近距離パワー型のじゃロリ狐っ娘守護霊 作:名無しの狐信者
イズクと轟少年が、試合の舞台の上で向かい合う。
二人共色々思うところがあるだろうが、真剣に優勝を狙っているのは間違いない。
そして今回も、妾は手助けをするつもりはなかった。
後方師匠っぽく腕組みをして、少し離れて眺めているだけである。
「親父を越える最高のヒーローになるために、お狐様の前に緑谷! お前に勝つ!」
「僕だって、師匠の弟子として! 負けられない!」
両者の間に挟まっている妾ではあるが、ぶっちゃけ心当たりはある。
しかし、そんなに執着しなくてもと若干引いてしまう。
だがそれで二人がやる気になるなら、別にいいかなとこの場は気にしないことにした。
どうせ対岸の火事で、日向ぼっこには影響ないのだ。
そうこうしているうちに、今大会でトップクラスの成績を出しているイズクと轟少年の試合が始まる。
観客は大興奮で、会場は熱狂の渦に包まれた。
最初に動いたのは轟少年だ。
開始瞬間に足元を凍らせて特大の氷柱を放つが、弟子はそれを読んでいた。
「
「くっ!」
残しては動ける場所が制限されるし、速やかに処理するのは正しい判断だろう。
しかし轟少年も風圧で吹き飛ばされる前に、背後に氷の壁を形成して踏み止まった。
場外負けを未然に防いだあと、大きな声でイズクに話しかける。
「
「練習中!」
「そうか!」
互いに激しく応酬しながら、何気に会話も挟んでいる。
攻守が目まぐるしく入れ替わると思いきや、距離を詰めようとするイズクを、轟少年が逃げながら迎撃するパターンばかりだ。
こうなるのは近接戦闘なら弟子が優勢なので、轟少年は近づかれると終わりだからだ。
彼は苦手分野がなく全てが高水準のヒーローだが、イズクのような増強系の個性ではない。
なので弟子に接近されると負けが確定するため、轟少年にとっては薄氷を踏むような戦いだ。
「つっ、詰められない! サポートアイテムさえあれば!」
「悪いな緑谷! このまま決めさせてもらう!」
イズクも波紋を使えて、応用力も決して低くはない。
しかし波紋カッターやシャボン玉、髪の毛やマフラーなど、サポートアイテムに依存している特技もかなり多かった。
しかも雄英体育祭では、サポート科以外は使用不可の取り決めがある。
純粋な個性で勝負しないといけないため、思いの外苦戦していた。
それでも、ワンフォーオールも強個性には違いない。
まだ一年ほどしか修行できていないイズクでも、轟少年と互角に渡り合えている。
彼は幼少期からエンデヴァーのスパルタ教育を受けてきているため、個性の使い方が上手いので攻めあぐねているが、なかなか良い勝負に思えた。
(一手の失敗で勝敗が決まりそうじゃな)
普通ならイズクが殴るか、場外まで吹き飛ばして試合終了だ。
しかし、現状はそうなっていない。
轟少年は弟子に比べれば身体能力は高くはないが、決して寄せつけなかった。
やがて視界が塞がれた状態で、放たれた氷柱がイズクの足に当たる。
「しっ、しまった!?」
「今だっ!」
ワンフォーオールの出力を上げれば、すぐにでも解除できる。
だがほんの一瞬とはいえ、イズクを拘束したのだ。
そうして生まれた隙を突くように、轟少年が操る炎と氷の密度が急激に高まっていく。
「焦凍おおおおおっ!!! そうだ! いいぞ! ここからがお前の始まり!
弟子を倒し、師匠を越えろ!
誰でもない! お前自身が目指す! 最高のヒーローになるために!」
突然、そんな大声が会場内に響き渡った。
エンデヴァーは親バカなのかなと思ってしまう。
だが当人と轟少年は至って真面目で、イズクがピンチなことには違いない。
そして弟子も覚悟を決めたようだ。
両者の緊張感が増して、今の己にできる最大の攻撃を放つ構えを取る。
妾も念のために実体化し、意識を集中させた。
「邪なる威力よ! 退け!」
妾は結界を展開し、青くて半透明の高い壁が試合場を囲んだ。
それと同時に両者の技が完成する。
「これが今の俺の! 最強の技だ!」
「震えるぞハート! 燃え尽きるほどヒート!
おおおおおっ! 刻むぞ血液のビート!」
轟少年はエンデヴァーから新技を教わっていると聞いたが、イズクの
なので少し威力は下がるが、炎と氷の合体技を披露する。
「
炎と氷の相反する属性で熱膨張を引き起こし、凄まじい爆風が生まれる。
「
イズクはそれを
本来なら試合場の中央でぶつかり合い、観客席を巻き込んだ特大の台風になるところだ。
しかし妾が展開した高い壁の結界で、衝撃波は全て上空に逃している。
それでも大量の水蒸気で視界が塞がれて、しばらくは何が起きたかわからない状態が続いた。
だがやがて霧も晴れ、勝敗が明らかになる。
「みっ、緑谷君! 場外! 轟君! 三回戦、進出!」
イズクは衝撃波をまともに受けて、場外まで吹き飛ばされた。
残念ながら負けてしまう。
「個性の練度の差が出たのう」
他にも轟少年の状況に応じた立ち回りの上手さもあるが、弟子の
オールマイトから受け継いで一年ほど修行をしたが、出力を最大まで上げられるようになったのは最近である。
なのでほんの一瞬とはいえ、他の部位に回していた波紋が途切れてしまう。
その結果、足元の吸着が疎かになってしまったのだ。
空中で体を捻って危な気なく着地したので、肉体的には殆ど無傷で元気ではある。
しかしイズクは、心底悔しそうな顔をしていた。
「まっ、負けた!」
「おっ、……俺の、勝ちだ!」
対する轟少年は、ジャージが半分焼けてしまっている。
おまけに疲労困憊でぜえはあ言っているが、それでも嬉しそうな顔をして弟子に勝利宣言するのだった。