近距離パワー型のじゃロリ狐っ娘守護霊 作:名無しの狐信者
謎の空間に招かれた妾は、彼らの過去とオールフォーワンについて教えられた。
ぶっちゃけ興味はなかったので、それを知ってどうなるという感じだ。
しかし死柄木与一がわざわざ呼んで伝えたのだから、重要な秘密なのは間違いなく、妾も然るべき対処をするべきだろう。
椅子に座りながら闇が広がる空を眺めて、おもむろに口を開く。
「オールマイトとイズクには伝えておこう」
「伝言を頼んじゃって、ごめんね」
死柄木与一が申し訳なさそうに謝罪する。
妾は大きく息を吐いて、首を横に振った。
「イズクは継承したばかりで、まだ対話ができる状態ではない。
ワンフォーオールが馴染むまでは、無理をさせるべきではあるまい」
歴代継承者の個性も、いずれは使えるようになるのだろう。
しかしまずはワンフォーオールを完全に制御し、できれば身体強化を100パーセントまで苦もなく引き出せるようになってからだ。
器が未完成の状態で歴代継承者の個性に手を出せば、下手をすれば制御がおぼつかないだけでなく、暴走の危険もあった。
妾は外付け個性なので心配はないが、それでもイズクにあれもこれもと抱え込ませるのは、申し訳なく思った。
「では用も済んだようじゃし、帰るとするか」
「えっ? 帰れるの?」
「うむ、空間に少し穴を開けるがのう」
同じ存在ならば妾のほうが強いため、閉鎖空間に強引に干渉することは可能だ。
「それが嫌なら、さっさと帰すことじゃ」
「あははっ、わかったよ。今日は応じてくれて、ありがとう」
気にするなと一言を告げると、妾の意識は本体に戻った。
まるで夢を見ていたような妙な感覚だ。
しかし記憶ははっきり残っているので、やはり現実に起きたことなのだろう。
取りあえず、丸めていた体を起こしてぐいーっと伸びして眠気を覚ます。
続いてすっくと立ち上がり、イズクとオールマイトのもとに歩いていく。
そしていつも通りにマイペースで、死柄木与一から聞いた情報を洗いざらいぶちまけた。
二人共とても驚いていたが、妾は伝言を頼まれただけだ。
あとは歴代継承者である彼らが判断することである。
悩んで考え抜いて納得したのなら、自分は何も言うつもりはない。
しかし、相変わらずちょくちょく助言を求められる。
なので適当に答えながら、何とか昼寝の時間を確保しようと頑張るのだった。
ワンフォーオールとオールフォーワンに悲しき過去が、などという回想イベントっぽい何かを終えた。
あとはかなりの長丁場になったが、ナンバーワンヒーローの呼吸器官と胃は無事に修復される。
まだ元通りとはいかずに、食はかなり細い。
流石に内臓の再生は、一朝一夕にはいかないようだ。
しかしイズクの生命エネルギーが必要ない段階になったので、あとは自然治癒力と最新の医療、他の医者の治療系の個性に任せて経過を見るのだった。
そんなある日、雄英高校から推薦入試のお誘いが届く。
しかし、イズクはこれを考えるまでもなく即断った。
どうやら一般の試験から正々堂々入るようだ。
やるからには贔屓目なしに、自らの力で勝利を掴みたかった。
そういうところは男の子だなと思う。
まあ今のイズクが落ちるならプロヒーローでも、その殆どが落第するだろう。
妾は後方腕組み師匠ポジとして、堂々と背中を押して送り出すだけだ。
なお、試験当日だというのに早朝の修行を欠かさないので、もしかしたら試験に遅れるのではないかとヒヤヒヤした。
幸い間に合い、イズクの身長は195センチで体重は100キロほどのガチムチだが、その割に小心者だ。
滅茶苦茶緊張しながら、正門を抜けて校舎に向かって歩いていく。
「退け、デク!」
「かっちゃん!」
後ろを振り向くと、爆豪少年が歩いて来ていた。
彼はそのまま妾たちの横を通り抜けて、ズンズン先に進んでいく。
「俺だけ合格してたら、殺すからな!」
「おっ、おはよう! 頑張ろうね! お互い!」
イズクのほうが身長が高くて強そうなのに、相変わらずオロオロしながら挨拶している。
妾たちが落ちたら殺すという、彼なりの不器用な激励だろう。
口が悪いのは変わっていないが、最初と比べれば多少はマシになった。
そして爆豪少年を見送り、イズクもヒーローへの一歩を踏み出そうとしたら、盛大にコケた。
しかし、その途中で動きが止まる。
空中に留まってあたふたしているが、妾が止めたわけではない。
「大丈夫?」
「うわあああっ!?」
「私の個性。ごめんね。勝手に。
でも、転んじゃったら縁起悪いもんね」
そう言って彼女は個性を解除して、イズクを地面に立たせる。
「緊張するよねー。お互い頑張ろう!」
イズクを助けてくれた良い人は、続いて宙に浮いてのんびりアクビをしている妾に顔を向けた。
「うわあぁ、本当にお狐様なんだね! 凄い可愛い!
ねえっ、触って良い!?」
彼女は個性を使ってイズクの転倒を止めたので、きっと良い人なのだろう。
「お主なら、まあ良かろう」
なので妾は少しだけ高度を下げて実体化して、尻尾を近づける。
「ありがとう! どうか試験に合格しますように!」
縁起物と勘違いしているのか、良い人は尻尾を軽く撫でる。
そして二礼二拍手一礼をして真剣に祈る。
「じゃあ!」
やがて満足したようで、そう言って背を向けて建物に入っていく。
妾たちはいつまでも留まっているわけにはいかないし、そろそろ向かおうと思ったところで、また背後から声がした。
「仲良さそうですね」
「うわあっ!?」
気配を消すのが上手いようで、イズクは気づかなかった。
しかし妾には耳だけでなく鼻も利くので、渡我少女が近づいていることはすぐにわかった。
「久しぶりじゃのう」
「とっ渡我さん! おはよう!」
「おはようございます」
挨拶が終わると、渡我少女は物欲しそうな顔をして妾をじっと見てくる。
「私もお狐様の尻尾、触らせてください」
「何故じゃ?」
「私も、かあいいお狐様に触りたいです」
理由になっているような、なっていないような微妙な感じだ。
しかし渡我少女が妾に触りたい気持ちは、熱い視線と両手の動きで嫌というほど伝わってくる。
「渡我少女とは知らぬ仲ではないし、まあ良かろう」
「やった! やっぱり、お狐様はかあいいねえ!」
また高度を下げて尻尾を触らせているが、渡我少女は非常に興奮しているように思える。
試験開始時間ギリギリになるまで、解放してくれなかった。
彼女は一年早く雄英高校に合格したし、きっとのじゃロリ狐っ娘ロスだったのだろう。
イズクも入試に通れば晴れて一緒に通えるので、心待ちにしていたはずだ。
とにかく渡我少女は敷地内で弟子の合格を願い、満足したようだ。彼女は家に帰ると告げて立ち去った。
本当にイズクの応援も兼ねて、妾に会いに来ただけのようだ。
渡我少女の考えることは良くわからないが気持ちは伝わり、駆け込みで何とか間に合ったから良かった。
下手をすれば試験を受けることなく、不合格を言い渡されかねなかったので、危なかったのだった。