近距離パワー型のじゃロリ狐っ娘守護霊 作:名無しの狐信者
脳無をゴミ収集車にホールインワンして、妾は唯一無事なヴィランである手つきの男に顔を向ける。
すると今ままで姿が見えなかった黒霧が、何処からともなく現れた。
彼の隣で人の姿に実体化して口を開く。
「死柄木弔」
「黒霧、他の奴らは殺ったのか?」
「申し訳ありません。
各エリアに散らす予定でしたが、爆破の個性持ちに邪魔されまして」
どうやら爆豪少年が、ワープゲートの妨害をしてくれたようだ。
彼は妾と戦闘訓練してるし、今のイズクよりは弱いけど天才の一人である。
ダブル主人公かよとツッコミを入れたくなるぐらい、潜在能力がとんでもない。
「ですが機転を利かせ、潜伏中のヴィランたちに一斉に襲わせました」
妾は目の前のヴィランの動きに気をつけて、後ろの高台に居るらしい一年A組の様子を確認する。
全員揃っていて、周りには大勢の敵が気絶するか拘束されていた。
そのことから、どうやら無事に退けたらしい。
「それで?」
手つきのヴィランである死柄木が尋ねると、黒霧が答えを返す。
「申し訳ありません。どうやら我々は、雄英高校の戦力を見誤っていたようです」
確かに各々ヴィランが得意な場所で待ち受けてきたのに、一斉に襲わせる作戦は良くても不利な地形で戦わざるを得ない。
向こうの勝率もその分下がるだろう。
「黒霧! お前! お前がワープゲートじゃなかったら! 粉々にしたよ!」
喉をかきかながら怒りを爆発させる死柄木を見ながら、妾は何処かで聞いた名前だなと首を傾げる。
「目の前の狐にも敵わないのに!
オールマイト以外にも、さらに何十人もプロヒーローが来るんだぞ!
ゲームオーバーだ! あーあ! 今回はゲームオーバーだ!」
まあ気持ちはわかる。どうやら諦めてくれたようだ。
妾としても話し合いで解決できるなら、それに越したことはない。
ただし今回はという点が非常に気になる。
この期に及んで、そんな余裕があるなら大した肝っ玉だ。
「帰ろっか?」
やはりというか黒霧に顔を向けて口を開く。
何とも楽観的というか危機感が足りないと言うか、とにかくヴィランは調子に乗っていた。
なのでそっちがその気ならと、妾は右腕に狐火を収束して青い茨を彼らに高速で伸ばす。
「
「なっ!?」
「これは!?」
死柄木弔の個性は五指は使えなければ効果は発揮しないため、両腕が動かせないようにぐるぐる巻きにする。
そして黒霧のほうは、一つだけ実体の箇所があるのでそこを繭のように縛りあげた。
「やりたい放題暴れまわった輩を、大人しく逃がすと思うたか」
温度調節には気を使っているので熱くはない。
それでも少しでも怪しい動きをしたら、即刻絞めあげるつもりだ。
「それに、そこのヴィラン、お主、今確かに、死柄木弔と言ったよのう?」
「そ、それが何だと言うのですか!」
何処かの仗助のような台詞を口にするが、妾は至って冷静である。
別にボコボコにすればAFOが出てきて正体が判明するなどという、脳筋ゴリ押し戦法をするつもりはなかった。
「ふむ、ならばお前たちはオールフォーワンと繋がっておるな」
「お前! どこで先生のことを!?」
その後は死柄木弔が滅茶苦茶喧しく騒ぐので、妾は連帯責任とばかりに二人の締めつけを強める。
痛かったのか苦悶の声を漏らして、押し黙る。
「当たりじゃな。しかし少し喧しいゆえ、少し黙っておれ」
手付きヴィランの悪ガキは反省の色がなさそうなので、口をぐるぐる巻きにして喋れなくしておく。
「それと黒霧。お前も怪人じゃな?」
黒霧に発言権を与えているが驚いて喋れないようだ。
だが元々知っていたのか、妾が気づくはずもないと思っていたのかは知らない。
「AFOに調整されたのじゃろう? 違うか?」
雄英高校を襲撃するなど、前代未聞なことをしたのだ。
そんな凶悪なヴィランに釘を差して、妾のお昼寝タイムを邪魔されないためにも、この辺りで手札の一枚を切る必要があると感じた。
(妾がどのようにして知ったのかバレなければ、問題はなかろう)
黒霧は個性が混ざり合っているので、とてもわかりやすかった。
今後は本当に内通者だったら青山少年が動きにくくなるか、他にも侵入させている可能性が高い工作員が大人しくなるぐらいだろう。
影響とすればこんなところだが、どちらも妾には殆ど関係はない。
ここは奴がトカゲの尻尾を切って、雄英高校侮りがたしと認識を改める。
そして白昼堂々と襲撃されたりなど、手を出されないほうが良かった。
毎度のようにヴィランをぶっ飛ばしていては、のんびり日向ぼっこもできないのだ。
とにかく今の発言で、黒霧の動揺が大きくなる。
しかし彼らの事情など、妾には知ったこっちゃない。
もっと良く彼の個性を見ようと、目を細める。
「どうじゃ? 黒霧、合っておるかのう?」
妾がさらに言葉を続けようとする。
しかしそこで黒霧が突然、糸が切れた人形のように動きが止まって、だらんと四肢から力が抜けてしまう。
だが少しすると再び顔をあげて、彼ではない誰かの声が周囲に響いた。
「そこまでにしてくれないかな」
明らかに空気が変化し、目に見えないがどす黒く邪悪な何かが周囲に広がっていく。
イズクと相澤先生の息が詰まるのがわかった。
なお妾は、この程度はどうってことないので相変わらずのマイペースだ。
「ほう、オールフォーワンのお出まし……と思ったが、声だけか」
怪人を作り出し、その体を乗っ取って喋りかけてきたのだ。
そんな悪趣味な真似をする男に、妾は一人だけ心当たりがあった。
なので率直な予想をさも当然とばかりに告げる。
すると当たっていたのか否定はせずに、AFOは黒霧の体を操って困ったように返事をした。
「今の僕は人前に出られる体じゃないんだ。
期待に沿えなくて、すまないね」
しかしオールフォーワンが、声だけでもこの場に出てきたのだ。
「それでも今回は静観するつもりだったんだが、どうやらキミは僕の予想以上の存在だったようだ」
先程の発言でAFOの目的は、死柄木弔の成長だと思い至った。
ならばこの先に起きることを考えて、妾は溜息を吐きつつはっきりと告げる。
「ふむ、そういうことなら今回は見逃してやろう。
死柄木弔を連れて、さっさと逃げ帰るといい」
この発言を聞いて、後ろで緊張しながら成り行きを見守っていたイズク。
そして後方支援で個性を封じていたイレイザーヘッドが、大いに驚いた。
「師匠! 何を言ってるんですか!
ヴィランを見逃すなんて! ヒーローのすることじゃありませんよ!」
イズクが言いたいことを全部言ってくれたようだ。
イレイザーヘッドは、真面目な顔でこっちを見ながら静かに頷く。
妾は何故この結論に至ったかを、簡単に伝えていく。
「オールフォーワンは、他者を使い捨ての駒としてしか見ておらん。
送り込んできたヴィランも、強制的に操られる可能性は高いじゃろう」
あくまで可能性の話だが、絶対にないとは言い切れない。
もし失敗しても問題ないように、次善の策を用意しているのはAFOの怖いところだ。
「妾たちなら勝てるが、正直手が足りぬ。
ヒーローはともかく、ヴィランの命までは保証できんよ」
妾からすれば襲撃を仕掛けたヴィランが死亡しても、自業自得で済む。
だが助けられるなら助けたいし、自分の選択で誰かが死ぬのはやっぱり嫌である。
何よりあとで責任問題になって、マスコミにああだこうだ言われるのは面倒だ。
「そして奴は、死柄木弔を逃がせば勝ちじゃ。
現状では妾たちが対処に追われているうちに、本命には逃げられるじゃろう」
「どうやらキミは、僕のことを良くわかっているようだね」
得られた情報を整理して、直感とその場のノリで話しているだけだ。
しかし、AFOはとても感心していた。
そして妾がイズクを真っ直ぐに見つめると、弟子は冷や汗をかきながら生唾を飲む。
犠牲と言っても、ヴィラン側だ。
しかしヒーローは殺人を許されておらず、敵であっても助けないといけないので、相当やりにくくなる。
まあ妾が律儀に守る必要はないが、自分も別に人を殺したいわけではない。
「それに先程の脳無じゃが、他にもおるじゃろう?」
「しっ、師匠!? それって、まさか!?」
「ワープゲートを使えば、いつでも大量の脳無を送り込めるのじゃ。
ますます逃げられる可能性が上がるのう」
オールフォーワンは、死柄木弔を失うのが惜しいと考えている。
なので、何が何でも逃がそうとするはずだ。
そのためならば手段を選ばずに、妾たちの足止めしようとする。
脳無の性能はかなり高かったし、作るのは簡単ではないだろう。
なので楽観的に考えれば、殆どが未完成か奴よりも弱い。
「オールフォーワンが約束を守る保証はないが、犠牲を出して逃げられるのが、もっとも不味いからのう」
しかし、脳無が弱くても並みのプロヒーローよりは強いだろうし、数が多ければそれだけ脅威だ。
ついでにAFOは目的さえ達成できれば、どれだけ犠牲が出ても気にしない。
本当に厄介極まりなかった。
「約束は守るさ。僕を信用してくれよ」
「信用できるはずがあるまい」
AFOのことはイズクも知っているし、弟子は少しだけ悩んだようだ。
しかし、やがて大きく息を吐く。
「わかりました。師匠がそう言うなら、今の僕では勝ち目はありません」
「うむ、ヴィランを逃がしたくないのは、妾も同じじゃ。
しかし損得勘定で考えれば、今ここでやり合うのは得策とは言えぬ」
死柄木弔は、オールフォーワンを盲信している。
そして悪の親玉は、手つきのヴィランを大切な駒と考えていた。
手放すつもりはなく、何が何でも逃がそうとするのは確実だ。
「オールフォーワンが出てきた以上、奴は本気で死柄木弔を逃がすじゃろう。
痛み分けにしたほうが、損害は少なかろう」
昔のイズクなら、たとえ己の身を犠牲にしてでも悪を逃がすのは許せず、何が何でも倒そうとした。
そして殺すことは決してせずに、己の身を犠牲にしても敵も味方も全員を救おうとしていた。
オールマイトというヒーローの在り方を模倣し、決して曲げなかっただろう。
けれど変われば変わるものだ。
それが彼にとって良いのか悪いのかはわからないが、今は妾に近づこうとしている。
「敵の罠に真正面から突っ込むなど、愚か者のすることじゃ」
少なくとも、命は投げ捨てるものではない。
妾は自分が死んだら元も子もないため、味方や市民はともかく余裕のないときには敵のことまでいちいち考えなかった。
「驚いたね。ヒーローは、そういう愚か者の集まりかと思ってたけど」
「あいにく妾はヒーローではない」
将来的にヒーローを目指すつもりは毛頭なく、自分はイズクとは違う。
「そのような自己犠牲精神など持ち合わせておらんわ。
……免許は交付されておるがのう」
イズクは今では妾に影響されたのか、随分と柔軟になった。
しかし両手を握って歯を食いしばっているので、正義感が強いのは変わっていない。
それでも時には敗北を受け入れて、一旦退いて次に備えるなどができるようになった。
ここで彼らを見逃しても、今すぐどうこうはならないと理解しているはずだ。
「妾はオールフォーワンの全戦力と、今は戦いたくはない。
勝てはするが、あとが面倒じゃからのう」
ほんの少しだけ高台の上の一年A組を見る。
あの場所にワープゲートを作り、ヴィランを直接送り込まれたら面倒だ。
脳無の強さは大体わかったし、自分なら対処できる。
しかし全員を無傷で守れるかと言うと、どんな敵が相手かわからないので難しいだろう。
(奴らを逃しても、しばらくは大人しくしておるじゃろう。
その間にヒーローか警察の捜査が進展し、拠点を突き止めて強襲するのが理想か)
だが現実は、そうなるとは限らない。
しかし今ここで、危険な賭けに出る気にもならなかった。
ヒーロー免許は交付されていても、責任問題とか後処理とか、そういう面倒なことはやりたくないのだ。
あまりイズクに負担をかけるのも悪いし、今回は痛み分けにしておいたほうが楽でいい。
「見逃してやるが、代わりに他のヴィランを置いていけ。
妾たちにも、ヒーローとしての姿勢が必要じゃからな」
USJでの情報を伏せるにせよ公開するにせよ、やるだけやりましたという証拠作りが必要だ。
なので妾は、見逃してやるための条件を突きつける。
「そのぐらいなら構わないさ。
彼らは死柄木弔とは違って、ただの駒だからね」
つまり失っても惜しくないというわけだ。
死柄木弔は同じ駒でも、重要度が段違いらしい。
そんなことを考えていると、オールフォーワンはおどけた様子で話しかけてくる。
「またキミと会えたら、今度はお茶でも飲みながら語り合いたいね」
「次に会ったら問答無用で顔面に拳を叩き込み、刑務所に直行させるに決まっておろうが」
妾にも悪の心はちょびっとぐらいはあるが、オールフォーワンは邪悪の塊のようなものだ。
「お前と仲良く語らうなど、真っ平ごめんじゃわい」
あとはこっちを見る目が何だか熱っぽくて恋する乙女というか、じっとりして嫌な感じなのである。
「はっはっはっ! 嫌われたものだね!
キミには僕の守護霊として、永遠に見守っていて欲しいぐらい愛しているのに!」
霊体であってもオールフォーワンの今の発言は心底気持ち悪くて、鳥肌が立ってしまう。
妾は条件反射的に左手に狐火を収束し、細剣として超高速で伸ばした。
それは黒霧の顔の、すぐ横を貫いた。
「笑えぬ冗談を言うでない! 気色悪くて鳥肌が立つわ!」
「冗談なんかじゃないさ! 面白いと思わないかい!
僕とキミで世界を支配するんだ! 最強最悪の魔王と魔女としてさ!」
内心では、いやーキツイっすわとしか言えなかった。
何で妾が、AFOの守護霊をやらなければいけないのだ。
「妾がお前の守護霊になったら、毎夜呪詛を耳元で囁いてやるわ!」
「それも一つの愛の形と言えないかな?」
「言えるか! ……はぁ、何だか話すのも億劫になってきたわい」
奴は他人の個性を奪えるので、場合によってはそうなる可能性がある。
それでも少し話しただけでも、オールフォーワンはどうにも苦手だと本能的に理解できてしまう。
「何しろキミは! 僕が求めてやまない、ワンフォーオールなんだからね!
まさか意思を持って動き出すとは思わなかったよ!
まさに世界で一番素晴らしい個性と言っても、過言じゃない!」
コイツは何を言っているんだと困惑して、ちらりとイズクを見る。
すると彼は、凄い勢いで首をブンブン振っていた。
どうやら弟子にもわけがわからないようだ。
しかしAFOは気にする様子はなく、興奮気味にさらに言葉を続ける。
「キミは歴代継承者の個性が混ざり合い、一つに融合して生まれたんだ!
いわば新世代のワンフォーオール! 今までの戦いを見て、ピンときたよ!」
確かに妾は、数々の戦いを経験してきた。
そのたびに色んな能力を使い、ヴィランを撃破してきたのは間違っていない。
「浮遊や黒鞭、見慣れない個性もあるが、恐らく進化したのだろう!
キミは可能性の塊で、とても魅力的だね!」
歴代継承者のことは興味がないので良くわからないが、似たような個性や使い方をしている者もいたらしい。
彼の発言で、何となく想像がついた。
(鞭ではなくて茨なんじゃが、狐火ではわからぬか)
しかし滅茶苦茶食いついてくるし、まるで本当に好意を持っているかのようである。
ぶっちゃけ悪の黒幕に好かれても、嬉しくないどころか正直気持ち悪い。
そして奴がワンフォーオールを狙っているのは確かだ。
けれど何故か矛先がこっちに向いてしまい、妾は大いに困惑している。
(妾はイズクに取り憑いておるし、奴の狙いはそんなに変わらんのか?)
それでも妾はAFOとは関わりたくない。
右手でシッシッと追い払いつつ、強引にでも話題を打ち切るために口を開く。
「もう帰れ。これ以上続けると、捕縛するぞ。
後ろのイレイザーヘッドは何も言わんが、内心ではガチギレしておるしのう」
イレイザーヘッドに関しては、黙っていてくれただけでもありがたい。
しかし彼はイズクと同じで魔王の威圧感を受けて、かなり緊張している。
そして合理的な判断から何も言わずに、今は手を出さずに黙って成り行きを見守っていた。
「じゃが、勘違いするでないぞ」
そう言って、狐火の茨の締めつけを強める。
かなり苦しいようで、死柄木弔のうめき声が微かに漏れ出た。
「お前たちを殴り倒すのに、一秒もいらぬ」
いつも通りにマイペースで平然と話せているのは、妾だけである。
だがそれもいい加減に面倒に感じてきたし、狐耳にはUSJの外に大勢のヒーローの気配を感じ取っている。
あと一分も経たずに、到着するだろう。
「もうすぐヒーローたちが到着する。
そうなれば。思う存分に全面戦争ができるぞ」
暴走させられたヴィランたちや、脳無の相手はプロヒーローに任せる。
あとはAFOに操られた黒霧と死柄木弔を、ボコボコにすれば良い。
そんな状況で逃げるには、奴の本体が重い腰を上げなければ難しいだろう。
「それに妾がお前たちを逃がす理由がなくなれば、立場が逆転するが良いのか?」
今は手が足りないが、プロヒーローたちが到着すればヴィランたちの対処を任せられる。
一年A組の皆も守ってくれるだろうし、妾は存分に暴れられるのだ。
「やれやれ、まさか僕を脅迫するなんてね。
油断もあったけど、ここまで追い詰められたのはオールマイト以来かな?」
妾は別に戦ってはいないので、時間的に追い詰められたのは彼の舐めプが10割だ。
しかし黒霧の口からAFOの声で感嘆の言葉が漏れるので、どうやらのじゃロリ狐っ娘を高く評価しているらしい。
しかし妾は免許は勝手に交付されても、AFOを追い詰めたオールマイトのようなヒーローは目指していない。
まあ給料をくれるというならもらうし、気が向いたら仕事をしても良いが、普段から真面目に働くつもりは毛頭なかった。
「これが妾からの最後通告じゃ。
この場は退くか、それともタルタロスにぶち込まれるか。選ぶがいい」
今はAFOの分身の喉元に、鋭利な刃物を突きつけている状況だ。
そして妾としては、どちらを選んでくれても構わない。
一番困るのがプロヒーローが到着してないのに、全力で抵抗されることだ。
あと少しでAFOが暴れて、大きな被害を出しても、後始末をしてくれる者たちが到着する。
これなら万全とは言えないが、全面戦争への備えが整ったと言えた。
だが敵戦力によっては、緑谷少年の目の前で人を殺す。もしくは何人か死んでしまう。
彼はまだ未成年で学生だし他にも一年A組のクラスメイトもいるし、そんな少年少女たちにトラウマを植え付けるような事態は、できれば避けたい。
自分のせいだなどと、罪の意識を背負わせたくはなかった。
なので決して口には出さないが、準備が整っていない今のうちに逃げてくれたほうが、個人的には都合が良かった。
(ヴィランはプロヒーローが何とかすれば良い。学生が対処するべきではあるまい)
ラスボスとの最終決戦はプロヒーローに任せれば良い。
妾は免許が交付されてもやる気はないし、他の面々もまだ卵で心構えも何もできていないため、時期尚早である。
それに向こうはワープで全戦力を呼べても、こっちは雄英高校の教師で手の空いている者だけというのは、少々厳しい。
勝てはしても、敵味方双方に犠牲が出そうだ。
「もしお前が選べぬと言うなら、時間切れじゃ。
妾がこの手で、タルタロスにぶちこんでやろう」
AFOの拘束を解いて彼らを自由にした。
捕まえたままだと、逃げを選んだあとに無駄に被害が拡大すると思ったのだ。
「……確かに、時間切れのようだね」
少しだけ黒霧の体の動きを確かめるように軽く動かす。
続いて圧倒的な敗北を刻み込まれて、心が折れかけている死柄木弔に肩を貸し、妾に視線を向ける。
「残念だが、僕らはこれで失礼させてもらうよ。
今日は見逃してくれて、ありがとう。……では、また」
すると最初よりも禍々しい黒い霧が広がる。
妾たちは相澤先生を担ぎ、噴水広場からの急速離脱を図った。
そのまま皆の集まっている高台に跳躍する。
AFOは、どうやら約束を守ってくれたようだ。
黒い靄が消えた後には、倒れている大勢のヴィランたちだけが残っている。
同時に外へと繋がる出入り口が、衝撃を受けて吹き飛んだ。
そしてマッスルフォームのオールマイトが、恐れ知らずの笑顔で遅れて姿を見せるのだった。
今回は死柄木弔と黒霧が狐にボコボコにされて捕まるか、AFOがドヤ顔で登場しても結局ボコボコにされて、国へ帰るんだな。お前にも家族はいるだろう的なひでえ顔にされ、タルタロス行きになる世界線からなかなか脱出できませんでした。
原作の流れをなるべく壊さないように気をつけて、全員生還ルートを見つけるのは本当に大変でした(なお既に壊れているもよう)
でも書き終わったあとは、何でAFOと狐が頭脳戦をやってるのか、作者にもコレガワカラナイ。マジでどういうことだってばよ…。
それにこの時空は基本はコメディのはずなのに、何でここだけ無駄にシリアスなのか謎です。
やっぱり原作の鬱展開や曇らせや魔王要素が強すぎて、いくらギャグ時空でも完全には消しきれないのか…。