近距離パワー型のじゃロリ狐っ娘守護霊 作:名無しの狐信者
麗日少女と別れたあと、戦いは激しさを増していく。
ヒーローコスチュームに仕込んだシャボンランチャーを放っても、爆破の個性との相性は最悪なようだ。
波紋が込められているので全部割られることはなかったが、爆風によって軌道が大きく変えられ、せいぜい牽制にしかならない。
そもそも施設内であまり破壊行動をするわけにはいかないため、ヒーローサイドであるイズクは消極的にしか動けず、スマートに勝つことを意識せざるを得なかった。
だがやがて爆豪少年は勝負に出て、ビルを貫くほどの渾身の一撃を放つ。
対するイズクはこれを迎え撃ち、確実に勝利するために
そしてバク転をしながら、サマーソルトキックを放った。
爆破の衝撃を、横から上に受け流したのだ。
おかげで建物は最上階まで大穴が空いてボロボロになってしまい、倒壊しないのが不思議なぐらいだ。
なお、イズクは計算や調整が上手かった。
発生した上昇気流で飯田少年は大いに動揺し、麗日少女はその隙を突いて無重力で浮き上がり、核爆弾にタッチしてヒーロー側の勝利となる。
ただし勝つためとはいえ建物をボロボロにして、さらに下手をすれば目標の爆弾を壊しかねない。
あとは調整や受け流しの角度次第ではヴィランが死ぬか、こっちが大ダメージを受けるため、ヒーローとしては褒められた行動ではないのだった。
他の生徒の戦闘訓練も、大いに白熱していたようだ。
しかし妾はウトウトしていて、その辺りは右から左である。
気づいたら授業が終わっていたし、皆は得るものがあったと喜んでいたので良しとしておく。
爆豪少年もウジウジ悩むことはない。
敗北を糧にして涙を拭いて、次は絶対に勝つと決意した。まさに青春といった感じだ。
それからしばらくは、普通の高校生活のような平和な日々が続く。
そんなある朝、入り口に大勢の取材陣が殺到していた。
行き交う生徒に、熱心にインタビューをしている。
「お狐様! オールマイトの授業はどんな感じですか!」
「特筆すべきことは別にないのう」
イズクが戸惑っていたので、普段は滅多にインタビューに応じない妾が答える。
その隙に保健室に用があるという嘘をついて、さっさと正門を抜ける。
良く見ると、一年A組のクラスメイトも質問されてる。
だがまあ妾には関係ないし、大きくアクビしてまた日向ぼっこに戻った。
気づけばイズクが委員長になっていたり、大食堂で飯田少年が活躍して変更になったりと、色々あった。
だが平穏は良いことで妾の日常に影響はないので、詳しく語るまでもない。
まあ普通の高校生活とはちょっと違うが、この世界は前世とは異なっている。
こういうこともあるのだろうと、気にしないことにしたのだった。
やがて救助訓練が始まり、会場までバスに乗って向かう。
まだクラスメイトとの関係構築の途中だが、仲は悪くない。
隣に座っている蛙吹少女が、イズクに話しかけてくる。
「私、思ったことを何でも言っちゃうの。緑谷ちゃん?」
「なぁっ! はっはいっ! 蛙吹さん!」
「梅雨ちゃんと呼んで」
イズクは戸惑っているが、クラスメイトの女子で麗日少女以外と話す機会はあまりないから、気持ちはわからなくもない。
だが全体を見れば結構話している。
やはり、元々小心者なのが影響しているのだろう。
それはそれとして、蛙吹少女が言葉を続ける。
「貴方の個性、オールマイトに似てる」
「ええっ!? そっそっ、そうかなあっ!?」
女子に図星を指されて、思いっきり動揺する。
こういう時は師匠としてフォローに入るべきだと考え、珍しく妾が発言する。
「蛙吹少女よ。イズクはオールマイトではなく、妾に似ておるのじゃ」
「お狐様ちゃんに?」
「うむ、そうじゃ」
ちゃんなのか様なのかどっちだとツッコみたい。
しかし、そんな細かいことで脱線させる訳にはいかない。
ついしゃしゃり出たものの、別に深い考えがあるわけでなかった。
取りあえず、思いついたことを適当に口に出しておく。
「妾もイズクのような超パワーなのじゃぞ?」
取りあえず妾は実体化し、地面に手をつけて逆立ちする。
続いて右手の人差し指一本で、平然とバランスを保つ。
別に浮遊能力は使っておらず、本当に指の力だけで体を支えているのだ。
「いっ、移動するバスの中で!?」
「何というバランス感覚!?」
「それに小柄とは言え、指一本で全身を支えられるなんて!?」
指一本で体を支えるのは、現実でやれるかは知らない。
できたとしても、相当難しいだろう。
超パワーがあればこの通りで、妾のバランス感覚なら移動中のバスでも問題ない。
取りあえず逆立ちした状態で指立て伏せでもしてみた。
またもや周りから歓声があがったので、話題そらしはこれで十分だろうと判断する。
妾は軽く指を弾いて飛び上がり、空中で一回転して音もなく着地した。
「しっかし、増強型のシンプルな個性はいいな! 派手でできることが多い!」
切島少年が腕の一部を硬化させながら、自身の今後について口に出す。
「俺の硬化は対人じゃ強いけど、いかんせん地味なんだよなー」
「僕は凄い格好良いと思うよ。プロにも十分通用する個性だよ」
「プロな。しかしやっぱりヒーローも、人気商売みたいなとこあるぜ」
妾は表立って、プロヒーロー活動をする気はないので関係ない。
取りあえず実体化を解除して霊体に戻り、イズクの上の定位置に戻る。
「僕のネビルレーザーは、派手さも強さもプロ並み」
「でも、お腹壊しちゃうのは良くないね」
向かいの席では、青山少年と芦戸少女が話していた。
そこで切島少年が再び妾のほうに顔を向ける。
「まあ派手で強えっていったら、やっぱ! お狐様だよな!」
「何故そこで妾?」
話題がそれたのでウトウトしていたが、再び名前を呼ばれたので顔をあげる。
そして率直な疑問を口にした。
「お狐様ちゃんは強くて派手なだけじゃなくて、可愛いから凄い人気出そう」
「のじゃぁっ!?」
蛙吹少女は、本当に思ったことを何でも口に出すようだ。
きっと本心からそう思っているのだろう。
不意打ちで率直に褒められた妾は、驚いて変な声が出てしまう。
だがまあそれはそれとして、やがてバスは救助訓練の会場に到着するのだった。