近距離パワー型のじゃロリ狐っ娘守護霊 作:名無しの狐信者
職場体験と言いつつも、やってることはイズクの修行であった。
具体的には妾が幻の狐火を身にまとい、各部位の
そして弟子は師匠の力加減を真似し、実戦と比べればゆっくりとした動きで組手をしていた。
しかしそればかりに集中しているわけではなく、グラントリノは立体機動じみた高速移動でイズクを強襲したりもするので、意識外の攻撃にも対処しないといけない。
殆どハンターの漫画に出てきた修行の再現だが、本当に効果があるかは妾にもわからなかった。
だが弟子は真剣に修行に打ち込んでいるし、パッと見た感じは成長を感じる。
それに何だかんだで師匠ポジが二人もいるので、修行としては楽だ。
ついでに、これまで出来なかったことも行える。
しかしイズクの自主性に任せていた頃とは違い、日向ぼっこする時間がなくなってしまう。
だがそれも、一週間だと思えば我慢できる。
取りあえず多少の面倒には目をつぶって、グラントリノと二人でイズクを鍛えることに尽力していた。
その途中でグラントリノはイズク自身が考えて気づき改良することが大切で、一から十まで指導するのが、必ずしも優れた師匠ではないことを教えてくれる。
それ以外にも参考になることが多々あり、オールマイトと違って教育者としても優秀なことを知った。
なのでこの機会に、妾も色々と勉強させてもらうのだった。
やがて職場体験の三日目になった。
グラントリノがイズクに向かって、このまま続けると変な癖がつきそうだし、色んな経験を積ませるためにヴィラン退治に出かけることを提案し、三人で事務所を出ることになる。
地元は過疎化が進んで犯罪率が低いので、少し遠出をするらしい。
具体的には、東京の渋谷だ。
取りあえずタクシーに乗り込み、駅に到着したら今度は新幹線に乗り換える。
途中までは何の問題もなかった。
妾は天井近くで丸くなり、気楽にスヤスヤ寝入っていた。
しかし夜間に
妾は反射的に飛び起きて実体化し、両足を地面につけて大声で叫んだ。
「今すぐ新幹線を止めよ!」
「師匠! どうしたんですか!」
「ヴィランが襲撃してくるぞ!」
瞬間、窓の外に見える遠くのビルが爆発する。
音がここまで聞こえてくるし火も燃えていて、わかっていたが新幹線は止まる気配はない。
なおも変わらず進み続けており、危険地帯に突っ込んでいく。
「ええい! 全員! 怪我をしたくなければ、急ぎ頭部を守るのじゃ!」
「皆さん! どうか言う通りにしてください!
そうでないと、本当に大怪我をしてしまいます!」
妾の言うことを無条件に信じるイズクが協力してくれる。
だが現実は、指示に従ってくれるのは一部の人だけだ。
殆どは事態が掴めていないようで困惑しており、窓の外の火災を呑気に見物している者も多い。
だがそのとき、予想通り新幹線が急に減速した。
さらに壁の一部が破壊されて、外から一人の男と脳無が飛び込んでくる。
周囲が混乱する中、男性の方は片手で頭部を鷲掴みにされて地面に叩きつけられ、あっさり気絶してしまった。
恐らくこの地区のヒーローだろう。
そして状況を瞬時に判断し、グラントリノが一歩前に出る。
「小僧! 座ってろ!」
「グラントリノ!?」
グラントリノは空を蹴るように高速移動し、脳無に急接近して頭部を蹴りつけて拘束されたヒーローを解放する。
続いて乗客の安全のために敵を新幹線の外に弾き飛ばし、組みつくようにして強引に移動する。
「グラントリノ!?」
イズクが慌ててあとを追った。
そのまま壊れた壁から外の様子を伺うと、夜の闇の中で
「なっ何だ!? 何が起こってるんだ!?」
先程言った通り、ヴィランの襲撃だ。
しかし被害規模が大きすぎて、容易に把握できるものではない。
イズクが冷や汗をかいて、妾の顔を真っ直ぐに見つめる。
「師匠!」
「これはまた、面倒に巻き込まれたものよのう。
しかし、放っておくこともできぬ」
「それじゃあっ!」
妾はやれやれと溜息を吐いたあとに、恐れ知らずの笑顔をイズクに向けて口を開く。
「職場体験中なのが幸いじゃったな。
グラントリノは席に座っているようにと言ったが、妾も一応はヒーローじゃ」
目的はヴィラン退治だと聞かされている。
それが少し早まり、妾の監督の元で行動をしていると考えれば、ギリギリ許容範囲だろう。
「妾が守ってやれば問題はあるまい。
では行くぞ。イズクよ」
「はい! 師匠!」
新幹線はいつの間にか止まっていて、倒れているヒーローや急な減速で怪我をした乗客の治療を行うようだ。
しかし妾たちには他にやるべきことがあるため、弟子が一言断りを入れておく。
「すみません! 僕たち! 出ます!」
「キミたち! 待ちなさい! ちょっと! 危ないって!」
「大丈夫じゃ! 妾がついておるからのう!」
慌てて止める乗務員に一言告げて、壊れた壁から外に飛び出そうとする。
だが混乱の最中にある街を歩き回るのは、あまりよろしくない。
そこで妾は右手に狐火を収束し、空に向けて放つ。
「邪王炎殺青龍波!」
今回は破壊目的ではなく。空中移動用のために創造した。
妾は先に跳躍して華麗に飛び乗り、イズクにお手本を見せる。
「乗れ! イズク!」
「はい!」
足の出力だけを瞬間的に上げて、イズクは大きくジャンプする。
問題なく青龍の背中に乗った。
「修行の成果が出ておるのう」
「まだまだです! 師匠!」
「修行に終わりはないからのう!
とにかく、一気に片付けるぞ!」
妾は超感覚でヴィランの位置を探りながら、青龍を操作して
しばらくすると、遥か遠くに脳無を発見する。
既に被害が出ているので、いちいち相手の土俵で勝負する気はない。
妾は意識を集中して両手を構え、大声で叫んだ。
「
無数の狐火を宝石状に固めて、超高速で撃ち出した。
それはまさにショットガンのような、絶え間のない連続射撃である。
なお現実はDBの気のように変幻自在に操れるため、集中すれば狙いは決して外さない。
市民を襲おうとしていた脳無に寸分違わずに全弾ヒットする。
たちまち体中が穴だらけになった。
グラントリノとエンデヴァーが近くに居たような気がするが、細かいことを気にしている余裕はない。
すぐに意識を切り替えて、別の標的を探す。
「そこじゃぁ!」
次に、火災現場でヒーローたちと戦っている二体の脳無を発見する。
再び
かなり距離が遠くても、狙いを外すことは決してない。
障害物を器用に避けて敵を追尾し、当たり前だが全弾が命中した。
力自慢と空を飛ぶ脳無が、二体とも体勢を崩す。
そして為す術もなく、地面に倒れ伏した。
これにはイズクは勝利を確信したのか、嬉しそうに口を開く。
「やりましたね! 師匠!」
「まだじゃ! 奴らを甘く見るでない!
弱らせただけじゃ!」
回復の個性があってもなくても、脳無は呆れるほど頑丈にできている。
体中が穴だらけで、誰が見ても瀕死の重傷であろうと、いつ起き上がってくるかわからないのだ。
「じゃが、あとは
流石に一から十まで面倒を見れるほど妾は暇ではなく、まだ別の目的が残っていた。
「妾たちは別の場所に向かうぞ!」
「別の場所ですか?」
妾は青龍を操りながら、イズクに大きな声で告げる。
「飯田少年の所じゃ!
何者かにお守りが壊されたようじゃ!
ゆえに、あまり時間はないぞ!」
「まさか! ヒーロー殺し!?」
それは不明だが、彼が凶悪なヴィランと戦っているのは間違いないだろう。
ついでに、時間的な猶予はあまり残っていない。
しかし幸い場所は掴めているので、飯田少年の元に空を飛んで急ぎ向かうのだった。