近距離パワー型のじゃロリ狐っ娘守護霊 作:名無しの狐信者
イズクのヒーローネームなのじゃ
色々あったが雄英体育祭が終わった。
表彰台の四人にオールマイトがメダルをかけて助言するのだが、一位の爆豪少年、二位は轟少年、三位は八百万少女と飯田少年となる。
なお轟少年はイズクに続いて飯田少年との戦いで疲労が色濃く残ってしまい、とてもではないがベストな状態とは言い難かった。
そんな相手に勝っても爆豪少年は嬉しくはないらしい。
そこで暴発寸前なところを妾がエキシビション戦を提案し、戦いたい生徒を手当たり次第にぶっ飛ばすことになった。
日本有数のスポーツの祭典だし、お祭り騒ぎが大好きな人も大勢居る。
審判の許可も割りと簡単に出たが、時間は限られているのだ。
ゆえに全員を返り討ちにして、さっさと終わらせる。
結果的に、爆豪少年を含めて表彰台の選手は全員が全力を出し切った。
なので取りあえず大人しくはなり、何だか知らんがとにかくヨシと締めくくるのだった。
体育祭の途中で連絡が入り、飯田少年の兄であるインゲニウムが、ヒーロー殺しに襲われたとのことだ。
幸い偶然通りかかったジェントルの加勢もあり、逃しはしたが怪我は軽症で済む。
それでも念のために病院で検査をして、飯田少年に連絡しておくべきだと判断したらしい。
なので体育祭が終わったら、急ぎ実家に帰る。
無事だと良いけどと一年A組の皆が不安そうに話しているのを、お昼寝しながら狐耳で聞いていた。
まあ妾としては、イズクが怪我をせずにベストを尽くせて良かったと思う。
帰宅後に引子さんからも、良く頑張ったねと泣きながら褒められていた。
夕飯も腕によりをかけて誕生日のように豪華だったし、そんな心温まる光景を眺めているだけで嬉しくなるのだった。
体育祭のあとは二日の休みを挟んで、授業が再開される。
通学中にイズクが応援されることがさらに増えたが、前からちょこちょこあったので些細なことだろう。
それより本日は職場体験に向けて、各々のヒーロー名をつけるらしい。
事務所の指名も、弟子がトップで一万件近く入っていた。
なので将来に期待してくれている人たちの期待を裏切らないように、真面目に考えないといけない。
弟子がネタに走るとは思わないが、何となく興味を惹かれたので師匠として一応聞いておく。
「イズクは決めておるのか?」
「うっ、うん! 実はヒーロー名は、前から考えてて!」
他のクラスメイトも、続々とヒーロー名をミッドナイトに提出して、査定してもらっている。
そして相澤先生が言うには、将来自分がどうなるのかは名前をつけることでイメージが固定され、そこに近づいていくらしい。
つまりイズクが目指すべきヒーローが、今明らかになるのだ。
妾は期待と不安が半分ずつで、弟子の次の言葉を待つ。
「僕のヒーロー名は、スタープラチナです!」
「却下じゃ!」
「何でっ!?」
ミッドナイトに提出する前で良かった。
彼女なら、きっとその名前を通してしまう。
妾は力強く却下しつつ、大きく溜息を吐く。
(
過去にスタープラチナの個性を持つヒーローが、巨悪を倒すために仲間たちとエジプトを目指して旅をした。
前世のサブカルチャーが元ネタだが、
弟子はそれを大真面目に信じ、しかも憧れている。
しかしまさか、ヒーロー名に選ぶぐらい気に入っているとは思わなかった。
流石は主人公の
だが個人的には、もっと現実的な名前をつけてもらいたかった。
妾はどう理由をつけるべきかと、少しだけ考える。
「では聞くが、イズクは時を止められるのか?」
「そっ、それは、ちょっと、無理……ですけど」
「つまりは、そういうことじゃ。
近距離パワー型だけでは、スタープラチナは完成せぬ」
オールマイトの
しかしそんなことができるのは、真の主人公だけだ。
イズクはワンフォーオールを受け継いだ近距離パワー型ではあるが、そんな不確定要素に期待するのは、止めたほうが無難だろう。
「では師匠なら、僕にどのようなヒーロー名をつけますか?」
「妾ならか? ううむ、そうじゃのう」
妾はお狐様と名付けられて、広く世間に浸透している。
今さら変えることはできないだろうし、ヒーロー活動をする気もないのでどうでもいい。
(ふむ、イズクのヒーロー名か。
そうじゃな……メキシコに吹く熱風という意味の、サンタナというのはどうじゃろうか?)
ついネタに走ってしまう。
だが妾は慌てて首を振って、そこは自重して真面目に考える。
「……デクというのはどうじゃ?」
「デク、ですか?」
イズクはどうしてその名前なのか疑問なようで、妾に率直に尋ねてくる。
「麗日少女が言っておったぞ。
頑張れって感じの、デクじゃな。
過酷な波紋修行をやり遂げたイズクには、その名前が合っておるじゃろう」
弛まぬ努力を続けてきたイズクだからこそ、デクというヒーロー名は輝く。
波紋修行をやり遂げるなど、普通では考えられないのだ。
昔は木偶の坊と馬鹿にするような意味でつけられたあだ名を、あえて名乗ることで無個性だった頃の自分を思い出す。
力に溺れることなく、ヒーローとして成長を続けるという意味にも使える。
そのようなことを簡潔に伝えると、イズクは真面目な顔になった。
話を聞いていた一年A組の生徒たちの表情も、皆揃って引き締まる。
「師匠。ありがとうございます。
おかげで覚悟が決まりました」
「そっ、そうか」
イズクが覚悟を決めさせるまで追い詰めてしまったことに、特に深い考えもなく名付けた妾は戸惑ってしまう。
しかし、本人が納得しているなら別に良いかと考える。
取りあえずヒーロー名がデクに決まったあとは、やることもなくなる。
妾は教室の窓をすり抜けて、のんびり日向ぼっこをするのだった。
名前を決めたあとは、職場体験先であるプロヒーロー事務所を選ぶことになる。
だがイズクは一万件近い候補があって、ここから選ぶのは容易なことではなく、全てに目を通すのも一苦労だ。
当たり前のように教室で頭を抱えるイズクだが、日向ぼっこしていた妾を呼び出して相談してきた。
「師匠、どのプロ事務所を選べば良いのでしょうか?」
「確かに、この数ではのう」
取りあえず実体化して、イズクから書類を受け取る。
そして順番に目を通していく。
(駄目じゃ。何が何やら、さっぱりわからぬ)
妾はそもそも、ヒーローには全く興味がない。
行動派オタクであるイズクとは違うので、各項目を読んでも意味不明な単語の羅列ばかりで目が滑ってしまう。
直感でも正解を導き出すことはできるが、理由を聞かれたときに言葉が出てこないのは問題だ。
師匠の威厳が崩れかねないので、妾は弟子に書類を返してはっきりと答える。
「雄英高校の教師に相談するのじゃ。
彼らはプロヒーローゆえ、選ぶべき事務所も答えてくれよう」
間違っても妾が答えを知らないとは、一言も口にはしない。
とにかくここは雄英高校の教師に丸投げするが、困ったら大人に相談するのは常識である。
「妾は情報化社会に疎い。イズクが望む答えを返せるか、自信はないからのう」
それでも弟子が頼ってきたのに、役に立てなかったのだ。
妾は情けない師匠ですまないと謝罪しておく。
イズクは謝る必要はないと慌てるが、取りあえず納得して雄英高校の教員を頼ることに決まったのだった。