(い、いったい何が起こっているのでしょう!?先ほどまで停止していた遊矢選手のDホイールが突如赤い光を放ちながら変形!しかも、とんでもないスピードで走り出したー!)
スタジアムのモニター、並びにテレビでその光景を見ている人々は自分の目を疑っていた。
初心者用に大幅なデチューンが施された遊矢のマシンレッドクラウンがあまりのスピードで走っていて、まるで分身でもしているかのようにも見えてしまう。
「膨大な召喚エネルギーを限界ギリギリまでため込み、それを螺旋を描くように放出することでDホイールとDホイーラーを守るバリアに変え、肉体への負担を軽減するファントムライトシステム…。未完成だと聞いていたが…」
地下に集まる浮浪者達が見ている白黒のテレビを眺めながら、ヒイロはマシンレッドクラウンのあの光のことを口にする。
だが、そのじゃじゃ馬と化した赤い道化はたとえ召喚エネルギーの嵐で守られているとしても、ベテランのDホイーラーでも扱うのが困難となっている。
そのため、少なくともヒイロがシンクロ次元に潜入するころまではそのシステムの完成には年単位で時間がかかると言われていた。
だが、現に遊矢はそのシステムを起動し、挙句の果てには使いこなしている。
まるで生まれたばかりの赤ん坊がいきなり立ち上がって50メートル走をするかのように。
(榊遊矢か…。もしかしたら、あいつはデュエリストの進化の可能性を見せてくれるかもしれないな…)
シンジ
手札1(《B・F-奉納のアトラトル》アクションカード1)
ライフ3400
SPC6
場 B・F-降魔弓のハマ レベル8 攻撃2800
B・F-必中のピン レベル1 守備300
伏せカード2
遊矢
手札0(アクションカードあり)
ライフ1600
SPC4
場 オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン(オーバーレイユニット2) ランク7 攻撃2800
竜脈の魔術師 レベル4 攻撃1800
星読みの魔術師(青) ペンデュラムスケール1
時読みの魔術師(赤) ペンデュラムスケール8
「ちっ…わけのわからない手段を使って、また動き出したか!だが、ただ動き出しただけ!お前が地下送りされるまでの時間が少し伸びた程度のことだ!!」
あっという間にシンジに追いついた遊矢に若干驚きを見せながらも、すぐに気持ちを切り替えて遊矢を挑発する。
だが、今の遊矢はシンジの声を聞いていない。
召喚エネルギーの嵐に包まれているから誰も分からないものの、今の遊矢は目を閉じたまま走っている。
(なんだ…?さっきまで怖かったり、むしゃくしゃしたりしてたのに…不思議と感覚が研ぎすまされていく…まるで、こいつと1つになっているみたいだ…)
ゆっくりと目を開いた遊矢はデッキトップに指をかける。
「俺のターン、ドロー!」
「俺はアクション魔法《スピード違反レベル1》を発動!これでお前はこのターンのスタンバイフェイズ時にスピードカウンターを置くことはできない!」
遊矢
手札0→1
シンジ
SPC6→8
スピード違反レベル1
アクション魔法カード
(1)相手ターンのドローフェイズ時に発動できる。このターンのスタンバイフェイズ時、相手は「スピード・ワールド」魔法カードの効果でスピードカウンターを置くことができない。
「なら…俺は手札からアクション魔法《手札封鎖》を発動!このターン、相手は手札から発動するモンスターの効果を発動できない!バトルだ!俺は《竜脈の魔術師》で《必中のピン》を攻撃!」
《竜脈の魔術師》が前のターンと同じように《B・F-必中のピン》をなぎなたで切り裂こうとする。
「させるか!俺は永続罠《B・F・N》を発動!俺のフィールド上に存在するB・Fモンスターが攻撃対象となったとき、手札のレベル4以下のB・Fモンスター1体を特殊召喚することで、その攻撃を無効にし、バトルフェイズを終了させる!俺は《B・F-奉納のアトラトル》を特殊召喚!」
赤と白の縞模様で、下半身が手持ちの投槍器を模した形になっている蜂が出現し、槍を発射してなぎなたを弾き飛ばす。
武器を失った《竜脈の魔術師》は分が悪いと判断し、すぐに遊矢の元へ戻っていく。
B・F-奉納のアトラトル レベル3 守備1500
B・F-奉納のアトラトル
レベル3 攻撃1500 守備1500 効果 風属性 昆虫族
(1):自分フィールド上に存在する「B・F」モンスターが攻撃対象となったときに手札から発動できる。このカードを自分フィールド上に特殊召喚し、攻撃モンスターを破壊する。
手札封鎖
アクション魔法カード
(1):このターン、相手は手札に存在するモンスターの効果を発動できない。
「なら俺は…アクション魔法《刻苦》を発動!デッキからカードを1枚ドローし、俺自身が800のダメージを受ける!ぐうう…!」
発動と同時に電撃が遊矢を襲い、その痛みに耐えながらカードをドローする。
遊矢
手札1→2
ライフ1600→800
SPC4→3
刻苦
アクション魔法カード
(1):自分はデッキからカードを1枚ドローする。その後、800ダメージを受ける。
(…!このカードは…!?)
ドローしたカードを見て、遊矢は絶句する。
800のダメージと引き換えにドローしたそのカードはある少年から託されたものだった。
その少年は遊矢達のいるホテルのボーイとして働いているコモンズ出身者で、名前はサムだ。
彼はキングとなり、ある程度時間がたった後のジャックを尋ね、カードを譲ってほしいと頼んだ。
そして、ジャックから「お前にピッタリのカード」として渡されたのが今、遊矢のドローしたカードだ。
「俺は…モンスターを裏守備表示で召喚。ターンエンド」
シンジ
手札1→0
ライフ3400
SPC6
場 B・F-降魔弓のハマ レベル8 攻撃2800
B・F-必中のピン レベル1 守備300
B・F-奉納のアトラトル レベル3 守備1500
B・F・N(永続罠カード)
伏せカード1
遊矢
手札1
ライフ800
SPC3
場 オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン(オーバーレイユニット2) ランク7 攻撃2800
竜脈の魔術師 レベル4 攻撃1800
裏守備モンスター1
星読みの魔術師(青) ペンデュラムスケール1
時読みの魔術師(赤) ペンデュラムスケール8
「威勢よく追いついてこれか!?自爆ダメージを受けてまでドローしたカードが逆転の一手じゃなくて残念だったな!俺のターン!」
シンジ
手札0→1
SPC8→10
遊矢
SPC3→5
「俺はバトルフェイズに入り、攻撃を行わずにメインフェイズ2へ移行する!さあ、遊矢!もう1度俺たちコモンズの怒りを受けろ!!」
再びB・F達の針が遊矢に襲い掛かる。
このまますべての針を受けてしまうと、遊矢のライフが底についてしまう。
だが、針が命中したのは分身だけで、遊矢本体に当たることがなかった。
「何!?」
「アクション魔法《加速》!これで俺が受ける効果ダメージを0にした!」
「ちっ…またパネルを通過したか!だったら《必中のピン》の効果を発動!こいつで200のダメージを与える!」
《B・F-必中のピン》が遊矢に向けて針を放つ。
だが、召喚エネルギーの嵐が針を遊矢に当たる前に粉々に砕いた。
(そうだ…ダメージを恐れる必要はない。召喚エネルギーが俺を守ってくれる!)
遊矢
ライフ800→600
SPC5→6
「更に俺は《スピード・ワールド・A》の効果を発動!スピードカウンターを10個取り除き、お前の裏守備モンスターを破壊する!」
シンジのDホイールから放たれる赤い針のような銃弾が裏守備モンスターを貫いた。
裏守備モンスターは一瞬、《調律の魔術師》へと姿を変え、すぐに消滅した。
「はっ!《調律の魔術師》だと??相手に回復させ、自分にダメージを与えるだけの雑魚カードか!俺はこれでターンエンド!」
シンジ
手札1
ライフ3400
SPC10→0
場 B・F-降魔弓のハマ レベル8 攻撃2800
B・F-必中のピン レベル1 守備300
B・F-奉納のアトラトル レベル3 守備1500
B・F・N(永続罠カード)
伏せカード1
遊矢
手札1
ライフ600
SPC6
場 オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン(オーバーレイユニット2) ランク7 攻撃2800
竜脈の魔術師 レベル4 攻撃1800
星読みの魔術師(青) ペンデュラムスケール1
時読みの魔術師(赤) ペンデュラムスケール8
「俺のターン、ドロー!」
遊矢
手札1→2
SPC6→8
シンジ
SPC0→2
「バトルだ!俺は《オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン》で《降魔弓のハマ》を攻撃!」
《オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン》が氷の息吹を放ち、《B・F-降魔弓のハマ》を氷漬けにしようとするが、そのモンスターの目の前に黒い渦が出現し、その息を飲み込んでいく。
「罠カード《エクストラ・ペナルティ》を発動!エクストラデッキから特殊召喚されたモンスターが攻撃してきたとき、エクストラデッキから特殊召喚された相手モンスター1体を除外する!」
「なら、俺は《アブソリュート・ドラゴン》の効果を発動!オーバーレイユニットを1つ取り除き、自分自身の攻撃を無効にする!これで、《アブソリュート・ドラゴン》は攻撃モンスターとして扱われない!」
「いいや、《エクストラ・ペナルティ》で除外されるモンスターは攻撃モンスターに限定されない!」
「く…それでも、そのあとで手札・墓地からオッドアイズモンスター1体を特殊召喚できる…!もう1度現れろ、《オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン》!!」
《オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン》を包む氷が砕け、その中から再び《オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン》が姿を見せる。
オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン レベル7 守備2000
エクストラ・ペナルティ
通常罠カード
(1):相手フィールド上に存在するエクストラデッキから特殊召喚されたモンスターの攻撃宣言時に発動できる。相手フィールド上に存在するエクストラデッキから特殊召喚されたモンスター1体を除外する。
「遊矢!《オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン》は墓地へ送られたとき、エクストラデッキから新たなオッドアイズを呼び出す力があったよな?その効果で《オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン》を召喚されたらまずかったが、こうして除外したなら意味がない!これでお前の…トップスの敗北への道が見えたぞ!」
(違う…違うよ、まだあきらめちゃいけない!)
「え…?」
シンジの言葉を否定するかのような声が遊矢の脳裏に響く。
聞いたことのない少女の声だが、その声の主が誰か、なぜかはっきりとわかる。
「まさか…調律の魔術師!?」
(そうだよ。やっとボクの声を聞いてくれたね、マスター)
遊矢の前に調律の魔術師の幻影が現れ、嬉しそうに彼を見る。
(マスター。ボクを…信じて)
「お前を…信じる…?」
遊矢は改めて、《調律の魔術師》の能力を見る。
レベル1の闇属性・魔法使い族チューナーで、召喚・特殊召喚されたとき、自分に400のダメージを与え、相手のライフを400回復させる、一見すると何も役に立たないカード。
このカードをジャックから受け取ったサムはそれを自分に、コモンズに対する侮辱と受け取った。
だから、このカードをジャックに返すように遊矢に願い、託した。
(あなたは…人だけじゃなく、モンスターとも一緒に歩むことができる人。一緒に成長できる人。かつて、ボクを持っていてくれたもう1人のマスターのように…)
「もう1人のマスター…ジャック…」
(あなたのデッキに入り、そこでボクはあなたという人を知った…。だから、ボクはあなたを信じる!あなたが信じてくれたら、ボクは必ずあなたに応えるから!)
真剣なまなざしでそういうと、調律の魔術師が姿を消す。
自分を信じてほしい、という少女の願いを聞き、遊矢はもう1度自分の墓地を見る。
「調律の魔術師…。モンスターが俺を信じてくれる…。オッドアイズ、ダーク・リベリオン…もしかしてお前も…?」
(勘違いをするな、小僧。お前は俺にとってただの道楽。力に飲まれれば殺すだけのこと。死にたくなければ、力を支配して見せよ)
(私は…あなたを信じます。私のマスター、ユートがあなたを信じて託したのですから…)
オッドアイズは相変わらずの答え方だが、ダーク・リベリオンは素直に自分を信じると言ってくれた。
それだけでも素直にうれしかった。
ピンチであるにもかかわらず、笑みを浮かべてしまう。
「ああ…。そうか。俺は信じられてるんだな。柚子や権現坂だけじゃない。モンスターたちにも…」
「何をごちゃごちゃわけのわからないことを言っている!?早くターンを進めろ!!」
「わかったよ…。信じるよ、君を…」
(ありがとう、ボクのマスター…)
遊矢の思いにこたえるかのように、墓地の《調律の魔術師》のテキストが書き換わっていく。
回復とダメージの効果が(2)に移動し、そして(1)に新たな効果が刻まれる。
「…俺は手札から《Sp-エンジェル・バトン》を発動!スピードカウンターを4つ取り除き、デッキからカードを2枚ドローして、手札1枚を墓地に捨てる!」
遊矢
SPC8→4
手札から墓地へ送られたカード
・ブロック・スパイダー
「そして…!」
遊矢が乗るマシンレッドクラウンが新たなアクションカードパネルを通過し、アクションカードを手にする。
「…よし!俺はカードを1枚伏せ、《竜脈の魔術師》を守備表示に変更し、ターンエンド!」
シンジ
手札1
ライフ3400
SPC2
場 B・F-降魔弓のハマ レベル8 攻撃2800
B・F-必中のピン レベル1 守備300
B・F-奉納のアトラトル レベル3 守備1500
B・F・N(永続罠カード)
遊矢
手札2→1(アクションカード1)
ライフ400
SPC4→5
場 オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン レベル7 守備2000
竜脈の魔術師 レベル4 守備900
伏せカード1
星読みの魔術師(青) ペンデュラムスケール1
時読みの魔術師(赤) ペンデュラムスケール8
「何が信じるだ!?その相手に利益を与えることしかできないモンスターを…!そんなもので、俺に…俺たちコモンズに勝てるものか!俺のターン!!」
シンジ
手札1→2
SPC2→4
遊矢
SPC5→7
「《B・F・N》は発動後、2回目の俺のターンのスタンバイフェイズ時に墓地へ送られる!そして、バトルだ!俺は《降魔弓のハマ》で《オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン》を攻撃!」
《B・F-降魔弓のハマ》が放つ矢が《オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン》を貫き、遊矢に襲い掛かる。
しかし、やはりファントムライトによって矢が粉々に砕けた。
「そして、バトルフェイズ終了と同時に《ハマ》の効果を発動!これで倒れろぉーーー!!」
再び4本の針が遊矢に向けて飛んでいく。
1度は逃してしまった必殺のチャンスを今度こそ逃さないために。
「俺はアクション魔法《ど根性》を発動!俺が受けるダメージを無効にし、ライフを800回復させる!」
遊矢
ライフ400→1200
ど根性
アクション魔法カード
(1):自分が受ける効果ダメージを0にし、800LP回復する。
「またアクション魔法で…!!だが、《必中のピン》の効果は受けてもらうぞ!!」
《B・F-必中のピン》が再び針を放つ。
何度も効果を発動したせいか、疲れを見せており、発射する針の勢いも緩んでいる。
遊矢
ライフ1200→1000
「俺はこれでターンエンド!」
シンジ
手札2
ライフ3400
SPC4
場 B・F-降魔弓のハマ レベル8 攻撃2800
B・F-必中のピン レベル1 守備300
B・F-奉納のアトラトル レベル3 守備1500
遊矢
手札1
ライフ1000
SPC7
場 竜脈の魔術師 レベル4 守備900
伏せカード1
星読みの魔術師(青) ペンデュラムスケール1
時読みの魔術師(赤) ペンデュラムスケール8
B・F・N(ビー・フォース・ネスト)(アニメオリカ・調整)
永続罠カード
「B・F・N」はフィールド上に1枚しか存在できない。
(1):自分フィールド上に存在する「B・F」モンスターが攻撃対象となったとき、自分の手札に存在するレベル4以下の「B・F」モンスター1体を対象に発動できる。そのカードを特殊召喚し、バトルフェイズを終了させる。
(2):このカードは発動後、2回目の自分スタンバイフェイズ時に墓地へ送られる。
(マスター…使って。ボクの力を!!)
「ああ、信じてるぞ!俺のターン!!」
遊矢
手札1→2
SPC7→9
シンジ
SPC4→6
「俺は墓地の《調律の魔術師》の効果を発動!俺のペンデュラムゾーンに魔術師が2体存在するとき、このカードは手札・墓地から特殊召喚できる!」
「何!?だが…奴の効果は…!」
2体の魔術師が祈りをささげると、上空にピンク色の光の渦が生まれ、《調律の魔術師》が下りてくる。
それと同時に彼女を中心に波紋が発生し、それが遊矢とシンジを襲う。
「《調律の魔術師》の効果!このカードの召喚・特殊召喚に成功したとき、相手のライフを400回復させ、俺は400ダメージを受ける!」
調律の魔術師 レベル1 攻撃0
遊矢
ライフ1000→600
シンジ
3400→3800
「バカな奴め!自分で自分を追い込みやがった!」
(いまだ、マスター!!)
「ああ!俺は罠カード《ダーク・ホライズン》を発動!」
「何!?そのカードは…!」
遊矢が発動したカードを見たシンジは目を大きく開く。
《調律の魔術師》の存在がシンジの勝利の方程式を崩壊させていく。
「俺がダメージを受けたとき、その数値以下の攻撃力の闇属性・魔法使い族モンスター1体をデッキから特殊召喚する!俺は《EMオッドアイズ・シンガー》を特殊召喚!」
《調律の魔術師》のそばに、白いローブを纏った、赤と緑のオッドアイを持っている点以外は柚子とよく似た姿の少女が現れる。
EMオッドアイズ・シンガー レベル6 攻撃400
「《オッドアイズ・シンガー》の効果!1ターンに1度、墓地からレベル4以下のモンスター1体を特殊召喚できる!俺は墓地から《ブロック・スパイダー》を特殊召喚する!」
ブロック・スパイダー レベル1 攻撃0
EMオッドアイズ・シンガー
レベル6 攻撃400 守備2500 闇属性 魔法使い族
【Pスケール:青3/赤3】
(1):もう片方のPゾーンに「EM」「オッドアイズ」「魔術師」カードが存在するときに発動できる。このカードのPスケールをターン終了時まで6にする。
【モンスター効果】
「EMオッドアイズ・シンガー」はフィールド上に1枚しか存在できず、(1)の効果は1ターンに1度しか発動できない。
(1):自分の墓地に存在するレベル4以下のモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターを自分フィールド上に特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効化され、このターン攻撃できない。
(2):自分フィールド上にこのカード以外の「EM」「オッドアイズ」「魔術師」モンスターが存在するとき、相手はこのカードを攻撃対象とすることができない。
2体のモンスターが現れ、再び《調律の魔術師》が波紋を起こす。
その波紋は遊矢と彼のエクストラデッキを襲い、エクストラデッキの一番上に新たなカードが生まれる。
「俺はレベル6の《オッドアイズ・シンガー》とレベル1の《ブロック・スパイダー》に、レベル1の《調律の魔術師》をチューニング!」
「何!?《調律の魔術師》のダメージを引き金にここまで…!」
「シンジ…いらないカードなんてこの世に存在しない。《調律の魔術師》の力があったから、《ダーク・ホライズン》を発動できて、《EMオッドアイズ・シンガー》を呼び出すことができた。そして、彼女の歌が《ブロック・スパイダー》を復活させ、今こうしてシンクロ召喚をしようとしている!本当にお前がシティを変革させる意思があるんだったら…コモンズのみんなだけじゃない!こうした本当はすごい力を持っているのに、それを発揮する術が与えられていない、《調律の魔術師》のような存在にも目を向けるべきだったんだ!剛毅の光を放つ勇者の剣!今ここに閃光と共に目覚めよ!シンクロ召喚!覚醒への入口へ導く勇者!レベル8!《覚醒の魔導剣士》!」
先ほど生まれたカードをテキストを読むことなくフィールドにおく。
それと同時に遊矢のフィールドに《時読みの魔術師》が白いローブと彼が持つガントレッドに似た特徴を持つ2本の剣を装備したような姿のモンスターが姿を見せる。
覚醒の魔導剣士 レベル8 攻撃2500
(榊遊矢選手、新たなシンクロモンスターを召喚しましたが、攻撃力は2500!《降魔弓のハマ》には届いていません!!)
「黙っていたら、知ったような口を…!御託を並べた挙句、召喚したのが《降魔弓のハマ》の及ばない攻撃力2500じゃないか!!所詮、お前が信じた《調律の魔術師》が呼び覚ました力は…」
「俺は《Sp-ファイナル・アタック》を発動!俺のスピードカウンターが8つ以上あるとき、俺のフィールド上のモンスター1体の攻撃力を2倍にする!」
「何ぃぃ!?」
「シンジ!お前がコモンズの人のために変革をするというなら、俺は…みんなのために、みんなの笑顔のためにデュエルをする!コモンズもトップスも、勝者も敗者も関係ない!みんなのために俺はデュエルをする!」
遊矢の体を覆う召喚エネルギーが《覚醒の魔導剣士》の2本の剣に吸収されていく。
マシンレッドクラウンのファントムライトがその影響で消え、通常の状態に戻っていくが、勇者の剣の刀身は赤い輝きを見せる。
覚醒の魔導剣士 レベル8 攻撃2500→5000
「あ、あ、ああ…」
「バトルだ!《覚醒の魔導剣士》で《降魔弓のハマ》を攻撃!!」
赤く光る2本の剣を交差させて構えた《覚醒の魔導剣士》は《B・F-降魔弓のハマ》に向けて突撃する。
弓士は反撃のために何度も矢を放つも、剣が放つ光のせいか、刃やローブをかすめるだけで命中しない。
そして、敵に肉薄した勇者はそのまま十字状に剣をふるい、切り裂かれた《B・F-降魔弓のハマ》は粉々に砕け散った。
「《覚醒の魔導剣士》は戦闘で相手モンスターを破壊したとき、破壊したモンスターの元々の攻撃力分のダメージを…相手に与える…」
「ぐ、うう…!」
目の前にアクションカードパネルがなく、逆転への糸口がないシンジは悔し気に遊矢が覚醒させたモンスターを見る。
ダメージ計算終了と同時にどんどんDホイールのスピードが通常の物へと落ちていった。
シンジ
ライフ3800→600→0
(決まったーーー!!フレンドシップカップ2回戦第2試合!勝者は榊遊矢選手ー!!)
決着がついた瞬間、スタジアムの人々は言葉を失い、メリッサの実況が流れるまで誰1人しゃべることがなかった。
彼女の声を聞き、状況を飲み込むことができた観客たち、とくにシンジ達が敵視したトップスの人々は拍手で遊矢を迎える。
コモンズの人々の反応は半々で、シンジの敗北にショックを受ける人がいれば、素直に遊矢に激励する人もいた。
そして、遊矢とシンジはスタジアムに到着する。
「シンジ…」
ヘルメットを脱いだ遊矢はシンジを見る。
彼の願った変革を否定してしまった以上、馬鹿野郎だのお前は俺の夢を壊しただの罵倒されるかもしれない。
だが、正面からそれを受け止めなければ、前へは進めない。
シンジのコモンズを自由にしたいという思いに間違いはないのだから。
「遊矢…見せてくれ。俺を倒した《調律の魔術師》を…」
まるですべてを受け入れたかのように、静かな声で彼は遊矢に願う。
首を縦に振った遊矢はすぐに《調律の魔術師》をシンジに見せた。
「なんだよ…特殊召喚効果がついても、自分にダメージを与えて、相手を回復させるのはそのままか…」
遊矢にカードを返したシンジは右手で目を抑え、笑いをこらえる。
その眼からは涙が流れ、熱いアスファルトの上に落ちた。
「こいつを役に立たないカードと見下した…俺の油断が敗北の原因か…」
思い返せば、《調律の魔術師》もまた、コモンズの象徴ともいえるカードかもしれない。
少なくともパワーカード命のトップスはそんなカードに目を向けることもないだろう。
《調律の魔術師》を感謝しながらデッキに入れた遊矢の目に例の男2人の姿が映る。
これからシンジは彼らに連れられて、地下へ送られる。
けど、これが遊矢の選択の結果、この大会のルール。
「シンジ、俺は…」
「遊矢、みんなのためにデュエルをすると言ったな…。その言葉、忘れるなよ」
涙を拭いたシンジはDホイールを降り、自ら男たちのもとへ向かう。
(マスター、大丈夫。ボク達が優勝して、もう1人のマスターに勝てば、きっとみんなを助け出せるよ)
「ああ…わかってる。だから…これからもよろしくな。…ナディ」
(え…?ナディ?)
「お前の名前だよ。いつまでも《調律の魔術師》ってばかり呼ぶわけにはいかないだろ?」