ARMORED CORE FIRES OF TEYVAT 作:G14
璃月港北部、岩王帝君を模った七天神像が見守る璃月港へと続く街道。
そこで、千岩軍と魔物の群れが戦いを繰り広げていた。
「クソッ! 一匹そっちに逃した!」
「どうしたってヒルチャールがこんなに――交代はまだなのか!?」
絶え間なく襲い来るヒルチャールと呼ばれる魔物達に、彼らはじわりじわりと追い込まれている。数度の人員交代を挟みつつ、すでに戦闘開始から8時間……戦線はじっくりと、確実に後退している。
「本当にどうしたってこの量のッ! ヒルチャールが来るって言うんだぁッ!!」
何とか少し休めそうになった一人の兵士が叫ぶ。
「なんかから逃げて来たんじゃないのか!」
負傷した兵士を救助していた兵士がその声に返す。
「そりゃあ良い! この量のヒルチャールが尻尾巻いて逃げ出すッ! 化け物がここに来るってことだ!」
前線で槍を振り回し、ヒルチャールを薙ぎ払う兵士がさらにその声に返す。
どの世界でも前線で戦う男達が饒舌なのは同じで、千岩軍の彼等も軽口を叩き合いながら戦闘を続ける。
彼等の雄叫びと、槍の穂先がヒルチャールの肉を裂く音、肉を裂かれたヒルチャールが叫ぶ声。それらが谷間で木霊し、地獄の亡者のうめき声の様な有様だ。
『レイヴン、どうやら前方で戦闘が行われているようです。注意を』
そんな音を聞きつけた彼は、ホワイトライムを駆って谷間へと急行する。アサルトブーストを織り交ぜた高速移動によって、1分すら経たずに辛うじて音が聞こえてきていた場所から谷間を構成する山の山頂へ到着した。
そして、そんな地獄の有様に純白の一つ目が落着する。ヒルチャールを摺り潰し、跳ね飛ばしながら着地したその鉄の巨人は、白く輝く一つ目を千岩軍へと向ける。
「オイオイ、お前があんなこと言うから本当に化け物が来ちまったぜ……」
「ヒルチャールの次は一つ目の巨人かよ……本部に応援を要請して来い!!」
遺跡重機の倍はあるだろうかという巨人に、千岩軍は恐怖する。しかし、誰一人として退く者は居はしない。
『なるほど、貴方の予想通りこの――ひるちゃーる? というのを倒せば彼等に恩を売れそうです。やりましょうか、レイヴン』
彼の脳内に埋め込まれた脳深部コーラル管理デバイスが戦闘モードに切り替わる。機械に置き換えられた脳と光ファイバーに置き換えられた神経に先程までとは比べ物にならない情報が流れる。
『……強化人間C4-621、戦闘モードへ移行』
彼女の声によって、彼の希薄な――だが確かに、その奥底で燃えている闘争心に薪が
『メインシステム、戦闘モード起動します』
ジェネレーターが機体上部で展開。瞬間、ホワイトライムを中心に球形の爆炎が広がる。
『ッ……アサルトアーマー、残数2』
ただエネルギー爆発を展開する通常のアサルトアーマーでは無く、ジェネレーター内部に存在していたコーラルを外部に放出して爆破する方式でのアサルトアーマーは非常に強力だ。
ホワイトライムを中心に半径50m近い範囲内に存在していたヒルチャールは消し炭となり、その外側に居たヒルチャールも火傷等で重傷を負った。もし敵撃破で報酬が追加されるミッションであれば今頃画面いっぱいに報酬の通知が流れていただろう。
そして、そんな大量殺戮を行った彼はその直後にアサルトブーストを発動し谷の底スレスレを飛び回る。マーヴェリックだってこんな無茶な飛行は出来やしないだろう。
ブースターから放出される炎と機体が進んだことで切り開かれた空気によって、ヒルチャールの群れに炎が広がる。
「なんだ、これは……」
「地獄だよ、俺達は地獄を見てるんだ」
璃月港から交代に来た兵士の漏らした言葉に、先程まで戦っていた兵士が地面に座りながら答える。
七天神像の前で、ヒルチャールを薪として轟々と音を立てて巨大な炎が燃え盛る。ヒルチャールの悲鳴すらも飲み込むこの炎の轟音の方が、先のモノよりも地獄の亡者のうめき声のように聞こえる。
そしてその地獄の中心で、純白の一つ目巨人が殺戮を終えて、千岩軍の方を見据えた。
「……来るぞ!」
「死んでも通すなよ!!」
「こちとら死ぬ覚悟は出来てんだ! やってやる!」
ゆっくりと千岩軍の目の前まで歩いて来た一つ目巨人。その赤い一つ目が彼らを捉えて――
『大丈夫でしたか?』
――意味の通る言葉を発した。
しばらく両者の間で沈黙が流れる。燃え盛る炎の音と、それに紛れたヒルチャールの悲鳴だけが場に不気味に響く。
こちらはこちらで地獄の空気だ。
『……もしや言葉が通じていないのですか?』
「あ、いや! 通じている!」
『それは良かったです。それで、大丈夫ですか?』
「ああ、大丈夫だ。アナタのおかげでな」
勇気ある千岩軍の兵士と、一つ目の巨人が会話を始める。他の千岩軍は目の前の一つ目巨人から人間の……それも女性の声で意味の通じる言葉が飛び出てきたことに驚いていた。
「それで、アナタは一体?」
『旅をしている者です。少しアクシデントがあり遭難していた所、町を見つけたので物資の補給をしたいと思い進んでいた所――』
「襲われている俺達を見つけて、その……助けた、と?」
『その通りです』
未だ炎燃え盛る地獄の光景を背負った一つ目巨人。控えめに言って助けに来た奴らが背負っていていい光景ではない。
しかし、相手がどんな化け物であれ恩義にはしっかり感謝をするのが璃月人だ。千岩軍の兵士達はしっかりと敬礼を――怪我人は略式であったり左右逆であったりするが――をして一つ目巨人に向かい合う。
「では、感謝を。アナタのおかげで璃月港は守られました。無論、私達の命もです」
『当然のことをしたまでです』
「それで物資の補給の件ですが……その、その体の大きさでは璃月港には――」
『ああ、これは……そう、鎧です。鎧なので脱げば皆様と同じような大きさになれます』
まぁ、嘘では無いだろう。体を守るモノであるのは確かなのだし。
「そうですか、では我々はアナタを歓迎しましょう。鎧の置き場は――」
『それについてはご心配なく』
「分かりました……では、璃月港はアナタを歓迎します」
と、なにやら話が纏まった。なお、この間に今回の殺戮を演じて見せた彼は一切話に関与していない。精々千岩軍に歩み寄ったくらいだろう。
役に立てなかったと少し残念そうな彼を、十分頑張りましたよとエアが励ましている。
そんな頃に、璃月港の埠頭に存在する巨大建造物。その上から胡散臭い男が、明らかにこの世界にそぐわない双眼鏡を用いてホワイトライムを品定めをするようにして観察していた。
「ふむ、独立傭兵レイヴン……彼もここに来たのですか」
ルビコン3では
「AC付きでやって来た凄腕の独立傭兵を利用しない手は無いのですが……はぁ、厄介な人に捕まってしまったものだ」
やれやれ、といった具合の五花海が建造物の梯子に手を掛けた。
口調を覚えるために大量のG3とついでに