で隠す。
すると、体にひびが入り、砕けると同時にその中からあの黒竜と比べると倍近い大きさの竜が現れる。
《真紅眼の黒竜》に似た姿をしているが、翼には紅蓮の炎が宿り、体の色も光沢のある純粋な黒に変化している。
真紅眼の黒炎竜 レベル7 攻撃2400
「いきなりエースカードの登場か」
《真紅眼の黒炎竜》を見て、ブーンがつぶやく。
先ほど儀式素材となった《デーモンの召喚》と比較すると攻撃力は確かに控えめだが、問題はその効果だ。
といっても、今の状態でその効果が発動されることはないが。
「さらに私はモンスターを裏守備表示で召喚。ターン終了」
エリク
手札5→0
ライフ4000
場 真紅眼の黒炎竜(通常モンスター扱い) レベル7 攻撃2400
裏守備モンスター1
ブーン
手札5
ライフ4000
場 なし
「俺のターン、ドロー」
ブーン
手札5→6
「我々ジェルマンはオベリスク・フォースごとき歯車とは違う。私は手札から《鋼の歯車歩兵》を召喚」
頭頂部に金属製の大型歯車を付けた、茶色い二足歩行兵器が現れる。
引っ越し用の大型段ボールに似た形で茶色い装甲をした機械に2本の細い脚をつけただけという、傍から見たら飾りのない兵器だ。
鋼の歯車歩兵 レベル2 攻撃500
「このカードの召喚に成功したとき、私のフィールド上にエクストラデッキから特殊召喚されたモンスターが存在しない場合、デッキからレベル4以下のメタルギアモンスター1体を召喚できる。私はデッキから《鋼の歯車騎兵》を特殊召喚」
《鋼の歯車歩兵》の装甲の両サイドに備え付けられているピストルから信号弾が上空に向けて発射される。
上空で赤い光が発せられると、公園付近のビルの窓ガラスを突き破り、3体の兵士が現れる。
黒いガスマスクのようなフルフェイスのメットをつけ、全身を黒いゴム製のスーツで身を包んだ兵士で、両肩に鋼の歯車を取り付けている。
「なるほど…3体いるのは特殊召喚された《騎兵》のせいですか」
「そうだ。こいつの召喚に成功したとき、手札・デッキから《鋼の歯車騎兵》2体を特殊召喚できる。ただし、この効果で特殊召喚されたこいつらの攻撃力・守備力は0となり、効果は無効となる」
効果が無効になった仲間の前に、通常召喚された《鋼の歯車騎兵》が立ち、腰にさしているククリナイフを抜いて《真紅眼の黒炎竜》を威圧する。
鋼の歯車騎兵 レベル3 攻撃1000
鋼の歯車騎兵×2 レベル3 攻撃1000→0
鋼の歯車歩兵(メタルギア・ウォーカー)
レベル2 攻撃500 守備500 効果 地属性 機械族
「鋼の歯車歩兵」の効果を発動したターン、自分は「メタルギア」以外のモンスターを特殊召喚できない。
(1):このカードの召喚に成功したとき、自分フィールド上にエクストラデッキから特殊召喚されたモンスターが存在しない場合に発動できる。デッキから、レベル4以下の「メタルギア」モンスター1体を召喚する。
鋼の歯車騎兵(メタルギア・トルーパー)
レベル3 攻撃1000 守備1000 効果 地属性 機械族
「鋼の歯車騎兵」の効果は1ターンに1度しか発動できず、効果を発動したターン、自分は「メタルギア」以外のモンスターを特殊召喚できない。
(1):このカードの召喚に成功したとき、自分の手札・デッキに存在する同名の「メタルギア」モンスター2体を対象に発動できる。そのモンスターを自分フィールド上に表側攻撃表示で特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効となり、攻撃力・守備力は0となる。
エリクとは異なり、下級モンスターを一気に4体もそろえたブーン。
だが、これはあくまでおぜん立てに過ぎない。
「さらに俺は手札から《鋼の歯車融合》を発動。俺のフィールド上のメタルギアを融合する。2体の攻撃力・守備力を失った兵士と《鋼の歯車歩兵》が背後に現れた渦の中に消えていく。
「任務を遂行する感情無き兵士よ、大地を走る兵器よ、歯車を絡ませ、任務遂行の標となれ。融合召喚!現れろ、レベル8!《鋼の歯車T-REX》!」
左側にレドーム、右側にレールガンを装備し、更にガトリングやミサイル、レーザーを装備した、2本のキャタピラ付きの太い足を持つ兵器が現れる。
鉛色で先ほどの《鋼の歯車歩兵》の数倍の大きさを誇り、《MLX-魔装騎士ペイルライダー・ムーンレイス》以上に贅沢な武装を持つその兵器はエリクを威圧するようにレールガンを向けた。
鋼の歯車T-REX レベル8 攻撃2800
「《鋼の歯車T-REX》は1ターンに2度攻撃することができ、さらに守備表示モンスターを攻撃したとき、貫通ダメージを与える」
レドームがエリクの《真紅眼の黒炎竜》と裏守備モンスターの位置を把握する。
そして、対戦車ミサイルの発射準備を整える。
「ファイア!」
ブーンの掛け声とともに対戦車ミサイルが4発発射される。
《真紅眼の黒炎竜》の口から炎のブレスが放たれ、2発は溶解するが、1発がその竜の腹部に命中してしまう。
そして、もう1発のミサイルは裏守備モンスターに直撃する。
裏守備モンスター
メタモルポッド レベル2 守備600
エリク
ライフ4000→3600→1400
「《メタモルポッド》のリバース効果発動です。お互いに手札をすべて捨て、デッキからカードを5枚ドローします」
「わざわざ俺の墓地肥やしを手伝うとはな…」
ブーン
手札6→4→5
エリク
手札0→5
手札から墓地へ送られたカード
ブーン
・機械複製術
・聖なるバリア―ミラーフォース
・鋼の歯車蟷螂
・鋼の歯車狼
「俺はカードを2枚伏せ、ターンエンド。(さて…奴は《黒竜降臨》をどう使うか…)」
エリク
手札5
ライフ1400
場 なし
ブーン
手札5→3
ライフ4000
場 鋼の歯車T-REX レベル8 攻撃2800
伏せカード2
ブーンが注目したのは前のターンにエリクが発動した《黒竜降臨》だ。
このカードはただの儀式魔法ではなく、《リチュアの儀水鏡》や《影霊衣の降魔鏡》のような副次的な効果を持ち合わせている。
それも、戦局を一変させかねない効果を。
「私のターン、ドロー」
エリク
手札5→6
「私は墓地の《黒竜降臨》の効果を発動。このカードを墓地から除外することで、デッキからレッドアイズ魔法・罠カードを1枚手札に加えることができます。私はデッキから《真紅眼融合》を手札に加えます」
エリクのデュエルディスクから《真紅眼融合》が自動排出され、ディスクの真下に設置されているサブアームがそれを回収し、エリクの手札に加えようとする。
「罠発動!《マインドクラッシュ》!カード名を1つ宣言し、宣言したカードが相手の手札に存在する場合、そのカードをすべて墓地へ送る。俺が宣言するのは…《真紅眼融合》だ」
「なるほど。読んでいましたか。私のここからの行動を」
「不用意に《メタモルポッド》で俺を手伝った結果だ」
フッと笑みをこぼしたエリクはサブアームを操作し、せっかくサーチしたカードを墓地へ送る。
そして、ブーンに自分の手札を公開した。
エリクの手札
・真紅眼の遡刻竜
・伝説の黒石
・レッドアイズ・インサイト
・次元幽閉
・真紅眼の鎧旋
「ちっ、まだサーチカードがあったか」
「ええ、ただこのカードは手札にあってこそ価値のあるカード。それを失うことになるのは惜しいですが…。私は手札から魔法カード《レッドアイズ・インサイト》を発動。手札のレッドアイズモンスター1体を墓地へ送り、デッキから《レッドアイズ・インサイト》を除くレッドアイズ魔法・罠カードを1枚手札に加えます。私はデッキから《真紅眼融合》を手札に加えます」
再びサブアームが先ほどのように《真紅眼融合》を回収し、エリクの手札に加える。
そして、それと交換で《真紅眼の遡刻竜》が回収され、墓地へ送られた。
「私は手札から魔法カード《真紅眼融合》を発動。手札・デッキ・フィールドのモンスターを素材にレッドアイズ融合モンスターを融合召喚し、その名前を《真紅眼の黒竜》に変化させます。私が融合素材とするのは《真紅眼の黒竜》と《真紅眼の凶雷皇-エビル・デーモン》」
エリクのフィールドにむき出しとなっている骨格と翼が黒く染まっている《デーモンの召喚》と《真紅眼の黒竜》が現れ、背後に現れた赤黒い渦の中に消えていく。
「真紅の眼を持つ怒りの竜よ、雷鳴纏いし悪魔の皇帝の力を宿し、地獄の力を解き放て。融合召喚!」
渦が爆発し、その中から融合素材となった2体のモンスターの特徴を兼ね備えた竜が現れる。
その姿は翼をもつ黒い人型の竜といえるもので、《真紅眼の凶雷皇-エビル・デーモン》のように体の至る個所の骨格がむき出しとなっている。
「悪魔の名を持つ真紅の竜、《悪魔竜ブラック・デーモンズ・ドラゴン》」
凶暴なモンスターの登場であるにもかかわらず、冷静に声色をあまり変えずに召喚宣言するエリク。
ブーンから見ると、彼とそんな竜がとても似合わないように見えた。
悪魔竜ブラック・デーモンズ・ドラゴン(《真紅眼の黒竜》扱い) レベル9 攻撃3200
「攻撃力3200か…。だが、そう簡単にダメージを受けるわけにはいかん。俺は速攻魔法《リミッター解除》を発動!俺のフィールド上に存在する機械族モンスターの攻撃力を倍にする」
《リミッター解除》発動と同時に、《鋼の歯車T-REX》の出力が強制的に上昇していき、搭載されているレールガンから電気が発せられる。
照準はすでに目の前の悪魔竜に向けられていて、動いたらすぐに発射できることをアピールしている。
鋼の歯車T-REX レベル8 攻撃2800→5600
鋼の歯車騎兵 レベル3 攻撃1000→2000
「攻撃力5600ですか…」
エリクは再び自分の手札を確認する。
しかし、今の自分に攻撃力5600の《鋼の歯車T-REX》を破壊する手立てはない。
とはいうが、《リミッター解除》の代償のおかげでその必要もないが。
「では、私は《ブラック・デーモンズ・ドラゴン》で《騎兵》を攻撃。ライトニング・ブラックフレア」
《悪魔竜ブラック・デーモンズ・ドラゴン》の口から回転する黒い炎の弾丸が発射される。
回転スピードは進むごとに上がっていき、それとともに電気をまとっていく。
火球を受けた《鋼の歯車騎兵》は爆発し、消滅する。
「グウウ…ウ!!」
ブーン
ライフ4000→2800
「まだです。《ブラック・デーモンズ・ドラゴン》の効果発動。このカードが戦闘を行ったバトルフェイズ終了時、墓地からレッドアイズモンスター1体の元々の攻撃力分のダメージを与え、そのモンスターをデッキに戻す。メテオ・フレア」
攻撃を終えた悪魔竜がブーンに向けて黒い炎のブレスを放つ。
そのブレスは次第にその姿を《真紅眼の黒炎竜》に替え、彼を焼き尽くしていく。
「うおおおおお!?!?」
ブーン
ライフ2800→400
「私はカードを2枚伏せ、ターンエンド」
「それと同時に、《リミッター解除》の効果を受けた《鋼の歯車T-REX》は破壊される」
強引な出力上昇で無理をしたせいか、《鋼の歯車T-REX》が全身から煙を放ち、その場で倒れてしまう。
そして、頭部のコックピットが開き、そこから《鋼の歯車騎兵》が出てくる。
「《鋼の歯車T-REX》は破壊され墓地へ送られたとき、墓地からレベル4以下のメタルギアモンスターを効果を無効にして特殊召喚できる。鋼の歯車はただでは止まらん、ということだ」
エリク
手札5→1(《伝説の黒石》)
ライフ1400
場 悪魔竜ブラック・デーモンズ・ドラゴン(《真紅眼の黒竜》扱い) レベル9 攻撃3200
伏せカード2
ブーン
手札3
ライフ400
場 鋼の歯車騎兵(《鋼の歯車T-REX》の影響下) レベル3 守備1000
鋼の歯車T-REX(メタルギア・レックス)
レベル8 攻撃2800 守備2500 融合 地属性 機械族
「鋼の歯車」モンスター×3
このカードは「鋼の歯車融合」の効果でのみ特殊召喚できる。
(1):このカードは1度のバトルフェイズに2回攻撃することができる。
(2):このカードが相手の守備表示モンスターを攻撃するとき、その守備力を攻撃力が超えていれば、その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。
(3):このカードが破壊され墓地へ送られたとき、自分の墓地に存在するレベル4以下の「鋼の歯車」モンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターを自分フィールド上に特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効化される。
「俺のターン、ドロー」
ブーン
手札3→4
「《鋼の歯車融合》の効果発動。墓地のメタルギア融合モンスター1体をエクストラデッキに戻すことで、墓地のこのカードを手札に加えることができる」
《鋼の歯車融合》を手札に加え、笑みを浮かべるブーン。
フィールドに融合素材をそろえる体勢が整っている限り、何度でも融合モンスターをよみがえらせることができる。
そして、場合によっては別の融合モンスターで牽制する。
これがオベリスク・フォースのアンティーク・ギアデッキにはない、ジェルマンのメタルギアデッキの特徴だ。
鋼の歯車融合(メタルギア・フュージョン)
通常魔法カード
「鋼の歯車融合」の(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。
(1):自分フィールド上から「メタルギア」融合モンスターモンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。
(2):このカードが墓地に存在するとき、自分の墓地に存在する「メタルギア」融合モンスター1体を対象に発動できる。そのカードをエクストラデッキに戻し、このカードを手札に加える。
「そして、このカードは俺のフィールド上にメタルギアモンスターが存在するとき、手札から特殊召喚できる。《鋼の歯車狼》を特殊召喚」
黒い装甲で全身がおおわれ、しっぽの先にチェーンソーを装備している狼型の兵器が現れる。
なお、鋼の歯車はその胴体にベルトのような固定されている。
鋼の歯車狼 レベル2 攻撃400
鋼の歯車狼(メタルギア・ウルフ)
レベル2 攻撃400 守備400 効果 地属性 機械族
(1):自分フィールド上に「メタルギア」モンスターが存在する場合、このカードを手札から特殊召喚できる。
「更に、俺は手札から永続魔法《鋼の歯車工場》を発動。このカードが発動したとき、墓地からレベル4以下のメタルギアモンスターを効果を無効にして特殊召喚できる。俺は墓地から《鋼の歯車歩兵》を特殊召喚」
《鋼の歯車工場》のソリッドビジョンの中に、先ほど破壊された《鋼の歯車T-REX》の残骸が回収されていき、それが《鋼の歯車歩兵》に修復されていく。
鋼の歯車歩兵 レベル2 攻撃500
「そして、俺は手札から魔法カード《鋼の歯車融合》を発動。俺が融合素材にするのはフィールド上の3体のメタルギアだ」
「再び《鋼の歯車T-REX》を召喚するつもりですか?」
「いいや。大地を走る兵器よ、敵を斬り刻む狼よ、任務を遂行する感情無き兵士よ、歯車を絡ませ、任務遂行の標となれ。融合召喚!現れろ、レベル8!《鋼の歯車RAY》!」
3体のメタルギアを飲み込んだ渦の中から、先ほどの《鋼の歯車T-REX》とは異なり、ほっそりとした銀色の装甲でV字に展開されてる上半身部分が特徴的な二足歩行兵器が現れる。
両ひざと背中にミサイルを装備し、腕部には機銃、コックピットのある頭部に水圧カッターが装備された、水陸両用の平気だ。
鋼の歯車RAY レベル8 攻撃2300
「《RAY》の融合召喚に成功したことにより、《鋼の歯車工場》の効果を発動。メタルギアカウンターを1つのせる」
公園に向けて、歯車が無数に描かれた1トントラックが入ってくる。
そして、緑色のつなぎを来た小人がトラックの中についている部品を《鋼の歯車工場》に入れていく。
鋼の歯車工場 メタルギアカウンター0→1
「このカードは相手フィールド上に存在するすべてのモンスターに1回ずつ攻撃することができる。そして、このカードが攻撃力の高いモンスターと戦闘を行う場合、ダメージ計算時のみ攻撃力を1000アップさせる」
「なるほど…先ほどの《REX》は守りを固める敵を突破するのに対し、《RAY》は攻める敵を薙ぎ払う役割を持っている…ということですね?」
攻撃命令を待つ《鋼の歯車RAY》は既にエリクのモンスターにロックオンしていて、いつでもミサイルを発射できる準備をしている。
発射できるミサイルの数は《鋼の歯車T-REX》と変わりないが、軽量化し、細い体となった《鋼の歯車RAY》はより動きながら発射できるため、攻撃範囲は広い。
「ファイア!」
《鋼の歯車RAY》がすべてのミサイルを《悪魔竜ブラック・デーモンズ・ドラゴン》に向けて発射しようとする。
それと同時に、ブーンが持っているUSBメモリが振動を始める。
「ん…??」
メモリを見ると、それについているLEDライトが赤く点滅し、振動が収まると同時に緑色に点灯した。
「なるほど。《悪魔竜ブラック・デーモンズ・ドラゴン》と《真紅眼の黒炎竜》にそれ以上の攻撃力を持つモンスターで攻撃することがパスワードだったか…?」
「正確にはレベル7以上のレッドアイズモンスター2体です。しかし、これでこのUSBメモリは大丈夫ですね」
そういうと、エリクはデュエルディスクについているデュエル中止のボタンを押す。
エリクの前にいた《悪魔竜ブラック・デーモンズ・ドラゴン》はゆっくりと姿を消し、それと同時に《鋼の歯車RAY》も消えてしまった。
鋼の歯車RAY(メタルギア・レイ)
レベル8 攻撃2300 守備2200 融合 地属性 機械族
「メタルギア」モンスター×3
このカードは「鋼の歯車融合」の効果でのみ特殊召喚できる。
(1):このカードは相手フィールド上に存在するモンスターに1回ずつ攻撃できる。
(2):このカードが戦闘を行う時、攻撃モンスターの攻撃力が攻撃対象モンスターの攻撃力よりも低い場合、ダメージ計算時のみ攻撃力を1000アップする。
(3):このカードが破壊され墓地へ送られたとき、自分の墓地に存在するレベル4以下の「鋼の歯車」モンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターを自分フィールド上に特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効化される。
鋼の歯車工場(メタルギア・ファクトリー)
永続魔法カード
「鋼の歯車工場」の(1)(3)の効果は1ターンにいずれか1度しか発動できない。
(1):このカードの発動時の効果処理として、自分の墓地に存在するレベル4以下の「メタルギア」モンスター1体を特殊召喚することができる。
(2):自分が「メタルギア」融合モンスターの融合召喚に成功したときに発動する。このカードの上にメタルギアカウンターを1つのせる。(最大5つまで)
(3):このカードの上に乗っているメタルギアカウンターを2つ取り除くことで、以下の効果のいずれか1つを発動できる。
●デッキから「メタルギア」モンスター1体を手札に加える。
●「メタルギア」魔法・罠カード1枚を手札に加える。
「つれない男だ。最後までやりきってもかまわんのだぞ?」
「そうしたいのはやまやまですが…残念ながら、私は体が弱いんです」
「体が弱い…か」
カバンからノートパソコンを出し、USBメモリを差し込んで、データを確認する。
そこには翔太達デュエルギャング達のデュエルデータが入っていた。
「よし。これだけのデータがあれば、長官も喜ぶ」
「そう言ってもらえると、うれしい限りです。またデータが手に入れば、こちらから連絡させていただきます。では…」
ゆっくりとお辞儀をした後で、車いすはゆっくりと右に向き、そのままエリクをつれて公園から出て行った。
ブーンは彼が去るのを見送った後で、携帯を出す。
「俺だ。データは手に入った。これからお前たちのところへもっていく」
そういった後でしばらく沈黙し、相手の返事を待つ。
返事をある程度聞くと、わずかに表情をゆがめる。
「急がせろ。貴様には人質に取られている家族がいるはずだ。仮にそれの開発が遅れでもしたら、長官に何をされると思っている?貴様はあの”悪魔”を作った男だろう?可能なはずだ。…そうだ、そうこなくてはな」
色よい返事を聞けたのか、少し安心した表情を見せたブーンは電話を切った。