近距離パワー型のじゃロリ狐っ娘守護霊   作:名無しの狐信者

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前世の日本とはちょっと違うのじゃ

緑谷出久(みどりやいずく)

 かっちゃんとその友人たちに、来月取り壊される予定の神社に行くように脅された。

 素直に言うことを聞く必要はなくても、やらなければあとが怖い。

 

 それに度胸試しになるのは本当だ。

 もっと言えばヒーローを目指すなら、夜間の行動にも慣れておくべきだろう。

 

 ただ爆破の個性を持つかっちゃんとは違い、自分は何もない無個性だ。

 それでも最高のヒーローであるオールマイトに憧れて、どうしても夢を諦めきれない。

 

 なのでこの経験も、将来何かの役に立つかも知れないと言い聞かせる。

 管理する人もいなくて老朽化が進んでいるためか、参道の入り口には立入禁止と書かれた立て札があった。

 

「ううっ、ごめんなさい!」

 

 ヒーローを目指す者にあるまじき行為ではあるが、それでも僕も意地になっていたのかも知れない。

 

 立ち入り禁止を乗り越えて山の頂上の神社を目指し、長い石段を緊張しながら登っていく。

 

 月が綺麗でも辺りは暗いし、もうこの時点で凄く帰りたい。

 しかし勇気を出してここまで来たんだし、ちゃんと最後までやりきりたい気持ちもある。

 

 とにかくようやく頂上についたので、朽ちかけたお社を目指して真っ直ぐに進んでいく。

 

 すると何処からともなく、小さな女の子の可愛らしい声が聞こえてきた。

 慌てて懐中電灯で周りを照らしても、誰もいない。

 

 僕は急に恐ろしくなってきて、ブルリと身を震わせるのだった。

 

 

 

 その後は色々あって、神様が言うならとしめ縄をちぎった。

 

 悪いことだとは、わかってはいた。

 でも来月には業者が入って取り壊されて、ソーラーパネルが設置されると聞いている。

 なので、近々消えゆく神様の最後の頼みなのだ。

 

 とにかく彼女の望みを叶えると、岩の後ろから狐耳と尻尾を生やした可愛らしい女の子が飛び出してきた。

 大いに驚いている僕にお礼を言い、夜空に向かって飛んでいく。

 

 ……と思ったが、途中から先に進めなくなったようだ。

 あまりにも予想外だったようで、彼女は地面にへたり込んで大声で泣き出したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<金色狐っ娘>

 ようやく自由になれると思った。

 しかし現実は、岩ではなく少年に取り憑くことになってしまう。

 

 相変わらず半径十メートルしか動けないし、前よりはマシだが泣けばいいのか笑えばいいのかだ。

 

 取りあえず地面にしゃがんで、どんよりしながらグズグズ泣きながらのの字を書く。

 すると困惑の表情を浮かべた少年が、おずおずと声をかけてくる。

 

「あっ……あの、お狐様」

「お狐様? それは妾のことか?」

「あっ、はい、僕はこの神社のことを良く知らないので」

 

 そう言えば妾が神だと、主張していたことを思い出す。

 しかし自分も、神社のことは全く知らない。

 

 もしここで騙していたことを告げた場合、さてはオメー悪霊だなと除霊される可能性もあった。

 妾は転生して数日で死にたくはない。

 

 なので、この場は取りあえず乗っておくことにする。

 すっくと立ち上がって薄い胸を張り、堂々と答える。

 

「妾も気づけばここで暮らしており、詳しいことは知らぬ!

 じゃが、一応は神じゃからな! お狐様と呼ぶが良いぞ!」

「わかりました。お狐様」

 

 取りあえず、神様であるということを強調しておく。

 少年が純粋で助かり、すんなり信じてくれた。

 

 確かに危害は全く加えてはいないので、疑いの目を向ける要素は少ない。

 しかし彼はそんなにお人好しで、世間の荒波に揉まれて生きていけるのかと不安になる。

 

(マジでこの少年は大丈夫かのう? 悪い人に騙されそうじゃぞ)

 

 なお、今の自分の見た目がのじゃロリ狐っ娘だ。

 邪悪にはとても見えないし、色々やらかしはしたが根っからの悪人というわけではない。

 

 なので彼がすんなり信じるのも、そこまでおかしくはないのかも知れないと、少しでも前向きに考えることにした。

 

 

 

 けれど、それはそれで問題はこれからだ。

 

 妾は少年に取り憑いているということは、今後は彼と一緒に暮らすということである。

 当然、家族や友人にも紹介したりと、すんなり受け入れられるとは思えない。

 

(どう考えても、除霊待ったなしじゃな)

 

 内心で狼狽えて顔色が悪くなるが、それを少年が目ざとく気づいた。

 

「あの、お狐様。どうしたんですか?」

「何でもないのじゃ。それはそうと、少年よ」

 

 妾はちぢれ毛の少年を真っ直ぐに見つめ、はっきりと口を開く。

 

「先程は妾が、加護を与えると言ったよのう?」

「えっ? あっ、はい」

 

 ここは今の状況を、できる限り利用することに切り替える。

 

「なので妾が、少年の守護霊となってやろう」

「本当ですか!?」

「うっ、うむ。妾に二言はない」

 

 普通なら不気味がられるが、少年は物凄く嬉しそうだ。

 本当は事故で取り憑いただけなので、良心が痛い。

 

(これも悪霊として祓われぬためじゃ)

 

 神様だと信じている少年の心理を逆手に取り、少しでも妾にメリットがあると思わせるのだ。

 

「あとは敬語では気疲れするじゃろうし、普段通りで構わんぞ」

「わかりま……ううん、わかったよ」

 

 まだ緊張しているようだが、何とか普段通りに喋ってくれるようだ。

 現時点で少年の機嫌を損ねるのは非常に不味く、取りあえず彼にストレスを与えないように気をつける。

 

 そして妾は自分がどれだけ有用かを示そうと、足元の石を拾って立ち上がる。

 間違っても除霊とか考えないように、それとなくアピールするのだ。

 

「妾の能力を簡単に説明すると、近距離パワー型のスタンドじゃ」

 

 ザ・ワールドも近距離パワー型に分類されているが、十メートルという破格の活動限界範囲だ。

 なので、妾も含めても構わないだろう、

 

 その場の思いつきを口にするが、少年は理解できないようで首を傾げて口を開く。

 

「近距離パワー型のスタンド……って、何ですか?」

「えっ?」

「えっ?」

 

 妾は拾った石を軽く握り潰しながら困惑する。

 前世ではジョジョネタで盛り上がってたし、神社や彼の様子から前世の日本のある可能性が高い。

 

 ならば年代が違うか、もしかしたら異世界なのかも知れないと思い至る。

 

「もしかして、ジョジョを知らぬのか?」

「ええと、……はい」

「そっ、そうか」

 

 まあ別に誰もが知っているネタではないし、少年がたまたま知らなかった可能性もある。

 しかし、手っ取り早く伝えられる良い説明だったのになーと思いつつ、少し長くなるが普通に伝えることにした。

 

 なおその途中で、彼の名前は緑谷出久で少し前に中学一年生になったばかりだと、教えてもらうのだった。

 

 

 

 

 

 

 色々話し合った結果、イズクは守護霊の個性に目覚めたということでゴリ押すことになる。

 そして妾を家族に紹介すると、母親である引子さんは涙を流して大喜びして、何故か大歓迎状態であった。

 

 どうやらこの世界は、個性至上主義のようだ。ぶっちゃけ前世よりも格差が大きい。

 無個性だと苛めや迫害の対象になるのは珍しくはないし、異形系も時には嫌われたりと、平和な日本とはちょっと言い辛い。

 

 そう考えると母親の引子さんも、かなり苦労して子育てしてきたのは容易に想像できた。

 

 なので妾に偶然取り憑かれたイズクは、便宜上は無個性ではなくなり、家族の負担は軽くなる。

 内心では申し訳ないことこの上ないが、妾の存在が助けになるなら少しだが気が楽になるのだった。

 

 そして取り憑いた少年はと言うと、凄く良い笑顔でこちらに話しかけてくる。

 

「お狐様が取り憑いてくれて、僕も嬉しいんだけど」

「そうかのう?」

 

 市役所から帰宅後に、少し遅めの朝食をいただく。

 今はテレビをつけて、適当なチャンネルの番組が流れている。

 

 それはそれとして引子さんはやらなくて良いと言ったが、妾の立場としては居候なので、イズクの十メートル以内しか動けないが、家事を手伝うことにした。

 

 彼が自室で勉強している間は、あまり動けない。

 だが壁をすり抜けて移動できるため、色々とやりようはある。

 

 

 

 とにかく今日は土曜日で、公共の施設が使えたのは良かった。

 そして妾は霊体で味覚はなく、物は食べられない。

 

 しかし、イズクとは感覚を共有できるようだ。

 腹は膨れなくても、食べている気にはなれる。

 

「他の感覚は備わっておるのにのう」

「幽霊は物を食べないし。

 お狐様のことを詳しく調べれば、もっとわかるかもだけど」

 

 イズクが味噌汁を飲みながら呟くが、確かに幽霊が食事をしている光景を見たことがない。

 スタンドはかなり生身に近いし、もしかしたらできるかもと思ったが、残念無念だ。

 

 けどこれはこれで新鮮で面白いし、二人は今のところは除霊する気はないようなので、当面の危機は去って良かった。

 

 妾がそう思いながら居間に掃除機をかけていると、引子さんが声をかけてくる。

 

「そう言えば個性は、守護霊だったかしら?」

「そうじゃな。市役所の届け出には、そのように記載したぞ」

 

 能力的には近距離パワー型のスタンドと似ているが、妾の姿は他の人間に見えて、意志を持って独自に動くことができる。

 

 さらに、この世界には個性というものがある。

 人に宿るタイプは珍しいが居ないわけではないらしく、そういうのもあるよねと普通に受け入れられて良かった。

 

「これで出久の夢も叶いそうね」

「イズクの夢じゃと?」

 

 妾は掃除機をかけながら、はてと首を傾げる。

 イズクとはまだ会ったばかりで、そんな話は聞いていない。

 

 すると彼は少し恥ずかしそうに、モジモジしながら教えてくれる。

 

「むっ、昔からの夢なんだ!

 オールマイトのような、最高に格好良いヒーローになるって!」

 

 ちょうどタイミング良くテレビ画面が切り替わり、金髪で筋肉隆々の大男が映し出される。

 テロップを見ると、どうやら彼がオールマイトだとわかった。

 

「オールマイトとは、この男か?」

「そっ、そうっ! この人! うわあっ! やっぱり凄い!

 ヴィランの捕縛も鮮やかだし! 人的被害も抑えて──」

 

 オールマイトが出ているとわかると、イズクは食事もそっちのけでテレビを食い入るように見つめている。

 どうやら余程、このヒーローが好きなようだ。

 

 妾はふむと少し考えて、思ったままを彼に告げる。

 

「そんなにやりたいなら、ヒーローを目指せば良かろう。

 妾もできる限りは、手伝ってやろう」

「そっ、そうだね!? ありがとう! お狐様!」

 

 何だかわからないが、凄く感謝された。

 

 椅子から立ち上がって大喜びで妾の手に触れようとしたので、急ぎ掃除を中断して握手をする。

 

 イズクにとってヒーローの夢を肯定されて、おまけに協力者ができたのは凄く嬉しかったらしい。

 

(適当に相槌を打っただけなんじゃがのう)

 

 この世界に転生してから日も浅く、個性があるのもヒーローの存在も今初めて知った。

 イズクには適当な返事をして、とても悪いことをしてしまったかも知れないが、自分は思いつきで行動することが多いようだ。

 

 だが気落ちしていても始まらないし、妾は明るく前向きなのが取り柄である。

 取りあえず気持ちを切り替えて掃除機を手に持ち、静かに息を吐く。

 

「しかし、最近のテレビは薄いのう。

 スマートフォンで離れた場所でも話せるのも凄かったし」

「おっ、……おばあちゃん!」

 

 イズクは首を傾げているが、何故か引子さんが口元を押さえて微笑みながら妾を見ている。

 

 だが前世の記憶は朧げだけど、年齢的にはお婆さんではなかったはずだ。

 けれどそれも特に根拠はないので、少しだけ不安になってきたのだった。




市役所に提出した個性届けには、守護霊と記入

『お狐様』緑谷出久
破壊力   A
スピード  A
射程距離  C
持続力   A
精密機動性 A
成長性   A

・イズクから半径十メートル以上は離れられない
・実体で拳による殴打が主な攻撃手段だが、狐火を飛ばしたり空中浮遊もできる
・霊体は完全には姿を消すことはできずに半透明。実体と違って干渉はできなくなるが、障害物をすり抜けられる
・実体化や霊体化はスイッチのオンオフのように、全身の切り替えのみ
・イズクとだけ、念話による意思疎通が可能
・味覚はイズクと共有で、人間そっくりだが霊力の集合体。もしくは生命エネルギーの結晶に近い何か
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