近距離パワー型のじゃロリ狐っ娘守護霊   作:名無しの狐信者

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エンデヴァーと話したのじゃ

 麗日少女と爆豪少年の試合が終わり、次は緑谷少年と轟少年の番になった。

 最初は控え室に寄って励ましの声をかけようと考えたが、その途中で階段の下からツンツンヘアの少年が登ってくるのに気づく。

 

 途端に弟子がブリキ人形のように、動きがぎこちなくなる。

 しかしのじゃロリ狐っ娘は相変わらずのマイペースで、彼におもむろに声をかけた。

 

「おお、爆豪少年ではないか。二回戦進出おめでとうなのじゃ」

「……あれぐらい余裕だ」

 

 表情はいつもの強気のままだが、試合に勝ったにしては声に少しだけ元気がない。

 なので妾はどうしたのかと少しだけ考えて、おもむろに口を開く。

 

「麗日少女は爆豪少年に勝つために、必死に策を組んだのじゃ。

 お主は翻弄されはしたが、それを見事に打ち破って勝利した。

 互いにプロヒーローを目指しておるのじゃ。気に病む必要はないぞ」

 

 爆豪少年はあまり外面が良くないし、口調も冷たいところがある。

 だが正直になりきれないだけで、根は優しい少年だと妾は知っている。

 

 緑谷少年とバッタリ会ったことから、きっと一年A組の観客席に戻る前に麗日少女の控え室に寄って、不器用なりに励ますつもりだったのだろう。

 

 女の子を殆ど一方的に痛めつけていたことから、観客からは始終ブーイングが起きていた。

 ヒーローを目指す者同士の正々堂々の真剣勝負に、男も女もないと妾は思う。

 

 しかし、世間はそうは思っていないようだ。

 

 最後は空から降ってくる瓦礫を全て消し飛ばして完勝したが、爆豪少年は若干気落ちしているので、妾はやれやれという表情で大きく息を吐く。

 

「麗日少女は、妾たちが励ましておく。

 爆豪少年は気まずかろうし、今回は観客席に戻ると良い。

 次の試合が控えておるのじゃろう? そんなに注意力散漫では、実力を発揮できぬぞ」

「……わりいな。任せた」

 

 やっぱり表情には出さないが、爆豪少年は相当落ち込んでいた。

 そういう弱い面は気心が知れている妾や緑谷少年、または家族にのみに見せる。

 

 そして他の一年A組の面々には、いつもの強気スタイルだ。

 何にせよ相当珍しいが、まだ成長しきっていないので思い悩むのも当たり前だろう。

 

(きっと、場の雰囲気に飲まれたんじゃろうな)

 

 雄英体育祭は日本有数のビッグイベントで、前世のオリンピックのようなものだ。

 いくらヒーローを目指しているとは言え、少年少女という年齢の者が出場するのである。

 

 大人でも会場の雰囲気に飲まれるのは避けられない。

 子供のメンタルで耐えられるかと言われると、正直無理だろうと妾は考えた。

 

(じゃが、どうして妾がフォローに回らねばならぬのじゃ? ……面倒じゃのう)

 

 だが麗日少女とは知らない仲ではないし、放っておくこともできない。

 爆豪少年が観客席のほうに歩いていったのを見届け、気持ちを切り替えるのだった。

 

 

 

 ちなみに励ます必要なかった。

 明るく振る舞っていてもショックを受けているのは一目でわかるが、自分で乗り越えないと意味はないと思っているようだ。

 妾とイズクは、ありきたりの応援の言葉をかけるだけで済む。

 

 そして今は、一人にして心の整理をさせるべきだと判断した。

 

 

 

 妾たちは何かあれば相談に乗ることを告げて、次の試合会場への向かう。

 しかしその途中で、横の通路からエンデヴァーがひょっこり顔を覗かせる。

 不意打ちだったこともあり、イズクは思いっきり驚く。

 

「エンデヴァー!? 何でこんなところに!?」

「ナンバーツーが、珍しいのう。息子の応援か?」

 

 彼とは顔見知りだが、別にそこまで親しいわけではない。

 息子の教育や家族関係について口出ししたぐらいで、イズクにとってはオールマイトと同じように、プロヒーロー的な憧れの対象だ。

 

「ああ、そんなところだ」

 

 エンデヴァーのことなので、雄英体育祭の警備任務を依頼されたのだろう。

 そして大手の事務所だからこれ幸いと、息子の応援をするついでに引き受けたと予想できる。

 

「警備に付き合わされるサイドキックが、少し可哀想じゃのう」

 

 どうやら妾の予想は正しかったようで、エンデヴァーもフンと鼻を鳴らしながら返事をする。

 

「雄英体育祭は、日本を代表するビッグイベントだ。

 警備任務とはいえ、会場で直接見物したい者は多い。

 俺と彼らの利害は一致している。何も問題はあるまい」 

 

 つまりは派遣される事務所のヒーローも、合意の上というわけだ。

 見物に夢中になって警備が疎かにならないと良いが、異常がないか注意深く観察するぐらいなら大丈夫だろう。

 

 そんな挨拶はさて置き、今度はエンデヴァーがイズクに話しかける。

 

「キミの活躍。見せてもらった。素晴らしい個性だね。

 二人目の幽波紋(スタンド)を呼び出し、自在に操るとはね」

 

 心操少年との試合のことを言っているのだろう。

 

 しかしアレはまだ、自在に操るには至っていない。

 ブチ切れで限界以上に出力を出して、殆ど暴走状態のようなものだ。

 

 イズクが心の底から、目の前の相手をぶん殴りたいという望みを叶えるために、幽波紋(スタンド)という形で実体化したのである。

 

「パワーだけで言えば、オールマイトに匹敵する力だ」

「なっ!? 何を!? 何を……言いたいんですか!

 僕はもう! 行かないと!」

 

 そして幽波紋(スタンド)の姿は、全盛期のオールマイトそっくりだった。

 エンデヴァーがワンフォーオールとイズクの関係について、疑念を持っているかは不明だ。

 物の例えで、口に出すのは別に不思議ではない。

 

 しかし変に突っつかれてボロを出すわけにはいかず、弟子はナンバーツーヒーローの横を通り抜ける。

 

 慌てた様子で試合会場に向かって歩き出すと、そんな彼にさらに後ろから声がかけた。

 

「うちの焦凍は、お狐様を越えたがっている。

 キミとの試合は、テストベッドとして、とても有益なものとなる。

 くれぐれも、みっともない試合はしないでくれたまえ」

 

 将来的には師匠を越えるにしても、まずは弟子よりも上だと示す必要がある。

 実力的にも妾よりは近いし、あまりにも危険な場合は先生たちが止めるので、良い試合にはなりそうだ。

 

「言いたいのはそれだけだ。直前に失礼した」

 

 エンデヴァーが、息子を大切に思っているのはわかった。

 しかし現時点の最終目標が、のじゃロリ狐っ娘なのは如何なものかだ。

 

 微妙に納得できないと考えていると、弟子が足を止めて大声で発言する。

 

「僕は……師匠じゃありません!」

「そんなものは──」

「当たり前のことですよね! 轟君も! 貴方じゃない!」

 

 妾としては、何故それと今言ったのかと首を傾げる。

 

 あくまで轟少年の目標であって、エンデヴァーじゃないのは当たり前だ。

 

(もしや轟少年だけでなく、エンデヴァーも妾をライバル視しておるのか?

 いやいや、そんなまさか)

 

 確かに自分はヒーロー免許を持っているが、別に表立って活動はしていないし興味もなかった。

 

 せいぜい余計なお節介を焼いたり、降りかかる火の粉を払うぐらいだ。

 それなのに勝手にライバル認定されるとか、まるで意味がわからない。

 

 ともかくイズクは、エンデヴァーに啖呵を切って試合場に向かう。

 妾は疑問に思いながらも、興味はないし別に良いかと気持ちを切り替える。

 いつも通りに、宙に浮いて弟子のあとを付いていくのだった。

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