近距離パワー型のじゃロリ狐っ娘守護霊   作:名無しの狐信者

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戦闘訓練なのじゃ

 思えばイズクと爆豪少年が真正面から戦ったことは、殆どなかった。

 たまにはあるが、越えるべき壁として立ち塞がる妾がいる。

 

 先にこっちを何とかするために、協力せざるを得ないのだ。

 しかしまあとにかく戦闘訓練は始まり、屋内のヴィランを排除して核爆弾を回収することになる。

 

 そして妾とイズクと麗日少女は、建物内に入るのだった。

 

 

 

 気づかれないように、適当な窓から足音を立てずにこっそり入る。

 妾が動けば即刻任務完了なので、手を貸さず声もかけずに大人しくしておく。

 なのでイズクの後ろを、フヨフヨと浮遊して付いて行った。

 

「侵入成功」

「死角が多いから、気をつけよう」

 

 二人はなるべく静かに歩き、扉を開けては核爆弾がないかを調べていく。

 

 やがていくつ目かの曲がり角に差しかかったとき、息を潜めて待ち構えていた爆豪少年が不意打ちの爆破を試みてきた。

 

「うらああああっ!!!」

 

 イズクは波紋疾走(オーバードライブ)20パーセントに入っていたので、咄嗟に麗日少女を抱えて跳躍できた。

 

 しかし相手はヴィランで手加減していたとはいえ、二人まとめて倒すつもりで攻撃してきた。

 高威力の爆破で熱風をもろに受けて、壁や天井どころかコスチュームの頭部も破損してしまう。

 

「麗日さん! 大丈夫!」

「うんっ! ありがとう!」

 

 成長しているのは弟子だけでない。

 爆豪少年も個性こそまだ未熟だが、彼と同じく天才だ。

 

「デク君!?」

「掠っただけ!」

 

 コスチュームが破損したことに気づき、麗日少女が驚きの声をあげる。

 だが回避に成功して殆どノーダメージなので、現時点では戦闘に支障はない。

 

「こら、デク! 避けてんじゃねえよ!」

「かっちゃんが敵なら! まず僕を殴りに来ると思った!」

 

 妾は第三者として見ているだけなので関係ないが、こういう時は後方で腕組みし、弟子を見守っている感を出すのが良いだろう。

 

「中断されねえ程度に! ぶっ飛ばしてやらあ!」

 

 爆豪少年が殴りかかってきたので、イズクは避けて腕を掴む。

 そのまま勢いよく投げ飛ばした。

 

「かっちゃんは! 大抵最初は、右の大ぶりなんだ!

 どれだけ見てきたと思ってる!

 凄いと思ったヒーローの分析は! 全部ノートにまとめてあるんだ!」

 

 ちなみに妾のノートは、特別版としてそれとは別に存在している。

 おまけに今も更新中で、のじゃロリ狐っ娘の分析だけで何冊も積み重なっていた。

 

 師匠への信頼や憧れの重い弟子と、常に一緒にいることを再確認させられる。

 ちょっとだけ微妙な顔になってしまった。

 

「いつまでも! 師匠に守られるデクじゃないぞ!

 かっちゃん! 僕は! 頑張れって感じのデクだーっ!」

 

 確かにイズクは毎日凄く頑張っている。

 ワンフォーオールを継承してからは、妾の出番は殆どない。

 

 そう考えると、もう自分は必要ないのではと思いはする。

 しかし引子さんから任されているし、オールフォーワンのことも気がかりだ。

 

 なので守る必要がなくなっても、師匠として頼りにされたり憧れを向けられている限りは、後方腕組みしてそれっぽいことを適当に言い続ける。

 

 何よりイズクの守護霊は止められないため、彼が天寿を全うするまで続けることになりそうなのだった。

 

 

 

 

 

 

 麗日少女に核爆弾の回収を任せて、イズクは爆豪少年と一対一での戦いを挑んだ。

 

 ヒーロー側は建物を壊さず、波紋疾走(オーバードライブ)20パーセントを維持する。

 だがヴィラン側は、お構いなしに爆破してきた。

 

 おまけに爆豪少年は戦いの中で加速度的に成長を続け、目に見えて動きが良くなっていく。

 

 

 

 だがイズクも負けてはおらず、先程投げ技を仕掛けたときに波紋を流し込んだ。

 しかしあれは接触した部位に、短時間しか抑制できない。

 

 爆豪少年もすぐに調子を取り戻し、個性の使い方にも慣れてきている。

 

「くっ!」

「後ろが! がら空きなんだよっ!」

 

 爆破で建物を破壊することで障害物を増やしていく。

 自分に有利なフィールドを作り出していった。

 

 それだけなく、空中戦も行えるようだ。

 爆風で加速力を生み出して、一気に距離を詰めてくる。

 

 今もイズクの攻撃を避けるのもこれを利用し、後ろに回り込んで背中から一撃をお見舞いした。

 

「がはっ!」

 

 凄まじい爆発音がすると同時に、弟子は熱と衝撃を受けて一時的に息が詰まる。

 

 波紋を扱うには、呼吸は必須だ。

 ワンフォーオールの出力調整も行っているため、それを乱されると戦闘力の低下は避けられない。

 

「チャーンスッ! 死ねえやああああっ!!!」

 

 そして天才少年である彼が、その隙を見逃すはずがない。

 一時的とは言え波紋疾走(オーバードライブ)状態が解除された今、一気に勝負を決めにきた。

 

「不味い! 避けられ……いや、師匠なら! 逆に考えるはず!

 避けなくたっていいさと、考えるんだ!」

 

 波紋疾走(オーバードライブ)が解除されて足を止めたイズクに、まるでガトリングガンのような容赦のない爆破が連続で襲いかってくる。

 

 しかし、弟子は諦めていない。

 多分だが本人は至って真面目だろうが、過去に妾が口にしたネタ台詞を言う余裕があった。

 危機的状況で、咄嗟に出た言葉なのだろう。

 

 とにかくイズクは懐に手を入れ、ある物を取り出した。

 そして急ぎ波紋を流して、硬質化していく。

 

「受け止めてやる! 波紋ヘアーアターック!!!」

 

 またもやコオオという効果音が目に見えるようだ。

 だが別にそんなものはなく、幻覚である。

 

 それはともかく、イズクは硬質化した自身の髪の毛を宙に投げた。

 一時的に壁のようにして、爆豪少年の爆破を防ぐ。

 

「ちいっ!」

「バリアーだっ!」

 

 しばらく攻撃が続いたが、やがてイズクは完全に呼吸を整えて波紋疾走(オーバードライブ)状態に戻る。

 

 そして爆豪少年は、これ以上は無駄と判断したようだ。

 連続爆破は中断し、後方に飛んで距離を取る。

 

 髪の毛を使う波紋も妾が教えたのだが、まさかいざという時のために自分の髪の毛を保存していたとは思わなかった。

 

 さらに保湿管理も徹底しており、水分を含んだ髪で実際にバリアを張るとは予想外にも程がある。

 

(練習しておるのは見ておったが、まさか実戦で使うとは)

 

 普通はこの状況で、波紋ヘア・アタックを使おうなどとは思わない。

 

「あっ……危なかった! 髪の毛は熱に弱い!

 たった一度の攻撃で、予備も含めて全部使い切るなんて!

 次はもっと、耐熱性のある素材を用意しないと!」

 

 実は結構ギリギリだった。

 焼け焦げたのは、無数の髪だけでない。

 サポートアイテムとして要望を出していた波紋用のマフラーまでもが、残骸となって床に散らばっていた。

 

 防御を完全に破られる前に、波紋疾走(オーバードライブ)に入れたから良かったものの、今後は熱攻撃への対処を考えないといけないようだ。

 

(波紋ヘア・アタックは、また使うのじゃな)

 

 一時的とはいえ銃弾を防ぐ壁になる。

 その場から動けずに、髪の毛の位置調整に細心の注意を払うという欠点はあっても、便利なことには違いない。

 

 しかし元ネタは、ドイツ軍人の髪の毛を毟って放り投げるやつだ。

 妾としてはネタ的なイメージが強いのだ。

 

 だがイズクや爆豪少年、それにモニターで見ている人たちは、凄い技だと大いに感銘を受けるのだった。




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