ARMORED CORE FIRES OF TEYVAT 作:G14
爆音と衝撃によって彼の意識は覚醒する。
彼の意識が回復したことを認識した機体はオートパイロットを解除し、自身の主に機体の操縦権を移す。
『目が覚めましたか、レイヴン』
脳深部コーラル管理デバイスによって微睡みすらなく覚醒した彼に、エアと名乗るCパルス変異波形が語りかける。
そんな彼女に対して、彼は今の状況の説明を求めた。
『そうですね……正直なところ、解らないのです』
自分と違い、意識の連続性が途切れることのないはずの彼女が何故この状況を解っていないのか。彼は不思議に思い彼女に問う。
『ええ、その筈でした。私は対流するコーラルの波形。眠ることも無ければ気絶することも無い……ですが、私もついさっきまで意識を失っていたのです』
それはなんとも不思議な話だと考えながら、彼は自身の愛機のチェックを終わらせた。脚部腕部頭部胴部、両手の武器も右肩のミサイルも左肩のハンガーも全てが異常無し。
もし仮に今目の前にバルテウスが現れても余裕で殴り壊せるだろう。
『メインシステム、戦闘モード起動』
エアの言葉によって完全復活を果たした愛機を彼は立ち上がらせ、周辺をスキャンしながら歩かせ始める。
『注意してください、レイヴン。現在ありとあらゆる通信が途絶しています』
そういわれて彼は気付く。確かに、最後の戦闘の最中でさえ誰かしらからの通信が響いていたものだが、今はうんともすんとも言わない。
正真正銘、彼とエアのみの空間だ。エアのテンションは大いに上がる。
『それにしても、ここは自然に溢れていますね。彼等もまた、アイビスの火を生き残った灰被りなのでしょう』
一度全てを焼かれたルビコン3や、そのとばっちりを受けた周辺惑星。それらの星でここまで雄大な自然を見る機会は少ない。そんな自然を間近で、それもレイヴンと2人キリで見れるというのだからエアのテンションはやはり大いに上がる。
脳を焼かれて感情が薄い彼でさえもこの大自然を前に、少しだけ感情が昂っているようだ。
高所から周辺を確認しようと彼はブースターを吹かせ、機体を上空に持ち上げ――その瞬間警戒心を跳ね上げた。
『どうしましたか、レイヴン』
丘の上に着地した彼は、各種計器から得られるデータを詳細表示して確認する。
『これは……どういうこと、ですか……?』
今、彼等が居るこの場所の重力と大気成分は彼等が居たはずのルビコン3とは大きく異なっていたのだ。ついでに言えばルビコン3周辺の惑星ともこれらのデータは一致しない。
『つまり、私達は未知の惑星に来てしまったという事なのでしょうか』
恐らくはそうだろうと彼は考える。コーラルリリースを行ったのだから多少の異常は覚悟していたが、こうも物理的なものだとは予想していなかった。
『どうりで通信が……なるほど、となれば実弾兵器の使用は控えるべきですね。補給が出来る可能性は低いですし』
エアの言葉に従い、左手に持っていた実弾ショットガンであるZIMMERMANを左肩のMOONLIGHTと入れ替える。右手には元々EN兵器のNEBULAを持っているので問題なく使えるだろう。
エネルギー自体はコーラルを用いたジェネレーターを搭載しているので半世紀は安心して愛機を乗り回すこと出来るし、EN兵器を振り回すことが出来る。
『とりあえず、今は情報収集を続けてください。何をするにも情報は必要ですから』
彼にそう言いつつ、彼女も周囲の情報収集を始める。
そんな彼等の背後で、遺跡重機と呼ばれる巨大な人型兵器が起動した。
『レイヴン! 後ろで――』
クイックターンで後ろを向き、アサルトブーストで急接近。そして、勢いをつけたままの蹴り。流れるような動きで遺跡重機は沈黙した。
旅人の間では無駄に硬いことで有名な遺跡重機だが、重くて硬くてデカい奴が高速で衝突してきた衝撃には流石に耐えられなかったらしい。
『これは……レイヴン、近付いて解析して見て下さい』
エアの言葉に従い、彼は愛機を吹っ飛ばされ大の字で沈黙している遺跡重機へと近づける。そして、いつも残骸に行っているように解析を始めようとして――それが不可能な事に気が付いた。
『やはり、技術体系が違い過ぎる……技術の一端も解らない……?』
彼等の知る機械技術や電子技術とはかけ離れたナニカで駆動する遺跡重機。未知の存在にエアは背筋に寒いものを覚える……まぁ、背筋無いんだけど。
そんな時、周囲に敵性反応が大量に出現する。即座にスキャンを行い、上空に跳躍して見れば大量の遺跡重機と遺跡守衛が彼等を囲むようにして存在している。よく見れば土や草が付着している、どうやら土に埋もれていたようだ。
『土の中から現れるなんて……ミールワームか何かですかね』
明らかに、大量の遺跡重機と遺跡守衛に対して気持ち悪がっているエアの声。それを聞いてか聞かずか、彼はブースターの出力を落として上昇速度をマイナスにしつつ、右手に持つNEBULAへとエネルギーを溜める。
そして溜まり切った瞬間、躊躇いなく引き金から彼の指が離れ――世界は青に包まれた。
NEBULA内に溜め込まれていた膨大なエネルギーが一筋の青い閃光となり地面へ突き刺さり、着弾地点周辺にその膨大なエネルギーが滞留する。
『敵性反応4体沈黙、残り31体』
旅人からすれば機の遠くなる数だが、普段から大量の兵器を相手に1人で無双している彼にかかれば、この程度の小さな機械が束になってきたところで問題はない。
アサルトブーストで下降しながら1体の遺跡守衛に狙いを定め、左手のMOONLIGHTへとエネルギーを回す。
もちろんやられっぱなしの遺跡守衛と遺跡重機ではない。各々がレーザーやらミサイルやらで迎撃を試みる。しかし、最初の数秒しか追尾しない上に大した数でもないミサイルや、直線で細いレーザー程度であれば例え機体が火力装甲重視のガチタンだろうと軽く避けることが出来る。
無傷で迎撃を突破した彼は、狙いを定めていた遺跡種家を蹴り飛ばして撃破。そして、MOONLIGHTを薙ぎ払う様にして振るい巨大な三日月のような光の刃で広範囲を殲滅する。
そしてすぐさまクイックブーストで加速し、今度はノーチャージでNEBULAを連射する。
『敵性反応13体沈黙、残り18体です』
NEBULAがオーバーヒートしたタイミングでMOONLIGHTの二連撃をそれぞれ別の遺跡守衛と遺跡重機に叩き込み、アサルトブーストで加速しこれまた別の遺跡守衛に蹴りを入れる。
『敵性反応3体沈黙、残り15体!』
見た目こそ派手だが単調な作業だ。歴戦の傭兵である彼の手によって、残りの15体も1分もしない内に同じような手で沈黙した。
彼は愛機を停止させ、各所のブースターを冷却しつつ再び問題が無いかのチェックを始める。そんな彼を見つつ、エアは思わずと言った様子で呟く。
『これらの機体は一体……』
根本から技術体系の違う機体に、ルビコン周辺星系とは明らかに違う大気成分と軽い重力――そして、もう一つ、彼等にとっては明らかな異常にエアが気付いた。
『レイヴン、ここには私を構成するモノ以外のコーラルが存在していません……そんなはずが、無いのに……』
コーラルリリースによってコーラルは宇宙全体へと拡散した。少なくとも彼の稼働限界時間以内に到達できる範囲にはコーラルが散在しているはずだ。
であるのに、ここには彼女を構成するモノを以外のコーラルが一切存在していない。
『一層注意を、レイヴン』
彼女の言葉を反芻しつつ、彼は再び愛機の足を進め始めた。
今更ですがゴリッゴリのネタバレです