近距離パワー型のじゃロリ狐っ娘守護霊   作:名無しの狐信者

44 / 98
新たな師匠グラントリノなのじゃ

 職場体験の相談をするために先生を探していたら、オールマイトと廊下でばったり会った。

 良い機会なのでヒーロー事務所について相談すると、彼の先生だったグラントリノを紹介される。

 

 しかしイズクが全く知らなかったので、きっと無名のヒーローなのだろう。

 だがおかげで行き先がすんなり決まり、今回の職場体験はグラントリノの事務所になったのだった。

 

 

 

 駅で各々が別れる前に飯田少年の様子がおかしいことに気づき、放っておくわけにもいかないので、取りあえず実体化して彼の近くに降り立つ。

 そして微笑みながら、おもむろに声をかける。

 

「飯田少年に、言っておきたいことがある」

「何でしょうか?」

 

 時間はあまりないため、手短に用件を告げる。

 

「ヒーロー殺しを見つけたら、すぐに連絡せよ」

「えっ!?」

「隠してもバレバレじゃぞ」

 

 彼が職場体験に選んだ事務所も、ヒーロー殺しが最後に目撃された街に建てられている。

 今朝のニュースでやっていたのだ。

 

 普段は興味がなくて右から左に聞き流しながら家事をしているが、ちょうど一息ついたときに流れたので、何となく覚えていた。

 

 まあそれも数日すれば、忘却の彼方だろう。

 

 それはそれとしてイズクから狐のキーホルダーを受け取り、狐火を込めた。

 

「お守りじゃ。持っていくといい」

「どっ、どうも」

 

 飯田少年にキーホルダーを渡すと、戸惑いながらも受け取ってくれた。

 なお他の生徒も羨ましそうにしているが、MADのピッコロさんのように、「仙豆だ。食え」と気軽に与えるつもりはない。

 

 妾はそこまで腰は軽くなく、危険な状況でない限りは日向ぼっこのほうが優先度が高いのだ。

 

「言っても聞かぬじゃろうし、妾は止めぬよ。

 じゃが、絶対に一人で戦うな。

 ヒーロー殺しは飯田少年よりも、遥かに格上のヴィランなのじゃからな」

 

 過去に何度も殺害を繰り返しながら、プロヒーローや警察の手からが逃れてきたのだ。

 相当な強さのヴィランなのは間違いなく、飯田少年だけでは勝ち目があるとは思えない。

 

「仲間に助力を求めよ。

 妾から言えるのは、それだけじゃ」

 

 そう言って妾は霊体化してイズクの頭上に移動し、あくびをして丸くなる。

 飯田少年が感謝の言葉をかけてくれるが、適当に相槌を打っておく。

 見て見ぬ振りができないので声をかけただけで、別にお礼を言ってくれなくてもいいのだ。

 

 その後は一年A組の皆が彼と連絡先を交換したり、もしものときは頼るようにと声をかけて各々の職場に移動するのだった。

 

 

 

 

 

 

 オールマイトが恐れるグラントリノの事務所は、外から見ると凄くボロボロだ。

 扉には鍵はかかってなかったので開けて中に入ると、割りと普通の内装に少しだけ安堵する。

 

 だがトマトケチャップを撒き散らして倒れていたボケ老人がグラントリノだったので、何とも意表を突かれた。

 

 イズクの顔色が若干曇っていることから、大丈夫かなこの人と不安に思っているのだろう。

 

 しかし妾は、全くそんな気はしなかった。

 

 何故なら彼の生命エネルギーは、プロヒーローと比べても遜色ない大きさだ。

 さらに揺らぎが少なくて、とても落ち着いている。

 

 けれどイズクには見えないので、気づいていない。

 グラントリノの近況をオールマイトに伝えようと、慌てて電話をかけ始める。

 

 そんな弟子のコスチュームが入ったトランクケースを、勝手に開けて中身を確認しながら不敵に笑っていた。

 

「打ってきなさいよ。ワンフォーオール。どの程度扱えるのか、知っときたい」

 

 急に雰囲気が変わったことで、イズクは険しい表情になる。

 そしてグラントリノの指示通りにコスチュームを着用し、訓練を開始するのだった。

 

 

 

 オールマイトはワンフォーオールをイズクに受け継がせた。

 いくら波紋で若返っても、ヒーロー活動を続ける時間に余裕があるわけではない。

 なので弟子は、少しでも早くワンフォーオールを使いこなしたかった。

 

 そうグラントリノに告げると、彼は不敵な笑みを浮かべて口を開く。

 

「雄英の体育祭をテレビで見た!

 あの力の使い方、当時の俊典(としのり)に負けておらん!

 だが、さらに上を目指すとは、面白い!」

 

 オールマイトは最初から、ワンフォーオールを問題なく扱えたと聞いている。

 そしてイズクも瞬間的になら、100パーセントで戦うことは可能だ。

 

 さらに外付け個性の妾と波紋、また実体化はできないが幽波紋(スタンド)もある。

 

 

 

 なおグラントリノの評価では、イズクとオールマイトは同等だ。

 妾なしでそれなので悪くはないが、当時の彼は全盛期よりも弱いが単純明快な増強系の個性である。

 

 なのでオールマイトは、当時からどれだけ化け物なんだと呆れてしまう。

 

 それはそれとして妾が考えている間も、弟子とグラントリノは話が続いていた。

 

「巨悪を放ってはおけませんし、少しでも早く師匠に追いつきたいんです!」

「AFOか。俊典から話は聞いているが、かなり厄介なことになっているようだな」

 

 グラントリノはAFOのことを知っているようで、大きな溜息を吐いた。

 

 しかしイズクの決意は伝わったらしく、良かろうと稽古をつけてくれることを承諾する。

 

 それから少し話をすると、先に飯を買ってくると言って扉の向こうに歩き去っていったのだった。

 

 

 

 

 

 

 今後の訓練メニューは、イズクが己に何が足りないかを見極めて、方針を決めないといけないようだ。

 妾は離れられないので宙に浮いたままだが、当然のように助言を求められる。

 

「師匠は、何を鍛えたら良いと思いますか?」

「ううむ、そうじゃのう」

 

 助言を求められるのは慣れているが、てっきりグラントリノが面倒を見てくれるかと思っていたので、ぶっちゃけ何も考えていなかった。

 

 取りあえずイズクは体育祭では活躍していたし、そんじょそこらのプロヒーローよりも実力はある。

 

幽波紋(スタンド)を鍛えるか? じゃがアレは、発動条件が厳しすぎる)

 

 限界以上の力を引き出すなど、そう簡単にできることじゃない。

 さらに心身に負担がかかり、短時間なら良いが幽波紋(スタンド)で仕留めきれず、強制解除したあとのことが心配だ。

 

(ここは地力を鍛えたほうが良かろう)

 

 イズクもオールマイトも、念能力で例えれば強化系だ。

 身体能力の高さが、そのまま戦闘能力に直結する。

 波紋は傷の治りを早くしたりサポートには使えるが、メインの必殺技としては使い難い。

 

 それよりも力こそパワーのほうが活躍の機会が多く、ぶっちゃけヴィランは殴って黙らせたほうが手っ取り早かった。

 

 まあその結論に至ったのは、自分が脳筋なのもある。

 だが取りあえず方針は定まったので、妾はイズクを真っ直ぐに見つめて口を開く。

 

(りゅう)の修行はどうじゃ?」

「えっ? ええと師匠、流とは一体?」

 

 妾はハンターの漫画で登場する、(りゅう)について簡潔に説明する。

 

(りゅう)について説明する前に、オールマイトから託されたワンフォーオールを、膨大な生命エネルギーの源泉じゃと思っておけ」

 

 ハンターの漫画なら、オーラっぽい何かで間違ってはいないはずだ。

 そして妾は、流について前世の記憶を思い出しながら続きを話す。

 

「そして(りゅう)とは、そうした生命エネルギーを用いた戦闘において、基本であり奥義じゃ。

 これほど経験とセンスが要求される技術はなく、修得難度はかなり高いのう」

「そっ、それが! 流なのですか!?」

 

 イズクの個性に関してはあながち間違いでもないゆえ、妾は実体化して地面に降り立つ。

 

 そしてわかりやすさ重視で、熱くはなく見た目だけの狐火を全身にまとわせる。

 

「まず、これが波紋疾走(オーバードライブ)じゃ。

 大体30パーセントじゃな」

 

 現時点でイズクが問題なく行動可能な状態は、30パーセントだ。

 なのでそれを基準にし、今度は右腕に狐火を集中させる。

 

「次にこれが、山吹き色の波紋疾走(サンライトイエローオーバードライブ)じゃ」

「たっ、確かに! これはわかりやすい!」

 

 生命エネルギーを右腕に集めて、肉体の負担を軽減しつつ攻撃力に全振りした状態だ。

 だが今のイズクはまだ未熟で、一箇所に集中させると他の部位が疎かになるため、ゴンのジャジャン拳のようなものだろう。

 

 とにかく次に妾はゆっくり演舞を踊り、動かす部位に狐火のオーラを移動させていく。

 

「その切り替えを自然に行う技術が、(りゅう)じゃ」

 

 波紋疾走(オーバードライブ)は出力調整は可能だが、まだまだ瞬時にとはいかない。

 今回の修行は、それを鍛えるべきだろう。

 

「もしイズクが(りゅう)を修得しておれば、雄英体育祭での場外負けは避けられたじゃろう」

「……うぐっ!?」

 

 時間にしてほんの一瞬だったが、あのときは両足の波紋が途切れてしまった。

 衝撃波を受けても踏ん張れず、吹き飛ばされたのだ。

 

 そして妾はイズクに、あの場で行うはずだった正しい見本を見せる。

 右手に100パーセント、両足に30パーセントの波紋疾走(オーバードライブ)を展開した。

 

 ワンフォーオールとは、生命エネルギーの源泉のようなものだ。

 その気になればイズクの体が壊れるまで引き出せるので、負担を無視すればハンターの漫画と違って、100と30というデタラメな配分も可能である。

 

 オーラの消耗も特にないが、長期戦には耐えられない。

 かなりキツくて場合によっては体を壊しかねないため、(りゅう)の修得は必須だろう。

 

 そしてこれには、弟子も思い当たることがあるようだ。

 苦虫を噛み潰したような顔に変わっていき、妾の話を真面目に聞く。

 

波紋疾走(オーバードライブ)を途切れさせることなく展開し、心身の負荷を最小限に抑えて効率良く戦う技。

 それが(りゅう)じゃ」

 

 手足を動かすのと同じで、必要な力を必要な分だけ自然に流すのだ。

 全力で戦いながら行うのは難しくはあるが、もし修得すればイズクの負担も軽くなる。

 

「それに、肉体の強度を高めれば、受けるダメージも軽減できるじゃろうな」

 

 妾は両手でブロックしつつ、そこに100パーセントの生命エネルギーをまとわせる。

 これはイズクもなるほど呟き、何度も頷いて熱心にノートにメモし始めた。

 

 だがこの技術は、先程も言ったように修得難度はかなり高い。

 一朝一夕では身につかないだろう。

 

「幸い、イズクは基礎は修得しておる。

 あとは地道に鍛錬していけば、問題なく覚えられるじゃろう」

「がっ、……頑張ります!」

「うむ、焦らぬことじゃ」

 

 取りあえず説明が終わったので、オーラのようにまとわせた狐火を解除する。

 そして、ふわりと宙に浮きあがって丸くなろうとした。

 

 だがその前に、買い物を終えて扉の外で妾たちの会話を聞いていたグラントリノに、師匠ポジションを交代するために声をかけるのだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。