近距離パワー型のじゃロリ狐っ娘守護霊   作:名無しの狐信者

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ヴィランの襲撃なのじゃ

 バスを降りた妾たちは13号先生と挨拶し、施設内に入って授業の説明を受ける。

 

 自分たちの個性が簡単に人を殺せるから、ヒーローを目指すならその辺りに気をつけて使うようにだ。

 あとはUSJというギリギリのネタに関してやらである。

 

 ちなみにオールマイトは通勤時に制限ギリギリまで活動したせいで、今は仮眠室で休憩中らしい。

 

 ナンバーワンヒーローの篝火はまだ燃えてはいるが、それでも少しずつ小さくなっている。

 波紋の治療を受ける前よりは、活動時間は伸びていた。

 

 それどころかイズクに触発されたのか、肺が完治してすぐに波紋修行をやり始めたのだ。

 覚醒した前例がある以上は、無理だから止めとけ止めとけとは言えず、経過を見守るのがせいぜいである。

 

 ちなみに今現在のオールマイトは、当たり前だが波紋は修得していない。

 しかし何となくだが、薄っすら若返っているように見える。

 

 最近経過を聞いた感じでは、波紋の呼吸法にもようやく慣れてきたと笑いながら言っていたので、妾はウッソだろお前という心境であった。

 

 

 

 そんなバグキャラかよと呆れるナンバーワンヒーローだが、依然としてマッスルフォームを長時間維持するのは難しい。

 なので、一日に何度か小休止が必要になる。

 

 それでももう少ししたら授業に顔を出せるため、今回に限っては特に問題はなさそうだ。

 

 取りあえず狐耳で聞き取った情報は、妾の昼寝とは関係なさそうなので、再びお昼寝タイムに入るのだった。

 

 

 

 

 

 

 13号先生の説明は、人命救助のために各々の個性をどう使うかが、今回の授業で重要な点になるようだ。

 

 そのような内容をイズクや他の生徒が真面目に聞き、やがて一通り教え終わる。

 

 

 

 続いて相澤先生が場所を変えようとしたところで、妾の狐耳が妙な音を捉える。

 

 嫌な予感がしたので昼寝を中断して実体化し、地面に降り立ち中央の噴水付近に目を凝らす。

 

「邪気が来たか!」

「しっ、師匠!? それは一体!」

「詳しく説明しておる時間はない! 恐らく、ヴィランの襲撃じゃ!」

 

 妾がそう告げたあとに、施設内の電気が一時的に途切れる。

 続いて中央の噴水付近に黒い靄が広がっていく。

 

 やがて渦の中から次々と人が出てきたので、多分だが何処か別の場所に繋がっているのだろう。

 

「全員! 死にたくなければ、一塊になって動くでないぞ!」

 

 妾はまだ状況が掴めずに戸惑っている一年A組の生徒に、慌てて動くのは危険だとはっきりと告げる。

 

「13号先生! 悪いが生徒たちを守ってくれ!」

「えっ!? そっ、それは! 先生が生徒を守るのは当然のことです!」

「うむ、頼りにしておるぞ!」

 

 流石はプロヒーローだけあって、すぐに妾の意図に気づいたようだ。

 後方支援を、快く引き受けてくれた。

 

 次に相澤先生に目を向けると、真面目な顔で静かに頷く。

 彼も問題はないようなので、イズクに声をかける。

 

「イズク、いけるな?」

「はっ、はいっ! 師匠! ……でもっ!」

 

 これまでは単独のヴィランが相手だった。

 しかし今回は大勢で、彼はまだ学生で年若い子供だ。

 いくら修羅場を何度か潜り抜けたとはいえ、腰が引ける気持ちもわかる。

 

「案ずるな! 妾が付いておる!

 イズクは命に替えても守り抜こうぞ!」

「しっ、師匠おおおっ!!!」

 

 元気づけるために不敵な笑みを浮かべて、イズクに視線を向ける。

 何やら感極まったように、目に涙を浮かべて身震いしている。

 少々情緒不安定気味ではあるが、一応はやる気になってくれたようだ。

 

 しかし、こんな状態でちゃんと戦えるのかちょっとだけ不安になった。

 

 

 

 それはそれとしてヴィランの戦力で警戒すべきは、黒い靄のやつと手を多くつけている少年。あとは脳がむき出しの大男だろう。

 

 どのぐらいの危険度かは、何となくヤバい程度しかわからない。

 そしてこの中で何とか戦えそうな者は、プロヒーロー二人と弟子のイズクぐらいだ。

 ちなみに妾は別格なので、最初から除外している。

 

 しかし弟子に経験を積ませるためにも、なるべく後方腕組み師匠として重い腰は上げたくない。

 まあ敵戦力の詳しい分析が終わって、どうしても無理そうなら自分が前に出るが、その時はその時である。

 

「生徒をヴィランと戦わせるのは、甚だ不本意で教師にあるまじき行為だ。

 だが今だけは、緑谷とお狐様の助力が必要だ」

 

 相澤先生は本当に嫌そうな顔をしているので、妾たちを戦わせたくないのは本心なのだろう。

 けれど彼と13号だけでは、この場の皆を守りきれるか怪しい。

 

「それにプロヒーローのお狐様が緑谷に取り憑いている以上、合理的ではある。

 ……褒められたことではないがな」

 

 妾が色々考えている間に、何やら相澤先生が変なことを言った。

 なので、彼をじっと見る。

 

「妾がプロヒーローじゃと? ……冗談か?」

 

 免許は取ってないのに、いつの間にプロヒーローになったようだ。

 大いに疑問であるが、凶悪なヴィランをやっつけたり、巨大ロボットを拘束して軽々放り投げたりしたのである。

 

 妾に目をつけて、放置するのは不味いと考えてもおかしくない。

 戸籍を持ってないし人間ですらないが、特例として認めて名誉や責任という首輪で縛ることにしたのかも知れない。

 

 あとは他国がちょっかいを出して引き抜かれる前に、うちのヒーローだからと牽制する目的も考えられる。

 

 しかしどうにも心当たりが多すぎて、直感ではここまでが限界だ。

 

 あとは免許が交付されても、妾がやることは変わらない。

 何より今は細かいことは気にしている場合ではなく、相澤先生に率直に尋ねる。

 

「いつ交付されたのじゃ?」

「交付されたのは昨日だ。

 今頃は緑谷の家に、公安から免許書類が郵送されているはずだ」

 

 公安と聞いて、そう言えば最近何処かで誰かが言っていたような気がするなと首を傾げる。

 するとイズクが少々困った顔で口を開いた。

 

「その件については、僕は何度も伝えましたよ。

 でも師匠はヒーローに全然興味ないので、いつも右から左でしたからね」

「肩書が変わるだけで、やることは何も変わらんからのう」

 

 イズクの言う通り、妾はヒーローには興味がない。

 免許が交付されても正直どうでも良いと思い、話半分に聞き流していたのだ。

 

 緊急事態でもなければ自分から動くつもりはないし、のんびり日向ぼっこしているだけだ。

 

 けれどそのおかげで、今はヒーロー活動をするのに何の問題もない。

 青山少年については、あとで雄英高校の根津校長に何とかしてもらうことにした。

 

「弟子がプロヒーローなのに、師匠が無免許では格好がつかぬな。

 こういう時は便利に使えるゆえ、良しとしておくか」

 

 そう言って相澤先生のほうを向くと、彼は何だか良くわからないがちょっと怖い笑みを浮かべている。

 生徒たちを元気づけるための、オリジナル笑顔というやつだろうか。

 

 いや本当に意味不明でマジで怖い。

 その顔で近づくのはちょっと止めてくれないかなと考えていると、ヴィランに動きがあった。

 

「13号に、イレイザーヘッドですか。

 先日いただいた教師側のカリキュラムには、オールマイトがここに居るはずなんですが」

 

 常人には聞き取れないだろうが、距離が遠くても狐耳なら問題なしだ。

 黒い靄が寄り集まって人の形を取り、何やら喋っていた。

 

(どうやら雄英高校の教師陣のカリキュラムは、ヴィランに筒抜けのようじゃな)

 

 妾は相澤先生と13号先生に近づく。

 そしてさり気なく今聴きとった内容を、簡略化して伝える。

 するとイレイザーヘッドが、誰にも聞こえないように小声で囁いてきた。

 

「つまり雄英高校にスパイがいると言うのだな?」

「この間の騒動に便乗して、情報を奪った可能性もある。

 スパイの仕業だとしても、そう簡単に尻尾を出さんじゃろう」

 

 なので今はまだ何とも言えないが、警戒だけはしておくべきだ。

 現状では青山少年が怪しいけれど、実際のところは彼がそうとは限らないし、一人だけとは思えなかった。

 

 そもそも妾が予想する黒幕なら、手駒は複数用意しておいて当たり前なので、だからこそ根津校長もあえて泳がせているのだろう。

 

 きっと確定的な証拠を集めて、潜んでいた内通者を芋づる式に検挙するつもりだ。

 

「取りあえず一塊になって行動すれば、怪しい動きはできぬじゃろうよ」

 

 今はこの場を乗り切るのが先決だ。

 スパイ探しは、そのあとでゆっくりすればいい。

 どうせ妾には関係ないので、のんびり日向ぼっこさせてもらう。

 

 その間にも向こうの手つきのヴィランが、つまらなそうに喋っていた。

 

「何処だよ。せっかくこんなに大衆引き連れてきたのにさぁ。

 オールマイト、平和の象徴、いないなんて。

 子供を殺せば来るのかな?」

 

 妾は手をたくさんつけたヴィランの発言を適当に聞き流す。

 そしてイズクに真面目な顔で声をかける。

 

「イズク。行けるな?」

「はい! 師匠!」

 

 今回のイズクは指定のジャージ姿で、ヒーローコスチュームは修理中なのが痛い。

 波紋のサポートアイテムは通常時はマフラーぐらいしか持ち歩けず、集団戦こそシャボンランチャーが便利だったのだ。

 

 だがまあ、ならば弟子の代わりに妾が動けば良いだけだし、こういうときに何もしないと本当に無駄飯食いの居候になってしまう。

 

「ヴィランの戯言を、いちいち聞いてやる必要はない!

 先手必勝で、一気に叩くのじゃ!」

 

 イズクは妾の発言に静かに頷く。

 次に心を落ち着けて、深く息を吸い込み呼吸を整える。

 

 コオオという効果音が見えるような気がしたが、多分気のせいだ。

 

 とにかくワンフォーオール波紋疾走(オーバードライブ)の、20パーセント状態になったことを確認したあと、相澤先生に声をかける。

 

「雄英高校には悪いが、非常事態じゃ! USJの天井を壊すぞ!」

「えっ? 一体何を?」

 

 そう言って妾は右手を天に掲げて狐火を収束し、大きな声で叫んだ。

 

「邪王炎殺青龍波!」

 

 すると青い炎は巨大な龍の姿に変わり、天に向かって真っ直ぐ上昇していく。

 すぐにドームの天井に到達し、あっさり突き破る。

 

 そのまま遥か彼方に飛び去ると思いきや、少しだけ離れた辺りで急激に巨大化し、とぐろを巻いてポーズでその場に停止した。

 

 中身はスッカスカで威力は大したことないが、無駄に派手で遠くからでも良く見えて、とても目立つ。

 

 今頃は雄英高校だけでなく、その周辺地域でも大騒ぎになっているだろう。

 

「ヴィランは馬鹿じゃが、用意周到じゃ!

 当然、通信は妨害されておるじゃろう!」

 

 だから何々が必要だったんですねという感じだ。

 妾はそこまでは説明しないが、イズクは理解してくれた。

 

「確かに!

 これならUSJで異常事態が起きていることが、すぐにわかりますね!」

 

 雄英高校の教師陣はプロヒーローの集まりだ。

 天井を突き破るときに派手な音や爆発もしたし、きっと今頃は状況を確認しようと電話をかけてきているだろう。

 

 だがヴィランのジャミングで通じないため、明らかに異常事態に大慌てで戦力をかき集めていると予想する。

 

「あとはヴィランが撤退するか、プロヒーローが到着すれば、妾たちの勝利じゃ!」

 

 妾の発言を聞いて一年A組の皆や、相澤先生と13号先生に気合が入る。

 もちろん増援が到着するまでもう少しかかるが、ヴィランたちのタイムリミットが大きく早まった。

 

「おいおいおいおい! 来た途端に時間切れかよ!

 何だよ! このクソゲーは!」

 

 手をたくさんつけたヴィランが、苛つき喉をかきながら不満を漏らす。

 しかし妾は、まともに聞く気はなかった。

 

「妾たちはこれより、ヴィランに突っ込む!

 派手に暴れて奴らの気を引くから、イレイザーヘッドは後続で敵の妨害し、13号は子供たちを頼むぞ!」

 

 多分この中では妾が一番強いので、先頭に立って指示を出す。

 すると相澤先生がゴーグルをかけて、大声で返事をする。

 

「合理的な作戦だ! 後方支援は任せておけ!」

「こちらも了解しました! お狐様と緑谷君も気をつけて!」

 

 これ以上時間をかけると、ヴィランが苛立って暴れだすかも知れない。

 施設への被害は避けたほうが良いし、黒霧はワープゲートの個性を持っている。

 

 どれだけ離れていても、瞬時に移動できる個性は厄介極まりない。

 ならば動き出す前に先手を打ち、敵戦力を削っておくに越したことはなかった。

 

 けれど、質はともかく数だけは多い。

 イズクに波紋疾走(オーバードライブ)100パーセントで戦わせて、スタミナ切れを起こさせるわけにはいかなかった。

 

 こっちは増援が到着するまで、時間を稼げば良いのだ。

 

 しかし妾は少し考えて、噴水の前まで跳躍する直前に不敵な笑みを浮かべ、一年A組の皆を見る。

 

「別に、ヴィランを全滅させてしまっても構わんのじゃろう?」

「ふっ! やれるものなら、ぜひお願いしたいな!」

「私も、お狐様のこと! 信じていますよ!」

 

 教師二人は妾なら可能だと信じているようだ。

 まだヴィランがどのぐらい強いかは判明していないし、絶対の保証はない。

 

 しかしオタクが一生に一度は言ってみたい名言を口に出せて、妾的には満足である。

 まあ、その場のノリで深い意味はない。

 

 

 

 実体化した妾はイズクと共に高台から跳躍し、噴水近くに向かう。

 そして空中を飛びながら両手に狐火を収束して、本日二発目の遠距離攻撃を放つ。

 

「これはっ! 挨拶代わりの、邪王炎殺青龍波じゃぁっ!!!」

 

 ちなみに龍を体内で飼っていたりはしないし、跳ね返った青龍波を吸収してパワーアップしない。

 完全にただの飛び道具である。

 

 だがその代わりに、一日何発までという制限はない。

 

 プリンセスをコネクトするゲームの正月キャルちゃんのように、妾が飽きない限りは何発でも撃ち込める。

 

 他にも出力調整すれば上に乗って空を飛べたりもするが、流石に法律に抵触しそうなので、非常時以外はやるつもりはなかった。

 

 

 

 とにかく、ちょうどヴィランが集まっている中央に叩き込む。

 全力でやると文字通り塵も残さずに蒸発してしまうので、かなり手加減して放った。

 

 それでも無駄にど派手な大爆発が起きて、盛大に土煙が舞う。

 衝撃波が吹き荒れても、せいぜい横転するぐらいで死にはしないが、初手で敵戦力を大きく削ることに成功したのだった。

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