遊戯王ARC-V 戦士の鼓動   作:ナタタク

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第82話 突入

「…じゃあ、セレナちゃんはアカデミアに、そして柚子ちゃんは…」

「治安維持局に、だ。あのドMめ…」

ブーンの妨害があったとはいえ、柚子を連れ去るのを見ていることしかできなかったことを悔やむ翔太。

零羅もセレナを救えなかったことで意気消沈しており、遊矢も沈黙する。

バラバラバラバラ…。

「ヘリコプター…?」

大きなプロペラ音と共にこの一帯に強風が発生する。

真上から照明の光が降り注ぎ、急にまぶしくなったことで翔太たちは腕で目を守る。

ヘリコプターの横側にはヴァプラ隊のエンブレムが刻まれている。

(こちらハイヤー!こちらハイヤー!ランサーズを発見!これより、彼らを回収します!)

翔太たちの姿をヘリのコックピットにあるレーダーから見たハイヤーがゆっくりと降下する。

地下鉄の天井が崩壊したことで、皮肉にもヘリで翔太たちを探していたヴァプラ隊に見つけてもらいやすくなった。

ブーンとのデュエルに集中していたため、気づいていなかったが、空は既に元の夜空へと戻っていた。

 

「…つまり、チームオーファンは治安維持局と手を組んだ。ってことだな?」

「そうなるかな。治安維持局のロボットとチームオーファンのロボットはどちらも同じ形で同じシステム。そんなことができる理由は1つしか思いつかない」

ヘリから降りてきたハイヤーと翔太が情報を交換する。

現在、ヴァプラ隊は半分をスタンダード次元に残し、もう半分をこのシンクロ次元へ派遣している。

シンクロ次元で行方不明となっていたとある人物と連絡がつながり、ランサーズの現在の状況を鑑みた結果、このような大規模な派兵を決めたとのこと。

地下の収容所に閉じ込められたランサーズの面々の救出、及び治安維持局とオベリスクフォースの掃討を行っている。

「けど、どちらに転ぶかわからないのが今の状況だな。戦力は五分五分。どっちに転んでもおかしくないし、仮に捕まった柚子ちゃんを人質にされたら…」

「…ロジェは、柚子を手土産にアカデミアと交渉するつもりだ」

今まで黙り続けていた遊矢が口を開く。

確実にそうするという感じで言っていたことに翔太は違和感を持つ。

「遊矢、なんであの野郎がそうすると思った?」

「ロジェが言ってた。柚子とセレナはアカデミアが行っているアークエリアプロジェクトっていう計画の重要なカギ。2人を交渉材料にして、シンクロ次元への侵攻を辞めさせるって…」

「セレナが捕まったことを考えると、交渉材料になるのは柚子1人。ま…妥当だな」

スタンダード次元でセレナが言っていたことが正しければ、柚子そっくりの少女が4人そろわなければ、そのアークエリアプロジェクトという計画は破たんする。

1人だけでも手元に確保していれば、充分アカデミアと交渉することができる。

そして、シンクロ次元をロジェにとっての理想郷にすることができる。

「まずいな…。となると、なおさら彼女を助けに行かないと。でも…」

おそらく、ロジェは最終防衛ラインとしてあのセルゲイを置いていると思われる。

翔太が一度倒したものの、このように五体満足で再び姿を現したこと、そしてサイボーグであり、デュエリスト・クラッシャーという異名を手にするほどの実力があると考えると、倒すにはかなりの数が必要となる。

しかし、今の状況ではヴァプラ隊から人員を割く余裕がない。

零児とヒイロは評議会に迫るセキュリティへの対応で手いっぱいだ。

潜入が得意な月影もゲイツの攻撃で負傷している。

「とにかく、まずは君たちを翔太君たち別動部隊のアジトへ連れて…」

「…」

遊矢はマシンレッドクラウンを実体化させ、ヘルメットをつけてそれに乗る。

「遊矢殿…?」

「遊矢君、何を!?」

「…治安維持局へ行って、柚子を助け出す」

「1人で…やるつもりかよ」

翔太の言葉に遊矢は黙って首を縦に振る。

ゴーグルに隠れて見えないが、遊矢から放たれるプレッシャーが今の遊矢の決意を翔太たちに教えている。

「無茶だ!街中にはアカデミアやセキュリティ、ロボットでいっぱいなんだぞ!行くにしても、せめて僕たちと一緒に近くまで…」

ハイヤーの言葉を聞かないまま、遊矢はマシンレッドクラウンを発進させる。

いきなりアクセルを全開にし、全速力で治安維持局に向けて走り去っていった。

「遊矢君!!翔太君、早く追いかけ…」

「馬鹿の相手は馬鹿にしか務まらないってことか…」

「え?」

翔太はうずくまったままの零羅をつかみ、ヘリに乗り込む。

そして、座席に座ると月影に肩を貸しているハイヤーに目を向ける。

「なぁ、頼みがあるんだが…」

 

「う、う、うう…」

コース上に横たわっていたクロウがゆっくりと目を覚ます。

ヘルメットのバイザーには大きなひびが入っていて、額からは血が流れ、左目が赤く染まっている。

コース上であれば、さすがの大会の運営委員も進行に支障をきたすということから、自分を医務室か地下収容所まで運ぶだろうと踏んでいたのだが、何か異常があったせいか、自分が倒れている場所もブラックバードが倒れている場所にも変化はない。

「一体、どうなってやがる…うう!!」

左腕の関節から激痛を感じ、やむなく右腕で体を起こし、コースの壁にもたれる。

「脱臼か…ギャングで暴れてた時以来だぜ…くぅ!!」

右手を使い、強引に外れた関節を元に戻す。

本来であれば、脱臼は医者の治療を受けたうえで、1年近く安静させなければならないが、コモンズには医者が少なく、いたとしてもヤブ医者かモグリの場合が多いうえに、幸運にも免許持ちの医者を見つけたとしても、そういう人間はたいていトップスの住民の治療に集中しており、コモンズ出身者には見向きもしない。

だから、本来なら病院で治すべきこういう怪我も自力で治さなければならない。

「はあはあ、よ…し…」

左腕をゆっくりと動かし、大丈夫だろうと自己判断したクロウはゆっくりとブラックバードのもとへ向かう。

倒れたそれを起こし、エンジンを起動させる。

「まだまだ動きそうじゃねーか…ブラックバード…。まだ左腕に痛みがあるし、左目も真っ赤だけど、贅沢は言ってられないぜ」

まずはいまどのような状況になっているのかの情報をつかむため、クロウはブラックバードをスタジアムへ向けて走らせる。

 

「ハアハアハア、里香、生きとるんかー…?」

「当然、や…。あんなデクの棒に負けるウチや…ハァ、あらへん…」

「兄ちゃんたち、これ…!」

体力の限界により、後方に下がった漁介と里香にタナーがおにぎりが入ったタッパーを差し出す。

現在、アジトはコモンズやトップスでデュエルのできない、もしくはオベリスクフォースやディアボロと戦えないデュエリスト達の避難場所となっており、避難してきた人々の中にはタナーのように手伝いをする人もいる。

タナーとは別に、フランクとアマンダも水や食料を戻ってきた、もしくはこれから前線に出るメンバーに渡したり、おにぎりやサンドイッチを作ったりしている。

コモンズという環境の都合で、おにぎりやサンドイッチにあまりお目にかかっていない彼らにとっては慣れない仕事だが、それでも、自分たちを守ってくれるシェイドやヴァプラ隊、ランサーズのために必死に働いている。

(鬼柳、ジョンソン!前に出てくれ!)

「はあ…もう出動か。行くぜ、ジョンソン」

「ああ…やってくれ」

ジャンク屋から買い取ったセキュリティの廃棄処分されたDホイールを修復したものに乗った鬼柳はサイドカーにジョンソンを乗せて、再び前線へと出ていく。

これで、あの2人が出動するのは3回目。

後何回、行って戻ってを繰り返せばこの戦いは終わるのか、と思いながら、漁介と里香は受け取ったおにぎりを口にした。

 

「《古代の機械参頭猟犬》で3回目の攻撃だ!」

魔法カードの効果により、攻撃力を半分にして直接スティーラーの懐に飛び込んできた、3つの頭を持ち、中央部分に歯車がついた青い機械に食らいつかれる。

「ぐうう…!!」

 

スティーラー

ライフ1200→300

 

「ハハハハ!そうだそうだ。プロフェッサーと我々に歯向かうものはこうなるのだ!」

「おとなしくカードになるんだな、ザコめが!」

攻撃が終わり、自身のフィールドに戻ってきた《古代の機械参頭猟犬》を撫でつつ、フラフラになりながら起き上がったスティーラーをすでに勝ったかのように見下す。

「これで私はターンエンド!」

 

オベリスクフォースA

手札2

ライフ2000

場 古代の機械参頭猟犬 レベル7 攻撃1800

  古代の機械猟犬×2 レベル3 攻撃1000

 

オベリスクフォースB

手札1

ライフ3000

場 古代の機械参頭猟犬 レベル7 攻撃1800

 

スティーラー

手札3

ライフ300

場 スカブ・スカーナイト レベル4 攻撃0

 

古代の機械参頭猟犬(アニメオリカ)

レベル7 攻撃1800 守備1000 融合 地属性 機械族

「古代の機械猟犬」+「古代の機械猟犬」+「古代の機械猟犬」または「古代の機械猟犬」+「古代の機械双頭猟犬」

(1):このカードは1度のバトルフェイズ中に3回までモンスターに攻撃できる。

(2):このカードが攻撃する場合のダメージステップ終了時まで、相手は魔法・罠カードを発動できない。

 

「はあ、はあ…やはり、実戦というのは辛いものだ。ガーダーやラインマン達はすごいな」

ゆっくりとカードをドローしつつ、スティーラーは前線で戦うことの多い彼らのすごさを改めて実感する。

 

スティーラー

手札3→4

 

病気を経験したこともあり、体力が低いスティーラーは主に後方でヴァプラ隊やランサーズの候補生の強化に努めていた。

今回の出撃では、彼は必ずしも出撃する必要はなかったものの、自分よりも年齢の低い少年少女たちばかりに戦わせるのは忍びないと懇願し、こうして出撃を許可してもらった。

この2人と戦う前までに既にオベリスクフォースは3人、ディアボロは4機撃破している。

しかし、実質休憩なしで何度もデュエルを繰り広げることになって集中力や体力が消耗しきっている。

事実として、前のターンに《スピリットバリア》が破壊された際にもカウンター罠で迎撃する準備が整っていたにもかかわらず、疲労で体が動かなかったせいで間に合わなかった。

(どうやら…覚悟を決めなければならないらしい…)

ドローした《サンダー・ブレイク》と手札のあるカードを見たスティーラーはフッと笑いながらつぶやく。

そして、自分の魂の象徴である《スカブ・スカーナイト》のもう1つの姿、さびてボロボロになった鎧と楯、そして刃がついた籠手を左右に装備したローマ時代の剣闘士の姿を目に浮かべる。

(《スカブ・スカーナイト》…お前は破壊されたとき、その姿を《クライング・スカーナイト》に変える。今の体力だと、このターンが僕が自由にできるラストターンらしい…。だったら、奴らを道連れにする…)

《クライング・スカーナイト》は戦闘を行う相手モンスターと同じ攻撃力となり、更に戦闘では破壊されない効果を持つ。

しかし、スティーラーが狙っている効果はそれではなく、自爆効果だ。

「(このカード自身をリリースすることで、フィールド上のすべてのモンスターを破壊し、破壊したモンスターの数×500のダメージを全員が受ける…。これで、少なくとも彼ら2人を道連れにできる。まぁ…絶望の中で死ぬよりははるかに建設的…だ)私はカードを1枚伏せて、ターンエンド」

 

オベリスクフォースA

手札2

ライフ2000

場 古代の機械参頭猟犬 レベル7 攻撃1800

  古代の機械猟犬×2 レベル3 攻撃1000

 

オベリスクフォースB

手札1

ライフ3000

場 古代の機械参頭猟犬 レベル7 攻撃1800

 

スティーラー

手札4→2

ライフ300

場 スカブ・スカーナイト レベル4 攻撃0

  伏せカード1

 

クライング・スカーナイト(アニメオリカ・調整)

レベル1 攻撃0 守備0 効果 闇属性 戦士族

「クライング・スカーナイト」の(3)の効果はデュエル中1度しか発動できない。

このカードは通常召喚できない。

自分フィールド上に存在する「スカブ・スカーナイト」が破壊されたとき、このカードは手札から特殊召喚できる。

(1):このカードは戦闘で破壊されない。

(2):このカードが相手モンスターと戦闘を行うダメージ計算開始時に発動する。ダメージ計算終了時までこのカードの元々の攻撃力はそのモンスターの攻撃力と同じになる。

(3):自分または相手ターンのメインフェイズ時に、このカードをリリースすることで発動できる。フィールド上のモンスターをすべて破壊する。その後、破壊したモンスターの数×500のダメージを互いに受ける。

 

「へっ…使える手はそれだけか!このままカードになるがいい!私の…」

(カードになるのは…君たちも、かもね)

彼がドローした瞬間、発動しようとスティーラーはゆっくりとデュエルディスクのパネルに手を伸ばす。

「おいおい、スティーラー!あきらめるの速すぎだぜ!」

突如、スティーラーとオベリスクフォース達に割って入ったガーダーがカードを引く。

 

ガーダー

手札5→6

ライフ4000→2000

 

「ガーダー…」

「悪いなぁ、自爆の覚悟を台無しにしちまって。ま、そんな覚悟はまだいらねーけどな!俺は手札から《おとぼけオポッサム》を召喚!」

 

おとぼけオポッサム レベル2 攻撃800

 

「このカードは相手フィールド上にこいつよりも攻撃力の高いモンスターが存在するとき、自爆することができる!そして、俺のフィールド上に存在する獣族モンスターが破壊されたとき、ライフを1000支払うことで、このカードは手札・墓地から特殊召喚できる!《森の番人グリーン・バブーン》を特殊召喚!」

 

森の番人グリーン・バブーン レベル7 攻撃2600

 

ガーダー

ライフ2000→1000

 

 

「バトルだ。《シンクロ・ストライク》の効果で攻撃力がアップした《マリンフォース・ドラゴン》で《古代の機械参頭猟犬》を攻撃。マリン・ブラスト!」

(ハアアアアア!!)

《マリンフォース・ドラゴン》の口から放たれるドリルのような水に貫かれた《古代の機械参頭猟犬》が爆発し、オベリスクフォースが水で流されてしまう。

「ギャアアア!!」

 

オベリスクフォース

ライフ3000→0

 

「バトルだ。私は《DDD疾風大王エグゼクティブ・アレクサンダー》で《古代の機械巨人》を攻撃!」

鎧についている青い球体の数が増し、更にマントが蝶の羽のような形に変わった《DDD疾風王アレクサンダー》が仲間のDDDモンスターたちから力を受け、剣を一振りする。

すると巨大な竜巻が発生し、それに飲み込まれた《古代の機械巨人》がバラバラに粉砕されていく。

「うおおおおお!!」

 

セキュリティ

ライフ2800→0

 

「ひと段落…と言ったところか」

デュエルディスクを収納したヒイロはデュエルの状況をリセットする。

零児も同じようにしつつ、眼鏡を直して今の状況を分析する。

(あのセキュリティ…オベリスクフォースを狙わず、私とヒイロを狙った…。あのロジェとアカデミアが結託したのか、それとも…)

(零児、聞こえるか零児!?)

「遊矢か…?」

級にデュエルディスクに遊矢から通信が入り、零児は彼に返事をする。

「なぜ、私の番号がわかった?」

(前に零羅から教えてもらったんだ。零児、柚子が…ロジェに捕まった。それから、セレナはアカデミアに…)

「何…?」

(ごめん…。だから、せめて柚子だけでも助けに行く。零児はほかのみんなとシンクロ次元の人たちを守ってくれ!)

「待て遊矢!まさか…1人で治安維持局へ…おい、待て!!」

遊矢との通信が切れ、オベリスクフォースかセキュリティかどちらかわからないものの、数人の足音が聞こえてくる。

静寂の束の間、また評議会は戦場となる。

途中、合流した行議会の職員もデュエルに加わったものの、既に全滅している。

5人の評議員は相変わらずその場を動かず、零児たちを傍観している。

「ヒイロ。あなたは治安維持局へ向かってくれ」

「ああ…。だが、1人で押さえきれるか?」

足音から判断すると、これからやってくる人数は10人。

これから10VS1のデュエルをすることになる。

「この程度のデュエリスト、束になってかかってきても、私にとっては同じことだ」

「いいだろう。言った以上、行動してもらう」

ヒイロはデュエルディスクにあるボタンを押すと、屋外に仕掛けられていたC4が爆発し、天井が崩れる。

そして、グラップリングフックを使ってその穴から屋外へと飛び出していった。

爆風の中、出ていくヒイロを見送った零児は即座に入ってきた10人のセキュリティに目を向ける。

「ロジェの人形…貴様らが私に勝てる確率は…零だ!」

 

「んだよ…これ…」

スタジアムにたどり着いたクロウの目が大きく開いている。

あれほどの盛況だったスタジアムの中には人っ子1人おらず、風で飛んできた会場のペットボトルや菓子袋といったゴミが飛んできている。

放置されているのはごみだけでなく、上着やカバン、デュエルディスクなどもあり、何か大きな事件が起こって避難したのかと予想する、というよりはそうあってほしいと願望している。

スタジアムの中央にいる銀色のロングヘアーで白い制服を着た男性が選手入場門から姿を現す。

「おや…まだ1人残っていたのか」

「何者だよ、てめえ」

「名を名乗るほどの男じゃないさ。少なくとも、この腐りきった次元の人間に対しては…ね」

そういいながら、男はクロウに向けて3枚のカードを投げつける。

カードにはメリッサと2人の敗者を連行し続けてきた職員の姿が描かれていた。

「こ、こいつは…!?」

「会場にいる人間は1人残らずこうさせてもらったよ。安心したまえ、彼らはこの次元よりもより良い世界へ連れて行ったやる。俺たち…アカデミアがね」

「てめえがアカデミア…。遊矢が言っていた侵略者か!?」

ブラックバードから飛び降りたクロウはデュエルディスクを展開する。

「侵略者…。こんな次元に侵略価値なんてないさ。そうだな、このまま焼け野原にしてもかまわないな」

「てめえ!!」

トップスに対してならともかく、シンクロ次元すべてを見下す彼の言動を許せず、怒気のこもった声を出す。

「ふ…どうせもう任務は終わりなんだ。最後は気味で楽しませてもらおうか」

柔らかな笑みを浮かべ、男もデュエルディスクを展開する。

(なんだ…?こいつ!?)

「さあ…始めようか。君の人生最後のデュエルを…」

 

「よーし、もうすぐだ!本当にいいのかい!?翔太君!!」

「ああ、高さも…グゥ、充分だ!」

ヘリのドアを開け、襲い掛かる強い風に耐えながら、翔太は地表を見下ろす。

そこは旧不動区の上空で、中心となっている旧第2モーメント研究所はスタジアム以上の大きさであり、そこから湯水のごとくディアボロが出撃していく。

翔太の背にはパラシュートが装備されている。

「伊織はアジトへ戻ってろ」

「ううん、私も行く!」

「お前…」

「翔太君1人だけで本拠地に突入するなんて無茶だし、放っておけないもん!」

「お前じゃ足手まといだ、帰れ!」

「やだ!足手まといじゃないってこと、TDCで証明したし!」

TDCのことを言われると、翔太も口を閉ざしてしまう。

たまにミスがあったりしたものの、それでも準決勝進出まで行くことができ、彼女がいなければ負けていたと思える場面もある。

足手まといとは言うものの、本心では彼女を巻き込みたくないと思っているだけだ。

「駄目って言っても、くっついてついてきちゃうから」

「ったく…勝手にしろ!俺から離れるなよ」

「うん!」

そういうと、すぐに伊織は翔太の前へ向かい、彼に抱き着いた。

「お、お前!?パラシュートまだあるだろ!?」

「だって、このパラシュートは2人でも大丈夫なものでしょ?しっかり翔太君が支えてくれるから、問題なし!」

「ちっ…キャバルリーを持ってくればよかった…」

マシンキャバルリーにパラシュートを装備して降下すれば、こういうことにはならなかったが、今乗っているヘリコプターにマシンキャバルリーを乗せるのは無理だった。

けが人である月影と子供の零羅を乗せる必要があり、おけるスペースもない。

「翔太君、大丈夫かい!?パラシュートでの降下、やったことないだろ!?」

「使い方は説明してもらったからわかっている!あとはその場で対応する!」

「ったく、知らないぞ!!」

「翔太殿、伊織殿、ご武運を!」

「よし…行くぞ!!」

伊織を抱きしめた翔太はヘリコプターから飛び降りる。

彼女はいつでもパラシュートが開けるようにグリップをグリップをつかんだ。

2人分の重さになっており、落下速度は1人で降下している時よりも早いが、効果自体がはじめてな翔太にはそんなことは分からない。

「ぐうう、うう…!!」

左腕のデュエルディスクに現在の高度が表示される。

「ぐうう…伊織、俺が今だ、と言ったら、すぐにグリップを引っ張れ!」

「う…うん!!」

ゴー、という激しい音と共に落ちていく感覚を始めて感じた伊織は下を見ないように、じっと空か翔太を見るようにする。

まだ飛び降りてから何秒もたっていないのに、伊織には十分以上たったかのように感じた。

 

「これで、お前は終わりだ」

「く…そぉ…!!」

体中が傷だらけになっているクロウはフラフラしながら男が召喚したモンスターを見る。

下半身が蛇のような様相となっていて、透き通った紫色の翼と2本の腕を持つ竜のみが彼のフィールドに存在する。

だが、そのモンスター1体のせいで、クロウの手札とフィールドは全滅してしまった。

「安心しろ。お前は新しい理想郷で新しい人生を歩むことができる。今までの苦痛と屈辱にまみれた人生を捨てて…」

「野郎…勝手に俺の人生を…評価してんじゃ、ねえぞ…!」

「さようならだ。シンクロ次元の誰かさん」

その竜の口から黒いビームが発射され、その光がクロウを焼き尽くしていく。

「うわあああああ!!(フランク…アマンダ…タナー…みんな、済まねえ…!)」

 

クロウ

ライフ2300→0

 

竜のリアルソリッドビジョンとビームが消えると、そこにはクロウの姿がなく、彼の姿が描かれたカードだけが残っていた。

そのカードを男は手にすると、デュエルディスクを起動し、青い光の中に姿を消す。

クロウを含めた、フレンドシップカップの観客やMC、職員全員の消息不明が明らかになったのは、これから3時間経過した後のことだった。

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