もう一度、彼に燈を   作:myo-n

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初めましての人もそうでもない人もこんばんは。
夏油を救いたいので初投稿です


今の君は遠い

 

「こふっ……」

 

体が貫かれた。

何かの例えではなく、文字通りお腹を彼の腕が貫いている。

これは、致命傷だ。

 

「すまない……今この状況において、君ばかりは手加減が出来なかった」

 

私に致命傷を与えたのに彼は苦しそうな顔をしている。

本当は敵なのに、後には守らなければ行けない生徒がいるというのに。

私の手は彼を抱きしめて頭を撫でていた。

 

時間稼ぎなんかじゃない、ただただ彼がどうしようもなく泣きそうなのを分かっているから……手を動かさずにはいられなかった。

 

「こうなる気は、してたから」

 

たかが二級術師が元特級術師に勝てるなんて妄想抱いていない。

ただ、時間稼ぎが出来れば十分だった。

でもそんなに時間は経っていないだろう。

彼はまもなく生徒を……乙骨憂太を殺しに行く。

 

「本当にすまない、私は……もう止まれないんだ」

 

体から腕が抜かれる。

体がスースーして気持ちが悪い。

けど、何だか同時に何でも出来そうな気もしてきた。

今なら出来るかな、最期の手。

 

「君は、私の事を恨んでも良い。全て受け入れるつもりだ……だが、もう少し待っていてくれ、私が大義を成すその時まで」

 

体から力が抜けて、倒れ込む。

あぁ……私死ぬのか。

でもこれだけは言いたい、言わなくてはいけない。

 

「わた、じは……うらま、な、いよ…………げ、と」

 

伝えたい事、聞いてほしい事はいっぱいある。

でも血が溜まって声が出ない。

 

ここが限界らしい。

体ももう動かなくなってきている。

 

「……あぁ、君はそういう人だったね」

 

彼は一筋の涙を流して、乙骨君の所へ向かっていった。

 

後に残ったのは、戦闘不能なパンダ君と狗巻君。

それと、血溜まりを作っている私。

 

パンダ君や狗巻君は大丈夫だろうか。

いや、彼は同じ術師を無闇矢鱈に殺したりはしない。

彼にとっては術師は全員仲間みたいな物なのだから。

 

「……ゴプッ」

 

あぁ、死んでしまうというのに何でこんなにも心地がいいんだろう。

呪力も満ち溢れている。

今なら出来るかな……反転術式。

 

そう思っていたら急に呪力が胸に一点集中し始めた。

何もしていないのに、何が起こっているの。

 

「……!」

 

駄目だ、どんどん意識が遠くなっていく。

もしかしたら私は呪いになってしまうのかもしれない。

それは、嫌だなぁ。

 

「……」

 

私が呪いになっちゃったら後はよろしくね、五条。

 

声にならない思いを最後に何も見えなくなった。

 

----

 

「初めまして、私は夏油傑。今日は君をスカウトしにきたんだ」

 

「……はい?」

 

これから先は、失ってしまった過去の話。




不定期です。
また見てね
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