ARMORED CORE FIRES OF TEYVAT 作:G14
《敵襲だ! コード――》
爆音と共に高速で接近した純白のACに2機の汎用兵器が蹴り砕かれ、動力系統に異常を起こして爆散する。
《なんだ今の音――》
《ACだ! 応戦しろ!》
《なんだこいつは!? 速すぎる! うわああああああああああ――!》
封鎖機構のMTやLCが不意打ちによって次々と反撃すら出来ずに撃破され、爆散する。
かつてはベイラムの燃料基地であったここは、封鎖機構の手に落ちていた。そして、今この瞬間に1人の傭兵によって破壊されようとしている。
純白のACは高速で飛び回り、目にも止まらぬ速さで敵を撃滅する。その合間に燃料タンクを破壊し、封鎖機構の非戦闘ヘリすらも粉砕する。
《来たぞ! 報告にあったACだ!》
《どこの所属だ……?》
《詮索はよせ、照合はシステムが……ッ! 速すぎる――!?》
彼らが純白のACを捉えた時には、既に数機が食われている。超近距離戦を仕掛けてくる純白のACを相手に遠距離武器で武装した封鎖機構のMTでは分が悪く、機動力が劣るLCでは追いつけない。
向かってくる純白のACへと何百何千という弾丸やレーザーが殺到するが、一発の命中弾すらなく回避される。
ものの数分。そう、たった数分で封鎖機構は壊滅した。純白のACの機体には汚れは1つもついていない。
敵を殲滅し終えた純白のACは目標であった燃料基地の中枢を破壊した。これで今回のミッションは終了、後は帰るだけ……とは、行かない。
《あれが報告にあった機体か……信じられん》
《本当に――武器を、持っていないだと……?》
純白のACは丸腰であった。本来両腕に握られているはずの武器も肩に乗せられているはずの武器も一切合切が無い。
つまり、燃料基地の敵をこの純白のACは徒手空拳で殲滅したのだ。
《たかがAC、エクドロモイの敵ではない。やるぞ》
《了解》
2機の特務機体が純白のACを撃破しようと連携して攻撃を開始する。遠距離型が支援攻撃を行い、近距離型が支援攻撃によって生まれた隙に高威力の近距離攻撃を食らわせる。
非常に強力な組み合わせだ。ただ――
《ば、化け物が! コード――》
少々、相手が悪かった。
アサルトブーストで近距離型に肉薄した純白のACは、獣のような逆関節の脚で近距離型のコックピット付近を蹴り飛ばす。その勢いのまま蹴り上げてコックピットをこじ開けて右腕を叩き込み、あっという間にパイロットを挽肉に加工する。
会敵から僅か30秒で、エクドロモイが1機撃破された。
そして、さらに30秒後には純白のACは燃料補給基地から悠々と飛び立ち、帰還していった。
機体の両腕に付着した血液が純白の雪の上に、死神が去った足跡かのように点々と落ちていた。
ホワイトライムが、その巨体とは見合わない速度で雲を引いて飛んでいく。コーラルの燃える色が、明るい空と純白の機体に映えている。
『……行きましょうか、レイヴン』
そして、自身の愛機を見送った彼はエアの言葉に反応して璃月港へと歩き出した。
黒いパイロットスーツに身を包みその上に赤が目立つパーカーを羽織った彼は、パーカーのフードで顔を隠している。僅かに覗く瞳は赤く染まり、それでいて無感情。肌は白く不健康そうに見え、所狭しと傷跡が並ぶ。
ホワイトライムから降りた彼の余りにも凄惨な姿に、それを見た千岩軍が絶句するのも無理はない。
『まずは食料を購入しに行きましょうか。千岩軍から報酬が貰えましたし、少し贅沢しちゃいましょう』
エアの声に従って、彼は璃月港を食品店を目指して散策する。焼けた大地と荒廃した町しか記憶にない彼にとって、これほどの人間で賑わう”生きた町”は未知の領域だ。
彼の好奇心は大いに刺激されるが、今のミッションは食料の確保なので目移りしないようにして目標を探す。
さて、ここで問題が1つ。
『ところでレイヴン。私は人が食べるものをミールワームと合成ペーストくらいしか見たことが無いのですが、レイヴンはどのようなものか分かるのですか?』
そう、残念ながら彼にもそれ以外の食べ物の見た目は解らない。
温かいのか、冷たいのか。軟らかいのか、硬いのか。何もかもが彼等には分からない。なんなら加工された肉も見たことないし、木の実なんて辛うじてリンゴを知っているくらいだ。
こんなんでも野宿出来るだろうと思っていた彼等は、控えめに言っても大馬鹿野郎である。まぁ、肉は動物殺してそのまま食べれば良いし、木の実も毒が無ければ食べれるので一応野宿でも問題は無かっただろうが。
『そうですか……誰かに聞いてみないと――』
「何か困っているようだが、大丈夫か?」
誰かに聞こうと言われても……どうしようかどうしようか、と悩んでいる彼の後ろから一人の男が話しかけて来る。
『ちょうど良いではないですかレイヴン。困っているのは事実なのですから助けてもらいましょう』
エアに言われてか自分で選択してか、彼は男の問いに頷いた。そして、自分達が食料を売っている店を探しているのだと伝える。
「なるほど……ならば良い店を知っている。ついて来ると良い」
そう男に言われた彼は。ホイホイと着いて行く。傍から見ると完全に事案だが、彼もエアも人間の常識に疎いため本人達には1mmも警戒していない。
ついでに男も傍から見れば事案だという事に気付いていないし、本当に他意無く助けているのでこれを事案だと思った人は心が汚れている。
「見たところお前は旅人のようだが、どこから来たんだ?」
少し歩いたところで男が彼に話しかける。気遣い等ではなく純粋な興味での質問のようだと、エアは言う。
『とりあえず遠い場所からとでも言って誤魔化しましょうか』
エアの言葉に従って、彼は自分達は遠い場所から来たのだと伝える。また、旅の途中でトラブルが起こり璃月に来てしまったのだとも付け加える。
「そうか……それは災難だったな。良ければ、食料を買う前に共に昼食を摂らないか? お前の話が聞きたい」
『どうしますか、レイヴン。貴方に任せ――』
「もちろん支払いは俺が持とう」
『――私は行くべきだと思います』
現金なCパルス変異波形だなぁと彼は思いつつ、男の提案にOKサインを出す。費用を掛けずに安全に栄養が補給出来るのなら間違いなく得なので、彼としても了承するつもりだったのは言うまでも無いだろう。
傭兵なんて金に困る生き物なのだから当たり前である。