近距離パワー型のじゃロリ狐っ娘守護霊 作:名無しの狐信者
オールマイトに吹き飛ばされたヴィランはバラバラになったが、流体なので気絶はしたが生きていたようだ。
ナンバーワンヒーローと一緒に拾い集めて、ペットボトルの中に詰め込んでいく。
少し時間がかかったが、無事に回収終了である。
「いやぁ! 悪かった!
ヴィラン退治に巻き込んでしまった!
いつもはこんなミスはしないのだが!
オフだったことと慣れない土地で、浮かれちゃったかなぁ!」
回収し終わったヘドロヴィランを、イズクが緊張しながらどうぞと渡した。
「しかしっ! 君たちのおかげさ! ありがとう!
無事っ! 詰められたっ!」
ヴィランの被害に遭う前に撃退できたので、良しとしておく。
あとはオールマイトや警察の仕事だし、イズクは憧れのヒーローに会えて感謝感激である。
「ああっ! サインっ! サインっ! あのノートに!」
緑谷君はカバンから慌ててノートを取り出した。
緊張しながらオールマイトに渡すと、彼は慣れているようだ。
嫌な顔一つせずにテキパキと書いてくれた。
「わああああっ! ありがとうございますーっ! 家宝に! 家の宝にいいっ!」
「OK!」
サイン入りノートを返したあとに、ビシッとOKサインを出す。
そして次に、半透明になって宙を漂っている妾のほうに顔を向ける。
「そっちの少女はサインはいらないのかな!」
「妾はいらぬ」
妾は別にオールマイトのファンではない。
それに霊体では物を持ち歩けないので、私物はかなり少なかった。
サインを貰っても扱いに困りそうなため、断らせてもらう。
「ところでオールマイトに、一つだけ尋ねたいことがあるのじゃが」
見えてしまったモノが気になるので、この機会に質問させてもらう。
「はっはっはっ! ヒーローは多忙だが構わないさ!
けど、一つだけだぞ!」
「うむ、すまぬのう」
ナンバーワンともなれば、きっと物凄く忙しいのだろう。
なので、手短に済ませることにした。
「お主の後ろにおる七人は、誰なのじゃ?」
「……は?」
個性届けには記載していないが、妾には他者の生命エネルギーが見える。
そしてオールマイトには、全部で七つのスタンドが憑いている。
輪郭はあいまいだが体格的に人間のように見えなくもないため、そのように質問させてもらった。
「ああっ、いやっ! すまない!
キミの説明を理解できなかった! もう少し詳しく頼む!」
オールマイトがやけに食い気味でこちらに近づいてくる。
何か気に障ることでも言ったのかなと考えても、別に怒ってはいないようだ。
「そしてすまないが、そこの少年には席を外してもらいたいのだが」
「妾はイズクに憑いておるゆえ、十メートル以上は離れることはできぬぞ」
どうやら七つのスタンドは、彼にとって秘密にしておきたいことのようだ。
それは別に構わないが、妾には有効射程距離というものがある。
「そっ、そうか。ならば悪いが、限界まで離れて小声で頼む」
「そういうことらしいぞ。イズクよ」
イズクはやっぱり良い子のようだ。
申し訳なさそうに謝罪するオールマイトに、気にしないでくださいと声をかけて静かに離れてくれた。
そしてただ待っているのも暇だからと、簡易の筋トレグッズを鞄から取り出して。体を鍛え始める。
そんな様子に、少し引き気味になるオールマイトであった。
しかし取りあえず人気のない場所に移動し、内密な話が始まる。
「それでキミは、何処まで見えているのかな?」
「七人がお主に力を与えておるぐらいじゃな」
「殆ど全部じゃないか!」
小声とは言え、大げさに驚いて天を仰いでいる。
妾は何のことかは良くわからないが、スタンドとはそういう存在だ。
それに生命エネルギーとして薄っすら見えるのだから、力を与えているのは間違いないだろう。
「こっ、このことは──」
「わかっておる。誰にも言わぬよ」
最初に内密な話だと言っていた。
それに妾も、オールマイトには興味はない。
わざわざ吹聴することもなく、明日になったら忘れて普段通りの日常に戻るだけだ。
「しかし、何故キミに見えたんだい?」
この質問に妾は少しだけ考えて、彼の後ろで佇んでいる七人に向けて話す。
「それは妾が、お主のそれに近い存在じゃからじゃろう」
オールマイトは興味深そうに妾を見ている。
先程の反応から、彼はスタンドのことを良くわかっていないと判断し、詳しく説明していく。
「妾は、肉体を持たぬ生命エネルギーの塊じゃ。
お主のそれも恐らく似たような存在ゆえ、薄っすらとじゃが見えたのじゃろう」
「そうなのか? 個性に意志が、……魂が宿るのか?」
彼は何やら難しそうな顔で考え込んでいる。
全ては妾の推測に過ぎないし、確証があった訳ではない。
パッと見ただけで、そのものズバリ正解を引き当てるわけがなかった。
しかし、ここまで考えたあとに思いつく。
(そう言えば妾は、直感だけで正解を引き当ててたのう)
例えるならカードの裏を見なくて直感で数字や絵柄を当てるなど、当てようと思えば当たって、外そうと思えば外れるのだ。
なので自分でも何が何だかわからないが、答え合わせも含めて百発百中と言っても過言ではなく、オールマイトの個性を超速理解しても別におかしなことではなかった。
(つまりオールマイトの個性は、……いや、これ以上は止めておこう)
直感を働かせると、ナンバーワンヒーローはかなりの面倒事を背負っている。
下手に深入りすると、こっちに飛び火してくるのは間違いない
妾はイズクのヒーローになりたいという夢を応援しても、自分から火の中に飛び込みたくはなかった。
そんなことを考えていると、オールマイトは何かに気づいたように口を開く。
「そう言えばあの少年は、個性を二つも持っているのかな?」
「いや、イズクは無個性じゃぞ。
波紋は個性ではないし、妾も取り憑いておるだけじゃしな」
弟子は生命エネルギーだけで、個性因子は依然として見えていない。
なので率直に返事をすると、オールマイトは驚いた顔をしていた。
「えっ?」
「えっ? ……あっ!?」
今さっきまで別のことを考えていたのがいけなかったかのか、つい正直に答えてしまった。
イズクの個性のことで質問されることは滅多になく、守護霊以外の波紋に関しても妾のすることだしで、なあなあで済んでいたのだ。
しかし今の発言をなかったことにするのは、ちょっと難しいかも知れない。
オールマイトは嘘をついてもすぐに見破りそうだし、妾はすぐに頭を下げて彼に誠心誠意頼み込む。
「このことは、内密に頼む。
イズクは無個性じゃが、それでもヒーローを目指しておるのじゃ」
けれどナンバーワンなので、人の頼みを無下にしたりはしないだろう。
「憧れの存在であるオールマイトに否定されたら、イズクは深く傷つくじゃろう」
例えば無個性でもヒーローになれるかと尋ねて、オールマイトから否定されたら立ち直れないだろう。
なので、イズクにその話題は厳禁だ。
妾はくれぐれも内密に頼むと、重ね重ねお願いする。
すると彼はしばらく何か深く思い悩んでいたが、やがて結論が出たのか難しい顔で口を開く。
「……わかった。彼には決して言わないことを誓おう」
「すまぬな。オールマイト」
気持ちを切り替えて、気にしないで良いと眩しい笑顔で返事をした。
こういうところがナンバーワンの秘訣なのかもと思う。
「さて、そろそろ私は行かないと」
「活動限界が近いのじゃな」
確かに彼の生命エネルギーが目に見えて減っているので、限界が近いのもわかる。
「そっ、そこまでお見通しとは!」
「お主の生命エネルギーは少々歪じゃからのう」
彼の生命エネルギーを例えるなら、薪についた炎だ。
しかしそれが今は火の勢いが弱まり、消えかけている。
あまりよろしくない状況だが、とてもわかりやすい。
「ナンバーワンヒーローは大変じゃのう」
「はっはっはっ! 本当に人気者は辛いよ!」
オールマイトはそう言って、イズクのほうに向かう。
この場を去ることを伝え、別れの挨拶をする。
そして超パワーによる跳躍で、空高く舞い上がった。
妾たちの前から、華麗に姿を消したのだった。