近距離パワー型のじゃロリ狐っ娘守護霊   作:名無しの狐信者

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障害物競争なのじゃ

 全員が一斉にスタートしたわけだが、この時点で早くも選別が始まっていた。

 イズクは常時波紋疾走(オーバードライブ)30パーセントだし、爆豪少年は爆破の制御が格段に上達している。

 

 さらに轟少年は氷だけでなく、炎も使い始めた。

 個性の燃費が格段に良くなり、速度も出るようになっている。

 

 ちなみに渡我少女は二年生なので、今日は友人グループと一緒に妾たちを応援してくれていた。

 

 

 

 まあそれはそれとして、飯田少年はマフラーを新調したらしい。

 何とスタートと同時に一位に躍り出て、後続をどんどん引き離していく。

 

 このままでは追いつけなくなってしまうので、弟子に手を貸すつもりはないが口は出させてもらう。

 

「イズクよ! このままでは追いつけぬぞ!」

「わかっています! でも、流石は飯田君だ! 僕だって!」

 

 飯田少年が速すぎるため、このまま手をこまねいていては二位以下に落ちるのは確定だ。

 イズクもそのことがわかっているし、彼の独走を許すはずがなかった。

 

波紋疾走(オーバードライブ)! 60パーセントだーっ!!!」

 

 100パーセントを長時間維持するのは、流石に厳しい。

 60パーセントまで出力を上げて、少々キツくなるが完走を目指すことにしたらしい。

 

 そして他のヒーロー候補たちも同じく、各々の個性を慌てて使い始めた。

 

「いかせるかよぉ!」

「負けられない!」

 

 中でも爆豪少年と轟少年は抜きん出ており、イズクと飯田少年を含めた四人が先頭集団になる。

 

 競技場の出入り口は大勢に通るには狭いが、後続は置いてけぼりだ。

 四人程度ならば、余裕を持って通り抜けられる。

 

 それでも少しでも速度を落とせば、氷炎や爆破に巻き込まれる。

 イズクは60パーセントを維持しながら、何とか走り抜けた。

 

 外に出たあとも、コースから外れることなくペース配分に気をつける。

 少し先を独走している飯田少年から、決して視線を外さずに引き離されることもない。

 

「やるな! 緑谷君!」

「飯田君こそ! 凄く驚いたよ!」

 

 互いに全力で走りながら、素直な称賛の声を掛け合う。

 

 

「俺もだ! まだ十全には扱えずに制御は難しいが、ようやく緑谷君に一矢報いた気分だ!

 何しろ入試から、キミには負けっぱなしだったからな!」

 

 今のところは転倒や衝突事故は起きていないが、確かにあの速度で壁に激突すればタダでは済まない。

 体は頑丈なので死にはしなくても、かなり痛そうだ。

 

「だがらこそ、俺はキミに挑戦する! 今度こそ勝つぞ!」

 

 飯田少年は初手で一矢報いたとしても、まだゴールしてはいない。

 

 なので今度こそとやる気満々で、その後を追うのはイズクである。

 続いて殆ど差はないが、爆豪少年と轟少年だ。

 

 ワンミスでもすれば、いつ追い抜かれてもおかしくはない。

 そんなかなりシビアな緊張状態のまま、四人は障害物競走を駆け抜けていく。

 

 

 

 やがて、障害物とした用意された仮想ヴィランのロボのエリアに入る。

 本来ならば危険は排除するべきなのだろうが、いちいち倒してたらタイムロスになってしまう。

 

 ゆえに四人とも気にすることなく通り抜けて、先に進んだ。

 動きが遅いので避けるのは容易であり、全く問題にはならなかった。

 

 

 

 

 続いては第二関門の落ちれば一発アウトの綱渡りだが、飛び移って移動すれば簡単なものだ。

 

 ただ飯田少年は空を飛べずに跳躍力にも自信がなかったようで、安全策を取ってロープを滑るように移動する。

 それでも普通に綱渡りするよりも早いが、残念ながら後続に追い抜かれて首位から転落してしまう。

 

 

 

 次の地雷原で四人は、爆発する前に通り抜ければ良いという判断を下す。

 ぶっちゃけ頭がおかしいことをやっているが、タイムロスを極限まで省いた結果と言える。

 

 飯田少年も追いついて四位になったし、トップになるためには形振り構わないようだ。

 

 

 

 最後まで四人で首位を争い、イズクはラストスパートで波紋疾走(オーバードライブ)を100パーセントまで引き上げた。

 飯田少年のレシプロターボはゴールまでは保ったが、そのすぐあとにガス欠になってしまう。

 

 しかし取りあえず弟子は僅差で、堂々の一位になる。

 

 

 

 

 

 

 次の競技の騎馬戦は、上位ほど狙われる下剋上だ。

 一位のイズクは何故か1000万点などという馬鹿げた点数を手に入れてしまい、格好の標的となる。

 ハチマキを最後まで守り抜くなど、無理難題にも程があった。

 

 妾としては難儀なものだと思いながら、顔を青くして震えている弟子に声をかける。

 

「イズク、大丈夫か?」

「しっ、師匠!? どどど! どうすれば!」

「取りあえず、落ち着くのじゃ」

 

 妾は実体化して地面に降り立ち、イズクの肩に手を乗せる。

 この状況は、流石に可哀想が過ぎる。

 

 静かに息を吐いて、安心させるようににっこりと微笑みかけた。

 

「妾が助力しよう。共に一千万のハチマキを守り抜くのじゃ」

 

 事前に妾は不参加とそれとなく伝えていたが、今回に限っては撤廃させてもらう。

 

「師匠おおおおっ! ありがとうございますううううっ!!!」

「気にせずとも良い。今回は流石に看過はできぬゆえな」

 

 イズクは凄く嬉しかったのか、泣きながら喜んでいる。

 一人だけ圧倒的な不利な状況で競技を行い、しかもそれが妾の弟子となれば後方腕組み師匠ポジとしては、助けない理由がない。

 

 逆境を跳ね除けるのがヒーローの宿命で、雄英高校が試練を与え続けるスタンスなのはわかる。

 だがそれを妾が許容できるかは、全く別の問題だ。

 

(妾は元々イズクの個性じゃし、審判も許可してくれるじゃろう)

 

 イズクが正々堂々と戦うなら、やるだけやったし勝っても負けても良しとする。

 しかし今回のように圧倒的に不利な戦いを強要されるのは如何なものかで、ただでさえ守護霊という弟子の個性を縛っているのだ。

 

「では、師匠と騎馬を組んでいいですか?」

「別に構わんが、イズクは妾を選手にするのか?」

 

 個性として運用したほうが色々できる気がするが、わざわざ選手にする理由を尋ねる。

 

「はい、現状では僕と組んでくれるのは、師匠だけだと思います。

 1000万点の防衛なんて、誰もやりたがらないでしょうし」

 

 確かにイズクは選手全員から狙われるのだから、組みたがる人がいるかは疑問である。

 さらに弟子の身体能力について行ける者は、かなり限られてくるのだ。

 

 酷な言い方をすれば、他の者はイズクにとっての縛りになりかねない。

 そう考えれば納得の答えだが、妾は審判をしているミッドナイトに声をかける。

 

「そういうわけじゃが、どうかのう?」

「面白そうなので許可します!」

「大丈夫とのことじゃ」

 

 話を聞いていた18禁ヒーローのミッドナイトが許可を出してくれた。

 これには、弟子も嬉しそうである。

 

 そして作戦会議の結果、イズクが下で妾が上になることになった。

 

 理由は、おぶさる者は地面に足がついてはいけないからだ。

 のじゃロリ狐っ娘の妾が下で支えては、ふとした拍子にイズクの足がついて失格にはなる可能性がある。

 

 なので消去法として、師匠が弟子に担がれることになったのだった。

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