近距離パワー型のじゃロリ狐っ娘守護霊   作:名無しの狐信者

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雄英体育祭の準備なのじゃ

 ヴィランに襲撃されたばかりなのに、体育祭なんてやって大丈夫かと思いはするが、逆に開催することで雄英高校の危機管理体制は盤石だと示す意味があるらしい。

 

 ヒーローは決して、ヴィランには屈しない的な感じだろう。

 警備も例年の五倍に強化するため、侵入するのは自殺行為である。

 

 それに雄英体育祭は前世で言うオリンピックの代わりになれるぐらい、日本では超有名なビッグイベントだ。

 

 相変わらずこっちの世界の常識は、まだ良くわかっていない。

 けれどこの機会にプロのヒーロー事務所からスカウトが来て、活躍すれば就職に大きく有利になるらしい。

 

 ちなみに当たり前だが、目立たなかったら何の意味もない。

 伝手を頼るか地道に探して、書類を持ち込んで面接を受けるなどが必要になる。

 前世でも良くあった就職活動であり、色々大変なのだ。

 

 しかし、それでも全国屈指の雄英高校である。

 各地の学校と比べれば、学歴マウントは取れそうだ。

 多分だが東京大学卒業ぐらいは効果がありそうな、そうでないようなである。

 

 一通りの説明を話半分に聞いた妾は、ふと疑問に思った。

 なので窓をすり抜けて顔を覗かせ、イズクに率直に尋ねる。

 

「イズクの将来の夢はプロヒーローじゃったが、何処かの事務所に所属するのか?」

「その辺りは、まだ考えてないです。

 師匠と一緒なら、何処の事務所でもやっていけそうですし。

 何なら自分で立ち上げても良いですから」

 

 確かに妾とイズクなら、何処のヒーロー事務所でも問題なく活動できる。

 のじゃロリ狐っ娘は一から十まで世話を焼く気はないが、それでも有望なサイドキックなのは間違いない。

 

 あとはイズクが自分で立ち上げることも可能で、実力は十分にあるのできっと募集をかければ、従業員はすぐに集まるだろう。

 

「それに昔と違って、今は別に事務所や名声に拘らなくてもいいかなって」

 

 イズクは少しだけ考えて、口を開く。

 

「上を目指したり、人を助けたい気持ちは変わらない。

 でも師匠に色んなことを教えられて、オールマイトは最高のヒーローではあるけど、彼が絶対的に正しかったり、無理に追いかけなくてもいいかなって──」

 

 何だかオタク特有の自分語りで、めっちゃ早口になる現象が起きている。

 このままだと当分終わりそうになかったので、強引に切り上げることにした。

 

 妾はコホンと咳払いをする。

 

「つまり将来のことは、特に決めておらんのじゃな」

「プロヒーロー免許を取って、雄英高校を卒業するまでは決まってます。

 でもその先はまだ白紙で、在学中に考えようかなと」

 

 若いうちに焦って決めて、あとになって失敗するのは良くあることだ。

 かといって、ゆっくりしすぎていつまでも決まらないのもある。

 

 しかしイズクの将来の夢は、ヒーローだとは決まっていた。

 別に就職に困りそうではないので、妾はのんびり探せば良いと思い全く心配はしていない。

 

「では、そろそろ行くとするか」

「はい! 師匠!」

 

 雄英高校ではヒーローを育成しているだけはあり、専用の施設を貸してくれる。

 他に使う人が居なければだが、気兼ねなく個性の訓練ができるのはありがたい。

 

 もちろん勉強も、しっかりやる必要がある。

 イズクは暗記などが得意だから、心配はしていなかった。

 

「狐女! 俺と戦えっ!」

 

 妾たちが歩き出したところで、爆豪少年が声をかけてきた。

 

「うむ、二人がかりでも構わんぞ」

「でも僕も、昔よりもかなり強くなったと思いますよ?」

「確かにイズクは強くはなっておるが、まだまだじゃのう」

 

 ワンフォーオール20パーセントを常時発動させられる。

 しかし長期戦になると、どうしても息切れしてしまう。

 

 それに妾のような強敵が相手になると、さらに出力をあげないと対処しきれないため、スタミナが尽きるのが早くなる。

 

「AFOと戦うことになれば、まだイズクには任せられんのう」

「……ううっ!」

 

 AFOがどのぐらいの強さを持っているかは不明だが、簡単に勝たせてくれるはずもない。

 

 向こうは何か異常に好感度が高いけど、妾にとっては相容れない。

 将来的には戦いは避けられないため、修行をするほうが良いだろう。

 

「もしかしたらAFOは、妾よりも強いかも知れぬしのう」

「しっ、師匠よりもですか!?」

「うむ、何しろかつて世界を支配しておった悪の帝王じゃからな」

 

 直感だが、一尾の本気と同じぐらい強いだろう。

 あとは戦ってみないと、詳しくは測れない。

 

「そっ、そんな相手に、僕たちは勝てるんでしょうか?」

「勝てるとも!」

 

 妾は即答して、にっこりと微笑みかける。

 

「今はまだ頼りなく、か細い光じゃ。

 だがやがて、太陽のように眩く輝くじゃろう。

 あの平和の象徴、オールマイトのようにのう」

 

 ここで妾は一度言葉を止めて、一年A組の皆に顔を向けた。

 

「もちろんイズクだけではないぞ。

 ヒーローを志す者全てが、希望の光になると妾は信じておる」

 

 弟子だけを構っていると、あとでネチネチ遠回しに言われるのは爆豪少年で学習している。

 

 なので、一年A組の皆にも声をかけておく。

 取りあえず扱いは平等っぽくしておくが、現場猫並のガバガバ安全管理だが文句は出てないのでヨシだ。

 

「お狐様! 我々も訓練に参加してよろしいだろうか!」

「構わんぞ」

 

 ビシッと手を上げた飯田少年に、即答で答える。

 すると今度は、八百万少女がお願いしてきた。

 

「ワタクシも、よろしいでしょうか?」

「……別に良いけどのう」

 

 一年A組の生徒が、他にも次々と名乗りを上げ続けてくる。

 しかしいちいち返事をするのが面倒になった妾は、はっきりと告げる。

 

「いちいち断りを入れんでも、自由参加で構わん。

 時間が勿体ないゆえ、先に訓練所に行っておるぞ」

 

 全員が相手だろうと、今の一年A組なら問題なく対処できる。

 

 なのでさっさと訓練を始めるべく、イズクと爆豪少年と一緒に先に向かおうと思って廊下に続く扉を開けた。

 

 すると視界を埋め尽くす程の、大勢の生徒が集まっていた。

 

「何か用かのう?」

 

 しかし妾は動じることなく、率直に尋ねた。

 

「おっ、お狐様!?」

「確かに妾はそうじゃが?」

「嘘っ!? 本物!?」

 

 何だから知らないが、全然話が通じない。

 そしてこういうときのイズクは、ワタワタして役に立たないのだ。

 

 妾はどうしたものかと考えつつ、爆豪少年が余計なことをしないように宥めすかしていると、一人の生徒が人混みをかき分けて前に出てきた。

 

「噂のA組。どんなものかと見に来たが、随分と偉そうだな。

 ヒーロー科に在籍する奴らは、皆こんななのか?」

 

 キレやすい若者の代表である爆豪少年とは違うと、後ろの全員が首を振っている。

 

「こういうのを見ちゃうと、幻滅しちゃうなぁ。

 普通科とか他の科って、ヒーロー科落ちたから入ったって奴、結構いるんだ。

 ……知ってた?」

 

 妾は噂程度なら知っているし、他の者も聞いたことはあるだろう。

 誰も何も言わずに、目の前の少年の話を黙って聞く。

 

「そんな俺らにも、学校側がチャンスを残してくれてる。

 体育祭のリザルトによっちゃぁ、ヒーロー科への編入も検討してくれるんだって。

 ……その逆もまた真なりらしい」

 

 一年A組のクラスメイトたちが、突然の下剋上宣言に身を強張らせる。

 妾はふむふむと納得して、にっこりと微笑みかけた。

 

「良いではないか!」

「「「えっ?」」」

 

 この場に集った全員が、この狐っ娘は今度は何を言い出すんだと戸惑っているのがわかる。

 

 妾は基本的に、その場のノリで喋っている。

 細かいことは気にせずに堂々と続きを話す。

 

「ヒーローとは、非常に危険で怪我や死亡率が高いのじゃ!

 やる気と実力がある者でないと、到底務まらぬ職業じゃぞ!」

 

 ロボットを倒す実技試験で、ヒーローの適性が全て明らかになるわけではない。

 なので、体育祭でチャンスを与えるのも納得できる。

 

 見込みなしと判断して普通科に編入しても、生徒のその後の人生を考えると、決して悪いことではなかった。

 

「敵情視察や下剋上は大いに結構!

 ぜひとも、互いに切磋琢磨して欲しいのう!

 悪の帝王を倒すには、強いヒーローが一人でも多く必要なのじゃ!」

 

 妾の中では、とっくに打倒AFOではある。

 しかし別に自分が倒す必要はなく、ヴィランと戦うのはヒーローの役目だ。

 

 やる気と実力がある人がやればいいし、生徒が強くなれば前線に出なくてもサポートぐらいの役には立つ。

 

 ただ今のオールフォーワンは、人に会える状態ではないと言っていた。

 直接対決は当分先になるだろうから、場合によっては目の前の彼らが一人前になる時間は十分にある。

 

 もし何らかのトラブルで早期に戦うことになったら、面倒だが重い腰を上げてボコボコにするしかない。

 

 だがまあ、その時はその時だ。

 悪い方向に考えても仕方がないため、気持ちを切り替えて目の前の彼らに告げる。

 

「そういうわけで、妾たちは今から訓練所に向かう!

 もし良ければ、見学に来るか参加しても良いぞ!

 ヒーローを目指す上で、何かの参考になるかも知れんからのう!」

 

 高レベルな戦いは見ているだけでも学ぶべきものがあるため、成長のキッカケを得られるかも知れない。

 

「……では、行くぞ! イズクよ!」

「えっ!? はっ、はいっ! 師匠!」

 

 周囲がまだ今の発言を受け止めきれずに困惑している間に、妾は相変わらずのマイペースで物事を進める。

 弟子に声をかけて、人混みをかき分けて進んでいく。

 

「おうおうっ! 隣のB組の者だけどよぉ!

 ヴィランと戦ったっていうから、話聞こうと思ったんだけどよぉ!」

「うむ、確かに戦ったぞ。規約により、あまり多くは語れぬがのう」

 

 また変な人が出てきたが、取りあえず無難に返事をして訓練所に向かう。

 昨日やらかしたAFOのことは既に知られているので、ギリギリではあるがセーフである。

 

 とにく人混みの中で立ち止まっていたら、いつまでも先に進めないため、イズクは人の流れに逆らって訓練所を目指して歩く。

 

「お狐様! 相変わらずかあいいです!」

「おお、渡我少女か」

「じょっ、上級生!?」

「何で一年の教室に!?」

 

 渡我少女は、イズクのスマートフォンに毎日のように電話やラインで連絡して来る。

 そして釈放されてヒーロー免許を取得したジェントルとラブラバと同じで、妾の貴重な友人だ。

 

 ついでに上級生なのにフットワークがやたらと軽く、授業が早めに終わったので一緒に帰ろうとか誘うつもりだったのだろう。

 

 しかし本日、近いうちに雄英体育祭が開催されると說明された。

 今は競技で良い成績を取るためと、ついでに打倒AFOで少しでもイズクを強化したいところだ。

 

 そういう思惑もあり、訓練所はもう予約してある。

 

 なので気持ちはありがたいが渡我少女と、その後ろにちゃっかりいた友人の方々のお誘いはお断りさせてもらう。

 

「今日は一緒に帰れぬ。今から戦闘訓練をするのじゃ。

 じゃがもし良ければ、渡我少女もどうじゃ?」

「行きます!」

「お狐様! 私たちも、ぜひお願いします!」

 

 渡我少女との仲は悪くない。

 そんな彼女の友人なのできっと良い人だろうと、他の上級生も参加ということになった。

 

 取りあえず一緒に、訓練所に行くことになった。

 そして他のB組の人たちの対応は、教室に残った人たちに任せる。

 

 ちゃっかり難を逃れて後ろを付いて来ている爆豪少年と共に、妾たちは無事に人混みから脱出するのだった。

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