第89話 廃墟の町へ
廃墟と化した町に雨が降り、雨音だけが響いている。
夜空は黒い雲に完全に隠れており、月も星も見ることができない。
そんな場所に突然青い光が発生し、それが消えると同時に7人のデュエリストが現れる。
先頭に立つ侑斗はデュエルディスクで座標を確認する。
「よし…誤差はない。ここはエクシーズ次元のハートランドシティだ」
「正確にはその中学校の敷地内だがな…」
がれきの山を見ながら、黒咲は静かにつぶやく。
今回の作戦では土地勘の問題から、やむなく黒咲を同行させることになったが、侑斗は彼がエクシーズ次元の惨状を再び肉眼で見てしまうことで、彼が憎しみに取り込まれてしまわないか心配していた。
デニスの件は既に耳にしており、彼が肥えてはいけない一線を越えるのだけは耐えたので、一安心した。
「うう、それにしても雨で嫌な感じ。どこかで雨宿りを…」
「静かにしろ。奴らだ…」
何かが見えた翔太は身を屈めるように促すと、物陰からグラウンドの方をじっと見る。
そこには3人のデュエル戦士の姿があり、1人は黄色い制服で2人は赤い制服を着ている。
オベリスクフォースのような精鋭ではないものの、彼らもまた、プロフェッサーの命令でやってきた侵略者だ。
「一体この場所には何人デュエル戦士がいるんだろう…?ウィンダ」
「うん…ガルド、お願い!」
侑斗とウィンダはそれぞれの愛鳥であるフォーチュンとガルドを飛ばし、偵察させる。
「緑色の鳥…?あれで偵察を…?」
2羽の鳥の姿が見えた遊矢が侑斗たちに尋ねる。
遊矢の質問を聞いた侑斗は少し驚きながら彼を見ていた。
遊矢が《調律の魔術師》の精霊であるナディが見えることはすでに侑斗も話に聞いている。
そうなったのは彼の中に宿るもう1つの魂の影響か、それとも力が成長したことによる副産物かまではわからなかった。
数分が経過すると、2羽の鳥が戻ってきて、それぞれの主に偵察結果を伝える。
「半径200メートル範囲で、あの3人以外のデュエル戦士はいない。倒そうと思えば倒せるけど、今の目的はスペード校へ向かうことだ」
エクシーズ次元へ転移する前に行われた作戦会議で、今回の作戦のプランがすでに提示されている。
第一黒咲やユートが所属するレジスタンスの拠点となっているスペード校へ向かい、情報収集及び可能であれば救援を行うことが第一段階。
第二段階は行方不明となっている侑斗の仲間を見つけ出し、行方不明になっているクローバー校とダイヤ校のレジスタンスに関する情報を手に入れること。
最終段階は彼らを見つけ、エクシーズ次元にいるアカデミアを駆逐し、『欠片』を手に入れることだ。
それらのことを考えると、敵の目を盗んで進み、可能な限り戦いを避けるのが効率的だろう。
しかし、彼らは遊び半分で人をカード化する愚連隊。
放っておくと、彼らによってカード化されてしまう人が現れてしまう恐れがある。
「ま、ま、待てよ!!俺はデュエリストじゃないぞ!!」
「黙れ!どうやら、レジスタンスの協力者らしいな…!」
少し離れたところからデュエル戦士がエクシーズ次元の一般市民を襲っている光景が見えた。
男性の後ろには幼い少女がいて、彼女はガタガタ震えながら彼の背中にしがみつく。
彼らのそばには横倒しになったカートと、それに入っていたと思われる大量の缶詰があり、どうやらこの親子は食糧確保のために崩壊したスーパーからそれらを回収し、持って帰ろうとしていたのだろう。
「レジスタンスの協力者はカード化していいって命令だ。オベリスクフォース入隊のため、私たちの点数になってもらう!」
「だ、だったら、せめて娘だけは…!」
「いいや、どちらもカードになってもらう!!見逃して、歯向かわれたら面倒だ」
「やめろ!!」
デュエルディスクを展開し、2人をカード化しようとした3人に向けて、立ち上がった黒咲が叫ぶ。
任務のことはわかっているが、それでも目の前で誰かがカードにされるのは耐えられない。
「なんだ?エクシーズ次元の残党か??」
「ちっ…実地訓練のつもりだったがここはズラかって…」
イレギュラーの出現により、レジスタンスがある程度強化されていることをすでに知っている黄色い制服のデュエル戦士は今日初陣の赤服2人とともに下がろうとする。
いまだにレジスタンスの重要拠点の1つとなっているスペード校を陥落させることができず、膠着状態にあるうえ、実戦経験のない2人と一緒に戦うのに不安を覚えたからだ。
しかし、その進路をふさぐように翔太と伊織が乗ったマシンキャバルリーがその目の前で着地し、逃げ道をふさぐ。
「な、なんだそのバイクは!?」
「カードにして携帯可能…かなり便利だな」
転移前に追加された機能により、マシンキャバルリーは2人が下りると同時にカードになって翔太の手に戻る。
「エクシーズ次元を侵略する悪いデュエリスト!私たちランサーズがやっつける!!」
「うわ…バカ!!」
いきなり自分たちの正体を口にした伊織に翔太は頭を抱える。
ランサーズがここに来ているのがばれてしまった。
「ランサーズだと…!?ちぃ、まさか奴らも『欠片』を!!」
焦りを見せる黄服のデュエル戦士がデュエルディスクを展開する。
「た、隊長!?」
「貴様らは逃げろ!!ランサーズが来たことを指令に伝えるんだ!!」
シンクロ次元での戦いで勝利したランサーズは今やアカデミアでは危険な存在として認識されている。
下手をするとアークエリアプロジェクトを破たんさせかねない。
隊長である彼は何とか時間を稼ごうとするが、それはできない相談だった。
逃げ道は侑斗とウィンダ達によってふさがれている。
「あなたたちは包囲されている!早く降参しなさい!!」
ウィンダはビシッと3人に指をさす。
赤服の2人はもはやこれまでと戦意を喪失させるが、黄服は違った。
「誰が…降伏などするものか!!」
黄服が懐から手りゅう弾のようなものを取り出し、ピンを抜いて足元に投げつける。
「これは…!?」
彼らが何をするつもりかを察した黒咲がデュエルディスクに取り付けているデュエルアンカーを射出すると同時に手りゅう弾から煙幕が発生する。
「まずい…奴らを逃がすな!!」
「逃がすなって言ってるけど、こんな濃い煙幕じゃ…!」
黒咲のデュエルアンカーには手ごたえがあり、だれかのデュエルディスクに取り付けることに成功したことを告げるアイコンが表示された。
翔太と侑斗もデュエルアンカーを射出するが、手ごたえはなかった。
煙幕が消え、残っていたのは黒咲にデュエルアンカーで拘束された黄服だけだった。
彼はデュエルディスクを外して逃走しようとしていたようだが、デュエルアンカーには取り付けた相手のデュエルディスクを取り外せなくするシステムが追加されており、できない相談だった。
「さあ…無抵抗な人間をカードにしようとした罪…償ってもらうぞ!」
「く、くそ…!お前ら、ちゃんと逃げろよ…」
部下の無事を祈りながら、黄服はデュエルディスクを展開する。
黒咲の覇気を感じた彼は、このデュエルには勝てないかもしれないと感じていた。
しかし、せめて傷跡を残すことを考え、カードを引く。
「「デュエル!!」」
黒咲
手札5
ライフ4000
黄服
手札5
ライフ4000
「俺の先攻!俺は手札から《RR-ミミクリー・レイニアス》を召喚」
RR-ミミクリー・レイニアス レベル4 攻撃1100
「更に、俺は手札から魔法カード《スワローズ・ネスト》を発動。自分フィールド上に存在する鳥獣族モンスター1体をリリースし、デッキからそのモンスターと同じレベルの鳥獣族モンスター1体を特殊召喚する。俺は《ミミクリー・レイニアス》をリリースし、《RR-バニシング・レイニアス》を特殊召喚!」
RR-バニシング・レイニアス レベル4 攻撃1400
「更に、俺は墓地の《ミミクリー・レイニアス》の効果発動!このカードが墓地へ送られたターンのメインフェイズ時、墓地から除外することで、デッキからRRカード1枚を手札に加えることができる。俺はデッキから《RR-ネスト》を手札に加える。更に、《バニシング・レイニアス》は召喚・特殊召喚に成功した俺のターンのメインフェイズ時に1度、手札からレベル4以下のRR1体を特殊召喚できる。俺は手札から《RR-インペイル・レイニアス》を特殊召喚する」
RR-インペイル・レイニアス レベル4 攻撃1700
「そして、手札から永続魔法《RR-ネスト》を発動!1ターンに1度、俺のフィールド上にRRが2体以上存在するとき、デッキ・墓地からRRモンスター1体を手札に加えることができる。俺はデッキから《RR-シンキング・ストリクス》を手札に加える。そして、俺はレベル4の《バニシング・レイニアス》と《インペイル・レイニアス》でオーバーレイ!冥府の猛禽よ、闇の眼力で真実をあばき、鋭き鉤爪で栄光をもぎ取れ!エクシーズ召喚!飛来せよ!ランク4!《RR-フォース・ストリクス》!」
RR-フォース・ストリクス ランク4 守備2000
「更に、《フォース・ストリクス》の効果発動!1ターンに1度、オーバーレイユニットを1つ取り除くことで、デッキから鳥獣族・闇属性・レベル4モンスター1体を手札に加えることができる。俺はデッキから《RR-ファジー・レイニアス》を手札に加える」
取り除かれたオーバーレイユニット
・RR-インペイル・レイニアス
「手札に《シンキング・レイニアス》と《ファジー・レイニアス》。そして、実質手札消費は1枚…。まだまだ展開できる…」
黒咲の今の手札は4枚で、おまけにどちらのRRも特殊召喚できる効果がある。
うまくいけば、ここから2回以上エクシーズ召喚を行うことができるかもしれない。
問題はそのあとの黄服の行動だ。
オベリスクフォースではないものの、隊長を任されることもあり、実力については警戒する必要がある。
「更に、俺のフィールド上にRRが存在することにより、《RR-ファジー・レイニアス》は手札から特殊召喚できる」
RR-ファジー・レイニアス レベル4 攻撃500
「そして、俺のフィールド上にエクシーズモンスターが存在するとき、《RR-シンキング・レイニアス》は手札から特殊召喚できる」
RR-シンキング・レイニアス レベル4 攻撃100
「俺はレベル4の《シンキング・レイニアス》と《ファジー・レイニアス》でオーバーレイ!エクシーズ召喚!飛来せよ!ランク4!《RR-フォース・ストリクス》!」
RR-フォース・ストリクス ランク4 守備2000
「《フォース・ストリクス》の効果発動!オーバーレイユニットを1つ取り除き、デッキから《RR-ブースター・ストリクス》を手札に加える。さらに、《ファジー・レイニアス》の効果発動。このカードが墓地へ送られたとき、デッキから《ファジー・レイニアス》を手札に加えることができる。そして、俺はカードを2枚伏せて、ターンエンド。《フォース・ストリクス》はこのカード以外の自分フィールド上に存在する鳥獣族モンスター1体につき、攻撃力・守備力が500アップする」
黒咲
手札5→2(《RR-ブースター・ストリクス》《RR-ファジー・レイニアス》)
ライフ4000
場 RR-フォース・ストリクス(オーバーレイユニット1)×2 ランク4 守備2000→2500
RR-ネスト(永続魔法)
伏せカード2
黄服
手札5
ライフ4000
場 なし
取り除かれたオーバーレイユニット
・RR-ファジー・レイニアス
「ええい…忌々しいエクシーズモンスターめ!!すぐに蹴散らしてくれる!!私のターン!!」
黄服
手札5→6
「私は手札からフィールド魔法《歯車街》を発動!さらに手札から魔法カード《古代の機械射出機》を発動!私のフィールド上にモンスターが存在しないとき、私のフィールド上に表側表示で存在するカードを1枚破壊し、デッキからアンティーク・ギアモンスター1体を召喚条件を無視して特殊召喚する。私は《歯車街》を…」
「そうはさせるか。カウンター罠《ラプターズ・ガスト》を発動。俺のフィールド上にRRが存在するとき、魔法・罠カードの発動を無効にし、破壊する」
《ラプターズ・ガスト》から発生する竜巻が《古代の機械射出機》をバラバラにして破壊していく。
これにより、2体の上級レベルのアンティーク・ギアモンスター2体が一度に現れるという事態を阻止することができた。
(《古代の機械射出機》は墓地から除外することで、私のフィールド上に表側表示で存在するカードを破壊し、《古代の歯車トークン》1体を特殊召喚できる効果がある。だが、この(2)の効果は(1)の効果を使用したターンは使うことができない…くっ!)
「どうした?さっそく戦略をつぶされたのがこたえたか?」
「黙れ!!ならば別の手段を使うのみ!手札から速攻魔法《サイクロン》を発動!《歯車街》を破壊する!」
出現したばかりの歯車の無機質な街並みが竜巻によって破壊されていく。
その光景を見た黒咲はチッと舌打ちをする。
破壊されていく街がアカデミアによって崩壊していくエクシーズ次元と重なって見えたからだ。
「更に、《歯車街》の効果発動!このカードが破壊され墓地へ送られたとき、手札・デッキ・墓地からアンティーク・ギア1体を特殊召喚できる。私は《古代の機械巨竜》をデッキから特殊召喚!」
古代の機械巨竜 レベル8 攻撃3000
「更に、手札から魔法カード《メテオストライク》と《ミスト・ボディ》を装備!これで《古代の機械巨竜》は貫通効果を得たばかりでなく、戦闘では破壊されなくなる!また、攻撃するとき、相手はダメージステップ終了時まで魔法・罠カードを発動できない!まさに究極のモンスターだ!!」
勝った気になって高笑いする黄服を見た黒咲はあきれ果ててため息をつく。
侑斗や翔太達も何とも言えない様子だ。
そんなことを気にすることなく、黄服はデュエルを進める。
「バトルだ!《古代の機械巨竜》で《フォース・ストリクス》を攻撃!!」
《古代の機械巨竜》の口が開き、ビームを放つためにエネルギーを収束し始める。
だが、突然黒咲のフィールドに《RR-ブースター・ストリクス》が出現し、そんな機械の竜にむけて特攻を仕掛ける。
「何!?」
「《ブースター・ストリクス》の効果だ。俺のフィールド上に存在するRRが攻撃対象となったとき、このカードを手札から除外することで、その攻撃モンスターを破壊する」
「モ、モンスター…効果…」
「これで貴様の究極のモンスターは終わりだ」
《RR-ブースター・ストリクス》が接触すると同時に、黄服のフィールドで大爆発が発生する。
煙が消えると、《古代の機械巨竜》は部品一つ残さず消滅していた。
「貴様の究極のモンスターなど、その程度…!」
「くぅ…!ならば、私はカードを1枚伏せ…」
「速攻魔法《サイクロン》を発動。その伏せカードを破壊する」
無駄な抵抗は許さないと言わんばかりに発動される《サイクロン》。
せっかく伏せた《聖なるバリア-ミラーフォース》が吹き飛んでいく。
「た、ターン…エンド…」
黒咲
手札2→1(《RR-ファジー・レイニアス》)
ライフ4000
場 RR-フォース・ストリクス(オーバーレイユニット1)×2 ランク4 守備2500
RR-ネスト(永続魔法)
黄服
手札6→0
ライフ4000
場 なし
「俺の…ターン!!」
黒咲
手札0→1
黄服にはもはや手札がなく、おまけにフィールドにもカードがないうえに墓地で発動できるカードも今の状況では意味がなさない。
あまりにも哀れな状況だが、それでも黒咲は手を緩めない。
「俺は手札から《RR-ファジー・レイニアス》を特殊召喚。そして、2体の《フォース・ストリクス》の効果発動!デッキから《RR-バニシング・レイニアス》と《RR-ミミクリー・レイニアス》を手札に加える」
RR-ファジー・レイニアス レベル4 攻撃500
取り除かれたオーバーレイユニット
・RR-シンキング・レイニアス
・RR-バニシング・レイニアス
「更に、俺は《RR-バニシング・レイニアス》を召喚。更に、《バニシング・レイニアス》の効果で手札から《RR-ミミクリー・レイニアス》を特殊召喚」
RR-バニシング・レイニアス レベル4 攻撃1400
RR-ミミクリー・レイニアス レベル4 攻撃1100
「そして、2体の《フォース・ストリクス》を攻撃表示に変更。《フォース・ストリクス》は自身以外の鳥獣族モンスター1体につき、攻撃力・守備力は500アップする!」
RR-フォース・ストリクス×2 ランク4 守備2500→4000→攻撃2100
「く…そんな、馬鹿な…!」
彼は侵略されたエクシーズ次元の召喚法であるエクシーズ召喚を馬鹿にしていた。
ランサーズであり、危険な相手だと思っていたが、《RR-フォース・ストリクス》を召喚し、エクシーズ召喚を使うことが分かった黒咲には勝てるだろうと思っていた節がある。
だが、やったことすべてが叩き潰されて、今ここで馬鹿にしてきた存在に引導を渡されることになる。
「バトル!!いけ、2体の《フォース・ストリクス》!!」
2体の《RR-フォース・ストリクス》が黄服を囲むように飛行しながら、超音波で攻撃を仕掛ける。
脳を揺さぶるような激しい超音波に黄服は耳をふさぎ、悲鳴を上げながら倒れた。
黄服
ライフ4000→1900→0
「1ターンキル…なんだこいつ、めちゃくちゃ弱いじゃねえか」
デュエルの一部始終を見た翔太はあまりにもあっけない黄服のデュエルを見て、あきれ果てる。
これだったら、オベリスクフォース数人とデュエルをしていたほうがはるかにやりがいがある。
黒咲は黄服を殴り起こし、胸ぐらをつかむ。
「答えてもらうぞ…。貴様らの侵略拠点はどこだ!?」
「侵略拠点…?」
なぜ黒咲がそれを質問したのか、疑問に思った柚子は侑斗に目を向ける。
「3年前に侵略を受け、レジスタンスを結成してから何度か侵略された地域の調査や奪還を行った。けど、いくら探しても侵略拠点になっている基地が見つかっていないんだ」
膠着状態となり、スタンダード次元からの極秘裏の支援を受けてある程度戦力を得たレジスタンスが決定打に欠く最大の理由がそれだった。
中継地点となっている小規模の基地はいくつも存在するが、それらを指揮する拠点を攻撃できないため、鼬ごっこのような状況が続いている。
また、物量についてはいまだにアカデミアの方が上であるため、基地を一つ陥落させている間に新たに2つ基地ができたケースもある。
そのため、レジスタンスは防衛を中心とした戦略を組み立てざるを得なかった。
「ハハ…そんなもの、しゃべるものか!!エクシーズ次元は…もうすぐ、終わりだ…!!」
「何…それはどういう意味…ちっ…」
黒咲が手を放すと、黄服はフラリとその場に倒れる。
侑斗とウィンダが伊織達を今の彼の姿を見せないように周囲の見張りと助けた親子のカバーを頼み、黒咲は手袋をつけて黄服の口の中を調べる。
奥歯にはカプセルの欠片が見え、奥歯にはそれが仕込まれたと思われる痕が残っていた。
「ちっ…自白を避けるためか…」
黄服のデュエルディスクも完全に機能を停止しており、中身を見ることができない。
スペード校へ向かい、そこでメカニックに解析してもらうことはできなくもないが、こういう場合はたいていの場合、解析不可能ということが経験上多く、あまり期待できそうにない。
(それにしても、今回のデュエル戦士の練度が低く感じられる…。どういうことなんだ…?)
3年前に来たときのデュエル戦士の技量は最下級である赤服でさえも彼のような粗末なデュエルはしなかった。
デュエル戦士も人間であり、アカデミアも彼らを無限に持っているわけではない。
シンクロ次元やスタンダード次元への攻撃には精鋭であるオベリスクフォースのみが出撃しており、彼らの場合はこうしてエクシーズ次元への攻撃と融合次元の防衛に徹しているはずだ。
彼らの会話で、赤服の2人が心配だということは分かっている。
単なる偶然かもしれないが、それでも侑斗には違和感がなくならない。
「ありがとう、お兄ちゃんたち!でも、見ない顔だね…?」
「ああ。俺たちはランサーズ。アカデミアを止めるためのチームなのさ!」
少女の目線に合わせるように膝を曲げた遊矢は笑顔で名乗る。
聞いたことのない名前に少女は首をかしげる。
「ランサーズ…?」
「それよりも、早くここを離れて、安全なところへ行こう。またアカデミアが来るかもしれないから…」
「でしたら、スペード校へ行きましょう。あそこなら安全です。近くにトラックを止めてあります」
伊織と柚子、ウィンダが落ちた缶詰を拾い、カートに入れている中、父親が翔太たちにお礼を言う。
そして、カートを押しながら7人にトラックのある場所まで案内する。
そこにはボロボロな軽トラが一台置かれており、荷台には雨避けのためのブルーシートがある。
「ブルーシートの中で隠れていてください。揺れますが、気を付けて…」
親子は軽トラの運転席と助手席に乗り、翔太達は荷台に乗ってブルーシートの中にカート共々隠れる。
軽トラがスペード校に向けて走る中、翔太はブルーシートの中から荒廃した町の光景を見ていた。
(なんだ…この街は…??)
翔太にはなぜかこの街に既視感のようなものを感じていた。
近未来的な街並みとゴミを集めるロボットの姿をなぜか思い出してしまう。
(俺は…ここに来たことがあるのか…?)